説明

蛍光層、その製造方法およびその用途

【課題】蛍光層、その製造方法およびその用途が提供される。
【解決手段】蛍光層は、蛍光材料と、か焼材料と、を備え、蛍光材料は、蛍光層の総重量を基準として、約5重量%から約95重量%までの量である。蛍光層は発光ダイオードに用いられ得て、発せられる光の色を変え、発光ダイオードの放熱性を向上させる。さらに、蛍光層は有機樹脂を含まず、それゆえに、老化(黄化)の課題を有しない。それゆえ、最終製品は安定的であり、長寿命であり、耐久力のある発光品質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光層、その製造方法およびその用途に関連する。具体的には、本発明は、発光ダイオードにおいて有用な蛍光層およびその製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
省エネルギーおよび環境保護の意識の高まりによって、より小さなサイズ(小型化の傾向に対応して)、低い電力消費量(従来の電球の1/8から1/10、および蛍光灯の半分)、長寿命(100,000時間超過)、低い発熱量(低い熱放射)、および優れた応答時間(高頻度の操作を可能にする)を含む長所のために、白色発光ダイオード(LED)がもっとも期待される新しい製品となってきており、かつ、段階的に、伝統的な照明器具に取ってかわってきている。白熱電球が解決できなかった多くの課題を白色LEDが解決することができ、およびそれゆえに、21世紀における照明の新しい光源となってきている。加えて、白色LEDは省電力と環境保護の概念の両方を兼ね備えているので、白色LEDは「環境に優しい光源」である。
【0003】
従来開発されていた白色LEDは、さまざまな発光波長を有する複数のLEDから構成されていた。しかしながら、そのようなデバイスは、大きな体積、低い発光効率および不均等な混色のために、高い輝度を必要とする発光デバイスへの応用に限られている。原理上、現在の白色LEDは、単波長の発光源(LEDチップ)と、光源によって励起可能な少なくとも1つの蛍光材料と、によって構成される。励起された蛍光材料から発光された蛍光は、光源から発光された光(蛍光材料によって吸収されない)と混合され、白色光を形成する。現在の白色LEDの構造において、蛍光材料は概して、エポキシ樹脂のような封止材料と混合されてパッケージを形成し、その後、光源がパッケージによって覆われる。すなわち、光源上に蛍光層を形成し、白色LEDを提供する。
【0004】
それにもかかわらず、上述の発光デバイスは、ダイオードによって発せられた紫外線または熱の吸収によって、その内部のエポキシ樹脂が過度に架橋されるため、一定時間使用された後には、老化(黄化)現象を有することがよくある。この老化現象は、発光デバイスの発光効率を著しく低下させる。加えて、発光層内の蛍光材料もまた、温度が上昇するにつれて熱疲憊または温度消光のような影響を有する。
【0005】
当該技術分野において、発光デバイスの放熱性能が向上し、蛍光材料の熱疲憊の程度を低下させ、エポキシ樹脂の老化(黄化)を遅らせるようになってきている。特許文献1は、放熱の課題を改善する蛍光板材を開示し、その蛍光板はYAG蛍光粉を約1700℃で熱的にプレスすることによって直接製造される。前述の手段によって提供された蛍光板は、蛍光樹脂層が老化することを防ぎ、光散乱を低下させ得るが、それは、大量の蛍光材料、および、繰り返される高温での熱処理を必要とし、それゆえにコストを増大させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7361938号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の需要に基づき、本発明は、別の蛍光層およびその製造方法を提供する。それはLEDの放熱性を向上させ得るし、かつ、本発明の蛍光層が有機樹脂を含んでいないため、老化(黄化)の課題から解放され得る。最終製品は、安定的な発光、長寿命および高い耐久性といった特性を発揮する。さらに、本発明は、低温で焼結され得る安価なか焼粉末を用い、製造コストを低減し、製造困難性を低下させる。それゆえ、従来技術において直面していた多くの課題が克服され得る。
【0008】
本発明の目的は、蛍光材料と、か焼材料と、を備え、蛍光層の総重量を基準として、蛍光材料が、約5重量%から約95重量%までの範囲の量であることを特徴とする蛍光層を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、サファイア基板と、サファイア基板上にある上述のような蛍光層と、を備えるサファイア蛍光板を提供することにある。
【0010】
本発明のさらなる他の目的は、蛍光材料と、か焼材料と、を混合して、素地の薄層を形成する工程を含み、素地の薄層の総重量を基準として、蛍光材料が、約5重量%から約95重量%までの範囲の量で用いられ、か焼材料の共晶点付近の温度で、素地の薄層に熱処理を施す工程と、を含むことを特徴とする蛍光層の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらなる他の目的は、サファイア基板を設ける工程と、蛍光材料と、か焼材料と、を混合して、素地の薄層を形成する工程と、を含み、素地の薄層の総重量を基準として、蛍光材料が、約5重量%から約95重量%までの範囲の量で用いられ、素地の薄層をサファイア基板上に配置する工程と、素地の薄層およびサファイア基板に熱処理を施す工程と、を含み、か焼材料の共晶点付近の温度で、熱処理が施されることを特徴とするサファイア蛍光板の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらなる他の目的は、励起光源と、上述のような蛍光層またはサファイア蛍光板と、を備える発光デバイスを提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一態様に係る蛍光層の模式図である。
【図2】本発明の一態様に係るサファイア蛍光板の模式図である。
【図3】本発明の一態様に係る発光デバイスの模式図である。
【図4】本発明の他の態様に係る発光デバイスの模式図である。
【図5】本発明の実施例に係る発光デバイスIの発光スペクトルの図である。
【図6】本発明の実施例に係る発光デバイスIの変換されたCIE座標図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のいくつかの態様が、添付の図面を参照して詳細に説明される。しかしながら、本発明の精神から逸脱することなく、本発明はさまざまな態様に具体化され得るし、明細書および図面に記載された態様に限定されるべきものではない。さらに、明瞭化のために、各要素および各領域のサイズは添付の図面において誇張されているかもしれず、実際の比率で既述されていなくてもよい。特に説明されない限り、本発明の明細書中で用いられる「a」や「the」等の表現は(とりわけ、請求項において)、単数形および複数形の両方を含むべきである。
【0015】
図1は、本発明の一態様に係る蛍光層の模式図である。蛍光層1は、蛍光材料12と、か焼材料11と、を備える。か焼材料11が構造の基材である。蛍光材料12は、か焼材料11中に分散され、好ましくはその内部で一様に分散される。「か焼材料11が構造の基材である」というフレーズは、か焼材料11が蛍光層1の三次元構造を支持する基材であることを指す。図1に示す分布に加えて、蛍光材料12はまた、か焼材料11中に、たとえば、菱形に交錯した状態や、あや織り状に分散されてもよい。
【0016】
本発明において有用なか焼材料は、第一の成分と、第二の成分と、を含み、第一の成分は、たとえば、酸化アルミニウム(Al)、二酸化ケイ素(SiO)およびそれらの組み合わせなどの、いかなる好適な透光性を有するセラミック材料から選択され得ることを特徴とする。酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との組み合わせが第一の成分として用いられることが好ましい。第二の成分は、第一の成分(すなわち、セラミック材料)の結合構造のいくつかを破壊し、第一の成分の融点を低下させ、ついで、材料の熱処理温度を低下させ、およびそれゆえにフラックス塗布の効果をもたらすことができるように選択される。第二の成分は、酸化バリウムを含み、一部の酸化バリウムを置換するための酸化バリウム以外の他の物質を選択的に含んでもよい。他の物質は、たとえば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)およびそれらのいかなる組み合わせのような他のアルカリ土類金属(すなわち、バリウム以外のアルカリ土類金属)の酸化物であってもよい。他の物質の置換量は、所望のフラックス塗布効果、最終製品の応用および製造コストによって調節されてもよく、通常は酸化バリウムの約50モル%を超えない。
【0017】
本発明のいくつかの態様においては、a(BaO)・Al・b(SiO)(2≦a≦3かつ8≦b≦12)が、か焼材料として用いられる。か焼材料の第二の成分が他の物質をさらに含む時、酸化バリウムおよび他の物質の総重量によって、か焼材料中の各成分が上述の比となり得るべきである。たとえば、第二の成分が酸化バリウムと酸化カルシウムとから構成される時、か焼材料は、a((1−y)BaO、yCaO)・Al・b(SiO)(0<y≦0.5、2≦a≦3かつ8≦b≦12)であってもよく、第二の成分が酸化バリウム、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムから構成される時、か焼材料は、a((1−w−z)BaO、wCaO、zMgO)・Al・b(SiO)(0<w+z≦0.5、2≦a≦3かつ8≦b≦12)などであってもよい。以下の実施例においては、a(BaO)・Al・b(SiO)(2≦a≦3かつ9≦b≦11)が、か焼材料として用いられる。
【0018】
たとえば、窒素酸化物蛍光材料または希土類ガーネット蛍光材料のような市販の蛍光材料が、か焼材料とともに用いられ、本発明における蛍光層をもたらし得る。本発明の一態様によれば、たとえば、MがY(イットリウム)、Lu(ルテチウム)またはそれらの組み合わせであるM3−xAl12:Ce(0<x≦0.5)のような希土類ガーネット蛍光材料が用いられる。
【0019】
ランベルト・ベールの法則によれば、蛍光効率は、蛍光材料の量と蛍光層の厚さとによって決定され、2つの因子を調節することによって、所望の蛍光効果がもたらされ得る。本発明において、蛍光材料は概して、蛍光層の総重量を基準として、約5重量%から約95重量%までの範囲の量、好ましくは約20重量%から約70重量%までの範囲の量、より好ましくは約30重量%から約50重量%までの範囲の量である。蛍光材料の量が少なすぎる場合、十分かつ所望の発光効果がもたらされないかもしれず、そして、量が多すぎる場合、気孔が蛍光層中にあまりにも多く生じてしまい、発光効率に影響を与える。蛍光層の厚さは、概して、約0.05mmから約2mmの範囲、好ましくは約0.2mmから約1.5mmの範囲となるように制御される。蛍光層の厚さが薄すぎる場合、蛍光層は製造工程中に容易に破壊されてしまうかもしれず、および、その厚さが厚すぎる場合、それは小型化の需要を達成できないかもしれない。加えて、本発明のいくつかの態様においては、サイズが厚くて大きな蛍光層が製造され得て、ついで、該層が研磨によって所望の厚さになるまで薄くされ、後の使用のために適切なサイズに切り分けられる。
【0020】
本発明はまた、蛍光材料と、か焼材料と、を混合して、素地の薄層を形成する工程と、素地の薄層に熱処理を施す工程と、を含む蛍光層の製造方法をも提供する。本発明において有用である蛍光材料およびか焼材料の種類、量および変形例は上述の通りである。好ましくは、蛍光材料は、MがY(イットリウム)、Lu(ルテチウム)またはその組み合わせであるM3−xAl12:Ce(0<x≦0.5)であり、か焼材料は、a(BaO)・Al・b(SiO)(2≦a≦3かつ8≦b≦12)である。本発明の一態様においては、a(BaO)・Al・b(SiO)(2≦a≦3かつ9≦b≦11)が、か焼材料として選択される。本発明の方法によれば、蛍光層の総重量を基準として、約5重量%から約95重量%までの範囲の量、好ましくは約20重量%から約70重量%までの範囲の量、より好ましくは約30重量%から約50重量%までの範囲の量の蛍光材料が用いられる。
【0021】
か焼材料と蛍光材料とを混合することによって素地の薄層を形成する方法は特に限定されるものではなく、乾式成形方法または湿式スラリー成形方法も用いられ得る。湿式成形方法が用いられる場合、蛍光材料の量の算出は、素地の薄層の乾重を基準としてなされる(すなわち、溶媒または分散剤の重量を含まない)。また、素地の薄層の構造的強度を高めるために、たとえばポリエチレングリコールなどの少量の添加剤が選択的に加えられてもよい。ポリエチレングリコールは約350℃で分解され、薄層から抜け得て、以後のプロセスおよび製品の特性には影響を及ぼさない。
【0022】
本発明の方法において用いられるか焼材料は、市販されているものだけでなく、前駆体の反応を通して調製されてもよい。たとえば、前駆体の混合物を調製し、次に、前駆体の混合物中の各成分の熱分解温度を超える温度で前駆体の混合物に熱処理を施すことによって、か焼材料が調製されてもよい。
【0023】
上述の固体の反応においては、前駆体の混合物は、第一の前駆体の成分と、第二の前駆体の成分と、を含む。第一の前駆体の成分は、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの前駆体、二酸化ケイ素、二酸化ケイ素の前駆体およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。酸化アルミニウムの前駆体とは、たとえば、アルミニウム含有水酸化物、アルミニウム含有有機酸塩、または、アルミニウム含有無機酸塩のように、加熱によって酸化アルミニウムをもたらし得る前駆体を指し、具体例は、水酸化アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸アルミニウムおよび塩基性炭酸アルミニウムを含む。二酸化ケイ素の前駆体は、たとえばシランのように、加熱によって二酸化ケイ素をもたらし得る前駆体を指し、具体例は、テトラエトキシシラン(TEOS)およびジメトキシジメチルシランを含む。第二の前駆体の成分は、たとえば、水酸化バリウム、クエン酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウムおよび塩基性炭酸バリウムのように、加熱によってもたらされ得る酸化バリウムの前駆体を含む。いくつかの態様においては、第二の前駆体の成分が、他のアルカリ土類金属(すなわち、バリウム以外のアルカリ土類金属)の酸化物の前駆体のような他の物質の前駆体をさらに含む。他のアルカリ土類金属の酸化物の前駆体とは、たとえば、アルカリ土類金属含有水酸化物、アルカリ土類金属含有有機酸塩またはアルカリ土類金属含有無機酸塩のような、加熱によってアルカリ土類金属の酸化物を形成し得る前駆体を指し、具体例は、たとえば、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、クエン酸ストロンチウム、クエン酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸カルシウム、塩基性炭酸ストロンチウムおよび塩基性炭酸カルシウムである。本発明のいくつかの態様においては、第一の前駆体の成分が酸化アルミニウムおよび二酸化ケイ素を含みつつ、第二の前駆体の成分は塩基性炭酸バリウムを含む。本発明において用いられる前駆体の混合物の構成および量は、基本的に、所望のか焼材料によって定められ、その例および変形例は上述の通りである。
【0024】
前駆体の混合物を得た後、前駆体の混合物中の各成分(すなわち、第一の成分および第二の成分)の熱分解温度を超える温度で、前駆体の混合物に対して熱処理が施され、か焼材料が得られる。「熱分解温度」とは、それぞれの前駆体の成分を加熱して反応させて、高温で安定的であり、かつ、概して酸化物の形態にあるセラミック相を形成することを可能にする最低の温度を指す。たとえば、前駆体の成分が塩基性炭酸バリウムである場合、熱分解温度は、塩基性炭酸バリウムが熱分解されて酸化バリウムが形成される温度である。たとえば、酸化アルミニウムのように前駆体の成分が高温で既に安定的なセラミック相にある場合、その熱分解温度は無視され得る。本明細書の文脈を読むことで、当業者は、その知識および前駆体の成分の種類に基づいて、前駆体に対して熱処理を施す好適な条件を選択し得る。たとえば、約750℃から約950℃までの範囲の温度で、大気雰囲気中で、前駆体の混合物に対して熱処理が施され得る。
【0025】
本発明の蛍光層の製造方法によれば、素地の薄層を得た後、素地の薄層に熱処理を施すことによって蛍光層が得られ、か焼材料の共晶点付近の温度で熱処理が施されることを特徴とする。すなわち、素地の薄層に施される熱処理の温度は、用いられるか焼材料次第である。コストを考慮に入れると、熱処理は、好ましくは、約1500℃よりも低い温度で、大気雰囲気中または減圧雰囲気中で施される。たとえば、a(BaO)・Al・b(SiO)(2≦a≦3かつ9≦b≦11)が、か焼材料として用いられる場合、約1000℃から約1300℃までの範囲の温度、好ましくは約1100℃から1200℃までの範囲の温度で、大気雰囲気中で、素地の薄層に対して熱処理が施され得る。
【0026】
本発明の蛍光層においては、か焼材料が従来の樹脂材料に取って代わり、蛍光材料を封止するために用いられるので、発光効率の低下および樹脂層の老化(黄化)が抑制され得る。蛍光層の放熱効率を向上させること、または、熱応力による蛍光層のひび割れを防ぐという考えに基づいて、本発明の蛍光層は、放熱基板と組み合わせて用いられ得る。
【0027】
それゆえ、本発明は、サファイア蛍光板をさらに備える。図2は、本発明の一態様に係るサファイア蛍光板の模式図を示す。サファイア蛍光板100は、サファイア基板2と、サファイア基板2上の蛍光層1と、を備える。
【0028】
サファイア(酸化アルミニウム)薄板は、本発明の蛍光板の基板として用いられる。サファイア基板は約30W/m・Kから約40W/m・Kの熱伝導率を有し、およびそれゆえに、用いられる発光デバイスの放熱性および光変換性能の両方を向上させ得る。また、サファイア基板は一般的なダイオードの材料(たとえば、窒化ガリウムダイオードの熱膨張係数は5.8×10−6/Kである)と同等である5.8×10−6/Kの熱膨張係数を有し、使用中の熱応力によるひび割れを一層防ぎ得る。いかなる市販のサファイア基板も本発明において用いられ得る。コストを考慮に入れると、サファイア基板の厚さは、好ましくは約0.2mmから約2mmであり、より好ましくは約0.3mmから約0.6mmである。
【0029】
他の態様において、本発明はまた、サファイア基板を設ける工程と、上述した蛍光層の製造方法におけるステップを用いて素地の薄層を設ける工程と、サファイア基板上に素地の薄層を配置する工程と、素地の薄層およびサファイア基板に熱処理を施す工程と、を含み、か焼材料の共晶点付近の温度で熱処理が施されることを特徴とするサファイア蛍光板の製造方法をも提供する。
【0030】
上述のように、本発明の方法において用いられるサファイア基板は、好ましくは約0.2mmから約2mmの範囲の厚さを有し、より好ましくは約0.3mmから約0.6mmの範囲の厚さを有する。
【0031】
サファイア基板および素地の薄層を設けた後、熱処理が施され、両方の構成要素が接続される。素地の薄層はサファイア基板上に配置され、か焼材料の共晶点付近の温度で素地の薄層およびサファイア基板に熱処理が施され、素地の薄層の一部表面が溶解され、素地の薄層とサファイア基板とが接続される。熱処理温度は、概して、か焼材料次第である。コストを考慮に入れると、熱処理は、好ましくは、約1500℃よりも低い温度で、大気雰囲気中または減圧雰囲気中で施される。たとえば、か焼材料として、a(BaO)・Al・b(SiO)(2≦a≦3かつ9≦b≦11)を用いる場合においては、約1000℃から約1300℃までの範囲の温度、好ましくは約1200℃から1300℃までの範囲の温度で、大気雰囲気中で、サファイア基板および素地の薄層に対する熱処理が施され得る。
【0032】
本発明はまた、上述のように、励起光源と、蛍光層またはサファイア蛍光板と、を備える発光デバイスをも提供する。図3は、本発明の一態様に係る発光デバイス200の模式図であり、励起光源5が蛍光層1に接続されることを特徴とする。図4は、本発明の別の態様に係る発光デバイス201の模式図であり、励起光源5がサファイア蛍光板100に接続されることを特徴とする。
【0033】
本発明の発光デバイスにおいては、励起光源から発せられる光の波長は、蛍光層内の蛍光材料と調和すべきである。すなわち、励起光源から発せられる光の波長は蛍光層内の蛍光材料を励起する能力を有するべきであり、励起光源から発せられる光は励起された蛍光材料によって発せられた蛍光と混合され、白色光となり得る。励起光源は好ましくは青色発光ダイオードまたは紫外発光ダイオード(レーザダイオードを含む)であり、それらは蛍光材料のほとんどを励起し得る。たとえば、YAG蛍光材料を含有する蛍光層と組み合わせられる青色光励起光源は白色光を発し得て、紫外発光ダイオードは複数の蛍光材料を含有するサファイア蛍光板と組み合わせられ、白色光が得られる。
【0034】
本発明の発光デバイスによれば、励起光源と、蛍光層/サファイア蛍光層との間の接続が堅く安定的である限り、励起光源と、蛍光層/サファイア蛍光層とを接続する方法は特に限定されるものではない。たとえば、蛍光層/サファイア基板上に励起光源を固定するために接着剤が用いられ得る。本発明において有用な接着剤は、たとえば、エポキシ樹脂およびポリアミド樹脂を含む透光性樹脂接着剤から通常選択され、好ましくは、ダイアモンド粉、窒化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、またはそれらのいかなる組み合わせとともに用いられる。あるいは、蛍光層/サファイア基板は、物理的な貼り合わせ(例:留め具)によって励起光源上に固定されてもよい。上述に例示した方法の他にも、当業者は、本明細書の文脈を読んだ後に、実際に必要とされるような好適な接続方法を採用し得る。
【0035】
本発明のさらなる他の態様において、発光デバイス内の励起光源は、高い熱伝導率を有する基板と接続され、発光デバイスの放熱性を向上させ得る。高い熱伝導率を有する基板は、概して、金属材料、好ましくは、それらの優れた放熱効率のために、銅、アルミニウムまたは銅アルミニウム合金から構成される。
【実施例】
【0036】
本発明は以下の実施例によってさらに説明される。以下の実施例は例示のための目的にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
(蛍光層の調製)
BaCO、AlおよびSiOを2.5:1:10のモル比となるように計量し、酸化アルミニウムのボールを用いて30分間湿式粉砕した。ついで、得られた粉砕スラリーを乾燥させ、か焼材料の前駆体の混合物を得た。次に、約850℃の温度で、約4時間にわたり、前駆体の混合物に対する熱処理を施し、か焼材料2.5(BaO)・Al・10(SiO)を得た。
【0038】
2.93Al12:Ce0.07、および、得られたか焼材料2.5(BaO)・Al・10(SiO)が重量比で40:60となるように計量し、研磨し、お互いに混合した。ついで、混合物がプレスされ、乾式プレスによって約1mmの厚さを有する素地の薄層を形成した。
【0039】
大気雰囲気中で、約1140℃の温度で、約2時間にわたり、得られた素地の薄層に対して熱処理を施し、図1に示すような約0.8mmの厚さを有する蛍光層Fを得た。
【0040】
(サファイア蛍光板の製造)
BaCO、AlおよびSiOを2.5:1:10のモル比となるように計量し、酸化アルミニウムのボールを用いて30分間湿式粉砕した。ついで、得られた粉砕スラリーを乾燥させ、か焼材料の前駆体の混合物を得た。次に、約850℃の温度で、約4時間にわたり、前駆体の混合物に対する熱処理を施し、か焼材料2.5(BaO)・Al・10(SiO)を得た。
【0041】
2.93Al12:Ce0.07、および、得られたか焼材料2.5(BaO)・Al・10(SiO)を重量比で36:64となるように計量し、研磨し、お互いに混合した。ついで、混合物がプレスされ、乾式プレスによって約1mmの厚さを有する素地の薄層を形成した。
【0042】
得られた素地の薄層を、0.425mmの厚さを有するサファイア基板上に配置し、大気雰囲気中で、約1250℃の温度で、約2時間にわたり、素地の薄層に対して熱処理を施し、図2に示すような約0.8mmの厚さを有する蛍光層を有するサファイア蛍光板Aを得た。
【0043】
(発光デバイスの製造)
(発光デバイスI)
サファイア蛍光板Aを青色LED(窒化ガリウムダイオード)上に固定し、図4に示すような発光デバイスIを得た。
【0044】
紫外可視近赤外分光光度計(中華人民共和国杭州市EVERFINE社製、型式:PMS−80)が、3ボルトの電圧、0.2アンペアの電流の条件下で、発光デバイスIの蛍光スペクトルを測定するために用いられた。結果を図5に示す。図5から、発光デバイスIの蛍光スペクトルは、主に、約460nmの波長(青色の光)の狭いピークと、約560nmの波長(黄色の光)の広いピークとから構成されることが理解され得る。図5における結果を国際照明委員会(CIE)座標系(図6参照)に変換することによって、発光デバイスIの混色結果が得られ、x=0.3065およびy=0.3352において白色光が得られた。それゆえに、本発明のサファイア蛍光板は伝統的な蛍光材料パッケージに取って代わり、白色光を得られることが示される。
【0045】
上述の実施例は本発明の原理および効果を例示し、その発明的特徴を示すために用いられる。本発明の原理および精神から逸脱することなく、上述に示す本発明の開示および示唆に基づいて、当業者はさまざまな変形および置換を進め得る。それゆえに、本発明の保護の範囲は、添付された請求項において定義される。
【0046】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2011年7月12日に出願された台湾特許出願第100124605号および2012年3月30日に出願された台湾特許出願第101111384号に基づく。本明細書中にその明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0047】
1 蛍光層
11 か焼材料
12 蛍光材料
100 サファイア蛍光板
2 サファイア基板
200 発光デバイス
201 発光デバイス
5 励起光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光層であって、
蛍光材料と、か焼材料と、
を備え、
前記蛍光材料が、前記蛍光層の総重量を基準として、約5重量%から約95重量%までの範囲の量である、
ことを特徴とする蛍光層。
【請求項2】
前記蛍光材料が、前記蛍光層の総重量を基準として、約20重量%から約70重量%までの範囲の量である、
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光層。
【請求項3】
前記か焼材料が、第一の成分と、第二の成分と、を含み、
前記第一の成分が、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、および、それらの組み合わせからなる群から選択され、
前記第二の成分が、酸化バリウムを含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光層。
【請求項4】
前記第二の成分が、バリウム以外のアルカリ土類金属の酸化物をさらに含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の蛍光層。
【請求項5】
前記蛍光材料が、M3−xAl12:Ce(0<x≦0.5)、かつ、MがY(イットリウム)、Lu(ルテチウム)またはそれらの組み合わせであり、
前記か焼材料が、a(BaO)・Al・b(SiO)(2≦a≦3かつ9≦b≦11)である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光層。
【請求項6】
前記蛍光層が、約0.05mmから約2mmまでの範囲の厚さを有する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の蛍光層。
【請求項7】
サファイア基板と、
前記サファイア基板上にある請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蛍光層と、
を備えるサファイア蛍光板。
【請求項8】
蛍光材料と、か焼材料と、を混合して、素地の薄層を形成する工程と、
前記か焼材料の共晶点付近の温度で、前記素地の薄層に熱処理を施す工程と、
を含み、
前記蛍光材料が、前記素地の薄層の総重量を基準として、約5重量%から約95重量%までの範囲の量で用いられる、
ことを特徴とする蛍光層の製造方法。
【請求項9】
サファイア基板を設ける工程と、
蛍光材料と、か焼材料と、を混合して、素地の薄層を形成する工程と、
前記サファイア基板上に前記素地の薄層を配置し、前記か焼材料の共晶点付近の温度で、前記素地の薄層および前記サファイア基板に熱処理を施す工程と、
を含み、
前記蛍光材料が、前記素地の薄層の総重量を基準として、約5重量%から約95重量%までの範囲の量で用いられる、
ことを特徴とするサファイア蛍光板の製造方法。
【請求項10】
前記蛍光材料が、前記素地の薄層の総重量を基準として、約20重量%から約70重量%までの範囲の量で用いられる、
ことを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記か焼材料が、
第一の前駆体の成分と、第二の前駆体の成分と、を含む前駆体の混合物を提供する工程と、
前記第一の前駆体の成分および前記第二の前駆体の成分のそれぞれの熱分解温度を超える温度で、前記前駆体の混合物に熱処理を施す工程と、
を含むステップによって製造され、
前記第一の前駆体の成分が、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムの前駆体、二酸化ケイ素、二酸化ケイ素の前駆体、および、それらの組み合わせからなる群から選択され、
前記第二の前駆体の成分が、酸化バリウムの前駆体を含む、
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第二の前駆体の成分が、バリウム以外のアルカリ土類金属の酸化物の前駆体をさらに含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の前駆体の成分が、酸化アルミニウムと、二酸化ケイ素と、を含み、
前記第二の前駆体の成分が、塩基性炭酸バリウムである、
ことを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記前駆体の混合物に対する前記熱処理が、大気雰囲気中で、約750℃から約950℃までの範囲の温度で施される、
ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記蛍光材料が、M3−xAl12:Ce(0<x≦0.5)、かつ、MがY(イットリウム)、Lu(ルテチウム)またはそれらの組み合わせであり、
前記か焼材料が、a(BaO)・Al・b(SiO)(2≦a≦3かつ9≦b≦11)である、
ことを特徴とする請求項8乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記素地の薄層に対する熱処理、または、前記素地の薄層および前記サファイア基板に対する熱処理が、大気雰囲気中で、または、減圧雰囲気中で、約1000℃から約1300℃までの範囲の温度で施される、
ことを特徴とする請求項8乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
励起光源と、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の蛍光層、請求項7に記載のサファイア蛍光板、または、請求項8または請求項10乃至16のいずれか1項に記載の方法によって製造された蛍光層、または、請求項9乃至16のいずれか1項に記載の方法によって製造されたサファイア蛍光板と、
を備える発光デバイス。
【請求項18】
前記励起光源が青色発光ダイオードである、
ことを特徴とする請求項17に記載の発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−18981(P2013−18981A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154500(P2012−154500)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【出願人】(512180768)信源陶磁股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】