蛍光微粒子含有免疫測定用試薬

【課題】感度のよい蛍光免疫測定用試薬、測定方法、測定用キットを提供する。
【解決手段】本発明者等は、凝集反応の簡便性を生かしたまま、感度を向上させる研究を行ったところ、蛍光を発する微粒子を用いる方法を見出した。即ち、本発明は、ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)等の希土類元素が付活されたMIII4又はMIAl512(MIはイットリウム(Y)、ランタン(La)又はガドリニウム(Gd)、MIIはニオブ(Nb)、リン(P)又はバナジウム(V))からなる蛍光微粒子を含有する免疫測定用試薬に関するものであり、好適には、蛍光微粒子は抗体または抗原と結合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光微粒子を用いることを特徴とする免疫測定用試薬、それを用いた蛍光免疫測定方法および蛍光免疫測定用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス、細菌、タンパク質、ホルモン、麻薬、癌関連抗原などの検出には、早くて感度の高い抗原抗体反応が用いられる。そのための免疫反応試薬としては、酵素抗体法、ラテックス凝集法、金コロイド凝集法、血球凝集法などが知られている。
いずれも、抗体(または抗原)をプラスチック反応容器、ラテックス微粒子、金コロイド、血球などの固体に固定したものを用いる。
【0003】
酵素抗体法では、プラスチック製の反応容器に抗体を固定させたものが一般的である。この容器の中で検体と反応させた後に、酵素を結合させた2次抗体を反応させ、さらに酵素の基質を添加して、基質から生成する色素の量を観察する。抗体を検査する時には、抗原を固定した容器を用いる。酵素を固定した2次抗体の代わりに、アイソトープを固定した2次抗体を用い、アイソトープの結合量をカウントするRIA法もある。両方法とも感度は高く定量性に優れている半面、途中で洗浄したり、2次抗体や基質を添加するなど、工程の多いのが欠点である。
【0004】
凝集反応法では、これらの固体に抗体(または抗原)を固定し、検体と反応させた時の凝集の有無を観察する。凝集の有無は、肉眼的に凝集を観察する簡便な方法から、光透過の変化で計測判断する方法、更には、凝集バンドの出現を見るインムノクロマト法などが広く用いられている。上記の酵素抗体法に比べて、定量性と感度はやや低いものの、工程数が少ないのが特長である。特にインムノクロマト法は、簡便で肉眼判定もし易いため、麻薬、インフルエンザウイルス、肝炎ウイルスなどの、検体(または患者)の近くで迅速な測定が必要な時に便利である。
【0005】
本願発明者等は、ユーロビウム付活リン酸イットリウムナノ粒子およびユーロビウム付活バナジウム酸イットリウムナノ粒子およびその製造方法について特許出願している(特許文献1)。また、希土類元素含有微粒子およびこれを用いる蛍光プローブについては、特許文献2に記載があるが、具体的に試薬を作製するに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−284304号公報
【特許文献2】特開2009−084576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、感度のよい蛍光免疫測定用試薬、測定方法、測定用キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、凝集反応の簡便性を生かしたまま、感度を向上させる研究を行ったところ、蛍光を発する微粒子を用いる方法を見出した。即ち、本発明は以下からなる。
1.希土類元素が付活されたMIII4又はMIAl512(MIはイットリウム(Y)、ランタン(La)又はガドリニウム(Gd)、MIIはニオブ(Nb)、リン(P)又はバナジウム(V))からなる蛍光微粒子を含有する免疫測定用試薬。
2.希土類元素がユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ネオジム(Nd)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)またはセリウム(Ce)である前項1に記載の免疫測定用試薬。
3.蛍光微粒子が抗体または抗原と結合していることを特徴とする前項1または2に記載の免疫測定用試薬。
4.蛍光微粒子の粒径が5〜300nmであることを特徴とする前項1〜3のいずれか一に記載の免疫測定用試薬。
5.前項1〜4のいずれか一に記載の免疫測定用試薬を用いることを特徴とする免疫測定方法。
6.免疫測定方法が、イムノクロマトグラフィー法である前項5に記載の免疫測定方法。
7.ホウ酸緩衝液を展開溶媒とすることを特徴とする前項6に記載の免疫測定方法。
8.前項1〜4のいずれか一に記載の免疫測定用試薬を含む免疫測定用キット。
【発明の効果】
【0009】
今回発明者らは、蛍光微粒子を選ぶことで、従来のラテックスや金コロイド粒子を用いた試薬よりも、感度を向上させることに成功し、より正確な診断を行うことが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いられる蛍光微粒子は、MIII又はMIAl512(MIはイットリウム(Y)、ランタン(La)又はガドリニウム(Gd)、MIIはニオブ(Nb)、リン(P)又はバナジウム(V))に、希土類元素が付活された蛍光微粒子である。希土類元素は限定されないが、ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ネオジム(Nd)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)またはセリウム(Ce)が好適である。ユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)がさらに好適である。
III4又はMIAl512(MIはイットリウム(Y)、ランタン(La)又はガドリニウム(Gd)、MIIはニオブ(Nb)、リン(P)又はバナジウム(V))は、LaPO、LaVO、LaNbO4、YPO、YVO、YNbO、YAl512、GdAl512が好適に用いられる。
【0011】
III又はMIAl512に、希土類元素が付活された蛍光微粒子の製造方法は限定されるものではない。例えば、特開2007−284304号公報に記載の方法が挙げられる。
【0012】
本発明で用いられる蛍光微粒子の粒径は5〜300nm、好ましくは、50〜100nmである。
【0013】
本発明で用いられる蛍光微粒子における希土類元素の付活量(ドープ量)(モル)は、特に限定されないが、0.01〜6%、好ましくは、0.5〜3%とされる。この理由は、希土類元素イオンのドープ量が6%以上となると蛍光強度が減少するため好ましくないからである。
【0014】
本発明で用いられる蛍光微粒子は、紫外部で励起し可視部で発光する。特に、150nm〜300nmの紫外線を照射することにより発光するものである。可視部の発光は、目視または各種検出機器によって検出される。
【0015】
本願発明の免疫測定用試薬に含まれる蛍光微粒子は、好適には抗体または抗原と結合している。当該抗体または抗原が被検物質に直接または間接に結合することにより、被検物質を測定することが可能になる。例えば、蛍光微粒子標識抗体は、被検物質に対する抗体であってもよいし、被検物質に対する抗体の抗体(二次抗体)であってもよい。
【0016】
本発明の免疫測定用試薬は、通常の免疫測定法に用いられる。例えば、抗体または抗原を固相に結合させて、周知の1ステップ法、2ステップ法等のサンドイッチ法、競合法等に用いられ、免疫反応により、固相上の抗体等との間に免疫複合体を形成した蛍光標識物の蛍光強度を測定することで、免疫測定を実施できる。
本発明の試薬は、好ましくは、イムノクロマトグラフィー法、免疫染色法に用いられる。
【0017】
被検物質は、前記蛍光微粒子で標識された抗体または抗原と反応あるいは相互作用する物質であり、蛋白質、ペプチド、糖類、脂質、核酸、微生物等が挙げられ、具体的には、例えば、ウイルス抗原・抗体、病原菌由来抗原・抗体、毒素抗原・抗体、腫瘍マーカー、生理活性物質、酵素、受容体、核酸、ヌクレオチド、薬剤等が挙げられる。
これら抗原、抗体等を含む検体としては、例えば全血、血清、血漿、尿、鼻汁、リンパ液等の体液、便抽出液、組織片等を挙げることができる。
【0018】
蛍光微粒子で標識される抗体または抗原としては、所望の被検物質に対する抗体または抗原である。好ましい抗体は、モノクローナル抗体である。
【0019】
蛍光微粒子と抗体または抗原との結合方法は限定されるものではない。例えば、蛍光粒子含有溶液に抗体または抗原を含有する溶液を添加して、数時間感作することにより結合させることができる。
【0020】
本発明は、さらに当該免疫測定用試薬を用いることを特徴とする免疫測定方法に関する。免疫測定方法については、限定されるものではないが、好ましい免疫測定方法としては、イムノクロマトグラフィー法、免疫染色法である。
クロマトグラフィー用担体としては、好ましくは、セルロースアセテート膜、ニトロセルロース等が挙げられる。
展開溶媒としては、好適には、ホウ酸緩衝液が用いられる。好ましいpHは、生理的な条件であれば、特に限定されるものではない。
【0021】
本発明はまた、当該免疫測定用試薬を含む免疫測定用キットに関する。本キットには、適宜、展開溶媒、プレート、担体、測定に必要な補助試薬等を含むことができる。
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
実施例1 蛍光微粒子の製造
(LaNbO:Tb3+微粒子の作製)
La(NO3)3・6H2O (2.5mmol) とNbCl5(2.5mmol)を、モル比が1:1になるようにエタノール20mLに溶解させた。さらに、この溶液にLa源に対してTbCl3・6H2O(1〜5 mol%)を加えた。その後、NaOH(18.5 mmol)を溶解させたエタノール100mLを、常圧下、系の沸点温度で加熱還流しながら1時間かけて滴下した後、さらに1時間加熱還流を行った。その後、室温まで放冷し、遠心分離(回転数13,000r.p.m)、洗浄(蒸留水、メタノール) を行い、2日間真空乾燥させた。得られた物質をメノウ乳鉢で粉砕後、600℃〜900℃で1時間熱処理を行い試料とした。
【0024】
(YPO:Eu微粒子およびYVO:Eu微粒子の作製)
YPO4:Eu微粒子およびYVO4:Eu微粒子を特開2007-284304の方法に従い作製し、試料とした。
【0025】
実施例2 免疫測定用試薬の調製
実施例1で得た蛍光微粒子の試料0.25 %に対し抗インフルエンザウイルス抗体100μgを添加し、37℃で2時間感作した。さらにウシ血清アルブミン10%を含む緩衝液を用いて37℃で約16時間ブロッキングを行った後、7%のシュークロースおよび2%のウシ血清アルブミンを含む緩衝液を用いて0.5%の粒子濃度に調整したものを抗インフルエンザウイルス抗体感作粒子とした。感作粒子をさらにグラスファイバー上に塗布し、真空乾燥したものを試験に用いた。また、固定相には、2mg/mLの抗インフルエンザウイルス抗体を感作しウシ血清アルブミンを含む緩衝液でブロッキングし、さらに、界面活性剤を含む緩衝液で洗浄したメンブレンを試験に用いた。
インフルエンザウイルス感染者の鼻汁を被検試料として用いた。これをホウ酸緩衝液で希釈したものを測定試料とし、本試験試料をメンブレン上で展開させた。励起波長254nmを照射し、蛍光を目視で観察した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素が付活されたMIII4又はMIAl512(MIはイットリウム(Y)、ランタン(La)又はガドリニウム(Gd)、MIIはニオブ(Nb)、リン(P)又はバナジウム(V))からなる蛍光微粒子を含有する免疫測定用試薬。
【請求項2】
希土類元素がユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ネオジム(Nd)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)またはセリウム(Ce)である請求項1に記載の免疫測定用試薬。
【請求項3】
蛍光微粒子が抗体または抗原と結合していることを特徴とする請求項1または2に記載の免疫測定用試薬。
【請求項4】
蛍光微粒子の粒径が5〜300nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の免疫測定用試薬。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一に記載の免疫測定用試薬を用いることを特徴とする免疫測定方法。
【請求項6】
免疫測定方法が、イムノクロマトグラフィー法である請求項5に記載の免疫測定方法。
【請求項7】
ホウ酸緩衝液を展開溶媒とすることを特徴とする請求項6に記載の免疫測定方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一に記載の免疫測定用試薬を含む免疫測定用キット。

【公開番号】特開2012−32263(P2012−32263A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171689(P2010−171689)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】