説明

蛍光性プロテインAもしくはGを用いた哺乳動物細胞の高発現クローン

本発明は目的のポリペプチドを発現するトランスフェクトした細胞の遺伝的スクリーニング法を提供する。この方法は検出およびクローニングを向上するために、蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなるメチルセルロースを使用して、目的のポリペプチドを上昇したレベルで発現する組換え細胞を高処理量でスクリーニングできるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本出願は2007年3月30日に出願された米国特許仮出願第60,909097号の優先権を主張し、これは引用により全部、本明細書に編入する。
【0002】
発明の分野
本発明は目的のポリペプチドを発現している哺乳動物細胞クローンの同定に有用な遺伝的スクリーニング法、関連する細胞およびその培養基に関する。この方法は目的のポリペプチドの高レベルの発現に関して、組換え細胞の高処理スクリーニングを可能とする。また本発明は免疫グロブリンを高レベルで発現している哺乳動物細胞クローンのスクリーニングおよび単離に有用なスクリーニング法も提供する。
【背景技術】
【0003】
関連する背景
組換えタンパク質(r−タンパク質)は新興している種類の治療薬である。組換えタンパク質生産のための安定なクローンを得るためには、通常、細胞を目的遺伝子および優性遺伝子マーカーを含む発現ベクターでトランスフェクションを行うことが必要である。安定なトランスフェクション体を選択するために、多くは抗生物質耐性遺伝子のような選択可能なマーカーが目的の標的遺伝子と一緒にトランスフェクトされる。次いで選択は特異的な抗生物質の存在下で行われる。発現ベクターのDNAを取り込んだ細胞は適切な選択培地中で生存する。
【0004】
現在、安定にトランスフェクトされた細胞のクローニングは、時間がかかりかつ大きな労力を要する一連の限界希釈法を行うことに依っている。例えば多くの一般的に使用されてる哺乳動物発現系は、安定にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に基づき、そしてこの系のトランスフェクション効率はベクターDNAを取り込む細胞の10〜60%の範囲である。しかしトランスフェクトされた遺伝子の発現をモジュレートする染色体の様々な領域による位置の効果により、外来DNAをゲノムに安定に取り込むクローン間で組換え遺伝子発現に広い変動が存在する。典型的には数百またはさらに数千ものトランスフェクトクローンが、組換えタンパク質生産における無作為な変動による無作為な高生産体(high producers)についてスクリーニングされる。したがって多くの場合で、高生産体のスクリーニングは、スクリーニングすべき莫大な量の細胞および行われるべき複雑なアッセイにより、r−タンパク質を発現する細胞株の開発における律速工程となってきた。
【0005】
可溶性タンパク質はそれらの対応する抗体と相互作用して寒天のような固体または半固形物質に沈殿を形成する。そのような1つの応用がマウスの骨髄腫変異体を検出するために使用されるイムノプレートアッセイである。簡単に説明すると、細胞は接触阻害を受ける支持細胞層(feeder layer)上の軟寒天中にクローン化される。クローン化された細胞により分泌される免疫グロブリンと反応性の抗体もしくは抗原がプレートに加えられ、そして寒天を通って拡散し、クローンの周囲に抗原−抗体沈殿を形成する。この沈殿は暗い顆粒の集団として現れ、そして倒立顕微鏡で低もしくは中倍率下にて染みをつくる。このアッセイはハイブリドーマおよび骨髄腫細胞の変異体を探すためだけでなく、ハイブリドーマをクローン化し、そして所望の抗体を生産するサブクローンを同定するためにも使用された。また高生産体を同定するためにも使用できる。
【0006】
しかしこれまでにこの半固形寒天技術を、所望する抗体を生産するクローンのスクリー
ニングに使用した場合、幾つかの難点が報告された。例えば寒天を冷やしながら細胞を播種するために適切な温度を使用できないことにより、哺乳動物細胞の良くない増殖が引き起こされる。別のよくある問題は、たとえ顕微鏡下でも寒天培地中の沈殿を観察することが難しい点である。また沈殿サイズをタンパク質分泌のレベルに相関させることも難しい。
【0007】
組換えタンパク質生産には大量の組換えタンパク質を発現するクローン細胞株の生成が必要である。高生産体クローンの生成は、他のクローンに関するタンパク質を定量的に測定することができ、そして高生産体クローンを低生産体から効果的に分離できるアッセイが必要である。1つのアッセイにこれら2つの重要な特徴を有組み合わせることは困難であると認識されている。蛍光活性化セルソーター(FACS)およびHalo(米国特許出願第20050118652A1号明細書)法は両特徴を合わせているが、FACSには分離したクローンの生存率の低下が伴い、そしてHalo法はウサギ抗血清を使用し、これには選択した細胞株についてウサギのウイルスに関するさらなる試験が必要である。さらにHalo法は部分的な予測のみであり、大量のクローンのスクリーニングが必要かもしれない。別の広く使用されている手法では、クローンが最初に分離され、そして次にアッセイを使用して組換えタンパク質を定量する。
【0008】
したがって、これらおよび当該技術分野で知られている他の問題の1もしくは複数を克服し、かつ/または実質的に改良する、改善されかつ/または修飾されたスクリーニング法を提供する必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A−B】図1Aは代表的なハロー生産細胞の写真である。1Bは蛍光性プロテインAもしくはGハロー生産細胞を表す代表的な改善の写真である。図1:分泌されたタンパク質の蛍光性プロテインGに基づく検出アッセイの例。写真は11日目に取った。Alexa Fluor 488プロテインGの最終濃度は、16ug/mLである。左の写真は蛍光性コロニーを表し、一方、右の影像はすべてのコロニーを表す。非蛍光性コロニーは丸く囲まれる。
【図2A−B】図2Aは代表的なハロー生産細胞の写真である。2Bは蛍光性プロテインAもしくはGハロー生産細胞を表す代表的な改善の写真である。分泌されたタンパク質の蛍光性プロテインAに基づく検出アッセイの例。写真は11日目に取った。Alexa Fluor 488プロテインAの最終濃度は、13ug/mLである。左の写真は蛍光性コロニーを表し、一方、右の影像はすべてのコロニーを表す。非蛍光性コロニーは丸く囲まれる。
【図3】図3はバッチ振盪フラスコの増殖力価(overgrowth titer)と全蛍光との間の相関を示すグラフ表示である。
【図4A】図4Aは、各条件からの48コロニーのグラフ表示であり、増殖力価の測定に選択し、そして24ウェル培養に増幅した最高蛍光強度を示す。
【図4B】図4Bは、実施例2で450〜600mg/Lの範囲と測定された上位6つのサブクローン細胞株に関する24ウェルの増殖力価のグラフ表示である。
【図5A】図5Aは、24ウェル培養に増幅したクローンのグラフ表示である。24ウェルの増殖力値は0〜18mg/Lの範囲であった。
【図5B】図5Bは、24ウェルの増殖力価(titer overgrowth)のグラフ表示であり、ここで上位10の最高発現クローンを振盪フラスコの増幅に選択した。振盪フラスコ増殖力価の範囲は0〜120mg/L(MACH−1)の範囲であった。
【図6A】図6Aは、0〜65mg/L(65mg/Lを生産するアウトライヤークローンを含む)の範囲の24ウェル培養に増幅した48クローンの24ウェル増殖力価のグラフ表示である。
【図6B】図6Bは、0〜330mg/L((MACH−1)の範囲の上位10個の細胞株について測定されたバッチ振盪フラスコの増殖力価のグラフ表示である。
【発明の概要】
【0010】
発明の要約
本発明は、目的のポリペプチドを発現する哺乳動物細胞のクローンを同定し、かつ/または特性決定するために有用な改善された遺伝的スクリーニング法、関連する細胞およびその培養基に関する。この方法は蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなるメチルセルロースを使用して、目的のポリペプチドの高レベル発現について、組換え細胞を高処理でスクリーニングすることを可能とする。
【0011】
高生産性クローン(high−producing clone)を同定する手順が発明された。組換えタンパク質(プロテインAおよび/またはプロテインGに対する親和性を持つ)を発現している細胞は、蛍光性プロテインAもしくはプロテインGを含有する半固形培地にまかれた細胞コロニーの表面および周囲に蛍光を生じる。細胞コロニーおよびその周囲上の全蛍光は、分泌されたタンパク質の量に直接比例する。この手順は高生産体であるクローンを低生産体または親細胞と効果的に区別する能力を有する。故にこの方法は結果を損なうことなくスクリーニングの労力を減らす。
【0012】
1つの態様では、本発明は目的のポリペプチドを発現している高発現細胞クローンを選択する方法を提供し、この方法は(a)蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなり、そして目的の該ポリペプチドを発現している半固形培養基中で培養された細胞から、高発現細胞クローンを選択することを含んでなり、ここで蛍光性プロテインAもしくはGからの蛍光レベルは各細胞または細胞群について該ポリペプチドの相対的発現を示す。加えて本発明は、さらにそのような方法により同定された細胞クローンに関する。
【0013】
細胞は原核および真核細胞を含む任意の型であることができる。原核細胞には、限定するわけではないが細菌細胞または藍藻細胞を含むことができる。真核細胞には限定するわけではないが哺乳動物細胞、酵母細胞または昆虫細胞を含むことができる。好ましくは細胞は真核細胞である。好適な態様では、本発明に従い使用することができる適切な細胞株には、任意の形質転換または不死化哺乳動物細胞株がある。そのような細胞株には骨髄腫細胞株、例えばSp2/0,NSO,NS1,CHO,BHK,Ag653,P3X63Ag8.653細胞(ATCC寄託番号CRL−1580)およびSP2/0−Agl4細胞(ATCC寄託番号CRL−1851)、COS−1(例えばATCC CRL 1650),COS−7(例えばATCC CRL−1651),HEK293,BHK21(例えばATCC CAL−10),CHO(例えばATCC CRL 1610,CHO DXB−ll,CHO DG44),BSC−1(例えばATCC CAL−26)細胞株、HepG2細胞,P3X63Ag8.653,293細胞,HeLa細胞,NIH 3T3,CDS−1,CDS−7,NIH 273等、あるいはそれらから誘導される任意の細胞(B細胞、抗体生産細胞、単離またはクローン化脾臓細胞もしくはリンパ節細胞等を初めとするタンパク質生産細胞のような上記の細胞融合物を含む)がある。
【0014】
本発明はさらに目的のポリペプチドを単離する方法を提供し、この方法は上で述べた工程(a)に加えて、細胞クローンを回収および培養し;そしてそれらから目的のポリペプチドを単離することを含んでなる。さらに本発明はそのような方法により単離された少なくとも1つの目的のポリペプチドに関する。
【0015】
目的のポリペプチドは任意の適切な可溶性または膜結合ポリペプチドでよく、それらに
は例えば限定するわけではないが抗体、増殖因子、ホルモン、生物薬剤、受容体または合成の目的のポリペプチドまたはそれらの部分を含む。
【0016】
好適な態様では、目的のポリペプチドは診断用もしくは治療用タンパク質である。診断用もしくは治療用タンパク質は免疫グロブリン、サイトカイン、インテグリン、抗原、増殖因子、受容体またはその融合タンパク質、その任意のフラグメント、またはその任意の構造的または機能的類似体でよい。また診断用もしくは治療用タンパク質は細胞周期タンパク質、ホルモン、神経伝達物質、血液タンパク質、抗微生物剤、その任意のフラグメント、またはその任意の構造的または機能的類似体でよい。
【0017】
好適な態様では、本発明の方法を使用して選択された細胞クローンは、齧歯類または霊長類に由来する免疫グロブリンまたはそのフラグメントを生産することができる。あるいは免疫グロブリンまたはそのフラグメントはキメラまたは工作されてもよい。実際に、本発明はさらにヒト化、CDR移植化、ファージ提示型、トランスジェニックマウス生産型、至適化、突然変異化、無作為化または組換えられた免疫グロブリンまたはそのフラグメントを発現する細胞クローンを同定する方法を意図している。
【0018】
免疫グロブリンまたはそのフラグメントには、限定するわけではないがIgGl,IgG2,IgG3,IgG4,IgAl,IgA2,IgD,IgE,IgM,およびその任意の構造的または機能的類似体を含むことができる。具体的態様では、本発明の細胞、細胞株および細胞カルチャー中に発現される免疫グロブリンは、インフリキシマブ(infliximab)、キメラ抗−TNFアルファ抗体である。さらに本発明の方法を使用して単離される免疫グロブリンフラグメントには、限定するわけではないがF(ab’),Fab’,Fab,Fc,Facb,Fc’,Fd,Fvおよびその任意の構造的または機能的類似体を含むことができる。具体的態様では、免疫グロブリンフラグメントはアブシキシマブである。
【0019】
目的のポリペプチドはさらに限定するわけではないが抗原、サイトカイン、インテグリン、抗原、増殖因子、ホルモン、神経伝達物質、受容体またはその融合タンパク質、血液タンパク質、抗微生物剤、その任意のフラグメント、および前記の任意の構造的または機能的類似体を含むことができる。
【0020】
本発明の一態様では、目的のポリペプチドはインテグリンである。本発明により意図されるインテグリンの例には、限定するわけではないがα1,α2,α3,α4,α5,α6,α7,α8,α9,αD,αL,αM,αV,αX,αIIb,αIELb,β1,β2,β3,β4,β5,β6,β7,β8,α1β1,α2β1,α3β1,α4β1,α5β1,α6β1,α7β1,α8β1,α9β1,α4β7,α6β4,αDβ2,αLβ2,αMβ2,αVβ1,αVβ3,αVβ5,αVβ6,αVβ8,αXβ2,αIIbβ3,αIELbβ7,およびその任意の構造的または機能的類似体を含む。
【0021】
本発明の一態様では、目的のポリペプチドは抗原である。抗原は限定するわけではないがバクテリア、ウイルス、血液タンパク質、ガン細胞マーカー、プリオン、真菌およびその構造的または機能的類似体を含む多くの供給源に由来することができる。
【0022】
さらに別の態様では、目的のポリペプチドは増殖因子である。本発明で意図する増殖因子の例には限定するわけではないが、ヒト成長因子、血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、神経成長因子、絨毛性ゴナドトロピン、エリスロポエチン、アクチビン、インヒビン、骨形成タンパク質、トランスフォーミング増殖因子、インスリン−様増殖因子、およびその任意の構造的または機能的類似体を含む。
【0023】
さらに別の態様では、目的のポリペプチドはサイトカインである。本発明で意図するサイトカインの例には限定するわけではないが、インターロイキン、インターフェロン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、接着分子、アンギオゲニン、アネキシン、ケモカインおよびその任意の構造的または機能的類似体を含む。
【0024】
さらに別の態様では、目的のポリペプチドは成長ホルモンである。成長ホルモンには限定するわけではないが、ヒト成長ホルモン、プロラクチン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、黄体化ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、インスリン、プロインスリンおよびその任意の構造的または機能的類似体を含むことができる。
【0025】
さらに本発明は、本明細書に教示する方法を使用した神経伝達物質の発現に関する。神経伝達物質の例には限定するわけではないが、エンドロフィン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、バソプレッシン、ギラクチド、N−アセチルアスパルチルグルタメート、プレ−オピオメラノコルチン(pre−opiomelanocortin)由来ペプチド神経伝達物質、それらのアンタゴニストおよびそれらのアゴニストを含む。
【0026】
別の態様では、目的のポリペプチドは受容体または融合タンパク質である。受容体または融合タンパク質には限定するわけではないが、インターロイキン−1、インターロイキン−12、腫瘍壊死因子、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、トロンボポエチン、およびその任意の構造的または機能的類似体を含むことができる。
【0027】
あるいは組換え血液タンパク質を本発明の方法により単離することができる。そのような組換えタンパク質には限定するわけではないが、エリスロポエチン、トロンボポエチン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、フィブリノーゲン、ヘモグロビン、トランスフェリン、アルブミン、プロテインcおよびその任意の構造的または機能的類似体を含むことができる。
【0028】
別の態様では、目的のポリペプチドは組換え抗微生物剤である。本発明により意図される抗微生物剤の例には、例えばベータ−ラクタム、アミノグリコシド、ポリペプチド抗生物質およびその任意の構造的または機能的類似体を含むことができる。
【0029】
さらに本発明は、細胞増殖培地、蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなるゼラチン化剤を含んでなる半固形の捕捉培地を提供する。ゼラチン化剤は水性の細胞増殖培地に溶解した時に、細胞を培養するために適する温度下で半固形のゲルを形成する任意のポリマーであることができる。ゼラチン化剤は限定するわけではないが、寒天、アガロース、メチルセルロース、マトリゲル、コラーゲン、ゼラチンまたは他の類似物質から選択することができる。好ましくはゼラチン化剤は、メチルセルロースである。そのような本発明の培地組成および配合は、目的のポリペプチドと捕捉分子との間に形成される沈殿のハローを監視することにより、目的のポリペプチドを発現する細胞の同定を可能とし、この検出は蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなるゼラチン化剤を使用することにより強化される。したがって本発明は特異的な培地、組成およびその作成および使用法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の説明
多くの一般に使用されている哺乳動物発現系では、安定にトランスフェクトされた細胞のクローニングが時間と労力を要する工程となる。多くの場合、組換えタンパク質生産での無作為な変化により、高生産体について数百、あるいは数千ものトランスフェクトされたクローンがスクリーニングされる。本発明は目的のポリペプチドを高レベルで生産する
クローンをスクリーニングするための改善された、迅速な方法に関する。この方法は、目的のポリペプチドに結合した時、蛍光を発する蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなる半固形の検出または捕捉培地中で、結合した蛍光性プロテインAまたはプロテインG、受容体および/またはリガンドと目的のポリペプチドとの間に形成される蛍光に基づく。
【0031】
例えば組換えタンパク質を発現する細胞が、蛍光性プロテインAもしくはプロテインGを含有するメチルセルロース培地中に播かれた場合、蛍光を細胞コロニー上およびそれらの周囲で見ることが可能である。細胞コロニー上およびそれらの周囲での蛍光性プロテインAまたはプロテインGの濃度は、細胞コロニーから分泌されるタンパク質の量に直接比例する。プロテインAまたはプロテインGと分泌されたタンパク質との間の複合体形成は、組換えタンパク質生産細胞コロニーの周囲の遊離プロテインAまたはプロテインGの減少を導く。平衡は遊離プロテインAまたはプロテインGが細胞コロニーの周囲領域に自然に拡散することにより達成される。全体として、これは組換えタンパク質生産細胞コロニーの上または周囲に大量の蛍光性プロテインAまたはプロテインGを生じる。
【0032】
当該技術分野ではトランスフェクトされた細胞が長期間連続培養され続けると、あるいは培養中の細胞が単一細胞クローンから派生しなくなると、それらは再度クローン化される必要があるかもしれないことは周知である。本発明はまた、この目的を迅速に達成する方法も提供する。
【0033】
本発明の一つの態様では、目的のポリペプチドを発現している高発現細胞クローンを選択する方法を提供し、この方法は(a)蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなり、そして目的の該ポリペプチドを発現している半固形培養基中で培養された細胞から高発現細胞クローンを選択することを含んでなり、ここで該細胞は目的のポリペプチドと相互作用する蛍光性プロテインAもしくはGと接触するので、該蛍光レベルは各細胞または細胞群について該ポリペプチドの相対的発現を示す。好適な態様では、半固形捕捉培地がメチルセルロースまたは寒天に基づく。
【0034】
別の態様では、本発明は目的のポリペプチドを単離する方法を提供し、この方法は上で述べた(a)に加えて、細胞クローンを回収そして培養し;そしてそれらから目的のポリペプチドを単離する工程を含んでなる。
【0035】
目的のポリペプチド
本発明のポリペプチドには限定するわけではないが、免疫グロブリン、インテグリン、抗原、増殖因子、細胞周期タンパク質、サイトカイン、ホルモン、神経伝達物質、受容体またはその融合タンパク質、血液タンパク質、抗微生物剤、またはそのフラグメント、またはその構造的もしくは機能的類似体を含む。以下の記載は本発明の範囲を限定するものではなく、むしろ本発明の広さを具体的に説明する。
【0036】
例えば、本発明の一つの態様では、免疫グロブリンはヒトまたはヒト以外のポリクローナルまたはモノクローナル抗体に由来するものでよい。具体的にはこれらの免疫グロブリン(抗体)は、組換えおよび/または合成のヒト、霊長類、齧歯類、哺乳動物、キメラ、ヒト化またはCDR−移植化抗体、およびそれらに対する抗−イディオタイプ抗体でよい。またこれらの抗体は、様々な短縮化形態でも生産されることができ、この場合、抗体の種々の部分が遺伝子工学的技術を使用して一緒に連結される。ここで使用するような「抗体」、「抗体フラグメント」、「抗体バリアント」、「Fab」等は、限定するわけではないが、本発明の細胞培養で発現することができる重もしくは軽鎖のCDR、またはそのリガンド結合部分、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレイムワーク領域、あるいはそれらの任意の部分の少なくとも一つのような免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含んでなる任意のタンパク質−またはペプチド−含有分子である。そのよ
うな抗体は場合によりさらに、限定するわけではないがそのような抗体が少なくとも1つの標的活性もしくは結合、または受容体活性もしくは結合をin vitro,in situおよび/またはin vivoでモジュレートし、減少し、増加し、拮抗し、作用し、和らげ、軽減し、遮断し、阻害し、排除し、かつ/または妨害するような特異的リガンドに影響を及ぼす。
【0037】
本発明の一態様では、そのような抗体またはその機能的等価物は「ヒト」由来であることができるので、それらは実質的にヒトに非免疫原性である。これらの抗体は本明細書に記載するか、または当該技術分野で周知の方法を介して調製することができる。
【0038】
用語「抗体」はさらに抗体、消化フラグメント、特異的部分およびそのバリアント(抗体模倣物を含むか、または抗体もしくは特異的フラグメントもしくはその部分の構造および/または機能を模する抗体の部分を含んでなり、それらには単鎖抗体およびそのフラグメントを含む)を包含することを意図し、それらは本発明の細胞培養で発現される。このように本発明は生物学的分子(抗原または受容体のような)またはその部分に結合することができる抗体フラグメントを包含し、それらには限定するわけではないが、Fab(例えばパパイン消化による)、Fab’(例えばペプシン消化および部分的還元による)、およびF(ab’)(例えばペプシン消化による)、facb(例えばプラスミン消化による)、pFc’(例えばペプシンもしくはプラスミン消化による)、Fd(例えばペプシン消化、部分的還元および再凝集による)、FvもしくはscFv(例えば分子生物学技法による)フラグメントがある。例えば免疫学における現在の手法(Current
Protocols in Immunology)(Coligan et al.,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY1992−2007を参照にされたい)。
【0039】
本発明の細胞クローンで発現される目的のポリペプチドの性質および供給源は、限定されない。以下ものは、本明細書における教示に従って用いることができる種々のタンパク質、ペプチドおよび生物学的分子の一般的な考察である。これらの記載は、本発明の範囲を限定する働きをせず、むしろ本発明の幅を具体的に説明する。
【0040】
従って、本発明の一つの態様は、1つもしくは複数の増殖因子を含むことができる。簡潔に言えば、増殖因子は、細胞増殖および/もしくは分化を活性化するという主要な結果を有する、細胞表面上の受容体に結合するホルモンもしくはサイトカインタンパク質である。多数の増殖因子は非常に多用途であり、多数の異なる細胞型において細胞分裂を刺激し;一方、あるものは特定の細胞型に特異的である。以下の表1は幾つかの因子を提示するが、包括的もしくは完全であるものではなく、より一般的に既知である因子およびそれらの主要活性の幾つかを紹介するものである。
【0041】
【表1−1】

【0042】
【表1−2】

【0043】
本発明に従って製造することができる追加の増殖因子には、アクチビン(Vale et al.,321 Nature 776(1986);Ling et al.,321 Nature 779(1986))、インヒビン(米国特許第4,737,578号;同第4,740,587号明細書)および骨形成タンパク質(BMP)(米国特許第5,846,931号明細書;Wozney,Cellular & Molecular Biology of Bone 131−167(1993))を含む。
【0044】
上記に説明する増殖因子に加えて、本発明は他のサイトカインを標的とするかもしくは使用することができる。主として白血球から分泌され、サイトカインは体液性および細胞性免疫応答の両方、ならびに食細胞の活性化を刺激する。リンパ球から分泌されるサイトカインはリンホカインと呼ばれ、一方、単球もしくはマクロファージにより分泌されるものはモノカインと呼ばれる。サイトカインの多くのファミリーが、体の様々な細胞により生産される。リンホカインの多くは白血球により分泌されるだけではないので、インターロイキン(IL)としても知られており、造血起源の細胞を標的とする増殖因子である。同定されたインターロイキンのリストは増え続ける。例えば、米国特許第6,174,995号;同第6,143,289号明細書;Sallusto et al.,18 Annu.Rev.Immunol.593(2000);Kunkel et al.,59 J.Leukocyto Biol.81(1996)を参照されたい。
【0045】
本発明に包含される追加の増殖因子/サイトカインには、ヒト成長ホルモン(HGH)、卵胞刺激ホルモン(FSH、FSHαおよびFSHβ)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG、HCGα、HCGβ)、uFSH(尿性卵胞性刺激ホルモン)、ゴナトロピン放出ホルモン(GRH)、成長ホルモン(GH)、黄体形成ホルモン(LH、LHα、LHβ)、ソマトスタチン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン(TSH、TSHα、TSHβ)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)のような下垂体ホルモン、副甲状腺ホルモン、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、またはその構造もしくは機能性類似体が包含される。これらのタンパク質およびペプチドの全ては、当該技術分野において既知である。
【0046】
またサイトカインファミリーには、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子およびインターフェロンも包含される。例えば、Cosman,7 Blood Cell(1996);Gruss et al.,85 Blood 3378(1995);Beutler
et al.,7 Annu.Rev.Immunol.625(1989);Aggarwal et al.,260 J.Biol.Chem.2345(1985);Pennica et al.,312 Nature 724(1984);R&D Systems,Cytokine Mini−Reviews,http://www.rndsystems.comを参照されたい。
【0047】
いくつかのサイトカインを以下の表2で簡単に紹介する。
【0048】
【表2−1】

【0049】
【表2−2】

【0050】
【表2−3】

【0051】
本明細書に記述する本発明により製造することができる興味深い他のサイトカインには、接着分子(R&D Systems,Adhesion Molecule I(1996),http://www.rndsystems.comで);アンギオジェニン(米国特許第4,721,672号明細書;Moener et al.,226 Eur.J.Biochem.483(1994));アネキシンV(Cookson et
al.,20 Genomics 463(1994);Grundmann et al.,85 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 3708(1988);米国特許第5,767,247号明細書);カスパーゼ(米国特許第6,214,858号明細書;Thornberry et al.,281 Science 1312(1998));ケモカイン(米国特許第6,174,995号;同第6,143,289号明細書;Sallusto et al.,18 Annu.Rev.Immunol 593(2000)Kunkel et al.,59 J.Leukocyte Biol.81(1996));エンドセリン(米国特許第6,242,485号;同第5,294,569号;同第5,231,166号明細書);エオタキシン(米国特許第6,271,347号明細書;Ponath et al.,97(3)J.Clin.Invest.604−612(1996));Flt−3(米国特許第6,190,655号明細書);ヘレグリン(米国特許第6,284,535号明細書;同第6,143,740号;同第6,136,558号;同第5,859,206号;同第5,840,525号明細書);レプチン(Leroy et al.,271(5)J.Biol.Chem.2365(1996);Maffei et al.,92 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 6957(1995);Zhang Y.et al.(1994)Nature 372:425−432);マクロファージ刺激タンパク質(MSP)(米国特許第6,248,560号;同第6,030,949号;同第5,315,000号明細書);神経栄養因子(米国特許第6,005,081号;同第5,288,622号明細書);プレイオトロフィン/ミッドカイン(PTN/MK)(Pedraza et al.,117 J.Biochem.845(1995);Tamura et al.,3 Endocrine 21(1995);米国特許第5,210,026号明細書;Kadomatsu et al.,151 Biochem.Biophys.Res.Commun.1312(1988));STATタンパク質(米国特許第6,030,808号;同第6,030,780号明細書;Darnell
et al.,277 Science 1630−1635(1997));腫瘍壊死因子ファミリー(Cosman,7 Blood Cell(1996);Gruss
et al.,85 Blood 3378(1995);Beutler et al.,7 Annu.Rev.Immunol.625(1989);Aggarwal
et al.,260J.Biol.Chem.2345(1985);Pennica et al.,312 Nature 724(1984))が包含される。
【0052】
本発明はまた、一般に血漿中を循環しそして凝血および血栓溶解を調節するために重要である膨大な一群のタンパク質の総称である血液タンパク質に影響を及ぼすために用いる
こともできる。例えば、Haematologic Technologies,Inc.,HTI CATALOG、www.haemtech.comを参照されたい。表3は、限定されない様式で本発明により意図される血液タンパク質のいくつかを紹介する。
【0053】
【表3−1】

【0054】
【表3−2】

【0055】
【表3−3】

【0056】
【表3−4】

【0057】
【表3−5】

【0058】
【表3−6】

【0059】
【表3−7】

【0060】
【表3−8】

【0061】
本明細書において意図される追加の血液タンパク質には、以下のヒト血清タンパク質が包含され、これらはまたタンパク質の別のカテゴリー(ホルモンもしくは抗原のような)にも分類され得る:アクチン、アクチニン、アミロイド血清P、アポリポタンパク質E、B2−ミクログロブリン、C−反応性タンパク質(CRP)、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)、補体C3B、セルロプラスミン(Ceruplasmin)、クレアチンキナーゼ、シスタチン、サイトケラチン8、サイトケラチン14、サイトケラチン18、サイトケラチン19、サイトケラチン20、デスミン、デスモコリン3、FAS(CD95)、脂肪酸結合タンパク質、フェリチン、フィラミン、グリア線維酸性タンパク質、グリコーゲンホスホリラーゼアイソザイムBB(GPBB)、ハプトグロブリン、ヒトミオグロビン、ミエリン塩基性タンパク質、ニューロフィラメント、胎盤ラクトゲン、ヒトSHBG、ヒト甲状腺ペルオキシダーゼ、受容体関連タンパク質、ヒト心筋トロポニンC、ヒト心筋トロポニンI、ヒト心筋トロポニンT、ヒト骨格筋トロポニンI、ヒト骨格筋トロポニンT、ビメンチン、ビンキュリン、トランスフェリン受容体、プレアルブミン、アルブミン、アルファ−1−酸性糖タンパク質、アルファ−1−抗キモトリプシン、アルファ−1−抗トリプシン、アルファ−フェトプロテイン、アルファ−1−ミクログロブリン、ベータ−2−ミクログロブリン、C−反応性タンパク質、ハプトグロブリン、ミオグロブリン、プレアルブミン、PSA、前立腺酸性ホスファターゼ、レチノール結合タンパク質、チログロブリン、甲状腺ミクロソーム抗原、チロキシン結合グロブリン、トランスフェリン、トロポニンI、トロポニンT、前立腺酸性ホスファターゼ、レチノー
ル結合グロブリン(RBP)。これらのタンパク質の全ておよびその供給源は、当該技術分野において既知である。これらのタンパク質の多くは、例えば、リサーチダイアグノスティック社(Research Diagnostics,Inc.)(フランダース、ニュージャージー州)から市販されている。
【0062】
また本発明の細胞クローンは、神経伝達物質もしくはその機能性部分を発現することができる。神経伝達物質は、ニューロンにより作られそしてそれらが神経を分布する他のニューロンもしくは非ニューロン細胞(例えば、骨格筋;心筋、松果体細胞)にシグナルを伝達するためにそれらにより用いられる化学物質である。神経伝達物質は、それらの発生ニューロンが興奮する(すなわち、脱分極されるようになる)場合にシナプスに放出され、そして次にシナプス後細胞の膜の受容体に結合することによりそれらの効果を発揮する。これは、その膜を横切る特定のイオンのフラックスに変化をもたらし、神経伝達物質がたまたま興奮性である場合には細胞を脱分極するようする可能性が高く、もしくはそれが抑制性である場合には可能性が低い。神経伝達物質はまた、シナプス後細胞における他のシグナル伝達分子(「二次メッセンジャー」)の生産を調節することによりそれらの効果をもたらすこともできる。例えばCOOPER,BLOOM & ROTH,THE BIOCHEMICAL BASIS OF NEUROPHARMACOLOGY(第7版、オックスフォード大学出版(7th Ed.Oxford Univ.Press.)NYC,1996);http://web.indstate.edu/thcme/mwking/nervesを参照されたい。本発明において意図される神経伝達物質には、アセチルコリン、セロトニン、γ−アミノ酪酸塩(GABA)、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グリシン、ヒスタミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、アデノシン、ATP、一酸化窒素、およびプレ−オピオメラノコルチン(POMC)由来のもののようなペプチド性神経伝達物質のいずれか、ならびに前述のいずれかのアンタゴニストおよびアゴニストが包含されるがこれらに限定されるものではない。
【0063】
多数の他のタンパク質もしくはペプチドは、本明細書に記述するように標的としてもしくは標的結合部分の供給源として役立つことができる。表4は、本発明の標的として役立つか、もしくはその機能性誘導体の供給源として役立つことができるいくつかの薬理活性ペプチドの限定されないリストおよび説明を提示する。
【0064】
【表4−1】

【0065】
【表4−2】

【0066】
【表4−3】

【0067】
【表4−4】

【0068】
【表4−5】

【0069】
【表4−6】

【0070】
【表4−7】

【0071】
【表4−8】

【0072】
【表4−9】

【0073】
慢性関節リウマチの病因には2つの枢要のサイトカイン、IL−1およびTNF−αがある。それらは相乗的に作用して他のサイトカイン、COX−2を互いに誘導する。研究
では、IL−1が主に慢性関節リウマチ患者の骨および関節の破壊の主要なメディエーターであるのに対し、TNF−αは炎症の主要メディエーターと思われることを示唆する。
【0074】
本発明の好適な態様では、目的のポリペプチドが腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、炎症促進性サイトカインに結合する。2001年8月21日に発効された米国特許第6,277,969号明細書;2000年7月10日に発効された米国特許第6,090,382号明細書。抗−TNFα抗体は治療薬として大変有望であることが示された。例えばセントコール社(モルヴァン、ペンシルバニア州)からREMICADE(商標)として市販されているインフリキシマブが、クローンおよび慢性関節リウマチのような幾つかの慢性自己免疫疾患の処置に使用された。Treacy,19(4)Hum.Exp.Toxicol.226−28(2000);またChantry,2(1)Curr.Opin.Anti−Inflammatory Immunomodulatory Invest.Drugs 31−34(2000);Rankin et al.,34(4)Brit.J.Rheumatology 334−42(1995)を参照されたい。好ましくは目的のポリペプチドのTNFα結合部分の露出したアミノ酸は、ヒトのまたはヒト化アミノ酸配列のようにヒトで最少の抗原性を持つものである。これらのペプチド同一性は、上記のようにライブラリーをスクリーニングすることにより、ヒトのアミノ酸配列をマウスに由来するパラトープ(Siegel et al.,7(1)Cytokine 15−25(1995);1992年7月9日に公開された国際公開第WO 92/11383号パンフレット)、またはサルに由来するパラトープ(1993年2月4日に公開された国際公開第WO 93/02108号パンフレット)ヘ移植することにより、あるいはキセノマウス(xenomice)(1996年10月31日に公開された国際公開第WO 96/34096号パンフレット)を使用することにより作成することができる。あるいはマウスに由来する抗−TNFα抗体が効力を現した。Saravolatz et al.,169(1)J.Infect.Dis.214−17(1994)。
【0075】
あるいは抗体から誘導する代わりに、目的のポリペプチドのTNFα結合部分は、TNFα受容体から誘導してもよい。例えばエタネルセプトは組換えの可溶性TNFα受容体分子であり、皮下に投与され、そして患者血清中のTNFαに結合し、それを生物学的に不活性にする。エタネルセプトは、ヒトIgG1のFc部分に結合したヒト75キロダルトン(p75)の腫瘍壊死因子受容体(TNFR)の細胞外リガンド結合部分からなる二量体の融合タンパク質である。エタネルセプトのFc成分はC2ドメイン、C3ドメインおよびヒンジ領域を含むが、IgG1のC1ドメインは含まない。エタネルセプトは組換えDNA技法によりチャイニーズハムスター卵巣(CHO)哺乳動物細胞発現系で生産される。これは934個のアミノ酸からなり、そして約150キロダルトンの見かけ上の分子量を有する。エタネルセプトは、イムネックス社(Immunex Corp)(シアトル、ワシントン州)により製造されたENBREL(商標)として得ることができる。エタネルセプトは慢性関節リウマチに効力がある。Hughes et al.,15(6)BIODRUGS 379−93(2001)。
【0076】
p55と同定されたヒトTNF受容体の別の形態も存在する。Kalinkovich
et al.,J.Inferon & Cytokine Res.15749−57(1995)。この受容体も治療での使用に調査されてきた。例えばQian et al.118 Arch.Ophthalmol.1666−71(2000)を参照にされたい。可溶性p55TNF受容体の以前の製剤は、ポリエチレングリコールと結合され[r−metHuTNFbp PEG化二量体(TNFbp)]、臨床的効力を示したが、多回投与での薬剤の排除が増す抗体の発生により慢性的適用には適さなかった。第2世代の分子はTNFbpの抗原性エピトープを除去するように設計され、そして慢性関節リウマチの患者の処置に有用となり得る。Davis et al.,Ann.Euro
pean Cong.Rheumatology,Nice,France(June 21−24 2000)で報告。
【0077】
IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)は、慢性関節リウマチにおいてIL−1αおよびIL−1βの破壊的影響のバランスを取ることにより抗炎症特性を示すが、いかなる細胞内応答も誘導しない自然に存在するサイトカインアンタゴニストである。したがって本発明の好適な態様では、目的のポリペプチドはIL−1Raまたはその構造的または機能的類似体を含んでなる。IL−1Raの2種の構造的バリアント:単球、マクロファージ、好中球および他の細胞から分泌される17−kDa形(sIL−1Ra)、ならびにケラチノサイトおよび他の上皮細胞の細胞質、単球および繊維芽細胞中に留まる18−kDa形(icIL−1Ra)が存在する。IL−1Raのさらなる16−kDa細胞内アイソフォームが好中球、単球および肝細胞に存在する。IL−1Raの両主要アイソフォーム形は、交互に第1エキソンの使用を介して同じ遺伝子から転写される。IL−1Raの生産は癒着性IgG、他のサイトカインおよび細菌性もしくはウイルス成分を含む多くの物質により刺激される。マウスでのIL−1Raの組織分布は、sIL−1Raが主に末梢血細胞、肺、脾臓および肝臓に見いだされ、一方icIL−1Raは皮膚に大量に見いだされることを示す。トランスジェニックおよびノックアウトマウスでの実験では、IL−1Raが内毒素誘導型損傷に対する宿主防御に重要であることを示す。IL−1Raは肝細胞により生産され、急性期タンパク質の特徴を持つ。内因性IL−1Raはヒト自己免疫および慢性炎症疾患で生産される。中和する抗−IL−1Ra抗体の使用により、内因性IL−1Raは関節炎、大腸炎および肉芽腫性肺疾患で重要な天然の抗炎症性タンパク質であることが証明された。IL−1Raで6カ月間処置された慢性関節リウマチの患者は、臨床的パラメーターおよび関節傷害のX線撮影結果に改善を表した。Arend et al.,16 Ann.Rev.Immunol.27−55(1998)。
【0078】
本発明の細胞クローンにより発現され得るIL−1Raのさらに別の例は、インターロイキン−117.3 Kd met−IL1raと呼ばれる組換えヒトバージョン、またはアムジェン(Amgen:サンフランシスコ、カリフォルニア州)により生産され、そしてKINERET(商標)という名前のAnakinraである。Anakinraは、慢性関節リウマチの患者を含む臨床試験でも可能性を示した(the 65th Ann.Sci.Meeting of Am.College Rheumatology.Nov.12,2001で報告された)。
【0079】
本発明の別の態様において、本発明の細胞クローンにより発現される目的のポリペプチドはインターロイキン12(IL−12)またはそのアンタゴニストである。IL−12は、ジスルフィド結合した35および40kDのグリコシル化ポリペプチド鎖からなるヘテロ二量体サイトカインである。このサイトカインは樹状細胞、単球、マクロファージ、B細胞、ランゲルハンス細胞およびケラチノサイト、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞を含む抗原提示細胞により合成、そして分泌される。IL−12は様々な生物学的プロセスを媒介し、そしてNK細胞刺激因子(NKSF)、T細胞刺激因子、細胞傷害性T−リンパ球成熟因子およびEBV−形質転換B−細胞株因子と呼ばれてきた。Curfs
et al.,10 Clin.Micro.Rev.742−80(1997)。インターロイキン−12は細胞(例えばT細胞、NK細胞)の形質膜上に発現するIL−12受容体に結合することができ、これにより生物学的プロセスを改変する(例えば開始または防止する)。例えばIL−12のIL−12受容体への結合は、前活性化T細胞およびNK細胞の増殖を刺激することができ、細胞傷害性T細胞(CTL)、NK細胞およびLAK(リンホカイン活性化キラー)細胞の細胞溶解活性を強化し、T細胞およびNK細胞によるガンマインターフェロン(IFN GAMMA)の生産を誘導し、そしてナイーブなTh0細胞のTh1細胞(IFN GAMMAおよびIL−2を生産する)への分化
を誘導する。Trinchieri,13 Ann.Rev.Immunology 251−76(1995)。特にIL−12は細胞溶解性細胞(例えばNK,CTL)の生成、および細胞性免疫応答(例えばTh1細胞媒介型の免疫応答)の増大に極めて重要である。このようにIL−12は防御免疫(例えば感染の根絶)および病理学的免疫応答(例えば自己免疫)の両方の生成および調節に極めて重要である。Hendrzak et
al.,72 Lab.Investigation 619−37(1995)。したがって免疫応答(例えば防御または病理学的)は、例えば抗体によりインビボでIL−2の生物学的活性を操作することにより強化、抑制または防止することができる。
【0080】
本発明の別の態様では、目的のポリペプチドはインテグリンを含んでなるか、またはそれを標的とする。インテグリンは脈管形成プロセスと結び付き、これにより腫瘍細胞は腫瘍に栄養および酸素を提供し、老廃物を運び出す新たな血管を形成し、そして腫瘍細胞の遠位部位への転移の導管として作用する、Gastl et al.,54 Oncol.(1997)。インテグリンはヘテロ二量体の膜貫通タンパク質であり、これは細胞外マトリックス(ECM)への細胞接着に重要な役割を果たし、次いで細胞内シグナリングを介して細胞の生存、増殖および移動を媒介する。脈管形成中、活性化された内皮細胞の表面上に発現した多くのインテグリンは、種々のECMタンパク質との重要な接着性相互作用を調節して、細胞の移動、増殖および分化といった異なる生物学的出来事を調節する。具体的には緊密に関連するが異なるインテグリンであるaVb3およびaVb5が脈管形成プロセスで独立した経路を媒介することが示された。αVβ3に対して生成された抗体が、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)誘導型の新脈管形成を遮断し、一方、αVβ5に特異的な抗体は血管内皮増殖因子誘導型(VEGF−誘導型)の新脈管形成を阻害した。Eliceiri et al.,103 J.Clin.Invest.1227−30(1999);Friedlander et al.,270 Science 1500−02(1995).
【0081】
本発明の別の好適な態様では、目的のポリペプチドは少なくとも1つの糖タンパク質IIb/IIIa受容体アンタゴニストを含んでなる。さらに詳細には血小板凝集の最終的な必須段階は、フィブリノーゲンの活性化膜結合糖タンパク質複合体GP IIb/IIIaへの結合である。トロンビン、コラーゲン、エピネフリンまたはADPのような血小板アクチベーターが、組織損傷の結果として生成じる。活性化中、GP IIb/IIIaはコンフォメーションに変化を受け、これがフィブリノーゲンへの不顕性の結合部位を露出させる。フィブリノーゲン中にはGP IIb/IIIaに対して6つの推定される認識部位があり、したがってフィブリノーゲンは隣接する血小板上で交差するGP IIb/IIIa分子に対する6価のリガンドとして作用する可能性がある。フィブリノーゲンまたはGP IIb/IIIaのいずれかの欠損は、血小板を活性化するために使用されるアゴニストにかかわらず正常な血小板の凝集を妨げる。フィブリノーゲンのその血小板受容体への結合は正常な凝集の必須成分であるので、GP IIb/IIIaは抗血栓薬の魅力的な標的である。
【0082】
GP IIb/IIIaインヒビターの臨床試験からの結果は、この仮説を支持する。GP IIb/IIIa受容体を遮断するモノクローナル抗体7E3のFabフラグメントは、高リスクの血管形成術集団に効果的な治療となることが示された。これは処置した冠状動脈が突然閉塞する高いリスクがある患者の急性心虚血性合併症を防ぐために、経皮経管的冠動脈形成術またはアテレクトミーの補助として使用された。7E3はIIb/IIIa受容体およびαβ受容体の両方を遮断するが、それが血小板凝集を阻害する能力はそのIIb/IIIa受容体結合インヒビターとしての機能にあるとされてきた。IIb/IIIa受容体アンタゴニストは、限定するわけではないが抗体、抗体のフラグメント、ペプチドまたは有機分子であることができる。例えば標的−結合部分は7E3(糖タンパク質IIb/IIIa受容体アンタゴニスト活性を持つ抗体)に由来することがで
きる。7E3はc7E3(アブシキシマブとして知られているFabフラグメント。ペンシルバニア州、モルヴァンのセントコール社により生産されているREOPRO(商標)として市販されていることが知られている)の親抗体である。アブシキシマブは接着性受容体GPIIb/IIIaおよびαβに結合し、そして阻害し、血小板凝集およびトロンビン生成の阻害を導き、続いて血栓の形成を防止する。米国特許第5,976,532号、同第5,877,006号、同第5,770,198号明細書;Coller,78 Throm Haemost.730−35(1997);Jordan et al.,in Adhesion Receptors as Therapeutic Targets 281−305(Horton,ed.CRC Press,New York,1996);Jordan et al.,in New Therapeutic Agents in Thrombosis & Thrombolysis(Sasahara & Loscalzo,eds.Marcel Kekker,Inc.New York,1997)。
【0083】
さらに本発明の細胞クローンにより発現された糖タンパク質IIb/IIIa受容体アンタゴニストは、血栓溶解性物質を含んでなることができる。例えば血栓溶解物質はtPAまたはその機能的変形でよい。セントコール社(モルヴァン、ペンシルバニア州)により生産されるRETAVASE(商標)は、延長された半減期を持つバリアントtPAである。マウスでは、RetavaseとIIb/IIIa受容体アンタゴニストであるc7E3 Fabとの組み合わせが、肺塞栓症の溶解を顕著に増大させた。仮特許出願第60/304409号明細書を参照されたい。
【0084】
あるいは本発明の方法は、非ペプチド分子を分泌する細胞クローンを同定するために使用できる。例えば天然のシグナリング分子は、受容体に化学的な影響を及ぼす内因性化合物である。多くの薬理学的に活性な薬剤が、自然なシグナル分子の作用を模すること(アゴニスト)、あるいは自然なシグナル分子の作用を遮断すること(アンタゴニスト)のいずれかにより細胞受容体レベルに作用する。非限定的例として、チロフィバン(tirofiban)塩酸塩は、血小板凝集を阻害する血小板糖タンパク質IIb/IIIa受容体の非ペプチドアンタゴニストである。2000年9月12日に発効された米国特許第6,117,842号明細書を参照にされたい。チロフィバンはメルク社(Merk & Co Inc.)(ホワイトハウス ステーション、ニュージャージー州)からAGGRASTAT(商標)として市販され、バクスターヘルスケア社(Baxter Healthcare Corp)(ディアフィールド、イリノイ州)およびベンヴェーニューラボ(Ben Venue Labs)(ベッドフォード、オハイオ州)により製造されている。チロフィバンの構造を以下に具体的に説明し、ここでXはΨAb構造を形成できる官能基であるか、またはそれを含む。Xの位置は、置換が親構造の幾らかの活性を保持する分子上のこれら任意の芳香族部位で選択され、そして図に表す位置に限定されない。
【0085】
【化1】

【0086】
本発明の細胞クローンにより発現される目的のポリペプチドは、受容体またはそのフラグメント、および活性化受容体、すなわち対応する受容体に会合するリガンドを模する組換えペプチドまたはそのフラグメントも含む。これらの複合体は活性化受容体を模するこ
とができ、したがって特定の生物学的活性に影響を及ぼす。活性化−受容体部分の例は、エリスロポエチン(Epo)受容体のペプチド模倣物に関係する。背景として、EpoのEpo受容体(EpoR)への結合は、成熟赤血球細胞の生産に重要である。Epoに結合した活性化EpoRは二量体である。例えばConstantinescu et al.,98 PNAS 4379−84(2001)を参照にされたい。自然な状態では、二量体中の第1のEpoRが高親和性でEpoに結合し、一方、第2のEpoR分子は低親和性で複合体に結合する。二価の抗−EpoR抗体は恐らくEpoRの二量体化によりEpoRを活性化すると報告された。さらにEpo分子とは何ら配列相同性が無い小さい合成ペプチドもEpoの生物学的効果を模することができるが、親和性はより低い。それらの作用メカニズムは、恐らくEpoRの二量体を生成する能力に基づくのだろう。したがって本発明の態様は、活性化EpoR模倣物を発現する細胞クローンの同定法および特性決定法を提供する。
【0087】
別の好適な態様では、本発明の方法は抗微生物剤またはその部分を分泌する細胞クローンを同定するために使用でき、それらには抗バクテリア剤、抗ウイルス剤、抗カビ・菌剤、抗マイコバクテリア剤(antimycobacterial agent)および抗寄生虫剤がある。抗バクテリア剤には限定するわけではないが、ベータラクタム(ペニシリンおよびセファロスポリンのような)、アミノグリコシド(ゲンタマイシンのような)、マクロライド(エリスロマイシンのような)、フルオロキノロン類、メトロニダゾール、スルホンアミド、テトラサイクリン、トリメトロプリンおよびバンコマイシンがある。抗カビ・菌剤には限定するわけではないがアンホテリシン、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾールおよびケトコナゾールがある。抗寄生虫剤には限定するわけではないが、イベルメクチン、メベンダゾール、メフロキン、ペンタミジン、プラジカンテル、ピリメタミンおよびキニンがある。抗ウイルス剤には限定するわけではないが、アシクロビル、アマンタジン、ジダノシン、ファンシクロビル、フォスカルネット、ガンシクロビル、リマタンジン、スタブジン、ザルシタビンおよびジドブジンがある。抗マイコバクテリア剤には限定するわけではないが、イソニアジド、リファンピン、ストレプトマイシン、ダプソンがある。Sanford et al.,Guide to Antimicrobial Therapy(25th ed.,Antimicrobial Therapy,Inc.,Dallas,Tex.1995).
【0088】
本発明の方法は特定の抗原を発現する細胞クローンを同定かつ/または特性決定するためにも使用できる。抗原とは広い意味で、抗体またはその機能的フラグメントに結合する任意の分子を含むことができる。そのような抗原は病原体に由来し、そしてMHCクラスIまたはMHCクラスII反応のいずれかと関連する。これらの抗原はタンパク質様であることができ、または多糖、糖タンパク質のような炭水化物、または脂質を含むことができる。炭水化物および脂質抗原は、正常ヒト血液細胞および外来の細菌細胞壁またはウイルス膜を含むすべての種類の細胞表面上に存在する。核酸もタンパク質と結合した時に抗原性となり得、したがって本発明に包含される抗原の範囲内に含まれる。オンラインでhttp://www.whfreeman.com/immunologyにて見ることができるSears,Immunology(W.H.Freeman & Co.and Sumanas,Inc.,1997)を参照にされたい。例えば抗原はウイルス、バクテリア、マイコプラズマ、菌類、寄生体のような病原体に由来することができ、あるいは毒素のような他の外来物質に由来することができる。そのようなバクテリア抗原は、炭疽菌(Bacillus anthracis)、バシラス テタニー(Bacillus tetani)、百日咳菌(Bordetella pertusis)、ブルセラ属菌(Brucella spp.)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェリシュ菌(Clostridium perfringens)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、野兎病菌(Francisella
tularensis)、癩菌(Mycobacterium leprae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、肺炎連鎖球菌(Streptocccus pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、シゲラ属菌(Shigella spp.)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningiditis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ペスト菌(Yersinia pestis)、コレラ菌(Vibrio cholerae)を含むか、またはそれらに由来することができる。多くはこれら微生物の外側細胞壁の多糖構造が優れた防御免疫を可能とするが、その効果のためには適切な担体に結合しなければならない。
【0089】
本発明の範囲内のウイルスおよびウイルス抗原には、限定するわけではないがHBeAg、B型肝炎コア、B型肝炎表面抗原、サイトメガロウイルスB、HIV−1 gag、HIV−1 nef、HIV−1 env、HIV−1 gp41−1、HIV−1 p24、HIV−1 MN gp120、HIV−2 env、HIV−2 gp 36、HCV コア、HCV NS4,HCV NS3,HCV p22 ヌクレオカプシド、HPV L1 カプシド、HSV−1 gD、HSV−1 gG、HSV−2 gG、HSV−II、インフルエンザA(H1N1)、インフルエンザA(H3N2)、インフルエンザB、パラインフルエンザウイルス1型、エプスタインバーウイルスカプシド抗原、エプスタインバーウイルス、ポックスウイルス科大痘瘡(Poxviridae Variola major)、ポックスウイルス科小痘瘡(Poxviridae Variola minor)、ロタウイルス、風疹ウイルス、RSウイルス、梅毒スピロヘータの表面抗原、流行性耳下腺炎ウイルス抗原、水痘−帯状疱疹ウイルス抗原およびフィロウイルス科を含む。
【0090】
トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、およびトキソプラスマ(Toxoplasma gondii)のような他の寄生病原体も本発明の範囲に含むことができる。多くの細菌およびウイルス、および他の微生物が生成する抗原は、リサーチダイアグノスティック社(Research Diagnostics)(フランダース、ニュージャージー州)のような供給元から市販されている。
【0091】
本発明の範囲のトキシン、トキソイドまたはその抗原性部分のいずれかは、ジフテリアトキシン、破傷風トキシン、ボツリントキシンおよびエンテロトキシンBのようにバクテリアにより生産されるものを含み;トウゴマ(Ricinus cummunis)に由来するリシントキシンのような植物により生産されるものを含む。真菌により生産される本発明に役立ち得るマイコトキシンには、ジアセトキシスシルペノール(DAS)、ニバレノール(Nivalenol)、4−デオキシニバレノール(DON)およびT−2トキシンがある。他の生物により生産されるか、またはそれらに由来する他のトキシンおよびトキソイドも本発明の範囲に含むことができる。
【0092】
ベクター
好適な態様では、本発明の細胞クローンは少なくとも1つの目的のポリペプチドを検出可能な量で発現する。様々な哺乳動物発現ベクターを使用して本発明の細胞クローン中に目的のポリペプチドを発現することができる。発現ベクターは好ましくは、しかし任意に少なくとも1つの選択可能なマーカーを含む。そのようなマーカーには、真核細胞培養には例えば限定するわけではないがメトトレキセート(MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR、米国特許第4,399,216号;同第4,634,665号;同第4,
656,134号;同第4,956,288号;同第5,149,636号;同第5,179,017号明細書)、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、マイコフェノール酸、またはグルタミンシンセターゼ(GS、米国特許第5,122,464号;同第5,770,359号;同第5,827,739号明細書)耐性、ならびに大腸菌(E.coli)および他のバクテリアまたは原核生物を培養するにはテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性遺伝子を含む(上記特許は全部、引用により本明細書に編入する)。
【0093】
適切なベクターは当業者には明白である。例えば本発明に適切となり得る市販の哺乳動物発現ベクターには、限定するわけではないがpMAMneo(クロンテック、パロアルト、カリフォルニア州)、pcDNA3(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州)、pMClneo(ストラタジーン、ラジョラ、カリフォルニア州)、pXTI(ストラタジーン、ラジョラ、カリフォルニア州)、pSG5(ストラタジーン、ラジョラ、カリフォルニア州)、EBO−pSV2−neo(ATCC,マナッサス、バージニア州、ATCC No.37593)、pBPV−1(8−2)(ATCC No.37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC No.37224)、pRSVgpt(ATCC No.]37199)、pRSVneo(ATCC No.37198)、pSV2−dhfr(ATCC No.37146)、pUCTag(ATCC No.37460)および17D35(ATCC No.37565)がある。
【0094】
目的の少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸は、当該技術分野で周知な幾つかの方法の1つにより導入することができ、その方法には限定するわけではないがリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介型トランスフェクションおよびカチオン性脂質媒介型トランスフェクションを含むトランスフェクション、エレクトロポレーション、超音波、形質導入、形質転換およびウイルス感染があるが、これらに限定されるわけではない。そのような方法は、当該技術分野で記載されており、例えばSamsrook et al.,Molecular Cloning:a Lab Manual,3rd edition,Cold Spring Harbor,NY(2001);Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987−2007)を参照にされたい。
【0095】
宿主細胞株
本発明の宿主細胞は原核もしくは真核細胞、それらの融合細胞、例えば限定するわけではないがバクテリア細胞、藍藻細胞、酵母細胞、カイコ細胞、植物細胞、昆虫細胞、両生類細胞、魚類細胞、鳥類細胞、哺乳動物細胞またはそれらの誘導体、不死化または形質転換細胞から選択される少なくとも1つであることができる。好ましくは細胞は真核細胞である。より詳細には細胞は哺乳動物細胞である。
【0096】
好適な態様では、本発明の方法に従い使用できる適切な細胞株には、任意の形質転換した、または不死化哺乳動物細胞株である。宿主細胞は場合により、骨髄腫細胞、例えば限定するわけではないがSp2/0,NSO,NS1,CHO,BHK,Ag653,P3X63Ag8.653(ATCC寄託番号CRL−1580)およびSP2/0−Agl4(ATCC寄託番号CRL−1851),COS−1(例えばATCC CRL−1650),COS−7(例えばATCC CRL−1651),HEK293,BHK21(例えばATCC CAL−10),CHO(例えばATCC CRL−1610,CHO DXB−l l,CHO DG44),BSC−1(例えばATCC CAL−26),HepG2,293,HeLa,NIH 3T3,CDS−1,CDS−7,NIH
273、またはリンパ腫細胞、あるいはそれらの任意の誘導体、不死化もしくは形質転換細胞から選択される少なくとも1つであることができる。好適な細胞株はC463Aで
あり、これはSp2/0から誘導され、そしてトランスフェクション用宿主として使用できる。引用により全部、本明細書に編入する米国特許出願第60/339428号明細書、国際公開第WO2003051720号および同第WO993052964号パンフレットを参照にされたい。
【0097】
本明細書で使用する用語「コロニー(単数)」または「コロニー(複数)」は、細胞数または全直径により規定されることができ、これは研究者により測定される。典型的にはコロニーは少なくとも40または50個の細胞を有するが、わずか30個以下の場合もある。所定の細胞型がコロニーと呼ばれる決定的な細胞サイズまたは数に達するために要するインキュベーション時間は細胞型間で変動するが、典型的には7〜14日の間のインキュベーション期間を要し、細胞がゆっくり成長する場合はさらに長い期間を要する。直径が基準を定めるものとして使用される場合、コロニーの多くは10〜20、20〜30、30〜40、40〜50ミクロンまたはその範囲またはその中の任意の値のような10〜50ミクロンと定められる。
【0098】
培地
上記の宿主細胞について適切な培養基および条件は、当該技術分野で知られている。多くの種類の増殖培地が市販されており、例えば限定するわけではないが、イスコフ改変培地、ダルベッコ改変イーグル培地、RPMI、Ham’s F10、Ham’s F12、最少必須培地およびアルファ培地などがある。増殖培地に加えて、インビトロでの細胞培養には、多くの増殖因子が成長を促進または生存能力を維持するために必要である。成長因子は例えば5〜10%のウシ胎児血清(FBS)が細胞の成長およびタンパク質の生産を促進するために補充される。しかし細胞増殖培地には無血清(0〜0.5%の血清を含む)または血清低減(0.5〜5.0%の血清を含む)培地がある。
【0099】
哺乳動物細胞の増殖を支持するために、種々の成分、例えば限定するわけではないが、グルタミン、グルコース、ビタミン、アミノ酸および増殖因子を培養基に加えることができる。亜鉛、鉄、セレン、銅、モリブデンおよびマンガン等の微量元素は、無血清培地のストリンジェント条件で哺乳動物細胞のクローニングおよび連続継代に重要である。あるいは細胞増殖培地には、1もしくは複数の栄養が欠けている欠失培地がある。増殖培地は、特定の細胞型の成長を促進するように設計された特別培地も含む。
【0100】
成長培地は付加的に抗生物質、多くの種類の足場依存性細胞の付着および広がりを促進するために通常加えられるアタッチメントおよびマトリックス因子を加えることができる。バッファーもpHレベルを維持するために増殖培地に加えることができる。そのようなバッファーには、限定するわけではないがMOPS、HEPES、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、Trisまたは他の既知のバッファーがある。
【0101】
さらに化学的に規定された培地(CDM)を本発明に使用することができる。CDMは特定の化合物、アミノ酸、脂質、炭水化物、微量元素および/またはビタミンを提供し、そして明らかではない動物由来原料、例えば限定するわけではないがプリマトン(primatone)、アルブミンおよびExcyte(商標)、ならびに血清に由来する他の類似物質または他の動物由来タンパク質もしくは生成物の使用を排除する。そのような培地は細胞を成長させて、工業的に有用な量の所望のタンパク質をそのような細胞培養で発現させる。CDMの利点の中には限定するわけではないが、より良いタンパク質生産、工業的に適し、費用に対して効果が高く、かつ/またはその中で成長する細胞株が生産するタンパク質に対する規定問題を減ずるという点を含む。CDMの詳細な組成および配合に関しては、例えば限定するわけではないが、引用により全部、本明細書に記載する国際公開第WO2002066603号パンフレットを参照にされたい。
【0102】
本明細書で使用する用語「半固形培地」とは、細胞が付着する固体支持体を提供せず、そして半固形培地に加えられた細胞がその中で懸濁されるために十分粘稠であり、そしてこれにより細胞が半固形培地を介して沈むこと、および接触すること、および半固形培地が分配されている容器の内面に付着することを防ぐ細胞増殖培地を指す。半固形培地は細胞をその場に保持するので、単一細胞または個々のコロニーの連続観察が可能となる。そのような半固形培地は、陽性クローンの検出および回収を強化するためにさらに蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなる。
【0103】
本発明の実施に有用な半固形培地は典型的には、水性媒質中に0.1%〜5.0%(重量/容量)、例えば0.1〜0.5%、0.5〜1.0%、1.0〜1.5%、1.5〜2.0%、2.0〜2.5%、2.5〜3.0%、3.0〜3.5%、3.5〜4.0%、4.0〜4.5%、4.5〜5.0%またはその範囲もしくはその中の任意の値の量で溶解されたゼラチン化剤を含む。好適な半固形培地は、細胞の増殖を維持できるものである。ゼラチン化剤の非限定的例は、寒天、アガロース、メチルセルロース、または本発明の目的に適する任意の他のポリマーを含む。
【0104】
半固形培地の1つの種類は、室温より上または細胞をインキュベーションするために必要な温度より上で液体を形成し、そして室温または細胞がインキュベーションされる温度で半固形またはゲルを形成する。例えば寒天は、紅藻類(Rhodophyceae)の藻のアガロサイト(agarocyte)から抽出された乾燥した粘滑性物質として一般に定義される一種の多糖複合体である。寒天を生じる属には限定するわけではないが、テングサ属(Gelidium)、オゴノリ属(Gracilaria)、ユイキリ属(Acanthopeltis)、イギス属(Ceramim)、オバクサ属(Pterocladia)等がある。寒天は約100℃で融解し、そして約40℃でゲル固まる。これはほとんどのバクテリアにより消化されない。アガロースは修飾された寒天であり、これにより糖、メチル基および他の化学基は、低ゲル化温度のような望ましい物理的特性を強化するために、寒天に化学的に結合される。
【0105】
さらにゼラチン化剤には、限定するわけではないが、タンパク質およびそれらの誘導体を含む広範なポリマーを本発明の半固形マトリックスとして使用できる。Matrigel(商標)、コラーゲンまたはゼラチン、あるいは他の類似物質も半固形マトリックスとして使用できる。
【0106】
メチルセルロース(セルロースメチルエーテル)は、セルロースエーテルとして知られている化合物に属する。セルロースエーテルは、塩基、典型的には水酸化ナトリウムおよび不活性な希釈剤の存在下で、精製したセルロースとアルキル化剤(メチルクロライド)の反応により製造される。塩基を水と組み合わせて加えると、結晶構造を破壊し、そしてアルキル化剤への接近を増すことによりセルロースマトリックスを活性化し、そしてエーテル化反応を促進する。この活性化マトリックスは、アルカリセルロースと呼ばれている。メチルセルロースは木材パルプまたはケミカルコットン(chemical cotton)からアルカリでの処理、そしてメチルエーテル基を付加する塩化メチルでのアルカリセルロースのメチル化により調製される。反応は:
cellOH:NaOH + CHCl → RcellOCH + NaCl
により特徴付けることができる。
【0107】
メチルセルロースの1つの重要な特性は、その可逆的な熱によるゲル化である:メチルセルロースは冷水に溶解性であるが、熱水には不溶性である。水溶液は熱水(しかし沸騰はしていない)中に細粒を撹拌しながら分散させ、そして+5℃に冷却することにより最も良く調製される。無機塩の存在は粘度を上げる。室温でメチルセルロース溶液は安定で
あり、そして半固形ゲル形に留まる。これは適切な成長培地と混合した時、哺乳動物細胞の増殖を支持する。メチルセルロースの粘度は細胞の凝集を防止する。一つの態様では、半固形捕捉培地中のメチルセルロースの最終濃度は1%である。別の態様では、最終濃度は約0.7%である。培地中のメチルセルロースの量が低いほど、捕捉分子のより良い拡散が可能となり、したがって検出感度が上がる。
【0108】
あるいはプレミックスしたメチルセルロースに基づく半固形培地が市販されており、それらには限定するわけではないが、ClonaCell(商標)−TCSおよびMethCult(商標)培地(ステムセル テクノロジーズ:StemCell Technologies)、Stemline(商標)メチルセルロース培地(シグマ−アルドリッチ:Sigma−Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)がある。
【0109】
メチルセルロースの付加は多くは赤血球前駆細胞を培養する時に使用される。抗生物質耐性クローンをスクリーニングし、そして選択するためのメチルセルロースの応用は記載され、そして市販されており、例えばテクニカルマニュアルClonalCell(商標)−TCS、トランスフェクトされた細胞の選択キット、ステムセルテクノロジーズを参照にされたい。
【0110】
捕捉分子
本明細書で使用するように、用語「捕捉分子」は蛍光性プロテインAまたはプロテインGの蛍光を使用した検出を提供するために、場合によっては目的のポリペプチドを標識するために使用することができるが、目的のポリペプチドに結合、またはそれと反応することができ、そして顕微鏡下で見ることができるハロー様の沈殿を形成する分子を称する。有力な捕捉分子には限定するわけではないが、目的のポリペプチドの受容体もしくはリガンド、目的のポリペプチドに対する抗体もしくは抗原等を含む。したがって、本明細書で使用する用語「捕捉培地」は、少なくとも1つの捕捉分子が包含される半固形の細胞増殖培地を指し、そしてこれはさらに検出を強化する蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなる。
【0111】
捕捉分子は、培地をプレートに注ぐ前にそれを培地と混合することにより、あるいは捕捉分子を含有する培地層で孔のあるプレートを重層することにより半固形培地に直接加えることができる。捕捉分子はさらに放射標識、蛍光標識または当該技術分野で知られている他の方法により標識されて、沈殿の検出を促進することができる。例えば捕捉抗体は蛍光標識され、そして半固形分子に加えられる。目的のポリペプチド(すなわち抗原)に結合すると、抗原−抗体複合体は蛍光顕微鏡下で容易に観察でき、そして目的のポリペプチドを発現している細胞クローンを同定することができる。
【0112】
一つの態様では、捕捉分子は目的のポリペプチドに対する抗体である。使用する捕捉抗体の最終濃度は、0.0225〜0.045,0.045〜0.0675,0.0675〜0.09,0.09〜0.1125,0.1125〜0.135,0.135〜0.1575,0.1575〜0.18,0.18〜0.2025,0.2025〜0.225mg/mlまたはその間の範囲もしくは値のような0.0225〜0.225mg/mlとなり得る。好適な態様では、捕捉抗体の最終濃度は、0.1125mg/mlである。一般に捕捉分子の濃度が低いほど、目的のポリペプチドを高レベルで発現している細胞クローンを選択することによる検出感度は上昇する。
【0113】
前記方法の一つの変形ではこの方法は、捕捉分子と結合または反応し、そして沈殿を形成する能力についてスクリーニングされる候補タンパク質分子の集団をコードするcDNAライブラリーのような核酸ライブラリーをスクリーニングするために使用される。cDNAライブラリーはトランスフェクションまたは形質導入のような当該技術分野で周知の
手段により細胞に導入される。細胞は半固形培地、好ましくはメチルセルロースに基づく培地で培養され、ここに捕捉分子が加えられる。回りに沈殿したハローが観察されるコロニーを単離し、そしてさらに試験することができる。沈殿物ハローの形成の原因となった補足結合/相互作用分子を同定し、そして単離するために、外来DNAがそのようなコロニーから引き出される。
【0114】
目的のポリペプチドの単離
一つの態様では、細胞クローンが同定された後、このクローンは回収され、そして培養で増幅され、そして目的のポリペプチドが当該技術分野で確立された技術を使用してそれらから単離される。目的のポリペプチドは好ましくは分泌されるポリペプチドとして培養基から回収される。第1工程として、培養基が遠心されて特定の細胞屑が取り出される。その後、ポリペプチドは混入している溶解性タンパク質およびポリペプチドから、例示される以下の適切な精製手順を用いて精製される:イムノアフィニティまたはイオン交換カラムでの分別;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEのようなカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;ゲル濾過等。フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)のようなプロテアーゼインヒビターも精製中にタンパク質溶解的分解を阻害するために有用となり得る。さらに目的のポリペプチドは、限定するわけではないがヘキサヒスチジン(HA)タグのようなマーカー配列にインフレイムで融合でき、これにより目的のポリペプチドの精製が可能となる。
【0115】
また本発明の方法は、G−タンパク質共役受容体(GPCR)および他の膜貫通タンパク質を発現している細胞クローンの同定にも有用である。これらのタンパク質は膜画分の一部として精製されるか、あるいは当該技術分野で既知の方法により膜から精製されることができる。
【0116】
利点
本発明では、目的のポリペプチドを生産している細胞が、目的のポリペプチドに結合した蛍光性プロテインAもしくはGの量の相対的蛍光の形成を参照にすることにより、あるいは場合によってはポリペプチドに結合し、そして蛍光性プロテインAもしくはプロテインGにも結合するポリペプチド捕捉分子を使用して同定することができる。当業者には本発明の利点の一つは、この方法がELISAのような従来のスクリーニング法に通常必要とされる中間工程を排除する点であることは明らかである。さらに高レべル生産体が蛍光を参照にして同定できる。したがって本発明は、主として定量的であるELISAのような通例の方法とは対照的に、簡易ではあるが有力な定量的かつ/または定性的スクリーニング法を提供する。したがって本発明の方法は多数の細胞を調査する主要なスクリーニング法として使用でき、そして使う労力およびかかる時間が少なくて済む。
【0117】
また当業者にはこの方法がロボットスクリーニングに、および高レベルの目的の生産物を生産している細胞の高処理選択のプロトコールに使用できることが明白であろう。
【0118】
本発明の好適な態様は、以下の実施例に関して記載され、これらは具体的説明として提供され、そして限定を意図していない。以下に例示するこの態様では、選択はキメラ抗−TNF抗体cA2と捕捉抗体であるウサギ抗−ヒトIgG(H&L)との間で形成される免疫沈殿物(ハロー)により視覚的に監視でき、同時にcA2の生産レベルはハローのサイズと相関する。
【実施例】
【0119】
実施例1:捕捉抗体を含むメチルセルロースに基づく半固形捕捉培地の調製
IMDM,EMDM,CD CHO,CD Hybridomaのような増殖培地中に
メチルセルロースを含有するプレメイド半固形マトリックス(4000cps)が市販されている。例えばステムセルテクノロジーズからのMethocultが以下の実験で使用された。
【0120】
半固形捕捉培地は、1mlの捕捉抗体(2mg/ml)を13mlのメチルセルロース培地に加えることにより調製した。細胞懸濁液をFBS、L−グルタミンおよび追加の増殖培地と一緒に混合物に加えて20mlの最終容量とした。この実施例では、成分の最終濃度は1%メチルセルロース、30% FBSおよび2mM L−グルタミンである。具体的な細胞株に適切な他の濃度は本発明の範囲内にあると容易に理解される。
【0121】
この作業混合物を適切な容器に入れ(50mlのコニカル遠心管のような)、そして30秒間混合、または激しくボルテックス処理した。混合後、試験管を室温に5〜10分間静置して気泡を消失させた。捕捉培地中の20mlの細胞を、6ウェルプレートに均一に分配した。プレートを37℃のCOインキュベーター中で撹乱せずに7〜10日間インキュベーションした。次いでプレートを検査のために取り出した。
【0122】
このアッセイの感度は、捕捉抗体の濃度および半固形捕捉培地を作成するために使用するメチルセルロースの量を変えることにより至適化することができる。より低い捕捉抗体濃度、およびより少ないメチルセルロースの組み合わせにより、日常的により良い検出感度がもたらされる。
【0123】
実施例2:蛍光性プロテインA/Gに基づく分泌抗体検出アッセイを使用した抗体生産クローンの同定
蛍光性プロテインA/Gに基づく分泌されたタンパク質の検出アッセイは、最初に組換え抗体(SM1.141.224)を発現している安定なCHO細胞株により例示された。これらの細胞を1:1の比率で非発現CHO宿主細胞と、ステムセルテクノロジーズからの通例のMethocult製剤(Cat.# M03999)(2.5%のメチルセルロースをダルベッコの改良イーグル培地(DMEM)中に含む)中で混合した。CHO宿主細胞は内部陰性対照として役立てた。Methocultは以下の表5に示すような追加の試薬を補充した。
【0124】
【表5】

【0125】
Alexa Fluor 488 プロテインA/Gの複数の濃度を、最適濃度を決定するために使用した。Alexa Fluor 488 プロテインAは3,5,7,9,11,および13ug/mLで使用し、一方Alexa Fluor 488 プロテインGは6,8,10,12,14および16ug/mLで試験した。すべての試薬を加
えた後、溶液を30秒間、激しく撹拌した。混合後、2mLの溶液を6ウェルプレートの各ウェルに加えた。プレートは静置(undisturbed)状態で7〜12日間、37℃で5% COにてインキュベーションした。8日間のインキュベーション後、蛍光顕微鏡を使用して蛍光を視覚化した。蛍光および白色光の像を顕微鏡に連結されたデジタルカメラで取り、蛍光および非蛍光コロニーを記録した。代表的な蛍光および白色光像を図1および図2に示す。細胞コロニー上または周囲の特異的な明緑色蛍光は、Alexa
Fluor 488 プロテインA/Gの存在下で明らかに見ることができた。幾つかの細胞はいかなる蛍光も現さなかった。非蛍光コロニーはいかなる抗体も分泌しない親のCHO細胞から生じたと予想される。これを確認するために、6個の蛍光および6個の非蛍光コロニーをプロテインAの実験から取り上げ、そして10個の蛍光および10個の非蛍光コロニーをプロテインGの実験から取り上げた。これらのコロニーはCD CHO 培地を含有する24ウェルプレートで増幅させ、そして増殖力価を決定した。IMMAGE装置(ベックマン コールター:Beckman Coulter)により測定した時、すべての蛍光コロニーが抗体を生産し、一方、非蛍光コロニーのいずれも抗体を生産しなかった。
【0126】
選択したコロニーからの蛍光強度と発現したタンパク質量との間の相関を決定するために、別の実験を行った。この実験は上記プロトコールを使用して、プロテインG(15ug/mL)および組換え抗体(SM1.141)を発現するCHO細胞株を用いて設定した。混合した溶液を4枚の100mm丸型培養皿にまいた(10mL容量)。プレートを静置状態で37℃で5% COにてインキュベーションした。13日のインキュベーション後、蛍光顕微鏡を使用して蛍光を視覚化した。全部で80個のコロニーが、25uM
MSXおよび1X GS補充物を含む100uLのCD CHO培地を含有する96ウェルプレート中で増幅した。各コロニーの蛍光写真は顕微鏡に連結したデジタルカメラを用いて取った。コロニー上または周囲の全蛍光は、国立衛生研究所のImageJソフトウェアプログラムを使用して定量した。選択したコロニーは、T25フラスコ中でバッチ振盪フラスコ培養で増幅させた。振盪フラスコ中で良好な増殖を示した64個のクローンを、10mLのCD CHO培地(25uM MSXおよび1X GS補充物を含む)に0.3X10細胞/mLで接種した。抗体力価は12日後にIMMAGE装置を使用して測定した。抗体力価および全蛍光は、Excel(マイクロソフト社:Microsoft Corporation)を使用してプロットして、相関を決定した(図3)。簡易定量(R)の係数は0.75である。より低い生産クローン(<650mg/LのAb)を排除すると、簡易定量の係数は0.88に近づく。これらのデータは全蛍光と力価との間の強い相関を示す。
【0127】
実施例2:細胞株を開発するための、無血清の動物成分を含まない蛍光性プロテインGスクリーニング法
蛍光性プロテインスクリーニング法は、無血清の動物成分を含まない条件を使用して行った。これらの実験の目的は、いかなる動物由来成分にも暴露せずに組換え治療用タンパク質を発現している候補細胞株を作成することであった。組換えタンパク質を発現するクローンは、無血清の動物成分を含まないメチルセルロースプレーティングから、蛍光性プロテインG抗体分泌検出アッセイを使用して、初代トランスフェクションおよび高発現親細胞株のサブクローニングの両方から単離した。
【0128】
無血清の動物成分を含まない条件を使用して、高発現サブクローン細胞を単離するための蛍光性タンパク質スクリーニングの使用
以前にGS遺伝子発現系(ロンザバイオロジックス:Lonza Biologics)を使用して作成したCNTO328(KJ3.4D4)を発現する親のCHOK1SV細胞株を、蛍光性プロテインG抗体分泌検出アッセイを使用してサブクローン化した。細胞は1000または2000細胞/mLの密度で、2x CD−CHOもしくは2x M
ACH−1のいずれかを補充したメチルセルロースにまいた(表6)。まいてからおよそ8〜12日目に、蛍光強度を顕微鏡により視覚化した。各条件から最高の蛍光強度をもつ約48個のコロニーを取り出し、そして増殖力価の測定に24ウェル培養で増幅させた(図4A)。最高の24ウェル力価を有する全部で6個のコロニーを、増殖力価の測定のために振盪フラスコ培養で増幅させた。重要なことは、これらの上位6個のサブクローン細胞株の力価は450〜600mg/Lの範囲と測定された点である(図4B)。以前に報告されたデータと比較して、親の細胞株から30%ウシ胎児血清を使用してウサギの検出抗体免疫沈降法を使用して作成された最高のサブクローン KJ3.4D4は570mg/Lに達した。
【0129】
【表6】

【0130】
無血清の動物成分を含まない条件を使用して、高発現親細胞株を単離するための蛍光性プロテインGスクリーニングの使用
宿主細胞株CHOK1SVは、GS CNTO1961(試験抗体に対するキメラ抗−イディオタイプ抗体)二重遺伝子プラスミドを用いてエレクトロポレーションにかけた。トランスフェクトされた細胞を回収し、そしてウシ胎児血清を含まないMACH−1で選択した。細胞は20,000もしくは40,000細胞/mLのいずれかの密度で、蛍光性プロテインG抗体分泌検出アッセイを使用してメチルセルロースにまいた。まいてからおよそ10〜12日に、蛍光強度を顕微鏡により視覚化した。20,000細胞/mLの密度で〜2〜5クローン/プレートが生じ、そして40,000細胞/mLの密度では〜10〜15クローン/プレートを生じた。まいてからおよそ12〜15日に、全部で48コロニーが蛍光強度にかかわらず96ウェルプレートに取り出された。すべのクローンが24ウェル培養に増幅された。24ウェル増殖力価は0〜18mg/Lの範囲であった(図5A)。24ウェル力価に基づき、上位10個の最高発現クローンを振盪フラスコでの増幅に選択した。振盪フラスコの増殖力価(overgrowth titer)は0〜120mg/Lの範囲であった(図5B)。同じトランスフェクトおよび選択した細胞を、30%のウシ胎児血清を含有するメチルセルロースにまき、そしてウサギの検出抗体免疫沈降法を使用してスクリーニングした。24ウェル培養で増幅した48クローンの力価は、65mg/Lを生産するアウトライアークローンを含め0〜65mg/Lの範囲であった(図6A)。上位10個の細胞株に関するバッチの振盪フラスコの増殖力価は、0〜330mg/Lの範囲であった(図6B)。
【0131】
まとめ
これらの実験は、完全に無血清の動物成分を含まない条件を使用して、抗体を生産する親クローンの同定および単離のために、蛍光性プロテインGスクリーニングアッセイの有
用性を証明する。さらに無血清の動物成分を含まない蛍光性プロテインG抗体分泌検出アッセイを使用したメチルセルロースでのサブクローニングは、ウサギの検出抗体免疫沈降法を使用して単離したものに匹敵する力価のサブクローンを生じた。
【0132】
利点
蛍光性プロテインA/Gに基づく分泌タンパク質検出アッセイは、組換えタンパク質生産コロニーの上および周囲の蛍光量が分泌したタンパク質に直接比例するので、高生産体クローンの検出および単離を可能にする。ウサギ抗体を使用する方法に比べて、この方法は検出試薬として組換えタンパク質を使用し、そして製造する細胞株についてウサギのウイルスに関して試験する必要を排除する。加えて、組換えプロテインA/Gは廉価であり、そしてロット毎の変動が組換えタンパク質試薬で低くなる。
【0133】
本発明は前記記載および実施例で特別に記載した以外にも実施することができることは明白である。本発明の多くの修飾および変更が上記教示に照らして可能であり、したがって添付する特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的とする少なくとも1つのポリペプチドを発現している高発現細胞クローンを選択する方法であって、検出のために使用する蛍光性プロテインAもしくはGを含んでなる半固形培養基中で培養され且つ目的の該ポリペプチドを発現している細胞から、少なくとも1つの高発現細胞クローンを選択することを含んでなり、ここで該蛍光性プロテインAもしくはGと相互作用する目的の該ポリペプチドを発現している該細胞に関して、結合した蛍光性プロテインAもしくはGの相対的蛍光は、各細胞または細胞群について相対的に高レベルの該蛍光が該ポリペプチドの相対的に高い発現を示す上記方法。
【請求項2】
上記相互作用が、上記ポリペプチドに結合した上記プロテインAまたはプロテインGの蛍光である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記相互作用が検出可能な標識による請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記検出可能な標識が蛍光性標識である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
半固形培養基がセルロースまたは寒天から選択されるゼラチン化剤を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
上記セルロースがメチルセルロースである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記細胞が真核細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記真核細胞が哺乳動物細胞、酵母細胞または昆虫細胞から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記哺乳動物細胞がCOS−1、COS−7、HEK293、HK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、293、NSO、DG44 CHO、CHO
K1、HeLa、骨髄腫もしくはリンパ腫細胞、またはそれらの任意の誘導体、不死化もしくは形質転換細胞から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項10】
上記細胞が原核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記原核細胞が細菌細胞または藍藻細胞である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記少なくとも1つの目的のポリペプチドが可溶性ポリペプチドである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
上記少なくとも1つの目的のポリペプチドが免疫グロブリンまたはその少なくとも1つの部分である請求項1に記載の方法。
【請求項14】
細胞が骨髄腫細胞であり、上記少なくとも1つの目的のポリペプチドが免疫グロブリンであり、捕捉分子が免疫グロブリンに対する抗体であり、そして半固形培養基がメチルセルロースに基づく請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法により生産される高発現細胞クローン。
【請求項16】
上記高発現細胞クローンが真核細胞である請求項15に記載の高発現細胞クローン。
【請求項17】
上記真核細胞が哺乳動物細胞、酵母細胞または昆虫細胞から選択される請求項16に記載の高発現細胞クローン。
【請求項18】
上記哺乳動物細胞がCOS−1、COS−7、HEK293、HK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、293、NSO、DG44 CHO、CHO
K1、HeLa、骨髄腫もしくはリンパ腫細胞、またはそれらの任意の誘導体、不死化もしくは形質転換細胞から選択される請求項17に記載の高発現細胞クローン。
【請求項19】
上記高発現細胞クローンの上記細胞が原核細胞である請求項15に記載の高発現細胞クローン。
【請求項20】
上記原核細胞が細菌細胞または藍藻細胞である請求項19に記載の高発現細胞クローン。
【請求項21】
上記少なくとも1つの目的のポリペプチドが可溶性ポリペプチドである請求項15に記載の高発現細胞クローン。
【請求項22】
上記少なくとも1つの目的のポリペプチドが免疫グロブリンまたは少なくとも1つのその部分である請求項21に記載の高発現細胞クローン。
【請求項23】
目的のポリペプチドを発現する高発現細胞クローンを同定するために使用される半固形培養基であって、該培地が細胞増殖培養基および蛍光性プロテインAもしくはGをさらに含んでなるゼラチン化剤を含んでなる、上記半固形培養基。
【請求項24】
上記ゼラチン化剤がセルロースまたは寒天から選択される請求項23に記載の半固形培養基。
【請求項25】
上記セルロースがメチルセルロースである請求項23に記載の半固形培養基。
【請求項26】
上記高発現細胞クローンが、上記高発現細胞株よりも低い上記目的タンパク質の発現を有する細胞に比べて、結合したプロテインAもしくはGの高い相対的蛍光により検出可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
上記少なくとも1つの目的のポリペプチドが、増殖因子、サイトカイン、血液タンパク質、神経伝達物質および薬理学的に活性なペプチドまたはそれらの任意の部分もしくは誘導体の少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
上記少なくとも1つの目的のポリペプチドが、増殖因子、サイトカイン、血液タンパク質、神経伝達物質、薬理学的に活性なペプチドから選択される少なくとも1つのアンタゴニストである請求項1に記載の方法。
【請求項29】
上記アンタゴニストが抗体、抗体融合物、抗体フラグメントまたはその部分の少なくとも1つから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記培地が動物性成分を含まない請求項1に記載の方法。
【請求項31】
上記培地が動物性成分を含まない請求項23に記載の半固形培養基。

【図1A−B】
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【図2A−B】
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【図3】
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【図4A−4B】
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【図5A−B】
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【図6A−6B】
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【公表番号】特表2010−523119(P2010−523119A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502211(P2010−502211)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/058561
【国際公開番号】WO2008/121757
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】