説明

蛍光性化合物及び蛍光性樹脂組成物

【課題】シリコーン樹脂との相溶性に優れ、簡便な方法で樹脂組成物をつくることができる蛍光性化合物及びこれを含有する蛍光性樹脂組成物を提供。
【解決手段】下記式(1)で表される蛍光性化合物。


〔R1〜R7は一価炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、水素原子、アミノ基、シアノ基、及び式(2)のシロキサン含有基から選択される置換基を表す。R1とR2、R2とR3、R4とR5、R5とR6はそれぞれ互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。但し、R1〜R7のうち少なくとも一つは、式(2)で表されるシロキサン含有基である。SX−A−(2)(SXはケイ素数2〜10のオルガノシロキサニル基で、ケイ素がAと結合している。Aは二価炭化水素基。Rは一価炭化水素基。)X1、X2は一価炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基又はハロゲン原子。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な蛍光性有機化合物及び蛍光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光性の発色団を有する有機化合物(以下、「蛍光性化合物」という)は、蛍光性の無機化合物に比べると安価であるため、蛍光性インクや蛍光顔料として紙、繊維、樹脂等の着色剤に使用されている。
【0003】
着色剤は、染料と顔料の二種に大別できる。顔料は、発色団を有する分子の凝集体であり、粒径が大きい。これに対して染料は、溶媒や樹脂等の媒体に溶解させることが可能な発色団含有分子である。一般的に顔料で着色した材料は染料で着色した材料に比べて着色剤の粒径が大きいので、透明性や明度、彩度において劣る。
【0004】
蛍光タグのように分子間で化学反応を行わせる場合を除くと、一般に蛍光性化合物は顔料として使用されることが多い。耐光性を向上させることがその理由の一つであるが、低極性の媒体に対する溶解度が低いことも別の理由として挙げられる。
【0005】
上記の理由により、蛍光化合物によって樹脂の着色を行うとき、アクリル樹脂やポリエステル樹脂のような比較的極性の高い樹脂の場合には染料を用いて行うことも可能であるが、ポリオレフィン樹脂やシリコーン樹脂のような極性の低い樹脂の場合には、染料の溶解性が低いために必然的に顔料を用いることとなる。顔料を用いて着色する場合、透明な樹脂組成物を得るためには、顔料を樹脂中で光の波長より小さい大きさに細かく砕きながら均一に分散させる必要があり、これは多くのエネルギーと時間を消費する工程である。
【0006】
極性の低い樹脂との相溶性を向上させる方法として、樹脂に蛍光性化合物を結合させる方法がある。例えば、特許文献1(特開2007−169535号公報)には、アミノシリコーン樹脂と蛍光性化合物を結合させたシリコーン樹脂が記載されている。
【0007】
代表的な蛍光性化合物として、ピロメテン錯体は強い蛍光を発することで知られており、蛍光材料、レーザー用色素、顔料などの電子材料として用いられる。
【0008】
例えば、ピロメテン錯体は高輝度、高発光効率の発光を得ることができるため、有機電界発光素子の発光材料として有用である(特許文献2,3:特開2005−53900号公報、特開2003−151773号公報)。また、液晶表示素子などに用いられるカラーフィルタを作成する方法の一つとして顔料分散法があり、ピロメテン錯体を顔料として用いる方法が記載されている(特許文献4:特開2002−40233号公報)。
【0009】
ピロメテン錯体に特定の構造を導入することで、有機溶剤に対する溶解性を向上させ、染料として利用する方法が提案されている(特許文献5:特開2009−31713号公報)。なお、特許文献3(特開2003−151773号公報)には、シロキサニル基を導入した化合物が挙げられている。
【0010】
しかし、特許文献1の方法では、未反応の蛍光性化合物の完全な除去が困難であり、保存中や使用中にこれが凝集して析出するため外観や光学特性が変化し、好ましくない。また、高分子であるために、分子量分布を有しており、分子ごとの化学構造が不均一であるため、蛍光性化合物を樹脂内部で均一に分散した状態にすることが難しい。更に、分子内に複数の蛍光性置換基が近接して存在している場合、エキシマー発光により色調が変化する可能性もある。
【0011】
また、特許文献2〜4の方法では、ピロメテン錯体は平面状の芳香族化合物であるため、π−π相互作用による分子間会合が起こりやすい。したがってピロメテン錯体を顔料として用いた場合、上述のように特に極性の低い樹脂に対しては相溶性が低く、顔料粒子が凝集してできる粗大粒子が色ムラを発生させる原因となり、着色剤として用いることは難しい。
【0012】
更に、特許文献5の方法では、ケトン、エステル、エーテル等の極性官能基を有する有機溶剤に対する溶解性は向上するものの、脂肪族炭化水素やシリコーン等の低極性溶剤への溶解性は改善されない。同様にシリコーン樹脂等の低極性の樹脂に対する相溶性も未だ不充分であり、使用できる樹脂が限定されていた。
【0013】
一方、特許文献3に挙げられているシロキサニル基を芳香環に直接導入した化合物は、シリコーン樹脂に対する相溶性は向上するものの十分な溶解性は得られず、更に合成が困難であるためスケールアップ上好ましくないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−169535号公報
【特許文献2】特開2005−53900号公報
【特許文献3】特開2003−151773号公報
【特許文献4】特開2002−40233号公報
【特許文献5】特開2009−31713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、有機溶媒への溶解性、及び樹脂又はプレポリマーやモノマーとの相溶性、特にシリコーン樹脂との相溶性に優れ、簡便な方法で樹脂組成物をつくることができる蛍光性化合物及びこれを含有する蛍光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する新規な蛍光性化合物を見出し、これを用いることによって上記課題が解決できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0017】
即ち、本発明は、下記蛍光性化合物及びそれを含有する樹脂組成物を提供する。
[I]下記一般式(1)で表される蛍光性化合物。
【化1】

〔式(1)において、R1〜R7は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、ハロゲン原子、水素原子、アミノ基、シアノ基、及び下記式(2)のシロキサン含有基から選択される置換基を表す。R1とR2、R2とR3、R4とR5、R5とR6はそれぞれ互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。但し、R1〜R7のうち少なくとも一つは、下記式(2)で表されるシロキサン含有基である。
【化2】

(式(2)において、Sxはケイ素原子数2〜10であって、該ケイ素原子に炭素数1〜20の一価炭化水素基が結合した直鎖状、分岐鎖状又は環状のオルガノシロキサニル基を表し、ケイ素原子がAと結合している。Aは1個以上の−O−、−S−、−NR−又はそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数1〜20の二価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基である。)
1、X2は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、又はハロゲン原子を示す。〕
[II]一般式(1)において、R7が式(2)で表される置換基である[I]記載の蛍光性化合物。
[III]一般式(1)において、R2、R5が式(2)で表される置換基である[I]又は[II]記載の蛍光性化合物。
[IV]一般式(1)において、R2、R5が共にエチル基又はtert−ブチル基であり、R7が式(2)で表される置換基である[I]又は[II]記載の蛍光性化合物。
[V][I]〜[IV]のいずれかに記載の蛍光性化合物及び樹脂を含有する蛍光性樹脂組成物。
[VI]樹脂が、シリコーン樹脂である[V]記載の蛍光性樹脂組成物。
[VII]下記一般式(3)で表されるオレフィン化合物と、下記一般式(4)で表されるSi−H基を有するシロキサン化合物を、白金触媒存在下で反応させることを特徴とする[I]記載の式(1)で表される蛍光性化合物の製造方法。
【化3】

(式(3)において、R8〜R14は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、ハロゲン原子、水素原子、アミノ基、シアノ基から選択される置換基を表す。R8とR9、R9とR10、R11とR12、R12とR13はそれぞれ互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。但し、R8〜R14のうち少なくとも一つは1個以上の−O−、−S−、−NR−又はそれらの組み合わせを含んでもよい末端に脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数2〜20の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基である。X1、X2は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、又はハロゲン原子を示す。)
【化4】

(式(4)において、Sxはケイ素原子数2〜10であって、該ケイ素原子に炭素数1〜20の一価炭化水素基が結合した直鎖状、分岐鎖状又は環状のオルガノシロキサニル基を表す。)
【発明の効果】
【0018】
本発明の蛍光性化合物は、水素結合ドナーとなるヘテロ元素−水素結合を含まず、有機溶媒や樹脂との相溶性に優れており、種々の媒体に均一に分散させることができるため、透明性や明度、彩度の高い蛍光性樹脂組成物が容易に得られる。また、分子量分布を持たない単一化合物であるため高純度まで精製することができ、蛍光効率が高い。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の蛍光性化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化5】

【0020】
式(1)において、R1〜R7は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜20、特に炭素数6〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、水素原子、アミノ基、シアノ基から選択される置換基を表す。
【0021】
一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基等の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、1−メチルプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基、アルキニル基等の不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基等のアリール基、アラルキル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらのなかでも、特にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ビニル基、アリル基、フェニル基が好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。アリーロキシ基の例としては、フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
【0022】
但し、R1〜R7のうち少なくとも一つは、下記式(2)で表されるシロキサン含有基である。
【化6】

【0023】
一般式(2)において、Sxはケイ素原子数2〜10、特にケイ素原子数2〜5であって、該ケイ素原子に炭素数1〜20、特に炭素数1〜6の一価炭化水素基、例えばアルキル基が結合している、直鎖状、分岐鎖状又は環状のオルガノシロキサニル基を表す。Sxはケイ素原子がAと結合しており、ケイ素−水素結合やケイ素−アルコキシ結合のような反応性の置換基を含まない。
【0024】
xの具体例としては、ペンタメチルジシロキサン−1−イル基、3,3,3−トリエチル−1,1−ジメチルジシロキサン−1−イル基、ペンタエチルジシロキサン−1−イル基、3−ビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、3−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、3,3,3−トリイソプロピル−1,1−ジメチルジシロキサン−1−イル基、1,1−ジフェニル−3,3,3−トリメチルジシロキサン−1−イル基、3−メチル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン−1−イル基、1−シクロヘキシル−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル基、ノナメチルテトラシロキサン−1−イル基、ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル基、トリデカメチルヘキサシロキサン−1−イル基、ペンタデカメチルヘプタシロキサン−1−イル基、ヘプタデカメチルオクタシロキサン−1−イル基、ノナデカメチルノナシロキサン−1−イル基、ヘンイコサメチルデカシロキサン−1−イル基等の直鎖状オルガノシロキサニル基;1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、1−トリメチルシロキシ−1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル基、1−ペンタメチルジシロキサニルオキシ−1,3,3,5,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1−イル基、1−トリメチルシロキシ−1,3,3,5,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン−1−イル基、1,1−ビス(トリメチルシロキシ)−3,3,3−トリメチルジシロキサン−1−イル基等の分岐鎖状オルガノシロキサニル基;1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル基、1,3,5,7−テトラメチル−3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン−1−イル基等の環状オルガノシロキサニル基等が挙げられる。これらのなかでも、特にペンタメチルジシロキサン−1−イル基、ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル基、ノナメチルテトラシロキサン−1−イル基、ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル基、1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル基、1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル基が好ましい。
【0025】
上記一般式(2)において、Aは1個以上の不連続な−O−、−S−、−NR−又はこれらの組み合わせを含んでもよい炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の二価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。
【0026】
Rは炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の一価炭化水素基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基等の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、1−メチルプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基、アルキニル基等の不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基等のアリール基、アラルキル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらのなかでも、特にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ビニル基、アリル基、フェニル基が好ましい。化合物中、複数のRが含まれることがあるが、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0027】
Aで表される基の例としては、メチレン基、1,2−エタンジイル基、1,1−エタンジイル基、1,2−エテンジイル基、1,1−エテンジイル基、1,3−プロパンジイル基、1,2−プロパンジイル基、2−メチル−1,3−プロパンジイル基、1,3−ブタンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基、1,4−シクロヘキサンジイル基、1,7−ヘプタンジイル基、1,8−オクタンジイル基、1,9−ノナンジイル基、1,10−デカンジイル基、1,11−ウンデカンジイル基、1,12−ドデカンジイル基、1,13−トリデカンジイル基、1,14−テトラデカンジイル基、1,15−ペンタデカンジイル基、1,16−ヘキサデカンジイル基、1,17−ヘプタデカンジイル基、1,18−オクタデカンジイル基、1,19−ノナデカンジイル基、1,20−イコサンジイル基等の直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族二価炭化水素基;1,3−ベンゼンジイル基、1,4−ベンゼンジイル基、2−メチル−1,4−ベンゼンジイル基、3−メチル−1,4−ベンゼンジイル基、2,5−ジメチル−1,4−ベンゼンジイル基、1,8−ナフタレンジイル基、2,7−ナフタレンジイル基、4−エチルベンゼン−1,2’−ジイル基、4−プロピルベンゼン−1,3’−ジイル基等の芳香族二価炭化水素基;2−オキサ−1,3−プロパンジイル基、3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基、3−オキサ−2−メチル−1,5−ペンタンジイル基、3−オキサ−1,6−ヘキサンジイル基、3−オキサ−2−メチル−1,5−ヘキサンジイル基、3−オキサ−2−メチル−1,6−ヘキサンジイル基、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基、3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基、3−メチル−3−アザ−1,5−ペンタンジイル基、3−メチル−3−アザ−1,6−ヘキサンジイル基、3−フェニル−3−アザ−1,6−ヘキサンジイル基、3−メチル−3−アザ−7−オキサ−1,9−ノナンジイル基、3−チア−1,5−ペンタンジイル基、3,6−ジチア−1,8−オクタンジイル基等のヘテロ原子を含む二価炭化水素基等が挙げられる。これらのなかでも、特にメチレン基、1,2−エタンジイル基、1,3−プロパンジイル基、2−メチル−1,3−プロパンジイル基、1,4−ブタンジイル基、1,5−ペンタンジイル基、1,6−ヘキサンジイル基、1,7−ヘプタンジイル基、1,8−オクタンジイル基、1,9−ノナンジイル基、1,10−デカンジイル基、1,11−ウンデカンジイル基が好ましい。
【0028】
一般式(2)において、Sx、Aは任意の組み合わせが可能である。Sxがペンタメチルジシロキサン−1−イル基である場合について例示すると、一般式(2)で表されるシロキサン含有基の具体例としては、ペンタメチルジシロキサン−1−イルメチル基、2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル基、1−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル基、2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エテニル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブチル基、5−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ペンチル基、6−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘキシル基、7−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘプチル基、8−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)オクチル基、9−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ノニル基、10−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)デシル基、11−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ウンデシル基、12−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ドデシル基、14−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)テトラデシル基、16−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘキサデシル基、18−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)オクタデシル基、20−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)イコシル基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェニル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェニル基、4−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチル]フェニル基、4−[3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]フェニル基、4−[2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル]フェニル基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}エチル基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロピル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エチル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロピル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}エチル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}エチル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}プロピル基等の置換炭化水素基;(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)メトキシ基、2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ基、2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブトキシ基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブトキシ基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェノキシ基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}エトキシ基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロポキシ基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}エトキシ基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}エトキシ基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}プロポキシ基、2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシ基、2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシ基、1−メチル−2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシ基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチルスルファニル}エトキシ基等の置換オルガノキシ基;(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)メトキシカルボニル基、2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシカルボニル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシカルボニル基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブトキシカルボニル基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)フェノキシカルボニル基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}エトキシカルボニル基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロポキシカルボニル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシカルボニル基、2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシカルボニル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}エトキシカルボニル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}エトキシカルボニル基、2−{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}プロポキシカルボニル基、2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシカルボニル基、2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシカルボニル基、1−メチル−2−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]エトキシカルボニル基、2−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エチルスルファニル}エトキシカルボニル基等の置換オルガノキシカルボニル基;(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)アセトキシ基、3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピオニルオキシ基、2−メチル−3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピオニルオキシ基、5−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ペンタノイルオキシ基、6−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘキサノイルオキシ基、11−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ウンデカノイルオキシ基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ベンゾイルオキシ基、{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}アセチル基、3−{2−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)エトキシ}プロピオニルオキシ基、{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}アセトキシ基、3−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロピオニルオキシ基、{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}エトキシ}アセトキシ基、{2−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロポキシ}プロポキシ}アセトキシ基、3−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]プロピオニルオキシ基、3−[N−メチル−N−{3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル}アミノ]プロピオニルオキシ基等の置換アシロキシ基が挙げられる。
【0029】
式(2)で示される基としては、Sxの好ましい例、Aの好ましい例を組み合わせて得られる基が好ましい。特に3−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)プロピル基、3−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)プロピル基、4−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ブチル基、4−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)ブチル基、3−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)ブチル基、4−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)ブチル基、4−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)ブチル基、4−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)ブチル基、5−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ペンチル基、5−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)ペンチル基、5−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)ペンチル基、5−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)ペンチル基、5−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)ペンチル基、5−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)ペンチル基、6−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘキシル基、6−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)ヘキシル基、6−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)ヘキシル基、6−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)ペンチル基、6−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)ヘキシル基、6−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)ヘキシル基、7−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ヘプチル基、7−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)ヘプチル基、7−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)ヘプチル基、7−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)ヘプチル基、7−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)ヘプチル基、7−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)ヘプチル基、8−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)オクチル基、8−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)オクチル基、8−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)オクチル基、8−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)オクチル基、8−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)オクチル基、8−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)オクチル基、9−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ノニル基、9−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)ノニル基、9−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)ノニル基、9−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)ノニル基、9−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)ノニル基、9−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)ノニル基、10−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)デシル基、10−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)デシル基、10−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)デシル基、10−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)デシル基、10−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)デシル基、10−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)デシル基、11−(ペンタメチルジシロキサン−1−イル)ウンデシル基、11−(ヘプタメチルトリシロキサン−1−イル)ウンデシル基、11−(ノナメチルテトラシロキサン−1−イル)ウンデシル基、11−(ウンデカメチルペンタシロキサン−1−イル)ウンデシル基、11−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)ウンデシル基、11−(1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン−1−イル)ウンデシル基がより好ましい。
【0030】
上記一般式(1)において、X1、X2は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜20、特に炭素数6〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子を示す。
【0031】
1、X2の一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基等の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、1−メチルプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基、アルキニル基等の不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基等のアリール基、アラルキル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。アリーロキシ基の例としては、フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
これらのなかでも、特にフッ素原子が好ましい。
【0032】
上記の一般式(1)における置換基R1とR2、R2とR3、R4とR5、R5とR6は、互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。この場合、一般式(1)の構造は、具体的には下式(1a)〜(1d)のように表される縮環構造を形成する。但し、環構造を形成する場合、下記式(1)においてR1a、R2a、R3a、R4aはそれぞれR1、R2、R3、R4から水素原子1個又は2個を除くことにより得られる二価又は三価の基である。
【0033】
【化7】

【0034】
上記一般式(1)で表される本発明の蛍光性化合物において、置換基R1〜R7のうち少なくとも一つは上記式(2)で表されるシロキサン含有基であるか、又はそれを置換基として含有する基である。従って、上記一般式(1)で表される化合物には、一つ以上の一般式(2)で表される基が含まれている。また、上記一般式(1)で表される蛍光性化合物には、水素結合ドナーとなるヘテロ原子−水素結合、例えば窒素−水素結合、酸素−水素結合等が含まれない。
【0035】
本発明の上記一般式(1)で表される蛍光性化合物は、シロキサン含有基を含むが、シロキサン部分は構造が明確に規定されており、分子量分布を有するシロキサン混合物ではない。従って、一般式(1)で表される化合物も混合物ではなく単一化合物である。組成物を製造する際には、蛍光発色団のモル濃度が組成物の蛍光特性を決定する重要な因子であるので、モル濃度を正確に決定するために単一化合物であることが望ましい。
【0036】
本発明の蛍光性化合物は、蛍光特性を最大に発揮させるためにできる限り高純度に精製することが望ましい。上述のように、一般式(1)の本発明の蛍光性化合物は単一化合物であるため、高純度まで精製することが可能である。精製方法としては、例えば通常の有機化合物と同様に、再結晶や晶析、溶媒による洗浄、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー等の方法が挙げられる。本発明の蛍光性化合物の純度は液体クロマトグラフィー法で95%以上が好ましく、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上である。不純物を多く含む場合には式(1)の化合物自体の蛍光特性が低下することがあり、また蛍光性樹脂組成物を製造する際に濁りが生じることがあるため組成物としても蛍光特性が低下する場合がある。液体クロマトグラフィー法による純度決定は、順相、逆相のいずれの条件でも可能である。順相では、例えばGLサイエンス社製Inertsil(登録商標)Diolカラムを、逆相では、例えばウォーターズ社製XBridge(登録商標)C18カラムを使用することができる。また、サイズ排除クロマトグラフィーも有効な方法であり、例えば東ソー社製TSK−GEL SuperHZ2000カラムを使用することができる。
【0037】
本発明の蛍光性化合物は、例えばピロメテン構造を公知の方法で形成した後に、シロキサン含有基を結合させることにより製造することができる。シロキサン含有基を結合させる方法としては、例えばSi−H結合を有するシロキサンを用いる脂肪族不飽和基へのヒドロシリル化反応が挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
本発明の一般式(1)で表される化合物の製造方法は、下記一般式(3)で表されるオレフィン化合物と、下記一般式(4)で表されるSi−H基を有するシロキサン化合物を、白金触媒存在下で反応させて製造する。
【0039】
【化8】

【0040】
式(3)において、R8〜R14は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20、特に炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜20、特に炭素数6〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、水素原子、アミノ基、シアノ基から選択される置換基を表す。R8とR9、R9とR10、R11とR12、R12とR13は、それぞれ互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。
【0041】
一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、イソペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基等の飽和炭化水素基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、1−メチルプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基、アルキニル基等の不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−tert−ブチルフェニル基等のアリール基、アラルキル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらのなかでも、特にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ビニル基、アリル基、フェニル基が好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。アリーロキシ基の例としては、フェノキシ基、p−メチルフェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。アミノ基の例としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
【0042】
但し、R8〜R14のうち少なくとも一つは、末端に脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数2〜20の一価炭化水素基で、−O−、−S−、−NR−もしくはそれらの組み合わせを含んでもよい。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基である。置換基中に複数のRが含まれることがあるが、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0043】
これらの具体例としては、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基、1−メチルプロペニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、6−ヘプテニル基、7−オクテニル基、8−ノネニル基、9−デセニル基、10−ウンデセニル基、11−ドデセニル基、12−トリデセニル基、13−テトラデセニル基、14−ペンタデセニル基、15−ヘキサデセニル基、16−ヘプタデセニル基、17−オクタデセニル基、18−ノナデセニル基、19−イコセニル基、エチニル基、プロパルギル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、5−ヘキシニル基、6−ヘプチニル基、7−オクチニル基、8−ノニニル基、9−デシニル基、10−ウンデシニル基、11−ドデシニル基等の不飽和炭化水素基、アリロキシ基、2−オキサ−4−ペンテニル基、3−オキサ−2−メチル−4−ペンテニル基、3−オキサ−5−ヘキセニル基、3−オキサ−2−メチル−5−ヘキセニル基、3,6−ジオキサ−7−オクテニル基、3−メチル−3−アザ−4−ペンテニル基、3−チア−4−ペンテニル基等のヘテロ原子を含む一価炭化水素基が挙げられる。
【0044】
式(3)において、X1、X2は式(1)で定義したものと同じ置換基を表す。
【0045】
【化9】

式(4)において、Sxはケイ素原子数2〜10であって、該ケイ素原子に炭素数1〜20の一価炭化水素基が結合した直鎖状、分岐鎖状又は環状のオルガノシロキサニル基を表す。式(4)で表される化合物はヒドロシリル化反応に供されるSi−H結合を有している。
【0046】
式(4)の具体例は、ペンタメチルジシロキサン、3,3,3−トリエチル−1,1−ジメチルジシロキサン、3−ビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、3−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、3,3,3−トリイソプロピル−1,1−ジメチルジシロキサン、1,1−ジフェニル−3,3,3−トリメチルジシロキサン、3−メチル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1−シクロヘキシル−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘプタメチルトリシロキサン、ノナメチルテトラシロキサン、ウンデカメチルペンタシロキサン、トリデカメチルヘキサシロキサン、ペンタデカメチルヘプタシロキサン、ヘプタデカメチルオクタシロキサン、ノナデカメチルノナシロキサン、ヘンイコサメチルデカシロキサン等の直鎖状オルガノシロキサン;1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−トリメチルシロキシ−1,3,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1−ペンタメチルジシロキサニルオキシ−1,3,3,5,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1−トリメチルシロキシ−1,3,3,5,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1−ビス(トリメチルシロキシ)−3,3,3−トリメチルジシロキサン等の分岐鎖状オルガノシロキサン;1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等の環状オルガノシロキサンが挙げられる。これらのなかでも、特にペンタメチルジシロキサン、ヘプタメチルトリシロキサン、ノナメチルテトラシロキサン、ウンデカメチルペンタシロキサン、1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法においては、式(3)のオレフィン化合物と式(4)のオルガノシロキサンとを白金触媒下で反応させて製造する。白金触媒の具体例としては塩化白金酸、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金(0)テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金等の白金化合物、活性炭担持白金、シリカゲル担持白金等の固体担持白金が挙げられる。白金触媒の使用量は特に限定されないが、式(3)のオレフィン化合物1モルに対し、0.000001〜0.01モル、特に0.00001〜0.001モルの範囲が好ましい。
【0048】
また、式(3)で表されるオレフィン化合物と式(4)で表されるオルガノシロキサンの配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、式(3)の化合物1モルに対し、式(4)の化合物の使用量は、0.5〜2モル、特に1.0〜1.2モルが好ましい。
【0049】
上記反応の反応温度は、0〜200℃、特に20〜100℃が好ましく、反応時間は0.1〜20時間、特に1〜3時間が好ましい。反応温度及び時間は、当業者が適宜これを決定することができる。溶媒としては、エーテル系や炭化水素系溶媒、非プロトン性極性溶媒が好ましく、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0050】
本発明の蛍光性樹脂組成物は、本発明の蛍光性化合物を内部に含有している樹脂である。マトリクスとなる樹脂は限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン等の熱可塑性あるいは熱硬化性樹脂、天然ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等のエラストマー等が挙げられる。特にシリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジン、シリコーンゲル等のシリコーン樹脂が好ましい。本発明の蛍光性樹脂組成物は液体、固体、ゴム、ゲル等のいずれの状態であってもよい。
【0051】
本発明の蛍光性樹脂組成物中では、蛍光性化合物は凝集せず均一に分散していることが好ましい。また、本発明の蛍光性樹脂組成物においては、本発明の蛍光性化合物を含めて蛍光性化合物を二種類以上含有していても構わない。
【0052】
本発明の蛍光性樹脂組成物において、蛍光性化合物の含有量は任意であるが、通常0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。マトリクス樹脂に相溶する範囲で蛍光性化合物の含有量を決定することが好ましい。蛍光性化合物の性質やマトリクス樹脂の性質によるが、蛍光性化合物の含有量が多すぎると濃度消光によって蛍光強度が低下することがあり、含有量が少なすぎると蛍光強度が十分でなくなる可能性がある。
【0053】
本発明の蛍光性樹脂組成物は、樹脂以外の成分を含んでいてもよい。例えば、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、イソオクタン、デカン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の溶媒、シリカゲル、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボン、水酸化マグネシウム等のフィラー、シランカップリング剤やテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のケイ素化合物、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等のラジカル重合開始剤、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等の光重合開始剤、塩化白金酸、白金(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、ベンジリデンジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム等の金属化合物、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維、ベンゾフェノン誘導体やヒンダードアミン化合物等の紫外線吸収剤及び光安定剤、フタル酸エステルやアジピン酸エステル等の可塑剤、リン酸エステル等の難燃剤等が挙げられる。これらの成分の含有量は、組成物の発光特性を妨げない範囲で任意に決定することができ、通常0.01〜80質量%の範囲である。
【0054】
本発明の蛍光性樹脂組成物への蛍光性化合物の添加方法としては、例えば樹脂と蛍光性化合物を混練して分散させる方法、液状の樹脂モノマーやプレポリマーに蛍光性化合物をあらかじめ混合溶解させてから付加重合あるいは縮重合させる方法、樹脂ワニスに蛍光性化合物を溶解させる方法等が挙げられる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。以下の構造式中、Meはメチル基を示す。
【0056】
[実施例1]1,5,7,8−テトラメチル−3−[10−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)デシル]−2,6−ジエチルピロメテン−ジフルオロボラン錯体(化合物1)の合成
窒素雰囲気下、1,5,7,8−テトラメチル−3−(10−ウンデセノイル)−2,6−ジエチルピロメテン−ジフルオロボラン錯体3.80g(8.58mmol)、白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の2質量%キシレン溶液33.1mgと脱水トルエン10mlを仕込み、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン2.50g(11.2mmol)を10分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を80℃で2時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮し、水とトルエンを加えた後、分液操作により有機層を抽出した。得られた溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮した後、分取液体クロマトグラフィーにより精製して橙色固体1.60gを得た。
【0057】
この溶液のNMRスペクトル及びMSスペクトルを測定した結果、1,5,7,8−テトラメチル−3−[10−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)デシル]−2,6−ジエチルピロメテン−ジフルオロボラン錯体であることが確認された。高速液体クロマトグラフィー(HPLC、カラム:GLサイエンス社製Inertsil(登録商標)Diol、移動相:ヘキサン/クロロホルム=7/3(質量比)、UV検出器、波長254nm)により求めた純度は99.8%であった。
【0058】
1H−NMR(600MHz,d in CDCl3):−0.02(s,3H),0.07(s,18H),0.41−0.45(m,2H),1.03(t,6H),1.22−1.38(m,12H),1.47(quint,2H),1.57−1.65(m,2H),2.31(s,6H),2.38(q,4H),2.47(s,6H),2.92−2.98(m,2H)
MALDI−TOFMS m/z:664.5(M+
【0059】
実施例1で製造された化合物1の構造を下記式(5)に示す。
【化10】

【0060】
化合物1の紫外可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルをエタノール中で測定した。最長吸収極大波長は520nm、モル吸光係数は9.31×104であり、最大蛍光波長は532nm(励起波長:520nm)であった。
【0061】
[実施例2]1,5,7,8−テトラメチル−3−[10−(1−トリメチルシロキシ−1,3,3,3−テトラメチルジシロキサン−1−イル)デシル]−2,6−ジ−tert−ブチルピロメテン−ジフルオロボラン錯体(化合物2)の合成
窒素雰囲気下、1,5,7,8−テトラメチル−3−(10−ウンデセノイル)−2,6−ジ−tert−ブチルピロメテン−ジフルオロボラン錯体2.91g(5.83mmol)、白金(0)1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の2質量%キシレン溶液45.4mgと脱水トルエン6mlを仕込み、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン1.80g(8.09mmol)を10分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を80℃で3時間攪拌した。得られた溶液を減圧濃縮し、水とトルエンを加えた後、分液操作により有機層を抽出した。得られた溶液を硫酸マグネシウムにより乾燥し、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮した後、分取液体クロマトグラフィーにより精製して赤紫色固体1.22gを得た。
【0062】
1H−NMR(600MHz,d in CDCl3):−0.00(s,3H),0.08(s,18H),1.24−1.50(m,34H),1.59−1.68(m,2H),2.52(s,6H),2.68(s,6H),2.98−3.06(m,2H)
MALDI−TOFMS m/z:720.7(M+
【0063】
実施例2で製造された化合物2の構造を下記式(6)に示す。
【化11】

【0064】
化合物2の紫外可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルをエタノール中で測定した。最長吸収極大波長は524nm、モル吸光係数は8.40×104であり、最大蛍光波長は601nm(励起波長:524nm)であった。
【0065】
[実施例3]化合物1を含有するシリコーン樹脂組成物の製造
ガラスバイアル中に実施例1で製造した化合物1を66.5mg秤量し、透明シリコーン樹脂SIM−360主剤(信越化学工業(株)製)を室温下で攪拌しながら少量ずつ添加した。溶液が透明となったときに溶解したと判断し、溶解度を計算すると5.0mmol/Lであった。この混合物に主剤に対して10質量%の硬化剤を添加して混合し、脱泡後に150℃で30分加熱して硬化させ、蛍光性のシリコーン樹脂組成物を得た。なお、化合物1の濃度は上記の濃度以下で任意に変更することが可能であった。
【0066】
[実施例4]化合物2を含有するシリコーン樹脂組成物の製造
実施例1と同様にして化合物2のSIM−360主剤への溶解度を測定したところ、7.5mmol/Lであった。この混合物に主剤に対して10質量%の硬化剤を添加して混合し、脱泡後に150℃で30分加熱して硬化させ、蛍光性のシリコーン樹脂組成物を得た。なお、化合物4の濃度は上記の濃度以下で任意に変更することが可能であった。
【0067】
[比較例1]1,3,5,7,8−ペンタメチル−2,6−ジエチルピロメテン−ジフルオロボラン錯体(化合物3)のシリコーン樹脂への溶解度測定
本比較例1で使用した化合物3の構造を下記式(7)に示す。実施例3と同様にして化合物3のSIM−360主剤への溶解度を測定したところ、50℃で加熱したが懸濁状態となり、ほとんど溶解しなかった。
【化12】

【0068】
[比較例2]1,3,5,7,8−ペンタメチル−2,6−ジ−tert−ブチルピロメテン−ジフルオロボラン錯体(化合物4)のシリコーン樹脂への溶解度測定
本比較例2で使用した化合物4の構造を下記式(8)に示す。実施例3と同様にして化合物4のSIM−360主剤への溶解度を測定したところ、懸濁状態となったので50℃で加熱したところ2mmol/L溶解した。化合物4にはシロキサン含有置換基がなく、実施例3及は実施例4と比較すると明らかに溶解性が低い。
【化13】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の蛍光性化合物は、蛍光インクや波長変換材料等に使用することができる。例えばシリコーン樹脂のような低極性の樹脂の着色が透明性を損なわずに可能となるので、高透明性の蛍光性樹脂組成物が得られ、有用性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される蛍光性化合物。
【化1】

〔式(1)において、R1〜R7は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、ハロゲン原子、水素原子、アミノ基、シアノ基、及び下記式(2)のシロキサン含有基から選択される置換基を表す。R1とR2、R2とR3、R4とR5、R5とR6はそれぞれ互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。但し、R1〜R7のうち少なくとも一つは、下記式(2)で表されるシロキサン含有基である。
【化2】

(式(2)において、Sxはケイ素原子数2〜10であって、該ケイ素原子に炭素数1〜20の一価炭化水素基が結合した直鎖状、分岐鎖状又は環状のオルガノシロキサニル基を表し、ケイ素原子がAと結合している。Aは1個以上の−O−、−S−、−NR−又はそれらの組み合わせを含んでもよい炭素数1〜20の二価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基である。)
1、X2は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、又はハロゲン原子を示す。〕
【請求項2】
一般式(1)において、R7が式(2)で表される置換基である請求項1記載の蛍光性化合物。
【請求項3】
一般式(1)において、R2、R5が式(2)で表される置換基である請求項1又は2記載の蛍光性化合物。
【請求項4】
一般式(1)において、R2、R5が共にエチル基又はtert−ブチル基であり、R7が式(2)で表される置換基である請求項1又は2記載の蛍光性化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の蛍光性化合物及び樹脂を含有する蛍光性樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂が、シリコーン樹脂である請求項5記載の蛍光性樹脂組成物。
【請求項7】
下記一般式(3)で表されるオレフィン化合物と、下記一般式(4)で表されるSi−H基を有するシロキサン化合物を、白金触媒存在下で反応させることを特徴とする請求項1記載の式(1)で表される蛍光性化合物の製造方法。
【化3】

(式(3)において、R8〜R14は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、ハロゲン原子、水素原子、アミノ基、シアノ基から選択される置換基を表す。R8とR9、R9とR10、R11とR12、R12とR13はそれぞれ互いに結合してそれらが結合する二つの炭素原子を含む構成炭素原子数が5〜8の環構造を形成してもよい。但し、R8〜R14のうち少なくとも一つは1個以上の−O−、−S−、−NR−又はそれらの組み合わせを含んでもよい末端に脂肪族炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数2〜20の一価炭化水素基を表す。但し、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のヘテロ原子同士は隣接しない。Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基である。X1、X2は同一でも異なってもよく、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状、もしくは環状の一価炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、又はハロゲン原子を示す。)
【化4】

(式(4)において、Sxはケイ素原子数2〜10であって、該ケイ素原子に炭素数1〜20の一価炭化水素基が結合した直鎖状、分岐鎖状又は環状のオルガノシロキサニル基を表す。)

【公開番号】特開2013−60399(P2013−60399A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200749(P2011−200749)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】