説明

蛍光消光材料、フィルム形成用組成物及び光学フィルター

【課題】蛍光を消光することにより、画像表示装置用として特に好適な光学フィルター、及び該光学フィルターに使用可能な蛍光消光材料を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンと、pAnq-で表されるq価の陰イオン(qは、1又は2の整数であり、pは、電荷を中性に保つ係数を表す)とからなるシアニン化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする蛍光消光材料。


(式中、R1及びR2は、C1〜10のアルキル基、C6〜30のアリール基、C7〜30のアリールアルキル基等を表し、Qはポリメチン鎖を構成する、鎖中に環構造を含んでもよい連結基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の色素化合物を含有する蛍光消光材料、該蛍光消光材料をバインダー樹脂に含有させたフィルム形成用組成物、及び該フィルム形成用組成物により構成される層を有する光学フィルターに関する。該光学フィルターは、特に、画像表示装置用の光学フィルターとして有用である。
【背景技術】
【0002】
特定の光に対して強度の大きい吸収を有する化合物は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置や、CD−R、DVD−R、DVD+R、青色レーザー記録ディスク等の光学記録媒体の記録層の光学要素として用いられている。
【0003】
例えば、画像表示装置における光学要素の用途としては、基板上に着色画素を形成し、白色光を透過させてモノクロである表示部をカラー表示する機能を持つカラーフィルターの光吸収剤がある。画像表示装置は、赤、青、緑の三原色の光の組合せでカラー画像を表示しているが、カラー画像を表示する光には、青と緑の間の480〜520nm、緑と赤の間の550〜600nm等の表示品質の低下をきたす光が含まれており、また、750〜1100nmの赤外リモコンの誤作動の原因となる光も含まれている。一方、カラー画像を表示する際あるいは赤外線リモコンの操作の際に、光学フィルターにおいて上記の不要な波長の光を選択的に吸収する機能が求められており、同時に、蛍光灯等の外光の反射や映り込みを防止するために480〜500nm及び540〜560nmの波長光を吸収することも必要とされている。そこで、画像表示装置等には、これらの波長の光を選択的に吸収する光吸収性化合物(光吸収剤)を含有する光学フィルターが、カラーフィルターとは別に使用されている。
【0004】
近年、表示素子の色純度や色分離を十分にし、画像品質を高いものにするために、特定の波長を選択的に吸収する光吸収剤が求められているが、一部の光吸収剤において蛍光が発生することが問題となっていた。
【0005】
光吸収剤を含有する光学フィルターとして、例えば、下記特許文献1には、800〜1100nmに極大吸収波長を有する光吸収色素を使用した光吸収材が開示されており、下記特許文献2には、色素化合物及び層状粘土鉱物、さらに必要に応じて粘着剤を使用した光学フィルターが開示されており、下記特許文献3には、400〜1100nmに極大吸収波長を有するシアニン化合物を使用した光学フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−291183号公報
【特許文献2】特開2007−233323号公報
【特許文献3】特開2008−88426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、蛍光を消光することにより、画像表示装置用として特に好適な光学フィルター、及び該光学フィルターに使用可能な蛍光消光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、種々検討を重ねた結果、特定の分子構造を持つシアニン化合物、さらに必要に応じて層状粘土鉱物を用いることにより、上記目的を達成し得ることを知見した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンと、pAnq-で表されるq価の陰イオン(qは、1又は2の整数であり、pは、電荷を中性に保つ係数を表す)とからなるシアニン化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする蛍光消光材料を提供するものである。
【0010】
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は下記一般式(II)で表される置換基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−NR−、−CONH−、−NHCO−、−CONR−、−NRCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されていてもよく、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表し、
Qはポリメチン鎖を構成する、鎖中に環構造を含んでもよい連結基を表し、該ポリメチン鎖中の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ジフェニルアミノ基、ハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアルコキシ基、又はハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアリール基で置換されていてもよい。)
【0011】
【化2】

(式中、Ra〜Riは、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されていてもよく、Zは、直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されていてもよく、Mは、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【0012】
また、本発明は、さらに層状粘土鉱物を含有する上記蛍光消光材料を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、バインダー樹脂に上記蛍光消光材料を配合してなることを特徴とするたフィルム形成用組成物、及び該フィルム形成用組成物により構成される層を有する光学フィルターを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンと、pAnq-で表されるq価の陰イオン(qは、1又は2の整数であり、pは、電荷を中性に保つ係数を表す)とからなるシアニン化合物を含有してなる本発明の蛍光消光材料は、蛍光を消光するのに有効であり、該シアニン化合物と共に層状粘土鉱物を併用することにより、一層高い蛍光消光効果を奏する。また、本発明の蛍光消光材料は、蛍光消光効果の耐光性、耐熱性及び耐湿熱性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の蛍光消光材料、フィルム形成用組成物及び光学フィルターについて、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。尚、本発明における「蛍光消光材料」は、特定の波長の蛍光を発する化合物に対し、蛍光を消光する機能を有する材料を言う。
【0016】
まず、本発明の蛍光消光材料に含有される上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオン(qは、1又は2の整数であり、pは、電荷を中性に保つ係数を表す)とからなるシアニン化合物について説明する。
【0017】
上記一般式(I)において、R1、R2及びRで表される炭素原子数1〜10のアルキル基並びにQで表されるポリメチン鎖中の水素原子が置換されていてもよいアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。Qで表されるポリメチン鎖中の水素原子が置換されていてもよいアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。R1、R2及びRで表される炭素原子数6〜30のアリール基並びにQで表されるポリメチン鎖中の水素原子が置換されていてもよいアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセン−1−イル、フェナントレン−1−イル等が挙げられる。R1及びR2で表される炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられる。
【0018】
1及びR2としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、特に炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましい。
【0019】
上記一般式(I)中、Qで表されるポリメチン鎖を構成する、鎖中に環構造を含んでもよい連結基としては、特に限定されないが、例えば下記一般式(III)で表される連結基が挙げられる。
【0020】
【化3】

(式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−NHCO−又は−CONH−で中断されていてもよく、R3同士、R4同士及びR3とR5は互いに結合して環構造を形成していてもよく、mは0〜4である。)
【0021】
上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンの中でも、Qが上記一般式(III)で表される連結基であるものは、本発明の蛍光消光材料の蛍光消光能が一層高く、蛍光消光能の耐久性も高くなるので好ましい。
【0022】
上記一般式(III)において、R3、R4及びR5で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。R3、R4及びR5で表される炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基及び炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、例えば上記一般式(I)で例示したものが挙げられる。
【0023】
上記一般式(III)中のR3、R4及びR5は、R3同士、R4同士及びR3とR5が互いに結合して環構造を形成していてもよく、該環構造としては、例えば、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ユロリジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イミノオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環、ロダニン環、チオオキサゾリドン環、チオヒダントイン環、インダンジオン環、チアナフテン環、ピラゾロン環、ピリドン環、ピラゾリジンジオン環、ローダニン環、バルビツール酸環、チオバルビツール酸環、オキサゾロン環、ヒダントイン環、チオヒダントイン環、スクシンイミド環、マレイミド環等が挙げられ、これらの環は他の環と縮合されていたり、置換されていたりしてもよい。
【0024】
上記一般式(III)で表される連結基の中でも、下記(1)〜(13)で表される基が好ましい。
【0025】
【化4】

(式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27及びR28は、各々独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、ジフェニルアミノ基を表し、Z’は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−S−で中断されていてもよい。)
【0026】
上記(1)〜(13)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28及びZ’で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28及びZ’で表される炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基並びに炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、上記一般式(I)で例示したものが挙げられる。
【0027】
上記(1)〜(13)中、R21〜R28は、水素原子、炭素原子数1〜10(特に炭素原子数1〜4)のアルキル基、ハロゲン原子が好ましく、Z’は炭素原子数6〜30(特に炭素原子数6〜12)のアリール基、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基が好ましい。
【0028】
1〜R5、R21〜R28及びZ’で表される炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基及び炭素原子数7〜30のアリールアルキル基は、いずれも、置換基を有していてもよい。該置換基としては、以下のものが挙げられる。尚、R1〜R5、R21〜R28及びZ’が、以下の置換基の中でも、炭素原子を含有する置換基を有する場合は、該置換基を含めたR1〜R5、R21〜R28及びZ’全体の炭素原子数が、規定された範囲を満たすものとする。
【0029】
上記置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等の複素環基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基等が挙げられ、これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基及びスルホ基は塩を形成していてもよい。
【0030】
また、上記一般式(II)において、Ra〜Riで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−O−で中断された基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−CO−で中断された基としては、アセチル、1−カルボニルエチル、アセチルメチル、1−カルボニルプロピル、2−オキソブチル、2−アセチルエチル、1−カルボニルイソプロピル等が挙げられる。Zで表される置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル等が挙げられ、該アルキレン基中のメチレン基が−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断された基としては、メチレンオキシ、エチレンオキシ、オキシメチレン、チオメチレン、カルボニルメチレン、カルボニルオキシメチレン、メチレンカルボニルオキシ、スルホニルメチレン、アミノメチレン、アセチルアミノ、エチレンカルボキシアミド、エタンイミドイル、エテニレン、プロペニレン等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンは、共鳴構造を有する。例えば、Qが上記一般式(III)で表される連結基であるシアニン陽イオンは、下記〔化5〕に示されるような共鳴構造を有し、下記一般式(A)及び(A’)のどちらの構造式であってもよいが、本明細書では下記一般式(A)で代表して表す。
【0032】
【化5】

【0033】
上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンの具体例としては、以下に示される陽イオンA−1〜A−32が挙げられる。
【0034】
【化6】

【0035】
【化7】

【0036】
【化7A】

【0037】
本発明に係るシアニン化合物において、pAnq-で表される陰イオンとしては、一価の陰イオン及び二価の陰イオンが挙げられる。一価のものとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン等のハロゲン化物イオン;過塩素酸イオン、塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の無機系陰イオン;ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸イオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸イオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸イオン、N−アルキル(またはアリール)ジフェニルアミン−4−スルホン酸イオン等の有機スルホン酸系陰イオン;オクチルリン酸イオン、ドデシルリン酸イオン、オクタデシルリン酸イオン、フェニルリン酸イオン、ノニルフェニルリン酸イオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスホン酸イオン等の有機リン酸系陰イオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドイオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドイオン、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホン酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)カルボアニオン等が挙げられる。
二価の陰イオンとしては、例えば、ベンゼンジスルホン酸イオン、ナフタレンジスルホン酸イオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャー陰イオンや、シクロペンタジエニル環にカルボキシル基、ホスホン酸基、スルホン酸基等の陰イオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物陰イオン等も、必要に応じて用いることができる。また、pは、分子全体で電荷が中性となるように選択される。
【0038】
上記のクエンチャー陰イオンとしては、例えば、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)又は(12)で表されるもの、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平5−305770号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平9−323478号公報、特開平10−45767号公報、特開平11−208118号公報、特開2000−168237号公報、特開2002−201373号公報、特開2002−206061号公報、特開2005−297407号公報、特公平7−96334号公報、国際公開第98/29257号パンフレット等に記載されたような陰イオンが挙げられる。
【0039】
【化8】

(式中、Mは、上記一般式(II)と同じであり、R31及びR32は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は−SO2−G基を表し、Gは、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ピペリジノ基又はモルホリノ基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0〜4の数を表す。また、R33、R34、R35及びR36は、各々独立にアルキル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基又はハロゲン化フェニル基を表す。)
【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオンとからなる本発明に係るシアニン化合物は、その製造方法によって特に限定されず、例えば文献(OS,vol80,200)に記載された周知一般の反応を利用した方法で得ることができる。本発明に係るシアニン化合物は、例えば、Qが上記[化4]における式(3)で表される連結基であるとき、下記[化12A]に示す反応式の如く、ビルスマイヤー反応により中間体アルデヒドを合成し、得られた中間体アルデヒドとインドレニン四級塩を反応させる方法により合成することができる。尚、Qが一般式(3)以外であるときにも、下記製造方法に準じて製造することができる。
【0045】
【化12A】

(式中、R15及びR16は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、R15及びR16は、連結して環構造を形成してもよく、R1及びR2、上記一般式(I)と同じである。)
【0046】
本発明の蛍光消光材料は、必要に応じて層状粘土鉱物を含有することができる。該層状粘土鉱物としては、天然物又は化学的合成物あるいは層間にリチウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等を有するもの、それらの置換体、誘導体又はそれらの混合物を用いることができ、具体例としては、スメクタイト、雲母、カオリン鉱物、タルク、緑泥石、ハイドロタルサイト、バーミキュライト、フッ素バーミキュライト等を挙げることができる。上記スメクタイトとしては、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、バイデライト、モンモリロナイト、ベントナイト、ノントロナイト等が挙げられ、上記雲母としては、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四ケイ素フッ素雲母合成マイカを挙げられ、上記カオリン鉱物としては、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライト、ディカイト、クリソタイル、リザーダイト、アメサイト、パイロフェライト等が挙げられる。これらの中でも、スメクタイト及び雲母が、機能性が高いため好ましい。
【0047】
上記スメクタイトの中でも、不純物を除去するために精製したスメクタイトが好ましい。また、バインダー樹脂や有機溶媒と親和性の高い親油性スメクタイトが好ましい。該親油性スメクタイトは、上述したスメクタイトをベースにし、これらのスメクタイトを第四級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等の有機陽イオンで処理して親油性を付与したものである。従って、親油性スメクタイトを用いる場合、上記有機陽イオンは該親油性スメクタイトの層間イオンとして存在する。該親油性スメクタイトに含まれる上記有機陽イオンの量は、特に制限されるものではないが、良好な親油性の観点からは、好ましくはスメクタイト100質量部に対して有機陽イオン1〜10質量部の比率を満たすことが好ましい。
【0048】
上記スメクタイトとしては市販されているものを使用することもでき、例えば、ルーセンタイトSWN、SWF(親水性スメクタイト:コープケミカル社製)、ルーセンタイトSTN、STN−A、SPN、SEN、SAN、SAN2C、SAN210、STF、SSN、SSN−A、SAN312−A、SAN2C−A、SAN210−A(親油性スメクタイト:コープケミカル社製)、クニピアT(モンモリロナイト;クニミネ工業社製)、エスベンN−400、エスベンN−400FP(モンモリロナイト:ホージュン社製)、ベントン(東新化成社製)等を使用することができる。これらの中でも不純物を除去するために精製したSTN−A、SSN−A、SAN210−A、SAN312−A及びSAN2Cを使用することが、粘土鉱物複合体を形成した場合に凝集しにくく分散性が高いので好ましい。
【0049】
上記有機陽イオンとしては、四級アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等が挙げられる。
上記四級アンモニウムイオンとしては、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を有するものが好ましく、中でもアルキル基の炭素原子数が1〜20であるもの、アリール基の炭素原子数が6〜30であるもの、あるいはアリールアルキル基の炭素原子数が7〜30であるものが、本発明に係るシアニン陽イオンにより置換された場合においても有機溶媒との親和性が高く、また有機溶媒に分散しても適度な粘性を持つので望ましい。四級アンモニウムイオンとしては、具体的には、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラ−n−デシルアンモニウムイオン、テトラ−n−ドデシルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、トリメチルステアリルアンモニウムイオン、ジメチルジステアリルアンモニウムイオン、トリラウリルメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、ジメチルジデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルベンジルアンモニウムイオン、下記[化13]で示される化合物等が挙げられる。
また、上記ホスホニウムイオンとしては、例えば、アルキルホスホニウムイオン、アリールホスホニウムイオン等が挙げられる。
【0050】
【化13】

(式中、R41、R42、R43及びR44はそれぞれ独立に、炭素原子数が1〜20のアルキル基である。)
【0051】
上記雲母の中でも、不純物を除去するために精製した雲母が好ましく、また、バインダー樹脂や有機溶媒と親和性の高い膨潤性雲母が好ましい。
上記雲母としては市販されているものを使用することもでき、例えば、ソマシフ(膨潤性雲母:コープケミカル社製)、ミクロマイカ(非膨潤性雲母:コープケミカル社製)が挙げられる。
【0052】
本発明の蛍光消光材料において、上記層状粘土鉱物の含有量は、前述の本発明に係るシアニン化合物と上記層状粘土鉱物の合計量100質量部中、好ましくは0.01〜99質量部、さらに好ましくは50〜99質量部である。層状粘土鉱物が0.01質量部未満では、層状粘土鉱物を用いる効果が不十分であり、99質量部より多いと、本発明に係るシアニン化合物の含有量が少なくなるので蛍光消光能や耐久性が低下する恐れがあり、また、有機溶媒への分散性が低くなって蛍光消光材料の加工性が低下する恐れがある。尚、本発明の蛍光消光材料において、本発明に係るシアニン化合物と上記層状粘土鉱物は、最終的な用途において両者が共存していればよく、両者は必ずしも予め混合されていなくてもよい。
【0053】
本発明の蛍光消光材料において、上記層状粘土鉱物に加えてあるいは替えて、上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンが上記層状粘土鉱物にインターカレーションされて形成される粘土鉱物複合体、あるいは上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオン及び上記有機陽イオンが上記層状粘土鉱物にインターカレーションされて形成される粘土鉱物複合体を用いることができる。これらの粘土鉱物複合体においては、層状粘土鉱物が紫外線や水分等の外部からの影響を受けにくいため、本発明の蛍光消光材料の蛍光消光能の耐光性及び耐湿熱性が一層高くなり、また上記粘土鉱物複合体は極性の低い有機溶媒との親和性もよいため好ましい。尚、上記粘土鉱物複合体は、上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンを含むものであるが、本発明において上記粘土鉱物複合体は、該シアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオンとからなる前述の本発明に係るシアニン化合物とはみなさず、層状粘土鉱物の一種とみなす。
また、上記粘土鉱物複合体においては、従来の蛍光消光材料に使用されている公知のシアニン化合物等の色素化合物に含まれる色素陽イオンの一種又は二種以上を組み合わせて併用することもできる。
【0054】
上記色素化合物としては、具体的には、シアニン化合物、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、アゾ化合物の金属塩、アゾメチン色素化合物、トリアリールメタン色素化合物、ナフタルイミド化合物、ナフトラクタム化合物、オキサジン化合物、チアジン化合物、アザキサンテン化合物、キノリン化合物、インダミン色素化合物、ローダミン色素化合物、スクアリリウム系化合物、スチリル系色素化合物が挙げられる。
【0055】
上記粘土鉱物複合体は、例えば以下の方法で調製することができる。親油性を付与するため、予め有機陽イオンをインターカレートさせた親油性の層状粘土鉱物を用いる場合、層状粘土鉱物を有機溶媒に分散させて懸濁液としたもの、及びシアニン陽イオンと陰イオンとの塩を有機溶媒に溶解させたものを混合し、層状粘土鉱物の層間イオンである有機陽イオンの一部をシアニン陽イオンでイオン交換し、得られた生成物を分離、精製、乾燥して、粘土鉱物複合体を得る。
【0056】
上記層状粘土鉱物が親水性の場合、(i)層状粘土鉱物を水中に分散させて懸濁液とし、該層状粘土鉱物の層間イオンを有機陽イオンでイオン交換し、次いで酸をこの分散液が弱塩基性〜酸性になる量加えて酸処理し、得られた生成物を分離、乾燥する、あるいは(ii)層状粘土鉱物を水に分散させ、分散液中に酸をこの分散液が弱塩基性〜酸性になる量添加して酸処理し、得られた層状粘土鉱物を水中に分散させて懸濁液とし、該層状粘土鉱物の層間イオンを有機陽イオンでイオン交換し、得られた生成物を分離、乾燥する。
次に、(i)又は(ii)で乾燥した生成物を上記親油性の層状粘土鉱物を用いる場合と同様にして、該生成物の層間イオンである有機陽イオンの一部を、シアニン陽イオンでイオン交換して粘土鉱物複合体を得る。
【0057】
上記で得られた生成物を粘土鉱物複合体として分離、乾燥しないでそのまま蛍光消光材料用の塗液として用いると、4級アンモニウム塩等の有機溶媒に不溶な成分が残存して得られる蛍光消光材料の耐湿熱性が低下したり、層状粘土鉱物の層間イオンである有機陽イオンとシアニン陽イオンとのイオン交換が起こりにくく層状粘土鉱物の仕込み量が増加し、結果として塗液が増粘したり粘土鉱物複合体の凝集を招いたり、コストが高くなったりするので好ましくない。
【0058】
本発明の蛍光消光材料には、有機溶媒及び各種の添加剤をさらに必要量含有させることができる。該添加剤としては、従来の蛍光消光材料に使用されている公知のシアニン化合物等の色素化合物;付着付与剤;軟化剤;耐光性付与剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;可塑剤;消泡剤;レベリング剤;分散剤;硬化剤等が挙げられる。特に制限されるものではないが、上記有機溶媒を含有させる場合は、本発明の蛍光消光材料中で固形分が0.01〜50質量%の範囲となるようにすることが好ましい。また、上記添加剤を含有させる場合は、本発明に係るシアニン化合物及び上記層状粘土鉱物の両者の合計100質量部に対して、上記添加剤50質量部以下の範囲が好ましい。
【0059】
本発明の蛍光消光材料は、バインダー樹脂に配合してフィルム形成用組成物とし、さらに、該フィルム形成用組成物を使用して光学フィルターを作成することで好適に用いられる。該光学フィルターは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、CCDイメージセンサ、CMOSセンサ、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置用、分析装置用、半導体装置製造用、天文観測用、光通信用、眼鏡レンズ、窓等の用途に用いることができる。また、本発明の蛍光消光材料は、フィルム形成用組成物以外に、光記録材料、各種コーティング剤、各種シーリング剤、光ファイバー、自動車内外装材料、塗料、建材等の用途にも用いることができる。
【0060】
次に、本発明のフィルム形成用組成物について説明する。
本発明のフィルム形成用組成物は、本発明の蛍光消光材料をバインダー樹脂に配合してなるものである。該バインダー樹脂としては、例えば、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、メラミン樹脂、環状オレフィン樹脂等の合成高分子材料、粘着性樹脂等が挙げられる。
【0061】
上記粘着性樹脂としては、例えば、シリコン系、ウレタン系、アクリル系等の粘着性樹脂、ポリビニルブチラール系粘着性樹脂、ポリビニルエーテル系粘着性樹脂、エチレン−酢酸ビニル系粘着性樹脂、ポリオレフィン系粘着性樹脂、SBR系粘着性樹脂、ゴム系粘着性樹脂等が挙げられ、これらの粘着性樹脂を含有する公知の合わせガラス用透明粘着剤を用いることもできる。中でもアクリル系粘着性樹脂、特に酸性アクリル系粘着性樹脂が好ましく用いられる。
【0062】
上記アクリル系粘着性樹脂としては特に限定されず、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の反応性官能基及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の単独重合体あるいは複数種を組み合わせた共重合体、又は上記反応性官能基及びエチレン性不飽和二重結合を有する単量体と、(メタ)アクリル系単量体やビニル系単量体のようなエチレン性不飽和二重結合を有する単量体との共重合体を用いることができ、必要に応じて粘着性樹脂の凝集力を向上させるために、硬化剤として、金属キレート系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物、アジリジン系化合物、オキサゾリン化合物等の架橋剤を含有するものを用いることができる。
【0063】
上記アクリル系粘着性樹脂としては市販のアクリル系粘着剤を用いることができ、例えば、デービーボンド5541(ダイアボンド社製)、SKダインAS−1925、KP−2230、SK−1811L(綜研化学社製)、DX2−PDP−19(日本触媒社製)、AT−3001(サイデン化学社製)、オリバインBPS5896(東洋インキ社製)、CS−9611(日東電工社製)等が挙げられる。
【0064】
本発明のフィルム形成用組成物には、色調調整機能を有する550〜620nmの波長の光を吸収する光吸収剤、外光の反射や映り込み防止を有する480〜500nm対応の光吸収剤あるいは750〜1100nm対応の近赤外線吸収剤を用いることができる。
【0065】
色調調整機能を有する上記光吸収剤としては、550〜620nmのオレンジ光の除去のために用いられるものとして、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンベンゾオキサゾリウム化合物、トリメチンベンゾチアゾリウム化合物等のトリメチンシアニン化合物;ペンタメチンオキサゾリウム化合物、ペンタメチンチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン化合物;スクアリリウム色素;アゾメチン色素;キサンテン色素;アゾ色素;ピロメテン色素;アゾ金属錯体:ローダミン色素;フタロシアニン化合物;ポルフィリン化合物;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0066】
また、外光の映り込み防止機能を有する480〜500nm対応の上記光吸収剤としては、モノメチンシアニン誘導体;トリメチンインドリウム化合物、トリメチンオキサゾリウム化合物、トリメチンチアゾリウム化合物、インドリデントリメチンチアゾニウム化合物等のトリメチンシアニン化合物;メロシアニン化合物;フタロシアニン化合物;ナフタロシアニン化合物;ポルフィリン化合物;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0067】
また、赤外リモコン誤作動防止機能を有する750〜1100nm対応の上記近赤外線吸収剤としては、ペンタメチンベンゾインドリウム化合物、ペンタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ペンタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン化合物;ヘプタメチンインドリウム化合物、ヘプタメチンベンゾインドリウム化合物、ヘプタメチンオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンチアゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のヘプタメチンシアニン化合物;ジイモニウム化合物;アミニウム化合物;スクアリリウム化合物;ビス(スチルベンジチオラト)化合物、ビス(ベンゼンジチオラト)ニッケル化合物、ビス(カンファージチオラト)ニッケル化合物等のニッケル錯体;スクアリリウム化合物;アゾ色素;フタロシアニン化合物;ポルフィリン化合物;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0068】
上記色調調整機能を有する550〜620nmの波長の光を吸収する光吸収剤、外光の反射や映り込み防止を有する480〜500nm対応の光吸収剤あるいは750〜1100nm対応の近赤外線吸収剤としては、例えば、下記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオン(qは、1又は2の整数であり、pは、電荷を中性に保つ係数を表す)からなるシアニン化合物を用いることができる。本発明の蛍光消光材料は、該シアニン化合物が発する蛍光を消光するのに好適に使用することができる。また、本発明の蛍光消光材料は、該シアニン化合物の近傍に存在した時、エネルギー移動により消光機能が効率よく発現するため、本発明の蛍光消光材料及び該シアニン化合物は同一層に存在するのが好ましい。
【0069】
【化14】

(式中、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は下記一般式(II’)で表される置換基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−NR’−、−CONH−、−NHCO−、−CONR’−、−NR’CO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されていてもよく、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表し、
8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立に、下記一般式(V)又は(V’)で表される基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は下記一般式(II’)で表される置換基を表し、R8とR9、及びR10とR11は、互いに結合して環構造を形成していてもよく、
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−NHCO−又は−CONH−で中断されていてもよく、R12同士、R13同士及びR12とR14は互いに結合して環構造を形成していてもよく、
51、R52、R53、R54、R55、R56、R57及びR58は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基若しくは炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を表し、R51〜R58のうち隣接する置換基は互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは0〜4である。)
【0070】
【化14A】

(式中、Ra’〜Ri’は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されていてもよく、Z’は、直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されていてもよく、M’は、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【0071】
【化15】

(上記一般式(V)において、GとTの間の結合は、二重結合、共役二重結合又は三重結合であり、Gは炭素原子を表し、Tは炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し(但し、Tが酸素原子である場合はyとzは0であり、Tが窒素原子である場合はy+zは0又は1である。)、wは0〜4の数を表し、x、y及びzは、0又は1を表し、R01、R02、R03及びR04は、各々独立に、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されていてもよく、R01とR04は結合してシクロアルケン環又は複素環を形成してもよい。
上記一般式(V’)において、G’とT’の間の結合は、二重結合又は共役二重結合であり、G’は炭素原子を表し、T’は炭素原子又は窒素原子を表し、w’は0〜4の数を表し、R01’は水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されていてもよく、G’及びT’を含む環は、ヘテロ原子を含んでもよい5員環、ヘテロ原子を含んでもよい6員環、キノリン環、イソキノリン環又はアントラキノン環を表し、これらG’及びT’を含む環は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。)
【0072】
上記一般式(IV)中、R6〜R14、R51〜R58及びR’で表される炭素原子数1〜10のアルキル基及び炭素原子数6〜30のアリール基、R6〜R14及びR51〜R58で表される炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、上記一般式(I)で例示したものが挙げられ、R12〜R14及びR51〜R58で表されるハロゲン原子としては、上記一般式(III)で例示したものが挙げられ、R8とR9、及びR10とR11が互いに結合して形成する環構造、R12同士、R13同士及びR12とR14が互いに結合して形成する環構造、並びにR51〜R58のうち、隣接する置換基が互いに結合して形成する環構造としては、上記一般式(III)で例示したものが挙げられる。
【0073】
上記一般式(II’)で表される基は、前述した一般式(II)で表される基と同様のものであり、上記一般式(II’)中において、Ra’〜Ri’及びZ’で表される基並びにM’で表される原子としては、一般式(II)でRa〜Ri、Z及びMとして例示したものが挙げられる。
【0074】
上記一般式(V)におけるR01、R02、R03、R04及び上記一般式(V’)におけるR01'で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、上記一般式(V)におけるR01、R02、R03、R04及び上記一般式(V’)におけるR01'で表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−O−で置換された基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−CO−で置換された基としては、アセチル、1−カルボニルエチル、アセチルメチル、1−カルボニルプロピル、2−オキソブチル、2−アセチルエチル、1−カルボニルイソプロピル等が挙げられ、これらはいずれも、置換基を有していてもよい。R01とR04とが連結して形成するシクロアルケン環としては、シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等が挙げられ、R01とR04とが連結して形成する複素環としては、テトラヒドロピラン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環等が挙げられ、これらの環は他の環と縮合されていたり、置換されていたりしてもよい。これらのアルキル基及び環構造の置換基としては、上記一般式(I)の説明で例示したものが挙げられる。尚、R01、R02、R03、R04及びR01'で表される炭素原子数1〜4のアルキル基が、炭素原子を含有する置換基を有する場合は、該置換基も含めた炭素原子数が1〜4の範囲を満たすものとする。
【0075】
上記一般式(V’)において、ヘテロ原子を含んでもよい5員環としては、例えばシクロペンテン環、シクロペンタジエン環、イミダゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チオフェン環、フラン環、ピロール環等が挙げられ、ヘテロ原子を含んでもよい6員環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピペラジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ピラジン環、ピロン環、ピロリジン環等が挙げられる。
【0076】
上記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンは、下記〔化16〕に示されるような共鳴構造を有するが、下記一般式(IV)及び(IV’)どちらの構造式であってもよく、本明細書では下記一般式(IV)で代表して表している。また、上記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンには、R8とR9及びR10とR11で表される基が結合する不斉炭素原子をキラル中心とするエナンチオマー、ジアステレオマー又はラセミ体等の光学異性体が存在する場合があるが、これらのうち、いかなる光学異性体を単離して用いても、あるいはそれらの混合物として用いてもよい。
【0077】
【化16】

【0078】
上記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンの具体例としては、以下に示す陽イオンB−1〜B−52が挙げられる。
【0079】
【化17】

【0080】
【化18】

【0081】
【化18A】

【0082】
【化18B】

【0083】
【化18C】

【0084】
上記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオンとからなるシアニン化合物は、従来公知の方法(例えば、特開平11−53761号公報に記載の方法)により合成することができる。
【0085】
本発明のフィルム形成用組成物において、本発明の蛍光消光材料の含有量は、前記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオンとからなるシアニン化合物及び前記層状粘土鉱物の合計量が、本発明のフィルム形成組成物中で好ましくは0.0001〜50質量%、さらに好ましくは0.01〜5質量%となる量である。また、上記バインダー樹脂の含有量は、本発明のフィルム形成用組成物中、好ましくは0.1〜99質量%、さらに好ましくは1〜80質量%である。また、上記下記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオン(qは、1又は2の整数であり、pは、電荷を中性に保つ係数を表す)からなるシアニン化合物の含有量は、本発明のフィルム組成物中、好ましくは0.0001〜50質量%、さらに好ましくは0.01〜5質量%である。
【0086】
本発明のフィルム形成用組成物には、有機溶媒、フィラー、各種安定剤等の任意成分をさらに必要量含有させることができる。
【0087】
上記有機溶媒としては、特に限定されることなく公知の種々の溶媒を適宜用いることができ、例えば、イソプロパノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は混合して用いることができる。上記有機溶媒の含有量は、本発明のフィルム形成用組成物中、好ましくは10〜90質量%、さらに好ましくは50〜85質量%である。
【0088】
本発明のフィルム形成用組成物は、以下に説明する光学フィルターの構成材料として好ましく用いられる。本発明のフィルム形成用組成物のその他の用途としては、太陽電池、ハロゲン化銀写真感光材料、光増感剤、印刷インキ、光記録材料、インクジェット等が挙げられる。
また、本発明のフィルム形成用組成物により形成されるフィルムの厚みは、その用途等によって適宜選択されるものであり、特に制限されるものではないが、好ましくは1〜100μmの範囲から選択される。
【0089】
次に、本発明の光学フィルターについて説明する。
【0090】
本発明の光学フィルターは、本発明のフィルム形成用組成物により構成される層を有するものである。本発明のフィルム形成用組成物により構成される層は、光学フィルター中のいかなる層でもよく、後述の各層の説明も適宜適用してフィルム形成用組成物を調製し、該フィルム形成用組成物により所望の層を構成することができる。本発明の光学フィルター、特に画像表示用光学フィルターにおいて、本発明の蛍光消光材料の成分である上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオンとからなるシアニン化合物の使用量は、光学フィルターの単位面積当たり、通常1〜1000mg/m2、好ましくは5〜100mg/m2の範囲である。1mg/m2未満の使用量では、蛍光消光効果を十分に発揮することができず、1000mg/m2を超えて使用した場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、明度が低下するおそれもある。使用するバインダー樹脂の種類等にもよるが、例えば上述の(又は後述の)フィルム形成用組成物の好ましい組成比及び好ましい厚みを採用すれば、上記の使用量を満たすことができる。尚、該シアニン化合物が複数種の混合物である場合は、該シアニン化合物の使用量は、その合計量とする。
【0091】
本発明の光学フィルターは、画像表示装置用として用いる場合、通常ディスプレイの前面に配置される。例えば、光学フィルターをディスプレイの表面に直接貼り付けてもよく、ディスプレイの前に前面板や電磁波シールドが設けられている場合は、前面板又は電磁波シールドの表側(外側)又は裏側(ディスプレイ側)に光学フィルターを貼り付けてもよい。
【0092】
画像表示用として用いる場合、本発明の光学フィルターには、上記の550〜620nmの波長の光を吸収する色調調整機能を有する光吸収剤、外光の反射や映り込み防止機能を有する480〜500nm対応の光吸収剤あるいは750〜1100nm対応の近赤外線吸収剤を用いてもよい。
【0093】
上記の色調調整機能を有する光吸収剤、480〜500nm対応の光吸収剤及び近赤外線吸収剤は、本発明の蛍光消光材料と同一の層に含有されていてもよく、別の層に含有されていてもよい。それらの使用量は例えば、本発明の蛍光消光材料100質量部に対し、10〜5000質量部である。
【0094】
本発明の光学フィルターの代表的な構成としては、透明支持体に、必要に応じて、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、粘着剤層等の各層を設けたものが挙げられる。例えば、本発明の蛍光消光材料を下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、粘着層等に含有させた構成でもよく、これらの層とは別に本発明のフィルム形成用組成物を用いて形成される層を有する構成でもよい。本発明の光学フィルターの構成としては、本発明の蛍光消光材料を粘着層に含有させたものが、製造工程を削減でき、積層された光学フィルターを安価に製造できるので好ましい。
【0095】
上記透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリイミド;ポリウレタン;エポキシ樹脂;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4'−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等のビニル化合物;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸エステル等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂等の高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。透明支持体の厚みは、特に制限されるものではないが、0.01〜0.5mmの範囲が好ましい。
【0096】
上記透明支持体中には、無機微粒子、紫外線吸収剤、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤等を添加することができ、また、上記透明支持体には、各種の表面処理を施すことができる。
【0097】
上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0098】
上記各種表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
【0099】
上記下塗り層は、光吸収剤を含有する光吸収層を設ける場合に、透明支持体と光吸収層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、光吸収層側の表面が粗面である層、又は光吸収層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成する。また、下塗り層は、光吸収層が設けられていない透明支持体の面に設けて、透明支持体とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するために設けてもよく、光学フィルターと画像表示装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、透明支持体とフィルター層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。光吸収層の表面が粗面である下塗り層は、粗面の上に光吸収層を形成することで、透明支持体と光吸収層とを接着する。光吸収層の表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。光吸収層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロン及び高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターには、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤、硬膜剤等を添加してもよい。
【0100】
上記反射防止層においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、特開平6−115023号、特開平8−313702号、特開平7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、特開平6−299091号、特開平7−168003号の各公報に記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、特開平6−56478号、特開平7−92306号、特開平9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0101】
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、アクリル系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いてもよい。
【0102】
さらに高い屈折率を得るため、上記ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0103】
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成してその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0104】
上記ハードコート層は、上記透明支持体の硬度よりも高い高度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)等を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
【0105】
上記反射防止層(低屈折率層)の表面は、潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0106】
次に、以上の構成からなる本発明の光学フィルターの製造方法について、その好ましい一実施態様である粘着剤層を有する光学フィルターを例にして説明する。尚、以下の説明において、本発明の蛍光消光材料は、前記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表される陰イオンとからなるシアニン化合物及び前記層状粘土鉱物とした。
【0107】
まず、バインダー樹脂である粘着性樹脂を用意する。次に、該粘着性樹脂の固形分100質量部に対し、前記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表される陰イオンとからなるシアニン化合物及び層状粘土鉱物を合計で好ましくは0.0001〜50質量部、さらに好ましくは0.001〜5.0質量部、及びメチルエチルケトン等の溶剤を好ましくは0.1〜1000質量部、さらに好ましくは0.1〜500質量部配合して、本発明のフィルム形成用組成物である粘着剤溶液を調製する。この粘着剤溶液を、易密着処理をしたPETフィルム等の透明支持体に塗布した後、乾燥させ、厚さ2〜400μm、好ましくは5〜40μmの粘着層を有する本発明の光学フィルターを得る。
【0108】
本発明の光学フィルターにおいて、本発明の蛍光消光材料や、光吸収剤、各種安定剤等の任意成分を、上記透明支持体及び任意の各層から選択される任意の隣り合う二者間の粘着剤層に含有させる方法を採用する場合には、本発明の蛍光消光材料等を粘着性樹脂に含有させて本発明のフィルム形成用組成物とした後、該フィルム形成用組成物を粘着剤として用いて、上述した透明支持体及び任意の各層のうちの隣り合う二者を接着すればよい。更に粘着剤層の表面に、易密着したポリエチレンテレフタレートフィルム等の公知のセパレータフィルムを設けることもできる。
【0109】
上記の下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、光吸収層、粘着剤層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許第2761791号、米国特許第2941898号、米国特許第3508947号、米国特許第3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例等をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
尚、下記作成例1〜4は、本発明の蛍光消光材料を用いた本発明の光学フィルターの作成例を示す。下記実施例1においては、本発明の蛍光消光材料を含有するフィルム形成用組成物を用いて本発明の光学フィルターを作成し、得られた光学フィルターにより、本発明の蛍光消光材料の蛍光消光能評価を行った。実施例2においては、実施例1で作成した光学フィルターを用いて、本発明の蛍光消光材料の蛍光消光能の耐久性評価を行った。
【0111】
〔作成例1〕光学フィルターの作成1
下記の配合にてフィルム形成用組成物(塗工液)を調製し、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該塗工液をバーコーター#20により塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚10μmの粘着剤層を有する光学フィルターを得た。
(配合)
スミペックス LG 2.5g
(住友化学社製アクリル系粘着性樹脂、樹脂分40質量%)
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩 2mg
メチルエチルケトン 2.5g
【0112】
〔作成例2〕光学フィルターの作成2
下記の配合にてフィルム形成用組成物(塗工液)を調製し、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該塗工液をバーコーター#90により塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚10μmの粘着剤層を有する光学フィルターを得た。
(配合)
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩 2.0mg
アクリル系粘着剤(デービーボンド5541:ダイアボンド社製) 20g
メチルエチルケトン 80g
【0113】
〔作成例3〕光学フィルターの作成3
下記の配合をプラストミルで260℃にて5分間溶融混練した。混練後、直径6mmのノズルから押出し水冷却ペレタイザーでフィルム形成用組成物(色素含有ペレット)を得た。このペレットを、電気プレスを用いて250℃で0.25mm厚の薄板状のフィルムに成形した。
(配合)
ユーピロンS−3000 100g
(三菱瓦斯化学社製;ポリカーボネート樹脂)
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩 0.01g
【0114】
〔作成例4〕光学フィルターの作成4
下記の配合にてフィルム形成用組成物(UVワニス)を作成し、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該UVワニスをバーコーター#9により塗布した後、80℃で30秒間乾燥させた。その後、赤外線カットフィルムフィルター付き高圧水銀灯にて紫外線を100mJ照射し、硬化膜厚5μmのフィルター層を有する光学フィルターを得た。
(配合)
アデカオプトマーKRX−571−65 100g
(ADEKA社製UV硬化樹脂、樹脂分80質量%)
化合物No.1の四フッ化ホウ酸塩 0.5g
メチルエチルケトン 60g
【0115】
〔実施例1〕本発明の蛍光消光材料を用いた光学フィルターの作成及び蛍光消光能評価
本発明の蛍光消光材料の成分としての下記化合物No.1〜No.6について、上記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオンとからなるシアニン化合物である下記化合物Aに対する蛍光消光能を、以下の手順で評価した。
デービーボンド5541(ダイヤボンド社製アクリル系粘着剤)5g、メチルエチルケトン0.999g、下記化合物Aの0.05質量%メチルエチルケトン溶液0.5g、本発明の蛍光消光材料の成分としてのシアニン化合物を〔表1〕の配合で0.5gのメチルエチルケトンに溶解したもの、及び本発明の蛍光消光材料の成分としてのルーセンタイトSTN(コープケミカル社製親油性スメクタイト)を〔表1〕の配合で混合して、フィルム形成用組成物(塗工液)を調製した。該塗工液を、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、該塗工液をバーコーター#90により塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、塗工面に0.9mm厚のガラスを貼り合わせて試験片(光学フィルター)を得た。該試験片について、透過スペクトル及び蛍光スペクトル並びに化合物Aの蛍光のλmaxにおける蛍光強度を測定した。結果を〔表1〕に示す。
【0116】
【化19】

【0117】
【化20】

【0118】
〔比較例1〕比較用の光学フィルターの作成及び蛍光消光能比較評価
本発明の蛍光消光材料の成分であるシアニン化合物を用いず、層状粘土鉱物を〔表1〕の配合で用いた以外は実施例1と同様にして、試験片(光学フィルター)を作成し、該試験片により、蛍光消光能を評価した。結果を〔表1〕に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
〔表1〕に示した結果から、以下のことが明らかである。
蛍光消光材料成分を全く用いない場合、上記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオンとからなるシアニン化合物に起因する蛍光が認められる(比較例1−1)。そこへ、本発明の蛍光消光材料の任意成分である層状粘土鉱物のみを含有させても(比較例1−2)、比較例1−1と蛍光強度は変わらず、消光効果は認められない。
これに対し、本発明の蛍光消光材料の成分である上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオンとからなるシアニン化合物を用いると、上記蛍光強度が弱くなる、すなわち消光する(実施例1−1〜1−6)。特に層状粘土鉱物と併用した場合(実施例1−7〜1−12)、消光効果が大幅に向上する。
【0121】
〔実施例2〕蛍光消光能の耐久性評価
実施例1−11の光学フィルターを試験片とし、本発明の蛍光消光材料の蛍光消光能の耐光性、耐熱性及び耐湿熱性を以下の方法で評価した。尚、ブランクとして、比較例1−1の光学フィルターについても同様の評価を行った。
<耐光性試験評価>
上記試験片について、蛍光消光材料の成分である化合物No.5のUV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、次いで、耐光試験機(スガ試験機(株)製テーブルサンTS−2)中で24時間放置した後、再度化合物No.5のUV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、放置前の透過率を100としたときの放置後の透過率の割合を求めて残存率とした。また、放置前後の化合物Aの蛍光強度を測定した。結果を〔表2〕に示す。
<耐熱性評価>
上記試験片について、蛍光消光材料の成分である化合物No.5のUV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、次いで、80℃の恒温槽に24時間放置した後、再度化合物No.5のUV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、放置前の透過率を100としたときの放置後の透過率の割合を求めて残存率とした。また、放置前後の化合物Aの蛍光強度を測定した。結果を〔表2〕に示す。
<耐湿熱性評価>
上記試験片について、蛍光消光材料の成分である化合物No.5のUV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、次いで、60℃/90%RHの恒温恒湿環境下に調整した恒温恒湿槽に500時間放置した後、再度化合物No.5のUV吸収スペクトルのλmaxでの透過率を測定し、放置前の透過率を100としたときの放置後の透過率の割合を求めて残存率とした。また、放置前後の化合物Aの蛍光強度を測定した。結果を〔表2〕に示す。
【0122】
〔比較例2〕比較用の光学フィルターの作成及び蛍光消光能の耐久性評価
蛍光消光材料の成分である化合物No.5に替えて、蛍光消光能を有する下記比較化合物0.31mgを用いた以外は実施例1−11と同様にして光学フィルターを作成し、該光学フィルターを試験片として、実施例2と同様にして評価を行った。結果を〔表2〕に示す。
【0123】
【化21】

【0124】
【表2】

【0125】
〔表2〕に示した結果から、比較化合物はいずれの条件下でも残存率が低く、経時的には蛍光強度が強く(すなわち蛍光消光能が弱く)なり、蛍光消光能の耐久性が低いが、上記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンとpAnq-で表されるq価の陰イオンとからなるシアニン化合物は、残存率が高く、蛍光強度の経時変化が小さいことから、本発明の蛍光消光材料は、蛍光消光能の耐光性、耐熱性及び耐湿熱性に優れることがわかる。尚、ブランクの結果から明らかなように、実施例2及び比較例2における蛍光強度の経時変化は、蛍光を発する化合物A(シアニン化合物)の劣化に依存するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるシアニン陽イオンと、pAnq-で表されるq価の陰イオン(qは、1又は2の整数であり、pは、電荷を中性に保つ係数を表す)とからなるシアニン化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする蛍光消光材料。
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は下記一般式(II)で表される置換基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−NR−、−CONH−、−NHCO−、−CONR−、−NRCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されていてもよく、Rは炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表し、
Qはポリメチン鎖を構成する、鎖中に環構造を含んでもよい連結基を表し、該ポリメチン鎖中の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、ジフェニルアミノ基、ハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアルコキシ基、又はハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよいアリール基で置換されていてもよい。)
【化2】

(式中、Ra〜Riは、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されていてもよく、Zは、直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されていてもよく、Mは、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【請求項2】
上記一般式(I)中、Qで表されるポリメチン鎖を構成する、鎖中に環構造を含んでもよい連結基が、下記一般式(III)で表される連結基である請求項1記載の蛍光消光材料。
【化3】

(式中、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−NHCO−又は−CONH−で中断されていてもよく、R3同士、R4同士及びR3とR5は互いに結合して環構造を形成していてもよく、mは0〜4である。)
【請求項3】
さらに層状粘土鉱物を含有する請求項1又は2記載の蛍光消光材料。
【請求項4】
バインダー樹脂に、請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光消光材料を配合してなることを特徴とするフィルム形成用組成物。
【請求項5】
さらに、下記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンと、pAnq-で表されるq価の陰イオン(qは、1又は2の整数であり、pは、電荷を中性に保つ係数を表す)とからなるシアニン化合物を少なくとも一種含有する請求項4記載のフィルム形成用組成物。
【化4】

(式中、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は下記一般式(II’)で表される置換基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−NR’−、−CONH−、−NHCO−、−CONR’−、−NR’CO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されていてもよく、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基を表し、
8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立に、下記一般式(V)又は(V’)で表される基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は下記一般式(II’)で表される置換基を表し、R8とR9、及びR10とR11は、互いに結合して環構造を形成していてもよく、
12、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は炭素原子数7〜30のアリールアルキル基を表し、該アルキル基及び該アリールアルキル基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−NHCO−又は−CONH−で中断されていてもよく、R12同士、R13同士及びR12とR14は互いに結合して環構造を形成していてもよく、
51、R52、R53、R54、R55、R56、R57及びR58は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基若しくは炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基を表し、R51〜R58のうち隣接する置換基は互いに結合して環構造を形成していてもよく、nは0〜4である。)
【化5】

(式中、Ra’〜Ri’は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されていてもよく、Z’は、直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で中断されていてもよく、M’は、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【化6】

(上記一般式(V)において、GとTの間の結合は、二重結合、共役二重結合又は三重結合であり、Gは炭素原子を表し、Tは炭素原子、酸素原子又は窒素原子を表し(但し、Tが酸素原子である場合はyとzは0であり、Tが窒素原子である場合はy+zは0又は1である。)、wは0〜4の数を表し、x、y及びzは、0又は1を表し、R01、R02、R03及びR04は、各々独立に、水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されていてもよく、R01とR04は結合してシクロアルケン環又は複素環を形成してもよい。
上記一般式(V’)において、G’とT’の間の結合は、二重結合又は共役二重結合であり、G’は炭素原子を表し、T’は炭素原子又は窒素原子を表し、w’は0〜4の数を表し、R01’は水素原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CO−で中断されていてもよく、G’及びT’を含む環は、ヘテロ原子を含んでもよい5員環、ヘテロ原子を含んでもよい6員環、キノリン環、イソキノリン環又はアントラキノン環を表し、これらG’及びT’を含む環は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよい。)
【請求項6】
上記バインダー樹脂が粘着性樹脂である請求項4又は5記載のフィルム形成用組成物。
【請求項7】
上記粘着性樹脂がアクリル系粘着性樹脂である請求項6記載のフィルム形成用組成物。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載のフィルム形成用組成物により構成される層を有する光学フィルター。
【請求項9】
画像表示装置用である請求項8記載の光学フィルター。
【請求項10】
上記画像表示装置がプラズマディスプレイである請求項9記載の光学フィルター。

【公開番号】特開2011−16879(P2011−16879A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161069(P2009−161069)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】