説明

蛍光温度計測方法及び蛍光温度計測システム

【課題】蛍光強度法に比べて蛍光退色にロバストなシステムで実現可能な温度計測システムを提供する。
【解決手段】
蛍光温度センサ1の蛍光画像を色情報取得装置3で取得し、蛍光画像のRGB情報からYCrCb色空間で表される色差情報を抽出し、その色差情報と温度の較正直線を用いて温度計測を行う。RGB情報の各色成分は輝度値の情報を含むため、蛍光強度変化の影響を受けやすい。本発明は、輝度と色成分を分離した、輝度値(Y)、赤の色差(Cr)、青の色差(Cb)で構成される色空間を用いる。Cr及びCbと温度の較正直線を用いて温度計測を行うことで蛍光強度変化に対してロバストな蛍光温度計測方法を実現する。また、蛍光温度センサ1を励起するための励起光源2と、蛍光画像を取得するための色情報取得装置3、蛍光画像からYCrCb色空間に変換し色差情報を抽出し、温度を算出する制御部11を有する蛍光温度計測システム20を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光物質から発する光情報を用いた温度計測方法及び装置に係り、主に生命化学、医療分野といったバイオ系研究・産業分野だけではなく、半導体エレク トロ二クス、電力、食品工業分野等の工業系産業分野でも用いられ、蛍光の色情報を用いることで蛍光の退色の影響を軽減し、長時間安定かつ高感度な温度計測を行う温度センサ及びその温度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度計測技術は、工学、医学、化学等の様々な分野、産業において、生産工程や化学反応プロセスの管理、細胞等の生体物質の状態計測に関して必要不可欠な技術である。特に、過酷な環境や、マイクロ・ナノスケールの配線が困難な領域の温度計測については、非接触に温度を計測可能な示温性のインクや温度感受性を有する蛍光物質を用いた温度計測が行われてきた。特に細胞等の生体物質は従来の半導体加工技術を用いて作製した温度センサを設置することが困難であり、蛍光色素や量子ドットを用いた蛍光温度計測手法が研究・開発されてきた。
【0003】
蛍光物質を用いた温度計測には、これまでに蛍光物質の量子収率の温度依存性による蛍光強度変化を用いた温度計測手法(例えば、非特許文献文献1参照)、ナノ半導体である量子ドットのバンドギャップの温度依存性を用いた蛍光スペクトルのピーク波長の温度依存性を用いた温度計測、蛍光物質の蛍光寿命の温度依存性を用いた手法がある。以上の手法を用いて細胞表面や細胞内等のマイクロ・ナノスケールでの温度計測や配線が不要な温度計測が実現されてきた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G. W. Walker, V. C. Sundar, C. M. Rudzinski, A. W. Wun, M. G. Bawendi, D. G. Nocera, “Quantum-dot optical temperature probes,” Applied Physics Letters, 83, 17, pp. 3555-3557, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光強度変化を用いた手法は、蛍光物質の退色による計測値の減少が温度の計測精度に大きな影響を与える。また、蛍光の励起光源の揺らぎの影響を受けるため、連続計測において計測値のばらつきが生じることも計測精度に影響を及ぼすといった課題があった。 蛍光スペクトルのピーク値変化を用いた方法は、1K以下の分解能での温度計測には適用できない。(3)蛍光寿命を用いた手法は、計測装置のコストが非常に高い。
本発明はこのような課題に着目してなされたもので、蛍光強度法に比べて蛍光退色にロバストなシステムで実現可能な温度計測技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0007】
上記「発明が解決しようとする課題」において述べた問題を解決するためになされた発明は、複数の温度における蛍光画像をカラー画像として、温度とともに取得する画像取得手段と、前記画像取得手段で取得した複数の温度の各温度における前記蛍光画像のRGB情報から、YCrCb色空間で表される色差情報を抽出する色差情報抽出手段と、前記画像取得手段で取得した前記複数の温度に対して、前記色差情報抽出手段で抽出した各温度に対する色差情報を関連付ける較正直線を作成する較正直線作成手段と、前記較正直線作成手段で作成した較正直線を用いて温度計測を行う温度計測手段と、蛍光物質を内部及び表面に固定して作製する励起光を照射することで温度に応じた色の蛍光を発する温度センサと、を備えたことを特徴とする蛍光温度計測方法及び蛍光温度計測システム(20)であって、蛍光強度法に比べて安定かつ蛍光退色にロバスト、また蛍光スペクトルのピーク波長シフトに比して計測感度が高く、蛍光寿命に比して安価で簡便に計測システムを構築できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、複数の温度における蛍光画像のカラー画像として、励起光源(2)を用いて蛍光物質を内部及び表面に固定した蛍光温度センサ(1)を励起し、異なる温度での蛍光画像を色情報取得装置(3)で取得する画像取得システムと、前記画像取得システムで取得した複数の温度の各温度における前記蛍光画像のRGB情報からYCrCb色空間で表される色差情報を計算機により抽出する色差抽出システムと、各温度に対する色差情報を関連付ける較正直線から前記色差情報から温度を算出する温度計測システムと、を備えたことを特徴とする蛍光温度計測方法及び蛍光温度計測システム(20)である。
【0009】
このような蛍光温度計測システム(20)では、励起光源(2)で励起された蛍光温度センサ(1)からの蛍光画像を色情報取得装置(3)で取得し、制御部(11)において蛍光像のRGB情報からYCrCb色空間で表される色差情報を抽出し、その色差情報と温度の較正直線を作成し、その結果を用いて温度計測を行うことで、蛍光強度法に比べて蛍光退色にロバスト、かつ蛍光スペクトルのピーク波長シフトに比して計測感度が高く、蛍光寿命に比して安価なシステムで構築できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、複数の温度における蛍光画像のカラー画像として、励起光源(2)を用いて蛍光物質を内部及び表面に固定した蛍光温度センサ(1)を励起し、異なる温度での蛍光画像を色情報取得装置(3)で取得する画像取得工程と、前記画像取得工程で取得した複数の温度の各温度における前記蛍光画像のRGB情報からYCrCb色空間で表される色差情報を計算機により抽出する色差抽出工程と、各温度に対する色差情報を関連付ける較正直線から色差抽出工程により抽出した前記色差情報から温度を算出する温度計測工程と、により蛍光温度測定を行うことを特徴とする蛍光温度計測方法である。
【0011】
通常色情報取得装置(3)で取得するRGB情報の各成分は画像の輝度値の情報を含むため、蛍光の強度変化の影響を受けやすい。このため蛍光色としてR、G、Bの色情報をそのまま用いることは適さない。本発明では、RBG色情報から蛍光強度、つまり輝度情報を分離した色成分のみの情報を抽出することで、蛍光強度変化の影響を低減する。
【0012】
本計測手法で用いる色空間は、輝度値(Y)、赤の色差(Cr)、青の色差(Cb)から構成される。RGB色空間からYCrCb色空間への変換は式1を用いて行う。Cr及びCbは輝度情報が分離されているため、蛍光強度変化に対してロバストである。Cr及びCbと温度で較正を行い、その較正直線(下記式1に示す)を用いて温度計測を行う。
【0013】
【数1】

【0014】
本手法は、蛍光画像のピクセル毎のR、G、B情報からCr及びCbを求めるため、色情報取得装置(3)の画素数と画像取得領域のサイズから温度計測の計測分解能が決定される。例えば、色情報取得装置(3)のズーム機能や顕微鏡に搭載されるような高倍率の対物レンズ(4)を用いることで数十nmの空間分解能を達成可能である。
【0015】
本手法は、蛍光画像の各ピクセルの色変換により温度を計測するため、色情報取得装置(3)としては市販の安価な装置を用いて計測シスムを構築可能である。また、得られた計測値に対して制御部(11)において加算平均等、従来の計測器で用いられている信号処理手法を適用することでノイズ除去等を行い感度及び精度の向上が可能である。
【0016】
本手法は、蛍光物質の励起に用いる励起光源(2)として、水銀ランプ、キセノンランプ、レーザ等、従来の蛍光観察に用いられてきた光源を使用可能である。
本手法で用いる蛍光温度センサ(1)に導入する蛍光物質は、蛍光退色におけるCr及びCbの変化を防ぐためには、蛍光の退色における蛍光画像のR、G、Bの時間に対する低下量が同等であることが望ましい。
【0017】
温度感受性の蛍光物質として、例えば、ローダミンBやフルオレセイン等に代表される温度感受性の蛍光色素、CdSe/ZnS等の量子ドット等があるが、色情報取得装置(3)のホワイトバランスや感度の調整、励起光源(2)の調整により上記の条件を満たすことができる蛍光物質を使用する。
【0018】
本手法で用いる蛍光物質としては、蛍光退色におけるCr及びCbの変化を防ぐためには、蛍光の退色における蛍光画像のR、G、Bの時間に対する低下量が同等であることが望ましい。
【0019】
蛍光温度センサ(1)としては、上記の蛍光物質をそのまま計測環境中に散布した状態で用いることができる。また、蛍光物質をポリマーやガラス等で構成される微粒子、膜、ブロック、トロイダル、等の任意の形状の構造体に封入して用いることが可能である。
【0020】
構造体の作製方法は、鋳型またはフォトリソグラフィに代表される半導体加工技術、塩析・熱重合・光重合等の化学的反応プロセス等から任意に選択できる。
この温度センサは、温度指示薬として封入している蛍光物質と干渉しない励起・蛍光スペクトルの蛍光物質であれば、同時に用いることが可能であり、温度以外の環境に対して感受性を有する蛍光物質もしくは呈色性の指示薬を用いることでマルチ環境パラメータ計測に用いることが可能である。
【0021】
本発明によれば、従来の蛍光強度法で課題となっていた蛍光の退色の影響を低減させることで長時間安定した温度計測を行うことができ、従来の蛍光強度法と同様の計測方法で実施可能な、蛍光温度計測方法及び蛍光温度計測システム(20)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る蛍光温度計測システムの構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る30度を基準としたRの相対値と温度の較正結果のグラフである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る30度を基準としたGの相対値と温度の較正結果のグラフである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る30度を基準としたBの相対値と温度の較正結果のグラフである。
【図5】本発明の第1実施形態に係る30度を基準としたとしたYの相対値と温度の較正結果のグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態に係る30度を基準としたCrの相対値と温度の較正結果のグラフである。
【図7】本発明の第1実施形態に係るRの時間経過による相対変化のグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態に係るGの時間経過による相対変化のグラフである。
【図9】本発明の第1実施形態に係るBの時間経過による相対変化のグラフである。
【図10】本発明の第1実施形態に係るYとCrの時間経過による相対変化のグラフである
【図11】本発明の第2実施形態に係る蛍光温度計測システムの模式図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る蛍光温度計測システムの模式図である。
【図13】本発明の第1実施形態に係る制御部における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の蛍光色情報による温度計測の模式図を示している。蛍光温度計測システム20は、図1に示すように、蛍光温度センサ1、励起用光源2、色情報取得装置3、制御部11、を備えている。
【0024】
蛍光温度センサ1は励起光を照射することで温度に応じた色の蛍光を発するものである。具体的には、温度感受性の蛍光物質を内部及び表面に固定して成形したものである。
蛍光温度センサ1は、ポリマーを材料とする微粒子中に蛍光物質として量子ドットを封入したものであり、マイクロ流体チップ5の底面に固定されている。また固定する対象は、マイクロ流体チップ1等の人工物に加え、細胞等の生体物質でもよい。加えて細胞内部・細胞核内部に配置してもよい。
【0025】
蛍光温度センサ1としては、ポリエチレングリコールを主成分とする親水性光硬化性樹脂を材料とする微粒子中に蛍光物質として蛍光波長560nmのCdSe/ZnSで構成される量子ドットを封入したものであり、マイクロ流体チップ底面に固定する。
【0026】
励起光源2は、蛍光温度センサ1に固定した蛍光物質を励起して蛍光を発する鵜ために用いられるものである。具体的には,水銀ランプやレーザを用いる。
励起光源2としては水銀ランプを用い、バンドパスフィルタにより545nmを含む励起光をダイクロイックミラー9、対物レンズ4を通して蛍光温度センサ1に照射し、蛍光温度センサ1からの蛍光をカラーCCD3で取り込み蛍光画像を得る。励起光源2としてはレーザを用いてもよい。
【0027】
色情報取得装置3は励起光源2からの光で励起された蛍光温度センサ1からの温度に応じた色の蛍光を受け取るものである。具体的にはカラーCCD等を用いる。
制御部11は色情報取得装置3で得た蛍光画像を受け取り色情報を色差情報に変換し、温度較正直線と比較し温度を算出して出力するものである。具体的にはCPU、ROM、RAM及びI/Oを備えたものである。
(制御部における処理の説明)
図13のフローチャートにより、蛍光温度計測システム20において、制御部11で実行される蛍光画像のRGBからYCrCbへの変換処理について説明する。制御部11は、S101ステップにおいて、色情報取得装置3で得られた画像情報を受け取る。
S102ステップにおいて、制御部は受け取った画像情報をYCrCb情報に下記式1を用いて変換する。
【0028】
【数1】

【0029】
S103ステップにおいて,得られたCrもしくはCbの色差情報を制御部内に保存された温度較正直線と比較し、温度情報を計算しデータをファイルに保存もしくは外部に出力する。
【0030】
マイクロ流体チップ5は顕微鏡ステージ6上に設置されており、顕微鏡は対物レンズ4、励起用の光源2、カラーCCD3を備えている。カラーCCD3は制御部11に接続されている。
【0031】
以上のような蛍光温度計測システム20において、蛍光温度センサ1の環境の温度を303K、308K、313K、318K、323Kに変化させ、それぞれの温度での蛍光画像を取得し、蛍光温度センサの中心のR、G、B値を取得したところ、それぞれ図2、図3、図4に示す結果となった。Rの30℃に対する相対変化率は−1.3%/K、Gの30℃に対する相対変化率は−1.4%/K、Bの30℃に対する相対変化率は−1.2%/Kであった。YとCrの相対変化率は図5、図6から−1.1%/K、−1.3%/Kであり、赤の色差情報Crを用いた温度計測の感度は従来の蛍光強度法と同程度の感度を有している。
【0032】
図7、図8、図9は温度を一定に保った状態における蛍光退色に対するR、G、Bの時間変化を示している。R、G、Bの時間に対する低下率はそれぞれ−5.82/s、−5.50/s、−5.47/sであり、いずれも近い値を示している。以上のことから図10に示すようにYは時間とともに低下するが、Crの変化はYに比べて非常に少ない。これは、R、G、Bの時間にたいする変化量が同程度であったことから、Crの計算式よりR、G、Bの変化量が同じ時にCrは変化しないためである。Yの時間変化率は4%/sであり、Crの時間変化率は0.4%/sであった。
【0033】
また、図10のCrの値はYに比べてばらつきが抑えられている。これは、Yのあ値は量子ドットのブリンキング減少による明滅減少や励起光源のゆらぎが影響していると考えられるが、Crはその影響を受けにくいためである。
【0034】
以上より、退色時のR、G、Bの時間変化量が同程度の蛍光温度センサと蛍光色情報としてYCrCb色空間の赤の色差情報を用いることで、蛍光退色に対してロバストかつ従来の蛍光強度法と同程度の感度での温度計測法を実現できている。
[第2実施形態]
次に、図11に基づき第2実施形態について説明する。
【0035】
図11は第2実施形態の蛍光色情報による温度計測の模式図を示している。
蛍光温度センサ1はレーザ11によってマイクロ流体チップ5中でトラップされチップ中の任意の場所へ搬送可能である。蛍光温度センサ1の操作に用いるレーザは蛍光温度センサ1の励起波長を含んでいないことが望ましい。また、センサの操作手段としては、レーザの他に、電場、磁場、超音波、流体力を用いてもよい。
【0036】
蛍光温度センサ1をレーザ11によりトラップ若しくは任意の計測点まで搬送後に励起光源2から励起光7を蛍光温度センサ1に照射し、第1の実施形態と同様の手順で温度計測を行う。
[第3実施形態]
次に、図12に基づき第3実施形態について説明する。
【0037】
図12は第3実施形態の蛍光色情報による温度計測の模式図を示している。
蛍光温度センサはマイクロ・ナノスケールの微粒子でなくともよく、鋳型またはフォトリソグラフィに代表される半導体加工技術、塩析・熱重合・光重合等の化学的反応プロセス等を用いて作製したミリメートルスケールの大きさの構造体であってもよい。図12に示したように励起光源2から励起光7を蛍光温度センサ12に照射し、蛍光情報をカラーCCD3で取得する。計測時の機器のレイアウトを較正時と同じ状態に維持することで、本形態においても温度計測が可能である。
【0038】
実施形態1、実施形態2、実施形態3を組み合わせて利用してもよい。例えば、実施形態3のように微粒子以外の形状の構造体をマイクロ流体チップ内に設置し、実施形態2と同様の手順で計測してもよい。また、実施形態2で任意の計測点までセンサを搬送・固定後に計測してもよい。また、微粒子形状のセンサを実施形態3のようにマイクロ流体チップ外で利用して計測してもよい。
【0039】
本発明によれば、過酷な環境やマイクロ・ナノスケールの温度計測に関し、従来の蛍光強度を用いていた手法では蛍光退色の影響にシグナルの変動があったものを、蛍光色情報を用い蛍光退色への影響を低減することで、長時間安定かつ高精度な温度計測技術の向上への影響が大きいと考える。また本手法は励起光源とカラーCCDで計測システムを構築できるため、蛍光寿命法を用いた計測にくらべ安価かつ簡便に計測システムが構築でき産業応用に適していると考える。また本発明で実現される技術は医学・生物だけでなく食品加工や半導体産業にも応用可な技術と考えている。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、第1実施形態〜第3実施形態では、温度計測に蛍光物質のみを用いているとしたが、蛍光物質に加えて呈色性の温度指示薬を用いて計測の補正を行うとしてもよい。
【0041】
加えて、励起光や蛍光の干渉がなければ、温度計測以外に用いられる蛍光物質や呈色性の指示薬を同時に用いて複数の環境の同時計測を行ってもよい。
また、第1実施形態〜第3実施形態において、制御部において加算平均等、従来の計測器で用いられている信号処理手法を適用することで、ノイズ除去等を行い感度及び精度の向上が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…蛍光温度センサ(微粒子形状)、2…励起用光源、3…色情報取得装置、4…対物レンズ、5…マイクロ流体チップ、6…顕微鏡ステージ、7…励起光、8…蛍光、9…ダイクロイックミラー、10…全反射ミラー、11…制御部、11…光ピンセットによる操作用レーザ、12…蛍光温度センサ(微粒子形状以外)、13…台、20…蛍光温度計測システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の温度における蛍光画像をカラー画像として、温度とともに取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段で取得した複数の温度の各温度における前記蛍光画像のRGB情報から、YCrCb色空間で表される色差情報を抽出する色差情報抽出手段と、
前記画像取得手段で取得した前記複数の温度に対して、前記色差情報抽出手段で抽出した各温度に対する色差情報を関連付ける較正直線を作成する較正直線作成手段と、
前記較正直線作成手段で作成した較正直線を用いて温度計測を行う温度計測手段と、
蛍光物質を内部及び表面に固定して作製する励起光を照射することで温度に応じた色の蛍光を発する温度センサと、
を備えたことを特徴とする蛍光温度計測方法及び蛍光温度計測システム。
【請求項2】
複数の温度における蛍光画像のカラー画像として、励起光源を用いて蛍光物質を内部及び表面に固定した蛍光温度センサを励起し、異なる温度での蛍光画像を色情報取得装置で取得する画像取得システムと、
前記画像取得システムで取得した複数の温度の各温度における前記蛍光画像のRGB情報からYCrCb色空間で表される色差情報を計算機により抽出する色差抽出システムと、 各温度に対する色差情報を関連付ける較正直線から前記色差情報から温度を算出する温度計測システムと、
を備えたことを特徴とする蛍光温度計測システム。
【請求項3】
複数の温度における蛍光画像のカラー画像として、励起光源を用いて蛍光物質を内部及び表面に固定した蛍光温度センサを励起し、異なる温度での蛍光画像を色情報取得装置で取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程で取得した複数の温度の各温度における前記蛍光画像のRGB情報からYCrCb色空間で表される色差情報を計算機により抽出する色差抽出工程と、
各温度に対する色差情報を関連付ける較正直線から色差抽出工程により抽出した前記色差情報から温度を算出する温度計測工程と、
により蛍光温度測定を行うことを特徴とする蛍光温度計測方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図1】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−113614(P2013−113614A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257730(P2011−257730)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年5月26日 一般社団法人日本機械学会発行の「No.11−5 ロボティクス・メカトロニクス講演会2011 講演概要集」に発表
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】