説明

蛍光測定装置

【課題】蛍光測定装置において、使い捨てられる程度安価で消耗品となり得るセンサ部を用い、しかも全血、血清や、尿など着色した試料や、または光を散乱させる試料中の微量成分も測定でき、測定の再現性を保持できる安価なものにする。
【解決手段】蛍光測定装置100は、励起光50aを発する光源50と、内部において励起光50aを伝搬させて他端からエバネッセント光を出射させ、他端が浸漬された試料液中の測定対象物質の存在を示す蛍光体を励起光50aにより励起するセンサ部51と、前記励起により蛍光体から発せられた蛍光59を検出する光検出器37とを備える。センサ部51は、柱状のセンサ部本体52と、センサ部本体52の少なくとも他端に隣接する外周面との間に空間Aを介してセンサ部本体52を囲む筒状のカバー部53を備える。カバー部53は、他端側の端部において空間Aを閉塞する閉塞部53aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光法により試料中の特定物質を検出する蛍光測定装置、特に詳細にはセンサ部を試料液中に浸漬するタイプの蛍光測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオ測定等において、高感度かつ容易な測定法として蛍光法が広く用いられている。この蛍光法は、特定波長の光により励起されて蛍光を発する測定対象物質を含むと考えられる試料に上記特定波長の励起光を照射し、そのとき蛍光を検出することによって測定対象物質の存在を確認する方法である。また、測定対象物質が蛍光体ではない場合、蛍光体で標識されて測定対象物質と特異的に結合する物質を試料に接触させ、その後上記と同様にして蛍光を検出することにより、この結合すなわち測定対象物質の存在を確認することも広くなされている。
【0003】
図10は、上記の標識された物質を用いる蛍光法を実施するセンサの一例を概略図示するものである。本例の蛍光測定装置は一例として液体試料1に含まれる抗原2を検出するためのものであり、基板3には抗原2と特異的に結合する1次抗体4が塗布されている。そしてこの基板3上に設けられた試料保持部5の中において液体試料1が流され、次いで同様に蛍光体10で標識されて抗原2と特異的に結合する2次抗体6が流される。その後、基板3の表面部分に向けて光源7から励起光8が照射され、また光検出器9により蛍光検出がなされる。このとき、光検出器9によって所定の蛍光が検出されたなら、上記2次抗体6と抗原2との結合、すなわち試料中における抗原2の存在を確認できることになる。
【0004】
なお以上の例では、蛍光検出によって実際に存在が確認されるのは2次抗体6であるが、この2次抗体6は抗原2と結合しなければ流されてしまって基板3上に存在し得ないものであるから、この2次抗体6の存在を確認することにより、間接的に測定対象物質である抗原2の存在が確認されることとなる。
【0005】
とりわけここ数年は、冷却CCDの発達など光検出器の高性能化が進んでいることもあって、以上述べた蛍光法はバイオ研究には欠かせない手段となっており、さらにバイオ以外の分野においても広範に利用されている。特に可視領域では、例えばFITC(蛍光波長:525nm、量子収率:0.6)や、Cy5(蛍光波長:680nm、量子収率:0.3)のように、実用の目安となる0.2を超える高い量子収率を持つ蛍光色素が開発されており、蛍光法の応用分野がさらに拡大することが期待されている。
【0006】
また従来、エバネッセント光を用いる蛍光法も提案されている。この方法を実施する蛍光測定装置の一例を図11に概略的に示す。なおこの図11において、図10中の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。
【0007】
この蛍光測定装置においては、前述の基板3に代わるものとしてプリズム(誘電体ブロック)13が用いられ、このプリズム13に前記1次抗体4が塗布される。そして光源7からの励起光8が、このプリズム13と液体試料1との界面で全反射する条件で、プリズム13を通して照射される。この構成においては、励起光8が上記界面で全反射するとき該界面近傍に染み出すエバネッセント光11により2次抗体6が励起される。そして蛍光検出は、液体試料1に対してプリズム13と反対側(図中では上方)に配された光検出器9によってなされる。
【0008】
この蛍光測定装置において、励起光8は図中の下方から全反射する角度で入射することで、上記界面から数百nmの領域にしか到達しないエバネッセント光11を発生させ2次抗体6を励起するため、液体試料1で反射・散乱した励起光8および、励起光8により励起された液体試料1、容器から発せられる蛍光(自家蛍光)が光検出器9に達して、検出したい蛍光信号に対するバック・グラウンドとなるといった問題を最小限に抑えることができる。そのため、このエバネッセント蛍光法は、従来の蛍光法と比べて(光)ノイズを大幅に低減でき、測定対象物質を1分子単位で蛍光測定できる方法として注目されている。
【0009】
上述のような蛍光法を実施するための装置の一つとして、例えば特許文献1に記載が有るように、励起光を発する光源と、内部において励起光を伝搬させて外表面から出射させ、試料液中の測定対象物質の存在を示す蛍光体を励起光により励起するロッド状や板状のガラス等からなるセンサ部と、上記励起により蛍光体から発せられた蛍光を検出する光検出器とを備えてなるものが知られている。この種の装置によって測定を行う際には、通常センサ部が試料液中に浸漬され、そこから試料液中に出射した励起光により蛍光体が励起される。そして、それにより生じた蛍光が光検出器によって検出されるようになっている。
【0010】
なお、特許文献2や特許文献3には、上述のようなセンサ部として光ファイバを適用することが示されている。特に特許文献2には、この光ファイバの表面から漏れ出すエバネッセント光で蛍光体を励起することも記載されている。
【0011】
上述のように試料液中に浸漬されるセンサ部を用いる蛍光測定装置は、液槽の一部にセンサ部を組み込み、そこにポンプ等を用いて試料液を導入するタイプの蛍光測定装置と比べると構成が簡素化されて安価に形成可能であるという利点を有する。
【特許文献1】米国特許第4703182号公報
【特許文献2】特許1916924号公報
【特許文献3】特開2006−047250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、試料液中に浸漬されるセンサ部を用いる従来の蛍光測定装置では、例えば1p・mol(ピコ・モル) /l(リットル)程度の極めて微量の測定対象物質を測定したい場合には、十分な測定精度が得られないという問題が認められている。この問題は、測定対象物以外の吸収・散乱成分が多く含まれる全血、血清や、尿など着色したものが測定対象物である場合、および、センサ部がクラッドや被覆のついた光ファイバではなく、より安価なガラスや一体成型した透明樹脂等からなるロッド状のものである場合に顕著に認められる。これは励起光・受光光が、光導波路となる上記ガラス等の中を伝播する間に、界面でそれらの測定対象物と接することで散乱し、または吸収されて減衰することによる。その影響を低減するために、一般にクラッドや被覆のついた光ファイバが用いられることがあるが、使い捨てが求められる上記の分野では消耗品が高価になってしまうためコスト面から採用できない。
【0013】
また、洗浄し不要な成分を除去する工程を設ければ、安価なロッド状のセンサ部を採用できるが、洗浄するために分注器・ポンプなどの高価な送液機構が必要になり装置が高価になってしまう。
【0014】
また試料液などの溶液に浸漬された状態で蛍光測定が行われるセンサ部は、溶液への挿入方法、溶液の液量及び液ゆれ等によって励起光・受光光の前記界面での反射率や光路等の全反射条件が変化してしまう虞があり、測定の再現性を保持することが困難である。
【0015】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、使い捨てられる程度安価で消耗品となり得るセンサ部を用い、しかも全血、血清や、尿など着色した試料や、または光を散乱させる試料中の微量成分も測定でき、測定の再現性を保持できる安価な蛍光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による蛍光測定装置は、励起光を伝搬させるセンサ部を試料液中に浸漬するタイプの蛍光測定装置において、センサ部の外表面に付着した試料液等によって励起光や蛍光が吸収され、あるいは散乱するのを防止できるようにしたものであって、具体的には、
励起光を発する光源と、
一端から入射した励起光を内部において伝搬させて他端からエバネッセント光を出射させ、該他端が浸漬された試料液中の測定対象物質の存在を示す蛍光体を励起光により励起するセンサ部と、
励起により蛍光体から発せられた蛍光を検出する光検出器とを備えてなる蛍光測定装置において、
前記センサ部は、略柱状のセンサ部本体と、
センサ部本体の少なくとも前記他端に隣接する外周面との間に空間を介してセンサ部本体を囲む筒状のカバー部とを備えてなり、
カバー部は、前記他端側の端部において空間を閉塞する閉塞部を有するものであることを特徴とするものである。
【0017】
なお「空間」は、空気層であっても、真空であってもよい。
【0018】
本発明においては、センサ部本体の励起光が反射しない部分に、該部分とカバー部とを架橋する補強用のリブを形成してもよい。
【0019】
また、カバー部が励起光及び/又は蛍光を吸収する材料で成形又は塗装されていることが好ましい。
【0020】
このカバー部は、センサ部本体との一体成型により形成されたものであることが好ましい。また、このカバー部は、センサ部を所定位置に保持する保持装置の保持部に係合する係合部を備えてもよい。
【0021】
また本発明においては、センサ部本体が励起光を導波モードで伝搬させるものであることが好ましい。
【0022】
また、センサ部の前記他端の外表面に測定対象物質に結合するリガンドが固定されていることが好ましい。
【0023】
また本発明の蛍光測定装置は、必要な試薬、センサ部、反応槽等がセットで供給、廃棄されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明者は、従来の蛍光測定装置に認められる前述の問題すなわち、安価なセンサ部を使い、安価な装置で微量の測定対象物質を測定したい場合に十分な測定精度が得られないという問題は、試料液中に浸漬されているセンサ部の周囲に試料液等が存在したとき、励起光や蛍光がその試料液によって吸収され、あるいは散乱する結果、光検出器に励起光が検出され難くなっていることから生じていることを見出した。
【0025】
この新しい知見に基づいて本発明の蛍光測定装置は、センサ部が、略柱状のセンサ部本体と、センサ部本体の少なくともエバネッセント光が出射する他端に隣接する外周面との間に空間を介してセンサ部本体を囲む筒状のカバー部とを備えてなり、カバー部の前記他端側の端部において空間が閉塞されているので、カバー部の上端よりも下方に液面が位置するようにセンサ部を試料液中に浸漬すれば、カバー部が試料液と接触し、内部で励起光・受光光が伝搬するセンサ部本体はエバネッセント光が出射する他端側端面すなわちセンシング部分のみが直接試料液と接触するので、センサ部本体の外周面が直接試料液と接触するのを防止することができる。
【0026】
従って上記吸収、散乱の影響を無くして、微量な測定対象物質も十分な精度で測定可能となる。またセンサ部本体の外周面が試料液等の溶液と接しないことにより、溶液に浸漬した状態で蛍光測定を行う場合に、センサ部の溶液への挿入方法、溶液の量、液ゆれによって全反射の条件が変化することがないので、測定の再現性を保持することできる。また、空間がクラッド層の役割をすることができるので、センサ部にクラッド層を有する高価な光ファイバを使用する必要がない。これによりセンサ部を安価にすることができる。
【0027】
またセンサ部本体の励起光が反射しない部分に、該部分とカバー部とを架橋する補強用のリブが形成されている場合には、カバー部の強度を補強することができる。
【0028】
またカバー部が励起光及び/又は蛍光を吸収する材料で成形又は塗装されている場合には、このカバー部が例えばセンサ部本体内の不純物等によって励起光や蛍光が散乱して生じる散光等を吸収できるので、光検出器による散光の検出を防止することができる。
【0029】
またカバー部が、センサ部本体との一体成型により形成されたものである場合には、センサ部を安価に形成することができるので、使い捨ての要求が高い診断装置に採用するのに最適である。
【0030】
またカバー部が、センサ部を所定位置に保持する保持装置の保持部に係合する係合部を備えている場合には、全反射の条件を変化させることなくセンサ部を容易に前記所定位置に配設することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態による蛍光測定装置100の概略構成を示す概念図、図2は図1の蛍光測定装置100のセンサ部51の正面断面図(a)及び側面図(b)である。なお図1及び図2においては、便宜上、光源50が位置する側すなわち紙面上側を上方として説明する。
【0032】
本実施形態の蛍光測定装置100は、図1に示す如く、例えば波長635nm の励起光50aを発する半導体レーザ等の光源50と、光源50から発せられた励起光50aを光束調整するコリメータレンズ等の光学系21と、内部において励起光50aや後述する蛍光59を伝搬させる光導波路を有するセンサ部51と、例えば波長645nm以下の光は透過し、波長645nm以上の光は直角に反射するダイクロイックミラー22と、ダイクロイックミラー22で反射した光を検出する例えばフォトダイオード等の光検出器37とから概略構成されている。
【0033】
センサ部51は、例えば、屈折率n1=1.7の透明樹脂を用いて形成されたものであり、具体的にはフェノール樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド)(「プラスチックVol52No.8」安田武夫著p98-101プラスチック材料の各動特性の試験法と評価結果<19>)、さらに具体的にはHOYA製の「テスラリッド」(登録商標)、「アイリー」(登録商標)等を用いて形成する。
【0034】
本発明において特徴的なのはセンサ部51が、図2(a)、(b)に示す如く、略円柱状のセンサ部本体52と、センサ部本体52の少なくとも下端に隣接する外周面52cとの間に空間Aを介してセンサ部本体52を囲む筒状のカバー部53とを備えてなり、カバー部53が下端側の端部において空間Aを閉塞する閉塞部53aを有していることである。なお本実施形態では、空間Aは空気層Aとし、以下空気層Aとして説明する。
【0035】
センサ部本体52は、上記材料にて例えば直径W=略10mmの略円柱状に形成され、上端側は、図2(a)に示す如く、正面からみて上端面52aとの間に例えばθ0=略53度の角度を有する傾斜面52bが左右両側に形成されている。そしてセンサ部本体52とカバー部53とは、それらの下端面を略平坦にしてすなわちセンサ部51の下端面51aを略平坦にして一体成型により形成される。このようにカバー部53がセンサ部本体52との一体成型により形成されたものである場合には、センサ部51を安価に形成することができるので、使い捨ての要求が高い診断装置に採用するのに最適である。
【0036】
そして上述のようにセンサ部51は屈折率n1=1.7なので、センサ部51の周囲が例えば屈折率n2=1の空気等であれば臨界角θ=36.03度、屈折率n3=1.335の生理食塩水等であれば臨海角θ=51.75度となり、図1に示す如く、センサ部51の下端を、カバー部53の上端面よりも液面が下方に位置するように生理食塩水に浸漬する場合、傾斜面52bに垂直に励起光50aを入射すれば、センサ部本体52の周面において水平面と光線とのなす角度はθ1=37度、センサ部51の下端面51aにおいて垂直面と光線とのなす角度θ2は53度となり、周囲に空気が存在するセンサ部本体52の周面では角度θ1=37度は臨界角θ=36.03度よりも大きく、周囲に生理食塩水が存在する下端面51aでは角度θ2=53度は臨界角θ=51.75度よりも大きくなるので、励起光50aはセンサ部本体52内部及びセンサ部51の下端面51aで全反射することになる。
【0037】
このとき例えばセンサ部本体52の内部で4回全反射後にセンサ部51の下端面51aにて後述の蛍光体を励起したい場合には、図2(a)に示す如く、下端面51aから傾斜面52bの下端までの高さH2は、H2=4×W×tanθ1=30.14mmとする。なおセンサ部本体52の角度θ0、直径W、高さH2の値は、蛍光測定時にセンサ部本体52の外周面及びセンサ部51の下端面51aにおいて励起光や蛍光が全反射するように、空気やセンサ部51が浸漬する溶液等の屈折率などによって適宜変更される。
【0038】
本実施形態の蛍光測定装置100が測定対象としているのは、一例としてCRP抗原(分子量11万 Da)であり、それと特異的に結合する1次抗体(モノクロナール抗体)が上記下端面51aの上に固定される。この1次抗体は、例えば末端をカルボキシル基化したPEGを介して、アミンカップリング法により、上記下端面51aに固定される。一方2次抗体としては、蛍光体(Cy5 Ge-healthcare社)で標識化したモノクロナール抗体(1次抗体とはエピトープ <epitope;抗原決定基>が異なる)が用いられる。
【0039】
上記アミンカップリング法は一例として下記(1)〜(3)のステップからなるものである。なおこれは、30μl(マイクロ・リットル)のキュベット/セルを用いた場合の例である。
【0040】
(1)リンカー先端(末端)の-COOH基を活性化
0.1M(モル)のNHSと0.4MのEDCとを等体積混合した溶液を30μl加え、30分間室温静置。なお、
NHS:N-hydrooxysuccinimide
EDC:1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide
である。
【0041】
(2)1次抗体の固定化
PBSバッファ(pH7.4)で5回洗浄後、1次抗体溶液(500μg/ml)を30μl加え、30〜60分間室温静置
(3)未反応の -COOH基をブロッキング
PBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄後、1Mのエタノールアミン(pH8.5)を30μl加え、20分間室温静置。さらにPBSバッフア(pH7.4)で5回洗浄。
【0042】
なお、光源50としては上記半導体レーザに限らず、その他のLEDなどの公知の光源を適宜選択使用可能である。また光検出器37も前述のものに限らず、CCD、光電子増倍管、c-MOS等の公知のものを適宜選択使用可能である。また励起波長を変えれば、Cy5以外の色素を標識として用いることもできる。
【0043】
以下、上記構成の蛍光測定装置100の作用について、図1を参照して詳細に説明する。先ずセンサ部51を試料液としての血漿に浸漬する。このとき図1に示す如く、試料液の液面がカバー部53の上端面よりも下方に位置するように浸漬させる。こうすることにより、センサ部本体52の外周面は大気又は空気層Aと接し、カバー部53及びセンサ部51の下端面51aのみが直接血漿と接するので、内部で励起光・受光光が伝搬するセンサ部本体52の外周面に血漿が存在するのを防止することができる。そしてもし血漿の中にCRP抗原が含まれていれば、該CRP抗原と、センサ部51の下端面51aに固定された一次抗体とが結合される。なおセンサ部51を浸漬した状態で、センサ部51を軽く上下に動かすことにより、この結合は促進される。
【0044】
次に、センサ部51を前述した蛍光体で標識された2次抗体を含む反応液に浸漬する。このときも上記と同様、反応液の液面がカバー部53の上端面よりも下方に位置するように浸漬させ、軽く上下に動かす。こうすることで、センサ部51の下端面51a上の1次抗体にCRP抗原が結合していれば、該CRP抗原と2次抗体との結合が促進される。
【0045】
そしてその後、センサ部51をバッファ液に上記と同様に浸漬して上下動させて、センサ部51の下端面51aを洗浄する。これにより上記CRP抗原と、蛍光体で標識された2次抗体とが結合していれば、それらを除いた余計なものが洗い流される。
【0046】
次にセンサ部51をバッファ液に、図1に示す如く、浸漬させた状態で蛍光測定を行う。測定に際しては、光源50が駆動されて、そこからレーザ光等の励起光50aが発せられる。この励起光50aの大部分は、センサ部本体52内を、その周囲面と大気又は空気層Aとの界面にて全反射を繰り返しながら、導波モードで下方に進行する。こうしてセンサ部本体52内を伝搬した励起光50aは、センサ部51の下端面51aに到達してここで全反射する。なおセンサ部本体52の角度θ0、直径W、高さH2の値は、センサ部本体52の外周面及びセンサ部51の下端面51aにおいて励起光や蛍光が全反射するようにバッファ液の屈折率n3に応じて決定されている。
【0047】
そしてこのとき、センサ部51の下端面51aとバッファ液との界面でエバネッセント光が染み出すようになる。そこで、もし下端面51a上の1次抗体にCRP抗原が結合していれば、さらに該抗原に反応液中の2次抗体が結合し、その2次抗体の標識である蛍光体がこのエバネッセント光によって励起される。励起された蛍光体は所定波長の蛍光59 を発し、この発せられた蛍光59の少なくとも一部がセンサ部本体52内部を伝搬して、ダイクロイックミラー22により直角に反射し、光検出器37によって検出される。
【0048】
こうして、光検出器37が所定波長の蛍光59を検出した場合は、それにより、CRP抗原に2次抗体が結合していること、すなわち試料液である血漿にCRP抗原が含まれていることを確認可能となる。また、上記のような蛍光59を検出した信号の強度から、測定対象物質の濃度を検出することも可能である。蛍光測定装置100は上記のようにして測定を行う。
【0049】
上述のように本実施形態の蛍光測定装置100は、センサ部51が、略柱状のセンサ部本体52とカバー部53とを備えているので、カバー部53の上端よりも下方に液面が位置するようにセンサ部51を試料液中に浸漬すれば、カバー部53が試料液と接触し、内部で励起光・受光光が伝搬するセンサ部本体52はエバネッセント光が出射する下端面51aすなわちセンシング部分のみが直接試料液と接触するので、センサ部本体52の外周面が直接試料液と接触するのを防止することができる。
【0050】
従って試料液による励起光や蛍光の吸収、散乱の影響を無くして、微量な測定対象物質も十分な精度で測定可能となる。またセンサ部本体52の外周面が試料液等の溶液と接しないことにより、溶液に浸漬した状態で蛍光測定を行う場合に、センサ部51の溶液への挿入方法、溶液の量、液ゆれによって全反射の条件が変化することがないので、測定の再現性を保持することができる。また、空気層Aがクラッド層の役割をすることができるので、センサ部51にクラッド層を有する高価な光ファイバを使用する必要がない。これによりセンサ部51を安価にすることができる。
【0051】
なお本実施形態の蛍光測定装置100のセンサ部51は、センサ部本体52の外周面52cとカバー部53との間の空間を空気層Aとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、上記測定を真空中にて行う場合等には、空間は真空であってもよいし、カバー部53の上端側の端部を閉塞して空間を真空にしてもよいし、適宜変更可能である。
【0052】
また本実施形態の蛍光測定装置100においては、ダイクロイックミラー22は波長645nm以下の光は透過し、波長645nm以上の光は直角に反射するものとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば波長645mm以上の光は透過し、波長645mm以下の光は直角に反射するものであってもよい。この場合、図1において光源50及び光学系21と光検出器37との位置を逆にして、ダイクロイックミラー22を透過した光を光検出器37に検出させる。
【0053】
また本実施形態の蛍光測定装置100においては、蛍光の測定を行う手段として光検出器37を上方に配設し、センサ部本体52内部を伝搬した蛍光59を検出するいわゆるダブルパス方式を採用しているが、本発明の蛍光測定装置はこれに限られるものではなく、例えば光検出器37を下方に配設して、蛍光体から発せられた蛍光59を直接検出するいわゆるシングルパス方式を採用してもよい。
【0054】
また本実施形態の蛍光測定装置100は、バッファ液に浸漬した状態で、上記蛍光測定を行うものとしたが、本発明の蛍光測定装置はこれに限られるものではなく、例えば空気、試料液や純水等の溶液に浸漬した状態で測定しても上記と同様の効果を得ることができる。この場合、センサ部51及び前記溶液は、センサ部51の下端面51aにて励起光50aが全反射する条件を備えるように構成する。
【0055】
次に本発明にかかる第二の実施形態による蛍光測定装置100−2について、以下図面を参照して詳細に説明する。図3は第二の実施形態による蛍光測定装置100−2の側面形状を示すものであり、また図4は、そこに用いられているターレット30の平面形状を示すものである。図示の通りこの蛍光測定装置100−2は、上記ターレット30と、このターレット30を水平な状態にして回転自在に保持する架台31と、この架台31から垂直に立てられた縦部材32と、この縦部材32に保持されて図示外の駆動手段によって上下方向に移動自在とされた上下動台33とを有している。この架台31、縦部材32、上下動台33を合わせて保持装置という。
【0056】
架台31にはステッピングモータ34が固定され、その駆動軸35にターレット30が固定されている。したがって、ステッピングモータ34が駆動されると、ターレット30が駆動軸35の周りに、つまり水平面内で回転する。また架台31の上面には、取付具36を介して例えばフォトダイオード等の光検出器37が取り付けられている。この光検出器37は一例として、互いに間隔を置いて向き合う状態にした1対のものが用いられている。
【0057】
図4に明示されるようにターレット30の上面には、それぞれ一定深さの穴部として形成された試料槽40、反応槽41、バッファ液槽42、センサ部保持穴43が形成されている。さらにこのターレット30には、貫通孔44が形成されている。これらの槽40〜42、センサ部保持穴43および貫通孔44は、ターレット30の回転軸周りの1つの共通円上に各中心が位置する状態にして、互いに所定の角度間隔を置いて配置されている。上下動台33には、例えば波長635nm の励起光50aを発する半導体レーザ等の光源50と、センサ部51−2を解放自在に保持するチャック(保持部)49とが搭載されている。
【0058】
ここで図5に本実施形態のセンサ部51−2の正面断面図を示す。本実施形態のセンサ部51−2は、上記実施形態のセンサ部51と略同様な構成であるため、同様の箇所は同符号で示して説明を省略し、異なる箇所についてのみ説明する。
【0059】
本実施形態のセンサ部51−2は、上記実施形態のセンサ部51とはカバー部53の形状が異なっている。本実施形態のカバー部53−2は、図5に示す如く、上端側の外周面に外方に向かってピン状に突設された上記チャック部49と係合する係合部53bが所定間隔で複数設けられている。この係合部53bを備えることにより、光路等を考慮することなく容易にチャック部49すなわち上述の保持装置に着脱することが可能となり、センサ部51−2を容易に所定位置に配設することが可能となる。なお本実施形態のカバー部53−2は、上記形状の係合部53bを備えているが本発明のカバー部はこれに限られるものではなく、光路に極力影響を与えない構成であれば、保持装置のチャック部49の形状に応じて適宜変更可能である。カバー部53−2は、センサ部51−2を試料液に挿入したときに、試料液の液面がカバー部53−2の上端面よりも下方に位置するように、上記ターレット30の穴部の深さ等を考慮して形成する。
【0060】
そして上記ステッピングモータ34の駆動つまりターレット30の回転動作は、図示外の制御回路により、上下動台33、光源50および光検出器37の駆動と同期して制御される。また上記チャック49は、一例として後述する機械的な把持機構を備えると共に円筒状の下端部を有し、その内部は図示外のブロワ等の空気吐出手段に連通されている。そこで、上記把持機構により係合部53bを保持する一方、空気を吐出することにより試料液等を撹拌する機能を備えている。それらの機能については、後に詳しく説明する。
【0061】
なお本実施形態の蛍光測定装置100−2が測定対象としているのは、上記実施形態と同様であるため説明は省略し、以下、この蛍光測定装置100−2の作用について、測定時の工程を順次示す図6を用いて説明する。なおこの図6では、図の煩雑化を回避するために、図3に示した各要素のうち、各工程(1)〜(11)のそれぞれにおいて説明に必要な最小限のものだけに付番を与えてある。
【0062】
まずこの測定に際しては予め、センサ部保持穴43にセンサ部51−2が収められる。そして同図(1)に示すように、試料槽40に試料液としての全血56が所定量注入され、ターレット30が所定角度回転されることにより、この試料槽40がチャック49の真下位置に設定される。次に(2)に示すようにチャック49が(つまり上下動台33)が下降され、全血56はこのチャック49と試料槽40との間の空気圧によって、試料槽40にあるフィルター48で濾され、(3)に示すように全血56が重い血球57と血漿58とに分離する。
【0063】
この状態になったところでチャック49が引き上げられた後、ターレット30がさらに所定角度回転され、(4)に示すように、センサ部保持穴43に収められているセンサ部51−2がチャック49の真下位置に設定される。この状態でチャック49が下降動され、一般的なボール盤がドリルを挟むような状態で係合部53bを挟み込むことでセンサ部51−2はチャック49に保持される。そして(5)に示すようにチャック49が引き上げられて、センサ部51−2がセンサ部保持穴43から上方に引き抜かれる。
【0064】
(6)に示すようにセンサ部51−2がターレット30から完全に離れると、ターレット30が所定角度回転され、(7)に示すように、試料槽40が再度チャック49の真下位置に設定される。そしてこの状態でチャック49が所定長さ降ろされた上で上下動され、それにより、そこに保持されているセンサ部51−2が血漿58の中に浸漬した状態で、軽く上下に動かされる。このとき上記実施形態と同様に、血漿58の液面がカバー部53−2の上端面よりも下方に位置するように浸漬及び上下動させ、センサ部本体52の外周面に血漿が付着するのを防止する。このように上下動することにより、もし血漿58の中にCRP抗原が含まれていれば、該CRP抗原と、センサ部51−2の下端面51aに固定されている1次抗体との結合が促進される。
【0065】
その後センサ部51−2が試料槽40から上方に引き上げられ、次いでターレット30が所定角度回転されることにより、(8)に示すように、反応槽41がチャック49の真下位置に設定される。この反応槽41には、上述した蛍光体で標識された2次抗体を含む反応液45が貯えられている。次にチャック49が所定長さ降ろされた上で上下動され、それにより、センサ部51−2が反応液45の中に浸漬した状態で、軽く上下に動かされる。
【0066】
このとき上記と同様に、反応液45の液面がカバー部53−2の上端面よりも下方に位置するように浸漬及び上下動させ、センサ部本体52の外周面に反応液45が付着するのを防止する。このように上下動することで、もしセンサ部51−2の下端面51a上の1次抗体にCRP抗原が結合していれば、該CRP抗原と2次抗体との結合が促進される。
【0067】
その後センサ部51−2が反応槽41から上方に引き上げられ、次いでターレット30が所定角度回転されることにより、(9)に示すように、バッファ液槽42がチャック49の真下位置に設定される。次にチャック49が所定長さ降ろされた上で上下動され、それにより、センサ部51−2がバッファ液槽42内に貯えられているバッファ液46によって洗浄される。つまり上記CRP抗原と、蛍光体で標識された2次抗体とが結合していれば、それらを除いた余計なものが洗い流される。
【0068】
その後センサ部51−2がバッファ液槽42から上方に引き上げられ、次いでターレット30が所定角度回転されることにより、(10)に示すように、貫通孔44がチャック49の真下位置に設定される。次にチャック49が下降され、それによりセンサ部51−2が貫通孔44内に位置する状態となる。この状態では、センサ部51−2の周りに存在するのは空気だけとなるので、該センサ部51−2は、以下に説明する蛍光測定を行う上で励起光および蛍光を実質的に吸収、散乱させることのない雰囲気中に配されることになる。
【0069】
この状態になったところで行われる蛍光測定について、そのときの状態を示している図3を参照して詳しく説明する。測定に際しては、光源50が駆動されて、そこからレーザ光等の励起光50aが発せられる。この励起光50aの大部分は、センサ部本体52内を、その外周面と空気との界面で全反射を繰り返しながら、導波モードで下方に進行する。こうしてセンサ部本体52内を伝搬した励起光50aの一部は、センサ部51−2の下端面51aに到達しそこで全反射する。
【0070】
このとき、センサ部51の下端面51aと空気との界面からエバネッセント光が染み出すようになる。そこで、もし下端面51a上の1次抗体にCRP抗原が結合していれば、さらに該抗原に反応液45中の2次抗体が結合し、その2次抗体の標識である蛍光体が上記エバネッセント光によって励起される。励起された蛍光体は所定波長の蛍光59を発し、その蛍光59は光検出器37によって検出される。こうして、光検出器37が所定波長の蛍光59を検出した場合は、それにより、CRP抗原に2次抗体が結合していること、すなわち試料液である血漿58にCRP抗原が含まれていることを確認可能となる。また、上記のような蛍光59を検出した信号の強度から、測定対象物質の濃度を検出することも可能である。
【0071】
こうして蛍光測定が終了すると、センサ部51−2が貫通孔44内から上方に引き上げられ、次いでターレット30が所定角度回転されることにより、図6の(11)に示すように、センサ部保持穴43がチャック49の真下位置に設定される。次にチャック49が下降され、それによりセンサ部51−2がセンサ部保持穴43内に挿入される。次いでチャック49が開き、チャック49が上昇動され、そこからセンサ部51−2が離脱する。こうしてセンサ部51−2が保持穴43内に戻る。その後、使用済みのターレット30は捨て、新たなターレット30に交換することで、汚染を気にせずに測定を行うことができる。
【0072】
ここで本実施形態においては、以上の説明から明らかな通り、回転部としてのターレット30と、上下動台33およびチャック49からなる往復動手段とによってセンサ部駆動手段が構成されている。このようなターレット30を用いると、測定を極めて能率良く行うことが可能となる。しかしながら、センサ部駆動手段はこのようなものに限らず、その他の公知の機構を用いて適宜構成することができる。
【0073】
また、汚染をあまり気にする必要のない場合は、センサ部51−2等を洗浄し、試薬を再度格納することで再利用も可能である。
【0074】
なお、上記蛍光測定がなされるとき、前述したようにセンサ部本体52の外周面に血漿58や反応液45が付着しないので、血漿58や反応液45による励起光50aや蛍光59の吸収、散乱の影響を無くして、微量な測定対象物質も十分な精度で測定可能となる。さらにセンサ部51−2は、励起光50aおよび蛍光59を実質的に吸収、散乱させることのない雰囲気中に配されることになるので、蛍光59が吸収されたり、散乱したりすることにより、検出される蛍光の強度が低下して、測定対象物質の測定精度が損なわれることを防止できる。また、センサ部51−2から一部漏れ出したような励起光50aが散乱して光検出器37に入射し、それにより測定精度が損なわれることも防止可能となる。
【0075】
なお本実施形態の蛍光測定装置100−2は、上述の如く、ターレット30を備えるものとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば複数の容器を備えてもよいし、適宜変更可能である。
【0076】
また本実施形態では、励起光50aおよび蛍光59を実質的に吸収、散乱させることのない雰囲気を空気として、その中で蛍光体の励起および蛍光検出を行っているが、この空気の他に例えば、純水、PBSバッファ等の液体もそのような雰囲気として適しており、本発明の蛍光測定装置は、そのような液体の中で蛍光体の励起および蛍光検出を行うように構成されてもよい。
【0077】
以上説明した実施形態の蛍光測定装置100、100−2は、蛍光測定することにより2次抗体を検出し、それにより、試料液中の測定対象物質を間接的に検出するものであるが、本発明の蛍光測定装置は、蛍光体である測定対象物質を直接的に検出するように構成することも勿論可能である。
【0078】
また本発明の蛍光測定装置を構成するセンサ部としては、以上説明したセンサ部51、51−2に限られるものではなく、適宜変更可能である。ここで図7に第三の実施形態のセンサ部51−3の正面断面図(a)及び側面図(b)、図8に第四の実施形態のセンサ部51−4の正面断面図、図9に第五の実施形態のセンサ部51−5の正面断面図(a)及び上面図(b)を示し、以下それぞれについて説明する。
【0079】
第三の実施形態のセンサ部51−3は、第一の実施形態のセンサ部51と概略同様の構成であるがカバー部53の形状が異なっている。本実施形態のカバー部53−3は、図7(a)、(b)に示す如く、下端から上端へ向かうにつれて直径が大きくされた筒状に形成されている。こうすることにより一体成型時に型から抜き易くすることができる。
【0080】
第四の実施形態のセンサ部51−4は、第二の実施形態のセンサ部51−2と同様の形状であるが、図8に示す如く、カバー部53−4が励起光50a及び/又は蛍光59を吸収する材料によって成形されている点が異なっている。この材料は、具体的には例えば、安中特殊硝子製作所製のプラスチックフィルターPIR730、PIR800に採用されている成型材料や、PC(ポリカーボネイト)、PES(ポリエーテルスルホン)に一般的なアゾ色素や他の様々な染料を混ぜたもの等を使用することができる。またセンサ部51−4は、センサ部本体52とカバー部53−4を2色成型によって一体的に成型されている。このようにカバー部53−4を励起光50a及び/又は蛍光59を吸収する材料で成形することにより、このカバー部53−4が例えばセンサ部本体52内の不純物等によって励起光50aや蛍光59が散乱して生じる散光等を吸収できるので、光検出器37による前記散光の検出を防止することができる。なお本実施形態のカバー部53−4は、上記材料にて形成するものとしたが本発明はこれに限られるものではなく、励起光50aや蛍光59を吸収可能であれば塗装してもよい。
【0081】
第五の実施形態のセンサ部51−5は、第二の実施形態のセンサ部51−2と概略同様の構成であるが、図9(a)、(b)に示す如く、センサ部本体52の励起光50aが全反射しない部分に、該部分とカバー部53とを架橋する補強用のリブ55が設けられている点が異なっている。このようにリブ55を設けることによりカバー部53の強度を補強することができる。本実施形態ではこのリブ55は1つ設けられているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば周方向に所定間隔にて複数設けてもよいし、上下方向に複数設けてもよいし、励起光50aが全反射しない位置であればいずれに設けてもよい。
【0082】
なお全反射する位置の高さHは、図1の内部反射角度θ1、センサ部本体52の直径Wから、H=n×(W/2)tanθ1の式にて求めることができる。ここでnは奇数整数であり、この高さ位置にて励起光50aが全反射する。従って「全反射しない位置」は、上記式にて求められる全反射する位置の高さとは異なる高さの位置であり、例えば、全反射する位置は、W=10mm、θ1=37度、n=7の場合、高さH=7×(10/2)tan37°=26.3mmであり、同様にn=5の場合、高さH=18.8mmであるため、高さH=18.8〜26.3mmの間が全反射しない位置の高さとなる。従って例えばその中間値である高さH=22.6mmの位置にリブ50を形成することができる。
【0083】
以上により本発明にかかる実施形態の蛍光測定装置について説明したが、本発明の蛍光測定装置はこれに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施形態による蛍光測定装置を示す概略構成を示す概念図
【図2】図1の蛍光測定装置のセンサ部の正面断面図及び側面図
【図3】本発明の第二の実施形態による蛍光測定装置を示す概略側面図
【図4】図3の蛍光測定装置の一部を示す平面図
【図5】図3の蛍光測定装置のセンサ部の正面断面図
【図6】図3の蛍光測定装置による測定工程を、順を追って示す概略図
【図7】センサ部の第三の実施形態を示す正面断面図及び側面図
【図8】センサ部の第四の実施形態を示す正面断面図
【図9】センサ部の第五の実施形態を示す正面断面図及び上面図
【図10】従来の蛍光測定装置の一例を示す概略側面図
【図11】従来の蛍光測定装置の別の例を示す概略側面図
【符号の説明】
【0085】
1 試料
2 抗原
4 1次抗体
6 2次抗体
7、50 光源
8、50a 励起光
9、37 光検出器
10 蛍光体
21 光学系
22 ダイクロイックミラー
30 ターレット
33 上下動台
34 ステッピングモータ
40 試料槽
41 反応槽
42 バッファ液槽
43 センサ部保持穴
44 貫通孔
49 チャック部(保持部)
51 センサ部
52 センサ部本体
53 カバー部
53a 閉塞部
59 蛍光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を発する光源と、
一端から入射した前記励起光を内部において伝搬させて他端からエバネッセント光を出射させ、該他端が浸漬された試料液中の測定対象物質の存在を示す蛍光体を前記励起光により励起するセンサ部と、
前記励起により前記蛍光体から発せられた蛍光を検出する光検出器とを備えてなる蛍光測定装置において、
前記センサ部は、略柱状のセンサ部本体と、
該センサ部本体の少なくとも前記他端に隣接する外周面との間に空間を介して該センサ部本体を囲む筒状のカバー部とを備えてなり、
該カバー部は、前記他端側の端部において前記空間を閉塞する閉塞部を有するものであることを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項2】
前記センサ部本体の前記励起光が反射しない部分に、該部分と前記カバー部とを架橋する補強用のリブが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項3】
前記カバー部が、前記励起光及び/又は前記蛍光を吸収する材料で成形又は塗装されているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光測定装置。
【請求項4】
前記カバー部が、前記センサ部本体との一体成型により形成されたものであることを特徴とする請求項1又は3に記載の蛍光測定装置。
【請求項5】
前記カバー部が、前記センサ部を所定位置に保持する保持装置の保持部に係合する係合部を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光測定装置。
【請求項6】
前記センサ部本体が励起光を導波モードで伝搬させるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光測定装置。
【請求項7】
前記センサ部の前記他端の外表面に前記測定対象物質と特異的に結合するリガンドが固定されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の蛍光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−185440(P2008−185440A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18874(P2007−18874)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】