説明

蛍光蛋白質及び色素蛋白質

本発明の目的は、新規な蛍光蛋白質及び色素蛋白質を提供することである。本発明によれば、コモンサンゴ(Montipora sp.)、ミドリイシ(Acropora sp.)及びウミキノコ(Lobophytum crassum)由来の新規な蛍光蛋白質、並びにウメボシイソギンチャク(Actinia equina)由来の新規な色素蛋白質が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規な蛍光蛋白質に関する。より詳細には、本発明は、コモンサンゴ(Montipora sp.)、ミドリイシ(Acropora sp.)及びウミキノコ(Lobophytum crassum)由来の新規な蛍光蛋白質及びその利用に関する。
さらに本発明は、新規な色素蛋白質に関する。より詳細には、本発明は、ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)由来の新規な色素蛋白質及びその利用に関する。
【背景技術】
クラゲのエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)に由来する緑色蛍光蛋白質(GFP)は、生物系において多くの用途を有する。最近、ランダム突然変異誘発法および半合理的(semi−rational)突然変異誘発法に基づいて、色を変化させたり、折りたたみ特性を改善したり、輝度を高めたり、あるいはpH感受性を改変したといった様々なGFP変異体が作製されている。。遺伝子組み換え技術により他の蛋白質をGFP等の蛍光蛋白質に融合させて、それらの発現および輸送のモニタリングを行うことが行われている。
最もよく使用されるGFP変異体の一つとして黄色蛍光蛋白質(YFP)が挙げられる。YFPは、クラゲ(Aequorea)GFP変異体の中でも最長波長の蛍光を示す。大部分のYFPのεおよびΦは、それぞれ60,000〜100,000M−1cm−1および0.6〜0.8であり(Tsien,R.Y.(1998).Ann.Rev.Biochem.67,509−544)、これらの値は、一般的な蛍光団(フルオレセインおよびローダミンなど)の値に匹敵する。従ってYFPの絶対的輝度の改善は、ほぼ限界に達しつつある。
また、GFP変異体の他の例として、シアン蛍光蛋白質(CFP)があり、ECFP(enhanced cyan fluorescent protein)が知られている。また、イソギンチャク(Discoma sp.)からは赤色蛍光蛋白質(RFP)も単離されており、DasRedが知られている。このように蛍光蛋白質は、緑色、黄色、シアン色、赤色の4種が次々と開発されスペクトルの範囲は大幅に広がっている。
また、刺胞動物には、蛍光を発するものが存在する。刺胞動物由来の蛍光蛋白質遺伝子のクローニングが試みられているが、蛍光および生化学的な特性のレパートリーを増やすためには、より多くの遺伝子のクローニングが必要である。
一方、従来の蛍光蛋白質の量子収率を0に近づけたものが色素蛋白質である。色素蛋白質は、光エネルギーを他のエネルギーに変換する分子を細胞内に導入することができる点で様々な応用が可能である。しかしながら、色素蛋白質の吸収波長特性について報告されている例は少ない。
【発明の開示】
本発明は、コモンサンゴ(Montipora sp.)、ミドリイシ(Acropora sp.)、及び及びウミキノコ(Lobophytum crassum)に由来する、新規な蛍光蛋白質を提供することを解決すべき課題とした。
さらに本発明は、従来のRFP(DsRed、クロンテック社)の示す幅広い励起スペクトルに比べ、よりシャープなスペクトルを有する蛍光蛋白質を提供することを解決すべき課題とした。
さらに本発明は、ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)に由来する、ある特定の波長の光を吸収する新規な色素蛋白質を提供することを解決すべき課題とした。
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討し、既知の蛍光蛋白質のアミノ酸配列の情報に基づいて好適なプライマーを設計し、コモンサンゴ(Montipora sp.)、ミドリイシ(Acropora sp.)及びウミキノコ(Lobophytum crassum)由来のcDNAライブラリーから上記プライマーを用いて新規な蛍光蛋白質をコードする遺伝子を増幅してクローニングすることに成功した。さらに本発明者らは、得られたコモンサンゴ(Montipora sp.)、ミドリイシ(Acropora sp.)、及びウミキノコ(Lobophytum crassum)由来の蛍光蛋白質の蛍光特性及びpH感受性を解析した。また本発明者らは、既知の蛍光蛋白質のアミノ酸配列の情報に基づいて好適なプライマーを設計し、赤色を呈するウメボシイソギンチャク(Actinia equina)のcDNAライブラリーから上記プライマーを用いて新規な色素蛋白質をコードする遺伝子を増幅してクローニングすることに成功した。さらに本発明者らは、得られたウメボシイソギンチャク(Actinia equina)由来の色素蛋白質の光吸収特性及びpH感受性を解析した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、以下の(1)〜(35)に記載の発明が提供される。
(1) コモンサンゴ(Montipora sp.)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が507nmである;
(2)蛍光極大波長が517nmである;
(3)507nmにおけるモル吸光係数が104050である;
(4)量子収率が0.29である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa=約5.5である:
(2) ミドリイシ(Acropora sp.)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が505nmである;
(2)蛍光極大波長が516nmである;
(3)505nmにおけるモル吸光係数が53600である;
(4)量子収率が0.67である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa=約6.4である:
(3) ミドリイシ(Acropora sp.)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が472nmである;
(2)蛍光極大波長が496nmである;
(3)472nmにおけるモル吸光係数が27250である;
(4)量子収率が0.90である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa=約6.6である:
(4) コモンサンゴ(Montipora sp.)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が557nmである;
(2)蛍光極大波長が574nmである;
(3)557nmにおけるモル吸光係数が41750である;
(4)量子収率が0.41である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa<約4.0である:
(5) ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)由来の下記の特性を有する色素蛋白質。
(1)吸収極大波長が592nmである;
(2)592nmにおけるモル吸光係数が87000である;
(3)光吸収特性のpH感受性がpH5〜10で安定である:
(6) ウミキノコ(Lobophytum crassum)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が482nmである;
(2)蛍光極大波長が498nmである;
(3)482nmにおけるモル吸光係数が71000である;
(4)量子収率が0.41である;
(5)蛍光極大のpH感受性がpH=4〜10で安定である:
(7) 以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
(8) 以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号3に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号3に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
(9) 以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
(10) 以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号9に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
(11) 以下の何れかのアミノ酸配列を有する色素蛋白質。
(a)配列番号11に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、吸光特性を有するアミノ酸配列:
(12) 以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号13に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号13に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
(13) 請求項1から12の何れかに記載の蛋白質をコードするDNA。
(14) 以下の何れかのDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
(15) 以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号2に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号2に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
(16) 以下の何れかのDNA。
(a)配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号3に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
(17) 以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号4に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号4に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
(18) 以下の何れかのDNA。
(a)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
(19) 以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号6又は8に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号6又は8に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
(20) 以下の何れかのDNA。
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号9に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
(21) 以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号10に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号10に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
(22) 以下の何れかのDNA。
(a)配列番号11に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、吸光特性を有する蛋白質をコードするDNA:
(23) 以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号12に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号12に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、吸光特性を有する蛋白質をコードする塩基配列:
(24) 以下の何れかのDNA。
(a)配列番号13に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号13に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
(25) 以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号14に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号14に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
(26) (13)から(25)の何れかに記載のDNAを有する組み換えベクター。
(27) (13)から(25)の何れかに記載のDNA又は(26)に記載の組み換えベクターを有する形質転換体。
(28) (1)から(4)、(6)、(7)から(10)又は(12)の何れかに記載の蛍光蛋白質と他の蛋白質とから成る融合蛍光蛋白質。
(29) 他の蛋白質が細胞内に局在する蛋白質である、(28)に記載の融合蛍光蛋白質。
(30) 他の蛋白質が細胞内小器官に特異的な蛋白質である、(28)又は(29)に記載の融合蛍光蛋白質。
(31) (5)又は(11)に記載の色素蛋白質と他の蛋白質とから成る融合蛋白質。
(32) (28)から(30)の何れかに記載の融合蛍光蛋白質を細胞内で発現させることを特徴とする、細胞内における蛋白質の局在または動態を分析する方法。
(33) (5)又は(11)に記載の色素蛋白質をアクセプター蛋白質として用いてFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)法を行うことを特徴とする、生理活性物質の分析方法。
(34) (1)から(4)、(6)、(7)から(10)又は(12)の何れかに記載の蛍光蛋白質、(14)から(21)、(24)又は(25)の何れかに記載のDNA、(26)に記載の組み換えベクター、(27)に記載の形質転換体、又は(28)から(30)の何れかに記載の融合蛍光蛋白質を含む、蛍光試薬キット。
(35) (5)又は(11)に記載の色素蛋白質、(22)又は(23)に記載のDNA、(26)に記載の組み換えベクター、(27)に記載の形質転換体、又は(31)に記載の融合蛋白質を含む、吸光試薬キット。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のコモンサンゴ(Montipora sp.)由来の蛍光蛋白質(COG)の蛍光スペクトル及び励起スペクトル(図A)、蛍光蛋白質(COG)の吸収スペクトル(図B)、及び蛍光蛋白質(COG)のpH感受性(図C)を示す。図Cにおいて横軸はpH値を示し、縦軸は吸光度を示す。
図2は、本発明のコモンサンゴ(Montipora sp.)由来の蛍光蛋白質(COG)のpH5での蛍光スペクトル及び励起スペクトル(図A)及びpH5での吸収スペクトル(図B)を示す。
図3は、本発明のミドリイシ(Acropora sp.)由来の蛍光蛋白質(MIG)の蛍光スペクトル及び励起スペクトル(図A)、蛍光蛋白質(MIG)の吸収スペクトル(図B)、及び蛍光蛋白質(MIG)のpH感受性(図C)を示す。図Cにおいて、横軸はpH値を示し、縦軸は吸光度を示す。
図4は、本発明のミドリイシ(Acropora sp.)由来の蛍光蛋白質(MICy)の蛍光スペクトル及び励起スペクトル(図A)、蛍光蛋白質(MICy)の吸収スペクトル(図B)、及び蛍光蛋白質(MICy)のpH感受性(図C)を示す。図Cにおいて、横軸はpH値を示し、縦軸は吸光度を示す。
図5は、本発明の蛍光蛋白質(MiCy2)のpH感受性(図A)及び励起・蛍光スペクトル(図B)を示す。
図6は、本発明のコモンサンゴ(Montipora sp.)由来の蛍光蛋白質(COR)の蛍光スペクトル及び励起スペクトル(図A)、蛍光蛋白質(COR)の吸収スペクトル(図B)、及び蛍光蛋白質(COR)のpH感受性(図C)を示す。図Cにおいて、横軸はpH値を示し、縦軸は吸光度を示す。
図7は、本発明のウメボシイソギンチャク(Actinia equina)由来の色素蛋白質(Ume)の吸収スペクトル(pH7.9)を測定した結果(図A)、及び色素蛋白質(Ume)の吸収極大のpH感受性(図B)を示す。図Aにおいて、横軸は吸収光の波長を示し、縦軸は吸光度を示す。図Bにおいて、横軸はpH値を示し、縦軸は吸光度を示す。
図8は、本発明のウミキノコ(Lobophytum crassum)由来の蛍光蛋白質(KnG)の蛍光スペクトル及び励起スペクトル(図A)及び蛍光蛋白質(KnG)のpH依存性(図B)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(1)本発明の蛍光蛋白質及び色素蛋白質
本発明の第一の蛍光蛋白質は、コモンサンゴ(Montipora sp.)由来のものであり、下記の特性を有することを特徴とする。
(1)励起極大波長が507nmである;
(2)蛍光極大波長が517nmである;
(3)507nmにおけるモル吸光係数が104050である;
(4)量子収率が0.29である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa=約5.5である:
コモンサンゴ(Montipora sp.)は、刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目ミドリイシ科に属するサンゴの1種であり、塊状や被覆状の群体を形成することが多い。
本発明の第一の蛍光蛋白質は、以下の実施例で示す通り、励起極大波長が507nmであり、蛍光極大波長が517nmである。また、507nmにおけるモル吸光係数は104050であり、量子収率は0.29である。モル吸光係数は蛍光分子1モルあたりの光子の吸収量を表し、量子収率は吸収した光子のどれだけを蛍光として発することができるかを表した数値である。
本発明の第一の蛍光蛋白質の具体例としては、以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質が挙げられる。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ蛍光を有するアミノ酸配列:
本発明の第二の蛍光蛋白質は、ミドリイシ(Acropora sp.)由来のものであり、下記の特性を有することを特徴とする。
(1)励起極大波長が505nmである;
(2)蛍光極大波長が516nmである;
(3)505nmにおけるモル吸光係数が53600である;
(4)量子収率が0.67である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa=約6.4である:
ミドリイシ(Acropora sp.)は、刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目ミドリイシ科に属するサンゴの1種であり、枝状・テーブル状の群体を形成することが多い。
本発明の第二の蛍光蛋白質は、以下の実施例で示す通り、励起極大波長が505nmであり、蛍光極大波長が516nmである。また、505nmにおけるモル吸光係数は53600であり、量子収率は0.67である。モル吸光係数は蛍光分子1モルあたりの光子の吸収量を表し、量子収率は吸収した光子のどれだけを蛍光として発することができるかを表した数値である。
本発明の第二の蛍光蛋白質の具体例としては、以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質が挙げられる。
(a)配列番号3に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号3に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ蛍光を有するアミノ酸配列:
本発明の第三の蛍光蛋白質は、ミドリイシ(Acropora sp.)由来のものであり、下記の特性を有することを特徴とする。
(1)励起極大波長が472nmである;
(2)蛍光極大波長が496nmである;
(3)472nmにおけるモル吸光係数が27250である;
(4)量子収率が0.90である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa=約6.6である:
本発明の第三の蛍光蛋白質は、以下の実施例で示す通り、励起極大波長が472nmであり、蛍光極大波長が496nmである。また、472nmにおけるモル吸光係数は27250であり、量子収率は0.90である。モル吸光係数は蛍光分子1モルあたりの光子の吸収量を表し、量子収率は吸収した光子のどれだけを蛍光として発することができるかを表した数値である。
本発明の第三の蛍光蛋白質の具体例としては、以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質が挙げられる。
(a)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ蛍光を有するアミノ酸配列:
本発明の第四の蛍光蛋白質は、コモンサンゴ(Montipora sp.)由来のものであり、下記の特性を有することを特徴とする。
(1)励起極大波長が557nmである;
(2)蛍光極大波長が574nmである;
(3)557nmにおけるモル吸光係数が41750である;
(4)量子収率が0.41である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa<約4.0である:
本発明の第四の蛍光蛋白質は、以下の実施例で示す通り、励起極大波長が557nmであり、蛍光極大波長が574nmである。また、557nmにおけるモル吸光係数は41750であり、量子収率は0.41である。モル吸光係数は蛍光分子1モルあたりの光子の吸収量を表し、量子収率は吸収した光子のどれだけを蛍光として発することができるかを表した数値である。
本発明の第四の蛍光蛋白質の具体例としては、以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質が挙げられる。
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号9に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ蛍光を有するアミノ酸配列:
本発明の色素蛋白質は、ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)由来のものであり、下記の特性を有することを特徴とする。
(1)吸収極大波長が592nmである;
(2)592nmにおけるモル吸光係数が87000である;
(3)光吸収特性のpH感受性がpH5〜10で安定である:
ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)は、刺胞動物門(Cnidaria)の刺胞動物亜門の花虫綱(サンゴ虫類)(Anthozoa)の六放珊瑚亜綱(Hexacorallia)の磯巾着目(Actiniaria)のウメボシイソギンチャク科(Actiniidae)に属するイソギンチャクの1種である。ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)は、日本では九州以北の磯に普通に見られ、触手を広げると水中で赤い花が咲いているように見える。
なお、本書中以下の実施例では、ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)を出発材料として上記特性を有する色素蛋白質を単離したが、ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)以外のイソギンチャクから本発明の色素蛋白質を取得することができる場合もあり、そのような色素蛋白質も本発明の範囲内である。
本発明の色素蛋白質は、以下の実施例で示す通り、吸収極大波長が592nmであり、また、592nmにおけるモル吸光係数は87000である。
モル吸光係数は蛍光分子1モルあたりの光子の吸収量を表す。量子収率は吸収した光子のどれだけを蛍光として発することができるかを表した数値である。本発明の色素蛋白質の量子収率は極めて低いため、蛍光は殆ど発しない。この性質から、本発明の色素蛋白質は、(1)FRETのアクセプター分子(エネルギー受容体)として用いたり、(2)照射した光のエネルギーを光以外のエネルギーに変換させるシステムの開発に利用したり、あるいは(3)蛋白質のアミノ酸配列に変異を導入して蛍光を発するように改変することなどに用いることができる。
また、本発明の色素蛋白質は、光吸収特性のpH感受性がpH5〜10で安定であることを特徴とする。即ち、本発明の色素蛋白質では、pH5〜10の範囲において吸収スペクトルのピーク値の変動が少ない。従って、本発明の色素蛋白質は、広範囲のpH環境において同様の条件で使用することができ、生体内での使用に際しての制約は少ない。
本発明の色素蛋白質の具体例としては、以下の何れかのアミノ酸配列を有する色素蛋白質が挙げられる。
(a)配列番号11に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、吸光特性を有するアミノ酸配列:
本発明の第五の蛍光蛋白質は、ウミキノコ(Lobophytum crassum)由来のものであり、下記の特性を有することを特徴とする。
(1)励起極大波長が482nmである;
(2)蛍光極大波長が498nmである;
(3)482nmにおけるモル吸光係数が71000である;
(4)量子収率が0.41である;
(5)蛍光極大のpH感受性がpH=4〜10で安定である:
ウミキノコ(Lobophytum crassum)は、刺胞動物門花虫綱八放サンゴ亜綱に属するサンゴの1種である。
本発明の第五の蛍光蛋白質は、以下の実施例で示す通り、励起極大波長が482nmであり、蛍光極大波長が498nmである。また、482nmにおけるモル吸光係数は71000であり、量子収率は0.41である。モル吸光係数は蛍光分子1モルあたりの光子の吸収量を表し、量子収率は吸収した光子のどれだけを蛍光として発することができるかを表した数値である。
本発明の第五の蛍光蛋白質の具体例としては、以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質が挙げられる。
(a)配列番号13に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号13に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、かつ蛍光を有するアミノ酸配列:
本明細書で言う「1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列」における「1から数個」の範囲は特には限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。
本明細書で言う「蛍光を有する」および「蛍光蛋白質」とは、蛍光を発することができる全ての場合を包含し、蛍光強度、励起波長、蛍光波長、pH感受性などの諸特性は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質と比較して、変動していてもよいし、同様のままでもよい。
本明細書で言う「吸光特性」とは、ある波長の光を吸収できる特性を意味し、例えば、本明細書に示した色素蛋白質と同様に吸収極大波長が592nmであってもよいし、あるいは吸収極大波長の値がシフトしたものであってもよい。なお、光吸収特性のpH感受性は、pH5〜10で安定であることが好ましい。
上記した通り、本発明の配列表の配列番号11に記載したアミノ酸配列を有する色素蛋白質は蛍光をほとんど発しないものである。本発明においては、配列番号11に記載したアミノ酸配列に対して1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を導入することにより、より強い蛍光を発する蛋白質を作製してもよく、このような蛋白質も本発明の範囲内に含まれる。
本発明の蛍光蛋白質及び色素蛋白質の取得方法については特に制限はなく、化学合成により合成した蛋白質でもよいし、遺伝子組み換え技術による作製した組み換え蛋白質でもよい。
組み換え蛋白質を作製する場合には、先ず当該蛋白質をコードするDNAを入手することが必要である。本明細書の配列表の配列番号1、3、5、7、9、11又は13に記載したアミノ酸配列並びに配列番号2、4、6、8、10、12又は14に記載した塩基配列の情報を利用することにより適当なプライマーを設計し、それらを用いてコモンサンゴ(Montipora sp.)、ミドリイシ(Acropora sp.)、ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)、又はウミキノコ(Lobophytum crassum)由来のcDNAライブラリーを鋳型にしてPCRを行うことにより、本発明の蛍光蛋白質又は色素蛋白質をコードするDNAを取得することができる。本発明の蛍光蛋白質又は色素蛋白質をコードするDNAの一部の断片を上記したPCRにより得た場合には、作製したDNA断片を順番に遺伝子組み換え技術により連結することにより、所望の蛍光蛋白質又は色素蛋白質をコードするDNAを得ることができる。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明の蛍光蛋白質又は色素蛋白質を産生することができる。発現系での発現については本明細書中後記する。
(2)本発明のDNA
本発明によれば、本発明の蛍光蛋白質又は色素蛋白質をコードする遺伝子が提供される。
本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAの具体例としては、以下の何れかのDNAが挙げられる。
(a)配列番号1、3、5,7、9又は13に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号1、3、5、7、9又は13に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列をコードし、かつ蛍光蛋白質をコードするDNA。
本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAのさらなる具体例としては、以下の何れかのDNAが挙げられる。
(a)配列番号2、4、6、8、10又は14に記載の塩基配列を有するDNA;又は、
(b)配列番号2、4、6、8、10又は14に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、かつ蛍光蛋白質をコードするDNA:
本発明の色素蛋白質をコードするDNAの具体例としては、以下の何れかのDNAが挙げられる。
(a)配列番号11に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、吸光特性を有する蛋白質をコードするDNA:
本発明の色素蛋白質をコードするDNAの更なる具体例としては、以下の何れかの塩基配列を有するDNAが挙げられる。
(a)配列番号12に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号12に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、吸光特性を有する蛋白質をコードする塩基配列:
本発明のDNAは、例えばホスホアミダイト法などにより合成することができるし、特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって製造することもできる。本発明のDNA又はその断片の作製方法については、本明細書中上述した通りである。
また、所定の核酸配列に所望の変異を導入する方法は当業者に公知である。例えば、部位特異的変異誘発法、縮重オリゴヌクレオチドを用いるPCR、核酸を含む細胞の変異誘発剤又は放射線への露出等の公知の技術を適宜使用することによって、変異を有するDNAを構築することができる。このような公知の技術は、例えば、Molecular Cloning:A laboratory Mannual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,1989、並びにCurrent Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,John Wiley & Sons(1987−1997)に記載されている。
(3)本発明の組み換えベクター
本発明のDNAは適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、例えば、自立的に複製するベクター(例えばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。
好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明のDNAは、転写に必要な要素(例えば、プロモーター等)が機能的に連結されている。プロモータは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜することができる。
細菌細胞で作動可能なプロモータとしては、バチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Bacillusstearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスαアミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha−amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチリス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus Subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモータ、またはファージ・ラムダのP若しくはPプロモータ、大腸菌のlac、trp若しくはtacプロモータなどが挙げられる。
哺乳動物細胞で作動可能なプロモータの例としては、SV40プロモータ、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモータ、またはアデノウイルス2主後期プロモータなどがある。昆虫細胞で作動可能なプロモータの例としては、ポリヘドリンプロモータ、P10プロモータ、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモータ、バキュウロウイルス即時型初期遺伝子1プロモータ、またはバキュウロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモータ等がある。酵母宿主細胞で作動可能なプロモータの例としては、酵母解糖系遺伝子由来のプロモータ、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモータ、TPI1プロモータ、ADH2−4cプロモータなどが挙げられる。
糸状菌細胞で作動可能なプロモータの例としては、ADH3プロモータまたはtpiAプロモータなどがある。
また、本発明のDNAは必要に応じて、例えばヒト成長ホルモンターミネータまたは真菌宿主についてはTPI1ターミネータ若しくはADH3ターミネータのような適切なターミネータに機能的に結合されてもよい。本発明の組み換えベクターは更に、ポリアデニレーションシグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5E1b領域由来のもの)、転写エンハンサ配列(例えばSV40エンハンサ)および翻訳エンハンサ配列(例えばアデノウイルスVA RNAをコードするもの)のような要素を有していてもよい。
本発明の組み換えベクターは更に、該ベクターが宿主細胞内で複製することを可能にするDNA配列を具備してもよく、その一例としてはSV40複製起点(宿主細胞が哺乳類細胞のとき)が挙げられる。
本発明の組み換えベクターはさらに選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはシゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子等のようなその補体が宿主細胞に欠けている遺伝子、または例えばアンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン若しくはヒグロマイシンのような薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。
本発明のDNA、プロモータ、および所望によりターミネータおよび/または分泌シグナル配列をそれぞれ連結し、これらを適切なベクターに挿入する方法は当業者に周知である。
(4)本発明の形質転換体
本発明のDNA又は組み換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。
本発明のDNAまたは組み換えベクターを導入される宿主細胞は、本発明のDNA構築物を発現できれば任意の細胞でよく、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。
細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセス等のグラム陽性菌又は大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、または公知の方法でコンピテント細胞を用いることにより行なえばよい。
哺乳類細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞またはCHO細胞等が挙げられる。哺乳類細胞を形質転換し、該細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法も公知であり、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を用いることができる。
酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevislae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)等が挙げられる。酵母宿主への組み換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等を挙げることができる。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えばアスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する細胞である。宿主細胞として糸状菌を用いる場合、DNA構築物を宿主染色体に組み込んで組換え宿主細胞を得ることにより形質転換を行うことができる。DNA構築物の宿主染色体への組み込みは、公知の方法に従い、例えば相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、蛋白質を発現させることができる(例えば、Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual;及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Bio/Technology,6,47(1988)等に記載)。
バキュロウイルスとしては、例えば、ヨトウガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W.H.Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHiFive(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法又はリポフェクション法等を挙げることができる。
上記の形質転換体は、導入されたDNA構築物の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地中で培養する。形質転換体の培養物から、本発明の蛍光融合蛋白質を単離精製するには、通常の蛋白質の単離、精製法を用いればよい。
例えば、本発明の蛋白質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常の蛋白質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−SepharoseFF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
(5)本発明の蛍光蛋白質及びそれを含む融合蛍光蛋白質の利用
本発明は蛍光蛋白質を他の蛋白質と融合させることにより、融合蛍光蛋白質を構築することができる。
本発明の融合蛍光蛋白質の取得方法については特に制限はなく、化学合成により合成した蛋白質でもよいし、遺伝子組み換え技術による作製した組み換え蛋白質でもよい。
組み換え蛋白質を作製する場合には、先ず当該蛋白質をコードするDNAを入手することが必要である。本明細書の配列表の配列番号1、3、5又は7、9又は13に記載したアミノ酸配列及び配列番号2、4、6又は8、10又は14に記載した塩基配列の情報を利用することにより適当なプライマーを設計し、本発明の蛍光蛋白質の遺伝子を含むDNA断片を鋳型にしてPCRを行うことにより、本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAを構築するのに必要なDNA断片を作製することができる。また同様に、融合すべき蛋白質をコードするDNA断片も入手する。
次いで、これらのDNA断片を順番に遺伝子組み換え技術により連結することにより、所望の融合蛍光蛋白質をコードするDNAを得ることができる。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明の融合蛍光蛋白質を産生することができる。
本発明の蛍光蛋白質は、特に、標識としての利用価値が高い。即ち、本発明の蛍光蛋白質を被検アミノ酸配列との融合蛋白質として精製し、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入し、該融合蛋白質の分布を経時的に観察すれば、被検アミノ酸配列の細胞内におけるターゲッティング活性を検出することが可能である。
本発明の蛍光蛋白質を融合させる他の蛋白質(被検アミノ酸配列)の種類は特に限定されるものではないが、例えば、細胞内に局在する蛋白質、細胞内小器官に特異的な蛋白質、ターゲティングシグナル(例えば、核移行シグナル、ミトコンドリアプレ配列)等が好適である。なお、本発明の蛍光蛋白質は、マイクロインジェクション法などにより細胞内に導入する以外に、細胞内で発現させて用いることも可能である。この場合には、本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAが発現可能に挿入されたベクターが宿主細胞に導入される。
また、本発明の蛍光蛋白質は、レポーター蛋白質としてプロモーター活性の測定に用いることも可能である。即ち、被検プロモーターの下流に、本発明の蛍光蛋白質をコードするDNAが配置されたベクターを構築し、これを宿主細胞に導入し、該細胞から発せられる本発明の蛍光蛋白質の蛍光を検出することにより、被検プロモーターの活性を測定することが可能である。被検プロモーターとしては、宿主細胞内で機能するものであれば、特に制限はない。
上記被検アミノ酸配列のターゲティング活性の検出やプロモーター活性の測定において用いられるベクターとしては、特に制限はないが、例えば、動物細胞用ベクターでは、「pNEO」(P.Southern,and P.Berg(1982)J.Mol.Appl.Genet.1:327)、「pCAGGS」(H.Niwa,K.Yamamura,and J.Miyazaki.Gene 108,193−200(1991))、「pRc/CMV」(インビトロゲン社製)、「pCDM8」(インビトロゲン社製)などが、酵母用ベクターでは、「pRS303」,「pRS304」,「pRS305」,「pRS306」,「pRS313」,「pRS314」,「pRS315」,[pRS316](R.S.Sikorski and P.Hieter(1989)Genetics 122:19−27)、「pRS423」,「pRS424」,「pRS425」,「pRS426」(T.W.Christianson,R.S.Sikorski,M.Dante,J.H.Shero,and P.Hieter(1992)Gene 110:119−122)などが好適に用いられる。
また、使用可能な細胞の種類も特に限定されず、各種の動物細胞、例えば、L細胞、BalbC−3T3細胞、NIH3T3細胞、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、HeLa細胞、NRK(normal rat kidney)細胞、「Saccharomyces cerevisiae」などの酵母細胞や大腸菌(E.coli)細胞などを使用することができる。ベクターの宿主細胞への導入は、例えば、リン酸カルシウム法やエレクトロポレーション法などの常法により行うことができる。
上記のようにして得た、本発明の蛍光蛋白質と他の蛋白質(蛋白質Xとする)とを融合させた融合蛍光蛋白質を細胞内で発現させ、発する蛍光をモニターすることにより、細胞内における蛋白質Xの局在や動態を分析することが可能になる。即ち、本発明の融合蛍光蛋白質をコードするDNAで形質転換またはトランスフェクトした細胞を蛍光顕微鏡で観察することにより細胞内における蛋白質Xの局在や動態を可視化して分析することができる。
例えば、蛋白質Xとして細胞内オルガネラに特異的な蛋白質を利用することにより、核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、分泌小胞、ペルオキソームなどの分布や動きを観察できる。
また、例えば、神経細胞の軸索、樹状突起などは発生途中の個体の中で著しく複雑な走向の変化を示すので、こういった部位を蛍光ラベルすることにより動的解析が可能になる。
本発明の蛍光蛋白質の蛍光は、生細胞のまま検出することが可能である。この検出は、例えば、蛍光顕微鏡(カールツァイス社 アキシオフォト フィルターセット 09)や画像解析装置(ATTO デジタルイメージアナライザー)などを用いて行うことが可能である。
顕微鏡の種類は目的に応じて適宜選択できる。経時変化を追跡するなど頻回の観察を必要とする場合には、通常の落射型蛍光顕微鏡が好ましい。細胞内の詳細な局在を追及したい場合など、解像度を重視する場合は、共焦点レーザー顕微鏡の方が好ましい。顕微鏡システムとしては、細胞の生理状態を保ち、コンタミネーションを防止する観点から、倒立型顕微鏡が好ましい。正立顕微鏡を使用する場合、高倍率レンズを用いる際には水浸レンズを用いることができる。
フィルターセットは蛍光蛋白質の蛍光波長に応じて適切なものを選択できる。本発明の第一及び第二の蛍光蛋白質の場合、励起光490〜510nm、蛍光510〜530nm程度のフィルターを使用することが好ましい。本発明の第三の蛍光蛋白質の場合、励起光460〜480nm、蛍光480〜510nm程度のフィルターを使用することが好ましい。本発明の第四の蛍光蛋白質の場合、励起光550〜565nm、蛍光570〜580nm程度のフィルターを使用することが好ましい。本発明の第五の蛍光蛋白質の場合、励起光470〜490nm、蛍光490〜510nm程度のフィルターを使用することが好ましい。
また、蛍光顕微鏡を用いた生細胞での経時観察を行う場合には、短時間で撮影を行うべきなので、高感度冷却CCDカメラを使用する。冷却CCDカメラは、CCDを冷却することにより熱雑音を下げ、微弱な蛍光像を短時間露光で鮮明に撮影することができる。
(6)本発明の色素蛋白質及びそれを含む融合蛋白質の利用
本発明の色素蛋白質は、他の蛋白質と融合させることにより、融合蛋白質を構築することができる。本発明の色素蛋白質に融合させる他の蛋白質の種類は特に限定されないが、他の分子と相互作用する蛋白質であることが好ましく、例えば、受容体蛋白質又はそのリガンド、あるいは抗原又は抗体などが挙げられる。
本発明の融合蛋白質の取得方法については特に制限はなく、化学合成により合成した蛋白質でもよいし、遺伝子組み換え技術による作製した組み換え蛋白質でもよい。
組み換え融合蛋白質を作製する場合には、先ず当該蛋白質をコードするDNAを入手することが必要である。本発明の色素蛋白質をコードするDNAおよびそれに融合すべき他の蛋白質をコードするDNAは、本明細書中上記した方法またはそれに準じてそれぞれ入手することができる。次いで、これらのDNA断片を順番に遺伝子組み換え技術により連結することにより、所望の融合蛋白質をコードするDNAを得ることができる。このDNAを適当な発現系に導入することにより、本発明の融合蛋白質を産生することができる。
分子間の相互作用を分析する手法の一つとして、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)が知られている。FRETでは、例えば、第一の蛍光蛋白質としてのシアン蛍光蛋白質(CFP)で標識した第一の分子と、第二の蛍光蛋白質としての黄色蛍光蛋白質(YFP)で標識した第二の分子とを共存させることにより、黄色蛍光蛋白質(YFP)をアクセプター分子として作用させ、シアン蛍光蛋白質(CFP)をドナー分子として作用させ、両者の間でFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)を生じさせることにより、第一の分子と第二の分子との間の相互作用を可視化することができる。即ち、FRETでは2種類の分子にそれぞれ異なる色素を導入し、エネルギーレベルの高い方の色素(ドナー分子)を選択的に励起し、その色素の蛍光を測定し、もう一方の色素(アクセプター分子)からの長波長蛍光も測定して、それらの蛍光変化量によって分子間の相互作用を可視化する。両方の色素が、2種類の分子の相互作用によって近接したときのみドナー分子の蛍光の減少とアクセプター分子の蛍光の増加が1波長励起2波長測光法により観測される。しかし、アクセプター分子に色素蛋白質を用いた場合は、両方の色素が、2種類の分子の相互作用によって近接したときのみドナー分子の蛍光の減少を生じ1波長励起1波長測光法により観測することができる。即ち、測定機器の簡易化が可能となる。
本発明の色素蛋白質は、特に、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)におけるアクセプター分子としての利用価値が高い。即ち、本発明の色素蛋白質と被験物質との融合体(第一の融合体)を作製する。次いで、該被験物質と相互作用する別の被験物質と別の蛍光蛋白質との融合体(第2の融合体)を作製する。そして、第一の融合体と第2の融合体とを相互作用させ、発する蛍光を分析することにより、上記2種類の被験物質間の相互作用を分析することができる。なお、本発明の色素蛋白質を用いたFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)は、試験管内で行ってもよいし、細胞内で行ってもよい。
(7)本発明のキット
本発明によれば、本明細書に記載した蛍光蛋白質、融合蛍光蛋白質、DNA、組み換えベクター又は形質転換体から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、細胞内成分の局在の分析及び/又は生理活性物質の分析のためのキットが提供される。本発明のキットは、それ自体既知の通常用いられる材料及び手法で調製することができる。
さらに本発明によれば、本明細書に記載した色素蛋白質、融合蛋白質、DNA、組み換えベクター又は形質転換体から選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする、吸光試薬キットが提供される。本発明のキットは、それ自体既知の通常用いられる材料及び手法で調製することができる。
蛍光蛋白質、色素蛋白質又はDNAなどの試薬は、適当な溶媒に溶解することにより保存に適した形態に調製することができる。溶媒としては、水、エタノール、各種緩衝液などを用いることができる。
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
実施例1:イシサンゴからの新規蛍光蛋白遺伝子(COG)の単離、並びに蛍光特性の解析
(1)total RNAの抽出
珊瑚より蛍光蛋白質遺伝子の単離を行った。材料にはコモンサンゴ(Montipora sp.)を用いた。凍結したコモンサンゴを乳鉢で砕き、湿重量2グラムに”TRIzol”(GIBCO BRL)を7.5ml加えてホモジナイズし、1500×gで10分間遠心した。上清にクロロホルム1.5mlをくわえ、15秒間攪拌した後3分間静置した。7500×gで15分間遠心した。上清にイソプロパノール3.75mlをくわえ、15秒間攪拌した後10分間静置した。17000×gで10分間遠心した。上清を捨て70%エタノールを6ml加えて17000×gで10分間遠心した。上清を捨て沈殿をDEPC水200μlで溶解した。DEPC水で溶解したtotal RNAを100倍に希釈してO.D.260とO.D.280の値を測定してRNA濃度を測った。22μgのtotal RNAを得た。
(2)First strand cDNAの合成
total RNA 4μgを使用し、First strand cDNAの合成キット”Ready To Go”(Amersham Pharmacia)によりcDNA(33μl)を合成した。
(3)Degenerated PCR
合成したFirst strand cDNA(33μl)のうち3μlを鋳型としてPCRを行った。
プライマーのデザインは既知の蛍光蛋白のアミノ酸配列を見比べて、似ている部分を抜き出し、塩基配列に変換し直し作製した。
使用プライマー

I=イノシン、R=A又はG、Y=C又はT、V=A,C又はG、D=A,G又はT S=C又はG、H=A又はT又はC
PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer1 1μl
100μM primer2 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを35サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
一回目のPCR反応で得られた増幅産物1μlをテンプレートとして、もう一度同じ条件でPCRを行った。アガロースゲル電気泳動で、350bpを切り出し、精製した。
(4)サブクローニング及び塩基配列の決定
精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。得られた塩基配列を他の蛍光蛋白遺伝子の塩基配列と比較してそのDNA塩基配列が蛍光蛋白由来のものであるかを判断した。蛍光蛋白遺伝子の一部であると判断したものに関して、5’−RACE法および3’−RACE法による遺伝子全長のクローニングを行った。
(5)5’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の5’側の塩基配列を決定するために5’−RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends,Version 2.0(GIBCO BRL)を用いて、5’−RACE法を行った。鋳型として(1)で調製したtotal RNAを5μg使用した。
dC−tailed cDNAの一回目の増幅には

のプライマーを用いた。
I=イノシン
二回目の増幅には

のプライマーを用いた。PCR反応条件等はキットのプロトコールに準じた。
アガロースゲル電気泳動で、増幅された350bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。
(6)3’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の3’側部分は、(4)の塩基配列決定で得られた情報を基に作製したプライマーとオリゴdTプライマーのPCRで得た。鋳型として(2)で調製したfirst strand cDNAを3μl使用した。
作成したプライマーは

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
20μM primer7 1μl
10μM オリゴdTprimer 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲル電気泳動で、増幅された約1000bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。
得られた全長の塩基配列を配列表の配列番号2に示し、全長のアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。このクローンをCOGと命名した。
(7)大腸菌での蛋白発現
得られた全長の塩基配列より、蛋白のN末端に相当する部分でプライマーを作製し、C末端側はオリゴdTプライマーを使用して、(2)で調製したFirst strand cDNAを鋳型としてPCRを行った。
使用プライマー

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 pyrobestバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer8 1μl
100μMオリゴdTプライマー 1μl
ミリQ 35μl
pyrobest polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲルの電気泳動で、増幅された約1000bpのバンドを切り出し、精製してpRSET vector(Invitrogen)のBamHI、EcoRI部位にサブクローニングして、大腸菌株(JM109−DE3)で発現させた。発現蛋白はN末端にHis−tagが付くようにコンストラクトしたので発現蛋白はNi−Agarose gel(QIAGEN)で精製した。精製の方法は付属のプロトコールに準じた。次に精製した蛋白の性質を解析した。
(8)蛍光特性の解析
20μM蛍光蛋白(COG)、150mM KCl,50mM HEPES pH7.5溶液を用いて、吸収スペクトルを測定した(図1B)。このスペクトルのピーク(507nm)の値よりモル吸光係数を計算した。450nmの吸収が0.002となるように蛍光蛋白を上記の緩衝液で希釈し、450nmで励起した時の蛍光スペクトルと550nmの蛍光による励起スペクトルを測定した(図1A)。EGFP(CLONTECH)を同様に450nmの吸収が0.002となるようにして蛍光スペクトルを測定し、EGFPの量子収率を0.6として今回クローニングされた蛍光蛋白の量子収率を求めた。測定結果を表1に示す。

(9)pH感受性の測定
蛍光蛋白を各緩衝液で同濃度に希釈し、507nmの吸収の値をとりpH感受性を測定した(図1C)。各pHの緩衝液は次の通り、
pH4、5:酢酸バッファー
pH6、11:リン酸バッファー
pH7、8:HEPESバッファー
pH9、10:グリシンバッファー
pH5ではpH6〜10と較べて吸収のピークが507nmから493nmへ、蛍光のピークが517nmから508nmへと共に短波長側にシフトするという特性を持っていた。測定結果を図2A及びBに示す。
実施例2:珊瑚からの新規蛍光蛋白遺伝子(MIG)の単離
(1)total RNAの抽出
蛍光を放つ珊瑚より蛍光蛋白遺伝子の単離を行った。材料にはミドリイシ(Acropora sp.)を用いた。ミドリイシをハンマーで砕き、砕いたサンゴ5グラムに”TRIzol”(GIBCO BRL)を15ml加えて攪伴し、1500×gで10分間遠心した。上清にクロロホルム3mlをくわえ、15秒間攪伴した後3分間静置した。7500×gで15分間遠心した。上清にイソプロパノール7.5mlをくわえ、15秒間攪伴した後10分間静置した。17000×gで10分間遠心した。上清を捨て70%エタノールを6ml加えて17000×gで10分間遠心した。上清を捨て沈殿をDEPC水200μlで溶解した。DEPC水で溶解したtotal RNAを100倍に希釈してO.D.260とO.D.280の値を測定してRNA濃度を測った。220μgのtotal RNAを得た。
(2)First strand cDNAの合成
total RNA 5μgを使用し、First strand cDNAの合成キット”Ready To Go”(Amersham Pharmacia)によりcDNA(33μl)を合成した。
(3)Degenerated PCR
合成したFirst strand cDNA(33μl)のうち3μlを鋳型としてPCRを行った。プライマーのデザインは既知の蛍光蛋白のアミノ酸配列を見比べて、似ている部分を抜き出し、塩基配列に変換し直し作製した。
使用プライマー

R=A又はG、Y=C又はT、V=A,C又はG、D=A,G又はT
PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer1 1μl
100μM primer2 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行い、アニーリング温度を1サイクルごとに0.3℃下げた。30サイクル時の温度は43℃。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
一回目のPCR反応で得られた増幅産物1μlをテンプレートとして、もう一度同じ条件でPCRを行った。アガロースゲル電気泳動で予想された大きさの350bpのバンドを切り出し、精製した。
(4)サブクローニング及び塩基配列の決定
精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。得られた塩基配列を他の蛍光蛋白遺伝子の塩基配列と比較してそのDNA塩基配列が蛍光蛋白由来のものであるかを判断した。蛍光蛋白遺伝子の一部であると判断したものに関して、5’−RACE法および3’−RACE法による遺伝子全長のクローニングを行った。
(5)5’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の5’側の塩基配列を決定するために5’−RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends,Version 2.0(GIBCO BRL)を用いて、5’−RACE法を行った。鋳型として(1)で調製したtotal RNAを3μg使用した。DC−tailed cDNAの一回目の増幅には、

のプライマーを用いた。
I=イノシン
二回目の増幅には

のプライマーを用いた。PCR反応条件等はキットのプロトコールに準じた。
アガロースゲル電気泳動で、増幅された500bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。
(6)3’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の3’側部分は、(4)の塩基配列決定で得られた情報を基に作製したプライマーとオリゴdTプライマーのPCRで得た。鋳型として(2)で調製したfirst strand cDNAを3μl使用した。

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
20μM primer7 1μl
10μM oligo dT primer 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
55℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲル電気泳動で、増幅された900bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。
得られた全長の塩基配列を配列表の配列番号4に示し、全長のアミノ酸配列を配列表の配列番号3に示す。このクローンをMIGと命名した。
(7)大腸菌での蛋白発現
得られた全長の塩基配列より、蛋白のN末端相当する部分で作製したプライマーとオリゴdTプライマーを用い、(2)で調製したFirst strand cDNAを鋳型としてPCRを行った。
使用プライマー

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 pyrobestバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
20μM primer8 1μl
20μM oligo dT primer 1μl
ミリQ 35μl
pyrobest polymerase(5U/ul) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
55℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲルの電気泳動で、増幅された900bpのバンドを切り出し、精製してpRSET vector(Invitrogen)のBamHI、EcoRI部位にサブクローニングして、大腸菌株(JM109−DE3)で発現させた。N末端にHis−tagが付くようにコンストラクトしたので発現蛋白はNi−Agarose gel(QIAGEN)で精製した。精製の方法は付属のプロトコールに準じた。次に精製した蛋白の性質を解析した。
(8)蛍光特性の解析
20μM蛍光蛋白(MIG)、150mM KCl、50mM HEPES pH7.4溶液を用いて、吸収スペクトルを測定した(図3B)。このスペクトルのピーク(505nm)の値よりモル吸光係数を計算した。440nmの吸収が0.001となるように蛍光蛋白を上記の緩衝液で希釈し、440nmで励起した時の蛍光スペクトルと540nmの蛍光による励起スペクトルを測定した(図3A)。EGFP(CLONTECH)を同様に440nmの吸収が0.001となるようにして蛍光スペクトルを測定し、EGFPの量子収率を0.6として今回クローニングされた蛍光蛋白の量子収率を求めた。測定結果は表2に示す。

(9)pH感受性の測定
蛍光蛋白を各緩衝液で希釈し、505nmの吸収の値をとりpH感受性を測定した。
各pHの緩衝液は次の通り、
pH4、5:酢酸バッファー
pH6、11:リン酸バッファー
pH7、8:HEPESバッファー
pH9、10:グリシンバッファー
測定結果を図3Cに示す。
実施例3:珊瑚からの新規蛍光蛋白遺伝子(MICy)の単離
(1)total RNAの抽出
蛍光を放つ珊瑚より蛍光蛋白遺伝子の単離を行った。材料にはミドリイシ(Acropora sp.)を用いた。ミドリイシをハンマーで砕き、砕いたサンゴ5グラムに”TRIzol”(GIBCO BRL)を15ml加えて攪拌し、1500×gで10分間遠心した。上清にクロロホルム3mlをくわえ、15秒間攪拌した後3分間静置した。7500×gで15分間遠心した。上清にイソプロパノール7.5mlをくわえ、15秒間攪拌した後10分間静置した。17000×gで10分間遠心した。上清を捨て70%エタノールを6ml加えて17000×gで10分間遠心した。上清を捨て沈殿をDEPC水200μlで溶解した。DEPC水で溶解したtotal RNAを100倍に希釈してO.D.260とO.D.280の値を測定してRNA濃度を測った。220μgのtotal RNAを得た。
(2)First strand cDNAの合成
total RNA 5μgを使用し、First strand cDNAの合成キット”Ready To Go”(Amersham Pharmacia)によりcDNA(33μl)を合成した。
(3)Degenerated PCR
合成したFirst strand cDNA(33μl)のうち3μlを鋳型としてPCRを行った。プライマーのデザインは既知の蛍光蛋白のアミノ酸配列を見比べて、似ている部分を抜き出し、塩基配列に変換し直し作製した。
使用プライマー

R=A又はG、Y=C又はT、V=A,C又はG、D=A,G又はT
PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer1 1μl
100μM primer2 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行い、アニーリング温度を1サイクルごとに0.3℃下げた。30サイクル時の温度は43℃。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
一回目のPCR反応で得られた増幅産物1μlをテンプレートとして、もう一度同じ条件でPCRを行った。アガロースゲル電気泳動で予想された大きさの350bpのバンドを切り出し、精製した。
(4)サブクローニング及び塩基配列の決定
精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。得られた塩基配列を他の蛍光蛋白遺伝子の塩基配列と比較してそのDNA塩基配列が蛍光蛋白由来のものであるかを判断した。蛍光蛋白遺伝子の一部であると判断したものに関して、5’−RACE法および3’−RACE法による遺伝子全長のクローニングを行った。
(5)5’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の5’側の塩基配列を決定するために5’−RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends,Version 2.0(GIBCO BRL)を用いて、5’−RACE法を行った。鋳型として(1)で調製したtotal RNAを3μg使用した。DC−tailed cDNAの一回目の増幅には

のプライマーを用いた。
I=イノシン
二回目の増幅には

のプライマーを用いた。PCR反応条件等はキットのプロトコールに準じた。
アガロースゲル電気泳動で、増幅された500bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNA−シークエンサーにより決定した。
(6)3’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の3’側部分は、(4)の塩基配列決定で得られた情報を基に作製したプライマーとオリゴdTプライマーのPCRで得た。鋳型として(2)で調製したfirst strand cDNAを3μl使用した。

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
20μM primer7 1μl
10μM oligo dT primer 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
55℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲル電気泳動で、増幅された900bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。
得られた全長の塩基配列を配列表の配列番号6に示し、全長のアミノ酸配列を配列表の配列番号5に示す。このクローンをMICyと命名した。
(7)大腸菌での蛋白発現
得られた全長の塩基配列より、蛋白のN末端相当する部分で作製したプライマーとオリゴdTプライマーを用い、(2)で調製したFirst strand cDNAを鋳型としてPCRを行った。
使用プライマー

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 pyrobestバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
20μM primer8 1μl
20μM oligo dT primer 1μl
ミリQ 35μl
pyrobest polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
55℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲルの電気泳動で、増幅された900bpのバンドを切り出し、精製してpRSET vector(Invitrogen)のBamHI、EcoRI部位にサブクローニングして、大腸菌株(JM109−DE3)で発現させた。N末端にHis−tagが付くようにコンストラクトしたので発現蛋白はNi−Agarose gel(QIAGEN)で精製した。精製の方法は付属のプロトコールに準じた。次に精製した蛋白の性質を解析した。
(8)蛍光特性の解析
20μM蛍光蛋白(MICy)、150mM KCl、50mM HEPES pH7.4溶液を用いて、吸収スペクトルを測定した(図4B)。このスペクトルのピーク(472nm)の値よりモル吸光係数を計算した。440nmの吸収が0.001となるように蛍光蛋白を上記の緩衝液で希釈し、440nmで励起した時の蛍光スペクトルと540nmの蛍光による励起スペクトルを測定した(図4A)。EGFP(CLONTECH)を同様に440nmの吸収が0.001となるようにして蛍光スペクトルを測定し、EGFPの量子収率を0.6として今回クローニングされた蛍光蛋白の量子収率を求めた。測定結果を表3に示す。

(9)pH感受性の測定
蛍光蛋白を各緩衝液で希釈し、472nmの吸収の値をとりpH感受性を測定した。
各pHの緩衝液は次の通り、
pH4、5:酢酸バッファー
pH6、11:リン酸バッファー
pH7、8:HEPESバッファー
pH9、10:グリシンバッファー
測定結果を図4Cに示す。
(10)MiCyのpH耐性変異体MiCy2の作製
MiCyの166番目のグルタミン(Q)をヒスチジン(H)に置換することによりMiCyに比べて酸性側での蛍光強度が強いMiCy2となった(アミノ酸配列を配列番号7に示し、塩基配列を配列番号8に示す)。具体的にはpKa=6.6からpKa=5.6に下がり、蛍光のピークは493nm、励起のピークは462nmとなった(図5のA及びB)。
実施例4:イシサンゴからの新規蛍光蛋白遺伝子(COR)の単離、並びに蛍光特性の解析
(1)total RNAの抽出
珊瑚より蛍光蛋白遺伝子の単離を行った。材料にはコモンサンゴ(Montipora sp.)を用いた。凍結したコモンサンゴを乳鉢で砕き、湿重量2グラムに”TRIzol”(GIBCO BRL)を7.5ml加えてホモジナイズし、1500×gで10分間遠心した。上清にクロロホルム1.5mlをくわえ、15秒間攪拌した後3分間静置した。7500×gで15分間遠心した。上清にイソプロパノール3.75mlをくわえ、15秒間攪拌した後10分間静置した。17000×gで10分間遠心した。上清を捨て70%エタノールを6ml加えて17000×gで10分間遠心した。上清を捨て沈殿をDEPC水200μlで溶解した。DEPC水で溶解したtotal RNAを100倍に希釈してO.D.260とO.D.280の値を測定してRNA濃度を測った。22μgのtotal RNAを得た。
(2)First strand cDNAの合成
total RNA 4μgを使用し、First strand cDNAの合成キット”Ready To Go”(Amersham Pharmacia)によりcDNA(33μl)を合成した。
(3)Degenerated PCR
合成したFirst strand cDNA(33μl)のうち3μlを鋳型としてPCRを行った。
プライマーのデザインは既知の蛍光蛋白のアミノ酸配列を見比べて、似ている部分を抜き出し、塩基配列に変換し直し作製した。
使用プライマー

I=イノシン、R=A又はG、Y=C又はT、V=A,C又はG、D=A,G又はT S=C又は−G、H=A又はT又はC
PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer1 1μl
100μM primer2 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを35サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
一回目のPCR反応で得られた増幅産物1ulをテンプレートとして、もう一度同じ条件でPCRを行った。アガロースゲル電気泳動で、350bpを切り出し、精製した。
(4)サブクローニング及び塩基配列の決定
精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。得られた塩基配列を他の蛍光蛋白遺伝子の塩基配列と比較してそのDNA塩基配列が蛍光蛋白由来のものであるかを判断した。蛍光蛋白遺伝子の一部であると判断したものに関して、5’−RACE法および3’−RACE法による遺伝子全長のクローニングを行った。
(5)5’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の5’側の塩基配列を決定するために5’−RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends,Version 2.0(GIBCO BRL)を用いて、5’−RACE法を行った。鋳型として(1)で調製したtotal RNAを5μg使用した。
dC−tailed cDNAの一回目の増幅には

のプライマーを用いた。
I=イノシン
二回目の増幅には

のプライマーを用いた。PCR反応条件等はキットのプロトコールに準じた。
アガロースゲル電気泳動で、増幅された350bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。
(6)3’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の3’側部分は、(4)の塩基配列決定で得られた情報を基に作製したプライマーとオリゴdTプライマーのPCRで得た。鋳型として(2)で調製したfirst strand cDNAを3μl使用した。
作成したプライマーは

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
20μM primer7 1μl
10μM オリゴdTprimer 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲル電気泳動で、増幅された約1000bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。
得られた全長の塩基配列を配列表の配列番号10に示し、全長のアミノ酸配列を配列表の配列番号9に示す。このクローンをCORと命名した。
(7)大腸菌での蛋白発現
得られた全長の塩基配列より、蛋白のN末端に相当する部分でプライマーを作製し、C末端側はオリゴdTプライマーを使用して、(2)で調製したFirst strand cDNAを鋳型としてPCRを行った。
使用プライマー

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 pyrobestバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer8 1μl
100μM オリゴdTプライマー 1μl
ミリQ 35μl
pyrobest polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲルの電気泳動で、増幅された約1000bpのバンドを切り出し、精製してpRSET vector(Invitrogen)のBamHI、EcoRI部位にサブクローニングして、大腸菌株(JM109−DE3)で発現させた。発現蛋白はN末端にHis−tagが付くようにコンストラクトしたので発現蛋白はNi−Agarose gel(QIAGEN)で精製した。精製の方法は付属のプロトコールに準じた。次に精製した蛋白の性質を解析した。
(8)蛍光特性の解析
20μM蛍光蛋白(COR)、150mM KCl,50mM HEPES pH7.5溶液を用いて、吸収スペクトルを測定した(図6B)。このスペクトルのピーク(557nm)の値よりモル吸光係数を計算した。520nmの吸収が0.002となるように蛍光蛋白を上記の緩衝液で希釈し、520nmで励起した時の蛍光スペクトルと600nmの蛍光による励起スペクトルを測定した(図6A)。DsRed2(CLONTECH)を同様に520nmの吸収が0.002となるようにして蛍光スペクトルを測定し、DsRed2の量子収率を0.55として今回クローニングされた蛍光蛋白の量子収率を求めた。測定結果を表4に示す。

(9)pH感受性の測定
蛍光蛋白を各緩衝液で同濃度に希釈し、557nmの吸収の値をとりpH感受性を測定した。各pHの緩衝液は次の通り、
pH4、5:酢酸バッファー
pH6、11:リン酸バッファー
pH7、8:HEPESバッファー
pH9、10:グリシンバッファー
測定結果を図6Cに示す。
実施例5:イソギンチャクからの新規色素蛋白遺伝子の単離、並びに光吸収特性の解析
(1)total RNAの抽出
イソギンチャクより色素蛋白遺伝子の単離を行った。材料には赤色を呈する1個体のウメボシイソギンチャク(Actinia equina)を用いた。凍結したウメボシイソギンチャクを乳鉢で砕き、湿重量1グラムに”TRIzol”(GIBCO BRL)を7.5ml加えてホモジナイズし、1500×gで10分間遠心した。上清にクロロホルム1.5mlをくわえ、15秒間攪拌した後3分間静置した。7500×gで15分間遠心した。上清にイソプロパノール3.75mlをくわえ、15秒間攪拌した後10分間静置した。17000×gで10分間遠心した。上清を捨て70%エタノールを6ml加えて17000×gで10分間遠心した。上清を捨て沈殿をDEPC水200μlで溶解した。DEPC水で溶解したtotal RNAを100倍に希釈してO.D.260とO.D.280の値を測定してRNA濃度を測った。1.2mgのtotal RNAを得た。
(2)First strand cDNAの合成
total RNA 4μgを使用し、First strand cDNAの合成キット”Ready To Go”(Amersham Pharmacia)によりcDNA(33μl)を合成した。
(3)Degenerated PCR
合成したFirst strand cDNA(33μl)のうち3μlを鋳型としてPCRを行った。
プライマーのデザインは既知の蛍光蛋白のアミノ酸配列を見比べて、似ている部分を抜き出し、塩基配列に変換し直し作製した。
使用プライマー

I=イノシン、R=A又はG、Y=C又はT、V=A,C又はG、D=A,G又はT S=C又はG、H=A又はT又はC
PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer1 1μl
100μM primer2 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(denaturation)
58℃ 30sec(annealing of primers to template)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを35サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
一回目のPCR反応で得られた増幅産物1μlをテンプレートとして、もう一度同じ条件でPCRを行った。アガロースゲル電気泳動で、350bpを切り出し、精製した。
(4)サブクローニング及び塩基配列の決定
精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。得られた塩基配列を他の蛍光蛋白遺伝子の塩基配列と比較してそのDNA塩基配列が蛍光蛋白由来のものであるかを判断した。蛍光蛋白遺伝子の一部であると判断したものに関して、5’−RACE法および3’−RACE法による遺伝子全長のクローニングを行った。
(5)5’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の5’側の塩基配列を決定するために5’−RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends,Version 2.0(GIBCO BRL)を用いて、5’−RACE法を行った。鋳型として(1)で調製したtotal RNAを4μg使用した。
赤色の個体由来のDC−tailed cDNAの一回目の増幅には

のプライマーを用いた。
I=イノシン
二回目の増幅には

のプライマーを用いた。PCR反応条件等はキットのプロトコールに準じた。
アガロースゲル電気泳動で、増幅された200bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。
(6)全塩基配列の決定、及び大腸菌での蛋白発現
(5)により得られた蛋白のN末端に相当する部分でプライマーを作製し、C末端側はオリゴdTプライマーを使用して、(2)で調製したFirst strand cDNAを鋳型としてPCRを行った。
使用プライマー

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 pyrobestバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer8 1μl
100μM オリゴdTプライマー 1μl
ミリQ 35μl
pyrobest polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲルの電気泳動で、増幅された約900bpのバンドを切り出し、精製してpRSET vector(Invitrogen)のBamHI、EcoRI部位にサブクローニングして、大腸菌株(JM109−DE3)で発現させた。またプラスミドを回収し、挿入された全塩基配列を決定した。クローン名はUmeとした。全塩基配列および全アミノ酸配列を配列表の配列番号12及び配列番号11に示す。発現蛋白はN末端にHis−tagが付くようにコンストラクトしたので発現蛋白はNi−Agarose gel(QIAGEN)で精製した。精製の方法は付属のプロトコールに準じた。次に精製した蛋白の性質を解析した。
(7)光吸収特性の解析
10μM色素蛋白(Ume)、50mM HEPES pH7.9溶液を用いて吸収スペクトルを測定した。このスペクトルのピークの値よりモル吸光係数を計算した。赤色の個体由来色素蛋白(Ume)では592nmに吸収のピークが認められた(図7A)。測定結果は表5に示す。

(9)pH感受性の測定
50mMの下記の緩衝液中で蛋白質の吸収スペクトルを測定した(図7B)。
各pHの緩衝液は次の通り、
pH4、5 :酢酸バッファー
pH6 :リン酸バッファー
pH7、8 :HEPESバッファー
pH9、10:グリシンバッファー
pH5〜10でピークの値は安定していた。
実施例6:珊瑚(ウミキノコ)からの新規蛍光蛋白遺伝子の単離
(1)total RNAの抽出
蛍光を放つ珊瑚より蛍光蛋白遺伝子の単離を行った。材料にはウミキノコ(Lobophytum crassum)を用いた。珊瑚をハンマーで砕き、湿重量4グラムに”TRIzol”(GIBCO BRL)を7.5ml加えて攪拌し、1500×gで10分間遠心した。上清にクロロホルム1.5mlをくわえ、15秒間攪拌した後3分間静置した。7500×gで15分間遠心した。上清にイソプロパノール3.75mlをくわえ、15秒間攪拌した後10分間静置した。17000×gで10分間遠心した。上清を捨て70%エタノールを6ml加えて17000×gで10分間遠心した。上清を捨て沈殿をDEPC水200μlで溶解した。DEPC水で溶解したtotal RNAを100倍に希釈してO.D.260とO.D.280の値を測定してRNA濃度を測った。390μgのtotal RNAを得た。
(2)First strand cDNAの合成
total RNA 3μgを使用し、First strand cDNAの合成キット”Ready To Go”(Amersham Pharmacia)によりcDNA(33ul)を合成した。
(3)Degenerated PCR
合成したFirst strand cDNA(33μl)のうち3μlを鋳型としてPCRを行った。プライマーのデザインは既知の蛍光蛋白のアミノ酸配列を見比べて、似ている部分を抜き出し、塩基配列に変換し直し作製した。
使用プライマー

R=A又はG、Y=C又はT、V=A,C又はG、D=A,G又はT
PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 taqバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer1 1μl
100μM primer2 1μl
ミリQ 35μl
taq polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
一回目のPCR反応で得られた増幅産物1μlをテンプレートとして、もう一度同じ温度条件でPCRを行った。ただし、使用プライマーは、

アガロースゲル電気泳動で、予想された大きさの350bpのバンドを切り出し、精製した。
(4)サブクローニング及び塩基配列の決定
精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。得られた塩基配列を他の蛍光蛋白遺伝子の塩基配列と比較してそのDNA塩基配列が蛍光蛋白由来のものであるかを判断した。蛍光蛋白遺伝子の一部であると判断したものに関して、5’−RACE法および3’−RACE法による遺伝子全長のクローニングを行った。
(5)5’−RACE法
Degenerated PCRで得られたDNA断片の5’側の塩基配列を決定するために5’−RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends,Version 2.0(GIBCO BRL)を用いて、5’−RACE法を行った。鋳型として1)で調整したtotal RNAを3ug使用した。
DC−tailed cDNAの一回目の増幅には


のプライマーを用いた。
I=イノシン
二回目の増幅には

のプライマーを用いた。PCR反応条件等はキットのプロトコールに準じた。
アガロースゲル電気泳動で、増幅された600bpのバンドを切り出し、精製した。精製したDNA断片をpT7−blue vector(Novagen)にライゲーションした。大腸菌株(TG1)にトランスフォーメーションしてブルーホワイトセレクションを行い、白いコロニーの大腸菌よりplasmid DNAを精製して、挿入されたDNA断片の塩基配列をDNAシークエンサーにより決定した。
(6)全塩基配列の決定、及び大腸菌での蛋白発現
(5)により得られた蛋白のN末端に相当する部分でプライマーを作製し、C末端側はオリゴdTプライマーを使用して、2)で調整したFirst strand cDNAを鋳型としてPCRを行った。
使用プライマー

PCR反応液組成
テンプレート(first strand cDNA) 3μl
X10 pyrobestバッファー 5μl
2.5mM dNTPs 4μl
100μM primer8 1μl
100μM オリゴdTプライマー 1μl
ミリQ 35μl
pyrobest polymerase(5U/μl) 1μl
PCR反応条件
94℃ 1min(PAD)
94℃ 30sec(変性)
52℃ 30sec(鋳型へのプライマーのアニーリング)
72℃ 1min(プライマー伸長)
上記3ステップを30サイクル行った。
72℃ 7min(最後の伸長)
4℃ 保持
アガロースゲルの電気泳動で、増幅された約900bpのバンドを切り出し、精製してpRSET vector(Invitrogen)のBamHI、EcoRI部位にサブクローニングして、大腸菌株(JM109−DE3)で発現させた。またプラスミドを回収し、挿入された全塩基配列を決定した。クローン名をKnGとした。得られた全長の塩基配列を配列表の配列番号14に示し、全長のアミノ酸配列を配列表の配列番号13に示す。
発現蛋白はN末端にHis−tagが付くようにコンストラクトしたので発現蛋白はNi−Agarose gel(QIAGEN)で精製した。精製の方法は付属のプロトコールに準じた。次に精製した蛋白の性質を解析した。
(7)蛍光特性の解析
10μM蛍光蛋白(KnG)、50mM HEPES(pH7.9)溶液を用いて吸収スペクトルを測定した(図8A)。このスペクトルのピークの値よりモル吸光係数を計算した。482nmに吸収のピークが認められ、450nmにおける吸収が0.005となるように蛍光蛋白を上記の緩衝液で希釈して、450nmで励起した時の蛍光スペクトルを測定した(図8A)。EGFP(CLONTECH)を同様に450nmにおける吸収が0.005となるようにして蛍光スペクトルを測定し、EGFPの量子収率を0.6として新規蛋白質の量子収率を求めた。結果を表6に示す。

(8)pH感受性の測定
下記の緩衝液で希釈して蛍光スペクトルを測定した。
各pHの緩衝液は次の通り、
pH4、5 :酢酸バッファー
pH6 :MESバッファー
pH7 :MOPSバッファー
pH8 :HEPESバッファー
pH9、10 :グリシンバッファー
pH11 :リン酸バッファー
結果を図8Bに示す。
【産業上の利用可能性】
本発明により、コモンサンゴ(Montipora sp.)、ミドリイシ(Acropora sp.)、及びウミキノコ(Lobophytum crassum)由来の新規な蛍光蛋白質が提供されることになった。本発明の蛍光蛋白質は、従来の蛍光蛋白質とは一次構造が異なる新規な蛋白質である。本発明の蛍光蛋白質は、所定の蛍光特性を有し、分子生物学的分析において有用である。即ち、本発明の蛍光蛋白質を用いることにより哺乳類細胞で毒性を発揮することなく蛍光ラベルができるようになった。また、本発明の蛍光蛋白質に変異を導入することにより、より新しい蛍光特性を生み出すことができる。
また、本発明の蛍光蛋白質(COR)は、従来のRFP(DsRed、クロンテック社)の示す幅広い励起スペクトルに比べ、よりシャープなスペクトルを有している。また、本発明の蛍光蛋白質に変異を導入することにより、赤色領域の蛍光特性をより多様化させることができる。
さらに本発明により、ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)由来の新規な色素蛋白質が提供されることになった。本発明の色素蛋白質は赤の領域に吸収を示すものであり、またpH感受性が低いことから、分子生物学的分析において有用である。また、本発明の色素蛋白質の吸収度(モル吸光係数)は著しく大きいため、光エネルギーの高効率な変換が可能である。また、遺伝子改変技術によって本発明の色素蛋白質の量子収率を1に近づけることも可能であり、その場合、新規な蛍光蛋白質を作製することができる。
【配列表】































【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモンサンゴ(Montipora sp.)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が507nmである;
(2)蛍光極大波長が517nmである;
(3)507nmにおけるモル吸光係数が104050である;
(4)量子収率が0.29である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa=約5.5である:
【請求項2】
ミドリイシ(Acropora sp.)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が505nmである;
(2)蛍光極大波長が516nmである;
(3)505nmにおけるモル吸光係数が53600である;
(4)量子収率が0.67である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa=約6.4である:
【請求項3】
ミドリイシ(Acropora sp.)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が472nmである;
(2)蛍光極大波長が496nmである;
(3)472nmにおけるモル吸光係数が27250である;
(4)量子収率が0.90である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa=約6.6である:
【請求項4】
コモンサンゴ(Montipora sp.)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が557nmである;
(2)蛍光極大波長が574nmである;
(3)557nmにおけるモル吸光係数が41750である;
(4)量子収率が0.41である;
(5)光吸収特性のpH感受性がpKa<約4.0である:
【請求項5】
ウメボシイソギンチャク(Actinia equina)由来の下記の特性を有する色素蛋白質。
(1)吸収極大波長が592nmである;
(2)592nmにおけるモル吸光係数が87000である;
(3)光吸収特性のpH感受性がpH5〜10で安定である:
【請求項6】
ウミキノコ(Lobophytum crassum)由来の下記の特性を有する蛍光蛋白質。
(1)励起極大波長が482nmである;
(2)蛍光極大波長が498nmである;
(3)482nmにおけるモル吸光係数が71000である;
(4)量子収率が0.41である;
(5)蛍光極大のpH感受性がpH=4〜10で安定である:
【請求項7】
以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
【請求項8】
以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号3に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号3に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
【請求項9】
以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
【請求項10】
以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号9に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
【請求項11】
以下の何れかのアミノ酸配列を有する色素蛋白質。
(a)配列番号11に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、吸光特性を有するアミノ酸配列:
【請求項12】
以下の何れかのアミノ酸配列を有する蛍光蛋白質。
(a)配列番号13に記載のアミノ酸配列;又は、
(b)配列番号13に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光を有するアミノ酸配列:
【請求項13】
請求項1から12の何れかに記載の蛋白質をコードするDNA。
【請求項14】
以下の何れかのDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
【請求項15】
以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号2に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号2に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
【請求項16】
以下の何れかのDNA。
(a)配列番号3に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号3に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
【請求項17】
以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号4に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号4に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
【請求項18】
以下の何れかのDNA。
(a)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号5又は7に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
【請求項19】
以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号6又は8に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号6又は8に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
【請求項20】
以下の何れかのDNA。
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号9に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
【請求項21】
以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号10に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号10に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
【請求項22】
以下の何れかのDNA。
(a)配列番号11に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、吸光特性を有する蛋白質をコードするDNA:
【請求項23】
以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号12に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号12に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、吸光特性を有する蛋白質をコードする塩基配列:
【請求項24】
以下の何れかのDNA。
(a)配列番号13に記載のアミノ酸配列をコードするDNA;又は、
(b)配列番号13に記載のアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸の欠失、置換及び/又は付加を有するアミノ酸配列を有し、蛍光蛋白質をコードするDNA:
【請求項25】
以下の何れかの塩基配列を有するDNA。
(a)配列番号14に記載の塩基配列;又は、
(b)配列番号14に記載の塩基配列において1から数個の塩基の欠失、置換及び/又は付加を有する塩基配列を有し、蛍光蛋白質をコードする塩基配列:
【請求項26】
請求項13から25の何れかに記載のDNAを有する組み換えベクター。
【請求項27】
請求項13から25の何れかに記載のDNA又は請求項26に記載の組み換えベクターを有する形質転換体。
【請求項28】
請求項1から4、6、7から10又は12の何れかに記載の蛍光蛋白質と他の蛋白質とから成る融合蛍光蛋白質。
【請求項29】
他の蛋白質が細胞内に局在する蛋白質である、請求項28に記載の融合蛍光蛋白質。
【請求項30】
他の蛋白質が細胞内小器官に特異的な蛋白質である、請求項28又は29に記載の融合蛍光蛋白質。
【請求項31】
請求項5又は11に記載の色素蛋白質と他の蛋白質とから成る融合蛋白質。
【請求項32】
請求項28から30の何れかに記載の融合蛍光蛋白質を細胞内で発現させることを特徴とする、細胞内における蛋白質の局在または動態を分析する方法。
【請求項33】
請求項5又は11に記載の色素蛋白質をアクセプター蛋白質として用いてFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)法を行うことを特徴とする、生理活性物質の分析方法。
【請求項34】
1から4、6、7から10又は12の何れかに記載の蛍光蛋白質、請求項14から21、24又は25の何れかに記載のDNA、請求項26に記載の組み換えベクター、請求項27に記載の形質転換体、又は請求項28から30の何れかに記載の融合蛍光蛋白質を含む、蛍光試薬キット。
【請求項35】
請求項5又は11に記載の色素蛋白質、請求項22又は23に記載のDNA、請求項26に記載の組み換えベクター、請求項27に記載の形質転換体、又は請求項31に記載の融合蛋白質を含む、吸光試薬キット。

【国際公開番号】WO2004/111235
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507025(P2005−507025)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008786
【国際出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(390004097)株式会社医学生物学研究所 (41)
【Fターム(参考)】