説明

蛍光表示を有する容器

【課題】容器(124)または容器予備成形物のような識別可能な製品を製造する方法を提供する。
【解決手段】成形されたプラスチック容器または容器予備成形物は、少なくとも1つのマトリックス樹脂層(38、40)と、添加剤が混合されている少なくとも1つのバリア樹脂層(42)とを持つ壁部を有している。この壁部は、バリア層(42)が壁部の周囲部分より厚く、且つ偽物の容器の使用を防ぐ手段をもたらすように添加剤が可視光線またはUV光下で識別可能である所定幾何形状の少なくとも1つの局部部分(34)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空のプラスチック容器に関し、より詳細には、偽物容器の使用の撲滅に取り組むために識別可能なセキュリティ手段として蛍光表示を有する中空のプラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
中空のプラスチック容器の製造において、予備成形物を射出成形し、次いで予備成形物を吹き込み成形して最終形状の容器を達成することが一般的である。代表的には、容器の少なくとも一部は、1つまたはそれ以上の中間層が容器を通るガスの透過に対するバリアを形成する多層構成のものである。このような多層吹き込み成形された容器はしばしば調合剤のような医療類製品用に使用される。
しかしながら、運悪く、調合剤は、ときどき、偽造され、そして本物の調合剤を市場に出すために使用された本物の容器と同じに見える偽物の容器に充填されている。従って、このような偽物の容器は薬剤師および顧客をだまして偽物の調合剤を買わせるために使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、偽物容器の使用の撲滅に取り組むための容器または容器予備成形物のような識別可能な製品およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一面によれば、多層成形されたプラスチック容器は、少なくとも1つ、好ましくは2つのマトリックス樹脂層と、少なくとも1つの中間樹脂層とを持つ側壁部を有している。本発明の好適な実施形態では、中間層は、容器側壁部を通るガス、水蒸気または芳香剤の移動を遅延させるためにバリア樹脂ポリマー製である。しかしながら、後述のように、中間層樹脂は、マトリックス樹脂層と同じ樹脂を含めて、任意の適当な種類のものであることができる。本発明のこの第1面によれば、中間樹脂層を直接或いは紫外線下で目に見えるようにするために、添加剤が中間樹脂層に入れられている。容器の側壁部には、中間層の厚さが側壁部の他の領域においてより大きい少なくとも1つの領域が設けられている。これは、好ましくは、側壁部に1つまたはそれ以上の隆起部または肉厚化領域を設けることにより達成され、増大された側壁部の厚さの主な部分は中間層の増大厚さに起因している。これらの肉厚化領域では、中間層における添加剤の見掛け密度は、肉厚化領域が目に見える透かし様外観を側壁部に形成するように、側壁部の外側から見て大きい。本発明の好適な実施形態では、添加剤は、紫外線下で目に見える蛍光物質であるか、或いは可視光線を反射させることにより目に見える雲母フレークのような反射性物質片である。
【0005】
本発明の他の面によれば、プラスチック容器を製造する方法は、少なくとも一部に多層構成を有する予備成形物を成形し、次いで予備成形物のボディを吹き込み成形して容器を形成することを有する。予備成形物はその側壁部の少なくとも1つの半径方向外方に延びる隆起部を有するように成形され、この際、中間側壁層が増大厚さの主な部分を占める。予備成形物のボディが吹き込み成形されると、隆起部は容器の壁部から半径方向内方に延びている。容器の側壁部の隆起部における中間層内の添加剤は、紫外線または可視光線下で、容器と関連された識別情報をもたらす透かし様表示として目に見える。
多層容器および予備成形物は、好ましくは、N個(例えば、2つまたは3つ)のマトリックス層と、N−1個(例えば、1つまたは2つ)の中間層とを有する。マトリックス層はポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリカーボネートのような任意の適当な樹脂のものでもよい。中間層は、好ましくは、エチレンビニルアルコール(EVOH)またはナイロンのようなバリア樹脂構成のものである。しかしながら、前述のように、中間層は、本発明の際立った特徴をもたらす添加剤が中間層にあるかぎり、本発明の最も広い面によれば、PETまたはポリカーボネートであることもできる。
本発明は、その追加の目的、特徴および利点および面と共に、下記の説明、添付の請求項および添付図面から最も良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明による製品を製造するための本発明の方法を実施するのに使用される模範的な射出成形装置10を示している。この射出成形装置および方法は、好ましくは、以下に詳細に説明する本発明の特徴を除いて、米国特許第4,710,118号、第4,609,516号および第4,954,376号に開示されたものと実質的に同様である。従って、米国特許第4,710,118号、第4,609,516号および第4,954,376号はすべて出典を明示することにより本願明細書の開示の一部とされる。
【0007】
射出成形装置10は射出モールドキャビティ14内に位置決めされるコアピン12を有している。射出モールドキャビティ14は、射出ポート18を有する閉鎖底端部22と、ボディ部分20と、仕上げ部分22とを有しており、これらの部分は、予備成形物24を製造するために多数の溶融樹脂が射出されるモールドキャビティを構成している。予備成形物24は、閉鎖底端部26と、この閉鎖底端部26から延びているボディ部分または側壁部28と、側壁部28の終端をなしていて、閉鎖底端部26の反対側に開放頂端部32を有する仕上げ部分30とを有している。側壁部28は、その周囲部分より厚い隆起部または拡大部分34のような所定幾何形状の少なくとも1つの局部部分を有している。拡大部分34は任意の幾何形状、ロゴ、文字などを含む任意の適当な所望の表示のものであってもよい。拡大部分34は、半径方向外方に延びており、射出モールドキャビティ14のボディ部分20に半径方向外方に延びるポケット36を設けることにより作られている。図2Aに関して後でより詳細に論述するように、ポケット36は、側壁部28がポケット36の局部的な拡大領域34において側壁部28の残部におけるよう厚くなるように寸法決めされている。
【0008】
図2は、閉鎖底端部26と、この閉鎖底端部26から延びている側壁部28と、側壁部28の終端をなしていて、閉鎖底端部26の反対側に開放頂端部32を有する仕上げ部分30とを有して図1の装置により製造された予備成形物24を示している。予備成形物24の拡大部分34は図2Aにおける横断面図に良好に示されている。
図2Aでは、側壁部28が、マトリックス樹脂で構成される内側および外側層38、40と、好ましくはバリア樹脂で構成される中間層42とを有するように多数の溶融樹脂から多層化されていることがわかる。多層化側壁部28が本発明の範囲を逸脱することなしにもっと多いまたはもっと少ない層を有することができることが意図されている。いずれの場合でも、バリア層42が側壁部28の拡大領域34において側壁部28の他の領域におけるより厚く、その一方、内側および外側層38、40が拡大領域34を含めて側壁部28全体にわたって実質的に一様な厚さのままであることは、前述特許に開示された層順次射出成形方法および装置の固有の特徴である。
【0009】
図3は図2の予備成形物24から吹き込み成形された容器124を示している。この容器124は閉鎖底端部126と、この閉鎖底端部126から延びている側壁部128と、側壁部128の終端をなしていて、閉鎖底端部126の反対側に開放頂端部32を有する仕上げ部分30とを有している。図2の予備成形物24と同様に、図3の容器124は隆起部または拡大部分134のような所定幾何形状の少なくとも1つの局部部分を有している。拡大部または隆起部34が容器側壁部から半径方向内方に延びるように、予備成形物が滑らかなモールド壁部に吹き当られるのが好ましい。拡大部34を含めて、側壁部128は好ましくは澄んでいて透明である。
図3Aは、マトリックス樹脂で構成される内側および外側層38、40と、好ましくはバリア樹脂で構成される中間層42とを有するように多数の溶融樹脂から多層化されたものとしての容器124の側壁部128における拡大部分134を良く示している。マトリックス樹脂層38、40は好ましくはポリカーボネートポリマーで構成されているが、任意の他の所望の容器材料で構成されてもよい。層42における樹脂は好ましくはナイロンまたはEVOHポリマーで構成されているが、任意の他の適当なバリアまたは容器用に使用される他の樹脂材料で構成されてもよい。
【0010】
中間層には、添加剤が添加されており、この添加剤は容器124の偽造をより困難にするために独特の識別物として使用される。添加剤は蛍光発光物質のような紫外線下で特に識別可能である物質でもよい。蛍光発光物質の例としては、ベイヤー社からのブランコフォー(登録商標)DML、シカゴ、ILのキーストーンアニリン社からのキーフラワー不可視黄色顔料915-549-50およびキーフラワー不可視緑顔料915-505-50、NY、トレータウンのアンパセット社からの蛍光ピンクCOPMBLR99111、蛍光緑COPMBLR99098および蛍光オレンジCOPMBLR99113がある。蛍光発光物質はマスターバッチペレットに配合された粉末である。変更例として、添加剤は、染料または着色顔料のような得に識別可能または反射性である物質、および雲母フレークのような反射性金属または鉱物フレークであってもよい。従って、添加剤と容器124の拡大部分134の肉厚の側壁部128とが結合して分離領域に識別物質の顕著な局部的蓄積を生じ、それにより可視光線または紫外線への露出下で容器124をより独特に識別する。換言すると、かくして、本発明は容器124の側壁部128における一種の「透かし」の形態の公然のセキュリティ特徴をもたらす。
【0011】
従って、このような透かしを保有する本発明の「本物の」予備成形物および/または容器24、124を、透かしを保有していない本物でない容器とより容易に識別することができる。容器24、124が空であるか、製品でいっぱいであるかどうかにかかわらず、透かしが目に見えるが、容器24、124が比較的重い着色製品でいっぱいであるときには比較的あまり目に見えない。透かし付き容器は、偽物が再生し難く、且つそこに充填された製品の信頼性を示す。かくして、本発明を使用することにより、薬剤師および顧客は市場への偽物の調合剤の侵入に対して比較的より保護される。
【0012】
かくして、先に述べた目的および狙いのすべてを十分に満たす製品およびそれを製造する方法を述べた。本発明を、その現在のところ好適な実施形態に関して開示し、多くの変更例および変形例を論述した。前述の説明を考慮して、当業者には、他の変更例および変形例が容易に思い浮かぶであろう。例えば、本発明を容器の側壁部における独特な識別物と関連して開示した。しかしながら、開示から逸脱することなしに閉鎖底端部または仕上げ部分のような容器の任意の位置に独特な識別物を生じることができる。更に、本発明を容器と関連して開示したが、容器用のクロージャのような他の備品が意図される。また、語「容器」はここでは、容器予備成形物または容器用のクロージャを含むものと定義される。語「顕著な」はここでは、拡大または肉厚部分や、さもなければ、周囲部分と比較して比較的より視覚的に目立つ部分を含むものと広く定義される。更に、語「表示」はここでは、1つまたはそれ以上の種類の光の中で可視指示を示す何でも含むものと広く定義される。実際、本発明は添付の請求項の精神および広い範囲内に入る変更例および変形例すべてを包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】多層予備成形物がモールドキャビティ内で射出成形される本発明の実施形態による方法に使用される模範的な射出成形装置の横断面側立面図である。
【図2】本発明の方法により図1の装置によって製造される本発明の実施形態による予備成形物の側立面図である。
【図2A】図2の円2Aから取られた図2の予備成形物の側壁部の拡大横断面図である。
【図3】図2の予備成形物から吹き込み成形された容器の側立面図である。
【図3A】線3A-3Aに沿った図3の予備成形物の側壁部の拡大横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのマトリックス樹脂層および少なくとも1つの中間樹脂層を備えた壁部を有する成形プラスチック容器または容器予備成形物であって、
前記中間樹脂層には、添加剤が混合されており、
前記壁部は、その周囲部分より厚く、前記添加剤が識別可能である所定の幾何形状の少なくとも1つの局部部分を有している、成形プラスチック容器または容器予備成形物。
【請求項2】
前記添加剤は、染料、UV蛍光発光剤および反射性金属または鉱物フレークよりなる群から選択される、請求項1に記載の容器または予備成形物。
【請求項3】
少なくとも1つの局部部分はロゴよりなる、請求項1に記載の容器または予備成形物。
【請求項4】
側壁部を有しており、前記少なくとも1つの局部部分は前記側壁部に形成されている、請求項1に記載の容器または予備成形物。
【請求項5】
識別可能な容器または予備成形物を製造する方法であって、
少なくとも1つのマトリックス樹脂層と、添加剤が混合された少なくとも1つの中間樹脂層とを有する成形プラスチック容器または容器予備成形物を作り工程を備えており、
前記壁部は、その周囲部分より厚く、前記添加剤が可視光線またはUV光下で識別可能である所定の幾何形状の少なくとも1つの局部部分を有している、
容器または予備成形物を製造する方法。
【請求項6】
前記成形プラスチック容器または予備成形物を作る前記工程は前記壁部に所定の幾何形状の前記部分を成形することを有している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項5の方法により製造された容器または予備成形物。
【請求項8】
バリア層を有する多層構造で構成された容器または容器予備成形物であって、
閉鎖端部と、
前記閉鎖端部から延びている側壁部と、
前記側壁部の終端となる仕上げ部分と、
前記閉鎖端部、前記側壁部および前記仕上げ部分のうちの少なくとも1つに形成された拡大部分と、を有しており、
前記バリア層は、可視光線および紫外線のうちの少なくとも1つの中で識別可能である添加剤を有しており、前記添加剤は前記拡大部分において前記容器または容器予備成形物の他の部分におけるより視覚的に顕著である、容器または容器予備成形物。
【請求項9】
前記添加剤は、染料、UV蛍光発光剤および反射性金属または鉱物フレークよりなる群から選択される、請求項8に記載の容器または予備成形物。
【請求項10】
前記拡大部分はロゴよりなる、請求項8に記載の容器または予備成形物。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【公表番号】特表2007−525388(P2007−525388A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500970(P2007−500970)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/005892
【国際公開番号】WO2005/085074
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506288195)オウェンス イリノイ ヘルスケア パッケイジング インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】