説明

蛍光表示体

【課題】表示体の期間内の再利用のシステムを簡易化するため、また、再利用を防止する方法の一つを提供するもので、物品の利用有効期間が終了した時点で利用可能期間の終了を表示することができる蛍光表示体を提供することを目的とする。
【解決手段】基材の片面に、少なくとも耐光性の強い蛍光インキ層、耐光性の弱い蛍光インキ層および蛍光性を呈さないインキ層を形成し、また、前記耐光性の弱い蛍光インキ層の上面に、前記耐光性の強い蛍光インキ層と前記が蛍光性を呈さないインキ層を順次形成、もしくは前記耐光性の弱い蛍光インキ層と前記耐光性の強い蛍光インキ層を、前記基材の片側に満遍なく形成し、その上に前記が蛍光性を呈さないインキ層を形成してなることを特徴とする蛍光表示体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射により表示体の内容が判別できる蛍光表示体および表示ラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、博物館、美術館、映画館、講演会などのイベント会場やスポーツ会場等の入場や再入場の確認手段として、様々な工夫を懲らした入場券が用いられている。例えば、入場券の一部にミシン目などの加工を施し、本券と半券とに分離できることを利用して、入場時に、ミシン目から半券をもぎ取ることで入場の確認をしている。あるいは、スキー場のリフト権のように、券面に日付を印字して有効日の提示する方法などが行われている。
【0003】
しかしながら、もぎ取るタイプの入場券においては、例えば、再入場の確認方法など管理システムの煩雑さや、運用法方法に問題である。また、スキー場のリフト券のような券面に日付を印字して有効日の提示する方法では、日付の一部を似たような色のペンなどで、日付を書き加えたり消したりする改ざんの問題がある。
【0004】
上記の問題に対して、例えば、特許文献1では近紫外線下または可視光線下での真偽判定できる提案がされている。また、特許文献2では蛍光インキで抜き文字印刷を行い、その抜き文字印刷上にパールインキを印刷して真偽を判定する方法が提案がされている。しかしながら、いずれの提案も真偽判定の有効期間を限定することができないなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−196484号公報
【特許文献2】特許第4668589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の技術の問題点に鑑みてなされた発明であり、表示体の期間内の再利用のシステムを簡易化するため、また、再利用を防止する方法の一つを提供するもので、物品の利用有効期間が終了した時点で利用可能期間の終了を表示することができる蛍光表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記を解決する手段として、請求項1の発明は、基材の片面に、少なくとも耐光性の強い蛍光インキ層、耐光性の弱い蛍光インキ層および蛍光性を呈さないインキ層を形成してなることを特徴とする蛍光表示体である。
【0008】
また、請求項2の発明は前記耐光性の弱い蛍光インキ層の上面に、前記耐光性の強い蛍光インキ層と前記が蛍光性を呈さないインキ層を順次形成してなることを特徴とする請求項1に記載の蛍光表示体である。
【0009】
また、請求項3の発明は、前記耐光性の弱い蛍光インキ層と前記耐光性の強い蛍光インキ層を、前記基材の片側に満遍なく形成し、その上に前記が蛍光性を呈さないインキ層を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の蛍光表示体である。
【0010】
また、請求項4の発明は、前記耐光性の弱い蛍光インキ層が、2.15MJ/m〜8.61MJ/mの範囲の放射照度で退色し、且つ、耐光性の強い蛍光インキ層が、258MJ/m以上で退色しない事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光表示体である。
【0011】
また、請求項5の発明は、前記蛍光表示体の表示面側の表面に退色防止層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光表示体である。
【0012】
また、請求項6の発明は、前記退色防止層が前記蛍光表示体の表示面側の表面にパターン形成されていることを特徴とする請求項5に記載の蛍光表示体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、有効期限のある表示体が、その有効期限を終了した後に再使用されるのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の蛍光表示体のUV照射初期時に視認される表示概略図。
【図2】本発明の蛍光表示体の規定UV照射量を超えた時に視認される表示概略図。
【図3】本発明の蛍光表示体の図2のX−X線における一実施例の断面概略図。
【図4】本発明の蛍光表示体の図2のX−X線における一実施例の断面概略図。
【図5】本発明の蛍光表示体の一実施例を示す断面概略図。
【図6】本発明の蛍光表示体の一実施例を示す断面概略図。
【図7】本発明の蛍光表示体の一実施例を示す断面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の蛍光表示体11にUVライト13を用いてUV照射した直後(UV照射初期時)の、目視で確認される表示状態を示している。また、図2は、本発明の蛍光表示体11が規定UV照射量を超えた時、すなわち、2.15MJ/m〜8.16MJ/mの光が照射された後に目視で確認される表示状態を示している。図3および図4は、図2に示すX−X線における蛍光表示体11の断面概略図を示す。さらに、図5〜図7は、本発明の蛍光表示体11の一実施例を示す断面概略図を示す。
【0017】
以下に本発明の蛍光表示体の原理を具体的に説明する。
【0018】
本発明の蛍光表示体11は、使用初期の段階(多くの光を浴びていない状態)では、図1に示す如く、耐光性の弱い蛍光インキ層23と耐光性の強い蛍光インキ層21が同じ色の蛍光色からなり、且つ、耐光性の弱い蛍光インキ層23が退色に至っていないことから、UV照射すると同一色の蛍光インキが全面に設けられているように視認できる。その後、一定以上の光を浴びることで、耐光性の弱い蛍光インキ層23のみが退色し、耐光性の強い蛍光インキ層21が視認されることで、利用可能期間の終了を表示することができる蛍光表示体である。なお、ここで云う使用初期の段階(多くの光を浴びていない状態)とは、通常照明を必要としない倉庫などの保管所や、または遮光容器などに保管された環境状態を意味する。従って、上記蛍光表示体をそのままの状態で通常の遮光ができる保管場所に保管し、使用を開始する時に保管場所から取り出して使用を開始することもできるし、また、図5に示すように、その最表面となる部分に剥離可能な退色防止層51を設けることにより、該退色防止層51を剥がした時に、耐光性の弱い蛍光インキ層23と耐光性の強い蛍光インキ層21からなる蛍光層全面に初めて光が照射されることで、使用開始時をより精度よく制御することもできる。
【0019】
本発明に係る前記耐光性の弱い蛍光インキ層23とは、2.15MJ/m〜8.61MJ/mの範囲内の照度を照射したとき、蛍光発色が弱くなるか、または発色しなくなる蛍光色素を含有するインキ組成物からなる。ただし、この放射照度よりも弱い光で退色しても用途によってはかまわない。ここで、上記の2.15MJ/m〜8.61MJ/mの範囲内の照度とは、ブルースケール1級以下の耐光性であることを意味する。従って、2.15MJ/m未満では、生産工程上で工場内の光を受けて退色するなどの問題があり、本発明の作用効果を満たさない。また、8.16MJ/mを超えると、所定の時間で退色しないなどの問題があり、本発明の作用効果を満たさない。なお、ここで云う所定の時間とは、1日〜1週間を意味する。
【0020】
本発明に係る前記耐光性の強い蛍光インキ層21とは、258MJ/m以上の光を照射したとき、ほとんど蛍光発色が退色しない蛍光色素を含有するインキ組成物からなる。ここで、上記の258MJ/m以上の範囲の照度とは、ブルースケール6〜7級を意味する。従って、258MJ/m未満であると、年単位で検証を行う必要がある場合、蛍光発色が退色し始めてしまうという問題があり、本発明の作用効果を満たさない。
【0021】
また、前記耐光性の弱い蛍光インキ層23は、そのインキ組成物中に含有される蛍光色素を変えることで、用途、有効期限の時間、使用場所など表示したい対象に応じた使い分けが可能である。
【0022】
本発明の蛍光表示体11は、一実施例として図3に示すような、基材31面上に耐光性の弱い蛍光インキ層23、耐光性の強い蛍光インキ層21および蛍光性を呈さないインキ層33を順次積層した構成からなるものであってもよい。
【0023】
また、一実施例として図4に示すような、基材31面上に耐光性の弱い蛍光インキ層23と耐光性の強い蛍光インキ層21を同一面に満遍なく塗り分け、その上面に前記蛍光性を呈さないインキ層33を積層した構成からなるものであってもよい。
【0024】
前記蛍光表示体11の基材31には、一般に印刷物に用いられている紙やプラスチックフィルムなど、印刷が可能なものであれば特に限定することなく用いることができる。ただし、蛍光増白剤が含まれない基材の方が、本発明の作用効果を妨げないため望ましい。
【0025】
上記の耐光性の弱い蛍光インキ層23と耐光性の強い蛍光インキ層21の具体的な実施例としては、例えば、博物館などあまり照明の明るくない場所で使用する場合は、I=2.15MJ/mで蛍光発色しなくなるインキを用いる事で効果を発揮する。また、直射日光がよく当たるようなスキー場のチケットなどの場合は、I=8.61MJ/mを用いる事で効果が発揮できる。
【0026】
前記蛍光発色の色に関しては、セキュリティを考慮すると緑や赤が好ましいが、その他の色でもかまわず、青色や橙色やピンクなども十分に考えられる。さらに、2.15MJ/m≦Ib≦8.61MJ/mの範囲で蛍光発色しなくなる蛍光色素を複数まぜ合わせて使用することも十分に想定される。
【0027】
蛍光発色の色は、前記耐光性の弱い蛍光インキ層21が退色するまでは、前記耐光性の弱い蛍光インキ層21と耐光性の強い蛍光インキ層23との区別が視認されてはならないため、耐光性の弱い蛍光インキ層23と同じ色でなくてはならない。したがって、耐光性の弱い蛍光インキ層21の色と合わせるために蛍光体を複数混ぜ合わせてもよい。
【0028】
前記蛍光性を呈さないインキ層33は蛍光表示体11のデザインや目視で見るための情
報を印刷できればよく、一般的なプロセスインキなどを用いる事ができる。また、文字や図柄を設けられるものであれば、印刷以外の方法を用いることもできる。
【0029】
図6に、前記退色防止層51の構成の一実施例を示す。具体的には、前記退色防止層51は、退色防止層基材61の片面上に、剥離層63、受像層65および画像形成層67を順次積層してなる熱転写体を作製する。
【0030】
次に、図7に示すように、蛍光表示体11の最表面である蛍光性を呈さないインキ層33に、前記熱転写体の接着層69を対向させて重ね、サーマルヘッド71で熱を加え、その後、退色防止層基材61から剥離することで、サーマルヘッド71で加熱された部分の退色防止層51が蛍光表示体11に転写され、退色防止層51が形成された蛍光表示体を得ることができる。
【0031】
前記接着層69としては、使用時において、剥がしたときに、接着していた下層の蛍光表示体11の最表面層を痛めることの無い程度の接着力である事が望まれる。例えば、特開昭50−2736号公報、特開昭61−148278号公報、特開昭61−148279号公報、特開昭61−281173号公報、特開昭59−159868号公報等に記載されている粘着剤を用いることができる。
【0032】
また、前記退色防止層51は、光を透過しないものであれば限定するものではなく、例えば、光を透過しない程度の隠蔽性を有する着色インキ層や金属箔などが可能であるが、上記以外の遮光層を設けてもかまわない。また、図7に示す熱転写法により、前記退色防止層51をパターニングすることもできる。
【0033】
上記のように、本発明の蛍光表示体を用いることにより、UVライトを照射して目視で見たときに、発行から時間がどれだけたっているかを大まかに確認することができ、古い蛍光表示体を再利用することができなくなる。
【実施例1】
【0034】
下記に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0035】
基材として、白色系の上質紙(日本製紙社製、坪量:81.4g/m、商品名「しらおい」)上に、下記の組成よりなる耐光性の弱いインキ組成物を用いて、サイズ60×30mm、膜厚4μmのベタ印刷をスクリーン印刷法で行い、60℃×2分程度の条件下で乾燥させ、退光性の弱いインキ部を成形した。
【0036】
[耐光性の弱い蛍光インキ]
ルミライトナノ(赤色蛍光インキ) 2重量部
(シンロイヒ社製)
蒸発乾燥型スクリーン印刷用メジウム 8重量部
(SS8 WACワニス ロ:東洋インキ製造社製)
【0037】
次に、前記耐光性の弱い蛍光インキ層の全面上に、下記の組成からなる耐光性の強いインキ組成物を用いて、「×」印パターンをスクリーン印刷法にて印刷し、60℃×2分程度の条件下で乾燥させ、耐光性の強い蛍光インキ層を形成した。
【0038】
[耐光性の強い蛍光インキ]
無機蛍光顔料D1124(赤色蛍光) 8重量部
(根本特殊社製)
蒸発乾燥型スクリーン印刷用メジウム 8重量部
(SS8 WACワニス ロ:東洋インキ製造社製)
【0039】
次に、下記墨インキを用いて、前記耐光性の強い蛍光インキ層を含めて、前記耐光性の弱い蛍光インキ層に、文字を印刷して乾燥させ、蛍光性を呈さないインキ層層を設け、蛍光表示体を得た。
【0040】
[墨インキ]
蒸発乾燥型スクリーン印刷用 墨インキ
(SS8 911墨:東洋インキ製造社製)
【0041】
<評価結果>
実施例1で得られた蛍光表示体に、UVライトを照射すると印刷を行った60×30mm角の範囲全面が蛍光発色する下地の上に、黒い文字が印刷されている、図1のような状態が確認することができた。
【0042】
実施例1の蛍光表示体を1200Luxの蛍光灯下に12時間置いた後、取り出し、UVライトを照射すると、耐光性の強い蛍光灯を塗布した層のみが蛍光発色し、耐光性の弱いインキで塗布したそうは見る事が出来なくなっていたため、図2のように、耐光性の強い蛍光インキのみがのこり、耐光性の強いインキで印刷した「×」印を確認する事が出来た。
【符号の説明】
【0043】
11…蛍光表示体
13…UVライト
21…耐光性の強い蛍光インキ層
23…耐光性の弱い蛍光インキ層
31…蛍光表示体の基材
33…蛍光性を呈さないインキ層
51…退色防止層
61…退色防止層基材
63…剥離層
65…受像層
67…画像形成層
69…接着層
71…サーマルヘッド
72…熱が加わった部分の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の片面に、少なくとも耐光性の強い蛍光インキ層、耐光性の弱い蛍光インキ層および蛍光性を呈さないインキ層を形成してなることを特徴とする蛍光表示体。
【請求項2】
前記耐光性の弱い蛍光インキ層の上面に、前記耐光性の強い蛍光インキ層と前記が蛍光性を呈さないインキ層を順次形成してなることを特徴とする請求項1に記載の蛍光表示体。
【請求項3】
前記耐光性の弱い蛍光インキ層と前記耐光性の強い蛍光インキ層を、前記基材の片側に満遍なく形成し、その上に前記蛍光性を呈さないインキ層を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の蛍光表示体。
【請求項4】
前記耐光性の弱い蛍光インキ層が、2.15MJ/m〜8.61MJ/mの範囲の放射照度で退色し、且つ、耐光性の強い蛍光インキ層が、258MJ/m以上で退色しない事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光表示体。
【請求項5】
前記蛍光表示体の表示面側の表面に退色防止層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光表示体。
【請求項6】
前記退色防止層が前記蛍光表示体の表示面側の表面にパターン形成されていることを特徴とする請求項5に記載の蛍光表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240241(P2012−240241A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110146(P2011−110146)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】