説明

蛍光観測装置及び蛍光観測方法

【課題】 対象物の蛍光観測画像を時系列に取得する構成において、蛍光が抽出された画像をリアルタイムに生成することが可能な蛍光観測装置及び方法を提供する。
【解決手段】 励起光を供給する光源11と、インターレース型の撮像装置12と、撮像装置12から出力された第1フィールドの画像または第2フィールドの画像を記憶するフィールドメモリ15と、差分画像を生成する差分演算器20とによって蛍光観測装置1Aを構成する。光源11は、撮像装置12での第1、第2フィールドの画像取得期間の一方が蛍光画像取得期間、他方が背景画像取得期間となるように励起光を供給する。差分演算器20は、撮像装置12の出力の蛍光画像からメモリ15の背景画像を差し引く第1モードと、撮像装置12の出力の背景画像をメモリ15の蛍光画像から差し引く第2モードとを切り替えて適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測対象物に励起光を供給して、観測対象物からの蛍光についての観測画像を取得する蛍光観測装置、及び蛍光観測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
観測対象物に対して、所定波長の励起光を供給、照射し、対象物で発生した蛍光についての観測画像を撮像装置によって取得する蛍光観測装置は、例えば医療分野などの様々な分野において用いられている。また、このような蛍光観測において、対象物の状態の時間的変化等を観測したい場合には、所定のフレームレートで時系列に画像を取得して、対象物を動画で観測する方法が用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−151104号公報
【特許文献2】特開平7−155292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
観測対象物からの蛍光観測において、微弱な蛍光の観測画像を目視で確認するなどの目的で、励起光を供給した状態で取得された蛍光画像と、励起光を供給せずに蛍光無しの状態で取得された背景画像との差分画像を生成、表示することで、蛍光の画像成分を抽出、確認する方法が用いられる場合がある。しかしながら、従来の構成では、上記したように時系列に画像を取得して動画で対象物の観測を行う場合、蛍光が抽出された差分画像を動画のままで、リアルタイムに生成することは困難である。
【0005】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、対象物の蛍光観測画像を時系列に取得する構成において、蛍光が抽出された画像をリアルタイムに生成することが可能な蛍光観測装置、及び蛍光観測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明による蛍光観測装置は、(1)観測対象物に対して蛍光観測のための励起光を供給するとともに、励起光の供給のON/OFFを切り替え可能な励起光供給手段と、(2)観測対象物からの光像を撮像するとともに、得られた観測対象物の画像データとして、第1フィールドの画像及び第2フィールドの画像を時系列で交互に出力するインターレース型の撮像装置と、(3)撮像装置から出力された第1フィールドの画像または第2フィールドの画像を記憶する画像記憶手段と、(4)撮像装置から出力された第1フィールドの画像及び第2フィールドの画像の一方と、画像記憶手段に記憶された第1フィールドの画像及び第2フィールドの画像の他方との差分をとった差分画像を生成する差分画像生成手段とを備え、(5)励起光供給手段は、撮像装置による第1フィールドの画像取得期間、及び第2フィールドの画像取得期間について、その一方が励起光の供給をONとして蛍光画像を取得する期間、他方が励起光の供給をOFFとして背景画像を取得する期間となるように励起光を供給するとともに、(6)差分画像生成手段は、その生成モードとして、撮像装置から蛍光画像が出力された場合に、蛍光画像から、その前に取得されて画像記憶手段に記憶された背景画像を差し引くことで差分画像を生成する第1モードと、撮像装置から背景画像が出力された場合に、背景画像を、その前に取得されて画像記憶手段に記憶された蛍光画像から差し引くことで差分画像を生成する第2モードとを切り替えて適用することを特徴とする。
【0007】
また、本発明による蛍光観測方法は、(1)観測対象物に対して蛍光観測のための励起光を供給するとともに、励起光の供給のON/OFFを切り替え可能な励起光供給手段と、(2)観測対象物からの光像を撮像するとともに、得られた観測対象物の画像データとして、第1フィールドの画像及び第2フィールドの画像を時系列で交互に出力するインターレース型の撮像装置と、(3)撮像装置から出力された第1フィールドの画像または第2フィールドの画像を記憶する画像記憶手段とを含む蛍光観測装置を用い、(4)撮像装置から出力された第1フィールドの画像及び第2フィールドの画像の一方と、画像記憶手段に記憶された第1フィールドの画像及び第2フィールドの画像の他方との差分をとった差分画像を生成する差分画像生成ステップと、(5)励起光供給手段により、撮像装置による第1フィールドの画像取得期間、及び第2フィールドの画像取得期間について、その一方が励起光の供給をONとして蛍光画像を取得する期間、他方が励起光の供給をOFFとして背景画像を取得する期間となるように励起光を供給する励起光供給ステップとを備え、(6)差分画像生成ステップは、その生成モードとして、撮像装置から蛍光画像が出力された場合に、蛍光画像から、その前に取得されて画像記憶手段に記憶された背景画像を差し引くことで差分画像を生成する第1モードと、撮像装置から背景画像が出力された場合に、背景画像を、その前に取得されて画像記憶手段に記憶された蛍光画像から差し引くことで差分画像を生成する第2モードとを切り替えて適用することを特徴とする。
【0008】
上記した蛍光観測装置及び蛍光観測方法では、対象物の蛍光観測画像の時系列での取得において、インターレース型の撮像装置を用いるとともに、その第1フィールドの画像取得期間及び第2フィールドの画像取得期間の一方が蛍光画像取得期間、他方が背景画像取得期間となるように、撮像装置によるフィールド画像取得動作と、励起光供給手段による励起光供給のON/OFF動作とを同期して制御する。このとき、撮像装置からは、励起光を供給した状態での蛍光画像と、励起光を供給しない状態での背景画像とが、第1フィールドの画像または第2フィールドの画像として時系列で交互に出力される。
【0009】
また、撮像装置から時系列に出力される蛍光画像または背景画像に対し、フィールドメモリとして画像記憶手段が設けられている。このような構成では、撮像装置から蛍光画像取得期間で取得された蛍光画像が出力される場合には、画像記憶手段に記憶されている画像は、その前の背景画像取得期間で取得された背景画像となっている。また、撮像装置から背景画像取得期間で取得された背景画像が出力される場合には、画像記憶手段に記憶されている画像は、その前の蛍光画像取得期間で取得された蛍光画像となっている。
【0010】
このような構成において、撮像装置及び画像記憶手段に対して、観測画像の蛍光画像成分を抽出するための差分画像生成手段を設ける。そして、差分画像の生成において、撮像装置の出力の蛍光画像から、画像記憶手段の出力の1つ前の背景画像を差し引いて差分画像とする第1モードと、画像記憶手段の出力の1つ前の蛍光画像から、撮像装置の出力の背景画像を差し引いて差分画像とする第2モードとを、撮像装置及び励起光供給手段の動作に同期させて切り替えて適用する。これにより、対象物の蛍光観測画像を時系列に取得する構成において、蛍光が抽出された画像を動画のままで、画像更新速度を落とすことなくリアルタイムに生成することが可能となる。
【0011】
ここで、蛍光観測装置は、撮像装置からの信号に基づいて第1フィールドの画像取得期間、及び第2フィールドの画像取得期間に同期して切り替わる切替信号を生成する切替信号生成手段を備え、差分画像生成手段は、切替信号に基づいて、第1モードと第2モードとを切り替えて適用する構成を用いることができる。同様に、蛍光観測方法は、撮像装置からの信号に基づいて第1フィールドの画像取得期間、及び第2フィールドの画像取得期間に同期して切り替わる切替信号を生成する切替信号生成ステップを備え、差分画像生成ステップは、切替信号に基づいて、第1モードと第2モードとを切り替えて適用する構成を用いることができる。
【0012】
このように、撮像装置からの信号に基づいて、第1、第2フィールドの画像取得期間に同期して生成される切替信号を用いることにより、差分画像の生成における第1モードと第2モードとの生成モードの切り替えを好適に実現することができる。
【0013】
また、蛍光観測装置は、画像記憶手段から差分画像生成手段へと出力される蛍光画像または背景画像に対して、画像に含まれる各画素の輝度について、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする最大フィルタ処理、または、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする最小フィルタ処理を行うフィルタ処理手段を備え、フィルタ処理手段は、画像記憶手段から背景画像が出力される第1モードと、画像記憶手段から蛍光画像が出力される第2モードとで、最大フィルタ処理と、最小フィルタ処理とを切り替えて適用することが好ましい。
【0014】
同様に、蛍光観測方法は、画像記憶手段から出力される蛍光画像または背景画像に対して、画像に含まれる各画素の輝度について、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする最大フィルタ処理、または、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする最小フィルタ処理を行うフィルタ処理ステップを備え、フィルタ処理ステップは、画像記憶手段から背景画像が出力される第1モードと、画像記憶手段から蛍光画像が出力される第2モードとで、最大フィルタ処理と、最小フィルタ処理とを切り替えて適用することが好ましい。
【0015】
上記したように、撮像装置のフィールド画像取得動作と、励起光供給手段の励起光供給動作と、差分画像生成手段のモード切替動作とを同期させる構成では、差分画像の生成において、第1フィールドの画像と第2フィールドの画像との間で差分をとるために、例えば、明るい画像部分と暗い画像部分との境界などにおいて、偽の差分画像成分が抽出される場合がある。また、このような偽の差分画像成分の抽出は、対象物に動きがあるなどの場合にも生じる可能性がある。
【0016】
これに対して、画像記憶手段から出力される画像の各画素の輝度について最大フィルタ処理または最小フィルタ処理を実行するフィルタ処理手段を設けるとともに、このフィルタ処理手段において、差分画像の生成における第1、第2モードの切替動作に同期して、最大、最小フィルタ処理を切り替えて画像に適用する。これにより、蛍光画像と背景画像との差分画像における偽の差分画像成分の抽出を抑制することができる。
【0017】
この場合、蛍光観測装置は、撮像装置からの信号に基づいて第1フィールドの画像取得期間、及び第2フィールドの画像取得期間に同期して切り替わる切替信号を生成する切替信号生成手段を備え、差分画像生成手段は、切替信号に基づいて、第1モードと第2モードとを切り替えて適用するとともに、フィルタ処理手段は、切替信号に基づいて、第1モードと第2モードとで、最大フィルタ処理と最小フィルタ処理とを切り替えて適用する構成を用いることができる。
【0018】
同様に、蛍光観測方法は、撮像装置からの信号に基づいて第1フィールドの画像取得期間、及び第2フィールドの画像取得期間に同期して切り替わる切替信号を生成する切替信号生成ステップを備え、差分画像生成ステップは、切替信号に基づいて、第1モードと第2モードとを切り替えて適用するとともに、フィルタ処理ステップは、切替信号に基づいて、第1モードと第2モードとで、最大フィルタ処理と最小フィルタ処理とを切り替えて適用する構成を用いることができる。
【0019】
このように、撮像装置からの信号に基づいて、第1、第2フィールドの画像取得期間に同期して生成される切替信号を用いることにより、差分画像の生成における第1モードと第2モードとの生成モードの切り替え、及びフィルタ処理における最大フィルタ処理と最小フィルタ処理とのフィルタ処理の切り替えを好適に実現することができる。
【0020】
また、上記のようにフィルタ処理手段を用いる場合、蛍光観測装置は、対象画素を含む走査線のライン画像データに対して、対象画素の近傍の所定範囲内にある画素を含む走査線のライン画像データを記憶する第2の画像記憶手段を備えることが好ましい。このような構成によれば、第2の画像記憶手段に記憶されたライン画像データを用いて、フィルタ処理手段における画像に対するフィルタ処理を好適に実行することができる。
【0021】
蛍光画像または背景画像に対するフィルタ処理については、具体的には、蛍光観測装置は、フィルタ処理手段において、最大フィルタ処理では、nを2以上の整数として、対象画素に垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする処理を行い、最小フィルタ処理では、対象画素に垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする処理を行う構成を用いることができる。
【0022】
同様に、蛍光観測方法は、フィルタ処理ステップにおいて、最大フィルタ処理では、nを2以上の整数として、対象画素に垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする処理を行い、最小フィルタ処理では、対象画素に垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする処理を行う構成を用いることができる。
【0023】
このように、対象画素に垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素を用いて最大、最小フィルタ処理を実行することにより、偽の差分画像成分の抽出の抑制を好適に実現することができる。また、この場合、最大フィルタ処理及び最小フィルタ処理に用いられる画素数nは、3以上5以下の整数に設定されることが好ましい。
【0024】
また、蛍光観測装置は、フィルタ処理手段において、最大フィルタ処理では、mを2以上の整数として、対象画素に水平方向のm−1個の画素を加えたm個の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする処理を行い、最小フィルタ処理では、対象画素に水平方向のm−1個の画素を加えたm個の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする処理を行う構成を用いても良い。
【0025】
同様に、蛍光観測方法は、フィルタ処理ステップにおいて、最大フィルタ処理では、mを2以上の整数として、対象画素に水平方向のm−1個の画素を加えたm個の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする処理を行い、最小フィルタ処理では、対象画素に水平方向のm−1個の画素を加えたm個の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする処理を行う構成を用いても良い。
【0026】
このように、対象画素に水平方向のm−1個の画素を加えたm個の画素を用いて最大、最小フィルタ処理を実行する構成によっても、例えば対象物に動きがある場合などにおいて、偽の差分画像成分の抽出の抑制を好適に実現することができる。
【0027】
蛍光観測装置は、差分画像生成手段から出力された差分画像に基づいて、蛍光の強度分布を示す強度分布画像を生成する分布画像生成手段を備える構成を用いることができる。同様に、蛍光観測方法は、差分画像生成ステップで出力された差分画像に基づいて、蛍光の強度分布を示す強度分布画像を生成する分布画像生成ステップを備える構成を用いることができる。
【0028】
このように、蛍光が抽出された差分画像をそのまま用いるのではなく、強度分布画像に変換して蛍光観測に用いることにより、例えば微弱な蛍光の観測画像の目視での確認等を効率的に行うことができる。また、このように強度分布画像を生成して用いる場合、具体的には例えば、差分画像に対して、単一または複数の閾値を適用して、強度分布画像である二値化画像またはカラー化画像を生成する構成を用いることができる。
【0029】
また、蛍光観測装置は、撮像装置から出力された蛍光画像または背景画像と、分布画像生成手段から出力された強度分布画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成手段を備える構成を用いることができる。同様に、蛍光観測方法は、撮像装置から出力された蛍光画像または背景画像と、分布画像生成ステップで出力された強度分布画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成ステップを備える構成を用いることができる。
【0030】
このように、オリジナルの蛍光画像または背景画像と、二値化画像、カラー化画像等の強度分布画像とを重畳した重畳画像を蛍光観測に用いる構成によれば、例えば、対象物における蛍光の発生位置を、観測画像から目視で確認することが可能になるなど、様々な形での効率的な対象物の蛍光観測が可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の蛍光観測装置、及び蛍光観測方法によれば、インターレース型の撮像装置によるフィールド画像取得動作と、励起光供給手段による励起光供給のON/OFF動作とを同期して制御し、撮像装置から時系列に出力される蛍光画像及び背景画像に対して画像記憶手段を設けるとともに、撮像装置及び画像記憶手段に対して差分画像生成手段を設け、差分画像の生成において、撮像装置の出力の蛍光画像から、画像記憶手段の出力の背景画像を差し引いて差分画像とする第1モードと、撮像装置の出力の背景画像を、画像記憶手段の出力の蛍光画像から差し引いて差分画像とする第2モードとを切り替えて適用することにより、対象物の蛍光観測画像を時系列に取得する構成において、蛍光が抽出された画像をリアルタイムに生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】蛍光観測装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した蛍光観測装置において実行される蛍光観測方法の一例について示すタイミングチャートである。
【図3】蛍光観測装置の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示した蛍光観測装置において実行される蛍光観測方法の一例について示すタイミングチャートである。
【図5】差分画像における偽の差分画像成分の発生について示す図である。
【図6】フィルタ処理による偽の差分画像成分の除去について示す図である。
【図7】差分画像における偽の差分画像成分の発生について示す図である。
【図8】フィルタ処理による偽の差分画像成分の除去について示す図である。
【図9】図3に示した蛍光観測装置において実行される蛍光観測方法の他の例について示すタイミングチャートである。
【図10】蛍光観測装置の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図11】図10に示した蛍光観測装置における分布画像生成部の構成の一例を示すブロック図である。
【図12】図10に示した蛍光観測装置において実行される蛍光観測方法の一例について示すタイミングチャートである。
【図13】蛍光観測装置において取得される観測画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面とともに本発明による蛍光観測装置、及び蛍光観測方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0034】
図1は、蛍光観測装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態による蛍光観測装置1Aは、観測対象物10について、所定のフレームレートで時系列に蛍光観測画像を取得することで、対象物10を動画で観測するように構成されている。具体的には、本蛍光観測装置1Aは、観測光源11と、撮像装置12と、フィールドメモリ15と、差分演算器20と、切替信号生成部25とを備えて構成されている。
【0035】
観測光源11は、観測対象物10に対して蛍光観測のための所定波長の励起光を供給するとともに、励起光の供給のON/OFFを切り替え可能に構成された励起光供給手段である。また、撮像装置12は、対象物10からの光像を撮像するものであり、対象物10の画像データとして、第1フィールドの画像、及び第2フィールドの画像を時系列で交互に出力するインターレース型の撮像装置である。このような撮像装置12としては、例えば、NTSC方式、またはPAL方式のスタンダード同期インターレース型ビデオカメラを用いることができる。
【0036】
観測光源11は、撮像装置12の動作と同期して対象物10へと励起光を供給するように、その動作が制御される。具体的には、光源11は、撮像装置12による第1フィールドの画像取得期間、及び第2フィールドの画像取得期間について、その一方の期間が、励起光の供給をONとして、対象物10で発生した蛍光の画像成分を含む蛍光画像を取得する蛍光画像取得期間となり、他方の期間が、励起光の供給をOFFとして、蛍光の画像成分を含まない背景画像(例えば、対象物10の通常画像)を取得する背景画像取得期間となるように、対象物10に対して励起光を供給する。
【0037】
図1に示した構成では、上記した同期を実現するために、撮像装置12からの信号に基づいて第1、第2フィールドの画像取得期間に同期して切り替わる切替信号を生成する切替信号生成部25が設けられている。そして、この切替信号生成部25からの切替信号が光源11に入力されることにより、撮像装置12における第1、第2フィールド画像の取得と、光源11における励起光供給のON/OFFとの同期制御が実現される。このような構成において、撮像装置12から出力される第1、第2フィールドの画像は、その一方が蛍光画像、他方が背景画像となっている。
【0038】
また、撮像装置12に対し、撮像装置12から出力された第1フィールドの画像または第2フィールドの画像(蛍光画像または背景画像)を記憶する画像記憶手段としてフィールドメモリ15が設けられている。さらに、撮像装置12からの画像出力、及びフィールドメモリ15からの画像出力に対し、差分演算器20が設けられている。この差分演算器20は、撮像装置12から出力された第1、第2フィールドの画像の一方と、フィールドメモリ15に記憶されて演算器20へと出力された第1、第2フィールドの画像の他方との差分を取った差分画像を生成する差分画像生成手段である。
【0039】
この差分演算器20には、観測光源11と同様に、切替信号生成部25からの切替信号が入力されている。差分演算器20は、入力された切替信号を参照し、その差分演算生成モードとして、差分画像の生成方法が異なる第1モードと、第2モードとを切り替えて適用する。第1モードは、撮像装置12から蛍光画像が出力された場合に適用され、蛍光画像から、その前に取得されてフィールドメモリ15に記憶された背景画像を差し引くことで差分画像を生成する。また、第2モードは、撮像装置12から背景画像が出力された場合に適用され、背景画像を、その前に取得されてフィールドメモリ15に記憶された蛍光画像から差し引くことで差分画像を生成する。
【0040】
図1に示した構成では、差分演算器20として、演算論理装置(ALU:ArithmeticLogic Unit)を用いている。差分演算器20のA入力端子には、撮像装置12の出力(カメラ出力)が接続され、B入力端子には、フィールドメモリ15の出力(メモリ出力)が接続されている。また、差分演算器20のY出力端子からは、演算結果の差分画像が出力される。なお、差分演算において、演算結果が負の場合には0出力とする。
【0041】
また、図1に示した構成例では、差分演算器20に対して表示装置50が接続されており、差分演算器20で生成された差分画像を表示装置50に表示する構成となっている。ただし、このような表示装置50については、表示装置以外の画像出力装置を設ける構成としても良い。あるいは、表示装置等の画像出力装置を設けずに、得られた差分画像のデータを外部へと送出する構成としても良い。
【0042】
図2は、図1に示した蛍光観測装置において実行される蛍光観測方法の一例について示すタイミングチャートである。このタイミングチャートでは、(a)観測光源11における励起光供給のON/OFF動作、(b)撮像装置12における第1、第2フィールドの画像の取得動作、(c)差分演算器20のA入力となるカメラ出力、(d)B入力となるメモリ出力、及び(e)差分演算によって生成される差分画像を示している。
【0043】
図2のタイミングチャートにおいて、1つのフレームの画像を取得するためのフレーム取得期間T10は、第1フィールドの画像を取得する第1期間T11、及び第2フィールドの画像を取得する第2期間T12によって構成されている。また、図2の例では、第1期間T11において励起光の供給をOFFとして、その期間(背景画像取得期間)で取得される第1フィールドの画像を背景画像とし、また、第2期間T12において励起光の供給をONとして、その期間(蛍光画像取得期間)で取得される第2フィールドの画像を蛍光画像としている(励起光供給ステップ)。
【0044】
フレーム取得期間T10の前の第2期間T02で、撮像装置12において第2フィールドの画像として取得された蛍光画像は、続く第1期間T11において撮像装置12から出力され、差分演算器20のA入力端子へと入力される。また、第1期間T11では、フィールドメモリ15には、前の第2期間T02で撮像装置12から出力された背景画像が記憶されており、この背景画像が、フィールドメモリ15から差分演算器20のB入力端子へと入力される。
【0045】
この第1期間T11では、撮像装置12から蛍光画像が出力されているため、差分演算器20の動作モードとして、第1モードが適用される。このとき、差分演算器20において、A入力の蛍光画像からB入力の背景画像を差し引くA−B演算が実行され、これによって、蛍光が抽出された差分画像が生成される(差分画像生成ステップ)。
【0046】
また、フレーム取得期間T10の第1期間T11で、撮像装置12において第1フィールドの画像として取得された背景画像は、続く第2期間T12において撮像装置12から出力され、差分演算器20のA入力端子へと入力される。また、第2期間T12では、フィールドメモリ15には、前の第1期間T11で撮像装置12から出力された蛍光画像が記憶されており、この蛍光画像が、フィールドメモリ15から差分演算器20のB入力端子へと入力される。
【0047】
この第2期間T12では、撮像装置12から背景画像が出力されているため、差分演算器20の動作モードとして、第2モードが適用される。このとき、差分演算器20において、B入力の蛍光画像からA入力の背景画像を差し引くB−A演算が実行され、これによって、蛍光が抽出された差分画像が生成される(差分画像生成ステップ)。
【0048】
このような光源11からの励起光の供給、撮像装置12での画像取得、差分演算器20での動作モードの切替、及び差分画像の生成を、各フレーム取得期間での第1期間、第2期間で繰り返して行うことにより、各フィールド画像取得期間において、蛍光が抽出された差分画像が生成される。なお、第1、第2期間における励起光供給のON/OFF、蛍光画像/背景画像の取得、及び差分演算のモードの切替については、図2に示した構成に限らず、例えば、第1期間において励起光の供給をONとして蛍光画像を取得し、第2期間において励起光の供給をOFFとして背景画像を取得する構成としても良い。
【0049】
本実施形態による蛍光観測装置1A、及び蛍光観測方法の効果について説明する。
【0050】
図1及び図2に示した蛍光観測装置1A、及び蛍光観測方法では、対象物10の蛍光観測画像の時系列での取得において、インターレース型の撮像装置12を用いるとともに、その第1フィールドの画像取得期間T11及び第2フィールドの画像取得期間T12の一方が蛍光画像取得期間、他方が背景画像取得期間となるように、撮像装置12によるフィールド画像取得動作と、観測光源11による励起光供給のON/OFF動作とを同期して制御する。このとき、撮像装置12からは、図2に示したように、励起光を供給した状態での蛍光画像と、励起光を供給しない状態での背景画像とが、第1フィールドの画像または第2フィールドの画像として時系列で交互に出力される。
【0051】
また、撮像装置12から時系列に出力される蛍光画像または背景画像に対し、フィールドメモリ15が設けられている。このフィールドメモリ15には、撮像装置12から出力される蛍光画像と、背景画像とが、第1フィールドの画像または第2フィールドの画像として時系列で交互に入力され、記憶される。このような構成では、撮像装置12から蛍光画像取得期間で取得された蛍光画像が出力される場合には、フィールドメモリ15に記憶されている観測画像は、その前の背景画像取得期間で取得された背景画像となっている。また、撮像装置12から背景画像取得期間で取得された背景画像が出力される場合には、フィールドメモリ15に記憶されている観測画像は、その前の蛍光画像取得期間で取得された蛍光画像となっている。
【0052】
このような構成において、撮像装置12及びフィールドメモリ15に対して、観測画像の蛍光画像成分を抽出するための差分演算器20を設ける。そして、差分画像の生成において、撮像装置12の出力の蛍光画像から、メモリ15の出力の1つ前の背景画像を差し引いて差分画像とする第1モードと、メモリ15の出力の1つ前の蛍光画像から、撮像装置12の出力の背景画像を差し引いて差分画像とする第2モードとを、撮像装置12及び光源11の動作に同期させて交互に切り替えて適用する。
【0053】
これにより、対象物10の蛍光観測画像を時系列に取得する構成において、蛍光が抽出された画像を動画のままで、画像更新速度を落とすことなくリアルタイムに生成することが可能となる。例えば、画像取得のフレームレートが30フレーム/秒の場合、インターレース動作における第1、第2フィールドの画像取得のレートは、その2倍の60フィールド/秒となる。これに対して、上記のように差分画像の生成モードをフィールドの画像取得期間毎に切り替える構成によれば、フィールド画像取得動作と同期して60画像/秒で差分画像を生成、出力することが可能となる。
【0054】
また、上記構成では、蛍光観測装置1Aにおいて、撮像装置12からの信号に基づいて第1フィールドの画像取得期間、及び第2フィールドの画像取得期間に同期して切り替わる切替信号を生成する切替信号生成部25を設けるとともに、差分演算器20が、この切替信号に基づいて、第1モードと第2モードとを切り替えて適用する構成を用いている。このように、撮像装置12からの信号に基づいて、第1、第2フィールドの画像取得期間に同期して生成される切替信号を用いることにより、差分画像の生成における第1モードと第2モードとの生成モードの切り替えを好適に実現することができる。
【0055】
図3は、蛍光観測装置の第2実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態による蛍光観測装置1Bは、観測光源11と、撮像装置12と、フィールドメモリ15と、差分演算器20と、MAX/MINフィルタ21と、ラインメモリ22と、切替信号生成部25と、表示装置50とを備えて構成されている。これらのうち、観測光源11、撮像装置12、フィールドメモリ15、差分演算器20、切替信号生成部25、及び表示装置50の構成については、図1に示した第1実施形態の構成と同様である。なお、図3においては、観測対象物10については図示を省略している。
【0056】
図3に示した構成では、フィールドメモリ15から差分演算器20へと出力される蛍光画像または背景画像に対して、MAX/MINフィルタ21が設けられている。このフィルタ21は、メモリ15から出力される画像に対して、その画像に含まれる各画素(ピクセル)の輝度について、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする最大フィルタ(MAXフィルタ)処理、または、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする最小フィルタ(MINフィルタ)処理を行うフィルタ処理手段である。
【0057】
また、このMAX/MINフィルタ21に対し、ラインメモリ22が設けられている。ラインメモリ22は、フィルタ処理での対象画素を含む走査線(走査ライン)のライン画像データに対して、対象画素の近傍の所定範囲内にある画素を含む走査線のライン画像データを記憶する第2の画像記憶手段であり、フィルタ21において実行されるフィルタ処理の内容に応じて、1ライン分または複数ライン分のメモリによって構成される。このラインメモリ22には、フィールドメモリ15から出力されるフィールド画像データのうちで、フィルタ21で実行されるフィルタ処理に必要な1または複数のライン画像データが記憶される。また、メモリ15からフィルタ21、メモリ22への画像データの読み出しについては、撮像装置12から出力される画像データとのタイミングを合わせるため、必要に応じて、所定量のデータの早読み出しが行われる。
【0058】
このMAX/MINフィルタ21には、光源11及び差分演算器20と同様に、切替信号生成部25からの切替信号が入力されている。フィルタ21は、入力された切替信号を参照し、フィルタ21での処理対象としてフィールドメモリ15から背景画像が出力される第1モードと、フィールドメモリ15から蛍光画像が出力される第2モードとで、最大フィルタ処理と、最小フィルタ処理とを、撮像装置12、光源11、及び差分演算器20の動作に同期させて、交互に切り替えて適用する。すなわち、MAX/MINフィルタ21は、第1、第2モードの一方で、メモリ15からの画像に対して最大フィルタ処理を行い、他方で、メモリ15からの画像に対して最小フィルタ処理を行う。
【0059】
図4は、図3に示した蛍光観測装置において実行される蛍光観測方法の一例について示すタイミングチャートである。なお、図4に示したタイミングチャートにおける基本的な動作は、図2に示したものと同様である。また、図4の例では、第1モードにおいて、フィールドメモリ15から出力される背景画像に最大フィルタ処理を適用し、第2モードにおいて、フィールドメモリ15から出力される蛍光画像に最小フィルタ処理を適用する構成としている(フィルタ処理ステップ)。
【0060】
第2期間T02で撮像装置12において取得された蛍光画像は、第1期間T11で撮像装置12から差分演算器20のA入力端子へと入力される。また、第1期間T11では、メモリ15には、前の第2期間T02で撮像装置12から出力された背景画像が記憶されており、この背景画像が、フィルタ21での最大フィルタ処理の後に、差分演算器20のB入力端子へと入力される。第1モードが適用された差分演算器20では、A入力の蛍光画像から、最大フィルタ処理が適用されたB入力の背景画像を差し引くA−MAX(B)演算が実行され、これによって、蛍光が抽出された差分画像が生成される。
【0061】
第1期間T11で撮像装置12において取得された背景画像は、第2期間T12で撮像装置12から差分演算器20のA入力端子へと入力される。また、第2期間T12では、メモリ15には、前の第1期間T11で撮像装置12から出力された蛍光画像が記憶されており、この蛍光画像が、フィルタ21での最小フィルタ処理の後に、差分演算器20のB入力端子へと入力される。第2モードが適用された差分演算器20では、最小フィルタ処理が適用されたB入力の蛍光画像から、A入力の背景画像を差し引くMIN(B)−A演算が実行され、これによって、蛍光が抽出された差分画像が生成される。
【0062】
このような光源11からの励起光の供給、撮像装置12での画像取得、フィルタ21でのフィルタ処理の切替、差分演算器20での動作モードの切替、及び差分画像の生成を、各フレーム取得期間での第1期間、第2期間で繰り返して行うことにより、各フィールド画像取得期間において、蛍光が抽出された差分画像がリアルタイムに生成される。
【0063】
本実施形態による蛍光観測装置1B、及び蛍光観測方法においても、第1実施形態による蛍光観測装置1A、及び蛍光観測方法と同様の効果を得ることができる。さらに本実施形態では、フィールドメモリ15から出力される画像に対して、MAX/MINフィルタ21を設け、差分演算器20での第1、第2モードの切替と同期して、画像に対して適用する最大フィルタ処理、最小フィルタ処理を交互に切り替える構成としている。
【0064】
上記したように、撮像装置12でのフィールド画像取得動作と、観測光源11での励起光供給動作と、差分演算器20でのモード切替動作とを同期させる構成では、必要なカメラセンサが1つであるので、画像間の光学的な位置ずれがなく、光学系、機構の実現が容易である。一方、このような構成では、差分画像の生成において、第1フィールドの画像と、第2フィールドの画像との異なるフィールド間で差分をとるために、例えば、明るい画像部分と暗い画像部分との境界などにおいて、偽の差分画像成分が抽出される場合がある。また、このような偽の差分画像成分の抽出は、観測対象物10に動きがあるなどの場合においても、同様に生じる可能性がある。
【0065】
これに対して、フィールドメモリ15から出力される画像の各画素の輝度について最大フィルタ処理または最小フィルタ処理を実行するMAX/MINフィルタ21を設けるとともに、このフィルタ21において、差分画像の生成での第1、第2モードの切替動作に同期して、最大、最小フィルタ処理を切り替えて画像に適用する。これにより、蛍光画像と背景画像との差分画像における偽の差分画像成分の抽出を抑制することができる。
【0066】
なお、このようにMAX/MINフィルタ21において差分演算器20のB入力となる画像に対してフィルタ処理を行う場合、フィルタ処理を行った結果の画像の位置と、撮像装置12から生で入力されるカメラ画像の位置とが合っている必要がある。この場合、メモリ15からの画像データの読み出しにおいて、フィルタ処理の具体的な内容に応じて、垂直方向に必要なライン分、データの早読み出しを行うことが好ましい。
【0067】
また、上記構成では、蛍光観測装置1Bにおいて、撮像装置12からの信号に基づいて第1フィールドの画像取得期間、及び第2フィールドの画像取得期間に同期して切り替わる切替信号を生成する切替信号生成部25を設けるとともに、差分演算器20が、この切替信号に基づいて、第1モードと第2モードとを切り替えて適用し、また、フィルタ21が、切替信号に基づいて、第1モードと第2モードとで、最大フィルタ処理と最小フィルタ処理とを切り替えて適用する構成を用いている。
【0068】
このように、撮像装置12からの信号に基づいて、第1、第2フィールドの画像取得期間に同期して生成される切替信号を用いることにより、差分画像の生成における第1モードと第2モードとの生成モードの切り替え、及びフィルタ処理における最大フィルタ処理と最小フィルタ処理とのフィルタ処理の切り替えを好適に実現することができる。
【0069】
また、上記構成では、蛍光観測装置1Bにおいて、フィルタ処理での対象画素を含む走査線のライン画像データに対して、対象画素の近傍の所定範囲内にある画素を含む走査線のライン画像データを記憶するラインメモリ22を設けている。このような構成では、ラインメモリ22に記憶されたライン画像データを用いて、フィルタ21における画像に対するフィルタ処理を好適に実行することができる。
【0070】
フィルタ21で画像に対して実行されるフィルタ処理については、具体的には、最大フィルタ処理では、nを2以上の整数として、対象画素に、ラインメモリ22に記憶された垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする処理を行い、最小フィルタ処理では、対象画素に、ラインメモリ22に記憶された垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする処理を行う構成を用いることができる。
【0071】
このように、対象画素に垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素を用いて最大、最小フィルタ処理を実行することにより、偽の差分画像成分の抽出の抑制を好適に実現することができる。また、この場合、最大フィルタ処理及び最小フィルタ処理に用いられる画素数nは、3以上5以下の整数に設定されることが好ましい。なお、画像に適用する最大、最小フィルタ処理の条件等については、詳しくは後述する。
【0072】
また、フィルタ処理について、最大フィルタ処理では、mを2以上の整数として、対象画素に水平方向のm−1個の画素を加えたm個の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする処理を行い、最小フィルタ処理では、対象画素に水平方向のm−1個の画素を加えたm個の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする処理を行う構成を用いても良い。
【0073】
このように、対象画素に水平方向のm−1個の画素を加えたm個の画素を用いて最大、最小フィルタ処理を実行する構成によっても、例えば対象物10に動きがある場合などにおいて、偽の差分画像成分の抽出の抑制を好適に実現することができる。
【0074】
MAX/MINフィルタ21において、フィールドメモリ15から出力されて差分演算器20のB入力となる蛍光画像または背景画像に対して実行される最大、最小フィルタ処理、及びそれによる偽の差分画像成分の抽出の抑制効果について、フィルタ処理の具体例とともにさらに説明する。
【0075】
図5は、蛍光画像と背景画像との差分画像における偽の差分画像成分の発生について示す図である。ここでは、図5(a)に示すように、観測画像60において、その中央部分に矩形状の明るい画像部分61が、また、周囲に暗い画像部分62がある場合を考える。なお、以降の各図において、実線は差分演算器20のA入力端子に入力されるフィールド画像の走査線を示し、破線は差分演算器20のB入力端子に入力されるフィールド画像の走査線を示している。また、図5(a)では、明るい画像部分61については走査線の図示を省略している。
【0076】
図5(b)において、Pは、図5(a)に示す垂直方向の線Pに沿った輝度分布を示している。この輝度分布Pでは、明るい画像部分61の上端部66において、差分演算の対象となるA入力走査線A1と、B入力走査線B1とで、走査線A1での輝度が「暗」であるのに対し、走査線B1での輝度は「明」となっている。このとき、B−A演算による差分画像において、偽の差分画像成分C1が発生する。同様に、明るい画像部分61の下端部67では、走査線A2での輝度が「明」であるのに対し、走査線B2での輝度は「暗」となっている。このとき、A−B演算による差分画像において、偽の差分画像成分C2が発生する。
【0077】
このような偽の差分画像成分に対し、図6に示すように、フィルタ処理によって、偽の差分画像成分を除去することができる。ここで、図6においては、フィルタ処理の画素数をn=2として、最大フィルタ処理を、対象画素に垂直方向で時間的に前の1個の画素を加えた2個の画素での最大輝度を対象画素の輝度とする処理としている。同様に、最小フィルタ処理を、対象画素に垂直方向で時間的に前の1個の画素を加えた2個の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする処理としている。
【0078】
図6(a)は、明るい画像部分61の上端部66におけるB−A演算での偽の画像成分の発生に対して適用される最小フィルタ(MINフィルタ)処理について示している。この場合、元の輝度分布Pでは走査線B1での輝度は「明」であるが、B入力の画像に対してMINフィルタ処理を実行した結果、得られた輝度分布MIN(B)では、走査線B1の1つ上の走査線(垂直方向で時間的に1つ前の走査線)での輝度が「暗」であるため、走査線B1での輝度が「暗」に置き換えられている。これにより、MIN(B)−A演算による差分画像において、偽の画像成分が発生しなくなる。これは、B入力の画像が蛍光画像である場合に相当する(図4参照)。
【0079】
図6(b)は、明るい画像部分61の下端部67におけるA−B演算での偽の画像成分の発生に対して適用される最大フィルタ(MAXフィルタ)処理について示している。この場合、元の輝度分布Pでは走査線B2での輝度は「暗」であるが、B入力の画像に対してMAXフィルタ処理を実行した結果、得られた輝度分布MAX(B)では、走査線B2の1つ上の走査線での輝度が「明」であるため、走査線B2での輝度が「明」に置き換えられている。これにより、A−MAX(B)演算による差分画像において、偽の画像成分が発生しなくなる。これは、B入力の画像が背景画像である場合に相当する。
【0080】
ここで、図6においては、上記したように、フィルタ処理の画素数をn=2として、対象画素に垂直方向で時間的に前の1個の画素を加えた2個の画素を用いて最大、最小フィルタ処理を行う場合について説明した。ただし、実際の自然画像では、このようなフィルタ処理では、偽の差分画像成分の除去能力が不足する場合がある。
【0081】
図7は、蛍光画像と背景画像との差分画像における偽の差分画像成分の発生の他の例について示す図である。ここでは、観測画像70において、その中央部分に矩形状の明るい画像部分71が、周囲に暗い画像部分72があり、さらに、画像部分71の上方、下方の端部近傍にそれぞれ明るい画像部分76、77がある場合を考える。自然画像において、明るい画像部分71と暗い画像部分72との境界で、このような画像部分76、77を含む輝度分布の変動があった場合、上記のように最大、最小フィルタ処理を行っても、偽の画像成分が発生する可能性がある。
【0082】
図8(a)、(b)は、それぞれ、明るい画像部分71、及びその上方の明るい画像部分76におけるB−A演算での偽の画像成分の発生に対して適用される最小フィルタ(MINフィルタ)処理について示している。図8(a)では、図6と同様にフィルタ処理の画素数をn=2として、最小フィルタ処理を、対象画素に垂直方向で時間的に前の1個の画素を加えた2個の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする処理としている。また、図8(b)では、フィルタ処理の画素数をn=3として、最小フィルタ処理を、対象画素に垂直方向で時間的に前の2個の画素を加えた3個の画素での最小輝度を対象画素の輝度とする処理としている。
【0083】
図8(a)において、元の輝度分布Pでは、走査線A1での輝度が「暗」であるのに対して、走査線B1での輝度は「明」、走査線B1の1つ上の走査線B6での輝度も同じく「明」である。この場合、B入力の画像に対してn=2のMINフィルタ処理を実行しても、得られた輝度分布MIN(B)で走査線B1での輝度は「明」のままであり、したがって、MIN(B)−A演算による差分画像において偽の画像成分C1が発生する。
【0084】
一方、図8(b)に示すように、同様の輝度分布Pについて、B入力の画像に対してn=3のMINフィルタ処理を実行した場合、走査線B1の2つ上の走査線B7での輝度が「暗」であるために、得られた輝度分布MIN(B)で、走査線B1での輝度が「暗」に置き換えられる。これにより、MIN(B)−A演算による差分画像において、偽の画像成分が発生しなくなる。なお、このような偽の画像成分の除去については、A−B演算での偽の画像成分についても同様に実行可能である。
【0085】
このように、垂直方向についての最大、最小フィルタ処理において、フィルタ処理を適用する対象画素の近傍の画素数nを大きく設定した場合、それによって偽の差分画像成分の除去能力を向上することができる。一方、画素数nを大きくすると、フィルタ処理実行のための回路規模の増大などの問題が生じる。また、大きい画素数nでのフィルタ処理の実行は、例えば差分画像自体を小さくするなどの効果があり、抽出した目的の画像をも変形させてしまうため、必要以上に画素数nを大きくすることはできない。
【0086】
このような点を考慮すると、最大、最小フィルタ処理に用いられる対象画素の近傍の画素数nについては、上述したように3以上5以下の整数に設定する(3≦n≦5)ことが好ましい。また、フィルタ処理回路、メモリの構成等に応じ、対象画素に対して垂直方向で時間的に後の画素についても、フィルタ処理に用いる構成としても良い。
【0087】
また、蛍光画像と背景画像との差分画像における偽の差分画像成分の発生は、上記した明るい画像部分と暗い画像部分との境界以外にも、例えば、観測対象物10にフィールド時間以上の速度での動きがあるなどの場合にも生じる可能性がある。対象物10の動きによる偽の画像成分の場合、垂直方向の動きについては、上記した垂直方向のn個の画素を用いたフィルタ処理によって除去することが可能である。
【0088】
また、水平方向の動きについては、対象画素に水平方向のm−1個の画素を加えたm個の画素を用いて同様のフィルタ処理を行うことにより、偽の画像成分を除去することができる。この場合、水平方向の最大、最小フィルタ処理に用いられる画素数mについては、垂直方向の場合と同様の点を考慮して、5以上7以下の整数に設定する(5≦m≦7)ことが好ましい。また、水平方向、垂直方向の両者についてフィルタ処理を行う場合には、例えば、対象画素を含むn×m個の画素を用いてフィルタ処理を行えば良い。
【0089】
なお、図4に示したタイミングチャートにおいて、第1、第2期間における励起光供給のON/OFF、蛍光画像/背景画像の取得、差分演算の動作モードの切替、及びフィルタ処理の実行については、図2に関して上述したように、図4に示した構成に限らず、例えば、第1期間において励起光の供給をONとして蛍光画像を取得し、第2期間において励起光の供給をOFFとして背景画像を取得する構成としても良い。
【0090】
図9は、図3に示した蛍光観測装置において実行される蛍光観測方法の他の例について示すタイミングチャートである。この図9の例では、図4の例とは逆に、第1期間T11において励起光の供給をONとして、その期間で取得される第1フィールドの画像を蛍光画像とし、また、第2期間T12において励起光の供給をOFFとして、その期間で取得される第2フィールドの画像を背景画像としている。
【0091】
第2期間T02で撮像装置12において取得された背景画像は、第1期間T11で撮像装置12から差分演算器20のA入力端子へと入力される。また、第1期間T11では、メモリ15には、前の第2期間T02で撮像装置12から出力された蛍光画像が記憶されており、この蛍光画像が、フィルタ21での最小フィルタ処理の後に、差分演算器20のB入力端子へと入力される。第2モードが適用された差分演算器20では、最小フィルタ処理が適用されたB入力の蛍光画像から、A入力の背景画像を差し引くMIN(B)−A演算が実行され、これによって、蛍光が抽出された差分画像が生成される。
【0092】
第1期間T11で撮像装置12において取得された蛍光画像は、第2期間T12で撮像装置12から差分演算器20のA入力端子へと入力される。また、第2期間T12では、メモリ15には、前の第1期間T11で撮像装置12から出力された背景画像が記憶されており、この背景画像が、フィルタ21での最大フィルタ処理の後に、差分演算器20のB入力端子へと入力される。第1モードが適用された差分演算器20では、A入力の蛍光画像から、最大フィルタ処理が適用されたB入力の背景画像を差し引くA−MAX(B)演算が実行され、これによって、蛍光が抽出された差分画像が生成される。
【0093】
このような光源11からの励起光の供給、撮像装置12での画像取得、フィルタ21でのフィルタ処理の切替、差分演算器20での動作モードの切替、及び差分画像の生成を、各フレーム取得期間での第1期間、第2期間で繰り返して行うことにより、図4の場合と同様に、各フィールド画像取得期間において、蛍光が抽出された差分画像がリアルタイムに生成される。
【0094】
図10は、蛍光観測装置の第3実施形態の構成を示すブロック図である。本実施形態による蛍光観測装置1Cは、観測光源11と、撮像装置12と、フィールドメモリ15と、差分演算器20と、MAX/MINフィルタ21と、ラインメモリ22と、切替信号生成部25と、分布画像生成部30と、マルチプレクサ35と、表示装置50とを備えて構成されている。これらのうち、観測光源11、撮像装置12、フィールドメモリ15、差分演算器20、MAX/MINフィルタ21、ラインメモリ22、切替信号生成部25、及び表示装置50の構成については、図3に示した第2実施形態の構成と同様である。
【0095】
図10に示した構成では、差分演算器20から出力される蛍光画像と背景画像との差分画像に対して、分布画像生成部30が設けられている。この分布画像生成部30は、差分演算器20から出力された差分画像に基づいて、蛍光の強度分布を示す強度分布画像を生成する分布画像生成手段である。この場合の強度分布画像としては、具体的には例えば、差分画像に対して、単一または複数の閾値を適用して、強度分布画像である二値化画像またはカラー化画像を生成する構成を用いることができる。
【0096】
また、撮像装置12からの出力、及び分布画像生成部30からの出力に対して、マルチプレクサ35が設けられている。このマルチプレクサ35は、撮像装置12から出力された蛍光画像または背景画像と、分布画像生成部30から出力された蛍光の強度分布画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成手段である。
【0097】
図10の構成では、マルチプレクサ35のA入力端子には、撮像装置12の出力が接続され、B入力端子には、分布画像生成部30の出力が接続されている。また、マルチプレクサ35には、分布画像生成部30からの重畳指示信号が入力されており、この重畳指示信号による指示内容を参照して、撮像装置12から入力した画像と、分布画像生成部30から入力した画像との重畳画像が生成される。また、マルチプレクサ35において生成された重畳画像は、表示装置50へと出力される。
【0098】
図11は、図10に示した蛍光観測装置1Cにおける分布画像生成部の構成の一例を示すブロック図である。本構成例における分布画像生成部30は、閾値設定部31と、コンパレータ32と、画像変換部33とを有し、差分演算器20から入力された差分画像に対し、複数(N個)の閾値を適用して、蛍光の強度分布に対応するカラー化画像(疑似カラー化画像)を生成するように構成されている。
【0099】
閾値設定部31は、例えばCPUを含んで構成され、蛍光の強度分布を示すカラー化画像を生成するためのN個の閾値を設定する。また、図11の構成例では、撮像装置12に対して3Gモーションセンサ13が設けられており、閾値設定部31は、センサ13によって検知された撮像装置12の動きについての情報を参照して、閾値を設定、変更する。このような構成は、例えば、撮像装置12での手ぶれを検知して、そのふれ量から、差分画像成分の抽出に用いられる閾値を動的に上げて、偽の差分画像成分が目立たないようにする場合等において有効である。なお、撮像装置12の手ぶれは、カメラ支点での動きになるため、画像の動きが大きくなることが多く、上述した最大、最小フィルタ処理による空間フィルタ方式だけでは、除去しきれない場合がある。
【0100】
コンパレータ32は、閾値設定部31で設定されたN個の閾値と、差分演算器20から入力された差分画像の各画素での輝度とを比較し、その比較結果としてN段階の判定値を出力するN段コンパレータである。また、画像変換部33は、コンパレータ32から出力されたN段階の判定値を示すN値切替信号に基づき、差分演算器20からの差分画像を、N色の疑似カラー化差分画像へと変換する。なお、輝度がN個の閾値よりも小さい画素については、蛍光が発生していないとしてカラー化画像データは生成されない。
【0101】
このような構成において、マルチプレクサ35には、撮像装置12からのオリジナル画像(蛍光画像または背景画像)と、画像変換部33からの蛍光の強度分布を示す疑似カラー化差分画像と、コンパレータ32からのN値切替信号(重畳指示信号)とが入力されている。マルチプレクサ35は、N値切替信号を参照し、カラー化画像が生成されていない画素については撮像装置12からのオリジナル画像データを採用し、カラー化画像が生成された画素については画像変換部33からのカラー化画像データを採用するように、画素単位で画像データの切り替えを行うことで、オリジナル画像とカラー化差分画像(強度分布画像)との重畳画像を生成する。なお、このような構成において、閾値の個数をN=1とすれば、強度分布画像として二値化画像が生成される。
【0102】
図12は、図10に示した蛍光観測装置において実行される蛍光観測方法の一例について示すタイミングチャートである。このタイミングチャートでは、(a)差分演算器20のA入力となるカメラ出力、(b)B入力となるメモリ出力、(c)差分演算器20で生成される差分画像、(d)分布画像生成部30で生成されるカラー化画像、及び(e)マルチプレクサ35で生成される重畳画像を示している。
【0103】
なお、図12に示したタイミングチャートにおける基本的な動作は、カラー化画像の生成、及び重畳画像の生成以外については、図2に示したものと同様である。また、図12においては、MAX/MINフィルタ21で実行される最大、最小フィルタ処理については、図示を省略している。
【0104】
第1期間T11では、差分演算器20において、A入力の蛍光画像からB入力の背景画像を差し引くA−B演算によって差分画像が生成される。また、分布画像生成部30において、差分画像に対してN個の閾値を適用することで、蛍光の強度分布を示すN色のカラー化差分画像が生成される(分布画像生成ステップ)。さらに、マルチプレクサ35において、生成部30から出力されたカラー化差分画像と、撮像装置12から出力された蛍光画像との重畳画像が生成される(重畳画像生成ステップ)。
【0105】
同様に、第2期間T12では、差分演算器20において、B入力の蛍光画像からA入力の背景画像を差し引くB−A演算によって差分画像が生成される。また、分布画像生成部30において、差分画像に対してN個の閾値を適用することで、N色のカラー化差分画像が生成される(分布画像生成ステップ)。さらに、マルチプレクサ35において、生成部30から出力されたカラー化差分画像と、撮像装置12から出力された背景画像との重畳画像が生成される(重畳画像生成ステップ)。
【0106】
本実施形態による蛍光観測装置1C、及び蛍光観測方法においても、第1実施形態による蛍光観測装置1A、及び第2実施形態による蛍光観測装置1Bと同様の効果を得ることができる。
【0107】
さらに、本実施形態では、差分演算器20から出力される差分画像に対して、分布画像生成部30を設け、差分画像に基づいて蛍光の強度分布を示す二値化画像またはカラー化画像などの強度分布画像を生成する構成としている。このように、蛍光が抽出された差分画像をそのまま用いるのではなく、分布画像生成部30において強度分布画像に変換して蛍光観測に用いることにより、例えば微弱な蛍光の観測画像の目視での確認などの様々な操作を効率的に行うことができる。
【0108】
また、本実施形態では、撮像装置12から出力されたオリジナル画像と、分布画像生成部30から出力された強度分布画像との重畳画像を生成するマルチプレクサ35を設ける構成としている。このように、オリジナルの蛍光画像または背景画像と、閾値を適用して加工された強度分布画像との重畳画像を蛍光観測に用いる構成によれば、例えば、対象物10における蛍光の発生位置を、表示装置50に表示された観測画像から目視で確認することが可能になるなど、様々な形での効率的な対象物の蛍光観測が可能となる。
【0109】
ここで、図13は、図10に示した蛍光観測装置1Cにおいて取得される観測画像の例を示す図である。図13(a)は、カラー化画像の生成による蛍光抽出、及び重畳画像の生成等を行っていない通常の観測画像を示し、図13(b)は、オリジナル画像に対して疑似カラー化差分画像を重畳した重畳画像を示している。このように、蛍光の強度分布を示すカラー化画像などの強度分布画像、あるいはさらに、オリジナル画像と強度分布画像との重畳画像を生成、表示することにより、観測対象物における蛍光の発生位置、範囲、及びその強度分布等を好適に確認することができる。
【0110】
本発明による蛍光観測装置、及び蛍光観測方法は、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、差分画像生成手段、フィルタ処理手段、分布画像生成手段、及び重畳画像生成手段等の構成については、上記した実施形態の構成に限らず、具体的には様々な構成を用いて良い。また、例えば、図10に示した分布画像生成部30及びマルチプレクサ35については、図1のようにMAX/MINフィルタ21を設けていない構成に対して適用することも可能である。また、重畳画像を生成するマルチプレクサ35を設けずに、分布画像生成部30で生成された強度分布画像を、そのまま表示装置50に表示する構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、対象物の蛍光観測画像を時系列に取得する構成において、蛍光が抽出された画像をリアルタイムに生成することが可能な蛍光観測装置、及び蛍光観測方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0112】
1A、1B、1C…蛍光観測装置、10…観測対象物、11…観測光源(励起光供給手段)、12…インターレース型の撮像装置、13…モーションセンサ、15…フィールドメモリ(画像記憶手段)、
20…差分演算器(差分画像生成手段)、21…MAX/MINフィルタ(フィルタ処理手段)、22…ラインメモリ、25…切替信号生成部、30…分布画像生成部(分布画像生成手段)、31…閾値設定部、32…コンパレータ、33…画像変換部、35…マルチプレクサ(重畳画像生成手段)、50…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象物に対して蛍光観測のための励起光を供給するとともに、前記励起光の供給のON/OFFを切り替え可能な励起光供給手段と、
前記観測対象物からの光像を撮像するとともに、得られた前記観測対象物の画像データとして、第1フィールドの画像及び第2フィールドの画像を時系列で交互に出力するインターレース型の撮像装置と、
前記撮像装置から出力された前記第1フィールドの画像または前記第2フィールドの画像を記憶する画像記憶手段と、
前記撮像装置から出力された前記第1フィールドの画像及び前記第2フィールドの画像の一方と、前記画像記憶手段に記憶された前記第1フィールドの画像及び前記第2フィールドの画像の他方との差分をとった差分画像を生成する差分画像生成手段とを備え、
前記励起光供給手段は、前記撮像装置による前記第1フィールドの画像取得期間、及び前記第2フィールドの画像取得期間について、その一方が前記励起光の供給をONとして蛍光画像を取得する期間、他方が前記励起光の供給をOFFとして背景画像を取得する期間となるように前記励起光を供給するとともに、
前記差分画像生成手段は、その生成モードとして、
前記撮像装置から前記蛍光画像が出力された場合に、前記蛍光画像から、その前に取得されて前記画像記憶手段に記憶された前記背景画像を差し引くことで前記差分画像を生成する第1モードと、
前記撮像装置から前記背景画像が出力された場合に、前記背景画像を、その前に取得されて前記画像記憶手段に記憶された前記蛍光画像から差し引くことで前記差分画像を生成する第2モードと
を切り替えて適用することを特徴とする蛍光観測装置。
【請求項2】
前記撮像装置からの信号に基づいて前記第1フィールドの画像取得期間、及び前記第2フィールドの画像取得期間に同期して切り替わる切替信号を生成する切替信号生成手段を備え、
前記差分画像生成手段は、前記切替信号に基づいて、前記第1モードと前記第2モードとを切り替えて適用することを特徴とする請求項1記載の蛍光観測装置。
【請求項3】
前記画像記憶手段から前記差分画像生成手段へと出力される前記蛍光画像または前記背景画像に対して、画像に含まれる各画素の輝度について、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最大輝度を前記対象画素の輝度とする最大フィルタ処理、または、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最小輝度を前記対象画素の輝度とする最小フィルタ処理を行うフィルタ処理手段を備え、
前記フィルタ処理手段は、前記画像記憶手段から前記背景画像が出力される前記第1モードと、前記画像記憶手段から前記蛍光画像が出力される前記第2モードとで、前記最大フィルタ処理と、前記最小フィルタ処理とを切り替えて適用することを特徴とする請求項1記載の蛍光観測装置。
【請求項4】
前記撮像装置からの信号に基づいて前記第1フィールドの画像取得期間、及び前記第2フィールドの画像取得期間に同期して切り替わる切替信号を生成する切替信号生成手段を備え、
前記差分画像生成手段は、前記切替信号に基づいて、前記第1モードと前記第2モードとを切り替えて適用するとともに、
前記フィルタ処理手段は、前記切替信号に基づいて、前記第1モードと前記第2モードとで、前記最大フィルタ処理と前記最小フィルタ処理とを切り替えて適用することを特徴とする請求項3記載の蛍光観測装置。
【請求項5】
前記対象画素を含む走査線のライン画像データに対して、前記対象画素の近傍の前記所定範囲内にある画素を含む走査線のライン画像データを記憶する第2の画像記憶手段を備えることを特徴とする請求項3または4記載の蛍光観測装置。
【請求項6】
前記フィルタ処理手段において、
前記最大フィルタ処理では、nを2以上の整数として、前記対象画素に垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素での最大輝度を前記対象画素の輝度とする処理を行い、
前記最小フィルタ処理では、前記対象画素に垂直方向で時間的に前のn−1個の画素を加えたn個の画素での最小輝度を前記対象画素の輝度とする処理を行う
ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項記載の蛍光観測装置。
【請求項7】
前記フィルタ処理手段において、前記最大フィルタ処理及び前記最小フィルタ処理に用いられる画素数nは、3以上5以下の整数に設定されることを特徴とする請求項6記載の蛍光観測装置。
【請求項8】
前記差分画像生成手段から出力された前記差分画像に基づいて、蛍光の強度分布を示す強度分布画像を生成する分布画像生成手段を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の蛍光観測装置。
【請求項9】
前記分布画像生成手段は、前記差分画像に対して、単一または複数の閾値を適用して、前記強度分布画像である二値化画像またはカラー化画像を生成することを特徴とする請求項8記載の蛍光観測装置。
【請求項10】
前記撮像装置から出力された前記蛍光画像または前記背景画像と、前記分布画像生成手段から出力された前記強度分布画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成手段を備えることを特徴とする請求項8または9記載の蛍光観測装置。
【請求項11】
観測対象物に対して蛍光観測のための励起光を供給するとともに、前記励起光の供給のON/OFFを切り替え可能な励起光供給手段と、
前記観測対象物からの光像を撮像するとともに、得られた前記観測対象物の画像データとして、第1フィールドの画像及び第2フィールドの画像を時系列で交互に出力するインターレース型の撮像装置と、
前記撮像装置から出力された前記第1フィールドの画像または前記第2フィールドの画像を記憶する画像記憶手段とを含む蛍光観測装置を用い、
前記撮像装置から出力された前記第1フィールドの画像及び前記第2フィールドの画像の一方と、前記画像記憶手段に記憶された前記第1フィールドの画像及び前記第2フィールドの画像の他方との差分をとった差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
前記励起光供給手段により、前記撮像装置による前記第1フィールドの画像取得期間、及び前記第2フィールドの画像取得期間について、その一方が前記励起光の供給をONとして蛍光画像を取得する期間、他方が前記励起光の供給をOFFとして背景画像を取得する期間となるように前記励起光を供給する励起光供給ステップとを備え、
前記差分画像生成ステップは、その生成モードとして、
前記撮像装置から前記蛍光画像が出力された場合に、前記蛍光画像から、その前に取得されて前記画像記憶手段に記憶された前記背景画像を差し引くことで前記差分画像を生成する第1モードと、
前記撮像装置から前記背景画像が出力された場合に、前記背景画像を、その前に取得されて前記画像記憶手段に記憶された前記蛍光画像から差し引くことで前記差分画像を生成する第2モードと
を切り替えて適用することを特徴とする蛍光観測方法。
【請求項12】
前記画像記憶手段から出力される前記蛍光画像または前記背景画像に対して、画像に含まれる各画素の輝度について、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最大輝度を前記対象画素の輝度とする最大フィルタ処理、または、対象画素にその近傍の所定範囲内にある画素を加えた複数の画素での最小輝度を前記対象画素の輝度とする最小フィルタ処理を行うフィルタ処理ステップを備え、
前記フィルタ処理ステップは、前記画像記憶手段から前記背景画像が出力される前記第1モードと、前記画像記憶手段から前記蛍光画像が出力される前記第2モードとで、前記最大フィルタ処理と、前記最小フィルタ処理とを切り替えて適用することを特徴とする請求項11記載の蛍光観測方法。
【請求項13】
前記差分画像生成ステップで出力された前記差分画像に基づいて、蛍光の強度分布を示す強度分布画像を生成する分布画像生成ステップを備えることを特徴とする請求項11または12記載の蛍光観測方法。
【請求項14】
前記分布画像生成ステップは、前記差分画像に対して、単一または複数の閾値を適用して、前記強度分布画像である二値化画像またはカラー化画像を生成することを特徴とする請求項13記載の蛍光観測方法。
【請求項15】
前記撮像装置から出力された前記蛍光画像または前記背景画像と、前記分布画像生成ステップで出力された前記強度分布画像とを重畳した重畳画像を生成する重畳画像生成ステップを備えることを特徴とする請求項13または14記載の蛍光観測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−79841(P2013−79841A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219168(P2011−219168)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】