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蛍光試料の光学特性測定方法及びこれを用いた光学特性測定装置
説明

蛍光試料の光学特性測定方法及びこれを用いた光学特性測定装置

【課題】 蛍光基準試料やこの煩雑な校正作業なしに蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を精度よく求める。
【解決手段】 試料に近似の二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と分光分布が異なる照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)と、I1、I2で個別に照明された試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)とから、蛍光の影響を除去した反射分光放射輝度率Rx(λ)を次の手順で求める。1:F(μ,λ)とI1(λ)、I2(λ)とから理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)=∫F(μ,λ)・I1(μ)dμ/I1(λ)、F2(λ)=∫F(μ,λ)・I2(μ)dμ/I2(λ)を算出。2:Bx1(λ)及びBx2(λ)をRx(λ)とF1(λ)・K(λ)及びF2(λ)・K(λ)との和とする次の連立方程式からRx(λ)を算出。Bx1(λ)=Rx(λ)+F1(λ)・K(λ)、Bx2(λ)=Rx(λ)+F2(λ)・K(λ)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光現象を伴う測定試料の分光特性を測定する蛍光試料の光学特性測定方法及びこれを用いた光学特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産されている紙や繊維の多くは、蛍光増白剤によって蛍光増白されており、蛍光の影響を無視して白さ(白色度、ブライトネス)や色彩を評価することができないという事情から、蛍光の影響を配慮した当該紙や繊維に対する測色技術の向上が求められている。
【0003】
一般的に、反射試料の視覚的な光学特性は、白色との相対比、すなわち或る照明・受光条件において照明、受光された該反射試料からの放射光の、同一条件で照明、受光された完全拡散反射体からの放射光に対する波長λ毎の比である「全分光放射輝度率(B(λ))」で表される。
【0004】
ところで、蛍光は自発光するので光源色であるが、上記蛍光増白された、つまり蛍光物質を含む試料(以降、蛍光試料という)では、蛍光は反射光に重畳されて物体色として観察される。すなわち、蛍光試料からの放射光は、該蛍光試料からの反射光(反射光成分)と蛍光(蛍光成分)との和として与えられることから、蛍光試料の全分光放射輝度率B(λ)は、上記と同様、或る照明・受光条件において照明、受光された蛍光試料からの反射光及び蛍光それぞれの、同一条件で照明、受光された完全拡散反射体からの放射光に対する比である反射分光放射輝度率R(λ)と蛍光分光放射輝度率F(λ)との和として与えられる。これは以下の式(1)で示される。
B(λ)=R(λ)+F(λ)…(1)
【0005】
但し、上記完全拡散反射体は蛍光を放射せず、その反射率は照明光の波長に依存しないので、比例定数を別にすれば、これら全分光放射輝度率B(λ)、反射分光放射輝度率R(λ)、及び蛍光分光放射輝度率F(λ)は、それぞれ波長λの放射光、反射光、及び蛍光の、同じ波長の照明光に対する比として表される。なお、当該測色の目的は目視に準じる測定値を得ることにあり、物体色として感じられる蛍光試料の場合、求められるべきは全分光放射輝度率B(λ)であり、このB(λ)から色彩値が導かれる。
【0006】
測色用の照明光としては、CIE(国際照明委員会)が分光分布(分光強度)を定義しているD65(昼光)やA(白色光源)、或いはD50、D75、F11、Cなどの標準照明光が用いられる(蛍光試料には通常、標準照明光D65が用いられる)。照明光により照明された蛍光試料(蛍光物質)の励起・蛍光特性は、該蛍光試料面を単位強度で照明する波長μの励起光(入射光)、すなわち単位エネルギーをもつ単波長光により励起される波長λの蛍光の強度を表すマトリクスデータ、二分光蛍光放射輝度率(Bispectral Luminescent Radiance Factor)F(μ,λ)によって記述される。
【0007】
上記マトリクスデータは、例えば図7に示す3次元データであり、特定の蛍光波長λに沿った断面(例えばλ=550nmの断面)は、波長λの蛍光を励起する励起光の波長毎の励起効率である分光励起効率を表し、励起波長μに沿った断面(例えばμ=450nmの断面)は、450nmの照明光により励起される、蛍光の分光強度を表す。このことからも、蛍光現象は波長μから波長λへの波長変換を伴う現象であると言える。したがって、分光分布I(μ)を有する照明光Iで照明された、二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)を有する蛍光試料の蛍光分光放射輝度率F(λ)は、比例定数を別にすれば、以下の式(2)により求められる。
F(λ)=∫F(μ,λ)・I(μ)dμ/I(λ)…(2)
つまり、F(λ)は、照明光Iの分光分布I(μ)と二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)との畳み込み積分とI(λ)との比で与えられる。また、I(λ)は、比例定数を別にすれば、前記完全拡散反射体(面)からの反射光と等価である。また、式中、「・」、「/」及び「∫」の記号は、それぞれ乗算、除算及び積分を示すものとする(以降も同様)。
【0008】
上記式(2)が示すように、蛍光分光放射輝度率F(λ)は、照明光Iの分光分布I(μ)に依存するため、この蛍光分光放射輝度率F(λ)と、それ自身は照明光Iの分光分布I(μ)に依存しない反射分光放射輝度率R(λ)との和である全分光放射輝度率B(λ)も分光分布I(μ)に依存する。つまり、蛍光試料に対する照明光の違いによって、測定される全分光放射輝度率B(λ)及びこれから導かれる色彩値も異なるものとなる。
【0009】
したがって、蛍光試料に対する光学特性の評価においては、照明光(以降、F(λ)やB(λ)等の光学特性の評価に用いる照明光のことを評価用照明光という)の分光分布を特定する必要があり、実際の測定では、測定装置の照明光の分光分布をこの特定の評価用照明光と一致させる必要がある。しかしながら、当該特定の評価用照明光に一致させること、すなわち評価用照明光として一般的に用いられる上記標準照明光(D65やC等)と同じ分光分布の照明光を実現することは非常に困難である。
【0010】
そこで、他の方法として、二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)或いは二分光放射輝度率B(μ,λ)を求め、このF(μ,λ)あるいはB(μ,λ)と、数値的に与えた評価用照明光の分光分布I(λ)とから、上記式(2)を用いて、蛍光分光放射輝度率F(λ)、或いは全分光放射輝度率B(λ)を数値的に求める方法がある。ただし、この二分光放射輝度率B(μ,λ)は、上記二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と同様、蛍光試料面を単位強度で照明する波長μの照明光による、波長λの蛍光と反射光との和として与えられる波長λの全放射光の強度を表すマトリクスデータであり、全分光放射輝度率B(λ)は、以下の式(2-1)に示すように照明光Iの分光分布I(μ)と二分光放射輝度率B(μ,λ)との畳み込み積分とI(λ)との比で与えられる。
B(λ)=∫B(μ,λ)・I(μ)dμ/I(λ)…(2-1)
【0011】
しかしながら、二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)や二分光放射輝度率B(μ,λ)の測定は、照明、受光系の双方二分光手段を備え、大掛かりで測定時間のかかる二分光器法測定器(ダブルモノクロメーター)を必要とすることから実用的ではなく、例えば、代表的な蛍光試料である蛍光増白紙等の品質管理などには、専ら以下の2つの簡易手法が採られる。
【0012】
<Gaertner−Grisserの測定方法>
例えば図9の光学特性測定装置600に示すように、蛍光試料601が積分球602の試料用開口603に配設される。キセノンランプなど紫外域(UV域)に十分な強度を有する光源604からの光束605は、光源用開口を通って積分球602内に入射される。この光束605中には紫外カットフィルタ606が所定長挿入される。光束605のうちの紫外カットフィルタ606を通過した部分は紫外成分が除去されるので、紫外カットフィルタ606の挿入の程度を調節することで、照明光の可視域に対する紫外域(励起域)強度の相対比(相対紫外強度)が調整される。紫外カットフィルタ606を透過した光束と透過しなかった光束とは、それぞれ積分球602の内部で拡散多重反射され、合成されて蛍光試料601を拡散照明する。そして、当該合成された照明光によって照明されることで得られる蛍光試料601からの試料放射光の所定方向の成分(放射光成分607)が、放射光分光部608に入射し、該放射光成分607の分光分布Sx(λ)が測定される。一方、照明光と略同じ分光分布を有する光束609が、参照用光ファイバ610に入射してさらにこの参照用光ファイバ610を経て照明光分光部611に入射し、該光束609の分光分布Mx(λ)が測定される。そして、これらSx(λ)及びMx(λ)の測定情報に基づいて演算制御部612により全分光放射輝度率Bx(λ)が求められる(例えば、特許文献1の図4参照)。
【0013】
上記相対紫外強度の校正は、蛍光試料601に近似した励起・蛍光特性(二分光蛍光放射輝度率)を有し、評価用照明光で照明したときの色彩値(例えばCIEの白色度WI)が既知である蛍光基準試料を用い、該蛍光基準試料を試料用開口603に配設してこれに対する全分光放射輝度率B(λ)を測定し、この全分光放射輝度率B(λ)から算出した白色度WIが上記既知の白色度WIsと一致するように、紫外カットフィルタ606の挿入度を調節することで行われる。
【0014】
しかしながら、Gaertner−Grisserの方法は、機械的に複雑であり信頼性に問題があるだけでなく、上記白色度WIが既知の白色度WIsと一致するまで、紫外カットフィルタ606の挿入度の調節と測定とを繰り返し行う煩雑な校正作業が必要となる。また、自由度が「1」であるため、白色度WIや色度Tintなどの2つ以上の色彩値を同時に校正したり、或いは全分光放射輝度率B(λ)そのものを既知の評価用照明光で照明したときの全分光放射輝度率Bs(λ)と一致させるような校正を行うことは原理的に不可能である。
【0015】
<特許文献1の方法>
上記Gaertner−Grisserの測定方法では、紫外カットフィルタ606の挿入度に応じて照明光を合成し、結果的に全分光放射輝度率B(λ)を合成するが、特許文献1の方法は、原理はGaertner−Grisserの測定方法と同様であり、また自由度も「1」であるものの、まず全分光放射輝度率B(λ)を数値的に合成し、結果的にこれを与える照明光を合成するという点で異なる。具体的に説明すると、例えば図10の光学特性測定装置700に示すように、積分球702に、紫外強度をもつ光束703を出力する第1照明部704、紫外強度をもたない光束705を出力する第2照明部706、試料用開口707に配設された蛍光試料701からの放射光(放射光成分708)の分光分布を測定する放射光分光部709、そのときの照明光の光束710の分光分布を光ファイバ711を介して測定する照明光分光部712、及び演算制御部713を備える。そして、蛍光試料701を第1及び第2照明部704、706で照明して、該試料からの放射光の分光分布Sx1(λ)、Sx2(λ)と、そのときの照明光の分光分布Mx1(λ)、Mx2(λ)とを測定し、これらSx1(λ)、Sx2(λ)とMx1(λ)、Mx2(λ)とから蛍光試料701に対する第1及び第2照明部704、706での全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)を求める。そして、この全分光放射輝度率Bx1(λ)及びBx2(λ)を、以下の式(3)に示すように、予め波長毎に設定して記憶しておいた重み係数W(λ)(以降、重み係数のことを「重み」と表現する)を用いて線形結合することで合成分光放射輝度率Bxc(λ)を求め、このBxc(λ)を、評価用照明光で照明された蛍光試料701の全分光放射輝度率とする。
Bxc(λ)=W(λ)・Bx1(λ)+(1−W(λ))・Bx2(λ)…(3)
【0016】
但し、上記重みW(λ)は、蛍光試料701に近似した励起・蛍光特性を有し、評価用照明光で照明された場合の全分光放射輝度率Bs(λ)が既知である蛍光基準試料を用いて設定される。すなわち、重みW(λ)は、蛍光基準試料を第1及び第2照明部704、706により照明して測定した分光放射輝度率B1(λ)、B2(λ)を該重みW(λ)により線形結合させて得られるW(λ)・B1(λ)+(1−W(λ))・B2(λ)の値が、上記既知の全分光放射輝度率Bs(λ)と等しくなるように、波長毎に数値的に求められる(例えば、特許文献1の図1参照)。
【0017】
この方法は、上述のGaertner−Grisserの測定方法による相対紫外強度の校正を、全分光放射輝度率B(λ)をパラメータとして波長毎に数値的に行うことに相当する。したがって、全分光放射輝度率B(λ)について校正されるので、これから算出される全ての色彩値に対しても校正がなされるという特徴がある。また、測定に際しての機械的可動部や、煩雑な紫外カットフィルタ挿入度の調節作業が不要になるなど、Gaertner−Grisserの測定方法の多くの欠点を解決するが、蛍光基準試料を必要とすることには変わりがなく、蛍光基準試料を用いた相対紫外強度の校正後に、蛍光試料に対する測定を行うので、校正時と測定時との照明光に分光分布の差があると測定誤差が生じてしまうといった問題は依然として存在する。
【特許文献1】特開平8−313349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、上記特許文献1の方法やGaertner−Grisserの測定方法といった簡易法であっても蛍光基準試料は必要とされるが、この蛍光基準試料は、被測定試料に近似の励起・蛍光特性を有する必要性から、紙や繊維などの試料と同じ材質で、同じ蛍光増白剤が用いられるため、経時変化が避けられず、頻繁な更新或いは経時変化に対する管理等が必要となる。また、測定装置における照明光の分光分布の変化(長期又は短期での変化)に起因する誤差を避けることができず、その経時変化の影響を抑えるべく頻繁な校正作業が必要となる。これらのことから、当該測定に際して蛍光基準試料を用いることなく、或いはこれを用いた煩雑な校正作業を不要とすることが求められる。
【0019】
ところで、蛍光増白した紙の光学特性の測定に際しては、蛍光の影響を除去した光学特性の測定が必要となることが多い。この蛍光の影響の除去に関し、従来、紫外カットフィルタを用いて、照明光の紫外域を除去して蛍光の励起を抑制することが行われている。この場合、蛍光の励起を十分に抑制するためにはカットオフ波長を440nm程度とする必要があるが、これにより、評価すべき可視域の短波長帯の全分光放射輝度率が測定不能となり、この全分光放射輝度率に基づいて算出される色彩値の精度が低下してしまうという問題がある。
【0020】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、蛍光の励起を抑えるフィルターを用いることなく、それによって、全分光放射輝度率が測定不能な波長域を可視域に生じることなく蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を精度よく求めることができる蛍光試料の光学特性測定方法及びこれを用いた光学特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の請求項1に係る蛍光試料の光学特性測定方法は、蛍光試料の光学特性測定方法であって、試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と、分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)と、前記第1及び第2の実照明光I1、I2のそれぞれによって照明された前記試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)とから、蛍光の影響を除去した前記試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)を以下の第1及び第2の工程で算出することを特徴とする蛍光試料の光学特性測定方法。
第1の工程:前記二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と前記第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とから、該第1及び第2の実照明光I1、I2による前記試料の理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)=∫F(μ,λ)・I1(μ)dμ/I1(λ)及びF2(λ)=∫F(μ,λ)・I2(μ)dμ/I2(λ)を算出する。
第2の工程:前記試料の反射分光放射輝度率をRx(λ)とし、前記実測全分光放射輝度率Bx1(λ)及びBx2(λ)を、該反射分光放射輝度率Rx(λ)と、前記理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)とK(λ)との乗算によるF1(λ)・K(λ)及びF2(λ)・K(λ)との和とする以下の連立方程式を解いて反射分光放射輝度率Rx(λ)を算出する。Bx1(λ)=Rx(λ)+F1(λ)・K(λ)、Bx2(λ)=Rx(λ)+F2(λ)・K(λ)。但し、K(λ)は、前記算出による理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)と前記試料の実際の蛍光分光放射輝度率との比を示す試料に固有の定数。
【0022】
上記構成によれば、試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と、分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)と、第1及び第2の実照明光I1、I2のそれぞれによって照明された試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)とから、蛍光の影響を除去した試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)が上記第1及び第2の工程で算出されるので、励起光を抑えるフィルタ等を用いることなく、したがって、全分光放射輝度率が測定不能となる波長域が生じることなく、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を精度よく求めることができ、全分光放射輝度率から求められる色彩値の精度低下を防止することができる。
【0023】
本発明の請求項2に係る蛍光試料の光学特性測定装置は、蛍光試料の光学特性測定装置であって、分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2により試料を照明するための第1及び第2の照明手段と、前記試料からの放射光の分光分布を測定する放射光分光手段と、前記第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布を測定する照明光分光手段と、前記試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報を記憶する記憶手段と、 前記第1及び第2の照明手段を個々に点灯し、前記放射光分光手段及び照明光分光手段により測定して得た情報に基づいて、第1及び第2の実照明光I1、I2それぞれに対する前記試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)と、該第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とを算出するとともに、該算出した情報及び前記記憶手段に記憶された二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報に基づいて、蛍光の影響を除去した前記試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)を算出する演算制御手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、第1及び第2の照明手段によって分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2により試料が照明され、放射光分光手段によって試料からの放射光の分光分布が測定され、照明光分光手段によって第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布が測定され、記憶手段によって試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報が記憶される。そして、演算制御手段によって、第1及び第2の照明手段が個々に点灯されて、放射光分光手段及び照明光分光手段により測定して得た情報に基づいて、第1及び第2の実照明光I1、I2それぞれに対する試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)と、該第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とが算出されるとともに、該算出された情報及び記憶手段に記憶された二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報に基づいて、蛍光の影響を除去した試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)が算出されるので、励起光を抑えるフィルタ等を用いることなく、したがって、全分光放射輝度率が測定不能となる波長域が生じることなく、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を精度よく求めることができ、全分光放射輝度率から求められる色彩値の精度低下を防止することができる。
【0025】
請求項3に係る蛍光試料の光学特性測定装置は、請求項2において、前記第1及び第2の実照明光I1、I2は、少なくとも短波長域において、前記照明光分光手段の測定範囲を超える波長域に強度を有さないことを特徴とする。この構成によれば、第1及び第2の実照明光I1、I2が、少なくとも短波長域において、照明光分光手段の測定範囲を超える波長域に強度を有さないものとされるので、演算制御手段による演算において、第1及び第2の実照明光の励起及び蛍光に関わる波長域の分光強度を漏れなく把握する(演算処理で扱う)ことができ、それによって各照明光の理論的な蛍光分光放射輝度率を正確に求めることができるので、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を正確に求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
請求項1記載の発明によれば、試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と、分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)と、第1及び第2の実照明光I1、I2のそれぞれによって照明された試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)とから、蛍光の影響を除去した試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)が上記第1及び第2の工程で算出されるので、励起光を抑えるフィルタ等を用いることなく、したがって、全分光放射輝度率が測定不能となる波長域が生じることなく、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を精度よく求めることができ、全分光放射輝度率から求められる色彩値の精度低下を防止することができる。
【0027】
請求項2記載の発明によれば、第1及び第2の照明手段によって分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2により試料が照明され、放射光分光手段によって試料からの放射光の分光分布が測定され、照明光分光手段によって第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布が測定され、記憶手段によって試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報が記憶される。そして、演算制御手段によって、第1及び第2の照明手段が個々に点灯されて、放射光分光手段及び照明光分光手段により測定して得た情報に基づいて、第1及び第2の実照明光I1、I2それぞれに対する試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)と、該第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とが算出されるとともに、該算出された情報及び記憶手段に記憶された二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報に基づいて、蛍光の影響を除去した試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)が算出されるので、励起光を抑えるフィルタ等を用いることなく、したがって、全分光放射輝度率が測定不能となる波長域が生じることなく、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を精度よく求めることができ、全分光放射輝度率から求められる色彩値の精度低下を防止することができる。
【0028】
請求項3記載の発明によれば、第1及び第2の実照明光I1、I2が、少なくとも短波長域において、照明光分光手段の測定範囲を超える波長域に強度を有さないものとされるので、演算制御手段による演算において、第1及び第2の実照明光の励起及び蛍光に関わる波長域の分光強度を漏れなく把握する(演算処理で扱う)ことができ、それによって各照明光の理論的な蛍光分光放射輝度率を正確に求めることができるので、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を正確に求めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(本発明に係る光学特性測定方法の基本技術の説明)
先ず、本発明に係る蛍光の影響を除去した蛍光試料の全分光放射輝度率の測定方法の基本となる技術について、具体的な装置の一例を挙げて説明する。
【0030】
図2は、当該基本技術を用いた蛍光試料の光学特性測定装置の一例を示す概略構成図である。図2に示すように、光学特性測定装置10は、被測定試料1、第1照明部2、第2照明部3、参照面部4、受光部5、2チャンネル分光部6及び制御部7を備えて構成されている。被測定試料1は、蛍光物質を含む繊維や紙製品等からなる測定対象となる試料である。被測定試料1は、所定の測定位置に配置される。第1照明部2は、被測定試料1を照明するものであり、光源としての白熱ランプ21と、該白熱ランプ21を駆動して点灯(例えばパルス点灯)させるための第1駆動回路22とを備える。第2照明部3は、第1照明部2と同様、被測定試料1を照明するものであり、紫外域の光束を出力する光源(紫外光源)としての紫外LED31と、該紫外LED31を駆動して点灯(例えばパルス点灯)させるための第2駆動回路32とを備える。なお、第2照明部3の光源は、紫外LED31に限定されず、紫外域の光束が出力可能であれば、キセノンフラッシュランプなど、いずれの光源でもよい。
【0031】
参照面部4は、白色拡散面からなる参照面(反射面)を有するものであり、被測定試料1の測定域の近傍に配設されている。受光部5(受光系)は、光学レンズ(又はレンズ群)からなり、第1及び第2照明部2、3によって照明された被測定試料1の放射光、及び参照面部4からの反射光における法線方向の成分を受光するとともに、該受光した光束を後述の2チャンネル分光部6へ向けて入射させるものである。
【0032】
2チャンネル分光部6は、受光部5からの入射光に対する分光測定を行うものである。2チャンネル分光部6は、第1入射スリット61及び第2入射スリット62を備える。後述の照明光LA又は照明光LBによって照明された被測定試料1からの放射光は、第1入射スリット61に入射し、一方、この照明光LA又は照明光LBによって照明された参照面部4(参照面)からの反射光は第2入射スリット62に入射する。2チャンネル分光部6は、この第1入射スリット61に入射した試料放射光に対する分光測定を行い、第1チャンネル出力として当該試料放射光の分光分布データを出力するとともに、第2入射スリット62に入射した参照面反射光(参照光)、すなわち後述の照明光LA又は照明光LBに対する分光測定を行い、第2チャンネル出力として当該照明光の分光分布データを出力する。このように、2チャンネル分光部6は、放射光分光手段及び照明光分光手段として機能する。
【0033】
制御部7は、各制御プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、演算処理や制御処理用のデータを格納するRAM(Random Access Memory)、及び当該制御プログラム等をROMから読み出して実行するCPU(中央演算処理装置)等からなり、光学特性測定装置10全体の動作制御を司るものである。具体的には、第1及び第2照明部2、3の点灯動作や2チャンネル分光部6の受光・分光動作に関する駆動制御を行ったり、2チャンネル分光部6からの情報(分光情報)に基づいて、被測定試料1に対する全分光放射輝度率の算出や相対分光感度の校正等に関する各種演算処理を実行する。制御部7のこれら各種演算機能等については後に詳述する。
【0034】
このような各部を備える光学特性測定装置10において、制御部7が第1駆動回路22を介してつまり駆動させて白熱ランプ21を点灯させると、白熱ランプ21は、被測定試料1を、該被測定試料1の法線に対して約45°の方向から(入射角度で)光束23で照明する。同様に、制御部7が第2駆動回路32を駆動させて紫外LED31を点灯すると、紫外LED31は、被測定試料1を、上記45°よりも法線に近い位置での方向(符号αに示す入射角度の方向)から光束33で照明する。
【0035】
ここで、本実施形態において、第1照明部2を照明部Aとし、第1照明部2と第2照明部3とを合わせたものを照明部Bと表現するものとする。白熱ランプ21(白熱光源)のみを光源とする照明部Aによる照明光LAは、励起域(紫外域)に殆ど強度を有さず、一方、白熱ランプ21と紫外LED31とを光源とする照明部Bの照明光LB、すなわち白熱ランプ21と紫外LED31とを同時に点灯させた場合の照明光LBは、励起域に十分な強度を有する。照明部A、Bは、いずれも白熱光源を備えて可視域に強度を有し、励起強度を可視域の各波長の強度で相対化することができるため、蛍光分光放射輝度率又は全分光放射輝度率を求めることができる(可視域に分光強度をもたない照明光を用いた測定では、上記相対化の演算が行えず、蛍光分光放射輝度率や全分光放射輝度率を求めることができない)。
【0036】
上記照明光LA又は照明光LBによって照明された被測定試料1からの放射光のうち、略法線方向の成分が受光部5によって2チャンネル分光部6の第1入射スリット61に入射して分光測定され、第1チャンネル出力としてその分光分布Sx1(λ)又はSx2(λ)が制御部7に出力される。一方、被測定試料1の測定域の近傍に配置された参照面部4が、被測定試料1の試料面と同時に照明光LA又は照明光LBによって照明される。そして、この参照面からの反射光のうち、略法線方向の成分が受光部5によって2チャンネル分光部6の第2入射スリット62に入射して分光測定され、第2チャンネル出力としてその分光分布Mx1(λ)又はMx2(λ)が制御部7に出力される。
【0037】
なお、第2照明部3における紫外LED31の中心波長は約375nmであり、図8の白熱光源及び紫外LEDの分光分布図に示すように(符号Aは白熱光源の分光分布、符号Lは紫外LEDの分光分布を示す)、該紫外LED31の中心波長301は一般的な蛍光増白剤の分光励起効率(相対分光励起効率)302のピーク近傍に位置する。分光励起効率とは、波長λの蛍光を励起する励起光の波長毎の励起効率を示し、照明光の分光分布との畳み込み積分によって、その照明光により励起される波長λの蛍光強度(積分励起)が求められるものである。なお、符号303に示すグラフは、上記蛍光増白剤の蛍光分光分布(相対蛍光分光分布)を示している。
【0038】
また、本発明の技術は、照明光の分光分布を把握する必要性があるので、2チャンネル分光部6は、紫外LED31による放射光の波長域を含む、約360nmから740nmの波長域をカバーする(この波長域の分光が可能である)。白熱ランプ21及び紫外LED31を光源とする照明部Bは、強い短パルス光で蛍光物質を照明したときに発生して問題となる(目視との互換性を崩す要因となる)トリプレット効果を生じない発光時間で発光する。このトリプレット効果とは、概略的に説明すると、発光時間が短く励起エネルギーの高い照明光により、分子の電子状態におけるS(Singlet)準位とT(Triplet)準位との間での遷移が起こるが(通常はこのS準位及びT準位間の遷移の確率は極めて低い)、これに伴って生じる励起(吸収)現象のことを言う。
【0039】
また、光学特性測定装置10での光学系は、上述のように第1照明部2と受光部5との組み合わせ(配置)により、45/0ジオメトリー(反射特性の測定ジオメトリー45°/0°)を構成している。このようなジオメトリーの目的は、被測定試料1からの正反射光の制御にあるが、可視域に分布をもたない第2照明部3による正反射光は測色に影響を与えることがないので、この第2照明部3は、ジオメトリーの制約を受けることなく任意に配置することができる。
【0040】
ここで、制御部7における各機能部の詳細について説明する。制御部7は、図2に示すように、CPU70、分光データメモリ71、評価用照明光データメモリ72、二分光データメモリ73及び係数メモリ74等を備えている。CPU70は、第1及び第2照明部2、3、並びに2チャンネル分光部6の駆動制御に関する演算、或いは被測定試料1に対する全分光放射輝度率の算出や相対分光感度の校正等に関する演算等の各種演算処理を行う上記中央演算処理装置(CPU)である。分光データメモリ71は、2チャンネル分光部6で分光測定され、該2チャンネル分光部6から送信されてきた放射光及び照明光の分光分布データを記憶するものである。評価用照明光データメモリ72は、予め与えられた評価用照明光の分光分布データを記憶するものである。二分光データメモリ73は、予め求められた、被測定試料1(蛍光試料)と近似の二分光蛍光放射輝度率データを記憶するものである。
【0041】
係数メモリ74は、2チャンネル分光部6の相対分光感度を校正する感度校正係数、参照面部4からの反射光(以降、参照面反射光という)の分光分布を、被測定試料1に対する照明光(以降、試料面照明光という)の分光分布に変換する変換係数、及び被測定試料1からの放射光(以降、試料放射光という)と参照面反射光との分光分布から、被測定試料1の全分光放射輝度率を求める校正係数等の係数データを記憶するものである。
【0042】
制御部7は、上記各メモリ部に記憶された、放射光及び照明光の分光分布データ、評価用照明の分光分布データ、二蛍光分光放射輝度率データ、感度校正係数、変換係数及び校正係数のデータに基づいて、以下(A)についての測定制御(演算処理)を行う。
【0043】
(A)評価用照明光で照明したときの全分光放射輝度率
<演算方法>
一般に、蛍光試料は、或る評価用照明光Isで照明したときの該蛍光試料の分光放射輝度率を得るために、上記二分光器法測定器、或いは評価用照明光Isと同じ分光分布の照明光をもつ測定器を用いなければならないが、本実施形態においても、特定の二分光蛍光放射輝度率に近似した励起・蛍光特性を有する蛍光試料について、特定の評価用照明光と同じ蛍光分光放射輝度率を与える仮想的な照明光を数値的に合成する。すなわち、蛍光試料の二分光蛍光放射輝度率をF(μ,λ)とし、評価用照明光Isと、上記数値的に合成される照明光(以降、合成照明光という)Icとの分光分布をそれぞれIs(λ)、Ic(λ)とすると、上記式(2)から、各照明光による蛍光分光放射輝度率F(λ)(=∫F(μ,λ)・I(μ)dμ/I(λ))が以下の式(5)となる合成照明光Icを、分光分布、特に励起域と蛍光域の相対強度の異なる2つの照明光I1、I2の線形結合による合成によって求める。但し、分光分布I(λ)は、上述で説明したように比例定数を別にすれば、完全拡散反射体(面)からの反射光と等価である。
∫F(μ,λ)・Is(μ)dμ/Is(λ)=∫F(μ,λ)・Ic(μ)dμ/Ic(λ)…(5)
【0044】
この照明光I1、I2の重みつき線形結合による合成においては、波長毎に設定される線形結合の重みをW(λ)及び1−W(λ)とすると、合成照明光Icの分光分布Ic(λ)は、照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)を用いて以下の式(6)で表される。
Ic(λ)=W(λ)・I1(λ)+(1−W(λ))・I2(λ)…(6)
【0045】
これにより、合成照明光Icによる蛍光分光放射輝度率Fc(λ)は、以下の式(7)で表され、
Fc(λ)=∫F(μ,λ)・Ic(μ)dμ/Ic(λ)=∫F(μ,λ)・[W(λ)・I1(μ)+(1−W(λ))・I2(μ)]dμ/[W(λ)・I1(λ)+(1−W(λ))・I2(λ)]…(7)
【0046】
したがって、上記式(5)は以下の式(8)に書き換えられる。
∫F(μ,λ)・Is(μ)dμ/Is(λ)=∫F(μ,λ)・[W(λ)・I1(μ)+(1−W(λ))・I2(μ)]dμ/[W(λ)・I1(λ)+(1−W(λ))・I2(λ)]…(8)
【0047】
そして、上記式(8)から重みW(λ)を算出する、すなわち式(8)の二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と評価用照明光Isの分光分布Is(λ)=Is(μ)とを予め数値データとして与えておき(設定して記憶しておき)、一方、照明光(実照明光)I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)は実測により求めておき(具体的には、実測した参照面反射光の分光分布から変換してI1(λ)、I2(λ)を求める)、演算処理のみによって重みW(λ)を算出する。そして、この重みW(λ)を用いて、当該算出に用いた二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と近似の二分光蛍光放射輝度率をもつ蛍光試料を同じ評価用照明光Isで照明したときの全分光放射輝度率Bxs(λ)を算出する。すなわち、蛍光試料を照明光I1、I2で照明したときの試料面放射光の分光分布Sx1(λ)、Sx2(λ)と当該照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とを、それぞれ重みW(λ)、(1−W(λ))による線形結合によって合成する以下の式(9)、(10)が与えるSxc(λ)及びIc(λ)と、
Sxc(λ)=W(λ)・Sx1(λ)+(1−W(λ))・Sx2(λ)…(9)
Ic(λ)=W(λ)・I1(λ)+(1−W(λ))・I2(λ)…(10)
(但し、Sxc(λ)は合成照明光Icで照明されるときの前記試料の放射光の分光分布を、Ic(λ)は照明光I1、I2の重みつき線形結合によって合成される合成照明光Icの分光分布を示す。)
校正定数C(λ)とによって、以下の式(11)により全分光放射輝度率Bs(λ)が求められる。
Bs(λ)=C(λ)・Sc(λ)/Ic(λ)…(11)
【0048】
ところで、上述での各演算処理は、本発明のように照明光I1、I2が共に可視域に強度を有するものとすることにより(具体的には、例えば照明光I1を上記照明光LA、照明光I2を照明光LBとする)、簡略化することが可能となる。すなわち、照明光I1、I2を可視域における波長λでの強度で相対化した、照明光I1(μ)/I1(λ)、I2(μ)/I2(λ)を想定し、I1λ(μ)、I2λ(μ)とする(I1λ(μ)=I1(μ)/I1(λ)、I2λ(μ)=I2(μ)/I2(λ)。したがって、I1λ(λ)=I2λ(λ)=1)。このことで、可視域での波長λ毎に異なる光源が想定されことになる。この場合、上記式(8)の右辺の分母は[W(λ)・I1λ(λ)+(1−W(λ))・I2λ(λ)]となり、その値は常に「1」となる。したがって、式(7)は以下の式(12)に示すように書き換えられ、合成照明光Icによる蛍光分光放射輝度率Fc(λ)は、各照明光I1、I2による蛍光分光放射輝度率の線形結合で表されるものとなる。
∫F(μ,λ)・Ic(μ)dμ/Ic(λ)=W(λ)・∫F(μ,λ)・I1λ(μ)dμ+(1−W(λ))・∫F(μ,λ)・I2λ(μ)dμ=W(λ)・∫F(μ,λ)・I1(μ)dμ/I1(λ)+(1−W(λ))・∫F(μ,λ)・I2(μ)dμ/I2(λ) …(12)
【0049】
これにより、上記式(5)は以下の式(13)に書き換えることができる。
∫F(μ,λ)・Is(μ)dμ/Is(λ)=W(λ)・∫F(μ,λ)・I1(μ)dμ/I1(λ)+(1−W(λ))・∫F(μ,λ)・I2(μ)dμ/I2(λ) …(13)
【0050】
なお、式(12)は、蛍光分光放射輝度率Fc(λ)が、波長λでの強度が共に「1」で波長λ毎に異なる2つの仮想的な照明光、I1λ(μ)=I1(μ)/I1(λ)とI2λ(μ)=I2(μ)/I2(λ)を重みW(λ)、1−W(λ)で加算した、以下の式(12’)に示す可視域の波長λ毎に異なる合成照明光Ic(μ)によって得られることを示している。
Ic(μ)=W(λ)・I1(μ)/I1(λ)+(1−W(λ))・I2(μ)/I2(λ)…(12’)
【0051】
上述における式(8)から重みW(λ)を求めた場合と同様、上記式(13)についても、蛍光試料の二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と、評価用照明光Isの分光分布Is(λ)と、2つの照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とが与えられれば、重みW(λ)を演算処理だけで求めることができる。
【0052】
なお、従来(特許文献1)の方法では、実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)が未知であるため、式(13)の右辺の積分を、蛍光基準試料の全分光放射輝度率の実測に置き換えていると考えることができる。
【0053】
このようにして式(13)から算出したW(λ)を、当該算出に用いた二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と近似の二分光蛍光放射輝度率をもつ蛍光試料に対して用い、合成照明光Icによる蛍光試料の蛍光分光放射輝度率Fxc(λ)を、各照明光I1、I2(照明光LA、LB)による試料の蛍光分光放射輝度率Fx1(λ)、Fx2(λ)の線形結合で表すことができる(以下、式(14)参照)。
Fxc(λ)=W(λ)・Fx1(λ)+(1−W(λ))・Fx2(λ)…(14)
【0054】
また、蛍光分光放射輝度率Fxc(λ)と照明光に依存しない反射分光放射輝度率Rxc(λ)との和である全分光放射輝度率Bxc(λ)についても、上記と同じ重みW(λ)を用いて、各照明光I1、I2により蛍光試料を実測して得た全分光放射輝度率Bx1(λ)とBx2(λ)との線形結合により求めることができる(以下、式(15)参照)。
Bxc(λ)=W(λ)・Bx1(λ)+(1−W(λ))・Bx2(λ)…(15)
【0055】
上述では、二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)を与えて式(8)或いは式(13)によって重みW(λ)を求めているが、式(1)からFc(λ)=Fs(λ)であればBc(λ)=Bs(λ)であるので、式(8)或いは式(13)のF(μ,λ)を二分光放射輝度率B(μ,λ)に置き換え、上述と同様に重みW(λ)を求めることができる。
【0056】
ところで、上記蛍光試料の光学特性測定に先立って2種類の校正が必要となる。これら校正について以下に説明する。
<1.分光手段の相対分光感度校正>
上述したように本実施形態の方法では、測定器の実照明光の分光分布を把握することが必要であり、そのために、製造時等において予め放射光分光手段(ここでは2チャンネル分光部6)の相対分光感度の校正が行われる。まず、放射光分光手段を公知の方法によって波長校正し、更にA光源など既知の分光分布A(λ)を有する光源からの光束を入射させて得た出力Sa(λ)から、感度校正係数G(λ)が求められる(以下、式(16)参照)。
G(λ)=A(λ)/Sa(λ)…(16)
【0057】
<2.白色校正>
測定に先立って(前段階で)行われる白色校正では、反射分光放射輝度率Rw(λ)が既知であり、蛍光特性をもたない白色校正板を、照明光I1及びI2(照明光LA及び照明光LB)で照明したときの、試料放射光(白色校正板からの放射光)の分光分布Sw1(λ)、Sw2(λ)と、参照面反射光(参照面部4からの反射光)の分光分布Mw1(λ)、Mw2(λ)とから、以下、<1>、<2>に示す2種類の係数が求められる。
【0058】
<1>参照面反射光の分光分布Mx1(λ)、Mx2(λ)を分光分布I1(λ)、I2(λ)に変換するための変換係数D1(λ)、D2(λ)。
【0059】
この場合、既知の反射分光放射輝度率Rw(λ)を有する白色校正板を照明光I1及びI2で照明したときの、当該試料面反射光の分光分布Sw1(λ)、Sw2(λ)と、参照面反射光の分光分布Mw1(λ)、Mw2(λ)と、上記式(16)に示す感度校正係数G(λ)とから、以下の式(17)、(18)によって、測定時の参照面反射光の分光分布Mx1(λ)、Mx2(λ)を、試料面照明光の分光分布I1(λ)、I2(λ)に変換する変換係数D1(λ)、D2(λ)を求める。
D1(λ)=[G(λ)・Sw1(λ)]/[Mw1(λ)・Rw(λ)]…(17)
D2(λ)=[G(λ)・Sw2(λ)]/[Mw2(λ)・Rw(λ)]…(18)
【0060】
これにより、蛍光試料測定時、参照面反射光の分光分布がMx1(λ)、Mx2(λ)であるとすると、試料面照明光の分光分布I1(λ)、I2(λ)が、該変換係数D1(λ)、D2(λ)を用いて以下の式(19)、(20)により求められる。
I1(λ)=D1(λ)・Mx1(λ)…(19)
I2(λ)=D2(λ)・Mx2(λ)…(20)
【0061】
<2>測定時、照明光I1及びI2で照明した試料放射光の分光分布Sx1(λ)、Sx2(λ)と参照面反射光の分光分布Mx1(λ)、Mx2(λ)とから、蛍光試料の全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)を求めるための校正係数C1(λ)、C2(λ)。
【0062】
この場合、上記<1>における、既知の反射分光放射輝度率Rw(λ)と、白色校正板を照明光I1及びI2で照明したときの試料面反射光の分光分布Sw1(λ)、Sw2(λ)と参照面反射光の分光分布Mw1(λ)、Mw2(λ)とから、以下の式(21)、(22)によって校正係数C1(λ)、C2(λ)を求める。
C1(λ)= Rw(λ)/[Sw1(λ)/Mw1(λ)] …(21)
C2(λ)= Rw(λ)/[Sw2(λ)/Mw2(λ)] …(22)
【0063】
これにより、蛍光試料測定時、照明光I1及びI2で照明された試料面放射光及び参照面反射光の分光分布が、Sx1(λ)、Sx2(λ)、及びMx1(λ)、Mx2(λ)とすれば、試料面の全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)は以下の式(23)、(24)により求められる。
Bx1(λ)=C1(λ)・Sx1(λ)/Mx1(λ)…(23)
Bx2(λ)=C2(λ)・Sx2(λ)/Mx2(λ)…(24)
【0064】
なお、上述の評価用照明光で照明したときの全分光放射輝度率の測定原理は、以下のように要約されるものであると言うこともできる。
a1.任意の照明光で照明された蛍光試料が放射する蛍光の分光特性は、照明光の分光分布と試料の二分光蛍光放射輝度率によって求められる(式(2)参照)。
a2.したがって、照明光の分光分布が既知であれば、既知の二分光蛍光放射輝度率をもつ仮想的な蛍光基準試料の全分光放射輝度率を算出でき、現実の蛍光基準試料に置き換えることができる。
a3.仮想的な蛍光基準試料について、上述の特許文献1の方法を適用する。
a4.評価用照明光の分光分布は予めデータとして与えておき、測定装置の照明光(実照明光)の分光分布は実測で求める。
【0065】
<蛍光試料の全分光放射輝度率の測定手順>
光学特性測定装置10による蛍光試料の全分光放射輝度率の測定手順としては、予め行われる図3のフローに示す白色校正後、図4に示すフローに沿って当該全分光放射輝度率の測定を行う。図3は、白色校正に関する動作の一例を示すフローチャートである。まず、制御部7は、測定開口に配設した白色校正用の試料、すなわち反射分光放射輝度率Rw(λ)が既知であり蛍光特性のない白色校正板に対して、第1照明部2(白熱ランプ21)を点灯させて照明光LA(照明光I1)によって照明する(ステップS1)。そして、2チャンネル分光部6(放射光分光手段)によって、当該照明光LAによる試料反射光(ここでは、蛍光特性のない白色校正板に対する試料放射光であるので、試料反射光となる)の分光分布Sw1(λ)を測定するとともに、照明光LAの参照面反射光の分光分布Mw1(λ)を測定し、これらSw1(λ)及びMw1(λ)の分光分布情報を分光データメモリ71に保存する(ステップS2)。
【0066】
続いて、制御部7は、上記ステップS1での第1照明部2の点灯を維持した状態で、第2照明部3(紫外LED31)を点灯して、その結果、第1及び第2照明部2、3による照明光LB(照明光I2)によって被測定試料1を照明し(ステップS3)、ステップS2と同様に、2チャンネル分光部6によって、当該照明光LBによる試料反射光の分光分布Sw2(λ)を測定するとともに、照明光LBの参照面反射光の分光分布Mw2(λ)を測定し、これらSw2(λ)及びMw2(λ)の分光分布情報を分光データメモリ71に保存する(ステップS4)。そして、第1及び第2照明部2、3を消灯する(ステップS5)。
【0067】
そして、上記ステップS2及びS4において求めた試料面反射光の分光分布Sw1(λ)、Sw2(λ)と参照面反射光の分光分布Mw1(λ)、Mw2(λ)と、上述の式(16)に示す感度校正係数G(λ)とから、上述の式(17)、(18)によって、測定時の参照面反射光の分光分布Mx1(λ)、Mx2(λ)を、試料面照明光の分光分布I1(λ)、I2(λ)に変換するための変換係数D1(λ)、D2(λ)を算出する(ステップS6)。
【0068】
さらに、上記ステップS2及びS4において求めた試料面反射光の分光分布Sw1(λ)、Sw2(λ)と参照面反射光の分光分布Mw1(λ)、Mw2(λ)と、上記既知の反射分光輝度率Rw(λ)とから、上述の式(21)、(22)によって校正係数C1(λ)、C2(λ)を算出する(ステップS7)。そして、上記ステップS6において算出した変換係数D1(λ)、D2(λ)及びステップS7において算出した校正係数C1(λ)、C2(λ)のデータを所定の記憶部、例えば係数メモリ74に記憶しておく(ステップS8)。
【0069】
図4は、光学特性測定装置10による蛍光試料の全分光放射輝度率の測定に関する動作の一例を示すフローチャートである。まず、測定に先立って評価用照明光Isを選択する。すなわち制御部7は、評価用照明光データメモリ72から、選択する評価用照明光Isの分光分布データIs(λ)(すなわち分光分布Is(μ))を読み出す(ステップS11)。続いて、被測定試料1のタイプ(種類)を選択する。すなわち制御部7(CPU70)は、二分光データメモリ73から、被測定試料に近似するタイプの二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)のデータを読み出す(ステップS12)。次に、制御部7は、測定開口に配設された被測定試料1に対し、第1照明部2(白熱ランプ21)を点灯して照明光LA(照明光I1)によって照明する(ステップS13)。そして、2チャンネル分光部6(放射光分光手段)によって、当該照明光LAによる試料放射光の分光分布Sx1(λ)を測定するとともに、照明光LAの参照面反射光の分光分布Mx1(λ)を測定し、これらSx1(λ)及びMx1(λ)の分光分布情報を分光データメモリ71に保存する(ステップS14)。
【0070】
続いて、制御部7は、上記ステップS13での第1照明部2の点灯を維持した状態で、第2照明部3(紫外LED31)を点灯して、第1及び第2照明部2、3による照明光LB(照明光I2)によって被測定試料1を照明し(ステップS15)、ステップS14と同様に、2チャンネル分光部6によって、当該照明光LBによる試料放射光の分光分布Sx2(λ)を測定するとともに、照明光LBの参照面反射光の分光分布Mx2(λ)を測定し、これらSx2(λ)及びMx2(λ)の分光分布情報を分光データメモリ71に保存する(ステップS16)。そして、第1及び第2照明部2、3を消灯する(ステップS17)。
【0071】
次に、制御部7は、上記ステップS11、S12においてそれぞれ読み出した分光分布データIs(λ)=Is(μ)と二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)とから、以下の式(25)によって評価用照明光による蛍光分光放射輝度率Fs(λ)を算出する(ステップS18)。
Fs(λ)=∫F(μ,λ)・Is(μ)dμ/Is(λ)…(25)
【0072】
そして、上述の式(19)、(20)によって、それぞれ照明光LA、LBの参照面反射光の分光分布Mx1(λ)、Mx2(λ)を、試料面照明光(照明光LA、LB)の分光分布I1(λ)、I2(λ)に変換し(ステップS19)、当該変換して求めた分光分布I1(λ)、I2(λ)(すなわち分光分布I1(μ)、I2(μ))と二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)とから、以下の式(26)、(27)によって照明光LA、LB(照明光I1、I2)による蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)を算出する(ステップS20)。
F1(λ)=∫F(μ,λ)・I1(μ)dμ/I1(λ)…(26)
F2(λ)=∫F(μ,λ)・I2(μ)dμ/I2(λ)…(27)
【0073】
次に、当該算出した蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)と、上記ステップS18で求めた蛍光分光放射輝度率Fs(λ)とによる以下の式(28)を波長毎に解くことで、重みW(λ)を求める(ステップS21)。
W(λ)・F1(λ)+(1−W(λ))・F2(λ)=Fs(λ)…(28)
そして、上記ステップS14、16において保存されたMx1(λ)、Mx2(λ)と、Sx1(λ)、Sx2(λ)とから、上述の式(23)、(24)を用いて、照明光LA、LBによる全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)を算出し(ステップS22)、当該算出されたBx1(λ)、Bx2(λ)と、上記ステップS21において算出した重みW(λ)とから、以下の式(29)によって評価用照明光による全分光放射輝度率Bxs(λ)を算出する(ステップS23)。
Bxs(λ)= W(λ)・Bx1(λ)+(1−W(λ))・Bx2(λ)…(29)
【0074】
(蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率の測定)
上述の測定方法を基本技術とする本発明に係る蛍光試料の光学特性測定方法及び装置について、以下に説明する。図1は、本発明に係る蛍光試料の光学特性測定装置の一例を示す概略構成図である。図1に示すように、光学特性測定装置100は、被測定試料110、第1照明部120、第2照明部130、積分球140、受光部150、2チャンネル分光部160及び制御部170を備えて構成されている。被測定試料110は、蛍光物質を含む繊維や紙製品等からなる測定対象となる試料である。被測定試料110は、積分球140の試料用開口141に配置される。第1照明部120は、被測定試料110を照明するものであり積分球140に、ここでは積分球140の側方部に配設される。第1照明部120は、可視−紫外域の光束を出力する光源としての(紫外域に十分なエネルギーを有する)キセノンフラッシュ121と、該キセノンフラッシュ121を駆動して点灯(例えばパルス点灯)させるための第1駆動回路122とを備える。
【0075】
第2照明部130は、第1照明部120と同様、被測定試料110を照明するものであり、積分球140の側方部に第1照明部120と併設されている。第1照明部130も第1照明部120と同様、可視−紫外域の光束を出力する光源としてのキセノンフラッシュ131と、該キセノンフラッシュ131を駆動して点灯(例えばパルス点灯)させるための第2駆動回路132とを備える。第1及び第2照明部120、130は、それぞれキセノンフラッシュ121、131の光束を、第1フィルタ123及び第2フィルタ133を経て積分球140内に送り込む。なお、第1及び第2照明部120、130の光源は、キセノンフラッシュに限定されず、可視域及び紫外域の光束が出力可能であれば、いずれの光源でもよい。
【0076】
ところで、上述の基本技術の説明においては、照明光I1として、第1照明部2のみを点灯させたときの照明光LAを用い、一方、照明光I2として、第1照明部2及び第2照明部3の両方を点灯させたときの照明光LBを用いる構成としているが、この実施例においては、第1及び第2照明部120、130がそれぞれ単独で照明光I1、I2を形成する。すなわち、第1照明部120(キセノンフラッシュ121)のみを点灯させた場合の照明光を照明光I1とし、第2照明部130(キセノンフラッシュ131)のみを点灯させた場合の照明光を照明光I2とする。なお、上述の説明と区別するため、ここでの照明光I1を照明光HA、照明光I2を照明光HBと適宜称することとする。
【0077】
積分球140は、内壁に高拡散、光反射率の白色塗料が塗布された球状体であり、球内に入射された光を多重拡散反射させるものである。また、積分球140は、図2に示す参照面部4に相当する参照面部142を備えている。この参照面部142は、積分球140の内壁の一部で構成されており、被測定試料110近傍(測定域近傍)に配設されている。受光部150(受光系)は、光学レンズ(又はレンズ群)からなり、第1及び第2照明部120、130によって照明された被測定試料110の放射光、或いは参照面部142からの反射光の略法線方向の成分を受光するとともに、該受光した光束を後述の2チャンネル分光部160へ向けて入射させるものでもある。
【0078】
2チャンネル分光部160は、受光部150からの入射光に対する分光測定を行うものであり、上記2チャンネル分光部6と同様、放射光分光手段及び照明光分光手段として機能する。2チャンネル分光部160は、第1入射スリット161及び第2入射スリット162を備えており、上記照明光HA又は照明光HBによって照明された被測定試料110からの放射光(以降、試料面放射光という)は、第1入射スリット161に入射し、一方、照明光HA又は照明光HBによって照明された参照面部142からの反射光(以降、参照面反射光という)は第2入射スリット162に入射する。2チャンネル分光部160は、この第1入射スリット161に入射した試料放射光に対する分光測定を行い、第1チャンネル出力として当該試料放射光の分光分布データを出力するとともに、第2入射スリット162に入射した参照面反射光に対する分光測定を行い、第2チャンネル出力として当該参照面反射光の分光分布データを出力する。なお、光学特性測定装置100での光学系は、上述のように積分球140と受光部150との配置により、d/0ジオメトリーを構成している。
【0079】
制御部170は、上記制御部7と同様、光学特性測定装置100全体の動作制御を司るものであり、例えば第1及び第2照明部120、130の点灯動作や2チャンネル分光部160の受光・分光動作に関する駆動制御を行ったり、2チャンネル分光部160からの情報(分光情報)に基づいて、被測定試料110に対する蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率の算出等に関する各種演算処理を実行する。制御部170は、CPU171、分光データメモリ172、評価用照明光データメモリ173、二分光データメモリ174及び係数メモリ175等を備えている。
【0080】
CPU171は、第1及び第2照明部120、130、並びに2チャンネル分光部160の駆動制御に関する処理、或いは被測定試料110に対する蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率の算出等に関する演算等の各種演算処理を行う中央演算処理装置(CPU)である。分光データメモリ172は、2チャンネル分光部160で分光され、該2チャンネル分光部160から送信されてきた試料面放射光及び参照面反射光の分光分布データを記憶するものである。評価用照明光データメモリ173は、予め与えられた評価用照明光の分光分布データを記憶するものである。二分光データメモリ174は、予め求められた、被測定試料110(蛍光試料)と近似の二分光蛍光放射輝度率データを記憶するものである。係数メモリ175は、2チャンネル分光部160の相対分光感度を校正する感度校正係数、参照面反射光の分光分布を、被測定試料110に対する照明光(以降、試料面照明光という)の分光分布に変換する変換係数、及び試料放射光と参照面反射光との分光分布から、被測定試料110の当該全分光放射輝度率を求める校正係数等の係数データを記憶するものである。
【0081】
第1及び第2照明光120、130から送り込まれた光束124、134は積分球140内で拡散多重反射され、それぞれ拡散光125、135となって試料用開口141にある被測定試料110を照明する。第1フィルタ123は「355」nm、第2フィルタ133は「395」nm以下の光束を遮断するので、照明光HA、HB(照明光I1、I2)の相対紫外強度は大きく異なるものとなる。本発明の測定方法では、実照明光HA、HBの分光分布I1(λ)、I2(λ)を把握する必要があるので、2チャンネル分光部160の測定範囲である350nm〜740nmの波長に合わせて、当該照明光HA、HBを355nm以上の波長の強度を有するものとしている。
【0082】
制御部170が第1駆動回路122を介してキセノンフラッシュ121を駆動することで、第1照明部120は355nm以上の光束(照明光HA)で被測定試料110を拡散照明する。同様に、制御部170が第2駆動回路132を介してキセノンフラッシュ131を駆動することで、第2照明部130は395nm以上の光束(照明光HB)で被測定試料110を拡散照明する。第1又は第2照明部120、130によって照明された被測定試料110からの放射光のうち、法線方向の成分1101が積分球140の開口143を通り、受光部150によって2チャンネル分光部160の第1入射スリット161に入射して分光測定され、第1チャンネル出力としてその分光分布Sx1(λ)又はSx2(λ)が制御部170に出力される。
【0083】
同時に、被測定試料110の測定域近傍の参照面部142からの反射光における略法線方向の成分1421が受光部150によって2チャンネル分光部160の第2入射スリット162に入射して分光測定され、上記照明光HA、HB(I1、I2)に対する参照面反射光の分光分布Mx1(λ)又はMx2(λ)が第2チャンネル出力として制御部170に出力される。
【0084】
制御部170は、上記図2に示す光学特性測定装置10(制御部7)の場合と同様、当該2チャンネル分光部160からの第1及び第2チャンネル出力データと制御部170の各メモリに記憶されたデータとを用いて、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率(反射分光放射輝度率)を算出する。但し、本実施形態においては、これらデータを用いて、評価用照明光で照明された蛍光試料の全分光放射輝度率と当該蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率(反射分光放射輝度率)との算出を行う。
【0085】
<演算方法>
上記式(1)に示すように、試料xの実測による全分光放射輝度率Bx(λ)は、反射分光放射輝度率Rx(λ)と蛍光分光放射輝度率Fx(λ)との和で与えられる。反射分光放射輝度率Rx(λ)が照明光に依存しない一方、蛍光分光放射輝度率Fx(λ)は照明光の分光分布に依存するが、この蛍光分光放射輝度率Fx(λ)は、試料xに近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と照明光の分光分布I(μ)とから上記式(2)によって算出される理論的な蛍光分光放射輝度率F(λ)に比例すると考えられ、以下の式(30)で示すことができる。
Bx(λ)=Rx(λ)+F(λ)・K(λ)…(30)
但し、K(λ)は、上記算出による理論的な蛍光分光放射輝度率F(λ)と、このF(λ)の算出に用いた二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)に近似の二分光蛍光放射輝度率を有する測定試料の実際の蛍光分光放射輝度率Fx(λ)との比であって、試料に固有の定数である。このK(λ)は、理論的な蛍光分光放射輝度率を、試料の実際の蛍光分光放射輝度率と結び付ける(関連付ける)ための試料に固有の比例定数であるとも言える。
【0086】
したがって、試料を分光分布の異なる2つの実照明光I1、I2で照明したときの実測の全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)は、以下の式(31)、(32)によって算出される理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)を用いて、
F1(λ)=∫F(μ,λ)・I1(μ)dμ/I1(λ) …(31)
F2(λ)=∫F(μ,λ)・I2(μ)dμ/I2(λ) …(32)
以下の式(33)、(34)で表される。
Bx1(λ)=Rx(λ)+F1(λ)・K(λ) …(33)
Bx2(λ)=Rx(λ)+F2(λ)・K(λ) …(34)
【0087】
よって、上記式(33)(34)を、Rx(λ)及びK(λ)を未知数とする連立方程式として波長毎に解くことで、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率にあたる反射分光放射輝度率Rx(λ)が求められる。
【0088】
なお、上述の蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率の測定方法は、以下のように要約されるものであると言うこともできる。
b1.分光分布の異なる2つの照明光で照明された蛍光試料の実測全分光放射輝度率を、反射分光放射輝度率と蛍光分光放射輝度率との和として(式(1)参照)、反射分光放射輝度率(蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率)を求める。
b2.各照明光での蛍光分光放射輝度率は、各照明光の分光分布と試料に近似の二分光蛍光放射輝度率から算出される理論的な蛍光分光放射輝度率に比例するとする。
【0089】
<蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率の測定手順>
図5は、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率の測定に関する動作の一例を示すフローチャートである。まず、測定に先立って評価用照明光Isを選択する。すなわち制御部170は、評価用照明光データメモリ173から、選択する評価用照明光Isの分光分布データIs(λ)(すなわち分光分布Is(μ))を読み出す(ステップS31)。続いて、被測定試料110のタイプ(種類)を選択する。すなわち制御部170(CPU171)は、二分光データメモリ174から、選択するタイプの二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)のデータを読み出す(ステップS32)。次に、制御部170は、積分球140の試料用開口141に配設された被測定試料110に対し、第1照明部120(キセノンフラッシュ121)をパルス点灯して照明光HA(照明光I1)によって照明する(ステップS33)。上記ステップS33による発光(照明)時、2チャンネル分光部160(放射光分光手段)によって、当該照明光HAによる試料面放射光の分光分布Sx1(λ)を測定するとともに、照明光HAの参照面反射光の分光分布Mx1(λ)を測定し、これらSx1(λ)及びMx1(λ)の分光分布情報を分光データメモリ172に保存する(ステップS34)。
【0090】
続いて、制御部170は、第2照明部130(キセノンフラッシュ131)をパルス点灯して、当該第2照明部130による照明光HB(照明光I2)によって被測定試料110を照明し(ステップS35)、第1照明部120の場合と同様、2チャンネル分光部160によって、当該照明光HBによる試料面放射光の分光分布Sx2(λ)を測定するとともに、照明光LBの参照面反射光の分光分布Mx2(λ)を測定し、これらSx2(λ)及びMx2(λ)の分光分布情報を分光データメモリ172に保存する(ステップS36)。
【0091】
次に、上記図4に示すフローチャートのステップS18〜S23と同様の処理を行うことによって、照明光HA、HB(照明光I1、I2)の、分光分布I1(λ)、I2(λ)と、各照明光に対する全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)とを算出して分光データメモリ172に保存し、これらの情報から評価用照明光による全分光放射輝度率Bxs(λ)を算出するとともに、その過程で分光分布I1(λ)、I2(λ)と、読み出された二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)とから、上述の式(31)、(32)によって、算出した理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)を分光データメモリ172に保存する(ステップS37)。上記ステップS36、S37において算出した実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)と、理論的蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)とを用いた上述の式(33)、(34)による連立方程式を波長毎に解いて、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率にあたる反射分光放射輝度率Rx(λ)を求める(ステップS38)。
【0092】
上述のように、本発明の光学特性測定方法及びこれを用いた光学特性測定装置によって蛍光試料の光学特性が測定される、すなわち評価用照明光で照明したときの全分光放射輝度率と蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率とが測定されるが、当該測定方法及び測定装置は、以下に要約される効果をもたらすものであると言うこともできる。
【0093】
すなわち、本発明では照明光の分光分布を把握することで、従来用いられてきた蛍光標準試料を、試料に近似の二蛍光分光放射輝度率データに置き換えることができ、したがって、c1.蛍光基準試料の経時変化による誤差が、はるかに小さい照明光分光手段の経時変化による誤差に置き換わる。c2.蛍光基準試料間の差に起因する誤差がない。c3.蛍光基準試料の経時変化の影響を抑えるための蛍光標準試料の更新が不要となり、これに伴う管理、手間或いはコストを抑えることができる。c4.従来の相対紫外強度の校正にあたる照明光の合成は測定時に数値的に行われるので、事前の校正作業が不要になる。c5.照明光の合成は、測定時の照明光に基づいて行われるので、照明光の変化に起因する誤差がない。c6.測定可能性のある1つ以上の二分光蛍光放射輝度率又は二分光放射輝度率データや1つ以上の評価用照明光の分光分布を、生産時あるいは測定サイトに出荷する前に予め記憶しておくことで、通常、測定サイトではそれらを選択するだけで、蛍光試料の分光放射輝度率を容易に求めることができる。c7.二分光蛍光放射輝度率又は二分光放射輝度率データはインターネット(Web)を通じて適宜、追加、更新することができる。c8.同じ蛍光試料に対する評価用照明光で照明した蛍光試料の全分光放射輝度率と、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率とを同時に求めることができる。c9.蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率の測定において、蛍光抑制フィルタ等が不要となる。c10.全分光放射輝度率が測定不能な波長域が生じず、全分光放射輝度率から求められる色彩値の精度が落ちない。
【0094】
以上のように本発明の光学特性測定方法によれば、試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と、分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)と、第1及び第2の実照明光I1、I2(照明光HA、HB)のそれぞれによって照明された試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)とから、蛍光の影響を除去した試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)が以下の第1及び第2の工程によって算出されるので、すなわち、
【0095】
第1の工程:前記二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と前記第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とから、該第1及び第2の実照明光I1、I2による前記試料の理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)=∫F(μ,λ)・I1(μ)dμ/I1(λ)及びF2(λ)=∫F(μ,λ)・I2(μ)dμ/I2(λ)を算出する。
第2の工程:前記試料の反射分光放射輝度率をRx(λ)とし、前記実測全分光放射輝度率Bx1(λ)及びBx2(λ)を、該反射分光放射輝度率Rx(λ)と、前記理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)とK(λ)との乗算によるF1(λ)・K(λ)及びF2(λ)・K(λ)との和とする以下の連立方程式を波長毎に解いて反射分光放射輝度率Rx(λ)を算出する。Bx1(λ)=Rx(λ)+F1(λ)・K(λ)、Bx2(λ)=Rx(λ)+F2(λ)・K(λ)。但し、K(λ)は、前記算出による理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)と前記試料の実測蛍光分光放射輝度率との比を示す試料に固有の定数。
【0096】
このように、試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と、分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)と、第1及び第2の実照明光I1、I2のそれぞれによって照明された試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)とから、蛍光の影響を除去した試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)が上記第1及び第2の工程で算出されるので、励起光を抑えるフィルタ等を用いることなく、したがって、全分光放射輝度率が測定不能となる波長域が生じることなく、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を精度よく求めることができ、全分光放射輝度率から求められる色彩値の精度低下を防止することができる。
【0097】
また、本発明の光学特性測定装置100によれば、第1及び第2の照明手段(第1照明部120、130)によって分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2により試料が照明され、放射光分光手段(2チャンネル分光部160)によって試料からの放射光の分光分布が測定され、照明光分光手段(2チャンネル分光部160)によって第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布が測定され、記憶手段(二分光データメモリ174)によって試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報が記憶される。そして、演算制御手段(制御部170)によって、第1及び第2の照明手段が個々に点灯されて、放射光分光手段及び照明光分光手段により測定して得た情報に基づいて、第1及び第2の実照明光I1、I2それぞれに対する試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)と、該第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とが算出されるとともに、該算出された情報及び記憶手段に記憶された二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報に基づいて、蛍光の影響を除去した試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)が算出されるので、励起光を抑えるフィルタ等を用いることなく、したがって、全分光放射輝度率が測定不能となる波長域が生じることなく、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を精度よく求めることができ、全分光放射輝度率から求められる色彩値の精度低下を防止することができる。
【0098】
さらに、第1及び第2の実照明光I1、I2が少なくとも短波長域において、照明光分光手段の測定範囲を超える波長域に強度を有さないものとされるので、演算制御手段による演算において、第1及び第2の実照明光の励起及び蛍光に関わる波長域の分光強度を漏れなく把握する(演算処理で扱う)ことができ、これにより、各照明光の理論的な蛍光分光放射輝度率を正確に求めることができるので、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を正確に求めることが可能となる。
【0099】
なお、本発明は、以下の態様をとることができる。
(1)上記実施形態では、照明光HA、HBの2つの実照明光を用いているが、2つ以上の実照明光を用いてもよい。この場合、照明光を合成するための重みは、照明光毎に与えられる(但し、重みの合計は「1」となる)。
【0100】
(2)照明光HA、HBは、1つの光源からの光束に異なる分光透過特性(素通しを含む)を有する2つのフィルターを順次挿入することで得てもよい。
【0101】
(3)二分光データメモリ73、174に、評価を行う可能性のある蛍光増白製品に近似する二分光蛍光放射輝度率データを予め複数記憶しておき、測定に先立ってこれらデータから所要のデータを選択して用いる構成であってもよい。この場合、制御部7、170は、当該選択された二分光蛍光放射輝度率データに基づいて、蛍光の影響を除去した測定試料の全分光放射輝度率や、これに基づく色彩値を求めて出力する。
【0102】
(4)例えば特許文献1に示すような、蛍光基準試料を用いて評価用照明光の場合と同じ全分光放射輝度率を与える照明光を合成する従来の測定方法(装置)に対しても、照明光HA、HB(照明光LA、LB)の分光分布さえ把握することができれば、被測定試料に近似の二分光蛍光放射輝度率を与えることで、本発明の方法を適用することができる。この場合について説明する。図6は、本発明の方法を、従来の測定方法に適用した場合の光学特性測定装置の一例を示す概略構成図である。同図の光学特性測定装置200に示すように、通常、蛍光試料の測定を行うための測定装置には、PC(パーソナルコンピュータ)210といった情報処理装置を含んでいる。このPC210では、制御部220を介して照明手段(第1及び第2照明部230、240)や分光手段(分光部250)を制御するとともに、照明光及び試料面放射光の分光分布を受け取り、この情報に基づいて照明光を合成したり、試料の全分光放射輝度率を求めている。従来の測定装置では、実照明光の励起及び蛍光に関与する全波長域の分光分布を得ることができないため、当該照明光の分光分布を測定する分光分布測定手段を別途設ける必要があり、これに対応して分光分布測定部201を設けている。この分光分布測定部201は、測定に先立って試料用開口(後述の開口部271)に配設され、第1及び第2照明部230、240の照明に基づく照明光HA及びHBの分光分布を実測する。当該実測された照明光HA、HBの分光分布情報はPC210へ送られる。そして、PC210において、当該実照明光の分光分布情報と、予め該PC210に数値データとして記憶しておいた二分光蛍光放射輝度率の情報と合わせて、上述の実施形態と同じ手順で理論的な蛍光分光放射輝度率が求められるとともに照明光が合成され、評価用照明光で照明したときの試料の全分光放射輝度率、及び蛍光の影響を除去した試料の全分光放射輝度率(反射分光放射輝度率)等が求められる。
【0103】
なお、図6の光学特性測定装置200に示す制御部220、第1照明部230、第2照明部240、分光部250、受光部260及び積分球270は、それぞれ図1に示す光学特性測定装置100の制御部170、第1照明部120、第2照明部130、2チャンネル分光部160、受光部150及び積分球140に相当する。ただし、第1照明部230及び第2照明部240の光源231、241は、いずれも紫外域に十分なエネルギーをもつキセノンフラッシュ光源であり、第2照明部240にのみ紫外カットフィルタ243が備えられている。なお、分光部250の第1及び第2入射スリット251、252は、それぞれ2チャンネル分光部160の第1入射スリット161、第2入射スリット162に相当する。また、符号232、242は光源231、241を点灯させるための駆動回路である。また、積分球270は、試料用開口としての開口部271を備えるとともに、図1に示す参照面部142に相当する積分球270の内壁の一部である参照面部272を備えている。
【0104】
ところで、上記照明光の分光分布測定部201は、少なくとも相対分光感度が校正されている必要があり、励起及び蛍光に関与する全波長域(蛍光増白試料の場合であれば例えば約300nm〜600nmの波長域)をカバーしなければならない。この測定方法によって、安定性に欠ける蛍光基準試料を、上記照明光の分光分布測定部201に置き換える(蛍光基準試料の代わりに分光分布測定部201を用いる)ことができ、また、励起光抑制フィルターを用いることなく、したがって全分光放射輝度率が測定不能となる波長域が生じることなく、蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率を求めることができるものの、照明光の合成と理論的な蛍光分光放射輝度率の算出とを測定に先立って行う必要があり、これに伴って、照明光の変動による誤差を排除できなくなる。
【0105】
(5)上記実施形態では、計算による理論的蛍光分光放射輝度率と試料の実際の蛍光分光放射輝度率との比を示す試料に固有の定数K(λ)を波長毎に求めているが、この比の波長依存性が大きくない場合は、上記定数を波長に依存しないKとして求めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に係る蛍光試料の光学特性測定装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】原理的な説明における蛍光試料の光学特性測定装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】白色校正に関する動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】光学特性測定装置による蛍光試料の全分光放射輝度率の測定に関する動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】蛍光の影響を除去した全分光放射輝度率の測定に関する動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の方法を、従来の測定方法に適用した場合の光学特性測定装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】二分光蛍光放射輝度率の強度マトリクスの一例を示すグラフ図である。
【図8】白熱光源及び紫外LEDの分光分布を示すグラフ図である。
【図9】従来の光学特性測定装置を示す概略構成図である。
【図10】従来の光学特性測定装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0107】
100 光学特性測定装置
110 被測定試料(蛍光試料、試料)
120 第1照明部(第1の照明手段)
121 キセノンフラッシュ
122 第1駆動回路
130 第2照明部(第2の照明手段)
131 キセノンフラッシュ
132 第2駆動回路
142 参照面部
150 受光部
160 2チャンネル分光部(放射光分光手段、照明光分光手段)
161 第1入射スリット
162 第2入射スリット
170 制御部(演算制御手段)
171 CPU
172 分光データメモリ
173 評価用照明光データメモリ
174 二分光データメモリ(記憶手段)
175 係数メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光試料の光学特性測定方法であって、
試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と、
分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)と、
前記第1及び第2の実照明光I1、I2のそれぞれによって照明された前記試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)とから、
蛍光の影響を除去した前記試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)を以下の第1及び第2の工程で算出することを特徴とする蛍光試料の光学特性測定方法。
第1の工程:前記二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)と前記第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とから、該第1及び第2の実照明光I1、I2による前記試料の理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)=∫F(μ,λ)・I1(μ)dμ/I1(λ)及びF2(λ)=∫F(μ,λ)・I2(μ)dμ/I2(λ)を算出する。
第2の工程:前記試料の反射分光放射輝度率をRx(λ)とし、前記実測全分光放射輝度率Bx1(λ)及びBx2(λ)を、該反射分光放射輝度率Rx(λ)と、前記理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)とK(λ)との乗算によるF1(λ)・K(λ)及びF2(λ)・K(λ)との和とする以下の連立方程式を解いて反射分光放射輝度率Rx(λ)を算出する。
Bx1(λ)=Rx(λ)+F1(λ)・K(λ)、
Bx2(λ)=Rx(λ)+F2(λ)・K(λ)
但し、K(λ)は、前記算出による理論的な蛍光分光放射輝度率F1(λ)、F2(λ)と前記試料の実際の蛍光分光放射輝度率との比を示す試料に固有の定数。
【請求項2】
蛍光試料の光学特性測定装置であって、
分光分布が異なる第1及び第2の実照明光I1、I2により試料を照明するための第1及び第2の照明手段と、
前記試料からの放射光の分光分布を測定する放射光分光手段と、
前記第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布を測定する照明光分光手段と、
前記試料に近似する二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報を記憶する記憶手段と、
前記第1及び第2の照明手段を個々に点灯し、前記放射光分光手段及び照明光分光手段により測定して得た情報に基づいて、第1及び第2の実照明光I1、I2それぞれに対する前記試料の実測全分光放射輝度率Bx1(λ)、Bx2(λ)と、該第1及び第2の実照明光I1、I2の分光分布I1(λ)、I2(λ)とを算出するとともに、該算出した情報及び前記記憶手段に記憶された二分光蛍光放射輝度率F(μ,λ)の情報に基づいて、蛍光の影響を除去した前記試料の反射分光放射輝度率Rx(λ)を算出する演算制御手段とを備えることを特徴とする蛍光試料の光学特性測定装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の実照明光I1、I2は、少なくとも短波長域において、前記照明光分光手段の測定範囲を超える波長域に強度を有さないことを特徴とする請求項2記載の蛍光試料の光学特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−292511(P2006−292511A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112337(P2005−112337)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】