説明

蛍光顕微鏡システムおよび蛍光物質の定量方法

【課題】計測標本の蛍光物質を常に高精度で定量できる蛍光顕微鏡システムを提供する。
【解決手段】蛍光顕微鏡10により計測標本30の蛍光画像を取得し、その取得した蛍光画像から検量線を用いて蛍光物質を定量する蛍光顕微鏡システムであって、蛍光画像を取得する計測標本30の表面からの距離を測定する距離測定部110と、計測標本30の表面からの距離に応じた複数の検量線を記憶する記憶部120と、距離測定部110で測定された距離に対応する検量線を記憶部120から選択し、該選択された検量線を用いて蛍光画像から蛍光物質を定量する蛍光物質定量部130と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測標本の蛍光物質を定量する蛍光顕微鏡システムおよび蛍光物質の定量方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
組織や細胞等の計測標本の蛍光物質を定量する蛍光顕微鏡システムにおいては、蛍光顕微鏡を用いて計測標本の蛍光画像を取得し、その取得した蛍光画像から、蛍光強度と濃度との関係を示す検量線を用いて蛍光物質を定量するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−155549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の蛍光顕微鏡システムにあっては、一つの検量線を用いて計測標本の蛍光物質を定量するようにしている。そのため、例えば、検量線用の標準標本の表面から短い距離(浅い位置)の蛍光物質により作成された検量線を用いて、計測標本の表面から長い距離(深い位置)の蛍光物質の定量を行うと、蛍光の散乱の影響が無視できなくなって、定量精度が低下することが懸念される。
【0005】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、計測標本の蛍光物質を常に高精度で定量できる蛍光顕微鏡システムおよび蛍光物質の定量方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する第1の観点に係る蛍光顕微鏡システムの発明は、
蛍光顕微鏡により計測標本の蛍光画像を取得し、その取得した蛍光画像から検量線を用いて蛍光物質を定量する蛍光顕微鏡システムであって、
前記蛍光画像を取得する前記計測標本の表面からの距離を測定する距離測定部と、
前記計測標本の表面からの距離に応じた複数の検量線を記憶する記憶部と、
前記距離測定部で測定された距離に対応する検量線を前記記憶部から選択し、該選択された検量線を用いて前記蛍光画像から前記蛍光物質を定量する蛍光物質定量部と、
を備えることを特徴とするものである。
【0007】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る蛍光顕微鏡システムにおいて、
前記蛍光顕微鏡は、前記蛍光画像を結像するための対物レンズのレンズ位置を検出するレンズ位置検出部を有し、
前記距離測定部は、前記レンズ位置検出部からのレンズ位置情報に対する前記対物レンズのフォーカス位置を示すフォーカス位置特性に基づいて前記計測標本の表面からの距離を測定する、ことを特徴とするものである。
【0008】
第3の観点に係る発明は、第1または2の観点に係る蛍光顕微鏡システムにおいて、
前記蛍光顕微鏡は、共焦点レーザ顕微鏡からなる、ことを特徴とするものである。
【0009】
第4の観点に係る発明は、第1または2の観点に係る蛍光顕微鏡システムにおいて、
前記蛍光顕微鏡は、透過型蛍光顕微鏡からなり、暗視野観察により前記蛍光画像を取得する、ことを特徴とするものである。
【0010】
第5の観点に係る発明は、第1乃至4のいずれかの観点に係る蛍光顕微鏡システムにおいて、
前記蛍光顕微鏡は、前記計測標本から近赤外領域の蛍光画像を取得するものである、ことを特徴とするものである。
【0011】
第6の観点に係る発明は、第1乃至4のいずれかの観点に係る蛍光顕微鏡システムにおいて、
前記蛍光顕微鏡は、前記蛍光画像を取得するマルチスペクトルカメラを有する、ことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、上記目的を達成する第7の観点に係る蛍光物質の定量方法の発明は、
蛍光顕微鏡により計測標本の蛍光画像を取得し、その取得した蛍光画像から検量線を用いて蛍光物質を定量するにあたり、
距離測定部において、前記蛍光画像を取得する前記計測標本の表面からの距離を測定するステップと、
蛍光物質定量部において、測定された前記距離に対応する検量線を記憶部から選択し、その選択された検量線を用いて前記蛍光画像から前記蛍光物質を定量するステップと、
を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、計測標本の蛍光物質を常に高精度で定量できる蛍光顕微鏡システムおよび蛍光物質の定量方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る蛍光顕微鏡システムの要部の構成を示す概略図である。
【図2】図1のプレパラートの拡大図である。
【図3】図1の距離測定部のブロック図である。
【図4】図1の記憶部に記憶される検量線を示す図である。
【図5】図4の検量線と計測標本の表面からの距離との対応関係を示す図である。
【図6】図1の蛍光物質定量部のブロック図である。
【図7】第1実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【図8】第2実施の形態におけるプレパラートの拡大図である。
【図9】第2実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0016】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る蛍光顕微鏡システムの要部の構成を示す概略図である。図1に示す蛍光顕微鏡システムは、蛍光顕微鏡10と演算処理部100とを有する。
【0017】
蛍光顕微鏡10は、公知の蛍光顕微鏡、例えば透過型蛍光顕微鏡、落射型蛍光顕微鏡、共焦点レーザ顕微鏡等からなる。図1は、蛍光顕微鏡10が落射型蛍光顕微鏡の場合を例示するもので、観察用光源11、標本ステージ12、蛍光励起用光源13、対物レンズ14、レンズ位置検出部15、カメラ16を有する。
【0018】
標本ステージ12には、蛍光物質で染色(標識)された組織等の計測標本30を有するプレパラート31が載置される。プレパラート31は、図2に拡大して示すように、スライドグラス32とカバーグラス33との間に、計測標本30を封入剤34とともに保持して作製される。本実施の形態では、カバーグラス33として、厚さd1が既知のもの、例えばd1=50μmで、計測標本30が位置しない領域の上面および下面に、それぞれ測定対象の蛍光色素35,36が塗布されたものを使用する。
【0019】
蛍光励起用光源13は、超高圧水銀灯、キセノンランプ、紫外線LCD、レーザ光源等からなり、計測標本30の蛍光物質を定量する場合に駆動される。この蛍光励起用光源13から射出される励起光は、例えば励起フィルタ17を経てダイクロイックミラー18で反射されて、対物レンズ14を経て計測標本30に照射される。これにより計測標本30の蛍光物質が励起されて、計測標本30から蛍光が発生する。この蛍光は、対物レンズ14、ダイクロイックミラー18および吸収フィルタ19を経てカメラ16に入射されて、蛍光画像が形成される。
【0020】
対物レンズ14は、フォーカスハンドルやオートフォーカス機構のフォーカス調整機構により、手動的または自動的にフォーカス位置が調整される。なお、オートフォーカス機構は、パッシブ光路差法、コントラスト法、ナイフエッジを用いるアクティブ位相差法等の公知の方式が採用可能である。
【0021】
レンズ位置検出部15は、対物レンズ14のレンズ位置を検出する。検出されたレンズ位置情報は、演算処理部100に供給される。カメラ16は、撮像する蛍光画像に応じて、CCDカメラ、CMOSカメラ、フォトマルチプライヤ、マルチスペクトルカメラ等を用いて構成される。カメラ16で撮像された計測標本30の画像信号は、演算処理部100に供給される。
【0022】
なお、観察用光源11は、計測標本30の透過光学像を観察する場合に駆動される。この観察用光源11から射出された照明光は、反射ミラー20を含む照明光学系を経て計測標本30に照射され、その透過光が対物レンズ14を経て、図示しない接眼光学系や、カメラ16に導かれる。これにより、蛍光画像と同様に、接眼光学系を経て計測標本30の透過光学像が観察可能となっており、カメラ16で撮像された透過光学像が、専用の表示部や後述する演算処理部100の表示部に表示されるようになっている。
【0023】
演算処理部100は、距離測定部110、記憶部120、蛍光物質定量部130、制御部140、表示部150を有する。
【0024】
距離測定部110は、計測標本30の蛍光画像を取得する表面からの距離を測定するもので、例えば図3に示すように、記憶部111および距離算出部112を有する。記憶部111には、計測標本30のプレパラート31の作製に使用されるカバーグラス33の厚さ情報が記憶されるとともに、レンズ位置検出部15からのレンズ位置情報、およびカメラ16からの画像信号が記憶される。また、記憶部111には、後述する対物レンズ14のレンズ位置情報に対するフォーカス位置を示すフォーカス位置特性が記憶される。記憶部111に記憶された画像信号は、適宜、蛍光物質定量部130に出力される。
【0025】
距離算出部112は、記憶部111に記憶されたカバーグラス33の厚さ情報およびレンズ位置情報に基づいて、フォーカス位置特性を算出して記憶部111に記憶する。また、距離算出部112は、記憶部111に記憶されたフォーカス位置特性と、レンズ位置検出部15からのレンズ位置情報とに基づいて、カバーグラス33の下面からのフォーカス位置の距離、つまり計測標本30の蛍光画像を取得する表面からの距離を算出する。距離算出部112で算出された距離は、距離情報として蛍光物質定量部130に出力される。
【0026】
記憶部120は、例えば図4に示すような、計測標本30の表面からの距離に応じた蛍光強度と濃度との関係を示す複数の検量線や、定量結果等の各種のデータを記憶する。なお、図4は、検量線1から検量線5までの5種類の検量線を示しており、各検量線と計測標本30の表面からの距離との対応関係は、図5に示すようになっている。図4および図5から明らかなように、同じ濃度でも、計測標本30の表面からの距離が長くなるに従って、蛍光強度は低くなる。
【0027】
蛍光物質定量部130は、例えば図6に示すように、検量線選択部131および蛍光分子定量部132を有する。検量線選択部131は、距離算出部112からの距離情報に基づいて、対応する検量線を記憶部120から選択する。蛍光分子定量部132は、検量線選択部131で選択された検量線を用いて、距離算出部112からの画像信号(蛍光画像)の蛍光物質を定量する。その定量結果は、定量情報として制御部140に出力される。
【0028】
制御部140は、蛍光顕微鏡10および演算処理部100の全体の動作を制御するもので、例えばパーソナルコンピュータで構成される。そして、制御部140は、蛍光物質定量部130からの定量情報を表示部150に表示する。また、制御部140は、必要に応じて、表示部150に、蛍光顕微鏡10で取得した計測標本30の蛍光画像や透過光学像を表示する。
【0029】
以下、本実施の形態に係る蛍光顕微鏡システムによる蛍光物質の定量方法について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0030】
本実施の形態では、蛍光顕微鏡10の標本ステージ12に、図2に示したようなプレパラート31をセットし、蛍光励起用光源13を点灯させて蛍光物質を定量する。ここで、プレパラート31は、例えば、計測標本30が肺腺癌患者の病理組織標本の場合、採取されたヒト肺癌病理標本に、ヒト肺癌細胞の核に特異的に結合する蛍光標識抗TFF1抗体を結合させて作製する。
【0031】
先ず、距離測定部110において、対物レンズ14がカバーガラス33の上面にフォーカスされた際に、レンズ位置検出部15から出力されるレンズ位置情報を取得する(ステップS11)。ここで、カバーガラス33の上面への対物レンズ14のフォーカス動作は、カバーガラス33の上面に塗布された蛍光色素35の像を参照して、手動または自動で行われる。このカバーガラス33の上面のレンズ位置情報は、記憶部111に記憶される。
【0032】
次に、距離測定部110において、対物レンズ14がカバーガラス33の下面にフォーカスされた際に、レンズ位置検出部15から出力されるレンズ位置情報を取得する(ステップS12)。ここで、カバーガラス33の下面への対物レンズ14のフォーカス動作は、ステップS11の場合と同様に、カバーガラス33の下面に塗布された蛍光色素36の像を参照して、手動または自動で行われる。このカバーガラス33の下面のレンズ位置情報は、記憶部111に記憶される。なお、ステップS11とステップS12とは、逆の順序で行ってもよい。
【0033】
その後、距離測定部110は、距離算出部112において、記憶部111に記憶されているカバーグラス33の厚さ情報と、取得されたカバーガラス33の上下面のフォーカス位置に対応するレンズ位置情報とに基づいて、対物レンズ14のレンズ位置情報に対するフォーカス位置を示すフォーカス位置特性を算出する(ステップS13)。このフォーカス位置特性は、記憶部111に記憶される。
【0034】
以上のようにして対物レンズ14のフォーカス位置特性を算出したら、その後、距離算出部112は、レンズ位置検出部15からのレンズ位置情報および画像信号を受けると、算出されたフォーカス位置特性を用いてレンズ位置情報に対応する計測標本30の表面からのフォーカス位置の距離を算出する(ステップS14)。この算出された距離情報は、記憶部111に記憶されるとともに、蛍光物質定量部130に出力される。また、そのときの画像信号も蛍光物質定量部130に出力される。
【0035】
蛍光物質定量部130は、距離測定部110から距離情報を受けると、検量線選択部131において、受信した距離情報に対応する検量線を記憶部120から選択する(ステップS15)。この選択された検量線情報は、蛍光分子定量部132に供給される。
【0036】
その後、蛍光分子定量部132は、選択された検量線情報を用いて、受信した画像信号(蛍光画像)の蛍光物質を定量する(ステップS16)。その定量結果は、制御部140を介して表示部150に表示される(ステップS17)。
【0037】
このように、本実施の形態に係る蛍光顕微鏡システムによると、対物レンズ14がフォーカスされた計測標本30の表面からの距離に応じた検量線を選択して、当該フォーカス位置で取得された蛍光画像から蛍光物質を定量するので、蛍光の散乱の影響を低減でき、蛍光物質を高精度で定量することができる。特に、蛍光物質の蛍光波長領域が近赤外領域の波長の場合は、標本表面からの距離に応じた適切な検量線を選択することにより、標本表面からの距離がより長い場合においても、組織の散乱に影響されず正確に定量することが可能となる。
【0038】
また、本実施の形態においては、対物レンズ14のレンズ位置情報に対するフォーカス位置を示すフォーカス位置特性に基づいて、計測標本30の表面からの距離を測定するので、迅速な距離の測定が可能となり、測定時間の短縮が図れる。
【0039】
また、計測標本30が複数種類の蛍光物質で染色されている場合は、カメラ16として公知のマルチスペクトルカメラを用いることにより、複数種類の蛍光分子を自動で正確に定量することが可能となる。
【0040】
また、蛍光顕微鏡10として、共焦点レーザ顕微鏡を用いた場合は、蛍光の励起範囲を正確に限定することができるので、蛍光物質をより高精度で定量することが可能となる。
【0041】
(第2実施の形態)
本発明の第2実施の形態においては、第1実施の形態で説明した蛍光顕微鏡システムにおいて、プレパラート31のカバーグラス33の代わりにスライドグラス32を用いて、対物レンズ14のレンズ位置情報に対するフォーカス位置を示すフォーカス位置特性を算出する。そのため、図8にプレパラート31を拡大して示すように、スライドグラス32として、厚さd2が既知のもの、例えばd2=1000μmで、計測標本30が位置しない領域の上面および下面の位置に、それぞれ測定対象の蛍光色素37,38が塗布されているものを使用する。また、スライドグラス32上に載置される計測標本30は、厚さd3が、例えばd3≒5μmとする。
【0042】
また、距離測定部110の記憶部111には、使用されるスライドグラス32の厚さ情報の他、計測標本30の厚さ情報も記憶される。その他の構成は、第1実施の形態と同様である。
【0043】
以下、本実施の形態に係る蛍光顕微鏡システムによる蛍光物質の定量方法について、第1実施の形態の構成および図8を参照しながら、図9に示すフローチャートに従って説明する。
【0044】
先ず、距離測定部110において、対物レンズ14がスライドグラス32の上面に塗布された蛍光色素37にフォーカスされた際に、レンズ位置検出部15から出力されるレンズ位置情報を取得する(ステップS21)。次に、距離測定部110において、対物レンズ14がスライドグラス32の下面に塗布された蛍光色素38にフォーカスされた際に、レンズ位置検出部15から出力されるレンズ位置情報を、距離測定部110で取得する(ステップS22)。
【0045】
その後、距離算出部112において、記憶部111に記憶されているスライドグラス32の厚さ情報と、取得されたスライドグラス32の上下面のフォーカス位置に対応するレンズ位置情報とに基づいて、対物レンズ14のレンズ位置情報に対するフォーカス位置を示すフォーカス位置特性を算出する(ステップS23)。
【0046】
以上のようにして対物レンズ14のフォーカス位置特性を算出したら、その後、距離算出部112は、レンズ位置検出部15からのレンズ位置情報および画像信号を受けると、算出されたフォーカス位置特性および計測標本30の厚さ情報を用いて、レンズ位置情報に対応する計測標本30の表面からのフォーカス位置の距離を算出する(ステップS24)。
【0047】
ここで、計測標本30は、厚さd3がd3≒5μmに規定されている。したがって、受信したレンズ位置情報に基づいて、例えばスライドグラス32の上面からのフォーカス位置の距離を算出し、その距離を計測標本30の厚さである5μmから減算すれば、計測標本30の表面からのフォーカス位置の距離が算出される。この算出された距離情報は、記憶部111に記憶されるとともに、蛍光物質定量部130に出力される。また、そのときの画像信号も蛍光物質定量部130に出力される。
【0048】
以後は、図7のステップS15〜S17と同様にして、蛍光物質定量部130の検量線選択部131により、受信した距離情報に対応する検量線が記憶部120から選択され(ステップS25)、その選択された検量線情報を用いて、蛍光分子定量部132により、受信した画像信号(蛍光画像)の蛍光物質が定量され(ステップS26)、その定量結果が制御部140を介して表示部150に表示される(ステップS27)。
【0049】
したがって、本実施の形態においても、第1実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、蛍光顕微鏡として透過型蛍光顕微鏡を用い、暗視野観察により蛍光画像を取得して蛍光物質を定量することも可能である。この場合、バックグランドが真っ暗となり、微弱な蛍光から高いコントラストの画像を得ることができる。したがって、計測標本の表面からの距離(深さ)に応じた検量線を選択することと相俟って、蛍光物質を高精度かつ高感度で定量することが可能となる。
【0051】
また、蛍光顕微鏡のフォーカス位置特性は、対物レンズを含む顕微鏡光学系によって決定される。したがって、蛍光顕微鏡のフォーカス位置特性を利用し、そのフォーカス位置特性に、厚さが既知のカバーグラスの上面または裏面、あるいは厚さが既知のスライド上面または裏面のレンズ位置を予め対応付けることで、所望のレンズ位置情報に対する計測標本の表面からのフォーカス位置の距離を算出することも可能である。
【0052】
また、上記実施の形態では、対物レンズをカバーグラスやスライドグラスの上下面にフォーカスさせるために、それらの面に蛍光色素を塗布したが、使用する蛍光励起用光源によっては、蛍光色素以外の対物レンズをフォーカス可能な任意のマーカとすることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 蛍光顕微鏡
11 観察用光源
12 標本ステージ
13 蛍光励起用光源
14 対物レンズ
15 レンズ位置検出部
16 カメラ
30 計測標本
31 プレパラート
32 スライドグラス
33 カバーグラス
34 封入剤
35,36,37,38 蛍光色素
100 演算処理部
110 距離測定部
111 記憶部
112 距離算出部
120 記憶部
130 蛍光物質定量部
131 検量線選択部
132 蛍光分子定量部
140 制御部
150 表示部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光顕微鏡により計測標本の蛍光画像を取得し、その取得した蛍光画像から検量線を用いて蛍光物質を定量する蛍光顕微鏡システムであって、
前記蛍光画像を取得する前記計測標本の表面からの距離を測定する距離測定部と、
前記計測標本の表面からの距離に応じた複数の検量線を記憶する記憶部と、
前記距離測定部で測定された距離に対応する検量線を前記記憶部から選択し、該選択された検量線を用いて前記蛍光画像から前記蛍光物質を定量する蛍光物質定量部と、
を備えることを特徴とする蛍光顕微鏡システム。
【請求項2】
前記蛍光顕微鏡は、前記蛍光画像を結像するための対物レンズのレンズ位置を検出するレンズ位置検出部を有し、
前記距離測定部は、前記レンズ位置検出部からのレンズ位置情報に対する前記対物レンズのフォーカス位置を示すフォーカス位置特性に基づいて前記計測標本の表面からの距離を測定する、ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項3】
前記蛍光顕微鏡は、共焦点レーザ顕微鏡からなる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項4】
前記蛍光顕微鏡は、透過型蛍光顕微鏡からなり、暗視野観察により前記蛍光画像を取得する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項5】
前記蛍光顕微鏡は、前記計測標本から近赤外領域の蛍光画像を取得するものである、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項6】
前記蛍光顕微鏡は、前記蛍光画像を取得するマルチスペクトルカメラを有する、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項7】
蛍光顕微鏡により計測標本の蛍光画像を取得し、その取得した蛍光画像から検量線を用いて蛍光物質を定量するにあたり、
距離測定部において、前記蛍光画像を取得する前記計測標本の表面からの距離を測定するステップと、
蛍光物質定量部において、測定された前記距離に対応する検量線を記憶部から選択し、その選択された検量線を用いて前記蛍光画像から前記蛍光物質を定量するステップと、
を含むことを特徴とする蛍光物質の定量方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−11527(P2013−11527A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144748(P2011−144748)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】