説明

蛍光顕微鏡装置

【課題】操作者の手間を必要とすることなく蛍光領域に対して露出が最適に調節された鮮明な蛍光画像を取得する。
【解決手段】静止した被写体Aに励起光を照射する光源部2と、励起光の照射による被写体Aからの蛍光を撮像する撮像部20と、該撮像部20によって撮像された蛍光画像から蛍光領域を抽出する蛍光領域抽出部33と、該蛍光領域抽出部33によって抽出された蛍光領域の輝度に基づいて撮像部20の露出時間を決定する露出時間決定部34と、撮像部20の露出時間および撮像動作を制御する制御部35とを備え、該制御部35は、撮像部20を、同一の露出時間で同一の視野を複数回予備撮像した後に露出時間決定部34によって決定された露出時間で本撮像するように制御し、蛍光領域抽出部33は、撮像部20によって予備撮像された複数の蛍光画像間において輝度が経時的に低下している領域を蛍光領域として抽出する蛍光顕微鏡装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、CCD等の撮像素子によって画像を取得する顕微鏡装置において、画像の全体または一部の明るさを測定し、その測定値に基づいて撮像素子の露出時間を決定するものが知られている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−4203号公報
【特許文献2】特開2000−137168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、顕微鏡本体から撮像素子に導光される光の一部を分岐し、分岐された光を測定する構成となっている。したがって、比較的構成が大掛かりになる、また、光軸の調整など操作者によるメンテナンスが必要となるという不都合がある。さらに、特許文献1の装置で蛍光画像を観察する場合、測光される領域に明るい蛍光領域と暗い背景領域とが混在するため、測光値は蛍光領域の明るさよりも暗い値となる。その結果、観察対象である蛍光領域に対しては撮像素子の露出が過剰になり蛍光領域が不鮮明に写されてしまうという問題がある。
【0005】
これに対して特許文献2の装置は、操作者によって指定されたスポット領域を測光することにより蛍光領域に対する露出時間を適正に調節している。しかし、例えば、細胞骨格のような微細で複雑な構造が蛍光観察の対象である場合、スポット領域を蛍光領域のみが含まれるように正確に指定することは困難であり、スポット領域には背景領域も含まれてしまう。すなわち、特許文献1と同様に蛍光領域に対して撮像素子の露出が過剰になるという問題が残る。また、操作者による操作が必要となるという不都合がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、操作者の手間を必要とすることなく蛍光領域に対して露出が最適に調節された鮮明な蛍光画像を取得することができる顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、静止した被写体に励起光を照射する光源部と、前記励起光の照射により前記被写体から発生させられた蛍光を撮像する撮像部と、該撮像部によって撮像された蛍光画像から蛍光領域を抽出する蛍光領域抽出部と、該蛍光領域抽出部によって抽出された蛍光領域の輝度に基づいて前記撮像部の露出時間を決定する露出時間決定部と、前記撮像部の露出時間および撮像動作を制御する制御部とを備え、該制御部は、前記撮像部を、同一の露出時間で同一の視野を複数回予備撮像した後に前記露出時間決定部によって決定された露出時間で本撮像するように制御し、前記蛍光領域抽出部は、前記撮像部によって予備撮像された複数の蛍光画像間において輝度が経時的に低下している領域を前記蛍光領域として抽出する蛍光顕微鏡装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、撮像部は、光源部から被写体に照射された励起光によって励起された蛍光を同一の露出時間で複数回予備撮像した後、予備撮像された複数の蛍光画像に基づいて露出時間決定部によって決定された露出時間で本撮像するように制御部によって制御される。露出時間決定部は、予備撮像された蛍光画像から蛍光領域抽出部によって抽出された蛍光領域の輝度に基づいて本撮像の露出時間を決定する。したがって、操作者の手間を必要とすることなく、蛍光領域に対して露出が調節された蛍光画像を本撮像により取得することができる。
【0009】
この場合に、蛍光領域抽出部によって抽出される蛍光領域は、蛍光の褪色によって減光した領域であり、蛍光を発生している観察対象の構造と正確に一致した領域が抽出される。これにより、露出時間決定部により決定される露出時間は蛍光領域に対して適切な値となり、本撮像においては蛍光領域に対して露出が最適に調節された鮮明な蛍光画像を取得することができる。
【0010】
上記発明においては、前記撮像部によって本撮像された蛍光画像から、前記蛍光領域抽出部によって抽出された蛍光領域を除いた背景領域と対応する領域の輝度を除去する画像処理部を備えることとしてもよい。
このようにすることで、背景領域がより暗く表示され、蛍光領域と背景領域とのコントラストがさらに高く調節された蛍光画像を最終的に観察することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記蛍光領域抽出は、輝度が経時的に低下し、かつ、所定の閾値以上の輝度を有している領域を前記蛍光領域として抽出することとしてもよい。
このようにすることで、予備撮像された複数の蛍光画像間においてノイズが要因で輝度が低下した領域や自家蛍光が減光した領域を蛍光領域から除去し、さらに正確に蛍光領域を抽出することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記撮像部が撮像していないときに前記被写体に対して前記励起光を遮断する遮光手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、撮像時以外は被写体への照明光の照射を停止することにより蛍光の不要な褪色を防ぎ、撮像を繰り返しても毎回鮮明な蛍光画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操作者の手間を必要とすることなく蛍光領域に対して露出が最適に調節された鮮明な蛍光画像を取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る蛍光顕微鏡装置の全体構成図である。
【図2】図1の蛍光顕微鏡装置の作動方法を説明するフローチャートである。
【図3】図1の蛍光顕微鏡装置の作動方法の変形例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る顕微鏡装置100は、図1に示されるように、顕微鏡本体(以下、本体という。)10と、該本体10のカメラポート7に接続され撮像素子21を有する撮像ユニット(撮像部)20と、該撮像ユニット20の動作を制御する制御ユニット30とを備えている。
【0016】
本体10は、観察対象が蛍光標識された試料(被写体)Aが載置されるステージ1と、照明光を射出する光源部2と、試料Aに対向して配置される対物レンズ3と、接眼レンズ4と、照明光および試料Aから発生させられた蛍光を導光する光学経路5とを備えている。図1には、本体10として正立型光学顕微鏡を例示しているが、倒立型光学顕微鏡または走査型光学顕微鏡が用いられてもよい。
【0017】
ステージ1は、ハンドル6の回転によって対物レンズ3の光軸方向に沿って上下に移動可能となっている。試料Aは、例えば、予め固定された細胞等であり、観察対象は静止した状態に維持されている。
対物レンズ3は、光学経路5から入射された励起光(後述)を試料Aに集光するとともに、試料Aからの蛍光を集光する。
【0018】
光源部2は、白色の照明光を放射するキセノンランプや水銀ランプなどの光源2aと、開閉することにより光源2aと光学経路5との間の光路を開放または遮断するシャッタ(遮光手段)2bとを備えている。シャッタ2bは、後述する制御部35によって、撮像素子21が撮像するときは開状態に、撮像素子21が撮像しないときは閉状態に制御される。このように撮像時のみ励起光が試料Aに照射されることにより、蛍光の不要な褪色が防止され、撮像を繰り返し行った場合でも毎回十分に鮮明な蛍光画像を得ることができる。
【0019】
光学経路5は、光源部2からの照明光から励起光を抽出する励起光フィルタ5aと、該励起光フィルタ5aによって抽出された励起光を対物レンズ3の光軸に沿う方向に反射するとともに対物レンズ3によって集光された蛍光を透過させるダイクロイックミラー5bと、該ダイクロイックミラー5bを透過した蛍光をカメラポート7と接眼レンズ4とに分岐するビームスプリッタ5cとを備えている。符号5dは、ダイクロイックミラー5bを透過した光のうち励起光をカットする吸収フィルタである。
【0020】
撮像ユニット20は、ビームスプリッタ5cによってカメラポート7の方向に分岐された蛍光を撮像素子21によって撮像する。撮像素子21は、撮像した蛍光画像を制御ユニット30が備える記憶部31に出力する。
【0021】
制御ユニット30は、後述するように予備撮像モードによって撮像された第1および第2の蛍光画像を少なくとも一次的に記憶する記憶部31と、第1の蛍光画像から最大輝度Imaxを検出する最大輝度検出部32と、第1および第2の蛍光画像から蛍光領域を抽出する蛍光領域抽出部33と、蛍光領域抽出部33によって抽出された蛍光領域の輝度に基づいて撮像素子21の露出時間を決定する露出時間決定部34と、予備撮像モードおよび本撮像モードで撮像素子21の露出時間および撮像動作を制御する制御部35とを備えている。
【0022】
記憶部31は、予備撮像モードによって撮像素子21が撮像した第1の蛍光画像および第2の蛍光画像を、異なるタグを付すなどすることにより、識別可能に記憶する。記憶部31は、撮像素子21から第1の蛍光画像が新たに入力されたときは、それまで記憶していた第1の蛍光画像を削除して新しい第1の蛍光画像に置き換えることにより第1の蛍光画像を更新する。
【0023】
最大輝度検出部32は、記憶部31に記憶された第1の蛍光画像を読み出し、読み出した第1の蛍光画像の輝度のうち最大輝度Imaxを検出する。最大輝度検出部32は、検出した最大輝度Imaxを制御部35に出力する。最大輝度検出部32は、記憶部31が第1の蛍光画像を更新する度に、最大輝度Imaxの検出と制御部35への出力とを行う。
【0024】
蛍光領域抽出部33は、第1の蛍光画像と第2の蛍光画像とを記憶部31から読み出し、これらの画像の対応する画素同士の輝度を比較し、第1の蛍光画像よりも第2の蛍光画像の方が輝度が低い画素群を蛍光領域として抽出する。第1の蛍光画像および第2の蛍光画像は、後述するように同一の撮像条件で撮像された画像である。すなわち、蛍光領域抽出部33は、蛍光の褪色によって減光した領域を蛍光領域として抽出する。蛍光領域の各画素の輝度は、第2の蛍光画像における輝度が採用される。
【0025】
ここで、蛍光領域抽出部33は、蛍光画像の輝度に対する所定の閾値を有し、減光した領域のうち所定の閾値以上の輝度を有する画素群を蛍光領域として抽出し、所定の閾値未満の輝度を有する画素群を蛍光領域から除外することとしてもよい。このようにすることで、ノイズや観察対象以外から発生させられる微弱な自家蛍光によって輝度が減少した領域が蛍光領域から排除される。これにより、観察対象の構造により正確に一致した領域を蛍光領域として抽出することができる。
【0026】
露出時間決定部34は、蛍光領域抽出部33によって抽出された蛍光領域を構成する画素群の各輝度のうち最大蛍光輝度Fmaxを検出する。そして、露出時間決定部34は、検出した最大蛍光輝度Fmaxに基づいて本撮像のための第2の露出時間t2を決定する。第2の露出時間t2は、例えば、t2=k×Isat/Fmax×t1の関係式から算出される。kは、0より大きく1以下の係数であり、例えば、0.9に設定される。露出時間決定部34は、決定した第2の露出時間t2を制御部35に出力する。
【0027】
制御部35は、予備撮像モードにおいて、初期設定された第1の露出時間t1で第1の蛍光画像を撮像素子21に撮像させた後、最大輝度検出部32から入力された最大輝度Imaxが所定の範囲内の値になるまで第1の露出時間t1を再設定しながら撮像素子21に撮像を繰り返させる。
【0028】
具体的には、最大輝度Imaxが撮像素子21の飽和出力電圧に相当する飽和輝度Isatである場合、第1の露出時間t1を半分に再設定する。一方、最大輝度Imaxが飽和輝度Isatの半分より小さい場合、第1の露出時間t1を所定の時間Δtだけ、例えば、時間t1だけ長い時間に再設定する。制御部35は、このように第1の露出時間t1の再設定を繰り返し、蛍光画像内の最大輝度Imaxが飽和輝度Isatの半分以上かつ飽和輝度Isatよりも小さい範囲内となる第1の露出時間t1を決定する。すなわち、観察対象の最も蛍光の強い部分の露出量が、撮像素子21のダイナミックレンジのうち半分以上の範囲内に収まるような第1の露出時間t1が決定される。
【0029】
制御部35は、第1の露出時間t1の再設定を繰り返した結果、第1の露出時間t1が所定の最大時間tmax、例えば、1秒よりも大きくなった場合は、第1の露出時間t1の再設定に代えて撮像素子21の画素をビニングし、観察対象の最も蛍光の強い部分の露出量が撮像素子21のダイナミックレンジのうち半分以上の範囲内に収まるようなビニング数を決定する。
【0030】
具体的には、制御部35は、撮像素子21の隣接する所定の数の画素、例えば、縦方向および横方向に隣接する4つの画素の輝度を加算し、これらの複数の画素を1つの画素とみなす。制御部35は、加算された輝度のうち最大輝度Imaxが所定の範囲内となるまでビニングする画素の数(ビニング数)を段階的に増加させる。このように、第1の露出時間t1に対して上限を設けることにより、露出時間が過剰に長くなることによるノイズの増大や像のブレを防ぐことができる。
【0031】
次に、制御部35は、決定された第1の露出時間t1およびビニング数で第2の蛍光画像を撮像素子21に予備撮像させて予備撮像モードを終了する。これにより、記憶部31には、蛍光領域抽出部33が蛍光領域の抽出に用いる、第1の露出時間t1、ビニング数および視野が同一の第1および第2の蛍光画像が記憶される。
次に、制御部35は、本撮像モードに移行し、露出時間決定部34によって第2の露出時間が決定された後に該第2の露出時間t2および予備撮像により決定したビニング数で撮像素子21に本撮像させる。
【0032】
次に、このように構成された蛍光顕微鏡装置100の作用について図2を参照して説明する。
本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100は、例えば、図示しない入力手段により操作者から予備撮像モードの開始が指示されることにより予備撮像を開始する。
【0033】
まず、制御部35は、撮像素子21によって第1の露出時間t1で蛍光を予備撮像させ(ステップS1)、最大輝度検出部32によって検出された(ステップS2)蛍光画像内の最大輝度Imaxが飽和しているときは(ステップS3のYES)第1の露出時間t1を半分に短縮し(ステップS4)、最大輝度Imaxが飽和輝度Isatの半分より小さいときは(ステップS5のNO)第1の露出時間t1を時間Δtだけ延長し(ステップS7)、再設定した第1の露出時間t1で再度第1の蛍光画像を予備撮像する(ステップS1)。これにより、第1の蛍光画像内において観察対象が十分に鮮明に撮像される第1の露出時間t1を決定する。
【0034】
制御部35は、第1の露出時間t1の延長により第1の露出時間t1が所定の最大時間tmaxよりも長くなったときは(ステップS6のYES)、最後に再設定された第1の露出時間t1を維持し、撮像素子21の画素をビニングし(ステップS8)、第1の蛍光画像内において観察対象が十分に鮮明に撮像されるビニング数を決定する。制御部35は、決定した第1の露出時間t1およびビニング数で再度蛍光を予備撮像することにより第2の蛍光画像を取得して予備撮像モードを終了する(ステップS9)。
【0035】
次に、蛍光領域抽出部33が、同一の撮像条件で予備撮像された2つの蛍光画像間において減光している領域を蛍光領域として抽出する(ステップS10)。露出時間決定部34は、抽出された蛍光領域の最大蛍光輝度Fmaxを検出し(ステップS11)、該最大蛍光輝度Fmaxに基づいて本撮像の第2の露出時間t2を決定する(ステップS12)。制御部35は、露出時間決定部34から入力された第2の露出時間t2で本撮像モードにより撮像素子21に本撮像させる(ステップS13)。本撮像された蛍光画像は表示部40に出力される。これにより、操作者は、露出が調節された最終的な蛍光画像を観察することができる。
【0036】
このように、本実施形態によれば、予備撮像された2つの蛍光画像内から蛍光の褪色に基づいて蛍光領域が抽出され、抽出された蛍光領域に対して本撮像の第2の露出時間t2が決定される。抽出される蛍光領域は、観察対象の構造と正確に一致した領域となるので、第2の露出時間t2を蛍光領域に対して適切な値に決定して最適な露出で観察対象からの蛍光を撮像することができる。また、操作者による特別な操作を不要とし、簡便な操作のみで撮像素子21の露出を最適化することができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、露出時間決定部34が、抽出された蛍光領域内の最大蛍光輝度Fmaxに基づいて第2の露出時間t2を決定することとしたが、これに代えて、蛍光領域を構成する画素群の輝度の平均値に基づいて第2の露出時間t2を決定することとしてもよい。
【0038】
蛍光領域抽出部33による蛍光領域の抽出方法によれば、観察対象が微細で複雑な構造を有する場合であっても、観察対象の構造と正確に一致した領域が蛍光領域として抽出され、観察対象を含まない背景領域が蛍光領域とともに抽出されることが防止される。したがって、抽出された蛍光領域全体の輝度の平均値に基づいて第2の露出時間t2を決定しても、蛍光領域に対して第2の露出時間t2が過剰となることなく、最適な露出で本撮像することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、本撮像された蛍光画像のうち蛍光領域以外の背景領域の輝度を十分に小さい値にまで補正する画像処理部(図示略)を備えることとしてもよい。具体的には、図3に示されるように、蛍光領域を抽出すると同時に(ステップS10)、蛍光領域以外の背景領域を抽出する(ステップS14)。そして、本撮像された蛍光画像のうち背景領域と対応する領域の輝度を十分に小さい値に、好ましくは0に除去する(ステップS15)。このようにすることで、観察対象以外から発生させられた蛍光や撮像素子21の電気的なノイズによるバックグラウンドを除去し、蛍光領域と背景領域とのコントラストがさらに良好な蛍光画像を最終的に観察することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、予備撮像された2つの蛍光画像を比較することにより蛍光領域を抽出することとしたが、これに代えて、3つ以上の蛍光画像を予備撮像し、経時的に輝度が連続して低下する領域を蛍光領域として抽出することとしてもよい。
このようにすることで、撮像素子21のノイズ等による各画素の輝度の変動の影響を低減し、蛍光領域をさらに正確に抽出することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、本撮像を複数回繰り返し行うこととしてもよい。この場合、2回目以降の本撮像の露出時間は、直前に本撮像された蛍光画像の最大蛍光輝度Fmaxに基づいて決定すればよいので、予備撮像を再度行う必要はない。
【符号の説明】
【0042】
1 ステージ
2 光源部
2a 光源
2b シャッタ(遮光手段)
3 対物レンズ
4 接眼レンズ
5 光学経路
5a 励起光フィルタ
5b ダイクロイックミラー
5c ビームスプリッタ
5d 吸収フィルタ
6 ハンドル
7 カメラポート
10 顕微鏡本体
20 撮像ユニット(撮像部)
21 撮像素子
30 制御ユニット
31 記憶部
32 最大輝度検出部
33 蛍光領域抽出部
34 露出時間決定部
35 制御部
40 表示部
100 蛍光顕微鏡装置
A 試料(被写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止した被写体に励起光を照射する光源部と、
前記励起光の照射により前記被写体から発生させられた蛍光を撮像する撮像部と、
該撮像部によって撮像された蛍光画像から蛍光領域を抽出する蛍光領域抽出部と、
該蛍光領域抽出部によって抽出された蛍光領域の輝度に基づいて前記撮像部の露出時間を決定する露出時間決定部と、
前記撮像部の露出時間および撮像動作を制御する制御部とを備え、
該制御部は、前記撮像部を、同一の露出時間で同一の視野を複数回予備撮像した後に前記露出時間決定部によって決定された露出時間で本撮像するように制御し、
前記蛍光領域抽出部は、前記撮像部によって予備撮像された複数の蛍光画像間において輝度が経時的に低下している領域を前記蛍光領域として抽出する蛍光顕微鏡装置。
【請求項2】
前記撮像部によって本撮像された蛍光画像から、前記蛍光領域抽出部によって抽出された蛍光領域を除いた背景領域と対応する領域の輝度を除去する画像処理部を備える請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項3】
前記蛍光領域抽出は、輝度が経時的に低下し、かつ、所定の閾値以上の輝度を有している領域を前記蛍光領域として抽出する請求項1または請求項2に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項4】
前記撮像部が撮像していないときに前記被写体に対して前記励起光を遮断する遮光手段を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の蛍光顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−20204(P2013−20204A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155604(P2011−155604)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】