蛍光X線分析用試料保持具ならびにそれを用いる蛍光X線分析方法および装置
【課題】液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具ならびにそれを用いる蛍光X線分析方法および装置において、蛍光X線分析用試料保持具からの不純線をなくし、バックグラウンドを抑制して検出限界を向上させるとともに分析精度を向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明の蛍光X線分析用試料保持具1は、液体試料Sを前処理して含有成分S1を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具1であって、輪状の台座2と、台座2に所定の張力で保持される周辺部3aおよびX線を透過させるための透過部3bを有する厚さ12μm以下の熱収縮性フィルム3とを備え、透過部3bに窪み3cが形成されており、透過部の窪み3cに液体試料Sが滴下されて乾燥されることにより、透過部3bが平坦になるとともに、含有成分S1を保持する。
【解決手段】本発明の蛍光X線分析用試料保持具1は、液体試料Sを前処理して含有成分S1を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具1であって、輪状の台座2と、台座2に所定の張力で保持される周辺部3aおよびX線を透過させるための透過部3bを有する厚さ12μm以下の熱収縮性フィルム3とを備え、透過部3bに窪み3cが形成されており、透過部の窪み3cに液体試料Sが滴下されて乾燥されることにより、透過部3bが平坦になるとともに、含有成分S1を保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具ならびにそれを用いる蛍光X線分析方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するための技術として、ろ紙に液体試料を滴下して乾燥させることにより含有成分を濃縮し、かつ保持させるろ紙点滴法がある。しかし、ろ紙の厚さは数100μmあるため、1次X線の散乱線が多く発生してバックグラウンドが高くなる。この散乱X線によるバックグラウンドを抑制するために、厚さ0.5μm程度のポリマーフィルムにカーボンなどの蒸着膜を形成して、その蒸着膜を形成した部位に液体試料を滴下して乾燥させることにより含有成分を保持させる技術がある(特許文献1)。しかし、蒸着膜はきわめて薄く、しかも液体試料を均一に凝縮させるために蒸着膜の直径を約2mmまでとしているので、一回に滴下できる量は、ろ紙の場合の滴下量の同等以下となる。したがって、ろ紙よりも薄いポリマーフィルムおよび蒸着膜の使用によりバックグラウンドは低くなるものの、得られる蛍光X線の強度は増大しないため、検出限界の向上は十分ではない。
【0003】
そこで、バックグラウンドを抑制するとともに、より大きい強度の蛍光X線を均一に発生させることにより、検出限界を十分に向上できる液体試料保持具として、輪状の台座と、その台座に保持される周辺部およびX線を透過させるための透過部を有する疎水性フィルムと、その疎水性フィルムの透過部に貼付されたシート状の液体吸収材とを備え、その液体吸収材に前記液体試料が滴下されて乾燥されることにより、前記含有成分を保持する液体試料保持具がある(特許文献2)。この液体試料保持具は、液体吸収材に前記液体試料の含有成分が保持されるので、1回に500μl程度の多量の液体試料を点滴することができ、さらに液体試料の点滴と乾燥を繰り返し行うことにより数mlの試料を点滴乾燥することができるので、測定対象元素の含有量が微量の試料の測定に適している。
【0004】
特許文献1に記載の液体試料保持具はポリマーフィルムにカーボンなどの蒸着膜を形成しており、特許文献2に記載の液体試料保持具は疎水性フィルムに貼付されたシート状の液体吸収材を備えているので、1次X線が照射されると、このカーボン蒸着膜や液体吸収材に含まれているMg、Al、P、Sなどの軽元素の不純線が発生する。そこで、カーボン蒸着膜や液体吸収材を有しておらず、極薄のポリマーフィルムに直径2mmの窪みを成形した試料保持具がMOXTEK社から販売されている。
【特許文献1】特開2003−90810号公報
【特許文献2】特表2005−012889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、MOXTEK社の試料保持具は、ポリマーフィルムを成形して製作されているので、点滴された液体試料Sの乾燥前の試料保持具50の状態を示す断面図10Aおよび点滴された液体試料Sの乾燥後の試料保持具50の状態を示す断面図10Bに示すように、液体試料Sが点滴される窪み54は、液体試料Sの乾燥後であっても乾燥前と同様に窪んでいるが、液体試料Sの乾燥段階においてポリマーフィルム53に少し変形が生じ、個々の試料保持具50によって窪み54に保持されている液体試料の含有成分S1の高さが変動し、検出される蛍光X線の強度が変動する。そのため、精度よく分析することができない。
【0006】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具ならびにそれを用いる蛍光X線分析方法および装置において、蛍光X線分析用試料保持具からの不純線をなくし、バックグラウンドを抑制して検出限界を向上させるとともに分析精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の蛍光X線分析用試料保持具は、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具であって、輪状の台座と、その台座に所定の張力で保持される周辺部およびX線を透過させるための透過部を有する厚さ12μm以下の熱収縮性フィルムとを備え、前記透過部に窪みが形成されており、その透過部の窪みに前記液体試料が滴下されて乾燥されることにより、前記透過部が平坦になるとともに、前記含有成分を保持する。
【0008】
本発明の蛍光X線分析用試料保持具によれば、1次X線が照射される熱収縮性フィルムの透過部には従来技術のカーボン蒸着膜や液体吸収材などの液体試料保持材を有しておらず、熱収縮性フィルムの透過部に形成された窪みに液体試料を保持するので、1次X線が照射されても不純線が発生することがない。また、液体試料保持材を有していないので、照射される1次X線による散乱線の発生がほとんどなく、バックグラウンドを大幅に抑制することができる。これらにより検出限界を十分に向上できる。また、液体試料が乾燥されることにより、前記透過部が平坦になり、測定時の試料高さは常に一定の高さになるので、精度のよい分析を行うことができる。
【0009】
本発明の蛍光X線分析用試料保持具においては、前記熱収縮性フィルムが、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリイミドの一群から選ばれた1つからなることが好ましい。
【0010】
本発明の蛍光X線分析方法は、本発明の蛍光X線分析用試料保持具を用いる蛍光X線分析方法であって、前記透過部の窪みに液体試料を滴下して乾燥させることにより、前記透過部を平坦にするとともに、前記透過部の窪みであった部位に前記液体試料の含有成分を保持させ、前記透過部の窪みであった部位に1次X線を照射して、発生する2次X線の強度を測定する。
【0011】
本発明の蛍光X線分析装置は、本発明の蛍光X線分析用試料保持具を用いる蛍光X線分析装置であって、液体試料が滴下されて乾燥されることにより前記液体試料の含有成分を保持した前記透過部の窪みであった部位に1次X線を照射するX線源と、前記透過部の窪みであった部位から発生する2次X線の強度を測定する検出手段とを備える。
【0012】
本発明の蛍光X線分析方法および装置によれば、本発明の蛍光X線分析用試料保持具を用いるので、本発明の蛍光X線分析用試料保持具と同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態である蛍光X線分析用試料保持具について説明する。図1に示すように、この試料保持具1は、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられるものであって、熱収縮性フィルム3を安定に保持するための輪状の台座2と、その台座2に所定の張力で保持される周辺部3aおよびX線を透過させるための透過部3bを有する熱収縮性フィルム3とを備えている。透過部3bにおいて窪んでいる部位である窪み3cに液体試料Sが滴下されて乾燥されることにより、透過部3bが平坦になるとともに、窪み3cであった部位に液体試料Sの含有成分を濃縮し、保持する。例えば、台座2は外径50mm、内径30mm、厚さ1mmの輪状であり、ポリエチレン、ポリスチレンなどの樹脂材料からなる。例えば、熱収縮性フィルム3は厚さ12μm以下、好ましくは2〜6μmのポリエステル、ポリプロピレン、ポリイミドなどからなり、材質としてはポリプロピレンがより好ましい。
【0014】
図2に縦断面図を示すが、ここでは、熱収縮性フィルム3は、直径が台座2の外径と同径の円形で、周辺部3aが台座2に所定の張力で保持されている。所定の張力で保持する方法については後述する。周辺部3aを除いた部分は、X線を透過させるための透過部3bであり、この透過部3bに窪み3cが形成されている。窪み3cは、例えば深さが約1mm、平面視で直径が約10mmの円形である。窪み3cの形状は上記に限らず、平面視で楕円形、矩形など点滴された液体試料が保持できる窪んだ形状であり、加熱されることにより熱収縮して平坦になる形状であればよい。また、寸法も上記に限らず、深さ0.5〜2mm、平面視での最大長さ5〜20mmが好ましく、深さと最大長さの寸法比では、1:3〜1:20が好ましく、1:8〜1:15がより好ましい。図1と図2では、台座2の内周は、熱収縮性フィルム3の下に隠れるので破線で示しているが、実際には透けて見える。
【0015】
熱収縮性フィルム3を所定の張力で台座2に保持する方法について説明する。試料保持具1の第1製作手順である図4Aに示すように、台座2と同じ内外径を有する円筒21の上面21aに熱収縮性フィルム3を被せる。次に、試料保持具1の第2製作手順である図4Bに示すように、被せられた熱収縮性フィルム3の上から伸張リング22を円筒21に嵌めこみ、円筒21の側面に沿って下方にスライドさせながら円筒21の上面21aで熱収縮性フィルム3がぴんと張った状態になるように伸張する。伸張リング22は、円筒21の外径よりも少し小さい内径を有し、例えば弾性を有するゴムや樹脂材料で形成されており、その弾力により熱収縮性フィルム3に密着して熱収縮性フィルム3を引っ張りながらスライドするので、ぴんと張った状態に伸張することができる。
【0016】
次に、試料保持具1の第3製作手順である図4Cに示すように、例えばスプレーのり(成分はアクリルゴム(10%)、有機溶剤(54%)およびイソヘキサンガス(36%)で、噴射用高圧ガスはジメチルエーテル)を台座2の一方の面に吹き付けて、台座2の外周を熱収縮性フィルム3が伸張された円筒の上面21aの外周に合わせて貼付する。次に、伸張リング22を円筒21から取除き、台座2の外周からはみ出している熱収縮性フィルム3を切り取ると、試料保持具1の第4製作手順である図4Dに示すように、熱収縮性フィルム3が台座2に所定の張力で保持された薄膜リング5ができる。
【0017】
熱収縮性フィルム3をぴんと張った状態に伸張する方法については上記の方法に限らず、他の方法であってもよい。例えば板上に前記円筒21の筒長さを短くした円筒を複数個有する伸張板の円筒の上方から、1枚の熱収縮性フィルム3を所定の張力で引っ張りながら被せて固定する。その後、前記と同様にして台座2を複数の円筒のそれぞれの上面部分の熱収縮性フィルム3に貼付し、台座2の外周からはみ出している熱収縮性フィルム3を切り取る。
【0018】
次に、薄膜リング5に窪み3cを形成する方法について説明する。図4Eに示すような、例えば、厚さが1mm、外径29mm、内径10mmである、輪状の窪み成形冶具23を準備する。窪み成形冶具23は台座2と同じ材質であるポリエチレン、ポリスチレンなどの樹脂材料からなるのが好ましい。次に、例えば直径10mm、長さ100mm、一方の端面が半球面である円柱で、ポリエチレンやテフロン(登録商標)などの合成樹脂製の押圧冶具24を準備する。準備した輪状の窪み成形冶具23と押圧冶具24を用いて以下のように窪み3cを形成する。
【0019】
試料保持具1の第5製作手順の縦断面図である図4Eに示すように、窪み成形冶具23を平坦な台30の上に載置し、その上から熱収縮性フィルム3を上にして薄膜リング5の台座2の内周の中に窪み成形冶具23が入るように載置する。試料保持具1の第5製作手順の平面図である図4Fに示すように、透過部3bの下に窪み成形冶具23が透けて見える。試料保持具1の第6製作手順である図4Gに示すように、押圧冶具24の半球面の端面24aを下方にし、その外周を窪み成形冶具23の内周に合わせて、薄膜リング5の上方から、熱収縮性フィルム3の透過部3bを押圧し、押圧冶具24を持ち上げる。透過部3bが押圧されると、試料保持具1の第7製作手順である図4Hに示すように、透過部3bに窪み3cが形成される。窪み3cを形成する方法については、上記の方法に限らず、クリーンな空気や窒素ガスなどを透過部3bに吹き付けるなど他の方法であってもよい。
【0020】
この試料保持具1を用いる蛍光X線分析においては、図5に示すように、窪み3cに液体試料Sを滴下する。ここで、窪み3cはその周囲の透過部3bより窪んでいるので、液体試料Sは窪み3cから周囲に転がることがなく、窪み3cで安定に保持される。そして、滴下した液体試料Sを適切な加熱乾燥器具により40〜60℃に加熱乾燥させると、透過部3bの熱収縮性フィルム3の熱収縮により、もとと同程度の張力が発生して透過部3bは平坦になる。これにより、図3の縦断面図に示すように、窪み3cであった部位3dはその周囲の透過部3bと同一高さになるとともに、窪み3cであった部位3dに液体試料Sの含有成分S1が保持される。
【0021】
試料保持具1に点滴された液体試料Sを乾燥させる加熱乾燥器具としては、理化学機器として市販されている加熱ランプ、加熱乾燥器が好ましい。特願2007−220016号に記載されている試料乾燥装置(商品名 ウルトラドライ)を用いると、液体試料を汚染させないで乾燥させることができるので、より好ましい。試料保持具1を蛍光X線分析装置の試料台へ載置して、液体試料Sの含有成分S1を保持した透過部3bの窪み3cであった部位3dに1次X線を照射して蛍光X線分析を行う。試料保持具1を蛍光X線分析装置の試料台へ載置する方法については、後述する。
【0022】
本実施形態の試料保持具1を用いて、この測定溶液の滴下量を500μlとして測定した測定データを図6および図7に示す。図6は軽元素の各元素毎の測定データであり、図7は重元素の定性分析チャートである。測定溶液は、Na、Mg、Al、Si、P、Cl、K、Ca、Ba、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Tl、Pbを含有する市販の混合標準溶液を蒸留水で希釈して、K、Pの濃度は5ppm(重量ppm。以下同じ)に、SiはSiO2として5ppmに、その他の元素の濃度は1ppmになるように調整した。この測定データ(図6および図7)によれば、試料保持具1からの不純線がなくなり、また散乱線の発生がほとんどなく、バックグラウンドを大幅に抑制できていることがわかる。
【0023】
以上のように、本実施形態の蛍光X線分析用試料保持具1によれば、1次X線が照射される熱収縮性フィルムの透過部3bにはカーボン蒸着膜や液体吸収材などの液体試料保持材を有しておらず、従来の試料保持具が有しているろ紙に含まれているMg、Al、P、Sなどの軽元素による不純線が発生しない。また、液体試料保持材を有していないので、照射される1次X線による散乱線の発生がほとんどなく、バックグラウンドを大幅に抑制することができる。これらにより検出限界を十分に向上でき、特に軽元素においてその効果は顕著である。
【0024】
滴下された液体試料Sが乾燥されると、透過部3bの熱収縮性フィルム3の熱収縮により、もとと同程度の張力が発生して透過部3bは平坦になる。これにより、図3の縦断面図に示すように、窪み3cであった部位3dはその周囲の透過部3bと同一高さになるとともに、窪み3cであった部位3dに液体試料Sの含有成分S1が保持される。このように測定時の試料高さは常に一定の高さになるので、精度のよい分析を行うことができる。また、カーボン蒸着膜や液体吸収材を備えていないので、蛍光X線分析用試料保持具1ならびにそれを用いる蛍光X線分析方法および装置のコストを低くすることができる。
【0025】
次に、本発明の第2実施形態の蛍光X線分析方法について説明する。この分析方法に使用される蛍光X線分析装置10は、本発明の第3実施形態であり、図8に示すように、第1実施形態の蛍光X線分析用試料保持具1を用いる装置であって、試料保持具1が直接または試料ホルダ18を介して載置される試料台である試料ステージ17と、液体試料Sが滴下されて乾燥されることにより、液体試料Sの含有成分S1を保持した窪み3cであった部位3dに1次X線12を照射するX線管などのX線源11と、窪み3cであった部位3dから発生する蛍光X線などの2次X線15の強度を測定するX線検出器などの検出手段16とを備えている。
【0026】
この装置を使用する第2実施形態の蛍光X線分析方法は、第1実施形態の蛍光X線分析用試料保持具1を用いる方法であって、前述したように透過部の窪み3cに液体試料Sを滴下して乾燥させることにより、透過部3bを平坦にするとともに、窪み3cであった部位3dに液体試料Sの含有成分S1を保持させ、この前処理の後、試料保持具1全体を、アルミニウムまたはチタン製で底付き円筒状の試料ホルダ(中空カップ)18の開口部に載置して、その試料ホルダ18を試料ステージ17に載置する。このような試料ホルダ18を用いるのは、透過部3bの裏側近傍に物がこないようにしてバックグラウンドを低減するためと、透過部3bの裏側に抜けた1次X線12の装置内面での散乱線の影響を低減するためである。試料ホルダ18は、底のない単なる円筒状でもよい。
【0027】
また、図9に示すように、試料ステージ17に台座2の孔と同程度の大きさの貫通孔17aが設けられている場合には、試料ホルダ18を用いず、試料保持具1を直接試料ステージ17に載置してもよい。
【0028】
以上のように試料ステージ17に載置した試料保持具1の液体試料Sの含有成分S1を保持した窪み3cであった部位3dに1次X線12を照射して、発生する2次X線15の強度を測定する。
【0029】
以上は、試料Sの含有成分S1の上方から1次X線12を照射するいわゆる上面照射の場合であるが、試料Sの含有成分S1の下方から1次X線を照射するいわゆる下面照射の場合にも用いることができる。
【0030】
第2、第3実施形態の方法、装置によれば、第1実施形態の蛍光X線分析用試料保持具1を用いるので、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態である蛍光X線分析用試料保持具の斜視図である。
【図2】同試料保持具の縦断面図である。
【図3】同試料保持具による試料の含有成分の保持状態を示す縦断面図である。
【図4A】同試料保持具の第1製作手順を示す斜視図である。
【図4B】同試料保持具の第2製作手順を示す斜視図である。
【図4C】同試料保持具の第3製作手順を示す斜視図である。
【図4D】同試料保持具の第4製作手順を示す斜視図である。
【図4E】同試料保持具の第5製作手順を示す縦断面図である。
【図4F】同試料保持具の第5製作手順を示す平面図である。
【図4G】同試料保持具の第6製作手順を示す縦断面図である。
【図4H】同試料保持具の第7製作手順を示す縦断面図である。
【図5】同試料保持具による液体試料の保持状態を示す縦断面図である。
【図6】軽元素の測定データである。
【図7】重元素の定性分析チャートである。
【図8】本発明の第3実施形態である蛍光X線分析装置の概略図である。
【図9】同装置の試料ステージに第1実施形態の試料保持具を直接載置した縦断面図である。
【図10A】従来の試料保持具の液体試料の乾燥前の状態を示す断面図である。
【図10B】同試料保持具の液体試料の乾燥後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 蛍光X線分析用試料保持具
2 台座
3 熱収縮性フィルム
3a 周辺部
3b 透過部
3c 窪み
3d 窪みであった部位
10 蛍光X線分析装置
11 X線源
12 1次X線
15 2次X線
16 検出手段
S 液体試料
S1 液体試料の含有成分
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具ならびにそれを用いる蛍光X線分析方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するための技術として、ろ紙に液体試料を滴下して乾燥させることにより含有成分を濃縮し、かつ保持させるろ紙点滴法がある。しかし、ろ紙の厚さは数100μmあるため、1次X線の散乱線が多く発生してバックグラウンドが高くなる。この散乱X線によるバックグラウンドを抑制するために、厚さ0.5μm程度のポリマーフィルムにカーボンなどの蒸着膜を形成して、その蒸着膜を形成した部位に液体試料を滴下して乾燥させることにより含有成分を保持させる技術がある(特許文献1)。しかし、蒸着膜はきわめて薄く、しかも液体試料を均一に凝縮させるために蒸着膜の直径を約2mmまでとしているので、一回に滴下できる量は、ろ紙の場合の滴下量の同等以下となる。したがって、ろ紙よりも薄いポリマーフィルムおよび蒸着膜の使用によりバックグラウンドは低くなるものの、得られる蛍光X線の強度は増大しないため、検出限界の向上は十分ではない。
【0003】
そこで、バックグラウンドを抑制するとともに、より大きい強度の蛍光X線を均一に発生させることにより、検出限界を十分に向上できる液体試料保持具として、輪状の台座と、その台座に保持される周辺部およびX線を透過させるための透過部を有する疎水性フィルムと、その疎水性フィルムの透過部に貼付されたシート状の液体吸収材とを備え、その液体吸収材に前記液体試料が滴下されて乾燥されることにより、前記含有成分を保持する液体試料保持具がある(特許文献2)。この液体試料保持具は、液体吸収材に前記液体試料の含有成分が保持されるので、1回に500μl程度の多量の液体試料を点滴することができ、さらに液体試料の点滴と乾燥を繰り返し行うことにより数mlの試料を点滴乾燥することができるので、測定対象元素の含有量が微量の試料の測定に適している。
【0004】
特許文献1に記載の液体試料保持具はポリマーフィルムにカーボンなどの蒸着膜を形成しており、特許文献2に記載の液体試料保持具は疎水性フィルムに貼付されたシート状の液体吸収材を備えているので、1次X線が照射されると、このカーボン蒸着膜や液体吸収材に含まれているMg、Al、P、Sなどの軽元素の不純線が発生する。そこで、カーボン蒸着膜や液体吸収材を有しておらず、極薄のポリマーフィルムに直径2mmの窪みを成形した試料保持具がMOXTEK社から販売されている。
【特許文献1】特開2003−90810号公報
【特許文献2】特表2005−012889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、MOXTEK社の試料保持具は、ポリマーフィルムを成形して製作されているので、点滴された液体試料Sの乾燥前の試料保持具50の状態を示す断面図10Aおよび点滴された液体試料Sの乾燥後の試料保持具50の状態を示す断面図10Bに示すように、液体試料Sが点滴される窪み54は、液体試料Sの乾燥後であっても乾燥前と同様に窪んでいるが、液体試料Sの乾燥段階においてポリマーフィルム53に少し変形が生じ、個々の試料保持具50によって窪み54に保持されている液体試料の含有成分S1の高さが変動し、検出される蛍光X線の強度が変動する。そのため、精度よく分析することができない。
【0006】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具ならびにそれを用いる蛍光X線分析方法および装置において、蛍光X線分析用試料保持具からの不純線をなくし、バックグラウンドを抑制して検出限界を向上させるとともに分析精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の蛍光X線分析用試料保持具は、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具であって、輪状の台座と、その台座に所定の張力で保持される周辺部およびX線を透過させるための透過部を有する厚さ12μm以下の熱収縮性フィルムとを備え、前記透過部に窪みが形成されており、その透過部の窪みに前記液体試料が滴下されて乾燥されることにより、前記透過部が平坦になるとともに、前記含有成分を保持する。
【0008】
本発明の蛍光X線分析用試料保持具によれば、1次X線が照射される熱収縮性フィルムの透過部には従来技術のカーボン蒸着膜や液体吸収材などの液体試料保持材を有しておらず、熱収縮性フィルムの透過部に形成された窪みに液体試料を保持するので、1次X線が照射されても不純線が発生することがない。また、液体試料保持材を有していないので、照射される1次X線による散乱線の発生がほとんどなく、バックグラウンドを大幅に抑制することができる。これらにより検出限界を十分に向上できる。また、液体試料が乾燥されることにより、前記透過部が平坦になり、測定時の試料高さは常に一定の高さになるので、精度のよい分析を行うことができる。
【0009】
本発明の蛍光X線分析用試料保持具においては、前記熱収縮性フィルムが、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリイミドの一群から選ばれた1つからなることが好ましい。
【0010】
本発明の蛍光X線分析方法は、本発明の蛍光X線分析用試料保持具を用いる蛍光X線分析方法であって、前記透過部の窪みに液体試料を滴下して乾燥させることにより、前記透過部を平坦にするとともに、前記透過部の窪みであった部位に前記液体試料の含有成分を保持させ、前記透過部の窪みであった部位に1次X線を照射して、発生する2次X線の強度を測定する。
【0011】
本発明の蛍光X線分析装置は、本発明の蛍光X線分析用試料保持具を用いる蛍光X線分析装置であって、液体試料が滴下されて乾燥されることにより前記液体試料の含有成分を保持した前記透過部の窪みであった部位に1次X線を照射するX線源と、前記透過部の窪みであった部位から発生する2次X線の強度を測定する検出手段とを備える。
【0012】
本発明の蛍光X線分析方法および装置によれば、本発明の蛍光X線分析用試料保持具を用いるので、本発明の蛍光X線分析用試料保持具と同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態である蛍光X線分析用試料保持具について説明する。図1に示すように、この試料保持具1は、液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられるものであって、熱収縮性フィルム3を安定に保持するための輪状の台座2と、その台座2に所定の張力で保持される周辺部3aおよびX線を透過させるための透過部3bを有する熱収縮性フィルム3とを備えている。透過部3bにおいて窪んでいる部位である窪み3cに液体試料Sが滴下されて乾燥されることにより、透過部3bが平坦になるとともに、窪み3cであった部位に液体試料Sの含有成分を濃縮し、保持する。例えば、台座2は外径50mm、内径30mm、厚さ1mmの輪状であり、ポリエチレン、ポリスチレンなどの樹脂材料からなる。例えば、熱収縮性フィルム3は厚さ12μm以下、好ましくは2〜6μmのポリエステル、ポリプロピレン、ポリイミドなどからなり、材質としてはポリプロピレンがより好ましい。
【0014】
図2に縦断面図を示すが、ここでは、熱収縮性フィルム3は、直径が台座2の外径と同径の円形で、周辺部3aが台座2に所定の張力で保持されている。所定の張力で保持する方法については後述する。周辺部3aを除いた部分は、X線を透過させるための透過部3bであり、この透過部3bに窪み3cが形成されている。窪み3cは、例えば深さが約1mm、平面視で直径が約10mmの円形である。窪み3cの形状は上記に限らず、平面視で楕円形、矩形など点滴された液体試料が保持できる窪んだ形状であり、加熱されることにより熱収縮して平坦になる形状であればよい。また、寸法も上記に限らず、深さ0.5〜2mm、平面視での最大長さ5〜20mmが好ましく、深さと最大長さの寸法比では、1:3〜1:20が好ましく、1:8〜1:15がより好ましい。図1と図2では、台座2の内周は、熱収縮性フィルム3の下に隠れるので破線で示しているが、実際には透けて見える。
【0015】
熱収縮性フィルム3を所定の張力で台座2に保持する方法について説明する。試料保持具1の第1製作手順である図4Aに示すように、台座2と同じ内外径を有する円筒21の上面21aに熱収縮性フィルム3を被せる。次に、試料保持具1の第2製作手順である図4Bに示すように、被せられた熱収縮性フィルム3の上から伸張リング22を円筒21に嵌めこみ、円筒21の側面に沿って下方にスライドさせながら円筒21の上面21aで熱収縮性フィルム3がぴんと張った状態になるように伸張する。伸張リング22は、円筒21の外径よりも少し小さい内径を有し、例えば弾性を有するゴムや樹脂材料で形成されており、その弾力により熱収縮性フィルム3に密着して熱収縮性フィルム3を引っ張りながらスライドするので、ぴんと張った状態に伸張することができる。
【0016】
次に、試料保持具1の第3製作手順である図4Cに示すように、例えばスプレーのり(成分はアクリルゴム(10%)、有機溶剤(54%)およびイソヘキサンガス(36%)で、噴射用高圧ガスはジメチルエーテル)を台座2の一方の面に吹き付けて、台座2の外周を熱収縮性フィルム3が伸張された円筒の上面21aの外周に合わせて貼付する。次に、伸張リング22を円筒21から取除き、台座2の外周からはみ出している熱収縮性フィルム3を切り取ると、試料保持具1の第4製作手順である図4Dに示すように、熱収縮性フィルム3が台座2に所定の張力で保持された薄膜リング5ができる。
【0017】
熱収縮性フィルム3をぴんと張った状態に伸張する方法については上記の方法に限らず、他の方法であってもよい。例えば板上に前記円筒21の筒長さを短くした円筒を複数個有する伸張板の円筒の上方から、1枚の熱収縮性フィルム3を所定の張力で引っ張りながら被せて固定する。その後、前記と同様にして台座2を複数の円筒のそれぞれの上面部分の熱収縮性フィルム3に貼付し、台座2の外周からはみ出している熱収縮性フィルム3を切り取る。
【0018】
次に、薄膜リング5に窪み3cを形成する方法について説明する。図4Eに示すような、例えば、厚さが1mm、外径29mm、内径10mmである、輪状の窪み成形冶具23を準備する。窪み成形冶具23は台座2と同じ材質であるポリエチレン、ポリスチレンなどの樹脂材料からなるのが好ましい。次に、例えば直径10mm、長さ100mm、一方の端面が半球面である円柱で、ポリエチレンやテフロン(登録商標)などの合成樹脂製の押圧冶具24を準備する。準備した輪状の窪み成形冶具23と押圧冶具24を用いて以下のように窪み3cを形成する。
【0019】
試料保持具1の第5製作手順の縦断面図である図4Eに示すように、窪み成形冶具23を平坦な台30の上に載置し、その上から熱収縮性フィルム3を上にして薄膜リング5の台座2の内周の中に窪み成形冶具23が入るように載置する。試料保持具1の第5製作手順の平面図である図4Fに示すように、透過部3bの下に窪み成形冶具23が透けて見える。試料保持具1の第6製作手順である図4Gに示すように、押圧冶具24の半球面の端面24aを下方にし、その外周を窪み成形冶具23の内周に合わせて、薄膜リング5の上方から、熱収縮性フィルム3の透過部3bを押圧し、押圧冶具24を持ち上げる。透過部3bが押圧されると、試料保持具1の第7製作手順である図4Hに示すように、透過部3bに窪み3cが形成される。窪み3cを形成する方法については、上記の方法に限らず、クリーンな空気や窒素ガスなどを透過部3bに吹き付けるなど他の方法であってもよい。
【0020】
この試料保持具1を用いる蛍光X線分析においては、図5に示すように、窪み3cに液体試料Sを滴下する。ここで、窪み3cはその周囲の透過部3bより窪んでいるので、液体試料Sは窪み3cから周囲に転がることがなく、窪み3cで安定に保持される。そして、滴下した液体試料Sを適切な加熱乾燥器具により40〜60℃に加熱乾燥させると、透過部3bの熱収縮性フィルム3の熱収縮により、もとと同程度の張力が発生して透過部3bは平坦になる。これにより、図3の縦断面図に示すように、窪み3cであった部位3dはその周囲の透過部3bと同一高さになるとともに、窪み3cであった部位3dに液体試料Sの含有成分S1が保持される。
【0021】
試料保持具1に点滴された液体試料Sを乾燥させる加熱乾燥器具としては、理化学機器として市販されている加熱ランプ、加熱乾燥器が好ましい。特願2007−220016号に記載されている試料乾燥装置(商品名 ウルトラドライ)を用いると、液体試料を汚染させないで乾燥させることができるので、より好ましい。試料保持具1を蛍光X線分析装置の試料台へ載置して、液体試料Sの含有成分S1を保持した透過部3bの窪み3cであった部位3dに1次X線を照射して蛍光X線分析を行う。試料保持具1を蛍光X線分析装置の試料台へ載置する方法については、後述する。
【0022】
本実施形態の試料保持具1を用いて、この測定溶液の滴下量を500μlとして測定した測定データを図6および図7に示す。図6は軽元素の各元素毎の測定データであり、図7は重元素の定性分析チャートである。測定溶液は、Na、Mg、Al、Si、P、Cl、K、Ca、Ba、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Tl、Pbを含有する市販の混合標準溶液を蒸留水で希釈して、K、Pの濃度は5ppm(重量ppm。以下同じ)に、SiはSiO2として5ppmに、その他の元素の濃度は1ppmになるように調整した。この測定データ(図6および図7)によれば、試料保持具1からの不純線がなくなり、また散乱線の発生がほとんどなく、バックグラウンドを大幅に抑制できていることがわかる。
【0023】
以上のように、本実施形態の蛍光X線分析用試料保持具1によれば、1次X線が照射される熱収縮性フィルムの透過部3bにはカーボン蒸着膜や液体吸収材などの液体試料保持材を有しておらず、従来の試料保持具が有しているろ紙に含まれているMg、Al、P、Sなどの軽元素による不純線が発生しない。また、液体試料保持材を有していないので、照射される1次X線による散乱線の発生がほとんどなく、バックグラウンドを大幅に抑制することができる。これらにより検出限界を十分に向上でき、特に軽元素においてその効果は顕著である。
【0024】
滴下された液体試料Sが乾燥されると、透過部3bの熱収縮性フィルム3の熱収縮により、もとと同程度の張力が発生して透過部3bは平坦になる。これにより、図3の縦断面図に示すように、窪み3cであった部位3dはその周囲の透過部3bと同一高さになるとともに、窪み3cであった部位3dに液体試料Sの含有成分S1が保持される。このように測定時の試料高さは常に一定の高さになるので、精度のよい分析を行うことができる。また、カーボン蒸着膜や液体吸収材を備えていないので、蛍光X線分析用試料保持具1ならびにそれを用いる蛍光X線分析方法および装置のコストを低くすることができる。
【0025】
次に、本発明の第2実施形態の蛍光X線分析方法について説明する。この分析方法に使用される蛍光X線分析装置10は、本発明の第3実施形態であり、図8に示すように、第1実施形態の蛍光X線分析用試料保持具1を用いる装置であって、試料保持具1が直接または試料ホルダ18を介して載置される試料台である試料ステージ17と、液体試料Sが滴下されて乾燥されることにより、液体試料Sの含有成分S1を保持した窪み3cであった部位3dに1次X線12を照射するX線管などのX線源11と、窪み3cであった部位3dから発生する蛍光X線などの2次X線15の強度を測定するX線検出器などの検出手段16とを備えている。
【0026】
この装置を使用する第2実施形態の蛍光X線分析方法は、第1実施形態の蛍光X線分析用試料保持具1を用いる方法であって、前述したように透過部の窪み3cに液体試料Sを滴下して乾燥させることにより、透過部3bを平坦にするとともに、窪み3cであった部位3dに液体試料Sの含有成分S1を保持させ、この前処理の後、試料保持具1全体を、アルミニウムまたはチタン製で底付き円筒状の試料ホルダ(中空カップ)18の開口部に載置して、その試料ホルダ18を試料ステージ17に載置する。このような試料ホルダ18を用いるのは、透過部3bの裏側近傍に物がこないようにしてバックグラウンドを低減するためと、透過部3bの裏側に抜けた1次X線12の装置内面での散乱線の影響を低減するためである。試料ホルダ18は、底のない単なる円筒状でもよい。
【0027】
また、図9に示すように、試料ステージ17に台座2の孔と同程度の大きさの貫通孔17aが設けられている場合には、試料ホルダ18を用いず、試料保持具1を直接試料ステージ17に載置してもよい。
【0028】
以上のように試料ステージ17に載置した試料保持具1の液体試料Sの含有成分S1を保持した窪み3cであった部位3dに1次X線12を照射して、発生する2次X線15の強度を測定する。
【0029】
以上は、試料Sの含有成分S1の上方から1次X線12を照射するいわゆる上面照射の場合であるが、試料Sの含有成分S1の下方から1次X線を照射するいわゆる下面照射の場合にも用いることができる。
【0030】
第2、第3実施形態の方法、装置によれば、第1実施形態の蛍光X線分析用試料保持具1を用いるので、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態である蛍光X線分析用試料保持具の斜視図である。
【図2】同試料保持具の縦断面図である。
【図3】同試料保持具による試料の含有成分の保持状態を示す縦断面図である。
【図4A】同試料保持具の第1製作手順を示す斜視図である。
【図4B】同試料保持具の第2製作手順を示す斜視図である。
【図4C】同試料保持具の第3製作手順を示す斜視図である。
【図4D】同試料保持具の第4製作手順を示す斜視図である。
【図4E】同試料保持具の第5製作手順を示す縦断面図である。
【図4F】同試料保持具の第5製作手順を示す平面図である。
【図4G】同試料保持具の第6製作手順を示す縦断面図である。
【図4H】同試料保持具の第7製作手順を示す縦断面図である。
【図5】同試料保持具による液体試料の保持状態を示す縦断面図である。
【図6】軽元素の測定データである。
【図7】重元素の定性分析チャートである。
【図8】本発明の第3実施形態である蛍光X線分析装置の概略図である。
【図9】同装置の試料ステージに第1実施形態の試料保持具を直接載置した縦断面図である。
【図10A】従来の試料保持具の液体試料の乾燥前の状態を示す断面図である。
【図10B】同試料保持具の液体試料の乾燥後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 蛍光X線分析用試料保持具
2 台座
3 熱収縮性フィルム
3a 周辺部
3b 透過部
3c 窪み
3d 窪みであった部位
10 蛍光X線分析装置
11 X線源
12 1次X線
15 2次X線
16 検出手段
S 液体試料
S1 液体試料の含有成分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具であって、
輪状の台座と、
その台座に所定の張力で保持される周辺部およびX線を透過させるための透過部を有する厚さ12μm以下の熱収縮性フィルムとを備え、
前記透過部に窪みが形成されており、その透過部の窪みに前記液体試料が滴下されて乾燥されることにより、前記透過部が平坦になるとともに、前記含有成分を保持する蛍光X線分析用試料保持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記熱収縮性フィルムが、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリイミドの一群から選ばれた1つからなる蛍光X線分析用試料保持具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛍光X線分析用試料保持具を用いる蛍光X線分析方法であって、
前記透過部の窪みに液体試料を滴下して乾燥させることにより、前記透過部を平坦にするとともに、前記透過部の窪みであった部位に前記液体試料の含有成分を保持させ、 前記透過部の窪みであった部位に1次X線を照射して、発生する2次X線の強度を測定する蛍光X線分析方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の蛍光X線分析用試料保持具を用いる蛍光X線分析装置であって、
液体試料が滴下されて乾燥されることにより前記液体試料の含有成分を保持した前記透過部の窪みであった部位に1次X線を照射するX線源と、
前記透過部の窪みであった部位から発生する2次X線の強度を測定する検出手段とを備えた蛍光X線分析装置。
【請求項1】
液体試料を前処理して含有成分を蛍光X線分析するために用いられる蛍光X線分析用試料保持具であって、
輪状の台座と、
その台座に所定の張力で保持される周辺部およびX線を透過させるための透過部を有する厚さ12μm以下の熱収縮性フィルムとを備え、
前記透過部に窪みが形成されており、その透過部の窪みに前記液体試料が滴下されて乾燥されることにより、前記透過部が平坦になるとともに、前記含有成分を保持する蛍光X線分析用試料保持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記熱収縮性フィルムが、ポリエステル、ポリプロピレンおよびポリイミドの一群から選ばれた1つからなる蛍光X線分析用試料保持具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蛍光X線分析用試料保持具を用いる蛍光X線分析方法であって、
前記透過部の窪みに液体試料を滴下して乾燥させることにより、前記透過部を平坦にするとともに、前記透過部の窪みであった部位に前記液体試料の含有成分を保持させ、 前記透過部の窪みであった部位に1次X線を照射して、発生する2次X線の強度を測定する蛍光X線分析方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の蛍光X線分析用試料保持具を用いる蛍光X線分析装置であって、
液体試料が滴下されて乾燥されることにより前記液体試料の含有成分を保持した前記透過部の窪みであった部位に1次X線を照射するX線源と、
前記透過部の窪みであった部位から発生する2次X線の強度を測定する検出手段とを備えた蛍光X線分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【公開番号】特開2009−222615(P2009−222615A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68756(P2008−68756)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】
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