説明

蛍光X線分析装置

【課題】バックグラウンド波形の急激に変化する偏曲点付近に存在するスペクトルであっても、蛍光X線ピーク波形とバックグラウンド波形の適当な分離を図ること。
【解決手段】典型的なバックグラウンド波形と強度を求めたい蛍光X線ピーク波形とそのピークの周辺にあり検出された複数の蛍光X線ピーク波形を使い、測定された波形を良く再現するようにバックグラウンド波形と蛍光X線ピーク波形の強度を変化させる。そして、出来上がったスペクトルから、蛍光X線ピーク波形とバックグラウンド波形を分離する蛍光X線分析装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を照射した試料から発生する蛍光X線を解析することで、前記試料の定性・定量分析等を行う蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー分散型の蛍光X線装置で取得したスペクトルから特定元素から放射された蛍光X線の強度を算出するためには、蛍光X線ピーク波形とバックグラウンド波形を分離する必要がある。
【0003】
従来は、ピークになっている部分の除去を繰り返すことによってバックグラウンド波形を生成し、蛍光X線ピーク波形とバックグラウンド波形の分離を行っていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−146258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のピーク部分の除去を繰り返す方法では、蛍光X線ピーク波形がバックグランド波形の急激に変化する偏曲点付近に存在するとき、偏曲点の形状が蛍光X線ピーク波形により隠されてしまうため、バックグラウンド波形の正確に生成することが困難であり、バックグラウンドが大きめに生成されてしまうという課題があった。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、バックグラウンド波形の急激に変化する偏曲点付近に存在するスペクトルであっても、蛍光X線ピーク波形とバックグラウンド波形の適当な分離ができる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。典型的なバックグラウンド波形と強度を求めたい蛍光X線ピーク波形とそのピークの周辺にあり検出された複数の蛍光X線ピーク波形を使い、測定された波形を良く再現するようにバックグラウンド波形と蛍光X線ピーク波形の強度を変化させる。
そして、出来上がったスペクトルから、蛍光X線ピーク波形とバックグラウンド波形を分離する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る蛍光X線分析装置によれば、バックグラウンド波形の急激に変化する偏曲点付近に存在するスペクトルであっても、蛍光X線ピーク波形とバックグラウンド波形の適当な分離を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示す装置概略図である。
【図2】本発明の実施例を示す装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例を示すX線スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る蛍光X線分析装置の実施形態について説明する。
図1は本発明の蛍光X線分析装置の概略図で、X線管11からX線12が試料13に照射され、発生した蛍光X線14は検出器15で検出された後、アンプ16で増幅され、データ処理装置1に送られる。ここで、検出器15は蛍光X線14の波長を識別してその強度を電気信号として出力する。
【0011】
図2はデータ処理装置1のブロック図である。1aはCPUで、種々の演算処理やメモリ1b、ディスプレイ1c、および元素特定手段1dに対して動作指示を行う。1bはメモリで、特定元素毎に予め求めたバックグラウンド関数および積分範囲を記憶する。1cはディスプレイで、対象となる試料について測定した蛍光X線からそのプロファイルデータ等の表示を行う。1dは元素特定手段で、ディスプレイ1cに表示されたプロファイルデータ等に基づいて定量分析すべき元素を特定し、その旨CPU1aに対して指示を与える。
【0012】
図3は本発明による各元素の蛍光X線強度を求める手順を示すフローチャートである。まず、バックグラウンドの偏曲点に蛍光X線のピークがない基準試料を測定し、その偏曲点付近のバックグラウンドのプロファイルを得る(S101)。次に、定量を行う試料の測定を行い(S102)、定量分析を行う元素を特定する(S103)。定量元素の関数波形と対象試料の定性分析S102で得たバックグラウンド波形を用いて、蛍光X線ピーク波形とバックグラウンド波形を分離処理する(S104)。波形分離処理S104の結果から各元素の蛍光X線強度を求める。
【0013】
図4(a)は従来法によるバックグラウンドの見積りである。本来のバックグラウンド波形B1の偏曲点P1に蛍光X線ピーク波形が重なっている波形S1の場合、従来のピーク除去部分の除去を繰り返し、バックグラウンド波形を生成する方法では、バックグラウンド波形B2のように、バックグラウンド波形が本来のバックグラウンド波形B1よりも大きめに生成される。そこで、図4(b)に示すように、バックグラウンド波形の偏曲点付近に蛍光X線ピーク波形の存在しない基準試料で波形S2を取得する。基準試料としては、例えば、ポリエチレンを用いることができる。
【0014】
波形S1を良く再現するように定量したい試料に含まれる蛍光X線ピークの関数波形と波形S2の強度を変化させる。そして、出来上がった波形から、蛍光X線ピーク波形F1とバックグラウンド波形F2を分離する。これにより蛍光X線ピーク波形とバックグラウンド波形を適当に分離することができる。
【符号の説明】
【0015】
1…データ処理装置
11…X線管
12…X線
13…試料
14…蛍光X線
15…検出器
16…アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料にX線を照射するX線管と、
前記試料から発生した蛍光X線を検出する検出器と、
前記検出器で検出した検出信号を処理するデータ処理装置と、を有する蛍光X線分析装置において、
前記データ処理装置は、
標準試料で測定した蛍光X線のプロファイルから求めたバックグラウンド波形と積分範囲のデータと定量分析対象の元素のピーク波形関数を記憶する記憶手段と、
前記元素を特定する元素特定手段と、
特定された前記元素に対応するバックグラウンド波形と積分範囲のデータと前記元素のピーク波形を前記記憶手段から読みだし、前記バックグラウンド波形と前記ピーク波形を用いて前記試料のプロファイルを良く再現するように前記バックグラウンド波形と前記ピーク波形を変化させ、前記試料のバックグラウンド波形とピーク波形を分離し、分離したピーク波形の前記積分範囲での積分値を算出する演算手段と、を有する蛍光X線分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−209075(P2011−209075A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76377(P2010−76377)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】