説明

蛍光X線分析装置

【課題】被測定試料中に含まれる元素および放射性物質をそれぞれ特定することができる、蛍光X線分析装置を提供する。
【解決手段】
本発明の蛍光X線分析装置は、X線領域(1keV〜50keV)を計測する蛍光X線検出器と、γ線領域(50keV〜1.5MeV)を計測するγ線検出器と、分析処理手段とを備える。励起X線管が、被測定試料に対してX線を照射する。蛍光X線検出器は被測定試料に含まれる元素固有の蛍光X線を検出し、γ線検出器は核種固有のγ線を検出する。分析処理手段が、蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルとを求める。
必要に応じて、分析処理手段は、蛍光X線のスペクトルに基づいて試料に含まれる元素を特定してその含有量を求め、γ線のスペクトルに基づいて試料に含まれる放射性物質の核種を特定してその含有量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蛍光X線分析装置に関し、特に例えば放射性物質検出機能付の蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌,廃材(リサイクル物質を含む),食品,玩具,電子材料中の含有元素、特に有害重金属(例えばHg,Pb,As,Cd等)の含有量を簡便に計測する方法として、エネルギー分散型蛍光X線装置が非常に有用である。すでに電気電子部品に関する規制(WEEE/RoHS,ELV,J−MOSS)、玩具に関する規制(EN71,ASTM,ST基準)及び土壌に関する規制(土壌汚染対策法の施行例:JIS K0470準拠)等でスクリーニング計測として有用であることが認められている。
【0003】
一方、近年、これら被測定物中に放射性物質が含まれているか否かの検出を求める要求が急速に高まっている。特に、東日本大震災を契機として、原子力発電所の原子炉事故に伴う放射能汚染や、津波被害による有害物質の土壌汚染の有無を調査し、農作物への影響を検討又は確認するために、放射性物質の核種の特定と含有量を正確に測定できる分析装置が求められている。一般に、これらの目的達成のためには、元素分析用としてはエネルギー分散型の蛍光X線分析装置が用いられ、放射性物質の計測用としては放射線サーベイメータやγ線スペクトルメータが用いられている。従来は、それぞれ機能が異なる2台の計測装置を用いて、元素の分析と放射性物質の分析を別々に行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−209493号 特許文献1は、中性子源から放射性廃棄物へ熱中性子照射する捕獲γ線分析装置と、X線発生装置から放射性廃棄物へX線を照射する蛍光X線分析装置の組み合わせからなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の蛍光X線分析装置は、被測定試料中の元素の特定とその含有量を求めることができるが、試料中に放射性物質が含まれていても核種を特定することができなかった。
一方、特許文献1は、放射性廃棄物がそれ自身で放射線を発生するγ線を計測するものではなく、熱中性子照射することによって発生する捕獲γ線を検出し分析するものである。また、1つの試料を移動させて蛍光X線と捕獲γ線を別々に計測しているので、計測に時間がかかり、測定効率が悪く、測定装置が高価となる。
さらに、γ線検出器とX線検出器を近接した位置に配置することにより、微量の元素を検出する蛍光X線器の検出・分析に悪影響を及ぼし、正確な蛍光X線の分析が困難となることもある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、1台の分析装置を用いて試料中に含まれる元素に依存する蛍光X線のスペクトルと、放射性物質の核種に依存するγ線のスペクトルを得ることのできる、蛍光X線分析装置を提供することである。
この発明の他の目的は、1台の分析装置を用いて試料中に含まれる元素の特定とその含有量を求めることができるとともに、試料中に含まれる放射性物質の核種の特定とその含有量を求めることができる、蛍光X線分析装置を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、元素及び核種の特定とその含有量を迅速に求めることができ、測定効率の高い、蛍光X線分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の蛍光X線分析装置は、X線領域(1keV〜50keV)を計測する蛍光X線検出器(実施例との対応関係を示せば14。以下、括弧内符号は同様)と、γ線領域(50keV〜1.5MeV)を計測するγ線検出器(15)と、蛍光X線検出器ならびにγ線検出器を動作させて、蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルを得る分析処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、分析処理手段(16,17,18,20)が蛍光X線検出器(14)とγ線検出器(15)とを同時に動作させて、蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルを同時に得ることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において、分析処理手段が蛍光X線検出器(14)とγ線検出器(15)とをそれぞれ独立して動作させて、蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルを別々に得ることを特徴とする。
【0010】
第4の発明の蛍光X線分析装置は、X線領域(1keV〜50keV)の計測とγ線領域(50keV〜1.5MeV)の計測とを同時に行える検出器を備え、当該検出器を動作させて蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルを同時に得る分析処理手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、第1ないし第3の発明において、被測定試料(1)を載せる載置部と、載置部ならびに被測定試料を収納する試料室(11c)と、被測定試料(1)に対してX線を照射する蛍光X線測定用励起X線管(12)をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、第5の発明において、蛍光X線測定用励起X線管が、載置部の下方から被測定試料に向けてX線を照射する。蛍光X線検出器及びγ線検出器は、載置部の下方に配置される。
【0013】
第7の発明は、第5の発明において、蛍光X線測定用励起X線管が、載置部の下方から被測定試料に向けてX線を照射する。蛍光X線検出器は、載置部の下方に配置される。γ線検出器は、載置部に載せられた被測定試料の上方に配置される。
【0014】
第8の発明は、第5の発明において、蛍光X線測定用励起X線管が、載置部の下方から被測定試料に向けてX線を照射する。蛍光X線検出器は、載置部の下方に配置される。γ線検出器は、載置部に載せられた被測定試料の側面に配置される。
【0015】
第9の発明は、第5の発明において、蛍光X線検出器(14)が、当該X線管から発生されたX線を被測定試料(1)に照射させたとき、当該被測定試料に含まれる元素の励起によって生じる元素固有の蛍光X線を検出する。γ線検出器(15)は、蛍光X線検出器による蛍光X線の検出に関連して(又は同時に)、被測定試料(1)から放出されるγ線を検出する。分析処理手段(16,17,18,20)は、蛍光X線検出器(14)によって検出された蛍光X線のスペクトルに基づいて被測定試料に含まれる元素を特定しかつ特定した元素の含有量を求めると同時に、γ線検出器(15)によって検出されたγ線のスペクトルに基づいて被測定試料に含まれる放射性物質の核種を特定しかつ特定した核種の含有量を求める。
【0016】
第10の発明の蛍光X線分析装置は、被測定試料を載せる載置部(11b)と、被測定試料を収納する試料室(11c)と、載置部に載置された被測定試料に対してX線を照射する蛍光X線測定用励起X線管(12)を有するものであって、X線領域(1keV〜50keV)を計測する蛍光X線検出器(14)と、γ線領域(50keV〜1.5MeV)を計測するγ線検出器(15)と、蛍光X線測定用励起X線管への供給電力を制御し、蛍光X線検出器の検出出力とγ線検出器の検出出力に基づいて分析処理する分析処理手段(16,17,18,20)を備える。
蛍光X線検出器は、蛍光X線測定用励起X線管によって発生されたX線を被測定試料に照射させたとき当該被測定試料に含まれる元素の励起によって生じる蛍光X線を検出する。γ線検出器は、蛍光X線検出器による蛍光X線の検出に関連して、被測定試料自体から放出されるγ線を検出する。分析処理手段は、蛍光X線検出器によって検出された蛍光X線のスペクトルに基づいて被測定試料に含まれる元素を特定しかつ特定した元素の含有量を求めるとともに、γ線検出器によって検出されたγ線のスペクトルに基づいて被測定試料に含まれる放射性物質の核種を特定しかつ特定した核種の含有量を求める。
【0017】
第11の発明は、第9または第10の発明において、分析処理手段が、特定した元素が放射性物質であるか否かを判断し、放射性物質であることを判断した後に、放射性物質の核種を特定しかつ特定した核種の含有量を求める処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、1台の分析装置を用いて試料中に含まれる元素に依存する蛍光X線のスペクトルと放射性物質の核種に依存するγ線のスペクトルを得ることができ、元素および放射性物質の核種の特定に役立つ、蛍光X線分析装置が得られる。
また、他の発明によれば、1台の分析装置を用いて試料中に含まれる元素の特定とその含有量を求めることができるとともに、試料中に含まれる放射性物質の核種の特定とその含有量を求めることができる、蛍光X線分析装置が得られる。
また、元素の特定及びその含有量と、核種の特定及びその含有量を、迅速かつ効率良く分析し測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施例の蛍光X線分析装置本体の外観図である。
【図2】この発明の一実施例の蛍光X線分析装置の原理を示すブロック図である。
【図3】図2における分析制御回路及びパソコンの詳細なブロック図である。
【図4】被測定試料の現存状況と、採取を説明するための模式図である。
【図5】被測定試料中の元素と放射性物質の分析・測定の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の他の実施例の蛍光X線分析装置のブロック図である。
【図7】この発明のその他の実施例の蛍光X線分析装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施例1)
図1において、この発明の一実施例の蛍光X線分析装置は、本体10と測定用パーソナルコンピュータ(以下、「測定用パソコン」又は単に「パソコン」と略称する)20を含んで構成される。
本体10は、ハウジング11を含む。ハウジング11には、その上部に蓋部材(以下「蓋」と略称)11aが上方向へ開閉自在に支持される。本体10の内部は、蓋11aを開いたときに露出し、試料を保持するための載置部(又は試料保持台)11bが設けられる。この載置部11bがハウジング11内を上下に分離することにより、ハウジング11内は上部の試料室(図2の11c)と下部の各種機器又は部品を収納するための機器収納室(図2の11d)に分けられる。なお、載置部11bを回転自在に支持しても良い。
また、本体10には、蓋11aに関連してロック機構(図示を省略)や蓋11bの開閉状態を検出するスイッチが設けられる。さらに、本体10の内部には、鉛等の板状の遮蔽部材(図示を省略)が壁面に取り付けられる。これによって、ハウジング11内は、密閉されて、X線及びγ線が外部に漏えいするのを防止している。
本体10には、ケーブルを介してパソコン20が接続される。
【0021】
図2において、本体10の機器収納室11d内であって載置部11bの下方には、蛍光X線測定用励起X線管(以下「X線管」と略称)12が被測定試料1に向けてX線を照射するように配置される。X線管12は、励起用X線管制御回路(以下「X線管制御回路」)13に接続されて、供給電力が制御される。載置部11bの下方であって、X線管12から放出されたX線が被測定試料1に照射されたとき、被測定試料1に含まれる各種の元素が励起されて放出される蛍光X線を検出し得る位置及び角度となるように、蛍光X線測定用検出器(以下「蛍光X線検出器」と略称)14が配置される。蛍光X線検出器14の近傍には、γ線測定用検出器(以下「γ線検出器」と略称)15が配置される。蛍光X線検出器14の出力端には蛍光X線用信号処理回路16が接続される。γ線検出器15の出力端にはγ線用信号処理回路17が接続される。これらの信号処理回路16及び信号処理回路17の出力端には、分析制御回路18が接続される。
【0022】
具体的には、蛍光X線検出器14は、Si半導体を用いたSi−PIN検出器や、SDD(シリコンドリフトディテクター)等が用いられる。蛍光X線検出器14は、被測定試料1の元素情報を得るために、被測定試料1にX線を照射したとき、当該試料に含まれる元素の特性X線を蛍光X線のスペクトルとして得るものである。この蛍光X線検出器14のスペクトルのエネルギー領域は、おおむね1keV〜50keV程度である。
ここで、蛍光X線のエネルギー領域が被測定対象となる元素の種類によって定まるため、本願実施例では有害物質に含まれる微量の有害重金属(例えば、カドミウム,鉛,砒素,クロム,水銀等)を十分に分析可能なように、それよりも多少広い範囲の有害重金属を分析可能な範囲として、おおむね1keV〜50keV程度に選んでいる。
なお、蛍光X線検出器14の他の例として、Si以外のもの、例えばCdTe,Ge,HgI2等を基板とした検出器を使用してもよい。
【0023】
一方、放射性物質から放出されるγ線のエネルギー領域は、おおむね50keV〜1.5MeVである。この領域のエネルギーに対して、Si半導体では検出効率が非常に小さい(0.1%以下)ために、実用的には使用できない。
そこで、γ線検出器15としては、固体シンチレータと半導体素子の組み合わせや、固体シンチレータと光電子増倍管を組み合わせたγ線専用の検出器が用いられる。
ここで、γ線のエネルギー領域が被測定対象となる放射性物質の核種によって定まるため、本願実施例では微量の放射性物質(例えば、カリウム,セシウム等)の核種(元素がKのうちのK−39,K−40,K−41、および/または元素がCsのうちのCs−133,Cs−134,Cs−135,Cs−137等)を分析可能な範囲よりも多少広い範囲として、おおむね50keV〜1.5MeV程度に選んでいる。
なお、γ線検出器15の他の例として、CsI,NaI等のシンチレータと光電子増倍管又はホトダイオードとの組み合わせ、若しくはGe,CdTe等の素材を直接使用してもよい。
【0024】
信号処理回路16及び信号処理回路17は、アンプ,シェーピングアンプ,ADコンバータ,メモリ等で構成されるASP(アナログ信号処理回路)か、アンプからの出力を直接サンプリングしてADコンバータで処理させるDSP(デジタル信号処理回路)等のいずれかが使用される。
分析制御回路18は、後述の測定用パソコン20に含まれるCPU21からの命令に基づいて、信号処理回路16及び信号処理回路17から順次与えられるサンプリング値(デジタル値)を一時記憶するとともに、パソコン20から与えられる制御データに基づいてX線管制御回路13の供給電力を制御するものである。分析制御回路18の詳細は、図3を参照して後述する。
【0025】
測定用パソコン20は、信号処理回路16や信号処理回路17からの検出データを演算処理して、被測定物質の含有元素の定性・定量分析や、含有放射性物質の核種とその含有量を求めるものである。また、諸測定条件を入力し、必要な情報を出力させるものにも使用される。パソコン20は、市販のパソコンに、専用CD−ROM等に記録されたプログラムを内部メモリ(後述の図3に示す22)にインストールして使用される。パソコン20の詳細な構成は、図3を参照して後述する。
【0026】
次に、図2を参照して、この発明の原理(又は概要)を説明する。X線管12から放出されたX線が被測定試料1を照射すると、被測定試料1に含まれる元素に特有の蛍光X線が励起される。その結果、被測定試料1から元素特有の蛍光X線が放出される。この蛍光X線が、蛍光X線検出器14によって検出され、信号処理回路16によって信号処理(サンプリング及びデジタル化)されて、分析制御回路18を経て、パソコン20に取り込まれる。パソコン20は、演算処理することによって、被測定試料1に含まれる元素に対応する蛍光X線のスペクトルを抽出する。このスペクトルがパソコン20内で演算処理されることにより、被測定試料1に含まれる元素の定性(どのような元素であるか)の分析及び定量(特定した元素がどの程度含まれているか)分析が行われる。
【0027】
一方、被測定試料1内に放射性物質が含まれている場合は、当該放射性物質自体からγ線が放出されている。このγ線はエネルギーが大きいために、通常蛍光X線検出器14では検出効率が非常に小さい。これを補償し、放射性物質から放出されるγ線を高い効率で検出するために、γ線検出器15が用いられる。
放射性物質から放出されたγ線は、γ線検出器15によって検出され、信号処理回路17を通して信号処理(サンプリング及びデジタル化)されて、分析制御回路18を経て、パソコン20によってγ線スペクトルとして抽出される。このスペクトルをパソコン内で演算処理することにより、被測定試料1に含まれる放射性物質の核種と、その含有量の分析が行われる。
【0028】
次に、図3を参照して、分析制御回路18及び測定用パソコン20の詳細な構成を説明する。
分析制御回路18は、CPU181と、RAM等のメモリ182と、制御レジスタ回路183と、インタフェース184,185とを含む。メモリ182は、記憶領域182a及び記憶領域182bを有する。記憶領域182aは、蛍光X線検出器14の検出出力をサンプリング値(デジタル値)として記憶する蛍光X線検出データ記憶領域として用いられる。記憶領域182bは、γ線検出器15の検出出力をサンプリング値(デジタル値)として記憶するγ線検出データ記憶領域として用いられる。各記憶領域182a,182bは、それぞれのサンプリング値を先入先出方式で順次記憶する。
【0029】
制御レジスタ回路183は、パソコン20からの制御情報(印加電圧,電流のデータ)を一時記憶し、X線管制御回路13に与える。これに応じて、X線管制御回路13は、X線管12に供給する電力(印加電圧,電流)を制御して、発生するX線のエネルギーを制御する。インタフェ−ス184は、信号処理回路16,17からの入力をメモリ182に与えるとともに、制御レジスタ回路183に一時記憶されている制御データをX線管制御回路13に与えるように、入出力を制御する。インタフェ−ス185は、メモリ182の各記憶領域182a,182bに記憶されている検出データをパソコン20に転送するとともに、パソコン20から与えられる制御データを制御レジスタ回路183に転送するように、入出力を制御する。
【0030】
測定用パソコン20は、CPU21と、処理プログラムを記憶するプログラム用メモリ22と、RAM等のメモリ23と、インタフェース24とを含む。蛍光X線分析装置の最初の使用に際して、メモリ22には、CD−ROM又はDVD等の外部記憶媒体に記録された処理プログラムがインストールされる。同様に、メモリ23のテーブル記憶領域23bには、CD−ROM又はDVD等の外部記憶媒体に記録された元素別,核種別のスペクトルエネルギー値等が予め設定登録される。
【0031】
メモリ23は、記憶領域23aと記憶領域23bを有する。記憶領域23aは、ワーキグRAMとして用いられる。記憶領域23bは、テーブル記憶領域として用いられ、元素特定用の元素テーブル23b1と核種特定用の核種テーブル23b2を有する。
元素テーブル23b1は、この発明の蛍光X線分析装置が分析可能な元素毎に、既知の試料を測定して得られたスペクトルエネルギー値を予め登録し記憶するものである。例えば、この発明の蛍光X線分析装置の用途が有害物質に含まれる微量の有害重金属(カドミウム,鉛,砒素,クロム,水銀等)と放射性物質(カリウム,セシウム等)の分析・測定を目的とする場合であれば、これらの元素(Cd,Pb,As,Cr,Hg,K,Cs等)毎に、スペクトルエネルギー値(Kab,Kα,Kβ等の値;単位「eV」)が設定登録(又は記憶)される。
一方、核種テーブル23b2は、放射性物質の元素(K,Cs等)のうち核種を特定するために、核種(元素がKのうちのK−39,K−40,K−41、および/または元素がCsのうちのCs−133,Cs−134,Cs−135,Cs−137等)毎に、既知の試料を測定して得られたスペクトルエネルギー値(eV)が設定登録(記憶)される。
【0032】
また、元素テーブル23b1には、既知の元素に基づいて測定して得られた元素別の蛍光X線強度と、当該蛍光X線強度から元素別の含有量を求めるための換算データが登録されている。例えば、元素別の含有量を求めるための換算データは、計算式で表される検量線か、所定単位毎の蛍光X線強度別の含有量の値であってもよい。
一方、核種テーブル23b2には、既知の放射性物質の核種に基づいて測定して得られた核種別のγ線強度と、当該γ線強度から核種別の含有量を求めるための換算データが登録されている。例えば、核種別の含有量を求めるための換算データは、計算式で表される検量線か、所定単位毎のγ線強度別の含有量のデジタル値であってもよい。
【0033】
CPU21は、メモリ22に記憶されているプログラムに基づいて、蛍光X線スペクトルを抽出し、元素テーブル23b1の元素別スペクトルエネルギー値に基づいて被測定試料1に含まれる元素を特定するとともに、X線強度に基づいて特定した元素の含有量を求める。さらに、CPU21は、核種テーブル23b2の核種別スペクトルエネルギー値に基づいて被測定試料1に含まれる放射性物質の核種を特定するとともに、γ線強度に基づいて特定した核種の含有量を求める等の演算処理を行う。
より具体的には、CPU21は、元素別のX線強度と当該元素に対応する検量線に基づいて、分析された元素別の含有量を算出するとともに、核種別のγ線強度と当該核種に対応する検量線に基づいて、分析された核種別の含有量を算出する。
【0034】
インタフェース24には、キーボード25及びディスプレイ26が接続される。インタフェース24は、インタフェース185,キーボード25及びディスプレイ26との入出力を制御する。
【0035】
次に、図1ないし図5を参照して、図5のフローチャートに沿ってこの実施例の詳細な動作を説明する。
【0036】
まず、元素及び放射性物質の分析・計測に先立って、分析・計測の対象となる被測定試料1の採取が行われる。分析・計測の対象となる試料は、図4に示すように、元々の地表面の部分(ハッチングで示す下層)1aと、原子力発電所の原子炉事故等によって飛散した放射性物質の堆積した部分(上層、すなわち地表面1aの上に積もった層)1bの両方が含まれるように採取されて、試料容器2に入れられる。
この試料採取に当たっては、放射性物質の飛散が予想される原子力発電所の事故地点から所定距離の範囲内の多数地点が選ばれる。そして、サーベイメータ等を用いて放射量を測定することにより、放射性物質の含まれることを確認され、かつ人体に大きな影響を与えないレベル範囲内のものが選ばれる。
【0037】
ここで、試料を採取する場合、元々の地表表面の部分(下層部分)1aと堆積層の部分(上層部分)1bの両方を採取する理由は、堆積層の部分1bに含まれる放射性物質が、原子力発電所の事故に起因して飛散したものであり、同じ元素でも異なる核種であるため、元々の地表表面の部分1aに含まれる元素も定性・定量して、両方の層の試料を採取して分析し測定する必要があるためである。
【0038】
測定者は、本体10の蓋11aを開き、被測定試料1の入った試料容器2を載置部11bの所定の位置に置き、蓋11aを閉じる。その後、測定者は、キーボード25(又はマウス)を操作して、分析・計測の開始を指示する。
これに応じて、CPU21は、メモリ22に記憶されている処理プログラムに基づいて、図5に示すフローチャートの分析処理の動作をスタートさせる。ステップ(図5では「S」と略記)1において、蓋11aを閉じているか否かが判断される。蓋11aが開いていることが判断されると、ステップ2において、蓋11aを閉じる指示のメッセージがディスプレイ26に表示された後、蓋11aが閉じられるまで待機する。
【0039】
蓋11aが閉じられていることが判断されると、ステップ3において、蓋11aのロックが掛けられることにより、分析中に誤って蓋11aを開くことを防止する。
ステップ4において、CPU21がメモリ22からX線管12の印加電圧と電流のデータを読み出し、制御レジスタ回路183に一時記憶させる。この印加電圧及び電流値のデータに基づき、X線管制御回路13がX線管12に供給する印加電圧と電流(結果的に電力)を制御する。これに応じて、X線管12がX線を発生し、被測定試料1に照射する。このとき、被測定試料1からは、当該試料に含まれる元素の種類に特有の蛍光X線が励起される。この蛍光X線が蛍光X線検出器14によって検出される。
そして、ステップ5において、信号処理回路16によって信号処理されてデジタル値に変換され、記憶領域182aに順次書き込まれ、蓄積記憶される。
なお、上述のステップ4では、X線管12に供給する印加電圧値と電流値(又は電力)は、検出すべき元素の種類によって、必要に応じて変化させることもある。
【0040】
これと略同時に、γ線検出器15が被測定試料1から直接放出されているγ線を検出する。ステップ6において、検出されたγ線のアナログ値が信号処理回路17によって信号処理されてデジタル値に変換され、記憶領域182bに順次書き込まれて、蓄積記憶される。
ステップ7において、所定の計測時間だけ経過したか否かが判断され、所定の計測時間だけ経過するまでステップ4〜ステップ6の処理が繰り返される。このようにして、比較的短い所定時間(サンプリング周期)毎に検出された蛍光X線のサンプリングデータが記憶領域182aに累積的に蓄積記憶(又は一時記憶)され、所定時間毎に検出されたγ線のサンプリングデータが記憶領域182bに累積的に蓄積記憶(又は一時記憶)されることになる。
そして、所定の計測時間の経過したことが判断されると、ステップ8において、X線管12への電力供給が停止される。
なお、ステップ6の処理(γ線検出器15の出力を記憶領域182bに蓄積する処理)は、X線管12への電力供給を停止した後に行うようにしても良い。
【0041】
続くステップ9において、メモリ182の記憶領域182aに一時記憶されている蛍光X線の検出データ(蓄積データ)及び記憶領域182bに一時記憶されているγ線の検出データ(蓄積データ)がインタフェース185及びインタフェース24を介してワーキングRAM23aに転送されて、一時記憶される。
ステップ10において、被測定試料1に含まれる元素の特定(または分析)処理が行われる。この元素の特定処理は、ワーキングRAM23aに一時記憶されている蛍光X線の蓄積データと元素テーブル23b1に登録されている元素別のスペクトルエネルギー値とを順次比較照合しながら、被測定試料1に含まれる元素が何であるかを特定する処理である。
ステップ11において、特定された元素の含有量が求められる。各元素の含有量を求める処理は、特定された元素別に、X線強度を測定することによって行われる。具体的には、測定された元素別のX線強度と元素別の検量線に基づいて演算処理して、各元素の含有量を算出する。
なお、γ線検出器とX線検出器を近接した位置に配置した構成において微量の元素を検出する場合は、正確な蛍光X線の分析が困難になることもあるので、元素の特定処理の前に、必要に応じて、バックグランドの補正処理を行ってもよい。それによって、バックグランドに起因する誤差を低減できる。
【0042】
その後、ステップ12において、特定された元素の中に、放射性物質が含まれているか否かが判断される。放射性物質が含まれていないことが判断されると、ステップ13へ進み、特定された元素とその含有量がディスプレイ26に表示される。
その後、ステップ14において、蓋11aのロックが解除されて、被測定試料1を取り出すことができる。このとき、被測定試料1の取り出し又は交換を指示するメッセージをディスプレイ26に表示させてもよい。この場合、放射性物質が含まれていないので、核種の特定処理とその含有量を求める処理が省略され、分析・測定処理時間の短縮化を図ることができる。
なお、上述のステップ11の「特定した元素の含有量の計測処理」の動作は、ステップ12において放射性物質が含まれていないことが判断された後であって、ステップ13(特定した元素の含有量の表示処理)の前に行ってもよい。
【0043】
一方、上述のステップ12において、放射性物質が含まれていることが判断されると、ステップ15へ進み、放射性物質の核種の特定処理が行われる。この核種の特定処理は、ワーキングRAM23aに一時記憶されているγ線の蓄積データと核種テーブル23b2に登録されている核種別のスペクトルエネルギー値とを順次比較照合しながら、被測定試料1に含まれる放射性物質の核種が順次特定される。
【0044】
続くステップ16において、特定された核種の含有量を求める処理が行われる。核種の含有量を求める処理は、特定された核種別に、γ線強度を測定することによって行われる。具体的には、測定された核種別のγ線強度と核種別の検量線に基づいて演算処理して、放射性物質の核種別の含有量を算出する。
【0045】
そして、ステップ17において、特定した核種と含有量の表示が行われる。このとき、上述のステップ10において特定された元素とステップ11において求められた元素の含有量が併せてディスプレイ26に表示される。なお、放射性物質の元素であっても、核種が半減期の長いK−40又はCs−137等であることを判断した場合は、有害性の高いことを警告表示するようにしても良い。
その後、上述のステップ14の蓋11aのロックが解除されて、分析・測定処理が終了する。
【0046】
以上のようにして、被測定試料1に含まれる元素および/または放射性物質の核種の特定と含有量を求める処理が略同時的に行われる。そして、蛍光X線の検出とγ線の検出を同時に行い、その後で元素を特定し、特定した元素に放射性物質が含まれている場合はその核種を特定しているので、2つの別々の分析装置を用いて分析し測定する場合に比べて、全体としての分析・測定時間を短縮でき、効率よく行うことができる。
【0047】
(実施例2)
ところで、図2の実施例1では、γ線検出器15を載置部11bの下方に配置した例を示す。この実施例は元々の地表面に近い層に放射性物質が存在しているかどうかを検出するのに適している。
しかし、原子力発電所の原子炉の事故によって周辺地域に飛散した放射性物質を検出する目的の場合は、堆積層の部分(上層部分)1bを測定容易なように、γ線検出器15の配置位置を、被測定試料1の上方の位置(すなわち、収納室11c内であって載置部11bの被測定試料1を載せる位置の上部の位置)に選定することが好ましい。
そこで、図6の実施例は、γ線検出器15を、被測定試料1の上方の位置に取り付けたものである。その他の構成は、図1の実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
図6の実施例2において、例えば土壌の中の放射性物質(K,Cs等)を分析する場合、被測定試料1の採取を円筒状に行うと、下層部分1aの土壌は蛍光X線分析によってその含有量を決定され、自然由来の放射性物質の情報が得られる。一方、土壌の上層部分1bのγ線によるKの放射線測定を行うことにより、放射線汚染の度合を決定することが出来る。これら両者のデータを用いることにより、自然由来と放射線汚染によるものと分別して計測することが出来る。
【0049】
(実施例3)
図7の実施例は、γ線検出器15の配置位置を、被測定試料1を載せる載置部11bの側面としたものである。図7の実施例では、被測定試料1の上層部分と下層部分の間の部分でも、核種の特定及びその含有量が正確に行える。
【0050】
なお、その他の実施例として、分析・測定時間が多少長くかかることを許容し得る場合は、蛍光X線検出器とγ線検出器をそれぞれ独立に動作させて、蛍光X線の検出とγ線の検出をそれぞれ独立して別々に行っても良い。
より具体的には、蛍光X線検出器とγ線検出器をそれぞれ時分割的に動作させて、蛍光X線の検出とγ線の検出・分析を順次(それぞれ別々)に行ってもよい。その場合、試料室11cへ被測定試料1を出し入れする作業は1回でよいので、別々の分析装置を用いて分析・測定する場合に比べて測定時間を短縮できる利点がある。また、蛍光X線とγ線を両方同時に検出・分析する場合に比べて、最大消費電力を低減できる利点がある。
【0051】
(実施例4)
また、X線領域の計測とγ線領域の計測とを1個で両方のエネルギー領域を検出できる検出器を用いて、蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルを同時に得るように分析処理してもよい。
【0052】
(実施例5)
上述の実施例では、蛍光X線検出器14とγ線検出器15の両方を用いて、元素の特定と元素別の含有量の測定を行うとともに、放射性物質が含まれる場合には核種の特定と核種別の含有量を測定する場合を説明したが、この発明の技術思想は放射性物質の核種の特定と核種別の含有量を測定するγ線分析装置(又は放射性物質分析装置)にも適用できる。
γ線分析装置の場合は、図2の構成中、蛍光X線による元素の特定に関連する励起用X線管12,X線管制御回路13,蛍光X線検出器14及び信号処理回路16を省略して構成される。そして、分析処理では、図5のフローチャートにおいて、S4,S5,S8,S10,S11およびS13の処理を省略した、その他の処理だけによって達成される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、被測定試料に含まれる元素を特定しかつその含有量を求め、特定した元素の中に放射性物質が含まれている場合に核種を特定しかつその含有量を求めることができるので、放射性物質が含まれている可能性のある土壌等の分析に役立つ、放射性物質検出機能付の蛍光X線分析装置として産業上の利用性が高い。
【付記】
【0054】
(1) 被測定試料を載せる載置部、
その周囲を遮蔽部材で覆われ、載置部と被測定試料を収納する試料室、
載置部に載せられた被測定試料のγ線領域(50keV〜1.5MeV)を計測するγ線検出器、および
γ線検出器を動作させて、γ線のスペクトルを得る分析処理手段を備え、
分析処理手段は、γ線検出器によって検出されたγ線のスペクトルに基づいて被測定試料に含まれる放射性物質の核種を特定しかつ特定した核種の含有量を求めることを特徴とする、γ線分析装置。
【0055】
(2) γ線検出器は、載置部に載せられた被測定試料の上方に配置される、(1)に記載のγ線分析装置。
【0056】
(3) γ線検出器は、載置部に載せられた被測定試料の側面に配置される、(1)に記載のγ線分析装置。
【0057】
(4) 分析処理手段は、
測定すべき放射性物質の核種別に、γ線のスペクトルデータと強度データを登録したテーブルを含み、
被測定試料に含まれかつγ線検出器によって検出されたγ線のスペクトルとテーブルに登録されたγ線のスペクトルとを比較照合して被測定試料に含まれる放射性物質の核種を特定し、かつγ線検出器によって検出されたγ線の強度とテーブルに登録された換算データに基づいて特定した核種の含有量を求めることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載のγ線分析装置。
【0058】
(5)γ線分析装置は、単位時間毎にγ線検出器によって順次検出されかつサンプリングされたγ線のスペクトル値を時間の変化とともに所定の長い時間の間に累積して累積記憶する記憶部をさらに備え、
分析処理手段は、
測定すべき放射性物質の核種別に、γ線のスペクトルデータと換算データを予め登録したデータテーブルを含み、
γ線検出器によって順次検出されかつ累積記憶部に記憶されている所定時間におけるγ線のスペクトル値と、データテーブルに登録されたγ線のスペクトル値とを比較照合して被測定試料に含まれる放射性物質の核種を特定し、さらにγ線検出器によって検出されたγ線の強度とデータテーブルに登録された換算データに基づいて特定した核種の含有量を求めることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載のγ線分析装置。
【0059】
上記(1)ないし(3)に記載のγ線分析装置によれば、試料中に含まれる放射性物質の核種に依存するγ線のスペクトルを得ることができ、放射性物質の核種の特定に役立つ、分析装置が得られる。
また、上記(4)(5)に記載のγ線分析装置によれば、試料中に含まれる放射性物質の核種の特定とその含有量を求めることができる、分析装置が得られる。
さらに、核種の特定及びその含有量を、迅速かつ効率良く分析し測定することができる。
かかるγ線分析装置は、被測定試料に含まれる放射性物質の核種を特定しかつその含有量を求めることができるので、放射性汚染が心配される食物(例えば、米・野菜等の農作物、牛乳等の農産物、魚介類等の海産物)や、土壌等の分析に役立つ、γ線分析装置として産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0060】
1 被測定試料
10 蛍光X線分析装置本体
11 ハウジング
11a 蓋
11b 載置部
11c 試料室
11d 機器収納室
12 蛍光X線管
13 X線管制御回路
14 蛍光X線検出器
15 γ線検出器
16,17 信号処理回路
18 分析制御回路
181 CPU
182 メモリ
183 制御レジスタ回路
184,185 インタフェース
20 測定用パソコン
21 CPU
22 処理プログラム用メモリ
23 RAM(メモリ)
23a ワーキングRAM
23b テーブル記憶領域
23b1 元素テーブル
23b2 核種テーブル
24 インタフェース
25 キーボード
26 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線領域(1keV〜50keV)を計測する蛍光X線検出器、
γ線領域(50keV〜1.5MeV)を計測するγ線検出器、および
前記蛍光X線検出器と前記γ線検出器を動作させて、蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルを得る分析処理手段を備えた、蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記分析処理手段は、前記蛍光X線検出器と前記γ線検出器とを同時に動作させて、蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルを同時に得ることを特徴とする、請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記分析処理手段は、前記蛍光X線検出器と前記γ線検出器とをそれぞれ独立して動作させて、蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルを別々に得ることを特徴とする、請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項4】
X線領域(1keV〜50keV)の計測とγ線領域(50keV〜1.5MeV)の計測とを同時に行える検出器を備え、当該検出器を動作させて蛍光X線のスペクトルとγ線のスペクトルを同時に得る分析処理手段を備えたことを特徴とする、蛍光X線分析装置。
【請求項5】
前記蛍光X線分析装置は、被測定試料を載せる載置部と、載置部ならびに被測定試料を収納する試料室と、被測定試料に向けてX線を照射する蛍光X線測定用励起X線管とをさらに備えたことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の蛍光X線分析装置。
【請求項6】
前記蛍光X線測定用励起X線管は、前記載置部の下方から被測定試料に向けてX線を照射し、
前記蛍光X線検出器及び前記γ線検出器は、前記載置部の下方に配置される、請求項5に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項7】
前記蛍光X線測定用励起X線管は、前記載置部の下方から被測定試料に向けてX線を照射し、
前記蛍光X線検出器は、前記載置部の下方に配置され、
前記γ線検出器は、前記載置部に載せられた被測定試料の上方に配置される、請求項5に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項8】
前記蛍光X線測定用励起X線管は、載置部の下方から被測定試料に向けてX線を照射し、
前記蛍光X線検出器は、前記載置部の下方に配置され、
前記γ線検出器は、前記載置部に載せられた被測定試料の側面に配置される、請求項5に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項9】
前記蛍光X線検出器は、蛍光X線測定用励起X線管によって励起されたX線を被測定試料に照射させたとき、当該被測定試料に含まれる元素の励起によって生じる元素固有の蛍光X線を検出し、
前記γ線検出器は、前記蛍光X線検出器による蛍光X線の検出に関連して、被測定試料から放出されるγ線を検出し、
前記分析処理手段は、前記蛍光X線検出器によって検出された蛍光X線のスペクトルに基づいて被測定試料に含まれる元素を特定しかつ特定した元素の含有量を求めるとともに、前記γ線検出器によって検出されたγ線のスペクトルに基づいて被測定試料に含まれる放射性物質の核種を特定しかつ特定した核種の含有量を求めることを特徴とする、請求項5ないし請求項8のいずれかに記載の蛍光X線分析装置。
【請求項10】
被測定試料を載せる載置部と、載置部ならびに被測定試料を収納する試料室と、載置部に載置された被測定試料に向けてX線を照射する蛍光X線測定用励起X線管を有する蛍光X線分析装置において、
X線領域(1keV〜50keV)を計測する蛍光X線検出器、
γ線領域(50keV〜1.5MeV)を計測するγ線検出器、および
前記蛍光X線測定用励起X線管への供給電力を制御し、前記蛍光X線検出器の検出出力と前記γ線検出器の検出出力に基づいて分析処理する分析処理手段を備え、
前記蛍光X線検出器は、前記蛍光X線測定用励起X線管によって励起されたX線を被測定試料に照射させたとき当該被測定試料に含まれる元素の励起によって生じる蛍光X線を検出し、
前記γ線検出器は、前記蛍光X線検出器による蛍光X線の検出に関連して、被測定試料自体から放出されるγ線を検出し、
前記分析処理手段は、前記蛍光X線検出器によって検出された蛍光X線のスペクトルに基づいて被測定試料に含まれる元素を特定しかつ特定した元素の含有量を求めるとともに、前記γ線検出器によって検出されたγ線のスペクトルに基づいて被測定試料に含まれる放射性物質の核種を特定しかつ特定した核種の含有量を求めることを特徴とする、蛍光X線分析装置。
【請求項11】
前記分析処理手段は、特定した元素が放射性物質であるか否かを判断し、放射性物質であることを判断した後に、放射性物質の核種を特定しかつ特定した核種の含有量を求める処理を行うことを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の蛍光X線分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−36984(P2013−36984A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151065(P2012−151065)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(511165887)株式会社テクノエックス (1)
【Fターム(参考)】