説明

蜂蜜を主成分とする医療用ドレッシング

【課題】本発明は医療用ドレッシングにおける蜂蜜の使用に関する。
【解決手段】好ましい実施形態では、増粘剤で蜂蜜を改良し、軟膏や膏薬、口内潰瘍や膿疱に使用される自己接着ゲル、創傷カバーに使用可能な可撓性または柔軟性シートを始めとする広範な考え得る組成物を生成する。好ましい増粘剤には、微粒子ゲルと連続ゲルの両方が含まれ、各々の例は、寒天およびアルギン酸塩である。選択された蜂蜜は、浸透圧や糖濃度の効果から単に与えられる以外の抗菌特性を好ましくは示すが必ずしも示さなくてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用ドレッシング(手当薬)における蜂蜜の使用に関する。好ましい実施形態は、蜂蜜を増粘剤で変性させて、軟膏(ointments)および膏薬(salves)、口腔潰瘍および膿疱用などの自己接着ゲル、ならびに創傷カバーとして用い得る可撓性または柔軟性シートを含めた多様な考え得る組成物を得る。
【0002】
あるいは、本発明は、ゲル中に蜂蜜を添加して、従来技術の「湿性創傷ドレッシング」に、潜在的に、抗菌性、抗炎症性、創傷清拭性を付与し、かつ創傷組織の増殖を促進させることにより、そのようなドレッシングを改良するものとみなされ得る。
【背景技術】
【0003】
背景技術
創傷の治療に蜂蜜を用いることは昔から知られており、そのような使用は、4,000年前のシュメールの粘土板に記録されている。蜂蜜の使用は、歴史を通してずっと記録されており、今世紀初頭には医学的報告の数が増大している。最近、蜂蜜の抗菌性および蜂蜜の創傷ドレッシングとしての潜在的用途が大いに注目を浴びている。
【0004】
最近の国際的医学文献には、蜂蜜が、創傷、火傷および皮膚潰瘍用のドレッシングとして有効であると報告されている。報告された観察には、炎症、膨脹および疼痛が速やかに軽減されること、創傷清拭の必要なしに壊死組織の痂皮形成が生じること、および創傷を修復する組織の増殖が刺激されることが含まれる。その結果、最小の瘢痕で治癒が急速に起こり、多くの場合、皮膚移植の必要がない。
【0005】
本発明者他による研究は、上記の有効性が主に蜂蜜の抗菌性によるものであることを立証するのに役立っている。通常、治癒プロセスは、患部から感染菌が除去されない限り生じず、蜂蜜で手当したスワブ創傷に関する研究により、感染菌が急速に除去されることが示された。
【0006】
この点で、蜂蜜は、湿性ドレッシングとして当業界で好まれている現行の高価なハイドロコロイド創傷ドレッシングより優れているようである。治癒プロセスにおける組織の再増殖は湿性環境によって促進され、かつ組織の再増殖が組織表面上の乾いた痂皮の形成によって抑制されなければ変形が少ないが、湿潤状況は感染菌の増殖にも好都合である。従来技術が直面する問題は、この状況下には抗生物質は効果がなく、また、防腐剤は組織損傷を引き起こし、それによって治癒プロセスを遅延させることである。それに対し、蜂蜜は組織損傷を起こさず、しかも実際に治癒プロセスを促進するようである。
【0007】
当業界内では湿性ドレッシングが必要とされているが、創傷ドレッシングとしての蜂蜜に関する研究は、主として非変性蜂蜜に焦点が当てられている。上述のように、蜂蜜を用いた創傷のドレッシングは、最も広く行われている研究形態であり、本質的に、生蜂蜜を湿性ドレッシングの一部として創傷と接触状態に保とうとする方法である。しかし、そのような方法は、研究のための試みとしては有用であるかもしれないが、適用および維持に比較的多くの時間を要し、多くの状況において非実用的なことがある。
【0008】
この主因は、ほとんどの蜂蜜が比較的流動性であること、すなわち、蜂蜜が体温下には流れやすいことである。特に体温下におけるこの流動性のために、蜂蜜を所望領域に局在させることが難しいことがある。病院のベッドで行動能力が抑制された人の場合には局在させやすいであろうが、一般に、こうした難しさによって、活動している人に対する簡単
な創傷ドレッシングとしての蜂蜜の使用が妨げられている。
【0009】
したがって、非変性蜂蜜の封じ込めが解決すべき問題であるが、簡単で実用的な解決法は提案されていない。創傷の上に適用されるドレッシングにガーゼなどの吸収性材料を浸し、その上にカバーをかぶせて適切な位置に保持する方法は可能性があるが、めちゃくちゃになりがちであり、臨床的状況以外では適用が難しいであろう。例えそれが可能であるとしても、そのようなドレッシングの適用には、比較的多くの時間を要し、比較的高価な滅菌カバーを大量に用いる必要があり得る。
【0010】
別の問題は、多くの創傷が水分を滲出し、このために、蜂蜜がさらに希釈されるという問題が生じ、特に、ドレッシングに圧力がかかって、薄まった蜂蜜が押し出される場合には、封じ込め問題を悪化させることである。この蜂蜜の希釈は、それによる抗菌活性低下の可能性などの他の問題をも提起し得る。
【0011】
したがって、蜂蜜の抗菌性が認められているにも拘わらず、蜂蜜を創傷の実用ドレッシングとしての広範な用途および他の医療用途を見出し得る前に克服すべき多くの実用問題が存在する。
【0012】
同様に、アルギン酸塩タイプのものなどの従来技術の「湿性」(moist)創傷ドレッシングに関しては多くの問題が存在する。これらのタイプのドレッシングによって与えられる湿性環境は、微生物の増殖に好都合であるため、そうでなければ好ましいドレッシングとして選択され得るのに、感染性創傷には用いることができない。このタイプの特定の状況で「湿性タイプ」のドレッシングを用いた場合、多くの抗生物質を使用しても、望ましくない微生物の増殖を抑えることができなかった。したがって、薬剤は、従来技術の湿性ドレッシングタイプの全能力を常に利用することはできない。
【0013】
本明細書全体にわたって蜂蜜の抗菌性に言及する。蜂蜜の抗菌性は、当業界においては公知であり、多くの刊行物がこれらの特性を調査していることが認められる。当業者は、多くの蜂蜜が抗菌性を有し、ある種のものは他のものより強い活性を示すという範囲で、これらの刊行物の教示に精通していると予想される。したがって、本願は、ある種の蜂蜜が抗菌性を有することを立証したり、また、文書で公開されていたりいなかったりし得るすべての蜂蜜の特性を比較する特定のリストを立案しようとするものではない。蜂蜜に関する抗菌性が従来技術で立証されていることが再び確認されるであろう。参考として、そのようなことを取り扱ったいくつかの関連文献を示す:
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】− Molan,P.C.(1992)The antibacterial activity of honey.1.The nature of the antibacterial activity.Bee World 73(1):5−28.
【非特許文献2】− Molan,P.C.(1992)The antibacterial activity of honey.2.Variation in the potency of the antibacterial activity.Bee World 73(2):59−76.
【非特許文献3】− Willix,D.J.;Molan,P.C.;Harfoot,C.J.(1992)A comparison of the sensitivity of wound−infecting species of bacteria to the antibacterial activity of manuka honey and other honey.Journal of Applied Bacteriology 73:388−394.
【非特許文献4】− Cooper,R.A.;Molan,P.C.(1999)The use of honey as an antiseptic in managing Pseudomonas infection.Journal of Wound Care 8(4):161−164.
【非特許文献5】− Cooper,R.A.;Molan,P.C.:Harding,K.G.(1999)Antibacterial activity of honey against strains of Staphylococcus aureus from infected wounds.Journal of the Royal Society of Medicine 92:283−285.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
多くの刊行物は、異なる蜂蜜間の抗菌活性能に大きな変化量があることを記載している。この変化は100倍にもなることがあり、ほとんど変異のない糖含量および酸度にほとんど変化がないことに加えて、蜂蜜の抗菌因子が可変レベルであることによる。
【0016】
いくらか興味をそそられる特許文書はSilvettiに付与された米国特許第5,177,065号である。この文書は、高レベルの単糖類を組み込んだ創傷ドレッシングの製造に関する。この文書において、静菌作用を与える原因となっているのは濃縮糖溶液の浸透性である。その結果として、記載されているSilvettiの発明およびクレームは、個々の単糖類または単糖類ブレンドを主成分とするフィルム様組成物に集中している。
【0017】
Silvettiの従来技術の説明では、蜂蜜について極く簡単にしか言及されていないが、ただ、その明細書の主題のような創傷治癒製剤中で有用な抗菌作用を有していないように見える蜂蜜を民間療法として片付けている。したがって、上記文書は、ある程度興味深いものであるが、創傷被覆形態または組成物中の蜂蜜の使用から離れて、主として単糖類溶液の使用に関して教示している。
【0018】
したがって、本発明の目的は、従来技術に係わる問題に取り組むか、少なくとも人々に有用な選択を提供することである。従来技術から見て、医学的な意味で蜂蜜の使用は有用ではあるが、その使用の困難さが蜂蜜の全能力の実用化を妨げているようであり、したがって、本発明はこれにも取り組もうとするものである。
【0019】
本発明のさらなる態様および効果は、例としてのみ記載されている以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の開示
本発明の1つの態様により、1または複数の蜂蜜と増粘剤との組み合わせを含む医薬組成物が提供される。
【0021】
本発明の別の態様により、組成物の少なくとも50%は蜂蜜である、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様により、増粘剤がアルギン酸塩をベースとする物質である、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0022】
本発明の別の態様により、増粘剤は天然産物をベースとするゲル化剤である、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様により、蜂蜜と増粘剤との該組み合わせが、得られた組成物が堅い非流動性ゲルの形態となるようになっている、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0023】
本発明の別の態様により、ゲル組成物の粘度が軟膏または膏薬として適用するのに適するような粘度である、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様により、ゲル組成物の粘度が、創腔を満たす押出物として適切な粘度である、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0024】
本発明の別の態様により、ゲル形成組成物が体熱下で実質的に非流動性である、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様により、ゲル形成組成物は45℃下に実質的に非流動性である、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0025】
本発明の別の態様により、ゲル形成組成物は、創傷からの滲出液の除去に適した水の吸水剤、捕捉剤または除去剤を含み、そのために、吸水剤、捕捉剤または除去剤が存在しない類似組成物に比べて、創傷に適用した後、長時間実質的に非流動性に保たれるようになっている、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0026】
本発明の別の態様により、蜂蜜と増粘剤との組み合わせは、得られた組成物がある形状に成形し易い成形可能かつ/または可撓性のあるパテ形態になるようなものである、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0027】
本発明の別の態様により、パテ様組成物が創傷ドレッシングまたはカバーとして用いるのに適している、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様により、パテ様組成物は、それに圧力または力が加えられるまでその状態を実質的に保つ、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0028】
本発明の別の態様により、パテ様組成物が45℃までは実質的に非流動性である、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様により、パテ様組成物は、経時的にゆっくり体液に溶解する、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0029】
本発明の別の態様により、ゆっくり溶解するパテ様組成物は内部使用に適している、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様により、蜂蜜と増粘剤との組み合わせは柔軟性シート形態である、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0030】
本発明の別の態様により、シート様実施形態は創傷ドレッシングまたはカバーとしての使用に適している、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
本発明の別の態様により、シート様組成物は、1つ以上の以下の特性を有する上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
− 自由滲出液の除去を支援する、吸水成分、捕捉成分または除去成分を含有すること;− 体温下に実質的に非流動性であること;
− 体液にゆっくり溶解すること。
【0031】
本発明の別の態様により、上記形態のいずれかの組成物が、室温または貯蔵温度と比較すると、体温下に軟化して、組成物を適用または配置する創傷または創面の形状に一致するが、その形態が、標準体温まで、より好ましくは45℃まで、実質的に非流動性に保たれる、上述のものと実質的に同様な医薬組成物が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様により、上述のものと実質的に同様な少なくとも1つのシート層またはパテ様医薬組成物層を含む、創傷ドレッシングが提供される。
本発明のさらなる態様により、上述のものと実質的に同様ないくつかまたはすべての組成物の多重層からなるシートを含む、創傷ドレッシングが提供される。
【0033】
本発明のさらなる態様により、上述のものと実質的に同様な、1種、数種または全種の組成物の多重層からなるシートに加えて、追加の凝集力を与える織物を含む創傷ドレッシングが提供される。
【0034】
本発明のさらに別の態様により、裏当て部分上の少なくともある領域を被覆するために適用される、上述のものと実質的に同様な医薬組成物を含む改良型創傷ドレッシングが提供される。裏当て部分は、その医薬組成物を越えて延びる領域が、創傷周囲の皮膚表面にドレッシングを接着させるのに役立つ接着材料であり得る。
【0035】
本発明の別の態様により、裏当て部分が適当な材料からなる1つまたは複数の層を含み得る、前のパラグラフに記載のものと実質的に同様な創傷ドレッシングが提供される。
本発明の別の態様により、上記組成物のある領域が裏当て部分の少なくとも一部と重なっている、上述のものと実質的に同様な創傷ドレッシングが提供される。
【0036】
本発明の別の態様により、医薬組成物が存在する裏当て部分のある領域が、裏当て部分上の(医薬組成物が存在する)より大きな領域内に分散された医薬組成物から成るいくつかのより小さい局在領域によって区画形成されている、上述のものと実質的に同様な創傷ドレッシングが提供される。
【0037】
本発明のさらに別の態様により、ドレッシングまたは組成物に存在する蜂蜜として抗菌性または静菌性を有するものが選択される、上述のものと実質的に同様な創傷ドレッシングまたは医薬組成物が提供される。
【0038】
本発明のさらに別の態様により、選択された蜂蜜は非過酸化物抗菌または静菌成分を含む、上述のものと実質的に同様な創傷ドレッシングまたは医薬組成物が提供される。
本発明のさらに別の態様により、選択された蜂蜜が17.1%以下の含水率を有する、上述のものと実質的に同様な創傷ドレッシングまたは医薬組成物が提供される。
【0039】
本発明のさらに別の態様により、選択された蜂蜜が0.94以下、好ましくは0.86以下のAを有する、上述のものと実質的に同様な創傷ドレッシングまたは医薬組成物が提供される。
【0040】
本発明のさらに別の態様により、クロストリジウム胞子に関して照射により滅菌されている、上述のものと実質的に同様創傷ドレッシングまたは医薬組成物が提供される。
本発明は、組成物、および該組成物をベースとする製品に関する。本発明の用途には、ヒト用および家畜用の薬への適用が含まれる。
【0041】
本発明の好ましい実施形態には、静菌性または抗菌性を示す1または複数の蜂蜜が含まれる。多くの蜂蜜におけるこれらの特性は周知であるが、医療タイプの用途に蜂蜜を用いるのが難しいことは既に指摘されている。この難しさには、蜂蜜が比較的流動性であること、したがって、要求される治療領域に蜂蜜を局在させることの難しさが含まれる。また、本発明が創傷滲出液に関する問題などの第1の問題に取り組むためにその解決法の一部としてさらに取り組もうとしている他の関連問題および湿性ドレッシングに係わる感染問題も存在する。
【0042】
本発明の好ましい実施形態は、1または複数の蜂蜜(本明細書に記載の組成物においては、説明を簡略化するために、一般に、1種の蜂蜜にしか言及しないが、これは、1または複数の蜂蜜のブレンドと置き換え得ることを覚えておかれたい)と増粘剤とを組み合わせる。通常、この増粘剤の性質は、得られた組成物の流動性を実質的に非流動性である点まで増大させるような性質である。非流動性とは、斜面上に置いたときに、斜面を流れ落ちない組成物を意味する。本発明のより低粘度の実施形態は変形したり、膨潤したりしてもよいが、破断や流動が最低限でなければならない。本発明を規定するために、そのような傾斜は45°の斜面であるとみなし得る。
【0043】
さらに、本発明のいくつかの実施形態は、より高温で軟化し得ると想定される。したがって、特に断りのない限り、非流動性は、一般に、20℃の温度下に測定される。また、多くの場合、本発明の組成物は、多くの患者が高温を示し得るので40℃とみなされる体温下にも非流動性を保つことが望ましい。組成物が45℃以上まで実質的に非流動性であればなお好ましい。
【0044】
本発明は多くの異なる形態を取り得る。低粘度形態は、軟膏または膏薬として用い得る比較的軟質のゲルを含むであろう。軟質ゲルの潜在的に実現可能な利点は、カバー適用による中程度の圧力下に、創傷内に押し込まれて、表された創面と密着し得ることである。これは、そのような実施形態の1つの可能な用途を表しているが、そのようなゲル様実施形態には、創腔内に押し出すためのものなどの他の用途も存在すると想定される。潰瘍や膿疱上に用いるためのゲルや膏薬などの用途は先に述べた。ドレッシング適用表面とドレッシングとの中間に可変ゲルを用いてもよい。ドレッシングは、(本明細書のシートタイプ実施形態などの)蜂蜜ベースのドレッシングであるのが好ましい。
【0045】
用途によっては、所望位置へのドレッシングの保持または接着を支援するためにゲルを用いることも可能である。例えば、蜂蜜ベースのシート実施形態は、典型的には吸収性を有し、したがって、接触しているゲル薄層の粘度上昇を支援するのに用い得る。それ故に、ある種の装置においては、より軟らかい蜂蜜をベースとする少量のゲルを、ドレッシング用、特に潰瘍用などの接着剤として使用し得る。また、本発明の範囲内で、この原理の他の変形例および実施形態が存在すると想定される。
【0046】
そのような実施形態は、異なる方法で貯蔵および分配し得る。それらの実施形態は、通常の膏薬や軟膏のように、チューブに入れて、分配し得る。また、それらの実施形態は、開いて、内容物を使用領域に押出し得る密封カプセルまたはパッケージに入れておいてもよい。他の装置も想定される。
【0047】
本発明の他の実施形態は、パテ様と称するのが恐らく最もふさわしい実施形態である。そのような実施形態は、指で押して成形または貼り合せて造形することが可能であり、その形状は低度から中程度の圧力下でも実質的に保持される。これによって、創傷ドレッシングとして用いたときに、得られた組成物の厚みを変えることができるだけでなく、組成物を特定の用途および場所での使用に合わせて成形することができるであろう。例えば、鼻橋上の創傷を被覆するように適合されていれば、その用途は容易に想定することができる。これは、美容外科の領域に有用であり得る。
【0048】
パテ様実施形態は、(後述する)ゲルやシート様実施形態を適用できないいくつかのタイプの創傷にある程度の支持および保護を与えるのに用い得ることも理解されよう。本発明の範囲内で、種々の程度の剛性および柔軟性を有するパテ様組成物が想定される。
【0049】
本発明の実施形態の第3の主要カテゴリーは、創傷の上にかぶせられるように成形され
たシートを含むシート様実施形態である。これらの実施形態は、多様な形状およびサイズに予備成形し得るが、成形のためにトリミングしやすいようにすることも想定される。
【0050】
通常、そのような実施形態は柔軟性があり、適用される異なる外形および表面上の大きな凸凹に適合し得る。柔軟性および可撓性の程度も様々であり得、その物性は、湿性ドレッシングに用いた場合、特に、創傷滲出液、体温および他のパラメーターがそれらの組成物に影響を与えている場合には、経時的にゆっくり変化し得ることも想定される。
【0051】
本発明の医薬組成物が一般的に属する物理的形態の3つの主要カテゴリーを上述した。これらの一般的なカテゴリーに属する組成物は、例えば、創傷ドレッシング中の裏当て材料上の層などの他の製品の製造にも用い得る。これは、本発明が上述のもの以外の他の形態を取り得ないというのではなく、説明を容易にするために、種々の実施形態をこれら3つの主要グループに分類するのがより便利であるとの結論に達したからである。そのような分類は、種々のカテゴリー間でオーバーラップし得る、本明細書で後述する本発明の医薬組成物の製造および使用に関する種々の可能な方法の説明に役立つであろう。これらのカテゴリー間には明確な境界はなく、1つのカテゴリーが次のカテゴリーに合流する領域があるだけである。
【0052】
本発明の種々の実施形態は、非流動性であることの他に、他の特性を有することも想定される。例えば、本発明の医薬組成物は、創傷面または他の表面にできる限り密着するのが望ましい。多くの場合、表面にはいくらか凸凹があるので、本発明のシートおよびパテ様実施形態は必ずしもそのように密着させ得ない場合があり、そのためには、一般に、ゲル様実施形態の方が適しているであろう。これによって、シートまたはパテ様実施形態の上に重なる層における中間的なゲル組成物存在を確実にするか、または密着度を増大させる他の方法を考えるというオプションが与えられる。
【0053】
そのような後者の1つの方法は、取扱いおよびトリミングのために室温下では比較的堅いが曲げることができ、体温下または体温を大きく超えない温度下では実質的に軟化するような組成物をあつらえることである。この軟化は、上に重なっている組成物をゆっくり創傷の型に成形するかまたは創傷の輪郭に合わせて成形し得る程度でなければならず、成形プロセスは数分から数時間にわたって起こり得る。また、そのような実施形態において、創傷の上に比較的薄い材料層をかぶせ、局所的に軽く熱を加えて、この材料を軟化させ、この材料が適用される表面にぴったり合うようにすることも想定される。そのような昇温軟化性実施形態の場合、加熱に必要な温度は、40〜50℃の範囲、好ましくは、この範囲の下限近くであるのが理想的である。
【0054】
密着性を増大させる他の方法または代替法として、水分の存在下に軟化または膨潤する実施形態も考えられる。そのような場合、これらの実施形態は、創傷滲出液と反応させるか、またはドレッシングもしくはカバーを付ける前に創傷に加えられる細かい水スプレーと反応させ得る。これは、本発明の多くの実施形態はゲル化物質をベースとしているので、適切なゲルの選択、または適切な量の種々のゲルの組み込みにより実現可能になる。この実施形態の場合も他の実施形態の場合も、配合が異なる本発明の組成物の多重層からなるシートを用い得ることも想定される。したがって、水軟化/膨潤性組成物層をより堅い組成物層に適用し得る。上述の感熱性実施形態用に、類似の多層テクノロジーを組み込んでもよい。
【0055】
種々の実施形態に組み込み得る他の変法には、創傷滲出液などの自由水分を減少させる手段が含まれる。そのような実施形態は、ドレッシング下領域を湿ってはいても濡れていない状態に保つことを確実にする部分的吸い取り作用を果たす。この場合も、創傷から一定量の水分を吸収し得る適当に選択されたゲル化剤の使用を含み得る。そのような作用を
果たし得る他の成分を添加してもよい。それらの成分としては、吸水成分や、(化学反応によって機能し得る)脱水成分などがある。
【0056】
本発明の実施形態は、それらの最も単純な形態において、蜂蜜と適当な増粘剤との組み合わせを含むであろう。通常、この増粘剤はゲル形成物質を含む。
適当な物質の選択には多くの考慮すべき事柄が含まれるであろう。そのような考慮すべき事柄には、医療用または目的用途に対する適性;経時的安定性;蜂蜜との適合性;ならびに所望の物性、例えば、可撓性および強度などを有する製品を形成する能力が含まれる。他にいくつかの考慮すべき事柄があり、一般に、これらの少なくとも一部は、特定の実施形態の使用者および意図する目的の要件によって決定されるであろう。
【0057】
多くの適当な増粘剤が利用可能であるが、先に示したように、本発明の好ましい実施形態はゲル化剤に依存するであろう。種々のゴムおよび単糖類、アルギン酸塩、ならびに合成および天然の高分子化合物を含めた多くのゲル化剤が利用可能である。そのようなゲル化剤は、当業界、特に、食品および医療分野では周知であり、したがって、本明細書で後述するいくつかの代表的な例を除いて特に詳細には説明しない。医療タイプの用途におけるゲル化剤の使用に関連するいくつかの有用な従来技術としては、米国第4,948,575号、米国第5,674,524号、米国第5,197,945号、米国第5,735,812号、米国第5,238,685号、米国第5,470,576号、米国第5,738,860号、米国第5,336,501号および米国第5,482,932号がある。医療用、特に創傷ドレッシング用の種々のゲルおよびポリマーの使用に関連する多くの他の特許明細書も存在することも確かである。これらの文書は、本発明に使用し得る種々の増粘剤に対するバックグラウンドとして参照される。
【0058】
好ましい実施形態は、所望粘度の製品(例えば、ゲル、パテまたは可撓性シートなど)を形成するためにアルギン酸塩に依存する。アルギン酸塩は、そのゲル製品の物性が比較的制御しやすいようなので、本発明に用いるのに特に適しているようである。さらに、アルギン酸塩は、多くの医療用途に好適であることが証明されている。
【0059】
通常、ゲル化アルギン酸塩を、蜂蜜や他の任意の成分と合わせる。アルギン酸塩を選択することにより、蜂蜜とブレンドするとゲル化するアルギン酸塩を用いるか、および/または多価カチオンが導入されるとゲル化するある種のアルギン酸塩の認められている別の特性に依存することができる。この後者タイプの場合、通常は多価カチオンであるゲル促進剤を導入して、所望粘稠度のゲル製品を形成し得る。この時点で、より堅い実施形態を所望の形状に「固化」させるために、さらに、任意の成形、押出または二次成形プロセスを実施する必要がある。任意の製造プロセスに、ブロックからのシートの切断などの最終形態への機械加工(例えば、スライシング)を組み込むこともできる。
【0060】
アルギン酸塩は、場合によっては、導入されたカチオン、または既に選択されたアルギン酸塩の一部であるカチオンが有益であり得るという別の潜在的に実現可能な利点を有している。例えば、カルシウムは血液凝固を促進し得るので、出血がある場合に用いられる実施形態としてカルシウム含有アルギン酸塩を選択し得る。使用者にある程度の選択を提供し得る種々のアルギン酸塩中に存在するか、または導入し得る多様なカチオンも存在するが、アンモニウムイオンなどの潜在的に細胞毒性のイオンに注意を払う必要がある。
【0061】
他の潜在的に有用なゲル化剤には、ハイドロコロイドおよびハイドロゲルが含まれる。これらの成分は、水分を吸収して湿性治癒環境を形成する傾向があるが、アルギン酸塩ほど液体を吸収しない。したがって、これらの成分は、アルギン酸塩がより良い性能を発揮する傾向がある、滲出液の多い創傷用の実施形態には用いられないと想定される。しかし、種々の増粘剤の組み合わせは、特定の実施形態において、特に、各増粘剤が、使用者に
必要とされる特定の規格を満たす助けとなる僅かに異なる特性を与える場合に、使用し得ると想定される。例えば、ハイドロコロイドおよびハイドロゲルは、創傷から吸収される液体量などの性質を変えるためにゲル化ブレンドに混入し得る。
【0062】
本発明の種々の実施形態には他の任意の材料を加え得る。それらの一部は既に述べたが、他のものもある。それらには、特に、蜂蜜の能力を伸ばしたり、または蜂蜜の性能を高めたり補ったりする問題に取り組む種々の活性医薬品が含まれ得る。その例としては、殺かび剤、追加の抗菌剤などがある。
【0063】
場合により含まれる他の成分には、本発明の実施形態の粘稠度や物性を変え得る充填材が含まれる。特に、パテは、それらの物性を変えるために種々の固体粒子を含み得ると想定される。シートなどのより固い実施形態の物性でさえも、特定の充填材を混入させることにより変えることができる。これらの充填材としては、実質的に不活性であるか、またはある種の活性を示し得る種々の粒状または顆粒状材料が含まれ得る。その例としては、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウムなどがある。他の充填材には、小ビーズなどの可撓性または軟質成分が含まれ得る。これらは、高分子材料であってもよい。本発明に用いるためには、医薬産業において広く用いられている種々の充填材が考慮され得る。
【0064】
さらに、物性を変えるために、繊維などの非粒状材料を混入させてもよい。種々の実施形態に、ランダムに配置されたアルギン酸塩繊維ストランドを加えたり、またはアルギン酸塩繊維織物材料を埋封もしくは混ぜたりしてもよい。これら単独、またはこれらに他の充填材を加えて、本発明の種々の形態の物性を有意に変えることもできる。
【0065】
この原理の範囲を拡張するものとして、本発明のいくつかの実施形態を適当な裏当て材にとり付けることが望ましい。この裏当て材は、蜂蜜組成物と他の裏当て層との間の中間層として、蜂蜜組成物を被覆する保護カバーとして、または蜂蜜組成物の物性をさらに変えるための作用を含めた多くの役割を果たし得る。特に、これらの構成は、通常、本発明のシート様実施形態に用いられ、ゲル化時に裏当て材に結合するように非ゲル化組成物を裏当て材に適用することを含めた多くの種々の製造技術、または蜂蜜組成物が実質的にゲル化もしくは二次成形された後でゲル化蜂蜜組成物を裏当て材に結合させる技術を含み得ると想定される。変形例および他の製造技術も可能である。
【0066】
製造時にさらに考慮すべき事柄としては、ある種の蜂蜜の抗菌作用の少なくとも一部は、過酸化水素を生成させる酵素の存在に基因することである。多くの酵素に関して、それは感温性であり、したがって、どの製造法でも、酵素を有意に不活化させる程度までは蜂蜜を加熱しないようにしなければならない。本出願人により実施された予備実験において、実質的に酵素を分解させることなしに、60℃の最大温度を1時間持続できた。これらのファクターはどの製造法にも影響を与えるであろう。
【0067】
本発明の他の態様は、添付図面を参照し、例としてのみ示されている以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ドレッシングの可能な実施形態の斜視図。
【図2】ドレッシングの1つの可能な実施形態の側面図。
【図3】ドレッシングの他の可能な実施形態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0069】
実施例1
この実施例群は、蜂蜜用のゲル化剤および増粘剤としてのアルギン酸塩の使用に基づい
ている。
【0070】
一般手順として、アルギン酸ナトリウム微紛(他のアルギン酸アルカリ金属の使用も考え得る)を、約60℃に温めた蜂蜜とブレンドする。蜂蜜中の過酸化水素生成酵素の分解を避けるように、上記温度を超えないことが望ましい。
【0071】
アルギン酸塩がゆっくり溶解し、蜂蜜から水分を吸収するにつれ、ゲル形成が始まる。このプロセス中、まだブレンドおよびゲル化されていないアルギン酸塩が沈殿しないように攪拌を続ける必要がある。
【0072】
この時点で、最終製品の性質に応じていくつかの任意手順を行い得る。例えば以下の通りである。
実施例1a
高粘度製品(例えば、シート)を得るためには、ロール手順を実施し得るに十分な程度にゲル化したら直ぐ、ゲルを所望の厚さのシートにロールしなければならない。シートは、アルギン酸塩の水和を完了させ、かつこの特定の製品に関して達成すべき完全粘度を得るのに十分な程度に高い温度に維持しなければならない。例えば、これは、60℃で約1時間か、またはより低い温度の場合にはより長い時間であり得る。これは、選択された蜂蜜の性質、選択されたアルギン酸塩の特性などに応じて異なり得、したがって、使用者が必要とする精密な特性を有する実施形態を達成するためにはいくつかの小実験が必要となり得る。
実施例1b
実施例1aの代替例の低粘度製品(例えば、ゲル製剤またはある種のパテ)として、所望の形状にパックまたは成形する前に、ブレンドした混合物を高温下に保持して、アルギン酸塩の水和を完了させ、完全粘度を達成させなければならない。この方法により、いくつかの軟質シート様実施形態を形成することもできる。
実施例1c
パテなどの中間製品を得るためには、アルギン酸塩が蜂蜜全体に実質的に均質に分散された後、ゲル化プロセスが起こっている間に、得られた製品(例えば、繊維)の物性を変える任意の充填材および添加材を選択的に導入する。そのような添加材の混入は他の時点で行ってもよいが、アルギン酸塩を添加する前に添加材を混入すると、場合によっては、アルギン酸塩と蜂蜜とがブレンドしにくくなる可能性があり、また、もっと後の段階での添加、例えば、ゲル化が実質的に起こった後での添加は、実施形態によっては、より難しくなり得る。
実施例2
多くのアルギン酸塩は、多価カチオンが存在すると、ゲル化性および架橋性も示す。多くの場合、多価カチオンは、より固く、可溶性の低いアルギン酸塩材料を形成する傾向があり、したがって、得られた製品の物性を変えるために多くの実施形態に用い得る。通常、そのような変性は、主として、シート様実施形態用に、特に得られたシートの強度または可溶性を増大させる方法として用いられる。
【0073】
多価カチオンは、ブレンド手順中に多価カチオンの可溶性溶液を導入することを含めた、多くの方法で導入し得る。これは、蜂蜜とブレンドされているアルギン酸ナトリウム(またはその他)のすべての分散および水和に干渉する増粘反応を回避するように、ブレンドのゲル化が始まった後で行うのが好ましい。しかし、異なる時点で多価カチオンを添加すれば、理論的には得られた製品の特性を実質的に変えることが可能になり、したがって、目的とする最終用途および使用者の要件に応じて種々の実施形態の物性を適合させ得るように使用者に多くのオプションを利用できる状態に保ち得ることが理解されよう。
【0074】
多様な多価カチオンを用い得るが、毒性を考慮する必要がある。種々のゲル化および架
橋反応を促進させるために、塩化カルシウムなどの可溶性カルシウム塩を比較的低濃度で導入し得る。
実施例3
この実施例は、ゲルからシートへの成形に関する。これは、実施例1aまたは1b由来等のゲルを、実験室規模では、プラスチックまたはワックスペーパーからなるものであった非湿潤性物質シートの間に配置し、これを均一な厚さにロールすることによって達成し得る。
【0075】
変形例としては、ゲルを流し込む前に、下側の非湿潤性シートの上にガーゼ織物または他の適当な材料を配置し得る。ロール手順が完了すると、ガーゼにシート様ゲルが接着する。図3の上側の図3aは、そのような実施形態の結果を示しており、ゲル化蜂蜜のシート(31)が少なくとも部分的にガーゼまたは同等な材料(33)に含浸または接着されている。
【0076】
他の変形例としては、ゲルの中心に補強材を供給し得る。この場合、下側のシートを被覆するためにゲル層を流し込み、次いで、ガーゼ(または他の補強/裏当て材)、続いて別のゲル層を配置する。次いで、ロール手順を実施して、ガーゼまたは織物がシート内に埋封されたシートを得る。図2aは、そのような方法の結果を示しており、ガーゼ(または他の適当な材料)(23)はゲル化蜂蜜(21)内に埋封されている。他のオプションとして、これを他の裏当てシート(25)に接着してもよい。これは、ガーゼ(23)と上側のゲル層を配置する前に、裏当て層(25)の上に下側の第1ゲル化蜂蜜層(21)を流し込むことにより達成し得る。
【0077】
この方法の変形例として、ゲルを2つの薄いシートに成形し、次いで、(まだ高温下に)ゲルシート間にガーゼをはさみ、サンドイッチ層上でロールプロセスを再実施し得る。実施例4
高吸収性であり、かつ滲出液の多い創傷に用いるのに適した高粘度製品を得るためには、1gのアルギン酸ナトリウムと5±2.5gの蜂蜜とを用いて上述の手順を実施する。実施例5
中程度接着性、中程度吸収性であり、かつ滲出液の少ない創傷に用いるのに適した柔軟性製品を得るためには、1gのアルギン酸ナトリウムと10±2.5gの蜂蜜とを合わせる。
実施例6
乾いた創傷に用いるのに適した高柔軟性かつ接着性製品を得るためには、1gのアルギン酸ナトリウムと15±2.5gの蜂蜜とを合わせる。
実施例7
(チューブにパックされたものなどの)ゲルとして用いるのに適した低粘度製品を得るためには、1gのアルギン酸ナトリウムと17.5g以上、好ましくは約20gの蜂蜜とを合わせる。
実施例8
パテ様生成物を得るためには、実施例6および7に略記した組み合わせに、所望の粘稠度を得るのに十分な微細な充填材を添加する。好ましい充填材には、炭酸カルシウム微紛が含まれる。この成分は、不溶性であるにも拘わらず、ゲル化がまだ起こっている間に添加すると、どのゲル化反応にもある程度の影響を与える。多価カチオンに関する上記説明を参照されたい。血液凝固の促進におけるカルシウムの役割にも留意されたい。
【0078】
パテの弾性、柔軟性および他の物性を変えるために、これらの実施形態に、ハイドロゲルや種々のコロイドなどの他のゲル化剤を添加してもよい。これらは、ゲル化に貢献するブレンド成分の形態であっても、充填材としてゲル混合物にブレンドされる固形成分であってもよい。
【0079】
これらの方法は、他の実施形態にも用い得る。例えば、図3の下側の図3bは、ゲル化マトリックス(31)中に分散された繊維ストランド(35)(例えば、アルギン酸塩繊維)や粒状物質(37)の存在を示している。
実施例9
この実施例は、本発明に用いるための蜂蜜の選択に関する。
【0080】
これに関しては、大量の情報が、本明細書の始めの方に記載した従来技術、特に、本願発明者であるPeter Molanによる特定の刊行物ですでに言及されている。これらの刊行物は、種々の蜂蜜の静菌作用および殺菌作用に言及しており、したがって、有用な殺菌性蜂蜜を同定するためにこの文献を参照し得る。
【0081】
さらに、多くの蜂蜜のモル浸透圧作用および過酸化物作用は蜂蜜の抗菌性に貢献し、一方、研究により、ある種の蜂蜜では他の成分も殺菌作用に貢献することが示されたことの特に言及する。本発明に用いるには、特に、長時間貯蔵され、蜂蜜中の過酸化物生成酵素を分解し得る条件下に使用され得るドレッシングおよび実施形態には、これら後者の蜂蜜群が好ましいと考えられる。
【0082】
また、実施形態によっては、(酵素の分解を回避するために)製造中蜂蜜に課される最大温度限界は過度に制限的になると想定され得る。そのような場合、過酸化物以外の殺菌作用を有する蜂蜜は、活性成分のなかに感温性が低いものがあるようなので有用であり得る。
【0083】
本発明に用いるのに好ましい蜂蜜には、例えば、マヌカやジェリーブッシュなどのleptospermum種由来の蜂蜜が含まれる。これらの蜂蜜は、過酸化物関連抗菌性に加えて、存在する非過酸化物因子から生じる有意な抗菌性を示す傾向がある。
【0084】
その他の興味深い蜂蜜には、レワレワ(Knightia excelsa)、カヌーカ(Kunzea ericoides)由来のものや、ブナ(Nothofagus solandri)上に存在する蜜由来のものが含まれる。
実施例10
分散された粉末形態のゲル化剤を含む蜂蜜のゲル化に要するよりも加熱が少なくて済む製造プロセス代替法は、温水中でゲル化剤を水和し、次いで、このゲル化剤溶液を蜂蜜と混合し、次いで、混合物に熱および/または空気流を加えて乾燥させて、混合物のフィルムを形成するものである。この製造プロセス代替法は、ペクチンまたは植物ゴムなどのアルギン酸塩ほど容易には水和しないゲル化剤に用いる場合に特に有用である。
実施例11
どの製造プロセスにおいても最終的に考慮すべき事柄は、蜂蜜中の汚染物質の存在である。天然物であっても、蜂蜜には多様な天然汚染物質が存在し得る。これには、特定の花で作られた蜂蜜由来の毒性物質が含まれ、理想的には、これらの蜂蜜は、特定の用途においてそのような物質を混入する利点がある場合を除いて避けるべきである。例えば、多くの毒性植物は、制御量で用いた場合に特定の医療用途を有するジギタリスなどの化学物質を産生する。
【0085】
より一般的な問題は、クロストリジウム胞子などの微生物胞子である。しかし、これらの胞子は、蜂蜜の抗菌活性を破壊することなく、蜂蜜にγ線を照射することによって除去し得ることが証明されており、したがって、種々の実施形態に合わせた照射技術が考えられる。
実施例12
大規模にゲル化蜂蜜を裏当て支持体に適用する方法は、本明細書に記載したものと実質
的に異なり得る。1つの選択肢は、ゲル化組成物をそれが完全に固化する前に支持体上に「プリント」または「ペイント」する方法である。そのために、支持体材料の複数の適切な領域に複数のゲル化組成物領域をプリントまたはペイントすることができ、次いで、それを、ドレッシング用などの適切なサイズにトリミングし得る。
【0086】
図1aは、この方法を用いて(他の方法を用いてもよい)製造したドレッシング(11)を示している。この場合には、支持体(15)内の中心にゲル化蜂蜜マトリックス領域(13)が適用されている。
【0087】
図1bは、これらの実施形態において、ゲル化組成物層が連続である必要はなく、複数の小領域(17)からなっていてよいことを示す拡大図である。こうすることによって、より開放された呼吸可能な創傷接触部分が得られ、これは、場合により有利であり得る。
【0088】
さらに、本明細書に記載されている種々の技術を合わせて多くの異なる特徴を包含するもっと複雑な実施形態を作製することができる。
実施例13
本発明の種々の実施形態の用途は様々である。シート様実施形態は慣用ドレッシングが用いられているものと類似の用途に用いられると想定される。
【0089】
ゲルや膏薬は、慣用のゲルや膏薬のように使用し得る。ゲルや膏薬は、抗菌性を有する多くのゲルおよび膏薬を用い得ない用途を代表する創腔に直接適用し得る。口内潰瘍および膿瘍ならびに歯肉疾患のための口腔内局所使用は種々のゲル様および他の実施形態の別の可能な用途である。
【0090】
ゲル様実施形態は、基体(例えば、皮膚または創傷など)と、ドレッシング、好ましくは本明細書に記載のものなどの蜂蜜ベースドレッシングとの間の中間体としても用い得る。これは、空気空間をなくし、ドレッシングが合致し得ない基体表面の凸凹を充填する助けとなり得る。
【0091】
さらに、乾性環境下にある場合、多くのゲル様実施形態は粘度を上昇させ得る。(創傷周囲などの)乾いた皮膚と(本明細書に記載の蜂蜜ベースドレッシングなどの)吸収性ドレッシングとの間で用いられるゲルは、そこから水分が移行するにつれ経時的に厚みが増してくる。そのような場合、適用されたゲルは、ドレッシングを適切な位置に保持するのに役立つ弱い接着剤または結合剤の役割を果たし得る。これは、例えば、潰瘍、せつ(boil)、膿疱、カルブンケル、にきび、および多様な他の「乾性」患部の周囲を含むと共に、創傷および他の損傷領域を取り囲む正常な乾いた皮膚を利用する多くの用途に有用であり得る。
【0092】
より厚く可撓性があり成形可能な実施形態は、創傷領域にある程度の支持が必要とされ得る用途を含めた用途を有する。そのような実施形態は、歯や歯肉用の暫間充填またはカバーを含めた歯や口用にも利用し得る。
【0093】
本発明の種々の実施形態には多様な可能な用途が存在することが理解されよう。そのような多くの用途は、本明細書に記載されている説明を読めば当業者には明らかになることが分るであろうし、また、本明細書に記載されている可能な用途の限定範囲および実施例は例に過ぎず、可能な用途の全範囲を表すものではないと認識されたい。
実施例14
以下のデータは、本発明の種々の実施形態の個々の事例試験の結果を表している。
実施例14a
滲出液が多い足部の潰瘍において、初期治療は、滲出液が多い創傷用に売られているア
ルギン酸塩ベースのドレッシングから成っていた。長時間にわたって、観察可能な進展がなかった後で、本発明の創傷ドレッシングを試した。これは、創傷を被覆して配置された厚さ5mmの柔軟な高アルギン酸塩率(アルギン酸1部:蜂蜜5部)シートからなり、その上に包帯をした。創傷ドレッシングは毎日取り換え、新しいシートを適用した。滲出液はドレッシングで十分に吸収された。観察可能な結果は、数日内に創傷からの滲出液が有意に減少したことであった。創傷は処理しやすくなり、従来技術のアルギン酸塩ドレッシングに係わる問題は排除された。
実施例14b
足の裏の糖尿病性足部潰瘍では、可撓性シートの実施形態を用いた。ほとんどの従来技術ドレッシングは、足にかかる重みで押し出されるので、この位置には不適であった。これは、滲出液が多い創傷ではなかったが、堅いシートを得るために、高アルギン酸塩率(1:5)を用いた。糖尿病性足部潰瘍の治癒が困難であることは知られており、本発明を使用するまで従来技術製品で何度も失敗を繰返し、なんら改善も治癒も得られなかったにも拘わらず、創傷は満足すべき治癒を示した。
実施例14c
砕かれて感染により顎骨が腐蝕した顎では、慣用法を用いて18ヶ月かけてもなんら改善が見られなかった。患者には痛みがあり、時折、痛烈な痛みが襲った。この場合には、柔軟なパテ(1:5比のパテ)を用い、創傷を被覆するように適切な形状に適合させた。このドレッシングは、(唾液によりパテが部分的に溶けるので)数時間間隔で定期的に取り換えた。創傷の治癒は満足すべき速度で進行し、追加利点として痛みが急速に緩和された。
実施例14d
皮膚移植組織を固定させるために、移植組織上に固体ゲルに固化させる寒天を用いる代替実施形態を使用し得る。これは、手術により移植組織を適切な位置に保持するために時折ドレッシングを用いる現行慣例に従うものである。通常、シートタイプの実施形態は1〜10重量%の寒天を利用する。ガーゼシートを厚さ1mmのゲル(寒天約1%)に埋封する。先ず、寒天溶液を加熱して溶かし、次いで、加熱した寒天溶液を冷たい蜂蜜に入れて攪拌する。次いで、これをガーゼ上に適用して埋封する。それによって、粘着性を有する軟質柔軟性シートを得る。これは、移植組織または創傷などの上に重ねることができ、粘着性によって、皮膚にくっついて、滑らなくなる。
【0094】
この実施形態は、水と結合するが、粒子が互いに回転して柔軟性と成形性とを与え得る連続ゲル(例えば、アルギン酸塩)とは反対に、粒状ゲル(例えば、粒子が3−dネット中で互いにくっついている寒天)を利用する。異なる実施形態は、これらのタイプのゲル化剤の一方または他方を用い得る。異なるゲルタイプをブレンドして、中間の特性を有する製品を得ることもできる。
実施例14e
1つの他の用途は、にきびの上に、より軟質の製剤(通常、1:10〜1:20のアルギン酸塩タイプ)を用いるというものである。同様に、せつなどの上にも用いられる。そのような実施形態は、粘着性プラスターより控え目なものであり、口内潰瘍にも用い得る。にきび用の実施形態は、ゲル、膏薬または軟膏の形態であってよく、顔料(好ましくは肉色)および/または硫黄などの他の成分を含み得る。
【0095】
本発明の態様は例としてのみ記載されており、本発明の範囲を逸脱しない限り、これらの態様に対する変更および付加を行い得るものと理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの蜂蜜と少なくとも一つのゲル化化合物との組み合わせを含み、組成物中のゲル化化合物の量が、得られた組成物を該組成物を適用する創傷に適合するように成形可能な柔軟性シートまたは可撓性パテにする量であり、組成物の少なくとも50重量%が前記少なくとも一つの蜂蜜であり、前記少なくとも一つのゲル化化合物がアルギン酸塩を主成分とする材料である創傷を手当するための柔軟性シートまたは可撓性パテ用医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−6971(P2012−6971A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203171(P2011−203171)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【分割の表示】特願2001−543121(P2001−543121)の分割
【原出願日】平成12年12月11日(2000.12.11)
【出願人】(504160172)アピメド メディカル ハニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Apimed Medical Honey Limited
【Fターム(参考)】