説明

融合データ低血糖警告を閉ループ血糖管理システムに組み込むためのシステム及び方法

患者の体に注入されるインスリンの流量を管理する方法及びシステムが記述される。インスリン注入装置(58)は、患者の体にインスリンを注入する。第1のセンサ(52)は、患者の血糖値を示すBGLデータを生成する。第2のセンサ(48)は、患者の自律神経系の少なくとも1個のパラメータに依存して心拍数データなどのANSデータを生成する。データ融合プロセッサ(56)は、BGLデータ及びANSデータを受け取り、低血糖事象が推測される場合に出力警告信号を生成する。インスリン注入装置のインスリン流量は、出力警告信号に依存して変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉ループ血糖管理システムに関し、特に管理システムへの安全機能の組み込みに関する。
【背景技術】
【0002】
重要な研究によれば、糖尿病の長期合併症の防止における厳格なグルコース管理の有効性が示された(例えば、「インスリン依存性糖尿病における長期合併症の発生及び進行に対する糖尿病集中治療の効果(The effect of intensive treatment of diabetes on the development and progression of long−term complications in insulin−dependent diabetes mellitus)」に関する糖尿病管理及び合併症試験研究グループ(the Diabetes Control and Complications Trial Research Group)の報告書N Engl J Med.1993;329:977−986及び英国前向き糖尿病研究グループ(the UK Prospective Diabetes Study(UKPDS)Group):「従来の治療と比較したスルホニル尿素又はインスリンを使用した集中的血糖管理及び2型糖尿病患者における合併症のリスク(Intensive blood−glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes)」Lancet.1998;352:836−853を参照されたい)。
【0003】
それにもかかわらず、糖尿病患者の多くは、推奨された血糖目標を達成していない。多数の糖尿病患者にとって、検出されない低血糖に対する目先の不安は、厳格なグルコース管理を実際に成し遂げる際の障害である。連続グルコース監視システム(CGMS:continuous glucose monitoring systems)の開発の進歩は、閉ループ血糖管理システムへの組み込みによって糖尿病治療を改善する大きな可能性をもたらした。しかし、閉ループ管理システムの全般的な実施は、確実に正確な低血糖警告システムがないので制限されている。概して正確ではあるが、低グルコースレベルでは、CGMSは、一つには較正オフセット効果及びドリフトのために、かなりのノイズがある。したがって、血糖管理のための閉ループシステムの実施は、低血糖状態でインスリンを注入し続けるCGMSに基づいた閉ループシステムの起こりうる重大な、更には致死的な結果に由来する安全上の懸念によって制約される。この制約は、ユーザが眠っているときに特に重要である。睡眠中、低血糖の自覚は困難であり、ユーザが単独で修正できる可能性は低い。
【0004】
これらの状況では、許容される偽陽性警告率を維持しながら、低血糖に感受性のある血糖管理システムが必要である。
【0005】
本明細書において任意の従来技術に言及することは、この従来技術がオーストラリア若しくは任意の他の法域における常識の一部を形成するということ、又はこの従来技術が、当業者によって関連すると確認され、理解され、さらにみなされることが合理的に予想され得るということを、認めるものでも、何ら示唆するものでもなく、そのように解釈すべきでもない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術のシステムに伴う問題の1つ以上を克服する、又は少なくとも改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
インスリンポンプ又は類似装置を制御する注入カットオフ信号を含めて、重要な安全性出力を生成するために、実質的に統計的に無関係である2つのデータ源を融合するシステムを本明細書で開示する。一構成においては、データ源の一方は、連続グルコース監視システム(CGMS)に由来し、他方は自律神経系(ANS)データに由来する。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、患者の体に注入されるインスリンの流量を管理するシステムであって、
使用時に患者の体にインスリンを注入するインスリン注入装置、
使用時に患者の血糖値を示すBGLデータを生成する第1のセンサ、
使用時に患者の自律神経系の少なくとも1個のパラメータに依存したANSデータを生成する第2のセンサ、及び
BGLデータ及びANSデータを受け取り、受け取ったデータに基づいて、低血糖事象が推測される場合に出力警告信号を生成する、プロセッサ、並びに
出力警告信号に依存したインスリン注入装置のインスリン流量を変更する制御装置
を備える、システムが提供される。
【0009】
広義には、本発明は、注入カットオフ信号を生成してインスリンポンプを制御するために、実質的に統計的に無関係である2つのデータ源を融合するシステムに関する。データ源の一方は、連続グルコース監視システム(CGMS)に由来し、他方は自律神経系(ANS)データに由来することができる。
【0010】
本発明の別の一態様によれば、インスリン注入装置によって患者の体に注入されるインスリンの流量を監視する方法であって、
患者の血糖値を示すBGLデータを受け取ること、
患者の自律神経系の少なくとも1個のパラメータに依存したANSデータを受け取ること、
ANSデータとANSデータの時間遅延バージョンとの差に基づいてANS差信号データを維持すること、
BGLデータが低血糖事象を示した場合に第1の中間警告をトリガすること、
ANS差信号が低血糖事象を示した場合に第2の中間警告をトリガすること、
第1の中間警告及び第2の中間警告がトリガされた場合にインスリン注入装置に警告信号を出力すること
を含む、方法が提供される。
【0011】
本発明は、BGLデータ及びANSデータを分析する方法を実装するデータ融合プロセッサによって実行可能な命令、並びにデータ融合プロセッサによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されたときのかかる命令にも存する。
【0012】
本明細書では、文脈上、他の意味が要求されないかぎり、「含む(comprise)」という用語及び「comprising」、「comprises」、「comprised」などの該用語の変形は、更なる添加物、構成要素、整数又はステップを除外しないものとする。
【0013】
本発明の実施形態を図面を参照して以下に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】血糖監視装置と患者の自律神経系(ANS)に関するデータを測定する監視装置からのデータを融合する、閉ループ血糖管理システムの模式的ブロック図である。
【図2A】本発明の実施に使用することができる胸部ベルト送信機の略図である。
【図2B】図2Aの送信機と併用することができる受信ユニットの略図である。
【図3】ユーザのANSデータを監視し、低血糖事象が検出された場合に警告をトリガする方法の流れ図である。
【図4】ANSデータ及び血糖値(BGL)データを監視し、処理する方法の流れ図である。
【図5】閉ループインスリン注入システムを使用して、BGLとANSデータを融合し、患者における低血糖事象を検出する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載の方法及びシステムは、インスリン又は他の治療薬の連続注入が重大な傷害又は死を引き起こしうる状況における閉ループ血糖管理の問題の解決策を提供することを目的とする。上記方法は、CGMS血糖値/トレンドデータと患者の自律神経系に関する情報の融合を使用して危険警告機能を提供する。
【0016】
この危険警告機能は、閉ループシステムに組み込まれて、誤報の発生率を余り変えずに、ユーザの血糖値が望ましい値よりも低下した状態での連続注入を修正(例えば、停止)する。
【0017】
図1は、血糖管理システム50の略図である。連続グルコース監視システム(CGMS)52は、患者の血糖値(BGL)を定期的に測定する。かかる監視装置は、メドトロニック(Medtronic)を含めた供給業者から市販されており、典型的には、患者の皮下にある使い捨てセンサからなり、定期的に交換される。CGMS52からの出力信号は、BGL測定値を表示し、更に処理する受信ユニットに伝達される。CGMS52は、典型的には、5分ごとに1回又は1分ごとに1回測定値を示す。
【0018】
監視装置48は、患者の自律神経系(ANS)に関する情報を測定する。このデータは患者の心拍数を含む。ANS監視装置48からの出力は、低血糖事象を検出するモジュール54によって処理される。ANS監視装置48及び低血糖検出モジュール54の一例を図2A及び2Bを参照して以下に記述する。
【0019】
CGMS52及び低血糖検出モジュール54の出力は、データ融合モジュール56で処理されて、低血糖事象が検出された場合に警告機能を発揮する。低血糖検出モジュール54及びデータ融合モジュール56は、共通処理プラットホーム上で実装することができ、又は分散型ユニットで実装することができる。
【0020】
インスリン送達システム58は、患者にインスリンを注入する。インスリンポンプは、商業的に入手可能であり、典型的には、インスリンの供給を維持する容器、皮下の位置を決めるためのカニューレ、ポンプ、及び制御モジュールを備える。BGLデータ、及びデータ融合モジュール56の出力は、インスリン送達システム58に伝達され、インスリン送達システム58は、入力データを使用して患者へのインスリンの注入を制御する。
【0021】
一構成においては、インスリン送達システム58の制御は、データ融合モジュール56が危険警告を示すときのカットオフ信号である。別の構成においては、インスリン流量は、監視データに依存して連続的に変更することができる。例えば、低血糖事象が検出されないとすれば、インスリン送達システム58は、所望のBGL設定値からの偏差に基づいてインスリン流量を決定することができる。比例、積分及び/又は微分(PI/PID:proportional integral/proportional integral derivative)制御装置は、融合データから誘導される入力を管理システム専門家に知られた様式で使用することができる。別の制御手法は、例えば、インスリンに対する患者の応答のモデルを使用するモデル予測手法を使用することもできる。
【0022】
インスリンの閉ループ制御は、別の情報源が利用可能な場合、フィードフォワード法によって補足することができる。例えば、患者が、彼又は彼女が食事をしようとしていることをインスリン送達システム58に知らせると、制御アルゴリズムは、食事前にインスリン送達を増加させることができる。同様に、時刻、運動などの関連機能についての情報を利用することができる。
【0023】
CGMS52、ANS装置48、モジュール54、56を支持するプラットホーム、及びインスリンポンプなどの注入システム58の間のデータ通信は、電線、光ファイバ、RFリンク又は類似システムによることができる。別の実施形態においては、これらの構成要素を複合ユニットに組み込むことができる。
【0024】
図2Aは、ANS監視装置の一例を示す。この構成においては、患者は、使用時に患者の胸部上部領域周囲に位置する胸部ベルトユニット2を着用することができる。胸部ベルトユニット2は、患者の胸部周囲にしっかり締めるようにされた調節可能な伸縮性ストラップを有することができる。着脱が比較的容易な適切で安全な締め具システムによって、ベルトユニット2を難なく着脱することができる。ストラップは、成人患者と同様に小児の胸部周囲に合うようにすることもできる。ベルトユニット2は、無線送信機、アナログ電子回路及びマイクロコントローラを囲む電子ハウジングを含む。
【0025】
図2Aに示すように、ベルトユニット2は、各々異なる生理学的パラメータを監視するようにされた皮膚表面電極であり得る能動的なバイオセンサ4を備える。センサ4は、皮膚インピーダンス、ECG、QT間隔及びST分節を含めたそのセグメント、心拍数、心拍数の平均ピーク回数などの生理学的パラメータを測定する。これらの態様は、国際公開第02/069798号として公表されたPCT/AU02/00218で更に考察されている。センサ及び信号処理システムは、好ましくは、QT間隔などのECGのサブコンポーネントを抽出可能である十分な感受性及び精度を有する。
【0026】
バイオセンサ4は、アナログ電子回路によって処理され、増幅され、フィルタリングされた後にプロセッサ8に接続される信号を提供する。プロセッサ8は、マイクロコントローラ(μC)ユニットとすることができる。μCユニット8は、A/D(アナログからデジタル)変換器を使用して信号をデジタル化し、デジタル信号をアンテナ10によって無線送信機6に送る。
【0027】
分析及び警告のためにユニット2によって監視される信号を処理するようにされた受信ユニット20がベルトユニット2に付随する。低血糖検出モジュール54は、受信ユニット20上で作動するソフトウェアとして実装することができる。データ融合モジュール56も受信ユニット20上で作動することができる。
【0028】
ユニット2と20は、安全な伝達のために符号化して互いに認識することができる。図2Bに示すように、受信ユニット20は、アンテナ22及び無線受信機24を有する。データは、データ記憶装置28に記憶することができ、プロセッサ26上で作動するソフトウェアによって処理することができる。受信ユニット20の構成要素間のデータ通信は、バス30によって行われる。ユニット20は、ユーザに情報を示すディスプレイを含めて、1個以上の出力ユニット36を有することができる。出力36は、可聴警告を含むこともできる。
【0029】
ネットワーク通信インタフェース34を含むこともできる。これによって、患者の生理状態についての情報を他の場所に、例えば内分泌学者、心臓病専門医などのヘルスケア提供者にインターネット接続によって、送ることができる。別の例では、情報をSMSメッセージサービスによって送ることができる。したがって、例えば、ユニット2、20が小児を監視している場合、警告がトリガされるとメッセージを小児の親に送ることができる。受信ユニット20からの出力信号は、例えばRFリンク又は光ファイバ接続によって、インスリン送達システム58に送られる。あるいは、受信ユニット20をインスリン送達システム58と統合することもできる。
【0030】
ユニット20は、追加情報をユニット20に入力可能にするユーザ入力32を備えることもできる。例えば、患者が指穿刺装置を使用して血糖値(BGL)を読み取る場合、キーパッドを使用して結果をユニット20に入力することができる。その代わりに、又はそれに加えて、入力32は、CGMS52、指穿刺装置などの別の装置へのデータリンクとすることができる。
【0031】
適切な監視システムの一例は、「患者監視装置(Patient Monitor)」という名称の国際公開第2004/098405号に記載のHypoMonである。
【0032】
ANSデータを監視して低血糖事象を検出する方法100を図3に示す。患者のANSデータは、心拍数も含めて、例えば、図2A及び2Bを参照して記述されるユニット2を使用して、監視される(ステップ102)。
【0033】
方法100においては、心拍数データなどのANSデータは、2つの異なる方法で分析され(それぞれステップ104〜108及び110〜118)、結果は集約されて、適宜警告をトリガする。方法100のステップ104〜130は、受信ユニット20のプロセッサ26上で作動するソフトウェアによって実行することができる。方法100は異なる実装形態を有し得ることが理解されるであろう。例えば、情報をユニット20からリモートサーバに送り、処理することができる。方法100は分散形式で実施することもでき、方法の異なる部分が異なるプロセッサを使用して実施される。方法100又は方法100の一部は、アナログ回路網、特定用途向け集積回路(ASIC:application−specific integrated circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field−programmable gate array)などの別の処理手段を使用して実施することもできる。
【0034】
時間遅延トレンド
ステップ104では、患者のANS信号データを低域フィルタに通して、低周波トレンドを時間の関数として得る。一構成においては、フィルタの時定数は1.6時間である。方法100のパラメータ値を選択する方法については後で考察する。
【0035】
ステップ106では、時間遅延トレンドを求める。時間遅延トレンドは、時間t=iにおける低周波トレンドの値と時間t=(i−Tlag)における低周波トレンドの過去の値との差として計算される時間の関数である。本発明者の考えでは、ステップ106は、正規化プロセスであり、低血糖発生前のプロセスの動力学的ベースラインを規定する。時間遅延トレンドは、動力学的ベースラインに対するANS信号(例えば、心拍数)の変化を監視する。
【0036】
ステップ108では、監視ソフトウェアは、指定しきい値を通過したかどうかを検査する。誘発イベントは、患者のBGLの低下に対応し得る。
【0037】
ANS信号とANSトレンドの差
ステップ110〜118は、入力ANS信号データの別の分析である。ステップ110では、ANSデータは、低域フィルタを使用してフィルタリングされて、低周波トレンドを与える。一実装形態においては、フィルタの時定数は0.3時間である。次いで、ステップ112では、ANS(心拍数)生データと低周波トレンドの絶対差を求める。生データの遅延バージョンは、絶対差を決定するときに使用することができる。遅延は、ステップ110の低域フィルタリングに固有の遅延に一致するように選択することができる。
【0038】
次いで、絶対差信号は、ステップ104〜108の方法と同様に処理される。すなわち、ステップ114、116及び118は、ステップ104、106及び108に対応する。ただし、処理に使用されるパラメータは異なり得る。
【0039】
ステップ114では、絶対差信号を低域フィルタに通して、低周波差トレンドを得る。一構成においては、フィルタの時定数は2.1時間である。
【0040】
ステップ116では、時間遅延トレンドは、時間t=iにおける低周波差トレンドの値と時間t=(i−Tlag)におけるトレンドの過去の値との差として求められる。時間Tlagは、ステップ106で使用される遅延時間と同じである必要はない。一構成においては、ステップ116のTlagは2.1時間である。次いで、ステップ118では、監視ソフトウェアは、ステップ116からの出力信号が指定しきい値を通過したかどうかを検査する。そうであれば、中間フラグがトリガされる。
【0041】
ステップ108と118で使用されるしきい値は互いに異なり得る。
【0042】
警告方法100は、ステップ108と118の出力を連結する。ステップ130は論理OR演算である。ステップ108がしきい値通過を検出した場合又はステップ118がしきい値通過を検出した場合、ステップ130の論理ORは、低血糖事象の可能性を示す更なるフラグをトリガする。フラグは、更なる処理、例えば図4及び5に示す方法に使用することができる。その代わりに、又はそれに加えて、論理OR130がフラグをトリガすると、受信ユニット20によって中間警告を発することができる。例えば、可聴警告を鳴らすことができ、又はメッセージを介護人に送って低血糖の可能性を示すことができる。警告は、図5を参照してより詳細に記述されるように、データ融合モジュール56に与えることもできる。
【0043】
本発明者らによって得られた試験結果は、方法100がANSトレンド差に基づいて終夜の低血糖事象に対して警告を与えることを示唆している。アルゴリズム構造は対象間で安定している。
【0044】
方法100の構造は、以下のように要約することができる。
α(警告)=β[[T(a) OR T(b)]ANDΨ[T(c)]]
式中、T(a)は、ANS信号の低域フィルタ成分の時間遅延差の応答時間であり(低域フィルタ時定数1.6時間及び遅延1.6時間)(例えば、ステップ104〜108)、
T(b)は、ANS機能、例えば心拍数と時定数0.3時間のANSトレンドとの絶対差の応答時間であり、これはさらにT(a)と同様にフィルタ時定数2.1時間及び遅延2.1時間のトレンド差に変換され(例えば、ステップ110〜118)、
T(c)は、任意に選択される関数であり、T(b)に類似しているが、より高周波の情報に焦点を合わせる。一構成においては、T(c)は、最終低域フィルタが時定数0.17時間及び遅延0.17時間を有する点で、T(b)と異なる。随伴AND関数の時間窓は1.2時間であり得る。すなわち、AND関数への2つの入力が1.2時間窓以内にトリガされると、ANDの出力がトリガされる。T(c)は、ステップ110〜118に類似の一連の演算として実行することができ、パラメータはより高周波の情報を考慮するように選択される。
【0045】
パラメータ値の選択
方法100は、低域フィルタの時定数、遅延信号を計算するための遅延時間、並びにステップ108及び118で使用されるしきい値を含めて、幾つかのパラメータを含む。これらのパラメータは、低血糖の開始に関する情報を含めた患者データを蓄積し、データを学習データセットと試験データセットに分割することによって、設定することができる。パラメータ値は、学習セットに基づく値を最適化する学習アルゴリズムによって決定することができる。最適化されたパラメータ値を試験データセットに対して試験することができる。かかる手順は、方法の検出精度を高め、誤報数を削減するのに役立ち得る。
【0046】
低血糖に対する1型真性糖尿病(T1DM:type−1 diabetes mellitus)患者の応答の複雑な系の性質内で安定なシグネチャを確認する一方法は以下のようであった。選択された非侵襲的な生理学的パラメータは、標準的な(gold standard)(YSI)装置の定期的な静脈BGLの読みと一緒に、130名のT1DMボランティアに対して、一連の昼/夜低血糖クランプ及び自然状態で監視された。このデータの分析は、低血糖事象が、対象間で安定している周波数、時間遅延及び時間窓機能を示す生理反応を刺激するという仮説によって導かれた。次いで、潜在的機能に対する安定性評価は、データを学習データセットと評価データセットに分離することによって反復して実施された。次いで、発見されたシグネチャの安定性は、52名の見知らぬT1DM患者に対する前向き終夜盲検試験で確認された。別のサブシステムも同様に学習される。
【0047】
ANS及びBGLデータを監視して低血糖事象を検出する方法200を図4に示す。患者のANS及びBGLは、例えば、図2A及び2Bを参照して記述されるユニット2、20並びに図1を参照して記述されるモジュール52を使用して、監視される(ステップ202)。方法200においては、心拍数などのANS機能は、2つの異なる方法(それぞれステップ204〜208及び210〜218)で分析され、BGLはステップ220〜224で処理され、結果は演算230及び232で集約されて、中間警告を適宜トリガする。ステップ204〜232は、受信ユニット20のプロセッサ26上で作動するソフトウェアによって実行することができる。方法200は異なる実装形態を有し得ることが理解されるであろう。例えば、情報をユニット20及び52からリモートサーバに送り、処理することができる。方法200は分散形式で実施することもでき、方法の異なる部分が異なるプロセッサを使用して実施される。方法200又は方法200の一部は、アナログ回路網、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの別の処理手段を使用して実施することもできる。
【0048】
時間遅延トレンド
ステップ204では、患者のANS信号を低域フィルタに通して、低周波ANSトレンドを得る。一構成においては、フィルタの時定数は1.6時間である。方法200のパラメータ値を選択する方法は、プロセス100に関連して上で考察したものと同様である(図3)。
【0049】
ステップ206では、時間遅延トレンドは、時間t=iにおけるトレンドの値と時間t=(i−Tlag)におけるトレンドの過去の値との差として求められる。本発明者の考えでは、ステップ206は、正規化プロセスであり、低血糖発生前のプロセスの動力学的ベースラインを規定する。時間遅延トレンドは、動力学的ベースラインに対するANSトレンドの変化を監視する。
【0050】
ステップ208では、監視ソフトウェアは、指定しきい値を通過したかどうかを検査する。誘発イベントは、患者のBGLの低下に対応し得る。
【0051】
ANS信号とANSトレンドの差
ステップ210〜218は、入力ANSデータの別の分析である。ステップ210では、ANS信号は、低域フィルタを使用してフィルタリングされて、低周波トレンドを与える。一実装形態においては、フィルタの時定数は0.3時間である。次いで、ステップ212では、ANS生データと低周波トレンドの絶対差を求める。生データの遅延バージョンは、絶対差を決定するときに使用することができる。遅延は、低域フィルタリングに固有の遅延に一致するように選択される。
【0052】
次いで、絶対差信号は、ステップ204〜208の方法と同様に処理される。すなわち、ステップ214、216及び218は、ステップ204、206及び208に対応する。ただし、処理に使用されるパラメータは異なり得る。
【0053】
ステップ214では、絶対差信号を低域フィルタに通して、低周波差トレンドを得る。一構成においては、フィルタの時定数は2.1時間である。
【0054】
ステップ216では、時間遅延トレンドは、時間t=iにおける低周波差トレンドの値と時間t=(i−Tlag)におけるトレンドの過去の値との差として求められる。時間Tlagは、ステップ206で使用される遅延時間と同じである必要はない。一構成においては、ステップ216のTlagは2.1時間である。次いで、ステップ218では、監視ソフトウェアは、ステップ216からの出力信号が指定しきい値を通過したかどうかを検査する。そうであれば、中間フラグがトリガされる。
【0055】
ステップ220〜224は、BGLデータの一連の処理である。ステップ220〜224は、ステップ204〜208に対応するが、異なる周波数通過帯域を使用することができる。
【0056】
ステップ220では、BGLデータは、低域フィルタを使用してフィルタリングされて、低周波トレンドを与える。一実装形態においては、フィルタの時定数は0.3時間である。
【0057】
ステップ222では、トレンドの時間遅延差は、時間t=iにおける第2の低周波差トレンドの値と時間t=(i−Tlag)におけるトレンドの過去の値との差として求められる。時間Tlagは、ステップ206又は216で使用される遅延時間と同じである必要はない。一実装形態においては、ステップ222の時間Tlagは0.3時間に等しい。ステップ224では、監視ソフトウェアは、ステップ222からの出力信号が指定しきい値を通過したかどうかを検査する。そうであれば、中間フラグがトリガされる。
【0058】
ステップ208、218及び224で使用されるしきい値は互いに異なり得る。
【0059】
警告方法200は、ステップ208、218及び224の出力を連結する。ステップ230は論理OR演算である。ステップ208がしきい値通過を検出した場合又はステップ218がしきい値通過を検出した場合、ステップ230の論理ORは、ステップ232の論理ゲートに与えられる更なる中間フラグをトリガする。論理ゲートへの他方の入力は、ステップ224の出力である。論理ゲート232から、中間警告は、図5を参照してより詳細に記述されるように、データ融合モジュール56に与えられる。
【0060】
方法200の構造は、以下のように要約することができる。
α(警告)=γ([T(a) OR T(b)],Ψ[T(c)])
式中、T(a)は、ANSデータの低域フィルタ成分の時間遅延差の応答時間であり(低域フィルタ時定数1.6時間及び遅延1.6時間)、
T(b)は、ANS機能、例えば心拍数と時定数0.3時間の心拍数トレンドとの絶対差の応答時間であり、これはさらにT(a)と同様にフィルタ時定数2.1時間及び遅延2.1時間のトレンド差に変換され、
T(c)は、BGLデータの低域フィルタ成分の時間遅延差の応答時間である(低域フィルタ時定数0.3時間及び遅延0.3時間)。
【0061】
組合せ演算232の構造は、血糖測定に使用される特定のCGMSに依存し得、例えば、異なる範囲のCGMS出力における信頼度レベルを反映し得る。
【0062】
動力学的パラメータ設定の使用
上記方法に使用される警告しきい値及び決定積分時間などのパラメータは、固定することができ、利用可能な追加の情報の性質に応じて変わり得る。例えば、連続グルコース監視装置52からの血糖値(BGL)の測定値を、以下の一般形式の論理ツリーの形で警告システムに組み込むことができる。
a)高いBGL値では、すべての警告を指定時間窓にわたって無視し、
b)ほぼ正常なBGL値では、警告機能のしきい値を上げ、
c)低BGL値では、又は低BGLへのトレンドが著しい場合には、選択された機能の警告しきい値を下げ、
d)極めて低いBGL推定値では、警告を作動させる。
【0063】
このようにして、BGL範囲にわたる推定精度の変化を考慮に入れることができる。
【0064】
したがって、例えば、ステップ208及び218のしきい値レベルをBGL又はBGLトレンドに依存して増減することができる。
【0065】
あるいは、しきい値を調節する代わりに、スケーリングファクタを使用して、追加の情報を考慮することができる。例えば、図4を参照して、(例えば、ステップ208又は218において)トレンドが指定しきい値を通過したかどうか検査する前に、スケーリングファクタを1つ以上のトレンドに適用することができる。すなわち、スケーリングファクタをステップ206で得られる時間遅延差及び/又はステップ216で決定される時間遅延差の乗数として使用することができる。
【0066】
例えば、連続グルコース監視装置からの血糖値(BGL)及びトレンドの直接推定値を、以下の一般形式の論理ツリーの形で警告システムに組み込むことができる。
a)高いBGL推定値では、すべての警告を指定時間窓にわたって無視し、
b)ほぼ正常なBGL推定値では、1個以上のスケーリングファクタを低下させて、指定しきい値を超える基準化されたトレンドの確率を低下させ、
c)低BGL推定値又は低BGLへのトレンドが著しい場合には、1個以上のスケーリングファクタを増加させて、指定しきい値を超える基準化されたトレンドの確率を増加させ、
d)極めて低いBGL推定値では、警告を作動させる。
【0067】
このようにして、BGL範囲にわたる推定精度の変化を考慮に入れることができる。スケーリング係数は、夜の始めのBGL値又は夜の始めから最後の読みまでのBGLの履歴に依存して変わり得る。
【0068】
データ融合
図5は、管理システム50に使用することができるデータ融合方法500の一例を示す。
【0069】
相補的なBGLとANSパラメータの組合せによって、血糖値、変化率などの単一のソースから得られるデータの取扱いでは成し遂げることができないかもしれない較正及びドリフトエラーの補償が可能になる。臨床分析によれば、2つのデータ源を適切に融合すると、各ストリームからの情報は他方を補完する。方法500においては、本発明者らの提案によれば、低血糖のANSシグネチャはCGMSデータにほとんど無関係であり、したがって、血糖測定の較正及びドリフトエラーが大きい場合でも低血糖を検出することができる。一方、CGMSデータを使用して、測定血糖値がBGL装置の誤差帯域よりもはるかに高いときにANSシグネチャ誤報を低減することができる。
【0070】
方法500の演算512では、CGMS52は、対象510の血糖値を定期的に監視する。プロセス501では、システムは、測定BGLが値の指定範囲内であるかどうか検査する。一構成においては、範囲は2.3から4.8mmol/Lである。検査ステップ501は、管理システム50の種々のポイント、例えば、監視装置52内又はデータ融合モジュール56において実施することができる。BGL測定値が指定範囲内である場合(検査ステップのYオプション)、中間警告出力がトリガされ、論理ANDブロック502に入力される。実際には、方法500は、測定BGLが指定範囲内にある間は、ANSデータを考慮に入れる。
【0071】
ステップ501及び502と並行して、プロセス514では、ANS監視装置48は、対象510の心拍数などのデータを追跡する。プロセス514で生成したANSデータはステップ503で分析され、現在の又は内在する低血糖事象があるかどうかを評価する。ステップ503は、検出モジュール54において、例えば図3のトレンド分析法によって、実行することができる。例えば、ステップ104から130をANS監視装置48によって生成されたANSデータに適用することができる。
【0072】
ANSデータが低血糖事象を示す場合(プロセス503のY出力)、中間警告信号がトリガされ、ORブロック504に送られ、データ融合モジュール56において実行することができる。
【0073】
ANDブロック502は、プロセス501及び504からの出力を受け取る。バンド検出501並びにモジュール503及び504を通過したANSデータが低血糖事象を示す場合(ANDブロック502のYes出力)、警告出力をトリガすることができる。一構成においては、501の警告出力は、測定血糖値が指定値間、例えば4.8及び2.3mmol/L(86.4及び41.1mg/dL)である場合にのみ、作動するように制限される。この指定範囲は、発見的に決定することができ、統合CGMSシステムにおいて確認された較正エラーを反映する。一般に、精度は、正常血糖及び高血糖範囲よりも低血糖範囲で低い。監視装置は、血糖値が低いほど、不正確になり、ふらつき易くなる。グルコース監視装置の性能は、例えば、Wentholt IM,「1型糖尿病患者におけるニードルタイプと微小透析連続グルコース監視装置の比較(Comparison of a Needle−Type and a Microdialysis Continuous Glucose Monitor in Type 1 Diabetic Patients)」.Diabetes Care.2005;28:2871−2876において調査されている。方法500のデータ融合においては、血糖値が十分に高い又は低い場合には、BGL測定値の精度の信頼度を反映して、ANS監視は無視される。
【0074】
監視BGLが指定範囲にない場合(検査ステップ501のNオプション)、ステップ505において、システムは、BGLが指定しきい値以下、例えば2.3mmol/Lであるかどうかを検査する。BGLが最低しきい値未満である場合(ステップ505のYes出力)、ステップ506において、データ融合モジュールは出力警告をトリガする。この警告は、視覚及び音声出力によって伝達することができる。警告を使用して、インスリン送達システム58によって患者に注入されるインスリンを中断又は削減することもできる(図1)。
【0075】
測定BGLが較正しきい値よりも高い場合(例えば、ステップ505のNo出力)、管理システム50はその標準インスリン療法に従って進行する。
【0076】
監視ステップ512、514のBGLデータ及びANSデータは、図4を参照して上述されたプロセス200にも送られる。方法200の出力警告(すなわち、図5に見られるプロセス200のY出力)はORブロック504に与えられる。したがって、測定BGLが指定範囲内であり、プロセス503及び200のどちらか一方が低血糖事象を示す場合、警告プロセス506がトリガされる。別の安全性監視手順507も、インスリン送達システムに安全ジャケット(safety jacket)を提供することができる。
【0077】
方法500の処理ステップは、単一プロセッサでも様々な場所の分散様式でも実行することができる。処理の一部又はすべてを例えばCGMSにおいて実行することができる。
【0078】
分析によれば、融合方法500は、誤報を終夜増加させずに、低血糖事象(危険警告)の見逃しを50%以上削減する。
【0079】
別の構成においては、しきい値検査501は、単純なしきい値試験ではない。例えば、BGL中間警告とANS中間警告の間には可変の相対重み付けが存在し得る。相対重み付けは、異なるBGL範囲のCGMSの期待精度に依存し得る。ファジーな論理アルゴリズムを使用して、BGLとANSのデータを融合することができる。
【0080】
別の機能又は入力データを使用して、融合アルゴリズム500におけるBGLとANSデータの相対効果を変えることができる。例えば、ユーザは、指穿刺BGL測定の結果を入力することができる。この結果がCGMS52出力とは異なる場合、より大きな重みをANSデータに置くことができる。同様に、ANSデータの異常が明らかである場合、例えば、胸部ベルトユニット2が取り外された場合、ANSデータを無視することができる。
【0081】
別の形式のデータ融合をBGL及びANSデータ源の相補的性質から誘導することができる。データ融合によって、閉ループ血糖管理システム内の本質的な危険警告要素を実装することができる。融合方法の特定の機能は、予測される較正及びドリフトエラーなどの各閉ループシステムの特性に依存し得る。
【0082】
本明細書の文脈において、「含む(comprising)」という語又はその文法上の変形は、「含めて(including)」という用語と等価であり、他の要素又は機能の存在を除外するものと解釈すべきではない。
【0083】
本明細書に開示され、定義された発明は、記述された、又は文若しくは図面から明白な、個々の機能の2つ以上の代替的組合せすべてに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組合せのすべてが本発明の種々の代替的態様を構成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体に注入されるインスリンの流量を管理するシステムであって、
使用時に前記患者の前記体にインスリンを注入するインスリン注入装置、
使用時に前記患者の血糖値を示すBGLデータを生成する第1のセンサ、
使用時に前記患者の自律神経系の少なくとも1個のパラメータに依存したANSデータを生成する第2のセンサ、及び
前記BGLデータ及び前記ANSデータを受け取り、前記受け取ったデータに基づいて、低血糖事象が推測される場合に出力警告信号を生成する、プロセッサ、並びに
前記出力警告信号に依存した前記インスリン注入装置のインスリン流量を変更する制御装置
を備える、システム。
【請求項2】
前記BGLデータが低血糖事象を示した場合に前記プロセッサが第1の中間警告信号を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
測定血糖値が指定しきい値未満になった場合に前記プロセッサが前記第1の中間警告信号を生成する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記測定血糖値が指定範囲内にある場合に中間警告信号が生成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ANSデータが、前記患者の心拍数を示すデータを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記ANSデータの時間的トレンドを分析し、前記分析されたトレンドに基づいて低血糖事象の発生を推測する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記ANSトレンド分析が低血糖事象の発生を推測した場合に、前記プロセッサが第2の中間警告信号を生成する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記第1の中間警告信号及び前記第2の中間警告信号の関数として前記出力警告信号を生成する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記第1のセンサによって測定された血糖値に依存した前記第1及び第2の中間警告信号に相対重み付けを帰する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記相対重み付けが、異なる測定範囲の前記第1のセンサの期待精度に依存する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記BGLデータが正常血糖範囲又は高血糖範囲にある場合に前記プロセッサが前記第2の中間警告の相対重み付けを減少させる、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記BGLデータが指定低しきい値未満である場合に前記プロセッサが前記第2の中間警告に無関係に前記警告信号を出力する、請求項6に記載のシステム。
【請求項13】
前記低しきい値が2.3mmol/L以下である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサが、前記BGLデータの時間的トレンドを分析し、前記分析されたBGL時間的トレンドに基づいて低血糖事象の発生を推測する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ANSデータの時間的トレンドを分析する際に、前記プロセッサが、測定血糖値に依存して変わる1個以上のパラメータを利用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記指定範囲が2.3から4.8mmol/Lである、請求項4に記載のシステム。
【請求項17】
注入カットオフ信号を生成してインスリンポンプを制御するために、実質的に統計的に無関係である2つのデータ源を融合するシステム。
【請求項18】
前記データ源の一方が連続グルコース監視システム(CGMS)から得られ、他方が自律神経系(ANS)データから得られる、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
インスリン注入装置によって患者の体に注入されるインスリンの流量を監視する方法であって、
前記患者の血糖値を示すBGLデータを受け取ること、
前記患者の自律神経系の少なくとも1個のパラメータに依存したANSデータを受け取ること、
前記ANSデータと前記ANSデータの時間遅延バージョンとの差に基づいてANS差信号データを維持すること、
前記BGLデータが低血糖事象を示した場合に第1の中間警告をトリガすること、
前記ANS差信号が低血糖事象を示した場合に第2の中間警告をトリガすること、
前記第1の中間警告及び前記第2の中間警告がトリガされた場合に前記インスリン注入装置に警告信号を出力すること
を含む、方法。
【請求項20】
前記BGLデータが第1の指定しきい値未満になった場合に、前記第1の中間警告がトリガされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記BGLデータが指定範囲内にある場合に、前記第1の中間警告がトリガされる、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の中間警告信号及び前記第2の中間警告信号の関数として前記警告信号を生成することを含む、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記関数が前記第1の中間警告信号と前記第2の中間警告信号の相対重み付けを含み、前記方法が前記BGLデータに応じて前記相対重み付けを変更することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記相対重み付けが、異なる測定範囲の前記BGLデータの期待精度に依存する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記BGLデータが正常血糖範囲又は高血糖範囲にある場合に、前記第2の中間警告の相対重み付けを減少させることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記BGLデータが指定低しきい値未満にある場合に、前記インスリン注入装置に前記インスリン流量を減少させる命令を出力することを含む、請求項19から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
プログラムコードが実行されるデータ処理装置の演算を制御して、インスリン注入装置によって患者の体に注入されるインスリンの流量を監視する方法を実施するための、機械読み取り可能な記録媒体上に記録された機械読み取り可能な前記プログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品であって、前記方法が、
前記患者の血糖値を示すBGLデータを受け取ること、
前記患者の自律神経系の少なくとも1個のパラメータに依存したANSデータを受け取ること、
前記ANSデータと前記ANSデータの時間遅延バージョンとの差に基づいてANS差信号データを維持すること、
前記BGLデータが低血糖事象を示した場合に第1の中間警告をトリガすること、
前記ANS差信号が低血糖事象を示した場合に第2の中間警告をトリガすること、
前記第1の中間警告及び前記第2の中間警告がトリガされた場合に前記インスリン注入装置に警告信号を出力すること
を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項28】
プログラムコードが実行されるデータ処理装置の演算を制御して、インスリン注入装置によって患者の体に注入されるインスリンの流量を監視する方法を実施するための、機械読み取り可能な前記プログラムコードを含む、コンピュータプログラムであって、前記方法が、
前記患者の血糖値を示すBGLデータを受け取ること、
前記患者の自律神経系の少なくとも1個のパラメータに依存したANSデータを受け取ること、
前記ANSデータと前記ANSデータの時間遅延バージョンとの差に基づいてANS差信号データを維持すること、
前記BGLデータが低血糖事象を示した場合に第1の中間警告をトリガすること、
前記ANS差信号が低血糖事象を示した場合に第2の中間警告をトリガすること、
前記第1の中間警告及び前記第2の中間警告がトリガされた場合に前記インスリン注入装置に警告信号を出力すること
を含む、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−509278(P2013−509278A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537264(P2012−537264)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001467
【国際公開番号】WO2011/054042
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(512116446)アイメディックス ピーティーワイ リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】AIMEDICS PTY LTD
【住所又は居所原語表記】Suite 113, National Innovation Centre, Australian Technology Park, Eveleigh, New South Wales 2015(AU)
【Fターム(参考)】