説明

融雪装置の運転制御装置

【課題】高価で高性能の降雪センサを用いることなく、検出エリアの狭い比較的価格の安い汎用型降雪センサを使って精度の高い判定ができ、節水、節電を行いながら、確実に融雪のできる融雪装置の運転制御装置を提供する。
【解決手段】散水配管41、ポンプ(深井戸水中ポンプ51)を備え、ポンプで水源部300から揚水した水Wを散水ノズル42から、降雪面40に散水して融雪する融雪装置の運転制御装置であって、所定の水平面領域を通過する雪片をカウントする汎用型降雪センサ5と、カウントした雪片カウント数に基づいてポンプの運転制御を行うコントロール部102とを備えた融雪装置の運転制御装置において、コントロール部102は、ポンプの連続運転か間欠運転かを判断するのにポンプの運転時間の長短により、連続運転か間欠運転の判断となるしきい値(SP値)を変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深井戸等の水源から揚水した水を散水配管に送り、該散水配管から道路や駐車場等の降雪面に散水し、降り積もる雪を融解する融雪装置の運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下水は一年を通して恒温で10℃前後である。そのため、古くからポンプで地下水を汲み上げ降り積もった雪を溶かす融雪装置が知られている。近年、節水及び節電を目的として光学式降雪センサとコンピュータの組み合わせにより、複雑な制御を用いた間欠運転タイプの融雪装置の運転制御装置が開発されている。特に公共設備の融雪においては、高度できめ細かな制御技術が用いられている。
【0003】
その一例として、特許文献1に開示された融雪装置の運転制御装置がある。この運転制御装置では、時間帯における交通量を判定条件に組み込んだり、運転ポンプの容量から起動頻度の制限をかけている。
【0004】
また、これらの融雪装置の運転制御装置に用いられる降雪センサは、高性能で広い水平面に降雪する雪片を捉えることで、降雪強度を精度良く判定することができるようになっている。公共設備に使用される融雪装置の対象は、幹線道路など広い融雪エリアが主な対象となるので、降雪強度が精度良く判定され、それに基づいて融雪装置が運転制御される必要がある。その反面、融雪の対象エリアが比較的狭い、例えば郊外レストラン、量販店の駐車場や事務所ビル、商業ビルの駐車場などもある。
【0005】
これらの比較的狭いエリアの融雪に用いる融雪装置は、主に民間の顧客がエンドユーザとなる。これらの顧客が要求する融雪装置は、容易に購入しやすい経済的な価格で、且つ確実な融雪機能を備えた融雪装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−97152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、公共設備向け融雪装置は、高性能な降雪センサを用いて精度の高い降雪強度が測定でき、また降雪強度以外に外気温度や時間帯による交通量などの条件を加味して、きめ細かな運転条件で制御している。更に、小型ポンプから大型ポンプのモータ容量により起動頻度の制限を変えており、高度な装置となっている。特に、この高性能な降雪センサは、赤外線反射式で広い降雪エリアの雪片を直接カウントし、その時々の降雪強度を精度良く判定することができるものとなっており高価な装置となる。
【0008】
それに対し、民間設備向け融雪装置は比較的狭いエリアを融雪するため小型で、装置の設置数も多く価格を高く設定することができなかった。また、民間設備向け融雪装置も環境保護の観点より節水と節電の機能を持った装置が今後必要となってくる。
【0009】
本願発明は上述の点に鑑みてなされたもので、高価で高性能の降雪センサを用いることなく、検出エリアの狭い比較的価格の安い汎用型降雪センサを使って精度の高い判定ができ、節水、節電を行いながら、確実に融雪のできる融雪装置の運転制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本願発明は、散水配管、ポンプを備え、前記ポンプで水源から揚水した水を前記散水配管に送り、降雪面に散水して融雪する融雪装置の運転制御装置であって、所定の水平面領域を通過する雪片をカウントする光学式降雪センサと、前記光学式降雪センサでカウントした雪片カウント数に基づいて、前記ポンプの運転制御を行う運転制御部とを備えた融雪装置の運転制御装置において、前記運転制御部は、前記ポンプの連続運転か間欠運転かを判断するのに前記ポンプの直前の運転時間の長短により、連続運転か間欠運転かの判断となるしきい値(SP値)を変えることができることを特徴とする。
【0011】
また、本願発明は、上記融雪装置の運転制御装置において、前記連続運転と間欠運転の判定となるしきい値(SP値)を求める式は、前記光学式降雪センサでカウントした雪片カウント数から大雪・小雪を判定する時刻より前の所定時間TF内のポンプ運転時間をTPとした場合、下式で示されることを特徴とする。
SP=A×((TP/TFB
【0012】
また、本願発明は、上記融雪装置の運転制御装置において、前記しきい値(SP値)を求める式の係数Aは、A=1〜500内で設定した値であり、係数Bは、B=0.1〜0.5内で設定した値であることを特徴とする。
【0013】
また、本願発明は、上記融雪装置の運転制御装置において、前記運転制御部は、前記間欠運転の場合の1回の基本起動停止時間をTBとし、該TBの内訳は基本ポンプ運転時間をTPB、基本ポンプ停止時間をTPSとし(TPB+TPS=TB)、更に外気温度により前記基本ポンプ運転時間TPBに対する前記基本ポンプ停止時間TPSの割合を、外気温度が低いときは小さく、外気温度が高いときは大きくすることを特徴とする。
【0014】
また、本願発明は、上記融雪装置の運転制御装置において、前記間欠運転の場合の1回の基本起動停止時間TBはTB=15分間であり、前記基本ポンプ運転時間はTPB=8分間であり、前記基本ポンプ停止時間はTPS=7分間であることを特徴とする。
【0015】
また、本願発明は、上記融雪装置の運転制御装置において、前記運転制御部の外気温度による前記間欠運転時間の変更は、外気温度が0℃未満では前記基本ポンプ停止時間TPSに係数0.5を乗じた0.5TPSをポンプ停止時間とし、TB−0.5TPSをポンプ運転時間とし、外気温度が0℃〜1.5℃では前記基本ポンプ停止時間TPSに係数0.8を乗じた0.8TPSを停止時間、TB−0.8TPSをポンプ運転時間とし、更に外気温度1.6℃以上では前記基本起動停止時間TBに係数1を乗じたTBをポンプ停止時間、TB−TPSをポンプ運転時間とすることを特徴とする。
【0016】
融雪装置において、深井戸ポンプは単位時間(60分)当たりの起動頻度の制限がある。例えば、7.5kw以下=12回/h、11kw〜22kw=6回/h、26kw=4回/hというようにである。また、使用するポンプ容量が特定されないことと、これまでの経験より、ここでは、大雪・小雪を判断する前の所定時間を60分とし、ポンプ起動頻度4回から、インターバル(基本起動停止時間TB)を15分としている。よって、インターバル(基本起動停止時間TB)は15分に限定されるものではない。
【0017】
また、上記外気温度の決め方は、通常本融雪システムが主に使用される地域は新潟、北陸地区で、シーズン中の外気温度は0℃〜1.5℃が最も多い降雪条件となる。これまでの経験より、これらの条件時、節水、節電率を30%前後にすることが好ましく、0℃未満では融けにくいので、運転時間を長くし、1.6℃以上では融け易いみぞれ質なので運転時間を短くしている。よって、外気温度によるポンプ運転時間も上記例に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、運転制御部は、ポンプの連続運転か間欠運転かを判断するのにポンプの直前の運転時間の長短により、連続運転か間欠運転かの判断となるしきい値(SP値)を変えることができるので、降雪センサに高性能の高級降雪センサを用いることなく、安価な汎用型降雪センサを用いても降雪面に降る雪を確実に融雪できる、安価で経済的な融雪装置を提供できる。また、融雪時の散水ポンプを間欠運転させ井戸水の使用水量の制限を行なったり、ポンプの消費電力量を削減でき、地球環境に優しい融雪装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る融雪装置の概念を示すブロック図である。
【図2】高級降雪センサの構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る融雪装置に用いる汎用型降雪センサの構成例を示す図である。
【図4】高級降雪センサと汎用型降雪センサの降雪パルス数の比較例を示す図である。
【図5】本発明に係る融雪装置の全体概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る融雪装置の運転制御装置のポンプの運転条件(その1)を示す図である。
【図7】本発明に係る融雪装置の運転制御装置のポンプの運転条件(その2)を示す図である。
【図8】本発明に係る融雪装置の運転制御装置のポンプの運転条件(その3)を示す図である。
【図9】本発明に係る融雪装置の運転制御装置のポンプ運転時のインターバルを説明するための図である。
【図10】本発明に係る融雪装置の運転制御装置のポンプ停止時のインターバルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は本願発明に係る融雪装置の概念を示すブロック図である。降雪センサには後に詳述するように光学式センサを用い、雪片検知領域である所定面積の水平面を通過する雪片をカウントし、該雪片のカウント数により降雪強度を判定する。降雪強度を判定できる精度の高い高級降雪センサでは、雪片検知領域3(図2参照)の面積が大きく、該面積の大きい雪片検知領域3を通過する雪片を捉えてカウントするようになっている。これに対して、比較的安価な汎用型降雪センサの雪片検知領域7(図3参照)の面積は小さく(狭く)なっており、降雪時に単位時間当たりに通過する雪片数が非常に少なく、雪片のカウント数も少ない。当然ながら、短時間に降雪強度を判定する場合、面積の大きい雪片検知領域を通過する雪片を捉えた方がより正確な降雪強度を判定できる。
【0021】
単位時間(インターバル時間)の雪片検知領域を通過する雪片のカウント数が所定の数値以下であれば、ポンプは始動せず、又は運転中のポンプを停止する。該雪片のカウント数が所定の数値以上となればポンプは始動し、過去の降雪強度(大雪・小雪)、外気温度因子(運転時間等)により、ポンプを連続運転とするか、又は間欠運転とするかを判断する。更に、外気温度によって間欠運転の運転時間又は停止時間を決定して、ポンプを始動する。ここでは、比較的狭い領域の降雪の融雪を目的とし、安価ではあるが節水、節電を行いながら確実に融雪を行うことができる融雪装置を提供する。
【0022】
図2及び図3は降雪センサの構成例を示す図で、図2は上記高級降雪センサの構成例を、図3は上記汎用型降雪センサの構成例をそれぞれ示す。ここでは検出する雪片の大きさは、径2mm以上の雪片を対象としている。
【0023】
高級降雪センサ1は、光学センサ2と雪片検知領域3で構成されている。雪片検知領域3は降雪時に雪片が通過する水平面領域である。雪片検知領域3は、図2(a)に側面、図2(b)に平面を示すように、縦寸法L1=60cm、横寸法L2=20cm、厚さ寸法L3=1cmの面積約1200cm2の水平面領域であり、該水平面領域を通過する径2mm以上の雪片を光学センサ2で検知し、その数をカウント(計測)している。なお、光学センサ2と雪片検知領域3の間隔L4は、不感帯L4=20cmである。
【0024】
汎用型降雪センサ5は、光学センサ6と雪片検知領域7で構成されている。雪片検知領域7は降雪時の雪片が通過する水平面領域である。雪片検知領域7は、図3(a)に側面、図3(b)に平面を示すように、縦寸法L1=10cm、横寸法L2=1cm、厚さ寸法L3=1cmの面積約10cm2の水平面領域であり、該水平面領域を通過する径2mm以上の雪片を光学センサ6で検知し、その数をカウントしている。なお、光学センサ6と雪片検知領域7の間隔L4は、不感帯L4=1.5cmである。
【0025】
図4は図2に示す構成の高級降雪センサ1と図3に示す構成の汎用型降雪センサ5を用いた、同一時間、同一場所での降雪パルス数(降雪雪片のカウント数)の比較例を示す図で、図4(a)は高級降雪センサ1の降雪パルス数を、図4(b)は汎用型降雪センサ5の降雪パルス数を示す。図4(a)、(b)に示す降雪パルス数から明らかなように、面積の大きい雪片検知領域3を備えた高級降雪センサ1の降雪パルス数が面積の小さい雪片検知領域7を備えた汎用型降雪センサ5の降雪パルス数より圧倒的に大きい。しかしながら、降雪パルス数の絶対量は高級降雪センサ1の方が多いが、雪の降り始めや降り終わりと、降雪中の降雪の検出傾向は高級降雪センサ1と汎用型降雪センサ5は略似かよっており、制御方法を工夫することで高級降雪センサ1を使わなくても汎用型降雪センサ5で確実に融雪ができる融雪装置を構築できることが分かった。
【0026】
そこでここでは、図3に示す構成の比較的安価な汎用型降雪センサ5を用い、比較的精度よく、且つ確実に融雪を行える融雪装置の運転制御装置を提供する。図5は本発明に係る融雪装置の全体概略構成を示すブロック図である。本融雪装置は、汎用型降雪センサ5と、ポンプ制御盤100と、散水部200と、水源部300とを備えている。ポンプ制御盤100はポンプ運転制御回路部101とコントロール部102とからなる。
【0027】
ポンプ運転制御回路部101はAC電源(商用電源)から漏電ブレーカ10を通してAC電源が供給されるようになっており、該ポンプ運転制御回路部101の電磁開閉器11を介して、深井戸水中ポンプ51のモータMに駆動電流が供給できるようになっている。該モータMに過電流が流れないように、3Eリレーを備えた過電流保護器14を備えている。
【0028】
ポンプ制御盤100は、降雪判断部21、モニター部22、警報部23、運転選択部25、ポンプ部26、制御選択部27を備えている。散水部200は、図示するように、例えば駐車場等の降雪面40の下に埋設した散水配管41を備え、該散水配管41に多数の散水ノズル42が設けられ、該散水ノズル42の水を噴出する開口は降雪面40に露出して配置されている。
【0029】
水源部300は深井戸50内にポンプPとモータMを備えた深井戸水中ポンプ51が設置されている。該深井戸水中ポンプ51の吐出口には吐出管52が接続され、該吐出管52は逆止弁53及び開閉弁54を介して上記散水配管41に接続され、深井戸水中ポンプ51から散水配管41に水を供給することにより、多数の散水ノズル42から降雪面40に水Wを噴出するようになっている。深井戸水中ポンプ51のモータMには上記のようにAC電源から、ポンプ運転制御回路部101に設けられた漏電ブレーカ(ELB)10、電磁開閉器11を通して駆動電力が供給されるようになっている。また、深井戸50内には、渇水水位を検出する渇水レベルセンサ55、自動復帰レベルセンサ56が配置されている。なお、L1は深井戸50の運転水位を示す。
【0030】
図5に示す融雪装置において、汎用型降雪センサ5の光学センサ6(図3参照)で検出した雪片カウント信号(計数信号)はコントロール部102の降雪判断部21に入力される。汎用型降雪センサ5には降雪温度を検出する降雪温度センサも備えており、降雪温度の検出信号も降雪判断部21に入力される。降雪判断部21では、汎用型降雪センサ5からの上記信号に基き、降雪検知、降雪温度、降雪強度の検出を行い、その検出信号を運転選択部25に出力する。
【0031】
表示部29には、深井戸50の水位が低下して渇水状態となった場合にそれを表示する井戸渇水表示部29a、運転・故障の表示を行なう運転・故障表示部29b、電源表示部29cが設けられている。モニター部22には、ポンプの運転電流、消費電力・電力量、降雪温度、降雪片数、運転時間、揚水量の表示部が設けられている。警報部23には深井戸50の渇水レベルセンサ55が渇水を検出した場合に渇水を警報する井戸渇水警報部、ポンプ(深井戸水中ポンプ51)が故障した場合にポンプ故障を警報するポンプ故障警報部、ポンプの低負荷運転を警報する低負荷警報部、センサの異常を警報するセンサ異常警報部が設けられている。運転選択部25は降雪判断部21からの信号により間欠運転モード、連続運転モードが選択される。ポンプ部26には運転選択部25からの信号を受けてポンプの運転を行なう運転部、警報部23からの信号を受けてポンプを停止する停止部が設けられている。制御選択部27は選択手段28の選択により自動運転又は手動運転を選択できるようになっている。
【0032】
上記融雪装置において、降雪時の降雪面40の融雪環境では、降雪がしばらくなかった場合などでは降雪面40は乾いており、そのような中で雪が降り始めると、濡れた降雪面に比較して雪は融けずに積もり易くなる。一旦、着雪した雪を後から水で溶かすよりは、予め降りだした雪を着雪し難くしたほうが融雪に効果がある。また、深井戸水中ポンプ51により降雪面に地下水を散水し満遍なく濡れた状態を作り出すには、ある一定時間以上の連続散水が必要である。
【0033】
そこでここでは、降りだした雪が降雪面に着雪する前に溶かすべく工夫を制御方法の中に取り入れている。まず、降雪判断部21では深井戸水中ポンプ51の始動を決めるのに設定された降雪判断値により、深井戸水中ポンプ51を運転するか否かを判断する。ここで、ポンプ運転と判断されたならば、次に降雪片のカウント数により大雪・小雪を判定する。運転選択部25では降雪判断部21が大雪と判定すれば、連続運転を選択し、小雪と判定すれば間欠運転を選択する。
【0034】
雪が止んで深井戸水中ポンプ51の運転をしていない状態から、雪が降り出してその雪片のカウント数によって降雪判断部21で降雪と判断し、深井戸水中ポンプ51の運転が始まるが、初めの所定時間(例えば15分間)は連続運転とし、乾いた路面を濡れた状態にする。このとき、この所定時間の雪片のカウント数を積算し大雪・小雪を判定する。大雪・小雪から深井戸水中ポンプ51の運転条件を判定する時に、降雪面40がよく濡れた状態になっているか否かを判定条件に加えるように、過去の深井戸水中ポンプ51(以下、必要な場合を除いて単に「ポンプ」という)の運転条件を判定値に加えることにする。つまり、予め設定されたステップ判断値にポンプの過去の運転時間を補正条件として加えて、運転初期は大雪と判定し連続運転となり易くなるような式を制御系に組み込む。
【0035】
大雪・小雪を判別する式、即ち補正後のステップ判定値(しきい値):SPは式(1)で示される。
SP=A×(TP/TFB・・・・・・・・・(1)
ここで、TFは大雪・小雪を判定するステップに入る前の所定時間(ここではTF=60分間)であり、TPは所定時間TF内のポンプ運転時間数(分単位)である。
【0036】
上記式(1)において、Aは任意に設定することが可能な数値であり、一般的にはA=1〜500数値が採用される。判別(カウント)する雪片の数が少ない降雪時でもポンプを連続運転したいときは、Aに小さい数値を設定(代入)する。Bは任意に選ぶことができるが、通常は0.1〜0.5である。大雪・小雪を判定する前の所定時間TF(ここではTF=60分)の間のポンプ運転時間TP(分単位)に対する割合値であるTP/TF(=TP/60)の値は、常に≦1であるので、Bが大きければSP値はより小さくなり、大雪と判定され、ポンプ連続運転となる機会が多くなる。
【0037】
図6乃至図10を用いて上記式(1)を制御に入れた融雪装置の運転方法について説明する。図6はポンプの運転条件(その1)を、図7はポンプの運転条件(その2)を、図8はポンプの運転条件(その3)をそれぞれ示す。また、図9はインターバル5分(min)の説明を、図10は停止時のインターバルをそれぞれ示す。
【0038】
図6のポンプの運転条件(その1)ではインターバル5分(min)間の雪片のカウント数が3個以上であれば、ポンプは始動する。図9に示すようにインターバルは1分毎に、スライドし5分間単位として計算をしてゆく。あるインターバル間の5分間の雪片のカウント数が降雪判断の設定値を超えたならば、ボンプは始動する。始動したポンプは、始めは図6のステップ(3)に示すように15分間の連続運転となり、この間に、次のステップ(4)の運転条件を決めるしきい値SPを計算する。
【0039】
図9においては、最初のインターバル5分の雪片数(雪片カウント数)=1個、2回目インターバルの雪片数=0個、3回目インターバルの雪片数=1個、3回目インターバルの雪片数=1個、4回目インターバルの雪片数=1個、5回目インターバルの雪片数=2個、6回目インターバルの雪片数=3個である。この6回目インターバルでの降雪判断:PLSの設定値は3個であり、測定値は3個であるから、PLS3個(設定値)≦3個(測定値)であり、ポンプ始動となる。
【0040】
式(1)の大雪・小雪を判定する前の所定時間TF(ここではTF=60分)の間のポンプ運転時間数TPは、ポンプ始動開始後15分間は連続運転なので、式(1)のTPにTP=15分を代入する。そして式(1)の定数AにA=50、B=0.5を代入して
SP=A×(TP/TFB=50×(15/60)0.5=25PLS
が判定基準値となるSP値として得られる。ステップ(3)のインターバル15分間での雪片のカウント数は29PLSである。ここでステップ(3)のインターバル15分間での雪片のカウント数が前記判定基準値となるSP値より大きいか小さいかにより、大きければ大雪と判定されポンプの連続運転となり、小さければ小雪と判定されポンプの間欠運転となる。このステップ(3)では、判定基準値となるSP値(=25PLS)<雪片のカウント数(=29PLS)であるから、大雪と判定され、ポンプの連続運転となる。
【0041】
図6のステップ(4)で大雪・小雪を判定する前の所定時間TF(TF=60分)間のポンプ運転時間数TPは、ポンプ始動開始後のステップ(3)の15分間+ステップ(4)の15分間であり、TP=30分となり、ここでA=50、B=0.5として式(1)から判定基準となるしきい値を求めると
SP=A×(TP/TFB=50×(30/60)0.5=35PLS
となる。ステップ(4)の雪片のカウント数が30であるので、判定基準値となるSP値(=35PLS)>雪片のカウント数(=30PLS)であり、判定基準値となるSP値の方が、ステップ(4)の雪片のカウント数より多いので、小雪と判定されポンプは間欠運転となる。
【0042】
降雪面40の融雪条件は、外気温度によっても影響を受ける。つまり、同じ散水量でも外気温度が低ければ積雪は融け難く、反対に高ければ融け易い。よって、ポンプ停止時間を外気温度によって、次の3段階に分けて調整することで、結果として運転時間が調整できる。
【0043】
(1)外気温度が0℃未満では、係数0.5を乗じて停止時間とする(例えば、ポンプ停止時間7分の場合は7×0.5=3分(小数点以下切捨て)が停止時間となる)。従って運転時間は、15分−3分=12分である。
【0044】
(2)外気温度が0℃〜1.5℃では、係数0.8を乗じて停止時間とする(例えば、ポンプ停止時間7分の場合は7×0.8=5分(小数点以下切捨て)が停止時間となる)。従って運転時間は、15分−5分=10分である。
【0045】
(3)外気温度が1.6℃以上は、係数1.0を乗じて停止時間とする(例えば、停止時間7分の場合は7×1=7分が停止時間となる)。従って運転時間は、15分−7分=8分である。
【0046】
上記(1)、(2)、(3)に説明したように、例えば間欠運転となっても外気温度が低い場合には、ポンプの運転時間が長くなるように設定してある。ここでは、外気温度は2℃であるので、間欠運転のポンプ運転時間は8分、停止時間は7分である。
【0047】
上記ポンプ運転をしている間に、次のステップの計算がある。
・図7のステップ(5)の計算
式(1)の大雪・小雪を判定する前の所定時間TF(TF=60分)間のポンプ運転時間TPは、(ポンプ始動開始後15分間)+(ステップ(4)も連続運転なので15分)+(ステップ(5)の間欠運転でのポンプ運転時間8分)から、ポンプ運転時間の合計TP=38分となる。判定基準となるしきい値は、
SP=A×(TP/TFB=50×(38/60)0.5=39PLS
であり、ステップ(5)における15分間の雪片カウント数は43個であるので、SP値=39個<43個であり、SP値よりもステップ(5)の15分間における雪片のカウント数が多いので、大雪と判定され、ステップ(5)ではポンプは連続運転となる。
【0048】
上記ステップ(3)では式(1)に代入するポンプ運転時間TPは、TP=15分でSP値=25PLS、次のステップ(4)では式(1)に代入するポンプ運転時間TPは、TP=15分+15分=30分で、
SP=50×(30/60)0.5=35PLS
となる。
次のステップ(5)では式(1)に代入するポンプ運転時間TPは、TP=15分+15分+8分=38分で、
SP=50×(38/60)0.5=39PLS
となり、雪が降り始めた初期のSP値は低く、乾いた降雪面40を着雪し難くするためによく濡らすように計算され連続運転となりやすく、時間が経つにつれてSP値が高くなり、間欠運転となり易くなるように工夫されている。
【0049】
順次図7のステップ(6)、ステップ(7)、図8のステップ(8)と下記のようにポンプを運転をしていく。
・ステップ(6)では、SP=50×(53/60)0.5=46PLS、ステップ(6)の15分の雪片数=26PLS、46PLS>26PLS、判定=小雪:間欠運転
・ステップ(7)では、SP=50×(46/60)0.5=43PLS、ステップ(7)の15分の雪片数=33PLS、43PLS>33PLS、判定=小雪:間欠運転
・ステップ(8)では、SP=50×(39/60)0.5=40PLS、ステップ(8)の15分の雪片数=23PLS、40PLS>23PLS、判定=小雪:間欠運転
【0050】
次に図10を用いてポンプが停止する様子を説明する。汎用型降雪センサ5の降雪判定インターバルは、1分間ずつスライドしインターバルは常に設定された値(ここでは5分間)で雪片の数を絶えずカウントし続けている。図10ではステップ(8)の9分からの5分間の雪片数を計測したものを図示しているが、これ以前もこれ以後もずっと1分間スライドし、近接5分間の雪片をカウントし計測し続けている。近接5分間の雪片の数がある設定値(ここでは3個)以下になったならば、その後ある一定時間(ここでは4分間)残雪処理を行いポンプを停止する。なお、この残雪処理の時間はユーザにより変えることが可能とする。
【0051】
ここでは、ステップ(9)の2分から5分間の雪片数のカウント数が2個であり、設定値PLS=3個よりも小さい。よってこの時点で、ポンプを4分間運転し残雪処理をした後、ポンプを停止する。また、再び雪が降り始めたならば、汎用型降雪センサ5によりカウントした近接5分間の雪片数が設定の数値を上回った場合、図6のステップ(1)、(2)に示す工程を経て再度ポンプは始動する。
【0052】
以上、述べたように、降雪センサに図2に示すような高価で高級な高級降雪センサ1を使用しなくても、降る雪片のある程度のカウント数を積算する降雪積算時間(例えば15分間)を設けて、さらに制御系の工夫によって降雪面に降り積もる雪を確実に融雪することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば大雪・小雪を判定する前の所定時間TFをTF=60分、ポンプの1回の起動停止時間を15分、インターバル時間を15分等各種の設定時間を決めているが、これらの設定時間に限定されるものではない。また、直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造であっても、本願発明の作用効果を奏する以上、本願発明の技術範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る融雪装置の運転制御装置は、光学式降雪センサでカウントした雪片カウント数に基づいて、ポンプの運転制御を行う運転制御部を備えた融雪装置の運転制御装置において、運転制御部は、ポンプの連続運転か間欠運転かを判断するのにポンプの直前の運転時間の長短により、連続運転か間欠運転かの判断となるしきい値(SP値)を変えることができるので、降雪センサに高性能の高級降雪センサを用いることなく、安価な汎用型降雪センサを用いても降雪面に降る雪を確実に融雪できる、安価で経済的な融雪装置であるから、特に多数存在する民間の駐車場等の狭いエリアに降る雪を効果的に融雪する融雪装置として利用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 高級降雪センサ
2 光学センサ
3 雪片検知領域
5 汎用型降雪センサ
6 光学センサ
7 雪片検知領域
10 漏電ブレーカ
11 電磁開閉器
14 過電流保護器
21 降雪判断部
22 モニター部
23 警報部
25 運転選択部
26 ポンプ部
27 制御選択部
29 表示部
40 降雪面
41 散水配管
42 散水ノズル
50 深井戸
51 深井戸水中ポンプ
52 吐出管
53 逆止弁
54 開閉弁
55 渇水レベルセンサ
56 自動復帰レベルセンサ
100 ポンプ制御盤
101 ポンプ運転制御回路部
102 コントロール部
200 散水部
300 水源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散水配管、ポンプを備え、前記ポンプで水源から揚水した水を前記散水配管に送り、降雪面に散水して融雪する融雪装置の運転制御装置であって、所定の水平面領域を通過する雪片をカウントする光学式降雪センサと、前記光学式降雪センサでカウントした雪片カウント数に基づいて、前記ポンプの運転制御を行う運転制御部とを備えた融雪装置の運転制御装置において、
前記運転制御部は、前記ポンプの連続運転か間欠運転かを判断するのに前記ポンプの直前の運転時間の長短により、連続運転か間欠運転かの判断となるしきい値(SP値)を変えることができることを特徴とする融雪装置の運転制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の融雪装置の運転制御装置において、
前記連続運転と間欠運転の判定となるしきい値(SP値)を求める式は、前記光学式降雪センサでカウントした雪片カウント数から大雪・小雪を判定する時刻より前の所定時間TF内のポンプ運転時間をTPとした場合、下式で示されることを特徴とする融雪装置の運転制御装置。
SP=A×((TP/TFB
【請求項3】
請求項2に記載の融雪装置の運転制御装置において、
前記しきい値(SP値)を求める式の係数Aは、A=1〜500内で設定した値であり、係数Bは、B=0.1〜0.5内で設定した値であることを特徴とする融雪装置の運転制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の融雪装置の運転制御装置において、
前記運転制御部は、前記間欠運転の場合の1回の基本起動停止時間をTBとし、該TBの内訳は基本ポンプ運転時間をTPB、基本ポンプ停止時間をTPSとし(TPB+TPS=TB)、更に外気温度により前記基本ポンプ運転時間TPBに対する前記基本ポンプ停止時間TPSの割合を、外気温度が低いときは小さく、外気温度が高いときは大きくすることを特徴とする融雪装置の運転制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の融雪装置の運転制御装置において、
前記間欠運転の場合の1回の基本起動停止時間TBはTB=15分間であり、前記基本ポンプ運転時間はTPB=8分間であり、前記基本ポンプ停止時間はTPS=7分間であることを特徴とする融雪装置の運転制御装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の融雪装置の運転制御装置において、
前記運転制御部の外気温度による前記間欠運転時間の変更は、外気温度が0℃未満では前記基本ポンプ停止時間TPSに係数0.5を乗じた0.5TPSをポンプ停止時間とし、TB−0.5TPSをポンプ運転時間とし、外気温度が0℃〜1.5℃では前記基本ポンプ停止時間TPSに係数0.8を乗じた0.8TPSを停止時間、TB−0.8TPSをポンプ運転時間とし、更に外気温度1.6℃以上では前記基本起動停止時間TBに係数1を乗じたTBをポンプ停止時間、TB−TPSをポンプ運転時間とすることを特徴とする融雪装置の運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−23819(P2013−23819A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156360(P2011−156360)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】