説明

融雪電線

【課題】 融雪スパイラルロッドの融雪性能を向上させる。
【解決手段】 磁性線材1aを螺旋状に成形加工してなる融雪スパイラルロッド1を電線2に螺旋状に巻き付けるとともに、その周囲にウレタンフォーム等による断熱材層14を形成して融雪電線13を構成する。通常、融雪スパイラルロッド1から生じた熱の一部は風により大気中に放散されてしまうが、断熱材層14で覆われているので、融雪スパイラルロッド1及び電線2からの熱放散が抑制され、融雪電線13が高い温度に保たれ、融雪性能が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、架空送電線の落雪対策に関するものであり、磁性線材を螺旋状に成形加工した融雪スパイラルロッドを電線に螺旋状に巻き付けた融雪電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架空送電線の落雪対策として、電線にリングを取付ける方法や、電線に予め突起(ヒレ)を設けておく方法が実施されてきた。
電線にリングを取付ける方法は、電線に一定間隔でリングを取り付けておくことにより、着雪した雪が電線の撚り溝に沿って滑る際、雪がリングに当たって落下するという作用で落雪効果を得るものである。
また、電線に予め突起を設けておく方法は、着雪した雪が電線の円周方向に滑る際、雪が突起に当たり落下するという作用で落雪効果を得るものである。
【0003】
さらに確実な落雪対策として、図4に示すように融雪スパイラルロッド1を電線(架空送電線)2に巻き付けて融雪電線3を構成する方法も実用化されている(特開2003−134651号その他)。融雪スパイラルロッド1は、キュリー点が一般的な鋼材よりも低い磁性線材1aを螺旋状に成形加工した螺旋状線材であり、これを電線2に螺旋状に巻き付けておくと、電線2から発生する交番磁界により融雪スパイラルロッド1が発熱して融雪するというものである。この種の従来の融雪スパイラルロッド1は、円形断面の磁性線材1aを用いている。
【特許文献1】特開2003−134651号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線にリングや突起を設ける方法は、落雪効果が電線に流れる電流の大きさに影響されないという利点がある一方で、雪質によっては効果が十分でない、細分化された雪が地上に落ちるなどの欠点があった。
また、融雪スパイラルロッド1を電線に巻き付ける方法は、雪質の影響を受けない、細かい雪も落雪しないという利点がある一方で、融雪スパイラルロッドの発熱量が電線に流れる電流に左右されるため、冬場の電流が小さい場合、十分な融雪効果が得られないという欠点があった。
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、一層確実な落雪対策となるように、融雪スパイラルロッドの融雪性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明は、磁性線材を螺旋状に成形加工してなる融雪スパイラルロッドを電線に螺旋状に巻き付けるとともに、その周囲に断熱材層を形成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2は、請求項1記載の融雪電線において、断熱材層がスプレー法によって形成したウレタンフォームであることを特徴とする。
請求項3は、請求項1記載の融雪電線において、断熱材層が、テープ状断熱材を巻き付けて形成したものであることを特徴とする。
請求項4は、請求項1記載の融雪電線において、断熱材層が保温性繊維からなることを特徴とする。
請求項5は、請求項1記載の融雪電線において、断熱材層が撥水性を持つ保温性繊維からなることを特徴とする。
【0007】
請求項6は、請求項1〜5記載の融雪電線において、断熱材層の上に撥水性塗料を塗布したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
通常、融雪スパイラルロッドから生じた熱は、その一部が着雪した雪に伝達し融雪に寄与するが、一部は風により大気中に放散されてしまう。しかし、本発明によれば、融雪スパイラルロッドを巻き付けた電線の周囲が断熱材層で覆われているので、電線及び融雪スパイラルロッドからの熱放散が抑制され、融雪電線が高い温度に保たれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施した融雪電線について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
図1、図2に本発明の一実施例の融雪電線13を示す。この融雪電線13は融雪スパイラルロッド1を電線(架空送電線)2に螺旋状に巻き付けた構造であるが、融雪スパイラルロッド1自体は従来と同じであり、磁性線材1aを螺旋状に成形加工したものである。電線2は鋼心2aの周囲にアルミ線2bを撚り合わせたACSR(鋼心アルミ撚線)である。磁性線材として、ニッケル(Ni)5%、クロム(Cr)10%、シリコン(Si)1%、鉄(Fe)残部からなる合金等を用いることができる。
本発明では、融雪スパイラルロッド1を巻き付けた電線2の周囲に断熱材層14を形成するが、この実施例では断熱材層14がスプレー法によって形成したウレタンフォームである。
スプレー法とは、施工対象物に2成分の原液を混合し吹き付ける方法であり、対象物に到達すると瞬時に発泡・硬化してウレタンフォームが形成される。この方法は例えば、市販されているスプレー缶方式のものを用いて簡単に施工できるので、本発明の融雪電線における断熱材層の形成手段として適切である。
【0011】
通常、融雪スパイラルロッドから生じた熱は、その一部が着雪した雪に伝達し融雪に寄与するが、一部は風により大気中に放散されてしまう。例として、電線サイズ810mmのACSR(鋼心アルミ撚線)に単に融雪スパイラルロッド1を巻き付けた従来の融雪電線3について、下記の条件の場合の電線温度を計算すると、−0.6℃(マイナス0.6℃)となる。
計算条件は下記である。
・気温:−3℃
・風速:6m/s
・降雪:なし
・通電電流:100A
なお、電線温度の計算要領については、電気学会技術報告第660号「架空送電線の電流要領」の記載を参考にしたが、具体的計算式は省略する。
融雪するためには、少なくとも電線温度が0℃以上になる必要があるが、この例では、融雪スパイラルロッドから発生した熱が風により大気中に放散されてしまい、電線の温度が0℃を超えないため融雪できない。
【0012】
これに対して本発明の融雪電線13の場合、断熱材層14で覆われて風の当たらない電線2および融雪スパイラルロッド1の周囲の風速は0m/sと見なすことができ、上記と同じ条件で電線温度を計算すると、電線温度は7.4℃になる。したがって、この状態で降雪があった場合、融雪することが可能である。
【0013】
上記の通り、融雪スパイラルロッド1を巻き付けた電線2の周囲が断熱材層14で覆われているので、電線2及び融雪スパイラルロッド1からの熱放散が抑制され、融雪電線が高い温度に保たれる。
なお、融雪電線13の最外層が断熱材層14であることで、付着した雪に電線の熱が伝わりにくいという一面もあるが、熱放散が抑制されて電線温度が高くなることの方が融雪効果に顕著に働くので、融雪効果が向上する。
【実施例2】
【0014】
上記実施例の断熱材層14は、スプレー法によって形成したウレタンフォームであるが、図3に示すように、テープ状断熱材24aを融雪スパイラルロッド1の上から螺旋状に巻き付けて断熱材層24を形成することもできる。テープ状断熱材24aとしては、一般に断熱テープと称される市販品を用いることができるが、例えば耐熱ポリエチレンテープ等がある。テープ状断熱材24aは粘着剤付きのものが好適である。
また、図示は省略するが、保温性繊維からなる断熱材層を設けることもできる。保温性繊維としては、ロックウール、グラスウール等を用いることができる。
【0015】
また、撥水性を持つ保温性繊維からなる断熱材層を設けることもできる。このように断熱材層に撥水性を持たせることで、融雪性能向上の効果と同時に難着雪化を図ることができ、落雪対策として一層確実になる。撥水加工剤としてはフッ素系あるいはワックス系等の撥水加工剤を使用できる。
また、断熱材層の上に撥水性塗料を塗布しても、同じく融雪性能向上の効果と同時に難着雪化を図ることができ、落雪対策として一層確実になる。撥水性塗料としては、例えばシリコンゴム系塗料等を用いることができる。
【0016】
また、上述の実施例では融雪スパイラルロッド1を、隣接する線材間に隙間があくように電線2に巻き付けているが、融雪スパイラルロッドを電線2に密に(隣接する線材間に隙間が生じないように)巻き付けてもよい。この場合の断熱材層は、両端部を除き電線2に直接触れずに融雪スパイラルロッドを覆うが、融雪電線からの熱放散が抑制される効果は同じである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の融雪電線を示すもので、スプレー式のウレタンフォームからなる断熱材層を断面で示した部分正面図である。
【図2】図1のA−A拡大断面図である。
【図3】本発明の他の実施例の融雪電線示すもので、テープ状断熱材からなる断熱材層を断面で示した部分正面図である。
【図4】従来の融雪電線の部分正面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 融雪スパイラルロッド
2 電線
13 融雪電線
14 断熱材層(ウレタンフォーム)
24 断熱材層(テープ状断熱材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性線材を螺旋状に成形加工してなる融雪スパイラルロッドを電線に螺旋状に巻き付けるとともに、その周囲に断熱材層を形成したことを特徴とする融雪電線。
【請求項2】
前記断熱材層がスプレー法によって形成したウレタンフォームであることを特徴とする請求項1記載の融雪電線。
【請求項3】
前記断熱材層が、テープ状断熱材を巻き付けて形成したものであることを特徴とする請求項1記載の融雪電線。
【請求項4】
前記断熱材層が保温性繊維からなることを特徴とする請求項1記載の融雪電線。
【請求項5】
前記断熱材層が撥水性を持つ保温性繊維からなることを特徴とする請求項1記載の融雪電線。
【請求項6】
前記断熱材層の上に撥水性塗料を塗布したことを特徴とする請求項1〜5記載の融雪電線。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−120380(P2006−120380A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305194(P2004−305194)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】