説明

螺子穴付きクリップ

【課題】使用に際して塑性変形を生じ難い螺子穴付きクリップを提供する。
【解決手段】本発明の螺子穴付きクリップは、第1及び第2部材10、20の対向面の間に配置される基部2、第1部材を基部2との間に挟持する挟着部3、基部2と挟着部3とを連結する連結部4を有し、基部2には、第2部材20を貫通した螺子30が螺合される螺子穴5が設けられ、挟着部3には、第1部材10に形成された係止孔13に係止可能な係止片8、及び螺子穴5に螺合された螺子30の先端部が挿入される螺子穴5よりも大径の貫通穴7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の部材同士を固定するために用いられる螺子穴付きクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の螺子穴付きクリップの形態を図4(a)(b)に示す。従来の螺子穴付きクリップ50は、基部51と、基部51と対向する挟着部52と、基部51と挟着部52とを連結する連結部53とを有する。これら基部51、挟着部52及び連結部53は、短冊状の金属板をその長手方向略中央から折り曲げることによって形成されており、金属板の折り曲げ部位が連結部53、折り曲げ部位よりも金属板の長手方向一端側が基部51、他端側が挟着部52とされている。また、基部51には貫通穴54が設けられており、挟着部52には螺子穴55が設け設けられている。
【0003】
上記構造を有する螺子穴付きクリップ50では、対向する基部51と挟着部52との間に板状部材を差し込むと、連結部53の弾性復元力によって、基部51及び挟着部52が該板状部材に押し付けられて仮留めされる。
【0004】
次に、図4(a)(b)に示す螺子穴付きクリップ50を用いて一組の部材を固定する方法について図5(a)(b)を参照しながら説明する。まず、図5(a)に示すように、一方の部材60に形成されている板状のリブ61を基部51と挟着部52とによって挟んで螺子穴付きクリップ50をリブ61に仮留めする。ここで、リブ61には切り欠き62が形成されており、基部51の貫通穴54と挟着部52の螺子穴55とは、切り欠き62を介して連通する。
【0005】
その後、図5(b)に示すように、他方の部材63を螺子穴付きクリップ50の基部51に当接させ、該部材63に設けられている通孔64と基部51の貫通穴54とを連通させ、貫通穴54に連通した通孔64から螺子65を挿入する。さらに、挿入した螺子65を基部51の貫通穴54に通して挟着部52の螺子穴55に螺合させる。尚、上記螺子穴付きクリップ50と類似のU字型クリップが特許文献1〜3に開示されている。
【特許文献1】実開昭60−180663号公報
【特許文献2】特開2000−257027号公報
【特許文献3】特開平8−233158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5(b)に示す螺子65を締めたり緩めたりする際に、挟着部52に図中の矢印方向の応力が働く。この応力が大きい場合には、連結部53が図6に示すように塑性変形を起こし、弾性復元力が失われてしまうことがある。例えば、図5(a)に示す部材60が電子機器の筐体を構成する下カバーの一部であり、図5(b)に示す部材63が上カバーの一部であったとすると、部品交換その他のメンテナンスのために螺子65を緩める際に、連結部53を塑性変形させてしまうことがある。この場合、螺子65が基部51の貫通穴54から引き抜かれた時点で螺子穴付きクリップ50がリブ61から外れ、内部機器の隙間などに入り込んで回収不可能となったり、回収できたとしても再利用不可能となったりすることが多々ある。また、メンテナンス終了後に螺子65を締め直す際、螺子65の先端で螺子穴55の位置を探っている間に挟着部52を強く押してしまって連結部53を塑性変形させてしまうこともある。この場合、貫通穴54と螺子穴55の相対的位置関係にズレが生じ、螺子65の螺合が困難になったり、酷い場合には螺合できなくなったりすることもある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用に際して塑性変形を起こし難い螺子穴付きクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の螺子穴付きクリップは、2つの部材を固定するために用いられる螺子穴付きクリップであって、2つの部材の対向面の間に配置される基部と、基部と対向する挟着部と、基部及び挟着部の一端同士を連結する連結部とを有し、基部には、一方の部材を貫通した螺子が螺合される螺子穴が設けられ、挟着部には、基部に向けて突出する係止片、及び螺子穴に螺合された螺子が挿入される螺子穴よりも大径の貫通穴が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記構成を有する本発明の螺子穴付きクリップを用いて2つの部材を固定した場合、固定用の螺子は基部及び挟着部を貫通する。しかし、螺子は基部にのみ固定され、挟着部には固定されない。従って、螺子を締めたり緩めたりする際に挟着部に応力が作用することはない。一方、基部には応力が作用するが、該基部は2つの部材の対向面間に配置されているので変形することはない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の螺子穴付きクリップは、固定用の螺子を締めたり、緩めたりしても塑性変形することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の螺子穴付きクリップの実施形態の一例について図1(a)(b)を参照しながら説明する。図1(a)は、本例の螺子穴付きクリップ1の正面側斜視図である。図1(b)は、本例の螺子穴付きクリップ1の背面側斜視図である。
【0012】
螺子穴付きクリップ1は、基部2、基部2と対向する挟着部3、基部2と挟着部3とを連結する連結部4から構成されている。これら基部2、挟着部3及び連結部4は、短冊状の金属板をその長手方向略中央から折り曲げることによって形成されている。即ち、金属板の折り曲げ部位が連結部4、折り曲げ部位よりも金属板の長手方向一端側が基部2、他端側が挟着部3とされている。連結部4は所定の曲げRを有しており、基部2と挟着部3の双方または一方に、両者を離間させる方向(図中の矢印方向)の応力が作用すると、これに抗して両者を元の位置に止めようとする弾性復元力を生じる。
【0013】
また、基部2には螺子穴5が設けられている。この螺子穴5は、基部2の略中央に開設された丸穴の周縁にバーリング加工を施して挟着部3側に突出する鍔6を形成し、その鍔6の内周面に螺子を形成したものである。一方、挟着部3には、螺子穴5よりも内径が大きな貫通穴7が設けられている。よって、螺子穴5に不図示の螺子を螺合すると、その螺子の先端部は、該貫通穴7の内面と接触することなく、該貫通穴7に挿入される。さらに、挟着部3には、基部2側に向けて突出する係止片8が設けられており、その係止片8よりも下部は、係止片8の突出方向と逆方向に折り返されて摘み片9を形成している。
【0014】
次に、図1(a)(b)に示す螺子穴付きクリップ1を用いて2つの樹脂製部材を固定する方法の一例について図2(a)(b)を参照しながら説明する。まず、固定対象である2つの部材について先に説明する。2つの部材のうちの一方(以下「第1部材10」)には、図2(a)に示すように、螺子穴付きクリップ1が装着される板状のリブ11が一体に立ち上げられている。このリブ11には、その上端面において開口する切り欠き12が設けられており、切り欠き12の下方には、螺子付きクリップ1の係止片8が係止可能な矩形の係止孔13が設けられている。
【0015】
他方の部材(以下「第2部材20」)は、図2(b)に示すように、略正方向の一枚板であって、第1部材10との相対的位置関係を所定の位置関係に合わせた際に、リブ11の切り欠き12と連通する通孔21(図3)が設けられている。
【0016】
まず、図2(a)に示すように、第1部材10のリブ11に、その上方から螺子穴付きクリップ1を被せる。より具体的には、リブ11を螺子穴付きクリップ1の基部2と挟着部3との間に挿入し、リブ11の表面に沿って螺子穴付きクリップ1を所定位置まで押し下げる。このとき、基部2と挟着部3とがリブ11の厚み分だけ離間させられるので、連結部4の弾性復元力によって、基部2と挟着部3とがリブ11に押し付けられる。さらに、螺子穴付きクリップ1が所定位置まで押し下げられると、挟着部3に突設されている係止片8がリブ11の係止孔13に自動的に嵌合して係止する。
【0017】
以上によって、螺子穴付きクリップ1が第1部材10(リブ11)に固定される。尚、リブ11には切り欠き12が設けられているので、螺子付きクリップ1をリブ11に装着した後も、螺子穴5と貫通穴7との連通は妨げられない。
【0018】
続いて、図2(b)に示すように、第2部材20を螺子付きクリップ1の基部2に当接させ、第1部材10との位置関係を所定の位置関係に合わせる。これによって、第2部材20の通孔21(図3)が螺子穴5を介してリブ11の切り欠き12と連通する。結果的に、第2部材20の通孔21、螺子穴付きクリップ1の螺子穴5及び貫通穴7、第1部材10(リブ11)の切り欠き12が全て連通する。また、基部2は、第1部材10(リブ11)と第2部材20との間に挟まれた状態となる。
【0019】
次に、第2部材20の通孔21から螺子30を挿入し、基部2の螺子穴5に螺合させる。その後、螺子30を締め込んで、該螺子30の先端部を挟着部3の貫通穴7に挿入する。螺子30の先端部が貫通穴7に挿入されるまで締め込まれた状態を図3に示す。最終的には、螺子30は図3に示す状態からさらに締め込まれ、螺子30の頭部31が第2部材20の表面に形成されている凹部22に嵌合し、第2部材20の表面と面一又はほぼ面一となる。
【0020】
以上によって、第1部材10と第2部材20とが固定される。ここで、図2(b)及び図3に明示されているように、螺子30は一貫して挟着部3の貫通穴7と被接触である。よって、螺子30を締めたり、緩めたりする際に、挟着部3に応力が作用することはない。一方、螺子穴5を有する基部2には、螺子30を締めたり、緩めたりする際に応力が作用する。しかし、基部2は、リブ11と第2部材20とに挟まれているので、応力が作用しても変形することはない。
【0021】
尚、螺子30を外した後に、摘み片9に指を掛け、挟着部3を連結部4の弾性復元力に抗して若干起すことによって、係止片8と係止孔13との係合を解除することができる。
【0022】
本発明の螺子穴付きクリップは、プロジェクタ、コンピュータ、プリンタなどの電子機器の外装を構成する上カバーと下カバーとの固定に適しているが、適用対象はこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の螺子穴付きクリップの実施形態の一例を示す図であって、(a)は正面側斜視図、(b)は背面側斜視図である。
【図2】(a)は、図1の螺子穴付きクリップが一方の部材に装着される様子を示す斜視図、(b)は、図1の螺子穴付きクリップを用いて2つの部材が固定された様子を示す斜視図である。
【図3】図2(b)のA−A′断面図である。
【図4】従来の螺子穴付きクリップの実施形態の一例を示す図であって、(a)は正面側斜視図、(b)は背面側斜視図である。
【図5】(a)は、図4の螺子穴付きクリップが一方の部材に装着される様子を示す斜視図、(b)は、図4の螺子穴付きクリップを用いて2つの部材が固定された様子を示す斜視図である。
【図6】図4の螺子穴付きクリップが塑性変形した様子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1、50 螺子穴付きクリップ
2、51 基部
3、52 挟着部
4、53 連結部
5 55 螺子穴
7、54 貫通穴
8 係止片
9 摘み片
10 第1部材
11、61 リブ
12、62 切り欠き
13 係止孔
20 第2部材
21、64 通孔
30、65 螺子
60、63 部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部材を固定するために用いられる螺子穴付きクリップであって、
前記2つの部材の対向面の間に配置される基部と、
前記基部と対向する挟着部と、
前記基部及び挟着部の一端同士を連結する連結部とを有し、
前記基部には、一方の部材を貫通した螺子が螺合される螺子穴が設けられ、
前記挟着部には、前記基部に向けて突出する係止片、及び前記螺子穴に螺合された螺子が挿入される前記螺子穴よりも大径の貫通穴が設けられている螺子穴付きクリップ。
【請求項2】
前記挟着部の一端には、前記係止片と反対方向に突出する摘み片が設けられている請求項1記載の螺子穴付きクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−144818(P2006−144818A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331703(P2004−331703)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(300016765)NECビューテクノロジー株式会社 (289)
【Fターム(参考)】