螺旋鉄筋型鋼管摩擦杭の回転駆動装置およびそれを用いたねじ込み貫入工法
【課題】ねじ込み式鋼管杭のひとつである螺旋鉄筋型鋼管摩擦杭を地中に貫入して埋設する回転駆動装置およびそれを用いたねじ込み貫入工法に関する。
【解決手段】
螺旋鉄筋型鋼管杭の外径より大きな内径の鋼管リングと前記鋼管リングに等間隔に設けられたねじ部に螺通するねじ部材と前記鋼管リングの外周側で前記ねじ部材に螺着して前記鋼管リングに前記ねじ部材を固定するナットを備え、前記ねじ部材は、前記鋼管リングの外周側から鋼管リングを螺通して前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記ナットにより前記鋼管リングに螺着する長さを有している螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置。上記螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置の鋼管リングから突出するねじ部材の長さを調整して、前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記鋼管リングと螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心を一致させた後、前記鋼管リングを回転させる。
【解決手段】
螺旋鉄筋型鋼管杭の外径より大きな内径の鋼管リングと前記鋼管リングに等間隔に設けられたねじ部に螺通するねじ部材と前記鋼管リングの外周側で前記ねじ部材に螺着して前記鋼管リングに前記ねじ部材を固定するナットを備え、前記ねじ部材は、前記鋼管リングの外周側から鋼管リングを螺通して前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記ナットにより前記鋼管リングに螺着する長さを有している螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置。上記螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置の鋼管リングから突出するねじ部材の長さを調整して、前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記鋼管リングと螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心を一致させた後、前記鋼管リングを回転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ねじ込み式鋼管杭を地中に貫入して埋設する回転駆動装置およびそれを用いたねじ込み貫入工法に関し、ねじ込み式鋼管杭のひとつである螺旋鉄筋型鋼管摩擦杭に好適なものに関する。
【背景技術】
【０００２】
ねじ込み式鋼管杭は、鋼管を回転させた場合に、鋼管の先端部や杭外周面に沿って取り付けた部材のねじ作用により、地中に給進するもので、鋼管の先端部またはその近傍に翼を取り付けたものや、基礎内の深さに対応した長さとなる鋼管の外周に螺旋状に一定幅の鋼板や鉄筋を巻きつけたもの（例えば、特許文献１）が提案されている。
【０００３】
基礎用杭としてねじ込み式鋼管杭を用いると、低振動、低騒音、無排土で施工でき、更に埋設後には、ねじ込むために鋼管杭に取り付けられた部材により支持力が得られるため、建築、土木分野で構造物の基礎工事に多用されている。
【０００４】
ねじ込み式鋼管杭を回転させて地中に埋設する場合には、鋼管を把持して杭芯ずれを起こさずに回転させる機能を備えた回転駆動装置（例えば、特許文献２）を用いる。
【０００５】
基礎杭構造のうち、ソイルセメント柱と鋼管杭との合成杭は、鋼管杭の補強や支持をモルタルやコンクリートに代えてコスト的に有利なソイルセメントとするものであるが、ソイルセメント柱を造成したのち、鋼管杭を埋設する手間の係る工法のため、施工能率や施工コストの改善を目的に、鋼管杭としてねじ込み式鋼管杭を用いた造成方法が提案されている。
【０００６】
特許文献３は鋼管杭とソイルセメント柱の併用打設工法に関し、掘削攪拌翼が取り付けられた鋼管杭を土中に埋設する際、杭先端部に取り付けられた翼で掘削攪拌した土砂中に鋼管の翼近傍に設けられた吐出口よりセメントミルクを吐き出して、鋼管杭の周辺をソイルセメントとすることで、鋼管杭の埋設とソイルセメント柱の造成を同時に同一機械で行う工法が記載されている。
【０００７】
特許文献４はソイルセメント合成杭造成方法に関し、最初に掘削・攪拌ロッドにより、固化材を注入しつつ削孔してソイルセメント柱を造る際、固化材の圧縮強度を削孔の深さによって変化させ、ソイルセメント柱の底部を圧縮強度の高い固化材を用いたソイルセメントとした後、先端部にスパイラル翼を略一周以上設け、削孔に対する杭芯ずれを防止した鋼管杭を回転および給進を与えつつ、前記ソイルセメント柱内の圧縮強度の高い部分にスパイラル翼を埋設することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００８】
【特許文献１】特開昭６３−１１４７１９号公報
【特許文献２】特開２０００−１７０１６４号公報
【特許文献３】特開２００８−１７５０３９号公報
【特許文献４】特許第２７３１８０６号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
しかしながら、特許文献３、４で用いる、ねじ込み式鋼管杭は特許文献３の場合は、吐き出し口を設けるため構造が複雑となって、特許文献４の場合は先端部のスパイラル翼を長くするため、いずれも、芯材としてのコストが上昇し、施工コストを十分低下させることができない。
【００１０】
ねじ込み式鋼管杭には、特許文献３、４で用いる、掘削攪拌翼が取り付けられた鋼管杭の他に鋼管の外周に螺旋状に鉄筋を巻きつけた、安価な螺旋鉄筋型鋼管杭（螺旋鉄筋型鋼管摩擦杭と言う場合がある）がある。
【００１１】
しかし、螺旋鉄筋型鋼管杭は、鋼管外周に巻きつけられた螺旋鉄筋により回転駆動装置による把持が困難で、また、杭芯ずれが生じやすいため、特許文献３、４などの造成方法において、翼を先端に設けたねじ込み式鋼管杭の代わりとすることが困難である。特許文献２記載の回転駆動装置の場合、貫入させる土壌の硬軟に応じて使い分ける鋼管杭の内側と外側に取り付けた筒状部材に駆動用モータの回転トルクを伝達するが、螺旋鉄筋があると鋼管杭の外側に筒状部材が取り付かない。
【００１２】
そこで本発明は、螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれを防止しつつ地中に埋設することが可能な芯ずれ防止機能を備えた螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
本発明の課題は以下の手段で達成可能である。
１．螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれさせずに地中またはソイルセメント中にねじ込み貫入する芯ずれ防止機能を備えた回転駆動装置であって、螺旋鉄筋型鋼管杭の外径より大きな内径の鋼管リングと前記鋼管リングに等間隔に設けられたねじ部に螺通するねじ部材と前記鋼管リングの外周側で前記ねじ部材に螺着して前記鋼管リングに前記ねじ部材を固定するナットを備え、前記ねじ部材は、前記鋼管リングの外周側から鋼管リングを螺通して前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記ナットにより前記鋼管リングに螺着する長さを有していることを特徴とする芯ずれ防止機能を備えた螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置。
２．１記載の螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置の鋼管リングから突出するねじ部材の長さを調整して、前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記鋼管リングと螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心を一致させた後、前記鋼管リングを回転させて前記螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれさせずに地中またはソイルセメント中に埋設する螺旋鉄筋型鋼管杭のねじ込み貫入工法。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、芯ずれを起こさずに螺旋鉄筋型鋼管摩擦杭を地中に埋設することが可能となり産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】ソイルセメント柱と鋼管杭との合成杭を説明する図で（ａ）は側面図、（ｂ）は上面図を示す。
【図２】本発明に係る螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置の構造を説明する図。
【図３】本発明に係る螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置によりソイルセメント柱中に螺旋鉄筋型鋼管杭を挿入するねじ込み工法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
本発明に係る螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置は、装置の回転中心と鋼管杭の杭芯が一致するように鋼管リングに螺通するねじ部材の長さにより調整し、前記ねじ部材が螺旋鉄筋に沿って移動することで鋼管杭を地中またはソイルセメント柱中にねじ込むことを特徴とする。
【００１７】
図１は本発明の適用に好適な、ソイルセメント柱と螺旋鉄筋型鋼管杭からなる合成杭の一例を説明する図で、（a）は側面図、（ｂ）は平面図を示し、合成杭１はソイルセメント柱２とその中に、ねじ込み貫入された、鋼管からなる杭体４の外周に右ねじ方向に螺旋状に取り付けられた螺旋鉄筋３を有する螺旋鉄筋型鋼管杭で構成されている。
【００１８】
図２に、本発明の一実施例に係る螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置（以下、回転駆動装置）の平面図を、図３にその側面図および螺旋鉄筋型鋼管杭を地中にねじ込み貫入する様子を模式的に示す。
【００１９】
図示した回転駆動装置５は、螺旋鉄筋型鋼管杭の外径より大きな内径の鋼管リング６を回転駆動部材とする。鋼管リング６は図示しない駆動系より回転トルクが伝達される。螺旋鉄筋型鋼管杭の外径は螺旋鉄筋３を取り付けた状態の外径とする。鋼管リング６において規定するは内径のみであって、その他の寸法形状は回転トルクを螺旋鉄筋型鋼管杭に伝達する剛性が確保できるように材質に応じて適宜選定する。但し、螺旋鉄筋型鋼管杭をねじ込み貫入する際に鋼管杭の杭軸が鉛直方向から傾いて起きる芯ずれが生じないようにソイルセメント柱２の外側となる硬い地盤にその一部が架かる外径とすることが好ましい。
【００２０】
鋼管リング６は等間隔に複数のねじ孔を有し、ねじ部材７が螺通する。図はねじ孔にねじ部材７が螺通した状態を示す。ねじ部材７はナット８によって鋼管リング６に固定される。図はナット８が、鋼管リング６の外周側でねじ部材７を固定しているが、さらに鋼管リング６の内周側で固定しても良い。ナット８をダブルナットとすると緩まずに固定できて好ましい。
【００２１】
ねじ部材７の長さは、鋼管リング６の内周側から突出して螺旋鉄筋型鋼管杭の杭本体である鋼管４の外周部に接する長さとナット８が螺着する長さ、およびねじ部材７を回転させるための把持部を合計した長さとする。ねじ部材７の素材、外径は鋼管リング６の回転トルクを螺旋鉄筋３を介して杭体４に伝達可能な剛性が確保できるように適宜選定する。
【００２２】
鋼管リング６に設けるねじ孔の個数は、鋼管リング６の回転中心と杭芯を一致させ、且つ鋼管リング６を回転させたときに、鋼管リング６と杭体４の間の芯ずれが容易に生じないように少なくとも３つとすることが好ましい。
【００２３】
本発明に係る回転駆動装置により、螺旋鉄筋型鋼管杭をソイルセメント柱２中にねじ込み貫入させる場合、まず、ねじ部材７と螺旋鉄筋３が接触しない程度にねじ部材７の鋼管リング６の内側に突出する長さを調整する。そして、鋼管リング６から突出するねじ部材７が、螺旋鉄筋３を避けて杭体４に接するように、鋼管リング６を適宜回転させる。
【００２４】
次に、鋼管リング６の回転中心と杭芯螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心が一致し、ねじ部材７の先端部が杭体４に接するように、ねじ部材７の鋼管リング６の内側に突出する長さを調整する。この際、鋼管リング６が回転した場合にねじ部材７が杭体４の杭壁に沿って回転可能なように、こすり傷をつけないようには杭壁に圧力がかからないように鋼管リング６のねじ孔に螺通させ、ナット８を螺着してその長さで鋼管リング６に固定する。
【００２５】
このようにねじ部材７の鋼管リング６の内側に突出する長さを調整して鋼管リング６を回転させると、鋼管リング６の回転中心と杭芯螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心が一致した状態で、ねじ部材７の先端部が螺旋鉄筋３に懸かって、鋼管リング６の回転トルクが杭芯螺旋鉄筋型鋼管杭に伝達される。
【００２６】
図３に示したように螺旋鉄筋型鋼管杭を時計方向に回転させてねじ込み貫入する場合は、螺旋鉄筋３が鋼管杭の右ねじとなるように取り付け、鋼管リング６は反時計方向に回転させる。螺旋鉄筋３に懸かるねじ部材７が螺旋鉄筋型鋼管杭をソイルセメント柱２の中にねじ込み貫入させる。
【００２７】
なお、螺旋鉄筋型鋼管杭をソイルセメント柱２の中にねじ込み貫入させる際、螺旋鉄筋型鋼管杭の頭部を加圧すると螺旋鉄筋型鋼管杭の回転トルクが減少する。更に、加圧により螺旋鉄筋型鋼管杭がソイルセメント柱２の中に貫入される長さと、螺旋鉄筋型鋼管杭が回転により貫入する長さ（螺旋鉄筋型鋼管杭を右ねじとした場合のピッチ）が等しくなるように、回転数を調整するとより回転トルクが減少して好ましい。
【００２８】
本発明によれば、鋼管リング６の回転速度と螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体４の挿入速度を制御することで、螺旋鉄筋３の杭体４への取付角度に近い回転角になるように埋設させることができ、ソイルセメント柱との間で良好な付着力が得られる。
【００２９】
本発明によれば、ある寸法の鋼管リング６で様々な径の螺旋鉄筋型鋼管杭に適用できるというメリットがある。実工事において、杭体４はφ８９．１（ｍｍ）〜φ６００（ｍｍ）と広い範囲で変化するが、鋼管リング６を可搬レベルのφ４００（ｍｍ）程度としても、ねじ部材の長さを調整することで適用することが可能となる。
【００３０】
本発明に係る回転駆動装置によれば、鋼管リングの回転トルクや螺旋鉄筋型鋼管杭への鉛直方向の加圧力の調整によりソイルセメント柱より抵抗の大きい地中であっても螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれを生ずることなくねじ込み貫入させることが可能である。
【符号の説明】
【００３１】
１ 合成杭
２ ソイルセメント柱
３ 螺旋鉄筋
４ 杭体
５ 回転駆動装置
６ 鋼管リング
７ ねじ部材
８ ナット
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ねじ込み式鋼管杭を地中に貫入して埋設する回転駆動装置およびそれを用いたねじ込み貫入工法に関し、ねじ込み式鋼管杭のひとつである螺旋鉄筋型鋼管摩擦杭に好適なものに関する。
【背景技術】
【０００２】
ねじ込み式鋼管杭は、鋼管を回転させた場合に、鋼管の先端部や杭外周面に沿って取り付けた部材のねじ作用により、地中に給進するもので、鋼管の先端部またはその近傍に翼を取り付けたものや、基礎内の深さに対応した長さとなる鋼管の外周に螺旋状に一定幅の鋼板や鉄筋を巻きつけたもの（例えば、特許文献１）が提案されている。
【０００３】
基礎用杭としてねじ込み式鋼管杭を用いると、低振動、低騒音、無排土で施工でき、更に埋設後には、ねじ込むために鋼管杭に取り付けられた部材により支持力が得られるため、建築、土木分野で構造物の基礎工事に多用されている。
【０００４】
ねじ込み式鋼管杭を回転させて地中に埋設する場合には、鋼管を把持して杭芯ずれを起こさずに回転させる機能を備えた回転駆動装置（例えば、特許文献２）を用いる。
【０００５】
基礎杭構造のうち、ソイルセメント柱と鋼管杭との合成杭は、鋼管杭の補強や支持をモルタルやコンクリートに代えてコスト的に有利なソイルセメントとするものであるが、ソイルセメント柱を造成したのち、鋼管杭を埋設する手間の係る工法のため、施工能率や施工コストの改善を目的に、鋼管杭としてねじ込み式鋼管杭を用いた造成方法が提案されている。
【０００６】
特許文献３は鋼管杭とソイルセメント柱の併用打設工法に関し、掘削攪拌翼が取り付けられた鋼管杭を土中に埋設する際、杭先端部に取り付けられた翼で掘削攪拌した土砂中に鋼管の翼近傍に設けられた吐出口よりセメントミルクを吐き出して、鋼管杭の周辺をソイルセメントとすることで、鋼管杭の埋設とソイルセメント柱の造成を同時に同一機械で行う工法が記載されている。
【０００７】
特許文献４はソイルセメント合成杭造成方法に関し、最初に掘削・攪拌ロッドにより、固化材を注入しつつ削孔してソイルセメント柱を造る際、固化材の圧縮強度を削孔の深さによって変化させ、ソイルセメント柱の底部を圧縮強度の高い固化材を用いたソイルセメントとした後、先端部にスパイラル翼を略一周以上設け、削孔に対する杭芯ずれを防止した鋼管杭を回転および給進を与えつつ、前記ソイルセメント柱内の圧縮強度の高い部分にスパイラル翼を埋設することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００８】
【特許文献１】特開昭６３−１１４７１９号公報
【特許文献２】特開２０００−１７０１６４号公報
【特許文献３】特開２００８−１７５０３９号公報
【特許文献４】特許第２７３１８０６号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
しかしながら、特許文献３、４で用いる、ねじ込み式鋼管杭は特許文献３の場合は、吐き出し口を設けるため構造が複雑となって、特許文献４の場合は先端部のスパイラル翼を長くするため、いずれも、芯材としてのコストが上昇し、施工コストを十分低下させることができない。
【００１０】
ねじ込み式鋼管杭には、特許文献３、４で用いる、掘削攪拌翼が取り付けられた鋼管杭の他に鋼管の外周に螺旋状に鉄筋を巻きつけた、安価な螺旋鉄筋型鋼管杭（螺旋鉄筋型鋼管摩擦杭と言う場合がある）がある。
【００１１】
しかし、螺旋鉄筋型鋼管杭は、鋼管外周に巻きつけられた螺旋鉄筋により回転駆動装置による把持が困難で、また、杭芯ずれが生じやすいため、特許文献３、４などの造成方法において、翼を先端に設けたねじ込み式鋼管杭の代わりとすることが困難である。特許文献２記載の回転駆動装置の場合、貫入させる土壌の硬軟に応じて使い分ける鋼管杭の内側と外側に取り付けた筒状部材に駆動用モータの回転トルクを伝達するが、螺旋鉄筋があると鋼管杭の外側に筒状部材が取り付かない。
【００１２】
そこで本発明は、螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれを防止しつつ地中に埋設することが可能な芯ずれ防止機能を備えた螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
本発明の課題は以下の手段で達成可能である。
１．螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれさせずに地中またはソイルセメント中にねじ込み貫入する芯ずれ防止機能を備えた回転駆動装置であって、螺旋鉄筋型鋼管杭の外径より大きな内径の鋼管リングと前記鋼管リングに等間隔に設けられたねじ部に螺通するねじ部材と前記鋼管リングの外周側で前記ねじ部材に螺着して前記鋼管リングに前記ねじ部材を固定するナットを備え、前記ねじ部材は、前記鋼管リングの外周側から鋼管リングを螺通して前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記ナットにより前記鋼管リングに螺着する長さを有していることを特徴とする芯ずれ防止機能を備えた螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置。
２．１記載の螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置の鋼管リングから突出するねじ部材の長さを調整して、前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記鋼管リングと螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心を一致させた後、前記鋼管リングを回転させて前記螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれさせずに地中またはソイルセメント中に埋設する螺旋鉄筋型鋼管杭のねじ込み貫入工法。
【発明の効果】
【００１４】
本発明によれば、芯ずれを起こさずに螺旋鉄筋型鋼管摩擦杭を地中に埋設することが可能となり産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】ソイルセメント柱と鋼管杭との合成杭を説明する図で（ａ）は側面図、（ｂ）は上面図を示す。
【図２】本発明に係る螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置の構造を説明する図。
【図３】本発明に係る螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置によりソイルセメント柱中に螺旋鉄筋型鋼管杭を挿入するねじ込み工法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
本発明に係る螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置は、装置の回転中心と鋼管杭の杭芯が一致するように鋼管リングに螺通するねじ部材の長さにより調整し、前記ねじ部材が螺旋鉄筋に沿って移動することで鋼管杭を地中またはソイルセメント柱中にねじ込むことを特徴とする。
【００１７】
図１は本発明の適用に好適な、ソイルセメント柱と螺旋鉄筋型鋼管杭からなる合成杭の一例を説明する図で、（a）は側面図、（ｂ）は平面図を示し、合成杭１はソイルセメント柱２とその中に、ねじ込み貫入された、鋼管からなる杭体４の外周に右ねじ方向に螺旋状に取り付けられた螺旋鉄筋３を有する螺旋鉄筋型鋼管杭で構成されている。
【００１８】
図２に、本発明の一実施例に係る螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置（以下、回転駆動装置）の平面図を、図３にその側面図および螺旋鉄筋型鋼管杭を地中にねじ込み貫入する様子を模式的に示す。
【００１９】
図示した回転駆動装置５は、螺旋鉄筋型鋼管杭の外径より大きな内径の鋼管リング６を回転駆動部材とする。鋼管リング６は図示しない駆動系より回転トルクが伝達される。螺旋鉄筋型鋼管杭の外径は螺旋鉄筋３を取り付けた状態の外径とする。鋼管リング６において規定するは内径のみであって、その他の寸法形状は回転トルクを螺旋鉄筋型鋼管杭に伝達する剛性が確保できるように材質に応じて適宜選定する。但し、螺旋鉄筋型鋼管杭をねじ込み貫入する際に鋼管杭の杭軸が鉛直方向から傾いて起きる芯ずれが生じないようにソイルセメント柱２の外側となる硬い地盤にその一部が架かる外径とすることが好ましい。
【００２０】
鋼管リング６は等間隔に複数のねじ孔を有し、ねじ部材７が螺通する。図はねじ孔にねじ部材７が螺通した状態を示す。ねじ部材７はナット８によって鋼管リング６に固定される。図はナット８が、鋼管リング６の外周側でねじ部材７を固定しているが、さらに鋼管リング６の内周側で固定しても良い。ナット８をダブルナットとすると緩まずに固定できて好ましい。
【００２１】
ねじ部材７の長さは、鋼管リング６の内周側から突出して螺旋鉄筋型鋼管杭の杭本体である鋼管４の外周部に接する長さとナット８が螺着する長さ、およびねじ部材７を回転させるための把持部を合計した長さとする。ねじ部材７の素材、外径は鋼管リング６の回転トルクを螺旋鉄筋３を介して杭体４に伝達可能な剛性が確保できるように適宜選定する。
【００２２】
鋼管リング６に設けるねじ孔の個数は、鋼管リング６の回転中心と杭芯を一致させ、且つ鋼管リング６を回転させたときに、鋼管リング６と杭体４の間の芯ずれが容易に生じないように少なくとも３つとすることが好ましい。
【００２３】
本発明に係る回転駆動装置により、螺旋鉄筋型鋼管杭をソイルセメント柱２中にねじ込み貫入させる場合、まず、ねじ部材７と螺旋鉄筋３が接触しない程度にねじ部材７の鋼管リング６の内側に突出する長さを調整する。そして、鋼管リング６から突出するねじ部材７が、螺旋鉄筋３を避けて杭体４に接するように、鋼管リング６を適宜回転させる。
【００２４】
次に、鋼管リング６の回転中心と杭芯螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心が一致し、ねじ部材７の先端部が杭体４に接するように、ねじ部材７の鋼管リング６の内側に突出する長さを調整する。この際、鋼管リング６が回転した場合にねじ部材７が杭体４の杭壁に沿って回転可能なように、こすり傷をつけないようには杭壁に圧力がかからないように鋼管リング６のねじ孔に螺通させ、ナット８を螺着してその長さで鋼管リング６に固定する。
【００２５】
このようにねじ部材７の鋼管リング６の内側に突出する長さを調整して鋼管リング６を回転させると、鋼管リング６の回転中心と杭芯螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心が一致した状態で、ねじ部材７の先端部が螺旋鉄筋３に懸かって、鋼管リング６の回転トルクが杭芯螺旋鉄筋型鋼管杭に伝達される。
【００２６】
図３に示したように螺旋鉄筋型鋼管杭を時計方向に回転させてねじ込み貫入する場合は、螺旋鉄筋３が鋼管杭の右ねじとなるように取り付け、鋼管リング６は反時計方向に回転させる。螺旋鉄筋３に懸かるねじ部材７が螺旋鉄筋型鋼管杭をソイルセメント柱２の中にねじ込み貫入させる。
【００２７】
なお、螺旋鉄筋型鋼管杭をソイルセメント柱２の中にねじ込み貫入させる際、螺旋鉄筋型鋼管杭の頭部を加圧すると螺旋鉄筋型鋼管杭の回転トルクが減少する。更に、加圧により螺旋鉄筋型鋼管杭がソイルセメント柱２の中に貫入される長さと、螺旋鉄筋型鋼管杭が回転により貫入する長さ（螺旋鉄筋型鋼管杭を右ねじとした場合のピッチ）が等しくなるように、回転数を調整するとより回転トルクが減少して好ましい。
【００２８】
本発明によれば、鋼管リング６の回転速度と螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体４の挿入速度を制御することで、螺旋鉄筋３の杭体４への取付角度に近い回転角になるように埋設させることができ、ソイルセメント柱との間で良好な付着力が得られる。
【００２９】
本発明によれば、ある寸法の鋼管リング６で様々な径の螺旋鉄筋型鋼管杭に適用できるというメリットがある。実工事において、杭体４はφ８９．１（ｍｍ）〜φ６００（ｍｍ）と広い範囲で変化するが、鋼管リング６を可搬レベルのφ４００（ｍｍ）程度としても、ねじ部材の長さを調整することで適用することが可能となる。
【００３０】
本発明に係る回転駆動装置によれば、鋼管リングの回転トルクや螺旋鉄筋型鋼管杭への鉛直方向の加圧力の調整によりソイルセメント柱より抵抗の大きい地中であっても螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれを生ずることなくねじ込み貫入させることが可能である。
【符号の説明】
【００３１】
１ 合成杭
２ ソイルセメント柱
３ 螺旋鉄筋
４ 杭体
５ 回転駆動装置
６ 鋼管リング
７ ねじ部材
８ ナット
【特許請求の範囲】
【請求項１】
螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれさせずに地中またはソイルセメント中にねじ込み貫入する芯ずれ防止機能を備えた回転駆動装置であって、螺旋鉄筋型鋼管杭の外径より大きな内径の鋼管リングと前記鋼管リングに等間隔に設けられたねじ部に螺通するねじ部材と前記鋼管リングの外周側で前記ねじ部材に螺着して前記鋼管リングに前記ねじ部材を固定するナットを備え、前記ねじ部材は、前記鋼管リングの外周側から鋼管リングを螺通して前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記ナットにより前記鋼管リングに螺着する長さを有していることを特徴とする芯ずれ防止機能を備えた螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置。
【請求項２】
請求項１記載の螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置の鋼管リングから突出するねじ部材の長さを調整して、前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記鋼管リングと螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心を一致させた後、前記鋼管リングを回転させて前記螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれさせずに地中またはソイルセメント中に埋設する螺旋鉄筋型鋼管杭のねじ込み貫入工法。
【請求項１】
螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれさせずに地中またはソイルセメント中にねじ込み貫入する芯ずれ防止機能を備えた回転駆動装置であって、螺旋鉄筋型鋼管杭の外径より大きな内径の鋼管リングと前記鋼管リングに等間隔に設けられたねじ部に螺通するねじ部材と前記鋼管リングの外周側で前記ねじ部材に螺着して前記鋼管リングに前記ねじ部材を固定するナットを備え、前記ねじ部材は、前記鋼管リングの外周側から鋼管リングを螺通して前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記ナットにより前記鋼管リングに螺着する長さを有していることを特徴とする芯ずれ防止機能を備えた螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置。
【請求項２】
請求項１記載の螺旋鉄筋型鋼管杭用回転駆動装置の鋼管リングから突出するねじ部材の長さを調整して、前記螺旋鉄筋型鋼管杭の杭体の外周部に接し、且つ前記鋼管リングと螺旋鉄筋型鋼管杭の軸心を一致させた後、前記鋼管リングを回転させて前記螺旋鉄筋型鋼管杭を芯ずれさせずに地中またはソイルセメント中に埋設する螺旋鉄筋型鋼管杭のねじ込み貫入工法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１３−１０８２６６（Ｐ２０１３−１０８２６６Ａ）
【公開日】平成２５年６月６日（２０１３．６．６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１１−２５３４１８（Ｐ２０１１−２５３４１８）
【出願日】平成２３年１１月２１日（２０１１．１１．２１）
【出願人】（０００００１２５８）ＪＦＥスチール株式会社 (8,589)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２５年６月６日（２０１３．６．６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２３年１１月２１日（２０１１．１１．２１）
【出願人】（０００００１２５８）ＪＦＥスチール株式会社 (8,589)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]