説明

螺旋階段構造

【課題】通風性、採光性に優れた開放感のある螺旋階段構造を提供する。
【解決手段】支柱2と、手摺り壁3と、段板4とからなり、支柱2は、複数本の長尺の鋼材20からなり、隣接する鋼材20間に間隙を存した状態で、天井51の躯体51aに固定されて吊り下げられてなり、手摺り壁3は、複数本の長尺の板材30からなり、前記鋼材20と対応するように、隣接する板材30間に間隙を存した状態で、床上52に立設固定されてなり、段板4は、前記鋼材20と、それに対応する板材30との間にそれぞれ設けられた段板支持部材41の上に固定された螺旋階段構造である。手摺り壁3は、隣接する板材30間の間隙を無くした状態としたものであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅建物内に設けられる螺旋階段構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅建物内の居間などの吹き抜け空間に、螺旋階段を設けることが行われている。
【0003】
この場合、螺旋階段は、蹴込板を無くして視線の抜けを良くしたシースルータイプのものが用いられる。
【0004】
従来より、このような螺旋階段としては、支柱に、各段毎に段板を固定した後、この段板に手摺りを固定するようになされた組立型のものや(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、現場において、支柱に段板と手摺りとを溶接して完成させるようになされた現場溶接型のものが知られている。
【特許文献1】特開2000−213134号公報
【特許文献2】特開2000−120246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のいずれの螺旋階段の場合も、しっかりとした支柱によって段板が支持されることによって形成されているため、階段の中心に極太の支柱が必要とされる。したがって、支柱の印象が強くなるとともに、階段を昇降する際、常に視線の先に極太の支柱が入るため、見た目の印象程に開放感のある階段とはならない。
【0006】
また、階段の周囲は明るいが、中心部分が支柱によって遮られるので、中心部が吹き抜けた中空階段ほどの通風性や採光性は得られない。
【0007】
本発明は、係る実情に鑑みてなされたものであって、通風性、採光性に優れた開放感のある螺旋階段構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の螺旋階段構造は、支柱と、手摺り壁と、段板とからなり、支柱は、複数本の長尺の鋼材からなり、隣接する鋼材間に間隙を存した状態で、天井の躯体に固定されて吊り下げられてなり、手摺り壁は、複数本の長尺の板材からなり、前記鋼材と対応するように、床上に立設固定されてなり、段板は、前記鋼材と、それに対応する板材との間にそれぞれ設けられた段板支持部材の上に固定されたものである。
【0009】
また、上記螺旋階段構造において、手摺り壁は、隣接する板材間に間隙を存した状態となされたものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本発明によると、螺旋階段の支柱に相当する部分は、隣接する鋼材間に間隙を存した状態で、天井の躯体に固定されて所定の中心半径の円筒状となるように吊り下げられて構成されているので、階段の支柱側の間隙から採光や通風が得られ、優れた開放感の螺旋階段とすることができる。
【0011】
また、手摺り壁に相当する部分も、隣接する板材間に間隙を存した状態で、所定の中心半径の円筒状となるように床上に立設固定することにより、階段の支柱側手摺り壁側ともに間隙から採光や通風が得られ、よりいっそう優れた開放感の螺旋階段とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1および図2は螺旋階段1の全体構成の概略を示し、図3ないし図9は同螺旋階段1の各部を示している。
【0014】
すなわち、この螺旋階段1は、支柱2、手摺り壁3、段板4によって構成され、住宅建物5の吹き抜け空間50に設けられるようになされている。
【0015】
支柱2は、複数本の長尺の鋼材20によって構成されている。各鋼材20は、住宅建物5の天井51から吊り下げられて一階床面52に到るようになされている。各鋼材20を天井51から吊り下げる際には、図3ないし図5に示すように、天井51の躯体51aに、固定用のプレート21を設けておき、このプレート21から延設された複数の取付部22に各鋼材20をボルトナットで固定することによって取り付けられる。このプレート21から延設された複数の取付部22は、それぞれが適宜の間隔を存して半円筒状に配置されており、各取付部22に鋼材20を取り付けることで、各鋼材20は、隣接する鋼材20間に間隙を存した状態で、中心半径約180度の半円筒状となって吊り下げられる。
【0016】
なお、各鋼材20は、天井51から一階床面52までに到る長尺の一本物であってもよいし、適宜の間隔で継ぎ足し接続して構成するものであってもよい。いずれにせよ各鋼材20は、天井51から一階床面52までに到る長さとした場合、それぞれが撓み易くなってしまう。したがって、図2に示すように、支柱2を構成する各鋼材20が、半円筒状の形状を維持し、かつ、強度を増すように、各鋼材20には、半円筒状の補強部材23が取り付けられる。また、各鋼材20の下端部は、一階床面52の部分から延設されたベンチ用のベースプレート52aの外周に取り付けられる。
【0017】
また、隣接する各鋼材20同士の間隙は、特に限定されるものではないが、間隙をあまり大きくしすぎると、その分鋼材20を細く形成しなければならないで、強度を確保することができなくなり、間隙をあまり小さくしすぎると、その分鋼材20を太くして強度を確保できるが、通風や採光のための十分な間隙を形成できなくなる。したがって、この間隙は、鋼材20の強度との兼ね合いでできるだけ細く形成したものを用いることが、十分な通風や採光を得るためには好ましい。
【0018】
手摺り壁3は、複数本の長尺の板材30によって構成されている。各板材30は、一階床面52に立設固定されている。各板材30を立設固定する際には、図6に示すように、一階床面52、一階53と二階54との吹き抜け壁部56、二階54と塔屋55との吹き抜け壁部56のそれぞれに固定用のプレート31を設けておき、このプレート31に各板材30をビス固定することによって取り付けられる。このプレート31から延設された複数の取付部32は、それぞれが適宜の間隔を存して半円筒状に配置されており、各取付部32に板材30を取り付けることで、各板材30は、隣接する板材30間に間隙を存した状態で、中心半径約180度の半円筒状となって一階床面52から天井51付近に到る高さまで延設した状態で立設固定される。また、この状態で各板材30は、支柱2を構成する各鋼材20と対応するようになされている。
【0019】
なお、各板材30は、一階床面52から天井51付近に到る高さまでの長さを有する長尺の一本物であってもよいし、適宜の間隔で継ぎ足し接続して構成するものであってもよい。ただし、継ぎ足し接続した板材30の場合、撓まないように、上記した固定用のプレート31の位置で継ぎ足し接続されていることが好ましい。この手摺り壁3の内周面には、手摺り33が取り付けられる。
【0020】
また、隣接する各板材30同士の間隙は、特に限定されるものではないが、間隙をあまり大きくしすぎると、その分板材30を細く形成しなければならないで、強度を確保することができなくなり、間隙をあまり小さくしすぎると、その分板材30を太くして強度を確保できるが、通風や採光のための十分な間隙を形成できなくなる。したがって、この間隙は、手摺り壁3の目的に応じて適宜決定される。例えば、本実施の形態のように、隣接する板材30同士の間隙を小さくした場合、適度な通風や採光を確保しながら視線を遮ることができる。この間隙を大きくしたい場合は、板材30ではなく、強度のある鋼板を用いればよい。この場合、より間隙を大きくして通風性や採光性に加え、十分な視線の抜けを確保することもできる。また、間隙を完全に無くして手摺り壁3からは通風性や採光性を得ないようにしてもよい。本実施の形態のように、板材30の幅約280mmに対して間隙40mm程度にしておけば、適宜に視線を遮りながら、通風や採光を確保でき、特に、間隙をこのように小さくすることで、ベンチュリ効果による換気効率の向上も望めることとなる。
【0021】
段板4は、支柱2を構成する鋼材20と、手摺り壁3を構成する板材30との間にそれぞれわたした段板支持部材41の上に固定して構成されている。段板支持部材41の一端部には、鋼材20を挟持してボルトナット42で固定するための挟持部43が形成されており、他端部は、板材30に設けられた孔30aに差し込むことができるようになれた差込部44となされている。また、段板支持部材41の上面両端部には、L字状のアングル材45が溶接固定されており、このアングル材45間に段板4を設けてビス46で固定することで、段板支持部材41に段板4を固定することができるようになされている。各段板支持部材41は、鋼材20と、この鋼材20に対向する板材30との間に設けられ、一階53から二階54、二階54から塔屋55へと螺旋状に上昇するように配置される。
【0022】
このようにして構成される螺旋階段構造によると、螺旋階段1の支柱2に相当する部分は、隣接する鋼材20間に間隙を存した状態となり、手摺り壁3に相当する部分も、隣接する板材30間に間隙を存した状態となるため、螺旋階段1の支柱2側および手摺り壁3側の双方の間隙から採光や通風が得られ、優れた開放感の螺旋階段1とすることができる。
【0023】
また、隣接する鋼材20間にのみ間隙を存した状態とし、手摺り壁3に相当する部分は、隣接する板材30間に間隙を形成しなかった螺旋階段1の場合であっても、螺旋階段1の中心である支柱2側の間隙から採光や通風が得られる。特に、従来の螺旋階段は、この支柱2のある中心側からの採光や通風が悪く、手摺り壁3側からの通風や採光を取るようになっていたので、手摺り壁3に隣接する螺旋階段1の周辺には居室などを設けることはできなかった。しかし、本実施の形態のように隣接する板材30同士の間隙を小さくしたり、間隙を完全に無くした手摺り壁3とした場合は、手摺り壁3に隣接する螺旋階段1の周辺には居室などを設けることが可能となる。
【0024】
また、この螺旋階段構造によると、螺旋階段1の支柱2に相当する部分は、隣接する鋼材20間に間隙を存した状態となっているため、上記した通風性や採光性のみならず、階段昇降時に視線が抜けるので、開放感に優れ、安全性にも優れたものとなる。
【0025】
なお、本実施の形態において、螺旋階段1は、一階53から二階54を経て塔屋55へと到るように設けられているが、塔屋55が無く、一階53から二階54へと設けるようになされたものであってもよい。
【0026】
また、本実施の形態において、螺旋階段1は、二階建てとなされた住宅建物5の吹き抜け空間50に設けるようになされているが、三階建てとなされたものであってもよい。
【0027】
さらに、本実施の形態において、螺旋階段1は、中心角が約180度の半円筒状となされているが、略円筒状となされたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
住宅建物の螺旋階段として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る螺旋階段構造の全体構成の概略を示す部分省略側断面図である。
【図2】本発明に係る螺旋階段構造の全体構成の概略を示す部分斜視図である。
【図3】本発明に係る螺旋階段構造の支柱固定用のプレートを示す平面図である。
【図4】本発明に係る螺旋階段構造において、支柱を構成する各鋼材を天井の躯体に固定したプレートに取り付ける状態を示す側面図である。
【図5】図4の別角度からの側面図である。
【図6】本発明に係る螺旋階段構造において、手摺り壁を構成する各板材を吹き抜け壁部に固定したプレートに取り付ける状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る螺旋階段構造の水平断面図である。
【図8】本発明に係る螺旋階段構造において、鋼材と板材と段板との取り付け状態を示す平面図である。
【図9】本発明に係る螺旋階段構造において、鋼材と板材と段板との取り付け状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 螺旋階段
2 支柱
20 鋼材
3 手摺り壁
30 板材
4 段板
41 段板支持部材
51 天井
51a 躯体
52 一階床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、手摺り壁と、段板とからなり、
支柱は、複数本の長尺の鋼材からなり、隣接する鋼材間に間隙を存した状態で、天井の躯体に固定されて吊り下げられてなり、
手摺り壁は、複数本の長尺の板材からなり、前記鋼材と対応するように、床上に立設固定されてなり、
段板は、前記鋼材と、それに対応する板材との間にそれぞれ設けられた段板支持部材の上に固定されたことを特徴とする螺旋階段構造。
【請求項2】
手摺り壁は、隣接する板材間に間隙を存した状態となされた請求項1記載の螺旋階段構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−2092(P2008−2092A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170523(P2006−170523)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】