血中アディポネクチン増加促進装置、血中アディポネクチン増加促進材の使用、および血中のアディポネクチン増加促進方法
【課題】経口投与以外の方法で、血中のアディポネクチン値を増加促進させる。
【解決手段】血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置1であって、少なくとも、血液体外循環における血液を、血球を含む血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜30と、血漿分離膜30により分離された前記血漿成分中のLDLを除去する、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜31と、を有し、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とする。
【解決手段】血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置1であって、少なくとも、血液体外循環における血液を、血球を含む血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜30と、血漿分離膜30により分離された前記血漿成分中のLDLを除去する、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜31と、を有し、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
経口採取を行わずに、血中のアディポネクチン値を増加させることを促進させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血中のアディポネクチンは、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、虚血性心疾患において減少し、有酸素運動による体重減少で増加することが知られており、またインスリン抵抗性を抑制することが知られている。アディポネクチンは、マウス実験等でもインスリン抵抗性改善作用を有すことが証明されており(非特許文献1、2、3)、血中のアディポネクチンが増加した状態を維持することで、肥満の改善や血管(動脈)の柔軟性などの抗加齢に対して好影響を与えられると考えられている。
【0003】
血中のアディポネクチンを上昇させる方法として、特許文献1、2には、アディポネクチンを上昇させる飲食用の組成物に関する記載がある。このように、アディポネクチンを上昇させるために経口投与するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第05/115425号パンフレット
【特許文献2】特開2008-63289号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J Biol Chem 270: 26746-26749, 1995
【非特許文献2】Biochem Biophys Res Commun 221: 286-296, 1996
【非特許文献3】Nature Medicine 7: 941-946, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、経口投与により血中のアディポネクチン値を上昇させようとすると、投与後にアディポネクチン値が上昇するまでに時間がかかり、継続的な服用が必要となる。
【0007】
本発明は、経口投与以外の方法で、血中のアディポネクチン値を増加促進させることで、体内環境を整えて血管(動脈)の柔軟性の獲得などの抗加齢の効果を得ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、血液体外循環のうち所謂二重濾過血漿浄化法(以下「DFPP」という)により血液中のLDLを除去することで、新たな血液中のアディポネクチンの増加の促進する方法を提案するものである。
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
【0009】
(1)生体の血中のアディポネクチン値を増加させる血中アディポネクチン増加促進装置であって、血液体外循環のために血液が流れる体外循環回路と、前記体外循環回路において血液を圧送するポンプと、前記体外循環回路において、血液を血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜と、前記体外循環回路において、前記血漿分離膜により分離された前記血漿成分中のLDLを分離除去するLDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜と、前記ポンプの駆動を制御して、前記体外循環回路において生体から取り出された血液から前記血漿分離膜により血球成分と血漿成分を分離し、当該血漿成分から前記LDL分離膜によりLDLを分離除去し、当該血漿成分と前記血球成分を前記生体に戻すように血液体外循環を行う制御部と、を有し、前記血液体外循環により、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とすることを特徴とする、血中アディポネクチン増加促進装置。
(2)血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置であって、前記血中アディポネクチン増加促進装置は、少なくとも、血液体外循環における血液を、血球を含む血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜と、前記血漿分離膜により分離された前記血漿成分中のLDLを除去する、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜と、を有し、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とする、血中アディポネクチン増加促進装置。
(3)施行前の血中のLDL−C(LDLコレステロール)値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環を行うことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(4)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(5)前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(6)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(7)LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材装置。
(8)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(9)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(10)LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(11)血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置の製造のための、血中アディポネクチン増加促進材の使用であって、前記血中アディポネクチン増加促進材は、血液体外循環において血漿分離膜により少なくとも血球を含む血球成分と血漿成分に分離した後の前記血漿成分中のLDLを分離除去するLDL分離膜であり、前記LDL分離膜は、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上であって、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とする、血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(12)施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環を行うことを特徴とする、(11)に記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(13)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、(11)又は(12)に記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(14)前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、(11)〜(13)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(15)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、(11)〜(14)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(16)LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、(11)〜(15)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(17)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、(11)〜(16)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(18)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、(11)〜(17)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(19)LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、(11)〜(18)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(20)血中のアディポネクチンの増加を促進させる方法であって、前記方法は、血液中のLDLを除去するステップと、LDL除去後の体内血液中のアディポネクチン値が経時的に増加するステップを有し、前記LDLを除去するステップは、血液を体外へ脱血する工程と、脱血した血液を、血球成分と血漿成分に分離する工程と、分離された血漿成分からLDLをLDL分離膜により分離除去する血漿浄化工程と、分離された血球成分と、LDLを除去された血漿成分を体内へ返血する工程と、を有し、LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A1≧1.08になることを特徴とする、血中のアディポネクチン増加促進方法。
(21)施行前の血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して行うことを特徴とする、(20)に記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(22)施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して行うことを特徴とする、(20)又は(21)に記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(23)前記LDL分離膜は、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上であることを特徴とする、(20)〜(22)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(24)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、(20)〜(23)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(25)前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、(20)〜(24)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(26)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、(20)〜(25)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(27)LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、(20)〜(26)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(28)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、(20)〜(27)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(29)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、(20)〜(28)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(30)LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、(20)〜(29)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、経口投与によりアディポネクチン値を上昇させるのではなく、膜濾過によるLDL除去により血中のLDLを一時的に減少させることで、経時の後の血中のアディポネクチン値を上昇させることができる。アディポネクチンを上昇させるための薬剤や食材を経口で摂取するのではなく、血液環境の浄化により体内環境を整えることで体内自体がアディポネクチンを上昇させる代謝系を有すことにより、血中のアディポネクチン値を増加することを促進し、アディポネクチン値を増加させ、肥満の改善や血管の柔軟性などの抗加齢の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】二重濾過血漿浄化法の一例を示す概念図である。
【図2】実施例の結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る血中アディポネクチン増加促進装置1の構成の概略を示す説明図である。
【0013】
血中アディポネクチン増加促進装置1は、体外循環回路10内の血液を、血球を含む血球成分と血漿成分に分離する血漿分離器11と、血漿成分中のLDLを除去する、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離器12を有している。
【0014】
体外循環回路10は、例えば体内から取り出された血液を処理して体内に戻すためのものであり、例えば体内から取り出された血液を血液ポンプ20により血漿分離器11に送り体内に戻すための血液回路21と、血漿分離器11により分離された血漿成分を血漿ポンプ22、23によりLDL分離器12に送り血液回路21に戻すための血漿回路24を有している。血漿ポンプ22、23は、LDL分離器12の上流と下流にそれぞれ設けられている。LDL分離器12には、クランプ26により閉塞された分岐回路27が接続されている。
【0015】
血漿分離器11は、モジュール内に、中空糸膜などの血漿分離膜30を有し、例えば膜内側と連通する一次ノズル、膜外側と連通する二次ノズルを有している。一次ノズルに血液回路21が接続され、二次ノズルに血漿回路24が接続されており、血漿分離器11で血液から分離された血漿成分はLDL分離器12側に流され、分離されなかった血球成分は、体内側に供給される。
【0016】
血漿分離膜30の膜材質は、例えばポリエチレンやセルロースジアセテートが主流であるが、血液から血球と血漿を分離するために他の分離膜を用いることも可能である。
【0017】
LDL分離器12は、モジュール内に、中空糸膜などの血中アディポネクチン増加促進材としてのLDL分離膜31を有し、血漿分離器11で分離された血漿成分からLDLを除去して血液回路21側に戻すことができる。
【0018】
LDL分離膜31は、血漿中の不要物質などの分子量の大きな物質を分離除去して、アルブミンを中心とする物質を回収し、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のものである。LDL分離膜31の素材には、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、エチレンビニルアルコール共重合体やポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマーなどが用いることができる。好ましくはエチレンビニルアルコール共重合体、セルローストリアセテートである。膜を製造する方法としては、公知の様々な方法により用意することが可能であるが、エチレンビニルアルコール共重合体を製造する上では湿式法が好ましい。膜の形状は様々な形状が用いることが可能であるが、血漿成分を分離する上では、中空糸膜であることが望ましい。
【0019】
LDL分離膜31のLDL透過率X、アルブミン透過率Yは、以下に示す方法により、求められる。まず、牛血液200mlに対し30mlの割合で抗凝固剤であるACD−A液を添加し、牛血液の採取を行う。次に血漿成分と血球成分とに分離する。分離には遠心分離機を用いてもよいし、血球と血漿を分離可能な膜(たとえば、旭化成クラレメディカル製のプラズマフロー)で分離してもよい。次に、LDL分離膜に血液流量100ml/分で牛血液を流し、濾過側より30ml/分の濾過液が取れるようにポンプで吸引する。1リットルの濾液が得られた時点で、該濾液1リットルに含まれる夫々の濃度を測定する。透過率は以下の式に従い求める。
透過率(%)=(濾過血漿中の濃度/濾過前血漿中の濃度)×100
濃度測定は、アルブミンはBehring Nephelometer−Analyzer BM(デイド ベーリング(株)社製)を用いて免疫比濁法によって行った。一方、LDLの測定は、デタミナーL LDL−Cを用いた選択的可溶化法(協和メディクス(株))を用いて行った。これらの性能を有する膜は、公知の膜の製造方法により製造することが可能であるが、例えば、熱誘起法による製造方法での中空糸の場合は、可塑剤と樹脂の比率を調整し、膜を引く速度を調整することで、必要な膜の孔径を調整することができる。LDL透過率とアルブミン透過率を両立する上では、平均孔径が、5~60nmの範囲であることが望ましい。
【0020】
体外循環回路10において血液を圧送する血液ポンプ20、血漿ポンプ22、23の駆動は、制御部40により制御されている。制御部40は、当該ポンプの駆動制御により、体外循環回路10において生体から取り出された血液から血漿分離膜11により血球成分と血漿成分を分離し、当該血漿成分からLDL分離膜12によりLDLを分離除去し、当該血漿成分と前記血球成分を生体に戻すように血液体外循環を実行できる。
【0021】
次に、以上の血中アディポネクチン増加促進装置1を用いた、血中のアディポネクチンの増加を促進させる方法について説明する。
【0022】
例えば施行前の血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下であって、血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環が行われる。当該血液体外循環において、血液が体内から取り出され、血液循環回路10の血液回路21を通じて血漿分離器11に送られる。血漿分離器11において、血液が血漿分離膜30により血液成分と血漿成分に分離される。分離された血漿成分は、血漿回路24を通じてLDL分離器12に送れられる。LDL分離器12において、LDL分離膜31により血漿成分からLDLが分離除去される。このとき、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上の差を有しており、LDLの透過率は、5〜50%の範囲であることが望ましく、アルブミンの透過率は、35〜98%の範囲であることが望ましい。また、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、50%以上の差があることが、LDL及びLDL-Cを除去し、血漿中の有用な蛋白を損失しないので、更に望ましい。LDLが分離された血漿成分は、血漿回路24により血液回路21に戻される。血液回路21に戻された血漿成分は、血漿分離膜30により分離されなかった血液成分とともに体内に戻される。この結果、LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係は、A2/A1≧1.08となる。
【0023】
また、LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係は、A2/A0≧1.10となり、上限は好ましくは10≧A2/A0となる。さらに、LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係は、L2/L1≧1.6となり、上限は好ましくは10≧L2/L1となる。LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係は、F2/F1≧2.0となり、上限は好ましくは100≧F2/F1となる。
【0024】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負となり、LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負となる。さらに、LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1になる。
【0025】
以上の実施の形態によれば、血液体外循環により血中のLDLを分離除去することで、経口投与することなく、血中のアディポネクチン値を上昇することができる。この結果、経口投与の場合のようにアディポネクチン値の上昇に時間がかかることがなく、また継続的な服用も必要なく、血中のアディポネクチン値を増加させて、血液の柔軟性などの抗加齢の効果を得ることができる。
【0026】
アディポネクチンは、脂肪が蓄積すると低下し、減少すると増加することが知られている(非特許文献:Biochem. Biophys. Res. Commun. 1992,257,p79-83参照)。すなわち、血中の脂肪が除去され低下すればアディポネクチンは増加し、血中の脂肪が増加すれば血中のアディポネクチンは低下することが予想される。しかしながら、本実施の形態によれば、血中の脂肪が増加したことを示唆するLCL-コレステロール(や中性脂肪(TG))が増加傾向にある状態の中で、血中のアディポネクチンを上昇傾向にすることができ、これによって、肥満を抑制する効果や血管の柔軟性を改善させる効果を有する。
【0027】
なお、加温器等により、血漿分離膜30からLDL分離膜31までの血漿成分を、30℃以上45℃以下に加温制御してもよい。血漿成分の温度が30℃未満であると、血漿蛋白のLDL分離膜31への目詰まりを起こすリスクが懸念され、治療途中で圧上昇を起こす可能性があり十分な血漿処理量が得られないことが起こり得る。一方、血漿成分の温度が45℃以上になってしまうと、血漿蛋白の変性の可能性が高まり、患者に対して不具合症状を起こす可能性が出ることがある。よって、血漿分離器30からLDL分離膜31までの血漿成分を、30℃以上45℃以下に加温制御することにより、適正なLDL分離処理を行うことができる。
【0028】
次に、上記実施の形態で示した本発明の効果について考察する。血液体外循環療法によりLDL除去を行うことで、一時的にLDLは除去された後に経時でLDL値は元の値レベルに復帰するが、本発明者らは、DFPPによりLDLを除去した場合には、LDL上昇とともにアディポネクチン値が上昇することを発見し、本発明の完成に至っている。特に、DFPP施行直後はLDL値が下がりアディポネクチン値が上昇し易い環境にあるので、この時点でのアディポネクチン値の上昇は予想することができるが、この時点ではアディポネクチン値の増加はほとんど発現しない。施行後の経時変化によりLDL値は元のレベルに復帰するのと呼応して血中のアディポネクチン値が増加するという経時での増加促進の効果を発現している。このアディポネクチン値の増加促進の効果の機序としては、推測ではあるが次のような仮説メカニズムが考えられる。
【0029】
血中のLDLが高い状態が定常状態になっている対象群は、体の平衡特性から、一時的に血中のLDL値を下げても、経時によりLDL値が元のレベルに復帰する傾向を有すものと推測される。しかしながら、DFPPの施行により体内全体における全LDL量のうち一部は確実に体外へ除去されていると考えるのが妥当である。そうすると、経時で元の値に復帰してしまう血中に存在するLDLは、施行前の内臓等に蓄積されていた過剰蓄積分であると考えられる。すなわち、過剰に蓄積されていた内臓からLDLが放出され内蔵の負担が軽減したことにより、血中のアディポネクチン値が増加に転じた可能性が高いと推測される。
【0030】
この機序は、スタチン(メバロチン(R)(登録商標))などの脂質降下薬と全く異なると考えられる。高コレステロール症や、高脂血症の患者群には、血中のLDLが減少(血中へのLDLの放出を抑制)するような脂質降下薬を投与することが多い。スタチンを3ヶ月間または6ヶ月間の長期間投与しても血中のアディポネクチン値は、数%の上昇が観測されるにすぎない。また、スタチンによりLDLコレステロールは低下した状態にあり、血液中のLDLコレステロールの低下とアディポネクチンの上昇が負の相関関係にある。スタチンは、あくまでも血中のLDLなどの脂質を低減した状態を保持するための薬剤であるので、これら薬剤投与後の血液状態と、DFPP施行後の一時的にLDLが低減したが経時で元の値に復帰した血液状態とが、血液や代謝の環境が全く異なることは予想に難くない。
【0031】
本発明では、施術から2週間と言う短期間に血中のアディポネクチンが上昇する効果を得ることが可能となった。また、本発明は血液中から分離した血漿をLDL分離膜にて血漿中のLDLを除去しているので、同時にある程度以上の中性脂肪も物理的に除去する効果を得ている。他方、血漿中からLDLを除去する方法には、LDLを選択吸着するLDL吸着材を用いる方法も知られているが、LDL吸着材では十分なアディポネクチン上昇効果は期待できない。推測ではあるが、DFPPのLDL分離膜によるLDL除去の副次的な効果として中性脂肪や別の血漿中の大高分子成分が除去されていることによる効果が副次的に経時の後のアディポネクチン値の上昇(促進)に寄与している可能性が考えられる。
【0032】
なお、本発明における「血中のアディポネクチン値」の測定は、血球成分を分離した血漿に対して、EIA法により行っている。
【0033】
詳細には、対象群を確定する上での「血中のアディポネクチン値」は、DFPPの施行前の状態での血中の値A0である。また、「LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1」は、DFPPの施行後、血液循環回路内の血液を、当該回路内に生理食塩水を送り込むことにより回収している際に、体内に生理食塩水が混入する前に採取した血液での値(μg/ml)であり、「施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2」は、施行日を0日とした14日目の値である。
【0034】
「LDL値L1」と「中性脂肪値F1」は、A1測定用の血液を用い、「LDL値L2」と「中性脂肪値F 2」は、A2測定用の血液を用いる。また、LDLコレステロールは、血液から分離された血清を酵素法(直接法)にて測定し、中性脂肪は分離された血清を酵素法(遊離グリセロール消去法)にて測定して求めた。なお、採血にあたっては、通常の血液検査の際と同様に空腹時に採血を行うことで、食事による変動分の影響を排除する。
【実施例】
【0035】
以下の実施例を記載する。実施例は請求の範囲を限定して解釈するものではない。
【0036】
上記実施の形態と同様の血中アディポネクチン増加促進装置1を用いて以下の条件で二重膜濾過血漿交換 (double-filtration plasmapheresis:DFPP)を施行した。また、被験者についておよび結果については後述する。
【0037】
(DFPP)
本DFPPの施行では、被験者の肘静脈より対外に誘導した血液を膜型血漿分離器Plasmaflo OP-05W(旭化成クラレメディカル)により血球成分と血漿成分に分離した後、分離した血漿成分をLDL分離器としての血漿成分分離器Cascadeflo EC-50W(旭化成クラレメディカル)を用いて病因物質を分離除去し、その後血漿成分および血球成分を被験者に戻した。血液、血漿循環には、体外循環ポンプ付血液浄化装置プラソートEZ(旭化成クラレメディカル、東京)を用いた。設定条件は、血液流量は50-140ml/分、血漿分離速度は血液流量の25-30%(血漿流量:20-25ml/分程度)とし、血漿処理量は、体重の1/25を目標(廃液量:血漿成分分離器内で貯留される程度の量)とした。
【0038】
膜型血漿分離器Plasmaflo OP-05W(ポリエチレンビニルアルコール製)は、中空糸内径:350±50μm、膜厚:50±10μm、平均孔径:0.3μm、膜面積:0.5 m2である。血漿成分透過率(濾過血漿中の濃度/元血液中の濃度×100)は、血液流速:80〜130ml/分、血漿流量:20〜44ml/分の施行条件で行った。血漿成分分離器Cascadeflo EC-50W(エチレン・ビニルアルコール共重合体製)は、中空糸内径:175μm、膜厚:40μm、有効面積:2.0 m2、血液容量:150mlで、LDL透過率は42%アルブミン透過率は97%で、その差は55%であった。
【0039】
(被験者)
二人の被験者(35歳男性(BMI 29.5)、63歳男性)(BMI26.7))に対して、DFPPを施行した。被験者は、各観察日前日の飲酒は避けること、また試験期間中は不規則な生活を避け、睡眠、食事、運動、アルコールの摂取等に関しては、本試験開始前の日常生活と同様の量・質を維持した。
【0040】
(測定時期)
試験はプロトコールで施行、臨床評価は、DFPP施行前、施行直後、施行後14日目(二週間目)、に測定を実施した。各評価項目は以下の表のとおりである。
【0041】
(測定対象および測定方法)
血液検査項目としては、白血球数(/μl)、赤血球数(x104/μl)、ヘモグロビン(g/dl)、ヘマトクリット値(%)、血小板数(x104/μl)、白血球分類(好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球:%)を検証して、異常が無いことを確認しながら、血中のLDL-C(mg/dl)、中性脂肪(mg/dl)、アディポネクチン(μg/ml[μg/dl])を測定した。血液検査は三菱化学メディエンス(株)(東京)で実施した。
【0042】
アディポネクチンは、キット試薬としてヒトアディポネクチンELISAキット(販売:フナコシ、製造:大塚製薬)を用いて、プレートリーダー サンライズレインボー(TECAN)を測定機器に用いて、血中のアディポネクチン値を算出した。同様に、LDLコレステロールは、コレステストLDL(第一化学薬品)をキットに用い、生化学自動分析装置H7700(日立ハイテクノロジーズ)を測定機器として用いて算出し、中性脂肪(TG)は、イアトロLQ TGII(三菱化学ヤトロン)をキットに用い、生化学自動分析装置H7700(日立ハイテクノロジーズ)を測定機器として用いて算出した。
【0043】
表1に、施行前、施行直後と、施行後14日目との血中のアディポネクチン値、LDL―コレステロール(LDL-C)値、中性脂肪値(TG)、それらの比を示す。また、図2にそれらの結果をグラフに示す。
なお、血球に関する血液検査項目の異常は認められなかった。
【0044】
【表1】
【0045】
以上の結果の様に、DFPP施行により、低アディポネクチン値(4.0μg/ml以下)の被験者の血中のアディポネクチンは、施行直後には小さな上昇効果しか得られないが、経時で値が上昇していることがわかる。また、LDLや中性脂肪は、DFPP施行での除去により、双方の値は施行直後急激に血中の濃度が低下しているが、14日後はほとんど施行前の値に復帰している。明らかに本DFPPによりアディポネクチンを施行後一定期間の後の上昇を促進する効果を有していることが判る。
【0046】
被験者1(No1)のLDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1が、3.21μg/mlで、前記LDL除去の施行後14日後の血中のアディポネクチン値A2は4.00μg/mlであり、その比A2/A1は1.25であった。また、L2/L1の値は2.29、F2/F1の値は2.84であった。被験者2(No2)のLDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1が、3.16μg/mlで、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2は3.43μg/mlであり、その比A2/A1は1.09であった。 また、L2/L1の値は1.98、F2/F1の値は10.81であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、LDL分離膜を用いたDFPPによって、血中のアディポネクチン値を上昇させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 血中アディポネクチン増加促進装置
11 血漿分離器
12 LDL分離器
20 血液ポンプ
21 血液回路
22 血漿ポンプ
23 血漿ポンプ
24 血漿回路
30 血漿分離膜(一次膜)
31 LDL分離膜
【技術分野】
【0001】
経口採取を行わずに、血中のアディポネクチン値を増加させることを促進させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
血中のアディポネクチンは、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、虚血性心疾患において減少し、有酸素運動による体重減少で増加することが知られており、またインスリン抵抗性を抑制することが知られている。アディポネクチンは、マウス実験等でもインスリン抵抗性改善作用を有すことが証明されており(非特許文献1、2、3)、血中のアディポネクチンが増加した状態を維持することで、肥満の改善や血管(動脈)の柔軟性などの抗加齢に対して好影響を与えられると考えられている。
【0003】
血中のアディポネクチンを上昇させる方法として、特許文献1、2には、アディポネクチンを上昇させる飲食用の組成物に関する記載がある。このように、アディポネクチンを上昇させるために経口投与するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第05/115425号パンフレット
【特許文献2】特開2008-63289号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J Biol Chem 270: 26746-26749, 1995
【非特許文献2】Biochem Biophys Res Commun 221: 286-296, 1996
【非特許文献3】Nature Medicine 7: 941-946, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、経口投与により血中のアディポネクチン値を上昇させようとすると、投与後にアディポネクチン値が上昇するまでに時間がかかり、継続的な服用が必要となる。
【0007】
本発明は、経口投与以外の方法で、血中のアディポネクチン値を増加促進させることで、体内環境を整えて血管(動脈)の柔軟性の獲得などの抗加齢の効果を得ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、血液体外循環のうち所謂二重濾過血漿浄化法(以下「DFPP」という)により血液中のLDLを除去することで、新たな血液中のアディポネクチンの増加の促進する方法を提案するものである。
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
【0009】
(1)生体の血中のアディポネクチン値を増加させる血中アディポネクチン増加促進装置であって、血液体外循環のために血液が流れる体外循環回路と、前記体外循環回路において血液を圧送するポンプと、前記体外循環回路において、血液を血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜と、前記体外循環回路において、前記血漿分離膜により分離された前記血漿成分中のLDLを分離除去するLDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜と、前記ポンプの駆動を制御して、前記体外循環回路において生体から取り出された血液から前記血漿分離膜により血球成分と血漿成分を分離し、当該血漿成分から前記LDL分離膜によりLDLを分離除去し、当該血漿成分と前記血球成分を前記生体に戻すように血液体外循環を行う制御部と、を有し、前記血液体外循環により、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とすることを特徴とする、血中アディポネクチン増加促進装置。
(2)血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置であって、前記血中アディポネクチン増加促進装置は、少なくとも、血液体外循環における血液を、血球を含む血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜と、前記血漿分離膜により分離された前記血漿成分中のLDLを除去する、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜と、を有し、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とする、血中アディポネクチン増加促進装置。
(3)施行前の血中のLDL−C(LDLコレステロール)値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環を行うことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(4)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(5)前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(6)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(7)LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材装置。
(8)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(9)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(10)LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、(1)〜(9)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
(11)血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置の製造のための、血中アディポネクチン増加促進材の使用であって、前記血中アディポネクチン増加促進材は、血液体外循環において血漿分離膜により少なくとも血球を含む血球成分と血漿成分に分離した後の前記血漿成分中のLDLを分離除去するLDL分離膜であり、前記LDL分離膜は、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上であって、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とする、血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(12)施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環を行うことを特徴とする、(11)に記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(13)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、(11)又は(12)に記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(14)前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、(11)〜(13)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(15)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、(11)〜(14)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(16)LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、(11)〜(15)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(17)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、(11)〜(16)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(18)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、(11)〜(17)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(19)LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、(11)〜(18)のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
(20)血中のアディポネクチンの増加を促進させる方法であって、前記方法は、血液中のLDLを除去するステップと、LDL除去後の体内血液中のアディポネクチン値が経時的に増加するステップを有し、前記LDLを除去するステップは、血液を体外へ脱血する工程と、脱血した血液を、血球成分と血漿成分に分離する工程と、分離された血漿成分からLDLをLDL分離膜により分離除去する血漿浄化工程と、分離された血球成分と、LDLを除去された血漿成分を体内へ返血する工程と、を有し、LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A1≧1.08になることを特徴とする、血中のアディポネクチン増加促進方法。
(21)施行前の血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して行うことを特徴とする、(20)に記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(22)施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して行うことを特徴とする、(20)又は(21)に記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(23)前記LDL分離膜は、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上であることを特徴とする、(20)〜(22)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(24)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、(20)〜(23)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(25)前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、(20)〜(24)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(26)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、(20)〜(25)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(27)LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、(20)〜(26)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(28)LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、(20)〜(27)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(29)LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、(20)〜(28)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
(30)LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、(20)〜(29)のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、経口投与によりアディポネクチン値を上昇させるのではなく、膜濾過によるLDL除去により血中のLDLを一時的に減少させることで、経時の後の血中のアディポネクチン値を上昇させることができる。アディポネクチンを上昇させるための薬剤や食材を経口で摂取するのではなく、血液環境の浄化により体内環境を整えることで体内自体がアディポネクチンを上昇させる代謝系を有すことにより、血中のアディポネクチン値を増加することを促進し、アディポネクチン値を増加させ、肥満の改善や血管の柔軟性などの抗加齢の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】二重濾過血漿浄化法の一例を示す概念図である。
【図2】実施例の結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係る血中アディポネクチン増加促進装置1の構成の概略を示す説明図である。
【0013】
血中アディポネクチン増加促進装置1は、体外循環回路10内の血液を、血球を含む血球成分と血漿成分に分離する血漿分離器11と、血漿成分中のLDLを除去する、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離器12を有している。
【0014】
体外循環回路10は、例えば体内から取り出された血液を処理して体内に戻すためのものであり、例えば体内から取り出された血液を血液ポンプ20により血漿分離器11に送り体内に戻すための血液回路21と、血漿分離器11により分離された血漿成分を血漿ポンプ22、23によりLDL分離器12に送り血液回路21に戻すための血漿回路24を有している。血漿ポンプ22、23は、LDL分離器12の上流と下流にそれぞれ設けられている。LDL分離器12には、クランプ26により閉塞された分岐回路27が接続されている。
【0015】
血漿分離器11は、モジュール内に、中空糸膜などの血漿分離膜30を有し、例えば膜内側と連通する一次ノズル、膜外側と連通する二次ノズルを有している。一次ノズルに血液回路21が接続され、二次ノズルに血漿回路24が接続されており、血漿分離器11で血液から分離された血漿成分はLDL分離器12側に流され、分離されなかった血球成分は、体内側に供給される。
【0016】
血漿分離膜30の膜材質は、例えばポリエチレンやセルロースジアセテートが主流であるが、血液から血球と血漿を分離するために他の分離膜を用いることも可能である。
【0017】
LDL分離器12は、モジュール内に、中空糸膜などの血中アディポネクチン増加促進材としてのLDL分離膜31を有し、血漿分離器11で分離された血漿成分からLDLを除去して血液回路21側に戻すことができる。
【0018】
LDL分離膜31は、血漿中の不要物質などの分子量の大きな物質を分離除去して、アルブミンを中心とする物質を回収し、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のものである。LDL分離膜31の素材には、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、エチレンビニルアルコール共重合体やポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマーなどが用いることができる。好ましくはエチレンビニルアルコール共重合体、セルローストリアセテートである。膜を製造する方法としては、公知の様々な方法により用意することが可能であるが、エチレンビニルアルコール共重合体を製造する上では湿式法が好ましい。膜の形状は様々な形状が用いることが可能であるが、血漿成分を分離する上では、中空糸膜であることが望ましい。
【0019】
LDL分離膜31のLDL透過率X、アルブミン透過率Yは、以下に示す方法により、求められる。まず、牛血液200mlに対し30mlの割合で抗凝固剤であるACD−A液を添加し、牛血液の採取を行う。次に血漿成分と血球成分とに分離する。分離には遠心分離機を用いてもよいし、血球と血漿を分離可能な膜(たとえば、旭化成クラレメディカル製のプラズマフロー)で分離してもよい。次に、LDL分離膜に血液流量100ml/分で牛血液を流し、濾過側より30ml/分の濾過液が取れるようにポンプで吸引する。1リットルの濾液が得られた時点で、該濾液1リットルに含まれる夫々の濃度を測定する。透過率は以下の式に従い求める。
透過率(%)=(濾過血漿中の濃度/濾過前血漿中の濃度)×100
濃度測定は、アルブミンはBehring Nephelometer−Analyzer BM(デイド ベーリング(株)社製)を用いて免疫比濁法によって行った。一方、LDLの測定は、デタミナーL LDL−Cを用いた選択的可溶化法(協和メディクス(株))を用いて行った。これらの性能を有する膜は、公知の膜の製造方法により製造することが可能であるが、例えば、熱誘起法による製造方法での中空糸の場合は、可塑剤と樹脂の比率を調整し、膜を引く速度を調整することで、必要な膜の孔径を調整することができる。LDL透過率とアルブミン透過率を両立する上では、平均孔径が、5~60nmの範囲であることが望ましい。
【0020】
体外循環回路10において血液を圧送する血液ポンプ20、血漿ポンプ22、23の駆動は、制御部40により制御されている。制御部40は、当該ポンプの駆動制御により、体外循環回路10において生体から取り出された血液から血漿分離膜11により血球成分と血漿成分を分離し、当該血漿成分からLDL分離膜12によりLDLを分離除去し、当該血漿成分と前記血球成分を生体に戻すように血液体外循環を実行できる。
【0021】
次に、以上の血中アディポネクチン増加促進装置1を用いた、血中のアディポネクチンの増加を促進させる方法について説明する。
【0022】
例えば施行前の血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下であって、血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環が行われる。当該血液体外循環において、血液が体内から取り出され、血液循環回路10の血液回路21を通じて血漿分離器11に送られる。血漿分離器11において、血液が血漿分離膜30により血液成分と血漿成分に分離される。分離された血漿成分は、血漿回路24を通じてLDL分離器12に送れられる。LDL分離器12において、LDL分離膜31により血漿成分からLDLが分離除去される。このとき、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上の差を有しており、LDLの透過率は、5〜50%の範囲であることが望ましく、アルブミンの透過率は、35〜98%の範囲であることが望ましい。また、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、50%以上の差があることが、LDL及びLDL-Cを除去し、血漿中の有用な蛋白を損失しないので、更に望ましい。LDLが分離された血漿成分は、血漿回路24により血液回路21に戻される。血液回路21に戻された血漿成分は、血漿分離膜30により分離されなかった血液成分とともに体内に戻される。この結果、LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係は、A2/A1≧1.08となる。
【0023】
また、LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係は、A2/A0≧1.10となり、上限は好ましくは10≧A2/A0となる。さらに、LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係は、L2/L1≧1.6となり、上限は好ましくは10≧L2/L1となる。LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係は、F2/F1≧2.0となり、上限は好ましくは100≧F2/F1となる。
【0024】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負となり、LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負となる。さらに、LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1になる。
【0025】
以上の実施の形態によれば、血液体外循環により血中のLDLを分離除去することで、経口投与することなく、血中のアディポネクチン値を上昇することができる。この結果、経口投与の場合のようにアディポネクチン値の上昇に時間がかかることがなく、また継続的な服用も必要なく、血中のアディポネクチン値を増加させて、血液の柔軟性などの抗加齢の効果を得ることができる。
【0026】
アディポネクチンは、脂肪が蓄積すると低下し、減少すると増加することが知られている(非特許文献:Biochem. Biophys. Res. Commun. 1992,257,p79-83参照)。すなわち、血中の脂肪が除去され低下すればアディポネクチンは増加し、血中の脂肪が増加すれば血中のアディポネクチンは低下することが予想される。しかしながら、本実施の形態によれば、血中の脂肪が増加したことを示唆するLCL-コレステロール(や中性脂肪(TG))が増加傾向にある状態の中で、血中のアディポネクチンを上昇傾向にすることができ、これによって、肥満を抑制する効果や血管の柔軟性を改善させる効果を有する。
【0027】
なお、加温器等により、血漿分離膜30からLDL分離膜31までの血漿成分を、30℃以上45℃以下に加温制御してもよい。血漿成分の温度が30℃未満であると、血漿蛋白のLDL分離膜31への目詰まりを起こすリスクが懸念され、治療途中で圧上昇を起こす可能性があり十分な血漿処理量が得られないことが起こり得る。一方、血漿成分の温度が45℃以上になってしまうと、血漿蛋白の変性の可能性が高まり、患者に対して不具合症状を起こす可能性が出ることがある。よって、血漿分離器30からLDL分離膜31までの血漿成分を、30℃以上45℃以下に加温制御することにより、適正なLDL分離処理を行うことができる。
【0028】
次に、上記実施の形態で示した本発明の効果について考察する。血液体外循環療法によりLDL除去を行うことで、一時的にLDLは除去された後に経時でLDL値は元の値レベルに復帰するが、本発明者らは、DFPPによりLDLを除去した場合には、LDL上昇とともにアディポネクチン値が上昇することを発見し、本発明の完成に至っている。特に、DFPP施行直後はLDL値が下がりアディポネクチン値が上昇し易い環境にあるので、この時点でのアディポネクチン値の上昇は予想することができるが、この時点ではアディポネクチン値の増加はほとんど発現しない。施行後の経時変化によりLDL値は元のレベルに復帰するのと呼応して血中のアディポネクチン値が増加するという経時での増加促進の効果を発現している。このアディポネクチン値の増加促進の効果の機序としては、推測ではあるが次のような仮説メカニズムが考えられる。
【0029】
血中のLDLが高い状態が定常状態になっている対象群は、体の平衡特性から、一時的に血中のLDL値を下げても、経時によりLDL値が元のレベルに復帰する傾向を有すものと推測される。しかしながら、DFPPの施行により体内全体における全LDL量のうち一部は確実に体外へ除去されていると考えるのが妥当である。そうすると、経時で元の値に復帰してしまう血中に存在するLDLは、施行前の内臓等に蓄積されていた過剰蓄積分であると考えられる。すなわち、過剰に蓄積されていた内臓からLDLが放出され内蔵の負担が軽減したことにより、血中のアディポネクチン値が増加に転じた可能性が高いと推測される。
【0030】
この機序は、スタチン(メバロチン(R)(登録商標))などの脂質降下薬と全く異なると考えられる。高コレステロール症や、高脂血症の患者群には、血中のLDLが減少(血中へのLDLの放出を抑制)するような脂質降下薬を投与することが多い。スタチンを3ヶ月間または6ヶ月間の長期間投与しても血中のアディポネクチン値は、数%の上昇が観測されるにすぎない。また、スタチンによりLDLコレステロールは低下した状態にあり、血液中のLDLコレステロールの低下とアディポネクチンの上昇が負の相関関係にある。スタチンは、あくまでも血中のLDLなどの脂質を低減した状態を保持するための薬剤であるので、これら薬剤投与後の血液状態と、DFPP施行後の一時的にLDLが低減したが経時で元の値に復帰した血液状態とが、血液や代謝の環境が全く異なることは予想に難くない。
【0031】
本発明では、施術から2週間と言う短期間に血中のアディポネクチンが上昇する効果を得ることが可能となった。また、本発明は血液中から分離した血漿をLDL分離膜にて血漿中のLDLを除去しているので、同時にある程度以上の中性脂肪も物理的に除去する効果を得ている。他方、血漿中からLDLを除去する方法には、LDLを選択吸着するLDL吸着材を用いる方法も知られているが、LDL吸着材では十分なアディポネクチン上昇効果は期待できない。推測ではあるが、DFPPのLDL分離膜によるLDL除去の副次的な効果として中性脂肪や別の血漿中の大高分子成分が除去されていることによる効果が副次的に経時の後のアディポネクチン値の上昇(促進)に寄与している可能性が考えられる。
【0032】
なお、本発明における「血中のアディポネクチン値」の測定は、血球成分を分離した血漿に対して、EIA法により行っている。
【0033】
詳細には、対象群を確定する上での「血中のアディポネクチン値」は、DFPPの施行前の状態での血中の値A0である。また、「LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1」は、DFPPの施行後、血液循環回路内の血液を、当該回路内に生理食塩水を送り込むことにより回収している際に、体内に生理食塩水が混入する前に採取した血液での値(μg/ml)であり、「施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2」は、施行日を0日とした14日目の値である。
【0034】
「LDL値L1」と「中性脂肪値F1」は、A1測定用の血液を用い、「LDL値L2」と「中性脂肪値F 2」は、A2測定用の血液を用いる。また、LDLコレステロールは、血液から分離された血清を酵素法(直接法)にて測定し、中性脂肪は分離された血清を酵素法(遊離グリセロール消去法)にて測定して求めた。なお、採血にあたっては、通常の血液検査の際と同様に空腹時に採血を行うことで、食事による変動分の影響を排除する。
【実施例】
【0035】
以下の実施例を記載する。実施例は請求の範囲を限定して解釈するものではない。
【0036】
上記実施の形態と同様の血中アディポネクチン増加促進装置1を用いて以下の条件で二重膜濾過血漿交換 (double-filtration plasmapheresis:DFPP)を施行した。また、被験者についておよび結果については後述する。
【0037】
(DFPP)
本DFPPの施行では、被験者の肘静脈より対外に誘導した血液を膜型血漿分離器Plasmaflo OP-05W(旭化成クラレメディカル)により血球成分と血漿成分に分離した後、分離した血漿成分をLDL分離器としての血漿成分分離器Cascadeflo EC-50W(旭化成クラレメディカル)を用いて病因物質を分離除去し、その後血漿成分および血球成分を被験者に戻した。血液、血漿循環には、体外循環ポンプ付血液浄化装置プラソートEZ(旭化成クラレメディカル、東京)を用いた。設定条件は、血液流量は50-140ml/分、血漿分離速度は血液流量の25-30%(血漿流量:20-25ml/分程度)とし、血漿処理量は、体重の1/25を目標(廃液量:血漿成分分離器内で貯留される程度の量)とした。
【0038】
膜型血漿分離器Plasmaflo OP-05W(ポリエチレンビニルアルコール製)は、中空糸内径:350±50μm、膜厚:50±10μm、平均孔径:0.3μm、膜面積:0.5 m2である。血漿成分透過率(濾過血漿中の濃度/元血液中の濃度×100)は、血液流速:80〜130ml/分、血漿流量:20〜44ml/分の施行条件で行った。血漿成分分離器Cascadeflo EC-50W(エチレン・ビニルアルコール共重合体製)は、中空糸内径:175μm、膜厚:40μm、有効面積:2.0 m2、血液容量:150mlで、LDL透過率は42%アルブミン透過率は97%で、その差は55%であった。
【0039】
(被験者)
二人の被験者(35歳男性(BMI 29.5)、63歳男性)(BMI26.7))に対して、DFPPを施行した。被験者は、各観察日前日の飲酒は避けること、また試験期間中は不規則な生活を避け、睡眠、食事、運動、アルコールの摂取等に関しては、本試験開始前の日常生活と同様の量・質を維持した。
【0040】
(測定時期)
試験はプロトコールで施行、臨床評価は、DFPP施行前、施行直後、施行後14日目(二週間目)、に測定を実施した。各評価項目は以下の表のとおりである。
【0041】
(測定対象および測定方法)
血液検査項目としては、白血球数(/μl)、赤血球数(x104/μl)、ヘモグロビン(g/dl)、ヘマトクリット値(%)、血小板数(x104/μl)、白血球分類(好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球:%)を検証して、異常が無いことを確認しながら、血中のLDL-C(mg/dl)、中性脂肪(mg/dl)、アディポネクチン(μg/ml[μg/dl])を測定した。血液検査は三菱化学メディエンス(株)(東京)で実施した。
【0042】
アディポネクチンは、キット試薬としてヒトアディポネクチンELISAキット(販売:フナコシ、製造:大塚製薬)を用いて、プレートリーダー サンライズレインボー(TECAN)を測定機器に用いて、血中のアディポネクチン値を算出した。同様に、LDLコレステロールは、コレステストLDL(第一化学薬品)をキットに用い、生化学自動分析装置H7700(日立ハイテクノロジーズ)を測定機器として用いて算出し、中性脂肪(TG)は、イアトロLQ TGII(三菱化学ヤトロン)をキットに用い、生化学自動分析装置H7700(日立ハイテクノロジーズ)を測定機器として用いて算出した。
【0043】
表1に、施行前、施行直後と、施行後14日目との血中のアディポネクチン値、LDL―コレステロール(LDL-C)値、中性脂肪値(TG)、それらの比を示す。また、図2にそれらの結果をグラフに示す。
なお、血球に関する血液検査項目の異常は認められなかった。
【0044】
【表1】
【0045】
以上の結果の様に、DFPP施行により、低アディポネクチン値(4.0μg/ml以下)の被験者の血中のアディポネクチンは、施行直後には小さな上昇効果しか得られないが、経時で値が上昇していることがわかる。また、LDLや中性脂肪は、DFPP施行での除去により、双方の値は施行直後急激に血中の濃度が低下しているが、14日後はほとんど施行前の値に復帰している。明らかに本DFPPによりアディポネクチンを施行後一定期間の後の上昇を促進する効果を有していることが判る。
【0046】
被験者1(No1)のLDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1が、3.21μg/mlで、前記LDL除去の施行後14日後の血中のアディポネクチン値A2は4.00μg/mlであり、その比A2/A1は1.25であった。また、L2/L1の値は2.29、F2/F1の値は2.84であった。被験者2(No2)のLDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1が、3.16μg/mlで、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2は3.43μg/mlであり、その比A2/A1は1.09であった。 また、L2/L1の値は1.98、F2/F1の値は10.81であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、LDL分離膜を用いたDFPPによって、血中のアディポネクチン値を上昇させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 血中アディポネクチン増加促進装置
11 血漿分離器
12 LDL分離器
20 血液ポンプ
21 血液回路
22 血漿ポンプ
23 血漿ポンプ
24 血漿回路
30 血漿分離膜(一次膜)
31 LDL分離膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の血中のアディポネクチン値を増加させる血中アディポネクチン増加促進装置であって、
血液体外循環のために血液が流れる体外循環回路と、
前記体外循環回路において血液を圧送するポンプと、
前記体外循環回路において、血液を血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜と、
前記体外循環回路において、前記血漿分離膜により分離された前記血漿成分中のLDLを分離除去するLDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜と、
前記ポンプの駆動を制御して、前記体外循環回路において生体から取り出された血液から前記血漿分離膜により血球成分と血漿成分を分離し、当該血漿成分から前記LDL分離膜によりLDLを分離除去し、当該血漿成分と前記血球成分を前記生体に戻すように血液体外循環を行う制御部と、を有し、
前記血液体外循環により、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とすることを特徴とする、血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項2】
血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置であって、
前記血中アディポネクチン増加促進装置は、少なくとも、
血液体外循環における血液を、血球を含む血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜と、
前記血漿分離膜により分離された前記血漿成分中のLDLを除去する、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜と、を有し、
前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とすることを特徴とする、血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項3】
施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項4】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項5】
前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項6】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項7】
LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材装置。
【請求項8】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項9】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項10】
LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項11】
血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置の製造のための、血中アディポネクチン増加促進材の使用であって、
前記血中アディポネクチン増加促進材は、血液体外循環において血漿分離膜により少なくとも血球を含む血球成分と血漿成分に分離した後の前記血漿成分中のLDLを分離除去するLDL分離膜であり、
前記LDL分離膜はLDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上であって、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とする、血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項12】
施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環を行うことを特徴とする、請求項11に記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項13】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項14】
前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項15】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項16】
LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項17】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、請求項11〜16のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項18】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、請求項11〜17のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項19】
LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、請求項11〜18のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項20】
血中のアディポネクチンの増加を促進させる方法であって、
前記方法は、
血液中のLDLを除去するステップと、
LDL除去後の体内血液中のアディポネクチン値が経時的に増加するステップを有し、
前記LDLを除去するステップは、
血液を体外へ脱血する工程と、
脱血した血液を、血球成分と血漿成分に分離する工程と、
分離された血漿成分からLDLをLDL分離膜により分離除去する血漿浄化工程と、
分離された血球成分と、LDLを除去された血漿成分を体内へ返血する工程と、を有し、
LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A1≧1.08になることを特徴とする、血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項21】
施行前の血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して行うことを特徴とする、請求項20に記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項22】
施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して行うことを特徴とする、請求項20又は21に記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項23】
前記LDL分離膜は、LDL透過率がLDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上であることを特徴とする、請求項20〜22のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項24】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、請求項20〜23のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項25】
前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、請求項20〜24のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項26】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、請求項20〜25のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項27】
LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、請求項20〜26のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項28】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、請求項20〜27のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項29】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、請求項20〜28のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項30】
LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、請求項20〜29のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項1】
生体の血中のアディポネクチン値を増加させる血中アディポネクチン増加促進装置であって、
血液体外循環のために血液が流れる体外循環回路と、
前記体外循環回路において血液を圧送するポンプと、
前記体外循環回路において、血液を血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜と、
前記体外循環回路において、前記血漿分離膜により分離された前記血漿成分中のLDLを分離除去するLDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜と、
前記ポンプの駆動を制御して、前記体外循環回路において生体から取り出された血液から前記血漿分離膜により血球成分と血漿成分を分離し、当該血漿成分から前記LDL分離膜によりLDLを分離除去し、当該血漿成分と前記血球成分を前記生体に戻すように血液体外循環を行う制御部と、を有し、
前記血液体外循環により、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とすることを特徴とする、血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項2】
血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置であって、
前記血中アディポネクチン増加促進装置は、少なくとも、
血液体外循環における血液を、血球を含む血球成分と血漿成分に分離する血漿分離膜と、
前記血漿分離膜により分離された前記血漿成分中のLDLを除去する、LDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上のLDL分離膜と、を有し、
前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とすることを特徴とする、血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項3】
施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項4】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項5】
前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項6】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項7】
LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材装置。
【請求項8】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項9】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項10】
LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進装置。
【請求項11】
血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して、血中のアディポネクチン値を増加させるための血液体外循環を行う血中アディポネクチン増加促進装置の製造のための、血中アディポネクチン増加促進材の使用であって、
前記血中アディポネクチン増加促進材は、血液体外循環において血漿分離膜により少なくとも血球を含む血球成分と血漿成分に分離した後の前記血漿成分中のLDLを分離除去するLDL分離膜であり、
前記LDL分離膜はLDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上であって、前記LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1と、前記LDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係をA2/A1≧1.08とする、血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項12】
施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して血液体外循環を行うことを特徴とする、請求項11に記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項13】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項14】
前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項15】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項16】
LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、請求項11〜15のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項17】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、請求項11〜16のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項18】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、請求項11〜17のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項19】
LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、請求項11〜18のいずれかに記載の血中アディポネクチン増加促進材の使用。
【請求項20】
血中のアディポネクチンの増加を促進させる方法であって、
前記方法は、
血液中のLDLを除去するステップと、
LDL除去後の体内血液中のアディポネクチン値が経時的に増加するステップを有し、
前記LDLを除去するステップは、
血液を体外へ脱血する工程と、
脱血した血液を、血球成分と血漿成分に分離する工程と、
分離された血漿成分からLDLをLDL分離膜により分離除去する血漿浄化工程と、
分離された血球成分と、LDLを除去された血漿成分を体内へ返血する工程と、を有し、
LDL除去の施行直後の血中のアディポネクチン値A1とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A1≧1.08になることを特徴とする、血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項21】
施行前の血中のアディポネクチン値が4μg/ml以下の対象群に対して行うことを特徴とする、請求項20に記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項22】
施行前の血中のLDL−C値が140μg/ml以上の対象群に対して行うことを特徴とする、請求項20又は21に記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項23】
前記LDL分離膜は、LDL透過率がLDL透過率X(%)とアルブミン透過率Y(%)の差(Y−X)が、30%以上であることを特徴とする、請求項20〜22のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項24】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L1≧1.6であることを特徴とする、請求項20〜23のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項25】
前記LDL分離膜は、平均孔径が8〜60nmであることを特徴とする、請求項20〜24のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項26】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2との関係がF2/F1≧2.0であることを特徴とする、請求項20〜25のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項27】
LDL除去の施行前の血中のアディポネクチン値A0とLDL除去の施行後14日目の血中のアディポネクチン値A2との関係がA2/A0≧1.10であることを特徴とする、請求項20〜26のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項28】
LDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1とLDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0との差(L1−L0)と、LDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2とLDL除去の施行直後の血中のLDL−C値L1の差(L2−L1)との積(L1−L0)×(L2−L1)が負であることを特徴とする、請求項20〜27のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項29】
LDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1とLDL除去の施行前の血中の中性脂肪値F0との差(F1−F0)と、LDL除去の施行後14日目の血中の中性脂肪値F 2とLDL除去の施行直後の血中の中性脂肪値F1の差(F2−F1)との積(F1−F0)×(F2−F1)が負であることを特徴とする、請求項20〜28のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【請求項30】
LDL除去の施行前の血中のLDL−C値L0とLDL除去の施行後14日目の血中のLDL−C値L2との関係がL2/L0=1.0±0.1であることを特徴とする、請求項20〜29のいずれかに記載の血中のアディポネクチン増加促進方法。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2010−167090(P2010−167090A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12275(P2009−12275)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【出願人】(509023285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000116806)旭化成クラレメディカル株式会社 (133)
【出願人】(509023285)
【Fターム(参考)】
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