説明

血中コレステロール低減剤、及び血中コレステロール低減用食品

【課題】コレステロールは、脂質の一種であり、動物の生理上必須の物質である。しかし、血液中コレステロール量が過剰となった場合には、高脂血症を引き起こすことから、血中コレステロールを低減する薬剤や食品が多く開発されてきた。本発明は、従来技術よりも顕著な効果を有する血中コレステロール低減剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、昆虫の蛹及び/又は幼虫を含有する血中コレステロール低減剤を提供する。また、昆虫はイエバエであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫の蛹及び/又は幼虫を含有する血中コレステロール低減剤、並びに、昆虫の蛹及び/又は幼虫を含有する血中コレステロール低減用食品に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールは、脂質の一種であり、動物の生理上必須の物質である。しかし、血液中コレステロール量が過剰となった場合には、高脂血症を引き起こすことから、血中コレステロールを低減する薬剤や食品が多く開発されてきた(特許文献1〜5参照)。
【0003】
また、多糖類キチン・キトサンが血中コレステロール低下作用を有することが知られており、その作用を利用した飲食用組成物が開発されている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−183924号公報
【特許文献2】特開2009−280517号公報
【特許文献3】特開2008−271983号公報
【特許文献4】特開2003−238423号公報
【特許文献5】特開2002−068979号公報
【特許文献6】特開2007−236222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術よりも顕著な効果を有する血中コレステロール低減剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、昆虫の蛹及び/又は幼虫を含有する血中コレステロール低減剤を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、昆虫の蛹及び/又は幼虫を含有する血中コレステロール低減用食品を提供する。
【0008】
また、昆虫はイエバエであることが好ましい。さらに、別の本発明は、イエバエが家畜糞尿及び/又は食品廃棄物から製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の血中コレステロール低減剤、及び血中コレステロール低減用食品は、従来技術よりも顕著な血中コレステロール低減作用を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】イエバエ蛹の血中コレステロール低減作用を示す図である。
【図2】イエバエ幼虫の血中コレステロール低減作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の飼料の好ましい実施形態を説明する。
【0012】
本発明は、昆虫の幼虫及び/又は蛹を含有し、昆虫の幼虫及び/又は蛹を有効成分とする。本発明に用いられる昆虫はハエが好ましい。ハエとはハエ目(双翅目)に属する昆虫をいい、卵・幼虫・蛹・成虫と形態を変化させて成長する。イエバエ科、ヒメイエバエ科、フンバエ科、ハナバエ科、ニクバエ科、クロバエ科、ショウジョウバエ科等の科があり、イエバエ、ヒメフンバエ、オオクロバエ、キンバエ、センチニクバエ、キイロショウジョウバエ等の種がある。本発明には、これらの昆虫を用いることができる。
【0013】
本発明では、ハエとして、イエバエ科に属すイエバエ(学名:Musca domestica)を用いることが好ましい。イエバエは世界中に分布している。イエバエは生育が速く、簡易な設備で生産することができるため、大量生産に適している。また、生育のための原料として家畜糞尿や食品廃棄物等を用いることができるため、安価で生産が可能のである。
【0014】
本発明に用いられる昆虫の幼虫及び/又は蛹は、熱処理されたものであることが好ましい。熱処理とは、煮沸処理、乾熱処理、湿熱処理、摩擦熱処理等の高温での処理を意味し、高温高圧処理を含む。熱処理の温度や時間等の条件は限定されないが、例えば、熱処理の温度は、約40℃〜約300℃であり、好ましくは約80℃〜約200℃であり、さらに好ましくは約100℃〜約120℃である。また、例えば、熱処理の時間は、約5秒〜約1時間である。
【0015】
高温高圧処理とは、高温且つ高圧の条件化で処理することを意味し、オートクレーブやエクストルーダによる処理を含む。高温高圧処理の温度や時間、圧力等の条件は限定されないが、例えば、高温高圧処理の温度は、約40℃〜約300℃であり、好ましくは約80℃〜約200℃であり、さらに好ましくは約100℃〜約120℃である。また、例えば、高温高圧処理の時間は、約5秒〜約1時間である。また、例えば、高温高圧処理の圧力は、0.1MPa〜50MPaである。
【0016】
エクストルーダによる処理は、1軸型又は多軸のスクリュを備えるエクストルーダを用いることができる。原料は、エクストルーダ内でスクリュによって混練され、高温高圧処理を施され、ダイから押し出される。エクストルーダのスクリュの回転数は限定されないが、例えば20rpm〜200rpmである。
【0017】
本発明に用いられる昆虫の幼虫及び/又は蛹は、上記の処理の他にも、例えば粉砕処理、粉末化処理、乾燥処理等の処理を行ったものでもよい。
【実施例】
【0018】
さらに、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0019】
1.イエバエ蛹及び/又はイエバエ幼虫の製造
本実施例に用いるイエバエ蛹及び/又はイエバエ幼虫を以下のように製造した。まず、家畜糞尿イエバエの卵を接種した。生産中の環境は、温度を25℃〜40℃、湿度を20%〜90%に維持した。イエバエは、卵を接種してから1日〜2日後に孵化して幼虫となった。イエバエの幼虫は、孵化してから3日〜5日後に培地から這い出る性質を持つ。イエバエ幼虫が這い出る場所に回収容器を設置し、イエバエ幼虫が自ら回収容器内へ移動するため、イエバエ幼虫を得た。回収容器に移動したイエバエ幼虫は、移動後1〜2日で蛹化し、イエバエ蛹を得た。
【0020】
2.イエバエ蛹による血中コレステロール低減作用の検証
前述のイエバエの蛹による血中コレステロール低減作用を、ラットを用いて検証した。ハエ蛹を含有する実施例1〜実施例4と、比較例1及び比較例2のラット用飼料を作成した。実施例1及び実施例2はカゼインをハエ蛹で置換し、実施例3及び実施例4はコーンスターチをハエ蛹で置換した。また、比較例2はカニ甲羅由来のキチン(ナカライテスク株式会社製)を5%含有するものである。ハエ蛹は、オートクレーブにより20分・120℃で高温高圧処理したものを用いた。1000g中の組成(乾燥重量)を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
81匹の6週齢オスSD系ラットを室温23±1℃、12L・12Dのサイクルで飼育し、5日間 AIN93基本飼料によって馴化させた。馴化後、9匹ずつ9群に分け、上記の飼料で28日間飼育した。飼料および飲料水は自由摂取とした。飼育終了後に採血し、血中の総コレステロール量の測定を行った。
【0023】
血中コレステロールの測定結果を図1に示す。実施例1〜実施例4で総コレステロールの大幅な低減が認められた。しかし、カニ甲羅由来のキチンを含有する比較例2ではコレステロールの低減は認められなかった。また、飼料摂取量や体重増加には、実施例及び比較例の間での大きな変化はみられなかった。
【0024】
3.ハエ幼虫による血中コレステロール低減作用の検証
続いて、前述のイエバエの幼虫による血中コレステロール低減作用を、ラットを用いて検証した。ハエ幼虫を含有する実施例5及び実施例6と、比較例3のラット用飼料を作成した。実施例5及び実施例6はカゼインをハエ幼虫で置換した。実施例5に用いたハエ幼虫は、100℃・20分で煮沸処理したものであり、実施例6に用いたハエ幼虫はオートクレーブにより20分・120℃で高温高圧処理したものである。1000g中の組成(乾燥重量)を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
27匹の6週齢オスSD系ラットを室温23±1℃、12L・12Dのサイクルで飼育し、5日間 AIN93基本飼料によって馴化させた。馴化後、9匹ずつ9群に分け、上記の飼料で28日間飼育した。飼料および飲料水は自由摂取とした。飼育終了後に採血し、血中の総コレステロール量の測定を行った。
【0027】
血中コレステロールの測定結果を図2に示す。実施例5及び実施例6で総コレステロールの大幅な低減が認められた。飼料摂取量や体重増加には、実施例及び比較例の間での大きな変化はみられなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫の蛹及び/又は幼虫を含有する血中コレステロール低減剤
【請求項2】
前記昆虫がイエバエである、請求項1に記載の血中コレステロール低減剤
【請求項3】
前記イエバエが家畜糞尿及び/又は食品廃棄物から製造されたことを特徴とする、請求項2に記載の血中コレステロール低減剤
【請求項4】
昆虫の蛹及び/又は幼虫を含有する血中コレステロール低減用食品
【請求項5】
前記昆虫がイエハエである、請求項4に記載の血中コレステロール低減用食品
【請求項6】
前記イエバエが家畜糞尿及び/又は食品廃棄物から製造されたことを特徴とする、請求項5に記載の血中コレステロール低減用食品


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−47220(P2013−47220A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166000(P2012−166000)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【出願人】(509201034)
【出願人】(507142410)アビオス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】