説明

血中腸型脂肪酸結合蛋白測定による急性腸炎診断

【課題】急性腸炎を定量的、客観的に判定することのできる迅速で簡便な急性腸炎の判定方法及び判定用試薬を提供する。
【解決手段】分離された血液中のI−FABPを検出する。好ましくは、血液がヒトの血液であり、I−FABPがヒトI−FABPであり、血液中のI−FABPの検出を免疫学的方法により行なう。免疫化学的方法は、酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法または免疫クロマト法のいずれかを用いることができ、好ましくは、酵素免疫化学的方法が用いられる。さらに好ましくは、サンドイッチ型酵素免疫測定法が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性腸炎の判定方法及び判定用試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
急性腸炎は、その発症がウイルス、細菌、薬剤といった外的要因に起因する腸管の炎症に対して用いられる疾患カテゴリーのひとつであり、一般的な症状としては腹痛や激しい下痢を伴い、その原因によっては死に至ることもある。
【0003】
例えば、細菌性腸炎には、コレラ、腸チフスといった法定伝染病から、食中毒を引き起こす大腸菌O157に起因するもの、あるいは、MRSAのような多剤耐性菌によるものがある。また、ウイルス性腸炎ではアデノウイルス、ロタウイルスやノロウイルスなどが原因となる場合が多いとされている。すなわち、急性腸炎とは厳密に1つの病気の診断名ではなく、腸に炎症を起こす症候群の総称であるが、遺伝的背景や自己免疫疾患などが原因となる内因性の腸炎とは臨床上明確に区別されている。
【0004】
急性腸炎は軽症なら投薬と経過観察で軽快することも多いが、診断を誤ると症状が進行して消化管穿孔による腹膜炎や麻痺性イレウスを併発し、手術適用や場合によっては重篤な症状に陥る可能性もあるため、迅速かつ正確な診断が必要とされている。
【0005】
急性腸炎の診断には(1)問診、(2)腹部圧痛、皮膚病変、触診などの身体所見、(3)血液検査、糞便検査、などの一般検査所見、および(4)腹部単純X線、超音波、CT、内視鏡検査、血管造影などの画像診断が用いられる。これらのうち、どの手法がどういった組み合わせで用いられるかは、患者の主訴と臨床症状による臨床医の判断に委ねられる場合が多く、確定診断に至るまでの一定の診断手順は存在しない。即ち、急性腸炎は、下痢、腹痛といった臨床症状だけではなく、身体所見、一般検査所見、画像所見などから総合的に判定されている。上述のうち、身体所見に関しては、腹膜炎を発症していれば触診や腹部圧痛により炎症部位をほぼ特定できるが、これには熟練された技術と経験が必要である。一般検査として原因菌同定に用いられる便培養は、検査に日数を要するため、急性期の患者に対して治療方針を決定するには不適切である。また、CTや内視鏡検査は診断精度が比較的高い反面、設備と専門技師を有する施設でなければ行うことはできず、最も炎症部位と重症度を特定しやすい内視鏡検査は患者の身体的な苦痛や負担を伴うため、簡便な診断方法とは呼べない。
【0006】
一方、血液検査は患者に対する負担も最小限ですむ上に、迅速かつ簡便に患者の様々な情報を得ることができること、および診断根拠として客観性を有することから、臨床現場においては診断ツールのひとつとして多用されている。急性腸炎の診断においても、白血球数、C反応性蛋白(CRP)、乳酸脱水素酵素(LDH)などが診断マーカーとして用いられる場合があるが、いずれも体内における炎症の存在が推定できる程度で臓器特異性がなく、急性腸炎の確定診断たる根拠とはなり得ない。即ち、現在のところ急性腸炎を特異的かつ迅速に判定できる血液診断マーカーは存在しない。
したがって、医療現場においては、急性腸炎を迅速かつ簡便に判定する方法の確立が望まれている。
【0007】
ところで、非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3には、虚血性腸疾患患者の血液中の腸型脂肪酸結合蛋白(Intestinal fatty acid-binding protein : I−FABP)の濃度が健常人よりも上昇していることが記載されている。また、特許文献1及び特許文献2には、ラットの虚血性腸疾患モデル動物の血液中のI−FABP濃度が上昇することが記載されている。
しかしながら、いずれの場合も正常時のI−FABP濃度に比べて著しく高いI−FABP濃度を示す場合の病態を観察しており、血中I−FABPの濃度変化と疾患の重篤度が関連付けられたものではない。また、急性腸炎の発症によって血液中のI−FABP濃度が上昇することは開示されていない。
【0008】
ここで、I−FABPは小腸吸収粘膜上皮に限局性に分布する特異蛋白質であり、分子量が小さく、細胞質分画に豊富に存在するという特徴を有する。そして、脂肪酸と結合する能力を有し、脂肪酸の細胞内代謝に関係している。
【特許文献1】米国特許第5225329号明細書
【特許文献2】国際公開第93/08276号パンフレット
【非特許文献1】Tatsuo Kanda,Hiroshi Fujii, et al., Intestinal Fatty Acid-Binding Protein Is a Useful Diagnostic Marker for Mesenteric Infarction in Humans., “GASTROENTEROLOGY” 1996;110:p.339-343
【非特許文献2】Joshua M. Libermanet al.,Human intestinal fatty acid binding protein:Report of an assay with studies in normal volunteers and intestinal ischemia., “SURGERY” 1997;121:No.3:p.335-342
【非特許文献3】Florian Guthmann et al.,Plasmaconcentration of intestinal-and liver-FABP in neonates suffering from necrotizing enterocolitis and in healthy preterm neonates., “Molecular and Cellular Biochemistry”2002; 239:p.227-234
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、急性腸炎を定量的、客観的指標をもって、迅速かつ簡便で正確に判定することのできる急性腸炎の判定方法及び急性腸炎の判定用試薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行い、抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ型酵素免疫測定法を開発し、高感度かつ精密に血液中のI−FABPを検出することを可能にした。本発明者らは、当該I−FABPの測定系で急性腸炎ラット実験モデルにおける血中のI−FABP濃度を測定した結果、血中濃度が有意に上昇することを見出し、ヒト臨床例においても、急性腸炎患者の血中のI−FABP濃度が高値を示すことを明らかにした。
また、本発明者らは、急性腸炎とは診断されない腹痛や下痢の患者の血中I−FABP濃度は健常人の血中のI−FABP濃度と差が認められないことを明らかにした。更に、血中のI−FABP濃度は、急性腸炎患者において既存の炎症の診断マーカーであるCRPや白血球数よりも高い有病正診率を示すことを明らかにした。これらの結果、およびI−FABPが小腸粘膜上皮にしか存在しないという臓器特異性から、血中のI−FABP濃度を測定することにより迅速かつ簡便に、そして正確に急性腸炎を判定することができることを見出して、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]哺乳動物から分離された血液中の腸型脂肪酸結合蛋白(I−FABP)を検出することを特徴とする急性腸炎の判定方法、
[2]哺乳動物がヒトである上記[1]記載の急性腸炎の判定方法、
[3]血液中のI−FABPの検出を免疫化学的方法により行なう上記[1]または[2]に記載の急性腸炎の判定方法、
[4]免疫化学的方法が酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法または免疫クロマト法のいずれかである上記[3]記載の急性腸炎の判定方法、
[5]免疫化学的方法が酵素免疫化学的方法である上記[4]記載の急性腸炎の判定方法、
[6]酵素免疫化学的方法がサンドイッチ型酵素免疫測定法である上記[5]記載の急性腸炎の判定方法、
[7]急性腸炎が感染性の急性腸炎または薬剤の影響による急性腸炎である上記[1]〜[6]のいずれかに記載の急性腸炎の判定方法、
[8]抗I−FABP抗体を含む急性腸炎の判定用試薬、
[9]固相化抗I−FABP抗体及び酵素標識抗I−FABP抗体を含む急性腸炎の判定用試薬、
[10]抗体が抗ヒトI−FABP抗体である上記[8]または[9]記載の急性腸炎の判定用試薬、
[11]抗体がモノクローナル抗体である上記[8]〜[10]のいずれかに記載の急性腸炎の判定用試薬、
[12]急性腸炎が感染性の急性腸炎または薬剤の影響による急性腸炎である上記[8]〜[11]のいずれかに記載の急性腸炎の判定用試薬、
[13]上記[8]〜[12]のいずれかに記載の急性腸炎の判定用試薬及び該試薬に関する記載物を含む商業パッケージであって、該記載物および/または該パッケージに、該試薬は急性腸炎の判定の用途に使用できる、または使用すべきであることが記載されている商業パッケージ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の急性腸炎の判定方法及び判定用試薬によれば、血液中のI−FABPを検出することにより、急性腸炎を迅速かつ簡便に判定することができ、客観的で正確な判定結果を得ることができる。また、経時的な血中濃度のモニタリングを行うことにより、急性腸炎の病勢推移や治療効果の判定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例2の急性腸炎ラット実験モデルにおける血液中のI−FABPの測定におけるI−FABP濃度の推移を示すグラフである。
【図2】実施例3の抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定における吸光度とヒトI−FABP濃度の相関を示す代表的な標準曲線である。
【図3】健常人29例に対し、3ヶ月の間隔をおいて採取した血中I−FABP濃度の変動(平均値および分散)を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の急性腸炎の判定方法は、血液中のI−FABPを検出することを特徴とするものである。このI−FABPは、哺乳動物の小腸粘膜上皮から血液中に遊離されたものである。本発明において、血液としては、全血、血清、血漿の何れを使用してもよく、これらは哺乳動物から採取した血液を常法に従って処理することで、適宜、得ることができる。ここで、血液がヒト血液であり、I−FABPがヒトI−FABPであることで、ヒトの急性腸炎を判定することができる。本明細書において「I−FABPの検出」には、I−FABP濃度を定量的に測定すること、一定範囲内のI−FABP濃度を判定量的に測定すること、及び一定濃度以上のI−FABPの有無を定性的に検出することの何れもが含まれる。
【0015】
I−FABPの検出方法は、特定の方法に限定されるものではないが、例えば、免疫化学的方法、HPLC法などの各種クロマトグラフィー法を用いることができる。特に、血液中のI−FABPの検出を免疫化学的方法により行なうことで、正確に急性腸炎を判定することができることから、免疫化学的方法が好適に用いられる。免疫化学的方法としては、特定の方法に限定されるものではないが、例えば、酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法、免疫クロマト法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法、ルミネッセンス免疫測定法、スピン免疫測定法、比濁法、酵素センサー電極法、免疫電気泳動法、ウエスタンブロット法などを用いることができる。これらの中では、感度が高いことから、酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法または免疫クロマト法が好ましく用いられる。さらに、酵素免疫化学的方法としては、競合法であってもよいが、簡単な操作でより高感度かつ精密に血液中のI−FABP濃度を測定できることから、非競合法の一種であるサンドイッチ型酵素免疫測定法がより好ましく用いられる。
【0016】
サンドイッチ型酵素免疫測定法は、I−FABPに存在している異なったエピトープを認識する2種類の抗体、すなわち、固相化抗I−FABP抗体及び酵素標識抗I−FABP抗体との間にI−FABPを挟み込む。そして、I−FABPと結合した標識抗体の酵素量を測定することにより、I−FABP濃度を測定するものである。
【0017】
また、サンドイッチ型酵素免疫測定法の一種として、アビジン−ビオチン反応を利用した方法も利用できる。この方法は、固相化抗I−FABP抗体で捕捉したI−FABPと、ビオチン標識抗I−FABP抗体との間で抗原抗体反応を行わせた後、酵素標識ストレプトアビジンを加えてI−FABPと結合した標識抗体の酵素量を測定することにより、I−FABP濃度を測定するものである。
【0018】
ラテックス凝集法は、抗体感作ラテックス粒子と抗原との凝集反応を利用した方法である。この方法は、抗I−FABP抗体感作ラテックス粒子とI−FABPとの免疫反応で生じたラテックス粒子の凝集の程度を測定することにより、I−FABP濃度を測定するものである。
【0019】
免疫クロマト法は、すべての免疫化学反応系が保持されたシート状のキャリアを用いるものである。この方法は、特別な測定機器が不要であることから、病院外での判定、救急などで迅速な判定が求められる場合に有利な方法である。また、この方法は、任意に設定した濃度、すなわちカットオフ値以上のI−FABPの存否を定性的に検出するのに適している。
【0020】
免疫クロマト法では、検体としての血液をキャリアに滴下すると、血液中のI−FABPと金コロイドなどで標識された抗I−FABP抗体とが免疫反応して、免疫複合体が生成する。この複合体がキャリア上を展開し、キャリア上の特定箇所に固相化された別のエピトープを認識する抗I−FABP抗体に捕捉され、標識物が集積する。そして、この集積の度合いを目視で観察することにより、I−FABP濃度を測定するものである。
【0021】
本発明の急性腸炎の判定用試薬は、本発明の急性腸炎の判定方法を免疫化学的方法により実施することができるように、I−FABPを認識して特異的に反応する抗I−FABP抗体を含むものである。抗I−FABP抗体としては、ポリクローナル抗体であってもよいが、厳密な特異性を有し、均質なものを安定して供給できることから、モノクローナル抗体がより好ましく用いられる。この抗体としては、ヒトを対象とする場合には、抗ヒトI−FABP抗体が用いられる。モノクローナル抗体を用いる場合、固相化抗I−FABP抗体と標識抗I−FABP抗体とのエピトープが異なることをあらかじめ確認しておくことが好ましい。
【0022】
本発明において用いられる抗体は、通常の方法により製造できる。ポリクローナル抗体は、I−FABPでウサギ、マウス、ヤギ、ウマなどの動物を免疫することで得ることができる。また、モノクローナル抗体は、このようなI−FABPで免疫された動物の脾臓細胞とミエローマとを融合させ、クローニングを行ってハイブリドーマを選択し、これを培養することにより得ることができる。抗I−FABP抗体を製造する際に使用される抗原としてのI−FABPは、例えばTatsuo Kanda, Teruo Ono et al., Possible role of rat fatty acid-binding proteins in the intestine as carriers of phenol and phthalate derivatives., “BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS”1990; 168: p.1053-1058に記載されているように小腸吸収粘膜上皮の抽出物から精製することによって得られるが、細胞培養や遺伝子組み換え技術によっても得られる。また、抗原としてI−FABPの部分ペプチドを用いることもできる。
【0023】
本発明の判定用試薬がサンドイッチ型酵素免疫測定法に基づく場合、かくして得られた抗I−FABP抗体は、酵素標識抗I−FABP抗体及び固相化抗I−FABP抗体の形態で当該試薬に含まれる。
【0024】
ここで、酵素標識抗I−FABP抗体を得るために抗I−FABP抗体と結合させる標識物としては、特定のものに限定されないが、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの酵素を使用することができる。抗体と標識物との結合は、これらが有するカルボキシル基、アミノ基、チオール基、水酸基などを利用して、常法に従って行うことができる。
【0025】
固相化抗I−FABP抗体は、抗I−FABP抗体を、マイクロプレートウェルやプラスチックビーズ等の固相に結合させることにより製造することができる。固相への結合は、通常、抗体をクエン酸緩衝液等の適当な緩衝液に溶解し、固相表面と抗体溶液を適当な時間(1〜2日)接触させることにより行なうことができる。さらに、非特異的吸着や非特異的反応を抑制するために、牛血清アルブミン(BSA)や牛ミルク蛋白等を溶解したリン酸緩衝溶液を固相と接触させ、抗体によってコートされなかった固相表面部分を前記BSAや牛ミルク蛋白等でブロッキングすることが一般に行なわれる。
【0026】
なお、I−FABPを検出する酵素免疫測定方法及び酵素免疫測定試薬は、例えば、Tatsuo Kanda,Hiroshi Fujii, et al., Intestinal Fatty Acid-Binding Protein Is a Useful Diagnostic Marker for Mesenteric Infarction in Humans., “GASTROENTEROLOGY” 1996;110:p.339-343.に記載されている。また、免疫クロマト法、ラテックス凝集法を用いた試薬はこの分野において一般的であり、前述のようにして得られた抗I−FABP抗体をこれらの試薬に適用することにより製造することができる。
【0027】
そして、血液中のI−FABPの濃度を、例えば抗I−FABP抗体を用いた酵素免疫化学的方法により測定することで、急性腸炎を客観的に正確に判定することができ、急性腸炎の重症度の定量的な評価、経時的な病勢推移の評価が可能となる。すなわち、血液中のI−FABPの濃度が一定の値よりも高い場合に急性腸炎と判定され、この濃度の高さに応じて急性腸炎の重症度が評価され、この濃度の経時変化により経時的な病勢推移が評価される。
【0028】
なお、急性腸炎は、細菌やウイルスなどによる感染性のもの、アルコールの過剰摂取や薬剤刺激といった物理化学的な刺激によるものなど、腸に炎症を起こして下痢や腹痛を生じさせる症候群を総称するものであり、本発明の急性腸炎の判定方法及び判定用試薬は、広くこれらの症候群を含む急性腸炎の判定に適用可能である。
【0029】
本発明の判定用試薬は、商業パッケージとして市場に提供される。本発明の商業パッケージは、上記の急性腸炎の判定用試薬及び該試薬に関する記載物を含む商業パッケージであって、該記載物および/または該パッケージに、該試薬は急性腸炎の判定の用途に使用できる、または使用すべきであることが記載されている。このように構成することにより、使用者等に確実に本発明の判定用試薬の用途を知らしめることができる。当該パッケージには、他に、急性腸炎の判定に用いられる試薬、例えばサンドイッチ型酵素免疫測定法に基づいて実施する場合には、希釈や洗浄等に使用できる緩衝液や、発色用の試薬(基質液)などを含めてキットとしておくこともできる。
以下に具体例を挙げて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの具体例により何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1
(A)[ウサギ抗ラットI−FABPポリクローナル抗体の取得]
以下の手順で抗ラットI−FABPポリクローナル抗体を取得した。
60匹のSDラット(雄)より小腸粘膜を採取し、1mmol/L EDTAを含む0.1mol/L トリス塩酸緩衝液(pH7.4)にてホモジネート抽出後、Sephadex G−75,DEAE−cellulose及びHydroxyapatiteカラムで精製し、15mgの精製ラットI−FABPを得た。これを抗原とし、ウサギに免疫した。使用抗原量は、初回は100μg、2回目以降は50μgであり、Freund’s adjuvantに懸濁して使用した。ゲル二重免疫拡散法で当該ウサギ血清の抗体力価を確認した後、全採血を行い、3000rpm×10分間の遠心分離により抗血清を得た。
【0031】
得られた抗血清から、精製ラットI−FABPをリガンドとして固相化したSepharose 6MBクロマトグラフィーにより、抗ラットI−FABP特異的ポリクローナル抗体を得ることができた。得られたポリクローナル抗体は、Wistarラット(雄)より調製した肝臓、空腸、心臓、胃の細胞質画分に対する反応性をウエスタンブロット法による分析で調べた。その結果、空腸由来の15kDa相当位置と強く反応し、胃由来の同一画分とわずかに反応性を示したが、肝臓、心臓由来の画分とは全く反応性を示さなかった。よって本抗体はラットI−FABPに特異的であり、構造的に類似する心筋型(H−)FABPあるいは肝型(L−)FABPには交差反応性を有さないことが示された。
【0032】
(B)[抗ラットI−FABPポリクローナル抗体を用いた酵素免疫測定]
前項(A)で取得した抗ラットI−FABPポリクローナル抗体を用いてサンドイッチ型酵素免疫測定法によるラット血中I−FABP濃度測定を行った。
以下の手順により、ラットI−FABP測定の標準曲線を作成した。
精製ラットI−FABPを適宜希釈して、各種濃度のラットI−FABP溶液を調製した。そして、この希釈した標準溶液をそれぞれ100μLずつ固相化抗ラットI−FABP抗体結合ウェルに加えてから、ミキサーにて攪拌し、37℃で一定時間インキュベーションを行った。その後、ELISA用ウォッシャーを用いて各ウェルから反応液を除去するとともに、各ウェルに洗浄原液を希釈して調製した洗浄液0.3mLを加えて洗浄した。この洗浄の操作を3回繰り返した後、ウェル中に残った洗浄液をペーパータオル等により除去した。
【0033】
西洋ワサビペルオキシダーゼ標識された抗ラットI−FABPポリクローナル抗体液100μLを反応ウェルに加え、室温で一定時間インキュベーションを行った後、上述と同様の洗浄操作を行った。そして、オルトフェニレンジアミン33mg/mLを含む基質溶液100μLを加え、室温、暗所で正確に15分間インキュベーションを行った。その後、2N硫酸からなる反応停止液100μLを加えて素早くミキサーにて攪拌することで、酵素反応を停止させた。各ウェルについて492nmの吸光度を測定し、標準曲線を作成した。
【0034】
上記の操作によって得られた吸光度がラットI−FABP値と直線的な相関関係にあることが再現性をもって示された。上記と同様の操作を行って吸光度を測定することにより、標準曲線から血液検体中のラットI−FABP値を正確に求めることができる。
【0035】
実施例2
[急性腸炎ラット実験モデルにおける血液中のI−FABPの測定]
SDラット(雄)を麻酔下に開腹し、15cmの空腸結紮ループを作製した。そして、コントロール群(n=8)、V.cholerae群(n=8)、Cl.difficile群(n=8)の3群に分け、V.cholerae群にはCholerae毒素30μgを、Cl.difficile群にはDifficileA毒素5×219CU(Cytotoxic Unit)をそれぞれ生理食塩水に溶解し、ループ内に注入した。閉腹後2、4、6、8時間後に採血し、血清中のI−FABP値を実施例1記載の抗ラットI−FABPポリクローナル抗体を用いたサンドイッチ型酵素免疫測定法で測定した。
測定結果を図1に示す。血清中のI−FABP値は、コントロール群では全経過を通じ10ng/mL程度であったのに対し、腸炎群では時間の経過とともに上昇し、8時間値はV.cholerae群で68.2ng/mL、Cl.difficile群で82.4ng/mLと有意な上昇を示した。
【0036】
以上のとおり、急性腸炎ラット実験モデルにおいて、I−FABPが上昇することから、血液中のI−FABPの濃度を測定することにより、急性腸炎であることを客観的に判定することができることが確認された。
【0037】
実施例3
(A−1)[ウサギ抗ヒトI−FABPポリクローナル抗体の取得]
ヒトI−FABP遺伝子をバキュロウィルスにて発現させることにより得た組換え体I−FABP(recombinant I−FABP:rI−FABP)を初回のみ100μg/rabbit、二回目以降50μg/rabbitでNZWウサギ(雄)に2週間間隔で免疫した。免疫後、部分採血を行い、抗体力価上昇度を、固相化したrI−FABPとの反応性を指標に確認した。そして、麻酔下、頚動脈より全採血を行い、得られた血液を3000rpm×10分遠心分離し、血球画分を除去して抗血清を得た。得られた抗血清を硫安塩析、DEAE−cellulose精製、アフィニティ精製を行うことにより、ウサギ抗ヒトI−FABPポリクローナル抗体を取得した。
【0038】
(A−2)[マウス抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体の取得]
ヒトI−FABP遺伝子をバキュロウィルスにて発現させることにより得たrI−FABPを生理食塩水に溶解後、Freund’s Adjuvantに懸濁して使用した。初回のみ100μg/mouse、二回目以降50μg/mouseでBALB/cマウス(雌)に2週間間隔で免疫した。免疫後、部分採血を行い、抗血清レベルでの力価上昇度を、固相化したrI−FABPとの反応性を指標に確認した。
つぎに、抗体力価が十分に上昇したマウスの脾臓細胞を採取した。予め培養しておいたマウスミエローマと脾臓細胞を1:2〜1:10の比率となるよう混合し、PEG法により細胞融合を行った。そして、限界希釈法により融合細胞を希釈し、培養プレートに播種した。その後、37℃の炭酸ガスインキュベーター内で7〜20日間培養した。
つぎに、ハイブリドーマ培養上清を採取し、固相化したrI−FABPとの反応性を指標に力価を確認した。そして、陽性クローンの細胞を継代培養し、限界希釈法によりクローニングを行った。得られた単一コロニー由来の細胞を抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとした。
つぎに、得られたモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを大量培養した。予め腹腔内に1mLのプリスタンを投与し、2週間以上予備飼育したBALB/cマウス(雌)に対し、5×10〜2×10cells程度のハイブリドーマを投与した。そして、10〜25日飼育し、腹水の貯留を待った。その後、腹水を採取し、得られた腹水抗体を硫安塩析、DEAE−cellulose精製、アフィニティ精製を行うことにより、マウス抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を取得した。
【0039】
(B)[抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定]
以下の試薬で構成したキットを用いて、サンドイッチ型酵素免疫測定法による酵素免疫測定を行った。なお、ここでは、前項(A−2)で得たモノクローナル抗体を用いているが、(A−1)で得たポリクローナル抗体でも代用可能である。なお、以下の各試薬の内容は当該分野において使用される通常のものである。
【0040】
(1)標準試薬:前項(A−1)あるいは(A−2)に準じて調製したI−FABPを含む蛋白性の溶液からなり、それぞれ1、2.5、5、10、25、50ng/mLに調製されたものを使用する。同一の組成溶液でヒトI−FABPを含まないものを標準試薬0とする。
(2)検体希釈溶液:中性付近での緩衝能を持つ蛋白性の溶液からなる。そのまま使用する。
(3)固相化抗I−FABP抗体結合ウェル:抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を結合させたポリスチレン製96穴マイクロプレートウェルからなる。そのまま使用する。一回の測定では1ウェルを使用する。
(4)酵素標識抗体液:西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識された酵素標識抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を、中性付近での緩衝能を持ち、防腐剤等を添加した蛋白性の溶液にて使用濃度に希釈したものからなる。そのまま使用する。一回の測定では希釈前の原液を10μL使用する。
(5)洗浄液:緩衝液成分からなる。洗浄効果を高めるため、界面活性剤が適宜添加されている。
(6)基質液:テトラメチルベンジジン(TMB)を含む溶液からなる。基質液はそのまま使用する。一回の測定では基質液を100μL使用する。
(7)反応停止液:硫酸を含む溶液からなる。そのまま使用する。一回の測定では反応停止液を100μL使用する。
【0041】
はじめに、以下の手順に従って標準曲線を作成した。検体希釈溶液にて標準試薬を適宜希釈して、各種濃度のヒトI−FABP溶液を調製した。そして、この希釈した標準溶液をそれぞれ100μLずつ固相化抗ヒトI−FABP抗体結合ウェルに加えてから、ミキサーにて攪拌し、室温で一定時間インキュベーションを行った。その後、ELISA用ウォッシャーを用いて各ウェルから反応液を除去するとともに、各ウェルに洗浄原液を希釈して調製した洗浄液0.3mLを加えて洗浄した。この洗浄の操作を3回繰り返した後、ウェル中に残った洗浄液をペーパータオル等により除去した。
酵素標識抗体液100μLを反応ウェルに加え、室温で一定時間インキュベーションを行った後、上述と同様の洗浄操作を行った。そして、基質液100μLを加え、室温、暗所で正確に30分間インキュベーションを行った。その後、反応停止液100μLを加えて素早くミキサーにて攪拌することで、酵素反応を停止させた。各ウェルについて450nmの吸光度を測定し、標準曲線を作成した。
【0042】
上記の操作によって得られた吸光度とヒトI−FABP値の相関を示す代表的な標準曲線の例を図2に示す。希釈した標準試薬の代わりに検体を用いて、上記と同様の操作を行って吸光度を測定することにより、標準曲線から検体中のヒトI−FABP値を0.1〜50ng/mLの範囲で正確に求めることができる。
実際に、2例のI−FABP添加検体を順次希釈し、希釈率と測定値をプロットしたところ、ほぼ原点を通る直線が得られ、希釈直線性は良好であった。
また、2例のI−FABP添加検体と標準溶液を一定比率で混和し、添加濃度に対する回収率を算出したところ、ほぼ90〜110%となり、添加回収率は良好であった。
さらに、3例のI−FABP添加検体について、8回繰り返しによる同時再現性試験を行ったところ、その変動係数(CV%)は0.9〜3.9%であった。また、同検体について、4回繰り返しによる測定間再現性試験を行ったところ、その変動係数(CV%)は3.1〜4.9%であり、いずれも再現性は良好であった。
以上のとおり、希釈直線性、添加回収率、再現性のいずれの試験結果も良好であり、本実施例の抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定法が高い信頼性を有することが確認された。
【0043】
実施例4
[臨床例における血液中のI−FABPの測定]
患者から約1mLの血液を採取し、血清を分離した。得られた血清を検体として、実施例3に記載の抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定を行った。下記の各臨床例に示すように、急性腸炎患者においてI−FABP濃度が高い値を示した。
したがって、臨床例において、血液中のI−FABPの濃度を測定することにより、急性腸炎を客観的に正確に、そして迅速かつ簡便に判定することができる。また、経時的な血中濃度のモニタリングを行うことにより、急性腸炎の病勢推移や治療効果の判定が可能となる。
なお、本評価系のヒト血清のI−FABP濃度の検出限界は0.1ng/mLであり、実施例5における健常人のI−FABP濃度は1ng/mL前後であった。
これに対し、実施例2に示す動物実験では、コントロール群の値が10ng/mL程度となり、高い値を示した。この相違の理由としては、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の違いにより検出感度が相違すること、ヒトとラットでは正常値が異なる可能性があること、ラット実験では開腹して閉鎖小腸ループを作製しているのでその影響が出ていること、などが考えられる。
【0044】
また、Tatsuo Kanda,Hiroshi Fujii, et al., Intestinal Fatty Acid-Binding Protein Is a Useful Diagnostic Marker for Mesenteric Infarction in Humans.,“GASTROENTEROLOGY” 1996;110:p.339-343.に示されている健常人の血中濃度は、20〜65ng/mLと報告されている。本実験結果との相違は、抗体の差により検出感度が異なることなどが原因と考えられる。
【0045】
(1)臨床例1
78歳女性。夜間より腹痛が出現し、腹痛は徐々に強くなり、下痢、嘔吐、発熱を伴うようになった。翌日、救急車により搬送され入院となった。入院時検査では白血球増多(11,700/mm)と軽度の代謝性アシドーシス(BE,-1.9)が認められた。臨床的に中等症の急性腸炎と診断され、禁食のもと点滴による補液が行われた。その後、症状は徐々に寛解し、入院の2日後に退院となった。
抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定を行ったところ、入院時のI−FABP値は10ng/mLであり、退院日では0.8ng/mLであった。健常人I−FABP値は1ng/mL前後であるため、有症状時の血清中のI−FABP値の上昇と症状の推移に対応した値の変化が認められた。
【0046】
(2)臨床例2
56歳女性。腹痛と下痢が出現し、症状が改善せず、症状が出現した2日後に外来受診した。外来受診時の血液検査ではCRP高値(4.67)以外には異常が認められなかった。臨床的に軽症の急性腸炎と診断され、整腸薬と鎮痙薬が処方され、数日後には症状は消失した。
抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定を行ったところ、外来受診時のI−FABP値は2.2ng/mLであり、1ng/mL前後である健常人と比較してやや高値を示していた。臨床例1に比べてその症状が軽いことは、I−FABP濃度の上昇の程度が比較的小さいことに相関している。従って、本発明の方法によれば、急性腸炎の病勢推移や、治療効果の経時的な変化を正確に知ることが可能となる。
【0047】
実施例5
[健常人におけるI−FABP分布および腹痛・下痢との関係]
I−FABPの健常人血清中濃度範囲を調べることを目的として健常人ボランティア血清59例の測定を行った。健常人の選別は6項目(1.糖尿病でない、2.腎機能が正常である、3.高脂血症でない、4.小腸切除歴がない、5.活動性の小腸疾患を持たない、6.肝機能が正常である)を基準とした。加えて、採血当日に過去3日間の腹痛または下痢の発症に関する調査を実施し、これらの症状が血中I−FABP濃度に与える影響を調べた。健常人ボランティア59名は、男性41名(25〜50歳、37.3±6.2歳)、女性18名(28〜58歳、39.8±8.1歳)より構成された。これらのうち、過去3日間に腹痛または下痢の症状を経験した被験者は、腹痛のみ2名、下痢のみ3名および腹痛と下痢の両方2名であった。
健常人ボランティアより約5mL採血し、遠心分離操作により血清画分を得た。得られた血清中のI−FABP濃度を、実施例4と同様にして抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を用いた酵素免疫測定法にて定量した。
腹痛、下痢を含む全例のI−FABP測定値と分布を表1に示す。表に示すように、59例の血中I−FABP濃度平均値±S.D.は1.02±0.53ng/mL(男性:1.03±0.53ng/mL、女性:0.97±0.52ng/mL)となった。これらについて、性別および年齢の影響を統計的に調べた結果、いずれの要素も血中I−FABP濃度に影響を及ぼさなかった(表2)。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
次に腹痛または下痢の症状を有することで、血中I−FABP濃度に影響が認められるかを調べた。表3に示すように、いずれについても統計的な有意差を認めず、腹痛、下痢の症状で血中I−FABP濃度が影響を受けることはなかった。即ち、臨床的な診断を必要としない軽微な腹痛等の症状では、血中濃度の変動は認められないことが明らかとなった。
【0051】
【表3】

【0052】
一方、前述のボランティア59名のうち、29名を無作為に抽出し、3ヵ月後に再度血中I−FABP濃度の測定を行った。その際の被験者別測定値変動を図3に示した。図3に示すように、同一被験者の血中濃度は全く一定ではないもののその変動幅は小さく、95%信頼区間である健常人血中濃度の平均値±2S.D.を超えることはなかった。
【0053】
以上のことから、健常人の血中I−FABP濃度は、性差、加齢の影響を受けることなくほぼ一定であり、その濃度は1ng/mL前後であることが明らかとなった。またこの値は、急性腸炎とは診断されない程度の腹痛や下痢でも有意な変動を示さなかった。したがって、血中I−FABP濃度を測定することにより、極めて正確に急性腸炎が診断できることが明らかとなった。
【0054】
実施例6
[急性腸炎患者における有病正診率の比較]
臨床的に急性腸炎と診断された症例10例について、抗ヒトI−FABPモノクローナル抗体を用い、血清中I−FABP濃度の測定を行った。同一検体について、一般的な炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)および白血球数(WBC)の測定も行い、急性腸炎診断における効率を比較した。
その結果、表4に示すように、従来の炎症マーカーであるCRPおよびWBCでの有病正診率はCRPが70%、WBCが50%であったのに対し、I−FABPでは90%と非常に高い診断感度を示した。なお、本実験でI−FABPの診断に用いた基準値(2.0ng/mL未満)は、実施例5に示す健常人血中I−FABP濃度の95%信頼区間より算出している。
従って、血中のI−FABP濃度測定による急性腸炎の診断は、一般的な炎症の診断マーカーであるCRPや白血球数に比べて、小腸に対する臓器特異性があるだけでなく、高い有用性を示すことが判明した。
【0055】
【表4】

【0056】
本出願は、日本で出願された特願2006−079565を基礎としておりそれの内容は本明細書に全て包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物から分離された血液中の腸型脂肪酸結合蛋白(I−FABP)を検出することを特徴とする急性腸炎の判定方法。
【請求項2】
哺乳動物がヒトである請求項1記載の急性腸炎の判定方法。
【請求項3】
血液中のI−FABPの検出を免疫化学的方法により行なう請求項1または2記載の急性腸炎の判定方法。
【請求項4】
免疫化学的方法が酵素免疫化学的方法、ラテックス凝集法または免疫クロマト法のいずれかである請求項3記載の急性腸炎の判定方法。
【請求項5】
免疫化学的方法が酵素免疫化学的方法である請求項4記載の急性腸炎の判定方法。
【請求項6】
酵素免疫化学的方法がサンドイッチ型酵素免疫測定法である請求項5記載の急性腸炎の判定方法。
【請求項7】
急性腸炎が感染性の急性腸炎または薬剤の影響による急性腸炎である請求項1〜6のいずれかに記載の急性腸炎の判定方法。
【請求項8】
抗I−FABP抗体を含む急性腸炎の判定用試薬。
【請求項9】
固相化抗I−FABP抗体及び酵素標識抗I−FABP抗体を含む急性腸炎の判定用試薬。
【請求項10】
抗体が抗ヒトI−FABP抗体である請求項8または9記載の急性腸炎の判定用試薬。
【請求項11】
抗体がモノクローナル抗体である請求項8〜10のいずれかに記載の急性腸炎の判定用試薬。
【請求項12】
急性腸炎が感染性の急性腸炎または薬剤の影響による急性腸炎である請求項8〜11のいずれかに記載の急性腸炎の判定用試薬。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれかに記載の急性腸炎の判定用試薬及び該試薬に関する記載物を含む商業パッケージであって、該記載物および/または該パッケージに、該試薬は急性腸炎の判定の用途に使用できる、または使用すべきであることが記載されている商業パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−286046(P2007−286046A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74164(P2007−74164)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】