説明

血圧の調節のための経口治療のための、単相医薬複合調製物(ジエノゲスト(DIENOGEST)およびエチニルエストラジオール)

本発明は、少なくとも(21)個の一日投与量単位のための、非アルドステロン拮抗薬型である、2.0mgのジエノゲスト(dienogest)と0.030mgのエチニルエストラジオールとの、または、2.0mgのジエノゲストと0.020mgのエチニルエストラジオールとの、または2.0mgのジエノゲストと0.015mgのエチニルエストラジオールとの、または1.5mgのジエノゲストと0.015mgのエチニルエストラジオールとの組み合わせを含む、単相経口避妊薬に関する。前記経口避妊薬は、避妊中における血圧の調節−上昇した血圧の減少、および抑制された血圧の増加−を達成する。前記経口避妊薬は、血圧に対する悪影響の危険性を回避した、長期間の避妊薬の使用において特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、血圧調節の経口治療のための単相医薬品を製造する方法に関し、そして少なくとも21個の一日投与量単位のための、2.0mgの17α−シアノメチル−17−β−ヒドロキシエストラ−4,9−ジエン−3オン(ジエノゲスト)と0.030mgの17α−エチニルエストラジオール(エチニルエストラジオール)との、または2.0mgのジエノゲストと0.020mgのエチニルエストラジオールとの、または2.0mgのジエノゲストと0.015mgのエチニルエストラジオールとの、または1.5mgのジエノゲストと0.015mgのエチニルエストラジオールとの避妊薬の組み合わせが使用される。
【背景技術】
【0002】
先行技術
心血管障害は、ある程度過小評価されている健康問題であることが知られている。例えば、米国における潜在患者の35%は、乳癌を最も大きな健康上のリスクとしてみなしており、そしてたった7%が、心血管障害を最も大きな健康上のリスクとしてみなしている。
【0003】
心血管疾患のための重大な危険要因の一つが、高血圧である。しかし高血圧もまた、無視すべきではなく、なぜならばこれは、疲労感、気力の欠如、衰弱、目眩、および失神傾向のような、その症状によって影響を受ける者の生活の質に影響を及ぼし得るからである。
【0004】
血圧が極度に低い場合、心臓、脳、および他の器官への血液供給、およびそれによる酸素供給が不十分となり得る。血圧の減少、不十分な子宮血流と、発育障害および周産期合併症との間に因果関係があるため、低血圧は妊娠女性にとって危険要因となる。
【0005】
高血圧および低血圧のいずれも、好適な薬剤を用いて心臓専門医によって最初に治療されるべきであることが、当然に必要である。しかし、婦人科医もまた、高血圧/低血圧と、避妊、ホルモン補充または婦人科疾患の治療との間の関係に、将来的により大きな注意を払うだろう。
【0006】
以下の表1は、2003年の欧州高血圧学会(European Society of Hypertension)において分類された、血圧値を記載している。
【0007】
【表1】

【0008】
低血圧(低い血圧)−そもそも単なる測定値であって、疾患ではない−は、世界保健機関、WHOによって、女性において100/60mgHg未満の血圧として定義される。
【0009】
エストロゲン、特にエチニルエストラジオールは、レニンの基質(アンジオテンシノーゲン)の形成の増加を通じて血圧を調節する、レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系(RAAS)を活性化することが知られている。したがってそれらは、ナトリウムの保持を補助し、そして血圧の上昇を引き起こす(Oelkers,W.:Drospirenon:ein neues Gestagen Geburtshilfe und Frauenheilkunde 2001;61:851−856)。
【0010】
Leidenberger, F.他(編者):Klinische Endokrinologie fuer Frauenaerzte,第3完全増補版,Springer Medizin Verlag Heidelberg, 2005, 192において、エチニルエストラジオールを含有する経口避妊薬は、レニン−アンジオテンシン系において効果を有し、したがって血圧の上昇を引き起こし得ることが記載されている。
【0011】
Ketelhut, R. G.他:”Langfristiges Absetzen oraler Kontrazeptiva...,J.Hypertonie 2000;4(2),18−21は、経口避妊薬が血圧を増加させ、これらの避妊薬の投与の終了後に血圧の減少が記録されることを指摘している。
【0012】
Mueck A.O.他:”Hormontherapie und Hypertonie”,J Hypertonie 2006;10(1),14−21は同様に、経口避妊薬は、頻繁に、特に長期間摂取において、拡張期血圧の増加よりも収縮期血圧の増加を引き起こし得ることを記述している。さらに、経口避妊薬の摂取の後に非常に速やかに高血圧の進行が起こり得るが、血圧上昇は徐々におよびゆっくりと進行し得る。
【0013】
Elger,W.他は、DE3022337において、血圧に対する経口避妊薬の悪影響について記載しているが、スピロノラクトン化合物であるドロスピレノン(元来はアルドステロン拮抗薬型の利尿薬)は、血圧上昇を回避する。
【0014】
Oelkers(上を参照)はまた、例えばスピロノラクトン化合物であるドロスピレノンのような、抗ミネラルコルチコイド活性を有するプロゲストーゲンは、アルドステロン拮抗作用を有し、したがってナトリウム利尿傾向および血圧低下効果傾向を有することを示している。
【発明の概要】
【0015】
発明の説明
本発明は、血圧に対する悪影響を有さずに避妊活性を有する、好適な組成物を提供する目的に基づく。
【0016】
本目的は、少なくとも21個の一日投与量単位のための、2.0mgのジエノゲストと0.030mgのエチニルエストラジオールとの、または2.0mgのジエノゲストと0.020mgのエチニルエストラジオールとの、または2.0mgのジエノゲストと0.015mgのエチニルエストラジオールとの、または1.5mgのジエノゲストと0.020mgのエチニルエストラジオールとの避妊薬の組み合わせを含む、血圧調節の経口治療のための、請求項1に記載の単相医薬品を製造する方法による本発明に従って達成される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、治療ならびに治療AおよびBの検査の関数としての平均収縮期血圧を示し、ここでSはスクリーニングを意味し;Bはベースラインを意味し;8は第8週を意味し;12は第12週を意味し;25は第25週を意味し;38は第38週を意味し;Fは最終的な検査を意味する。
【図2】図2は、治療ならびに治療AおよびBの検査の関数としての平均拡張期血圧を示し、ここでSはスクリーニングを意味し;Bはベースラインを意味し;8は第8週を意味し;12は第12週を意味し;25は第25週を意味し;38は第38週を意味し;Fは最終的な検査を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の有利な実施形態は、請求項2および3の特徴中に存在する。
【0019】
経口医薬形態は、錠剤、フィルムコートされた錠剤(フィルムコート錠)または糖を含む被覆を施した錠剤(糖衣錠)であってもよい。
【0020】
以下はまた、本発明の医薬形態中に含まれ得る:硬ゼラチンカプセル、水性もしくは油性懸濁液を充填物として含む軟ゼラチンカプセル、または他の経口用懸濁液。
【0021】
錠剤マトリクス/錠剤コアからの活性成分の放出または溶解は、溶解溶媒として37℃の水を、そして攪拌速度として50rpmを用いる溶解試験によって測定される。
【0022】
前記測定は、1000mlの水を使用するパドル装置を用いて、Ph.Eur.に従って行なわれる。
【0023】
本目的は、請求項4に記載のキットによってさらに達成される。
【0024】
請求項4記載のキットはまた、7個以下の、自由に摂取可能なまたは偽薬含有1日投与量単位をさらに含む。これらは、少なくとも連続21日間の投与を意図されており、その結果、一日投与量単位の総数は28個である。
【0025】
ジエノゲストとエチニルエストラジオールとの組み合わせを用いた一日投与量単位の数は、21、22、23、24または25個であり、自由に摂取可能なまたは偽薬含有1日投与量単位は、7、6、5、4または3個であることも、請求項5に従って可能である。
【0026】
1日投与量単位の数は、請求項6および7に従って、nが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、および17であり、1個またはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤/担体と一緒になった請求項1に記載の避妊薬の組み合わせの、少なくともn×21個の1日投与量単位であってよく、そして最大で7個であるが、3、4、5または6個の、自由に摂取可能なまたは偽薬含有1日投与量単位であってよい。
【0027】
比較的長期間にわたる出血から自由になる必要性と関連づけられる、持続的な血圧の調節および持続的な避妊に関する女性の要求に依拠して、ジエノゲストとエチニルエストラジオールとの組み合わせを用いた1日投与量単位の数は84個であり、自由に摂取可能なまたは偽薬含有1日投与量単位が7個であることが、請求項8に従って可能であり、その結果、1年あたりの周期日の総数は、4×(n×21+7)であり、nは4と等しい。
【0028】
エチニルエストラジオールと、非アルドステロン拮抗薬型であるジエノゲストを含む、血圧を調節する(上昇した血圧を下げ、低い血圧を上昇させる)経口避妊薬が、驚くべきことに、本発明に従って見出された。これらの薬剤の組み合わせは、血圧に悪影響を及ぼす危険性が無く、長期間の使用に特に好適である。
【0029】
血圧を調節するための医薬組成物を製造するための、請求項1に示されている薬剤の組み合わせの本発明に従った使用はまた、避妊を希望し、そしてわずかに高血圧を患っている女性にとって、または経口避妊薬の摂取によって、血圧に対する悪影響を受けずに血圧が上昇する女性にとって好適な組成物を提供する。
【0030】
請求項1記載の薬剤の組み合わせの使用は、高血圧または低血圧であって、そして第一に避妊を希望し、その後に子供に対する欲求を達成したい女性に、やがて生まれてくる子供(胎児)の発達障害の危険性、および妊娠時における周産期合併症の危険性を減少させる可能性をさらに提供する。
【0031】
これらの女性にとって、当該薬剤の組み合わせへメタフォリンを添加することによって、例えば神経管欠損、口唇裂、顎裂および口蓋裂のような、妊娠時における葉酸の欠如によって引き起こされる先天性奇形の危険性、ならびに胎盤早期剥離および早産のような妊娠合併症の危険性を回避することも同様に可能である。
【実施例】
【0032】
薬剤の組み合わせの例示的実施形態
実施例1
バレット(Valette)は、経口避妊薬の、従来型の糖衣錠であり、糖を含有する被覆で覆われている錠剤コア中に0.030mgのエチニルエストラジオールおよび2.0mgのジエノゲストを含む。
【0033】
実施例2
2mgのジエノゲストおよび0.02mgのエチニルエストラジオールであって、1mgのジエノゲストが遅れて放出され、そして1mgのジエノゲストおよび0.02mgのエチニルエストラジオールが早く放出される。
【0034】
当該実施例は、マトリクスコアを有するフィルムコート錠について記載する。フィルムコート錠のコアは、親水性の浸食マトリクス中における1mgのジエノゲストを塩基性成分であるメトローズと共に含む。活性成分であるジエノゲストのマトリクスからの放出は遅れる。当該コアは、1.0mgのジエノゲストおよび0.02mgのエチニルエストラジオールを含む、速やかに溶解するフィルムで覆われた。光からの防御のために、フィルムコート錠は、酸化鉄顔料を含む、さらに速やかに溶解する着色層で覆われた。
【0035】
【表2】

【0036】
実施例3
総投与量が1.5mgおよび0.015mgのエチニルエストラジオールのフィルムコート錠は、徐放性マトリクスコアおよび速やかに溶解するフィルム被覆、ならびに着色層からなる。
【0037】
【表3】

【0038】
実施例4
以下の組成を有する錠剤を製造した:
【0039】
【表4】

【0040】
エチニルエストラジオール−ベータ−シクロデキストリン複合体を、エチニルエストラジオールとして使用することもまた可能である。エチニルエストラジオール−ベータ−シクロデキストリン複合体(1:2)が使用される場合、最大、または約10倍の量が使用される。
【0041】
全ての物質を好適な方法で混合し、そして顆粒化した。顆粒化工程の終了後にメタフォリンを加え、混合を再開し、錠剤化し、そして好適にはフィルムコーティングした。
【0042】
実施例5
以下の組成を有する錠剤を製造した:
【0043】
【表5】

【0044】
エチニルエストラジオール−ベータ−シクロデキストリン複合体を、エチニルエストラジオールとして使用することもまた可能である。エチニルエストラジオール−ベータ−シクロデキストリン複合体(1:2)が使用される場合、最大、または約10倍の量が使用される。
【0045】
全ての物質を好適な方法で混合し、そして顆粒化した。顆粒化工程の終了後にメタフォリンを加え、混合を再開し、錠剤化し、そして好適にはフィルムコーティングした。
【0046】
特許請求の範囲に記載された製剤の活性の検討
本発明は、添付された図面を参照にして、より正確に記載される。
【0047】
特許請求の範囲に記載された製剤の活性の検討において、「ステージ2/3」群または「グレード2/3」群にある高血圧の対象を、避妊薬の活性の研究において含めなかったため、または安全性の理由からそれから除外したために、注目が、表1に従って主に「正常高値」、「軽度高血圧−グレード1/「境界」」に向けられる点に留意すべきである。
【0048】
表2は、収縮期血圧に関する下位群を明確に特徴づける。
【0049】
【表6】

【0050】
本研究に参加することについて承諾書を得た、18歳〜41歳の1315人の女性を、無作為化二重盲検臨床試験において、2つの異なる治療法で治療した。
【0051】
治療(A)は、組み合わせ−2mgのジエノゲスト/30μgのエチニルエストラジオール−を、84日間の長期周期で、一日一錠を継続的に摂取し、その後7日間中断し、合計で4回の長期周期に相当した。
【0052】
第二の治療(B)は、組み合わせ−2mgのジエノゲスト/30μgのエチニルエストラジオール−を、21日間の周期で、一日一錠の継続的に摂取し、その後7日間中断し(従来型の摂取)、合計で13回の従来型周期に相当した。
【0053】
スクリーニング時、ベースライン時、第6週〜第8週の治療時、第10週〜第12週の治療時、第23週〜第25週の治療時、第36週〜第38週の治療時、および最終的な検査時(通常は1年間の治療後)のそれぞれの場合で得られた血圧値の評価は、以下のことを明らかにした:
【0054】
平均収縮期血圧および平均拡張期血圧は、本研究を通じて、A群およびB群の両方において視覚的に一定のままであった(図1および2参照)。
【0055】
ベースライン時およびスクリーニング時における血圧値との関連で、表2に従って形成された下位群における平均収縮期血圧の変化を考慮すると(図2参照)、最初において低−正常値であった女性は、平均して収縮期血圧のかすかな上昇を示す。
【0056】
最初において高−正常値またはかすかに上昇した値であった女性は、平均して収縮期血圧がかすかに減少する。
【0057】
中−正常範囲内の血圧値を有する女性において、投薬治療において、平均してこれらはほんのわずか影響するのみであった。同じことが、表2に従って形成された下位群における拡張期血圧に適用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧調節の経口治療のための単相医薬品を製造するための方法であって、
少なくとも21個の一日投与量単位のための、2.0mgのジエノゲストと0.030mgのエチニルエストラジオールとの、または2.0mgのジエノゲストと0.020mgのエチニルエストラジオールとの、または2.0mgのジエノゲストと0.015mgのエチニルエストラジオールとの、または1.5mgのジエノゲストと0.015mgのエチニルエストラジオールとの避妊薬の組み合わせが使用されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記単相医薬品の医薬形態が、徐放を目的とした全ジエノゲスト量を有する錠剤コア、ならびに非徐放(迅速な放出)を目的とした全ジエノゲスト量、および非徐放(迅速な放出)を目的とした全エチニルエストラジオール量を有するフィルムコーティングからなるフィルムコート錠を示すことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶解溶媒として37℃の水を、そして攪拌速度として50rpmを使用する溶解試験で測定されたところでは、30分超後に、少なくとも10%、好ましくは30%のジエノゲストが徐々に錠剤コアから溶解されることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
1個またはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤/担体と一緒になった、少なくとも21個の1日投与量単位の避妊薬の組み合わせ、および最大で7個の、自由に摂取可能なまたは偽薬含有1日投与量単位を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
ジエノゲストとエチニルエストラジオールとの組み合わせを有する一日投与量単位の数が、21、22、23、24、または25個であり、そして自由に摂取可能なまたは偽薬含有1日投与量単位が、7、6、5、4、または3個であり、その結果周期日の総数が28日である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
nが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、および17であり、1個またはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤/担体と一緒になった、少なくともn×21個の一日投与量単位の避妊薬の組み合わせ、ならびに最大で7個の自由に摂取可能なまたは偽薬含有一日投与量単位を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
自由に摂取可能なまたは偽薬含有一日投与量単位の数が、3、4、5、6、および7個である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
ジエノゲストおよびエチニルエストラジオールとの組み合わせを有する一日投与量単位の数が84個であり、そして自由に摂取可能なまたは偽薬含有一日投与量単位が合計7個であり、その結果1年間あたりの周期日の総数が4×(n×21+7)であり、nが4である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−529063(P2010−529063A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510703(P2010−510703)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005756
【国際公開番号】WO2009/015766
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】