血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法
【課題】中子に抜き勾配を設けずとも変形なく金型から離型することができ、また高い生産効率にて製造が可能な血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法を提供する。
【解決手段】血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目161を有する環状形状の湾曲弾性板としてのカーラ160を製造するに際して、固定側型体10、可動側型体20および中子30から成る金型を用いた射出成形を行なう。その際、成形したカーラ160を金型から離型するにあたって、カーラ160の周方向における任意の位置において、カーラ160の内周面および外周面の少なくともいずれか一方が金型から離型した状態とした後に、カーラ160の軸方向と平行な方向に中子30を移動させることにより、カーラ160の中空部から中子30を引き抜く。
【解決手段】血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目161を有する環状形状の湾曲弾性板としてのカーラ160を製造するに際して、固定側型体10、可動側型体20および中子30から成る金型を用いた射出成形を行なう。その際、成形したカーラ160を金型から離型するにあたって、カーラ160の周方向における任意の位置において、カーラ160の内周面および外周面の少なくともいずれか一方が金型から離型した状態とした後に、カーラ160の軸方向と平行な方向に中子30を移動させることにより、カーラ160の中空部から中子30を引き抜く。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法に関するものであり、より特定的には、上記湾曲弾性板を樹脂材料を用いた射出成形にて形成する場合の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、血圧値の測定に際しては、生体内部に位置する動脈を圧迫するための流体袋を内包するカフを生体の体表面に巻き付け、巻き付けた流体袋を加圧・減圧することによって動脈内に生じる動脈圧脈波の検出を行い、これによって血圧値の測定が行なわれる。ここで、カフとは、内腔を有する帯状の構造物であって生体の一部に巻き付けが可能なものを意味し、気体や液体等の流体を内腔に注入することによって上下肢の動脈圧測定に利用されるもののことを指す。したがって、カフは、流体袋とこの流体袋を生体に巻き付けるための巻付手段とを含めた概念を示す言葉であり、一般に袋状カバー体の内部に流体袋を収納して生体の被測定部位に巻き付けるタイプのものが多い。特に手首や上腕に巻き付けられて装着されるカフは、腕帯あるいはマンシェットと呼ばれることもある。
【0003】
近年の血圧計のカフにおいては、被験者による装着作業の容易化を図るため、また装着後における流体袋の膨張時において流体袋が生体側に向かってスムーズに膨張して生体を加圧するようにするため、上記袋状カバー体の内部でかつ流体袋の外側に湾曲弾性板としてのカーラを設けることが一般的に行なわれている。このカーラとしては、たとえば、径方向に弾性変形可能となるように、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の樹脂部材が使用される。上記血圧計のカフに内包されるカーラの製造に際しては、金型を用いた射出成形が一般的に利用される。
【0004】
射出成形にてカーラを製造する際の製造方法が開示された文献として、たとえば特開2002−306433号公報(特許文献1)や特開2002−307498号公報(特許文献2)がある。上記特許文献1および2に開示のカーラの製造方法においては、固定側型体、可動側型体および中子からなる金型を用い、これらを組合わせることによって生じるキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させることによってカーラが成形される。そして、その後、金型からカーラを離型することによってカーラが金型から取り出されることになる。
【0005】
上記特許文献1および2に開示のカーラの製造方法におけるカーラの金型からの取り出し手順は、以下のようなものである。まず、可動側型体と中子とを型開き方向に移動させることにより固定側型体からカーラを離型し、次いで、中子がカーラの周方向に設けられた切り目を通過するように型開き方向(カーラの径方向と平行な方向)に向かって中子を移動させることにより中子からカーラを離型する。上記中子の移動に際しては、カーラが中子によって押し広げられ、これによりカーラの切れ目部分が大きく広がることにより、カーラの内部からの中子の離脱が可能になる。そして、最後に、可動側型体に設けられた押し出しピンにてカーラを押し出すことにより可動側型体からカーラを離型し、金型からのカーラの取り出しが行なわれる。
【特許文献1】特開2002−306433号公報
【特許文献2】特開2002−307498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示のカーラの製造方法を利用した場合には、成形したカーラからの中子の離脱の際に、中子によってカーラが大きく押し広げられることになるため、カーラが変形したり破損したりすることが懸念される。特に、成形直後のカーラはその温度が依然として高いため、上記無理抜きの際に変形を生じ易い。この変形を防止するためには、金型内のカーラを十分に冷えた状態となるまで放置しておくことが考えられるが、これではカーラの1つ当たりの製造に要する射出成形のタクトタイムが大幅に増加し、コストアップの要因となってしまう。
【0007】
上記方法とは別に、中子からのカーラの離型の際に、中子を型開き方向と直交する方向のうちカーラの軸方向と平行な方向に移動させることによって中子からカーラを離型することも想定される。しかしながら、このような方法を採用するためには、カーラに変形を生じさせないために中子に抜き勾配を設ける必要があり、カーラの内径が軸方向において異なるものとなってしまう。特に、血圧計のカフの内周面および外周面には、通常、シボ(微小な凹凸)加工が施されるため、その抜き勾配は3°程度以上必要となり、カーラの内径の差が軸方向において著しく大きくなるという問題が生じる。このようにして形成した軸方向における内径に差のあるカーラを具備したカフとした場合には、カフによる生体の圧迫が周方向において不均一となり、正確な血圧値の測定には適したものとはならない。
【0008】
本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたものであり、中子に抜き勾配を設けずとも変形なく金型から離型することができ、また高い生産効率にて製造が可能な血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面に基づく湾曲弾性板の製造方法は、血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて上記湾曲弾性板を成形するステップと、上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップとを備える。上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップは、上記固定側型体から遠ざかる第1の方向に、上記可動側型体および上記中子を移動させることにより、上記固定側型体から上記湾曲弾性板を離型するステップと、上記可動側型体から上記中子が相対的に遠ざかる第2の方向に、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記可動側型体から上記湾曲弾性板を離型するステップと、上記湾曲弾性板が上記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向において上記可動側型体に当接する突き当たり面を有する状態を維持しつつ、上記第3の方向に向けて上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記中子から上記湾曲弾性板を離型するステップとを含む。
【0010】
このような製造方法を採用することにより、湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に向けての中子の湾曲弾性板からの引き抜きの際に、固定側型体および可動側型体から湾曲弾性板が既に離型した状態にあるため、中子に抜き勾配を設けずとも湾曲弾性板に塑性変形を生じさせることなく中子から湾曲弾性板を離型することが可能になる。したがって、成形した湾曲弾性板を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にて湾曲弾性板を歩留まりよく製造することが可能になる。
【0011】
本発明の第2の局面に基づく湾曲弾性板の製造方法は、血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて上記湾曲弾性板を成形するステップと、上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップとを備える。上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップは、上記固定側型体から遠ざかる第1の方向に、上記可動側型体および上記中子を移動させることにより、上記固定側型体から上記湾曲弾性板を離型するステップと、上記湾曲弾性板の中空部から上記中子が離脱しない範囲内において、上記可動側型体から上記中子が相対的に遠ざかる第2の方向に、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記中子から上記湾曲弾性板を離型するステップと、上記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記湾曲弾性板の中空部から上記中子を引き抜くステップと、上記可動側型体に設けられた取り出しピンを用いて上記可動側型体から上記湾曲弾性板を離型するステップとを含む。
【0012】
このような製造方法を採用することにより、湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に向けての中子の湾曲弾性板からの引き抜きの際に、固定側型体および中子から湾曲弾性板が既に離型した状態にあるため、中子に抜き勾配を設けずとも湾曲弾性板に塑性変形を生じさせることなく湾曲弾性板を引き抜くことが可能になる。したがって、成形した湾曲弾性板を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にて湾曲弾性板を歩留まりよく製造することが可能になる。
【0013】
上記本発明の第2の局面に基づく湾曲弾性板の製造方法にあっては、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を上記第2の方向に移動させることにより、上記中子から上記湾曲弾性板を離型するステップにおいて、上記可動側型体に対する上記湾曲弾性板の固着状態を維持する固着状態維持手段を用いることにより、上記中子から上記湾曲弾性板を離型することが好ましい。
【0014】
このような製造方法を採用することにより、可動側型体および中子の少なくともいずれか一方を第2の方向に移動させる際に、意図的に固着状態維持手段によって湾曲弾性板を中子から離型することが可能になる。したがって、湾曲弾性板の金型からの取り出しの際に、湾曲弾性板の挙動を制御性よくコントロールすることが可能になり、歩留まりの向上に資するようになる。
【0015】
本発明の第3の局面に基づく湾曲弾性板の製造方法は、血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて上記湾曲弾性板を成形するステップと、上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップとを備える。上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップは、上記湾曲弾性板の周方向における任意の位置において、上記湾曲弾性板の内周面および外周面の少なくともいずれか一方が上記金型から離型した状態とされた後に、上記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記湾曲弾性板の中空部から上記中子を引き抜くステップを含む。
【0016】
このような製造方法を採用することにより、湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に向けての中子の湾曲弾性板からの引き抜きの際に、湾曲弾性板の周方向における任意の位置において湾曲弾性板の内周面および外周面の少なくともいずれか一方が金型から既に離型した状態にあるため、中子に抜き勾配を設けずとも湾曲弾性板に塑性変形を生じさせることなく湾曲弾性板を引き抜くことが可能になる。したがって、成形した湾曲弾性板を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にて湾曲弾性板を歩留まりよく製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板を、中子に抜き勾配を設けずとも変形なく金型から離型することができるようになるとともに、高い生産効率にて製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、手首に装着して血圧値を測定することが企図された手首式血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板を特に例示して説明する。
【0019】
図1は、手首式血圧計の外観を示す斜視図であり、図2は、手首式血圧計の内部構造を示す縦断面図である。また、図3は、図2中に示すIII−III線に沿ったカフの断面図であり、図4は、カフに内包される湾曲弾性板としてのカーラの形状を示す斜視図である。以下においては、これらの図を参照して、手首式血圧計の一般的な構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、手首式血圧計100は、装置本体110とカフ130とを備える。装置本体110の表面には、表示部111と操作部112とが配置されており、この装置本体110に上述のカフ130が取付けられている。
【0021】
図2および図3に示すように、カフ130は、布等からなる袋状カバー体140と、この袋状カバー体140の内部に配置された流体袋としての空気袋150と、袋状カバー体140の内部に配置され、装着状態において空気袋150の外側に位置する湾曲弾性板としてのカーラ160とを主に備える。これら袋状カバー体140、空気袋150およびカーラ160は、カフ130の巻き付け方向を長手方向として延在している。すなわち、被測定部位である手首へのカフ130の装着状態においては、袋状カバー体140の長手方向と直交する方向である幅方向が、手首の軸方向(動脈の延伸方向)と略平行に配置されることになる。
【0022】
袋状カバー体140は、装着状態において生体側に位置する内側カバー部材141と、装着状態において生体側とは反対側に位置する外側カバー部材142とを備えており、これら内側カバー部材141と外側カバー部材142とを重ね合わせてその周縁を結合することによって袋状に形成されている。袋状カバー体140の内側カバー部材141は、好適には伸縮性に優れた部材にて構成され、袋状カバー体140の外側カバー部材142は、好適には伸縮性に乏しい部材にて構成される。
【0023】
図2に示すように、袋状カバー体140の長手方向の一方端の内周面には、面ファスナ175が設けられており、袋状カバー体140の長手方向の他方端の外周面には、上記面ファスナ175と係合する面ファスナ176が貼り付けられている。これら面ファスナ175,176は、手首にカフ130を装着した状態において、手首式血圧計100を手首に安定的に固定するための手段である。
【0024】
図2および図3に示すように、空気袋150は、樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなる。具体的には、空気袋150は、カフ130を手首に巻き付けた状態において手首側に位置する内側樹脂シート151と、上記巻き付け状態において手首とは反対側に位置する外側樹脂シート152とを重ね合わせ、その周縁を溶着することにより袋状に形成されており、内部に膨縮空間154を有している。なお、膨縮空間154は、装置本体110の内部に設けられる加圧ポンプ等の血圧測定用エア系コンポーネントと、配管を介して接続される。
【0025】
空気袋150を構成する内側樹脂シート151および外側樹脂シート152の材質としては、伸縮性に富んでおり溶着後において膨縮空間154からの漏気がないものであればどのようなものでも利用可能である。このような観点から、内側樹脂シート151および外側樹脂シート152の最適な材質としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、軟質塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、生ゴム等が挙げられる。
【0026】
空気袋150の外側には、環状に巻き回されることによって径方向に弾性変形可能に構成された湾曲弾性板としてのカーラ160が配置されている。カーラ160は、空気袋150の外周面に図示しない両面テープ等の接着手段によって接着されている。
【0027】
図4に示すように、カーラ160は、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目161を有する扁平な環状体として形成されることにより、自身の環状形態を維持することによって手首に沿うように構成されている。装着時においては、カーラ160の内部に形成された中空部に、上記切れ目161を介して手首が挿入されることになる。このカーラ160は、被験者自身によってカフ130を手首に装着し易くするためのものであり、十分な弾性力を発現する部材にて構成される。
【0028】
カーラ160は、その外周面の所定位置に装置本体110にカーラ160を固定するための係止爪部167a,167bを有している。また、カーラ160の外周面の所定位置には、上述の配管が挿通される穴168が別途設けられている。
【0029】
次に、上述の手首式血圧計100のカフ130に組付けられるカーラ160を製造する方法について、実施例毎に具体的に説明する。上述の手首式血圧計100のカフ130に組付けられるカーラ160を製造するに際しては、射出成形機による射出成形を利用する。射出成形機としては、固定側型体(キャビティプレート)と、可動側型体(コアプレート)と、中子(スライドコア)とからなる金型を具備した射出成形機を利用する。また、使用する樹脂材料としては、硬質プラスチック(たとえばポリプロピレン等)を利用する。
【0030】
(実施例1)
図5は、実施例1に係るカーラの製造方法を説明するためのフロー図である。図6ないし図10は、実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す図であり、(A)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図であり、(B)は、成形されるカーラの軸方向を含む金型の模式断面図である。なお、図6ないし図10においては、カーラの形状を、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する円筒形状に簡略化して示している。
【0031】
図6ないし図10に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法において使用される金型は、溶融した樹脂材料が注入されるキャビティを、固定側型体10および可動側型体20の型合わせ面にそれぞれ設けられた段差部11および段差部21によって構成したものであり、中子30としては段差部を型合わせ面に有しない円筒状のものが用いられる。また、カーラ160の周方向の所定位置に形成される切れ目161は、固定側型体10の段差部11内に設けられた突条部によって成形される。また、図4に示す係止爪部167a,167bは、上記中子30とは別の、可動側型体20に設けられた中子(図示せず)等によって成形され、また、穴168は、可動側型体20の段差部21内に設けられた突起部(図示せず)によって成形される。
【0032】
まず、図5に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法にあっては、ステップS101において、固定側型体、可動側型体および中子を組合わせて金型内にキャビティを形成する。次に、図5および図6に示すように、ステップS102において、固定側型体10、可動側型体20および中子30からなる金型内に形成されたキャビティに溶融したポリプロピレン等の樹脂材料を注入し、固化させることによってカーラ160を成形する。
【0033】
つづいて、図5および図7に示すように、ステップS103において、可動側型体20および中子30を第1の方向である型開き方向(図7中において矢印Aで示す方向)に移動させ、固定側型体10からカーラ160を離型する。その際、可動側型体20および中子30を型開き方向に向けて同時に同じ距離だけ移動させる。
【0034】
次に、図5および図8に示すように、ステップS104において、可動側型体20を第2の方向である型開き方向(図8中において矢印Bで示す方向)にさらに移動させ、可動側型体20からカーラ160を離型する。その際、中子30は図7に示す位置から移動させず、可動側型体20のみを距離L1だけ移動させる。このときの可動側型体20の移動距離L1は、カーラ160の厚み未満とする。これにより、カーラ160と可動側型体20との間には空間部S1が形成され、カーラ160は、中子30にのみその内周面が固着された状態となる。
【0035】
つづいて、図5および図9に示すように、中子30をカーラ160の軸方向と平行な第3の方向(図9中において矢印Cで示す方向)に移動させ、中子30からカーラ160を離型する。具体的には、前段階のステップS104において、可動側型体20の移動距離L1をカーラ160の厚み未満としているため、カーラ160は、図8に示す状態においてカーラ160の軸方向と平行な方向において可動側型体20に当接する突き当たり面162を有していることになり、上記中子30の移動の際にカーラ160は中子30の移動に追従せず、中子30からスムーズに離型することになる。
【0036】
次に、図5および図10に示すように、中子30をカーラ160の中空部から完全に引き抜いた状態とした上で、可動側型体20に設けられた取り出しピン26を用いて金型からカーラ160を取り出す。具体的には、取り出しピン26を型開き方向と反対の方向(図10中において矢印Dで示す方向)に移動させ、その先端でカーラ160の外周面を押し上げることにより、金型からカーラ160を取り出す。
【0037】
以上において説明した製造方法を採用してカーラ160を製造することにより、カーラ160の軸方向と平行な方向に向けての中子30のカーラ160からの引き抜きの際に、固定側型体10および可動側型体20からカーラ160が既に離型した状態にあるため、カーラ160は中子30にのみ固着した状態にあり、中子30に抜き勾配を設けずともカーラ160に塑性変形を生じさせることなく中子30からカーラ160をスムーズに離型することが可能になる。また、カーラ160の成形後に比較的短い冷却時間を置いてカーラ160の離型が行なえるため、カーラ160の1つ当たりの製造に要する射出成形のタクトタイムを短く設定することが可能になる。したがって、成形したカーラ160を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にてカーラ160を歩留まりよく製造することが可能になる。なお、カーラ160の表面にシボ加工を施す場合にも、上記製造方法を採用すればスムーズに金型からカーラ160を離型することが可能である。
【0038】
また、上記製造方法を用いて製造されたカーラ160は、その軸方向における内径が全域にわたって一定の大きさとなる。このように、内径が一定に形成されたカーラ160が組付けられたカフとすることにより、手首を全周囲にわたって均一に圧迫することが可能になるため、このようなカフを備えた手首式血圧計とすることにより、高精度の手首式血圧計とすることができる。
【0039】
(実施例2)
図11ないし図15は、実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図であり、(A)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図であり、(B)は、成形されるカーラの軸方向を含む金型の模式断面図である。なお、図11ないし図15においては、カーラの形状を、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する円筒形状に簡略化して示している。本実施例に係るカーラの製造方法は、上述の実施例1に係るカーラの製造方法に準ずるものであり、そのフロー自体は、図5に示すものと同じである。
【0040】
図11ないし図15に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法において使用される金型は、溶融した樹脂材料が注入されるキャビティを、中子30の型合わせ面に設けられた段差部31によって構成したものであり、固定側型体10および可動側型体20の型合わせ面としては、段差部を型合わせ面に有しない形状のものが用いられる。また、カーラ160の周方向の所定位置に形成される切れ目161は、固定側型体10の型合わせ面に設けられた突条部によって成形される。また、図4に示す係止爪部167a,167bは、上記中子30とは別の、可動側型体20に設けられた中子(図示せず)等によって成形され、また、穴168は、可動側型体20の段差部21内に設けられた突起部22によって成形される。
【0041】
まず、図5に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法にあっては、上述の実施例1に係るカーラの製造方法と同様に、ステップS101において、固定側型体、可動側型体および中子を組合わせて金型内にキャビティを形成する。次に、図5および図11に示すように、ステップS102において、固定側型体10、可動側型体20および中子30からなる金型内に形成されたキャビティに溶融したポリプロピレン等の樹脂材料を注入し、固化させることによってカーラ160を成形する。
【0042】
つづいて、図5および図12に示すように、ステップS103において、可動側型体20および中子30を第1の方向である型開き方向(図12中において矢印Aで示す方向)に移動させ、固定側型体10からカーラ160を離型する。その際、可動側型体20および中子30を型開き方向に向けて同時に同じ距離だけ移動させる。
【0043】
次に、図5および図13に示すように、ステップS104において、可動側型体20を第2の方向である型開き方向(図13中において矢印Bで示す方向)にさらに移動させ、可動側型体20からカーラ160を離型する。その際、中子30は図12に示す位置から移動させず、可動側型体20のみを距離L2だけ移動させる。このときの可動側型体20の移動距離L2は、可動側型体20に設けられた突起部22の高さ未満とする。これにより、カーラ160と可動側型体20との間には空間部S2が形成され、カーラ160は、中子30にのみその内周面が固着された状態となる。
【0044】
つづいて、図5および図14に示すように、中子30をカーラ160の軸方向と平行な第3の方向(図14中において矢印Cで示す方向)に移動させ、中子30からカーラ160を離型する。具体的には、前段階のステップS104において、可動側型体20の移動距離L2を可動側型体20に設けられた突起部22の高さ未満としているため、カーラ160は、図13に示す状態においてカーラ160の軸方向と平行な方向において可動側型体20に当接する突き当たり面163を有していることになり、上記中子30の移動の際にカーラ160は中子30の移動に追従せず、中子30からスムーズに離型することになる。
【0045】
次に、図5および図15に示すように、中子30をカーラ160の中空部から完全に引き抜いた状態とした上で、可動側型体20に設けられた取り出しピン26を用いて金型からカーラ160を取り出す。具体的には、取り出しピン26を型開き方向と反対の方向(図15中において矢印Dで示す方向)に移動させ、その先端でカーラ160の外周面を押し上げることにより、金型からカーラ160を取り出す。
【0046】
以上において説明した製造方法を採用してカーラ160を製造することにより、上述の実施例1に係るカーラの製造方法と同様に、成形したカーラ160を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にてカーラ160を歩留まりよく製造することが可能になる。
【0047】
(実施例3)
図16は、実施例3に係るカーラの製造方法を説明するためのフロー図である。図17および図18は、実施例3に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図であり、(A)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図であり、(B)は、成形されるカーラの軸方向を含む金型の模式断面図である。なお、図17および図18においては、カーラの形状を、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する円筒形状に簡略化して示している。本実施例に係るカーラの製造方法は、上述の実施例1に係るカーラの製造方法と一部のステップを除いて共通するものである。したがって、共通部分については、上述の実施例1において使用した図を利用して説明する。
【0048】
図17および図18に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法において使用される金型は、上述の実施例1に係るカーラの製造方法において使用される金型と同じ形状のものである。
【0049】
まず、図16に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法にあっては、ステップS201において、固定側型体、可動側型体および中子を組合わせて金型内にキャビティを形成する。次に、図16および図6に示すように、ステップS202において、固定側型体10、可動側型体20および中子30からなる金型内に形成されたキャビティに溶融したポリプロピレン等の樹脂材料を注入し、固化させることによってカーラ160を成形する。
【0050】
つづいて、図16および図7に示すように、ステップS203において、可動側型体20および中子30を第1の方向である型開き方向(図7中において矢印Aで示す方向)に移動させ、固定側型体10からカーラ160を離型する。その際、可動側型体20および中子30を型開き方向に向けて同時に同じ距離だけ移動させる。
【0051】
次に、図16および図17に示すように、ステップS204において、可動側型体20を第2の方向である型開き方向(図17中において矢印Bで示す方向)にさらに移動させ、中子30からカーラ160を離型する。その際、中子30は図7に示す位置から移動させず、可動側型体20のみを距離L3だけ移動させる。このときの可動側型体20の移動距離L3は、カーラ160の中空部から中子30が離脱しない範囲(すなわちカーラの内径未満)に限定されるが、より好ましくは、中子30の移動によるカーラ160の変形が小さくかつ中子30からカーラ160を離型するのに十分な距離とする。これにより、カーラ160と中子30との間には空間部S3が形成され、カーラ160は、可動側型体20にのみその外周面の一部が固着された状態となる。
【0052】
つづいて、図16および図18に示すように、中子30をカーラ160の軸方向と平行な第3の方向(図18中において矢印Cで示す方向)に移動させ、中子30をカーラ160の中空部から引き抜く。具体的には、カーラ160は、その外周面の一部が可動側型体20に固着した状態にあるため、上記中子30の移動の際にカーラ160は中子30の移動に追従せず、カーラ160から中子30がスムーズに引き抜かれることになる。
【0053】
次に、図16および図10に示すように、中子30をカーラ160の中空部から完全に引き抜いた状態とした上で、可動側型体20に設けられた取り出しピン26を用いて可動側型体20からカーラ160を離型し、金型からカーラ160を取り出す。具体的には、取り出しピン26を型開き方向と反対の方向(図10中において矢印Dで示す方向)に移動させ、その先端でカーラ160の外周面を押し上げることにより、可動側型体20からカーラ160を離型し、金型からカーラ160を取り出す。
【0054】
以上において説明した製造方法を採用してカーラ160を製造することにより、カーラ160の軸方向と平行な方向に向けての中子30のカーラ160からの引き抜きの際に、固定側型体10および中子30からカーラ160が既に離型した状態にあるため、カーラ160は可動側型体20にのみ固着した状態にあり、中子30に抜き勾配を設けずともカーラ160に塑性変形を生じさせることなく中子30からカーラ160をスムーズに引き抜くことが可能になる。また、カーラ160の成形後に比較的短い冷却時間を置いてカーラ160の離型が行なえるため、カーラ160の1つ当たりの製造に要する射出成形のタクトタイムを短く設定することが可能になる。したがって、成形したカーラ160を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にてカーラ160を歩留まりよく製造することが可能になる。なお、カーラ160の表面にシボ加工を施す場合にも、上記製造方法を採用すればスムーズに金型からカーラ160を離型することが可能である。
【0055】
また、上記製造方法を用いて製造されたカーラ160は、その軸方向における内径が全域にわたって一定の大きさとなる。このように、内径が一定に形成されたカーラ160が組付けられたカフとすることにより、手首を全周囲にわたって均一に圧迫することが可能になるため、このようなカフを備えた手首式血圧計とすることにより、高精度の手首式血圧計とすることができる。
【0056】
図19は、本実施例に係るカーラの製造方法の変形例を示す図であり、(A)ないし(C)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図である。
【0057】
上記本実施例においては、図17に示す可動側型体20の移動の際に、カーラ160の可動側型体20に対する固着が維持され、その代わりにカーラ160の中子30に対する固着が解除されている。しかしながら、カーラ160の形状によっては、可動側型体20を上記の如く移動させた場合にも、上述の実施例1の如く、カーラ160の中子30に対する固着が維持され、その代わりにカーラ160の可動側型体20に対する固着が解除されることも想定される。そこで、本変形例においては、上記可動側型体20の移動の際に必ずカーラ160の可動側型体20に対する固着が維持されるように、図19(A)ないし図19(C)に示すように、可動側型体20に固着状態維持手段としての係止ピン28を設けている。
【0058】
図19(A)ないし図19(C)に示すように、係止ピン28は、可動側型体20の型合わせ面に近い部分に可動側型体20の側面から内側に向かって移動自在に挿し込まれ、その先端は、少なくとも成形されるカーラ160の厚み部分に達することができるように構成されている。そして、カーラ160の製造に際しては、図19(A)に示すように、係止ピン28の先端がキャビティに達した状態のままカーラ160の成形が行なわれ、図19(B)に示す可動側型体20の移動の際に、係止ピン28によってカーラ160が可動側型体20の移動に追従させられ、これによりカーラ160の可動側型体20に対する固着が維持される。その後、図19(C)に示す押し出しピン26によるカーラ160の押し出しの前に、係止ピン28を図中矢印E1,E2方向に移動させ、係止ピン28によるカーラ160の係止を解除する。
【0059】
このような固着状態維持手段としての係止ピン28を用いてカーラ160を製造することにより、可動側型体20の移動の際に、意図的に係止ピン28によってカーラ160を中子30から離型することが可能になる。したがって、離型の際のカーラ160の挙動を制御性よくコントロールすることが可能になり、歩留まりの向上に資するようになる。
【0060】
(実施例4)
図20および図21は、実施例4に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図であり、(A)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図であり、(B)は、成形されるカーラの軸方向を含む金型の模式断面図である。なお、図20および図21においては、カーラの形状を、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する円筒形状に簡略化して示している。本実施例に係るカーラの製造方法は、上述の実施例3に係るカーラの製造方法に準ずるものであり、そのフロー自体は、図16に示すものと同じである。
【0061】
図20および図21に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法において使用される金型は、上述の実施例2に係るカーラの製造方法において使用される金型と同じ形状のものである。
【0062】
まず、図16に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法にあっては、上述の実施例3に係るカーラの製造方法と同様に、ステップS201において、固定側型体、可動側型体および中子を組合わせて金型内にキャビティを形成する。次に、図16および図11に示すように、ステップS202において、固定側型体10、可動側型体20および中子30からなる金型内に形成されたキャビティに溶融したポリプロピレン等の樹脂材料を注入し、固化させることによってカーラ160を成形する。
【0063】
つづいて、図16および図12に示すように、ステップS203において、可動側型体20および中子30を第1の方向である型開き方向(図12中において矢印Aで示す方向)に移動させ、固定側型体10からカーラ160を離型する。その際、可動側型体20および中子30を型開き方向に向けて同時に同じ距離だけ移動させる。
【0064】
次に、図16および図20に示すように、ステップS204において、可動側型体20を第2の方向である型開き方向(図20中において矢印Bで示す方向)にさらに移動させ、中子30からカーラ160を離型する。その際、中子30は図12に示す位置から移動させず、可動側型体20のみを距離L4だけ移動させる。このときの可動側型体20の移動距離L4は、カーラ160の中空部から中子30が離脱しない範囲(すなわちカーラの内径未満)に限定されるが、より好ましくは、中子30の移動によるカーラ160の変形が小さくかつ中子30からカーラ160を離型するのに十分な距離とする。これにより、カーラ160と中子30との間には空間部S4が形成され、カーラ160は、可動側型体20にのみその外周面の一部が固着された状態となる。
【0065】
つづいて、図16および図21に示すように、中子30をカーラ160の軸方向と平行な第3の方向(図21中において矢印Cで示す方向)に移動させ、中子30をカーラ160の中空部から引き抜く。具体的には、カーラ160は、その外周面の一部が可動側型体20に固着した状態にあるため、上記中子30の移動の際にカーラ160は中子30の移動に追従せず、カーラ160から中子30がスムーズに引き抜かれることになる。
【0066】
次に、図16および図15に示すように、中子30をカーラ160の中空部から完全に引き抜いた状態とした上で、可動側型体20に設けられた取り出しピン26を用いて可動側型体20からカーラ160を離型し、金型からカーラ160を取り出す。具体的には、取り出しピン26を型開き方向と反対の方向(図15中において矢印Dで示す方向)に移動させ、その先端でカーラ160の外周面を押し上げることにより、可動側型体20からカーラ160を離型し、金型からカーラ160を取り出す。
【0067】
以上において説明した製造方法を採用してカーラ160を製造することにより、上述の実施例3に係るカーラの製造方法と同様に、成形したカーラ160を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にてカーラ160を歩留まりよく製造することが可能になる。
【0068】
図22は、本実施例に係るカーラの製造方法の変形例を示す図であり、(A)ないし(C)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図である。
【0069】
上記本実施例においては、図20に示す可動側型体20の移動の際に、カーラ160の可動側型体20に対する固着が維持され、その代わりにカーラ160の内周面の中子30に対する固着が解除されている。しかしながら、カーラ160の形状によっては、可動側型体20を上記の如く移動させた場合にも、上述の実施例1の如く、カーラ160の中子30に対する固着が維持され、その代わりにカーラ160の可動側型体20に対する固着が解除されることも想定される。そこで、本変形例においては、上記可動側型体20の移動の際に必ずカーラ160の可動側型体20に対する固着が維持されるように、図22(A)ないし図22(C)に示すように、可動側型体20に固着状態維持手段としての係止ピン28を設けている。なお、詳細については、上述の実施例3における変形例と同様であるため、ここではその説明は省略する。
【0070】
上述の実施例1ないし4およびその変形例に係るカーラの製造方法にあっては、いずれも、可動側型体を移動させることによって中子または可動側型体からカーラを離型することとしているが、中子を移動させることによって中子または可動側型体からカーラを離型することとしてもよい。
【0071】
また、上述の実施例1ないし4およびその変形例に係るカーラの製造方法にあっては、いずれも、中子を移動させることによってカーラの中空部から中子を引き抜くこととしているが、可動側型体を移動させることによってカーラの中空部から中子を引き抜くこととしてもよい。
【0072】
また、上述の実施例1ないし4およびその変形例においては、いずれも、カーラの切れ目を可動側型体に設けた突条部で成形しているが、この切れ目を中子に設けた突条部にて成形することも可能である。
【0073】
さらには、上述の実施の形態においては、手首に装着されることが企図された手首式血圧計のカフに組付けられるカーラの製造方法を例示して説明を行なったが、本発明は、上腕やその他の身体の部位に装着されることが企図された血圧計のカフに組付けられるカーラの製造に適用することも当然に可能である。
【0074】
このように、今回開示した上記実施の形態およびそれに基づく実施例および変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】手首式血圧計の外観を示す斜視図である。
【図2】手首式血圧計の内部構造を示す縦断面図である。
【図3】図2中に示すIII−III線に沿ったカフの断面図である。
【図4】カフに内包される湾曲弾性板としてのカーラの形状を示す斜視図である。
【図5】実施例1に係るカーラの製造方法を説明するためのフロー図である。
【図6】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図7】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図8】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図9】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図10】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図11】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図12】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図13】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図14】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図15】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図16】実施例3に係るカーラの製造方法を説明するためのフロー図である。
【図17】実施例3に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図18】実施例3に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図19】実施例3に係るカーラの製造方法の変形例を説明するための模式断面図である。
【図20】実施例4に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図21】実施例4に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図22】実施例4に係るカーラの製造方法の変形例を説明するための模式断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 固定側型体、11 段差部、20 可動側型体、21 段差部、22 突起部、26 押し出しピン、28 係止ピン、30 中子、31 段差部、100 手首式血圧計、110 装置本体、111 表示部、112 操作部、130 カフ、140 袋状カバー体、141 内側カバー部材、142 外側カバー部材、150 空気袋、151 内側樹脂シート、152 外側樹脂シート、154 膨縮空間、160 カーラ、161 切れ目、162〜165 突き当たり面、167a,167b 係止爪部、168 穴、175,176 面ファスナ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法に関するものであり、より特定的には、上記湾曲弾性板を樹脂材料を用いた射出成形にて形成する場合の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、血圧値の測定に際しては、生体内部に位置する動脈を圧迫するための流体袋を内包するカフを生体の体表面に巻き付け、巻き付けた流体袋を加圧・減圧することによって動脈内に生じる動脈圧脈波の検出を行い、これによって血圧値の測定が行なわれる。ここで、カフとは、内腔を有する帯状の構造物であって生体の一部に巻き付けが可能なものを意味し、気体や液体等の流体を内腔に注入することによって上下肢の動脈圧測定に利用されるもののことを指す。したがって、カフは、流体袋とこの流体袋を生体に巻き付けるための巻付手段とを含めた概念を示す言葉であり、一般に袋状カバー体の内部に流体袋を収納して生体の被測定部位に巻き付けるタイプのものが多い。特に手首や上腕に巻き付けられて装着されるカフは、腕帯あるいはマンシェットと呼ばれることもある。
【0003】
近年の血圧計のカフにおいては、被験者による装着作業の容易化を図るため、また装着後における流体袋の膨張時において流体袋が生体側に向かってスムーズに膨張して生体を加圧するようにするため、上記袋状カバー体の内部でかつ流体袋の外側に湾曲弾性板としてのカーラを設けることが一般的に行なわれている。このカーラとしては、たとえば、径方向に弾性変形可能となるように、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の樹脂部材が使用される。上記血圧計のカフに内包されるカーラの製造に際しては、金型を用いた射出成形が一般的に利用される。
【0004】
射出成形にてカーラを製造する際の製造方法が開示された文献として、たとえば特開2002−306433号公報(特許文献1)や特開2002−307498号公報(特許文献2)がある。上記特許文献1および2に開示のカーラの製造方法においては、固定側型体、可動側型体および中子からなる金型を用い、これらを組合わせることによって生じるキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させることによってカーラが成形される。そして、その後、金型からカーラを離型することによってカーラが金型から取り出されることになる。
【0005】
上記特許文献1および2に開示のカーラの製造方法におけるカーラの金型からの取り出し手順は、以下のようなものである。まず、可動側型体と中子とを型開き方向に移動させることにより固定側型体からカーラを離型し、次いで、中子がカーラの周方向に設けられた切り目を通過するように型開き方向(カーラの径方向と平行な方向)に向かって中子を移動させることにより中子からカーラを離型する。上記中子の移動に際しては、カーラが中子によって押し広げられ、これによりカーラの切れ目部分が大きく広がることにより、カーラの内部からの中子の離脱が可能になる。そして、最後に、可動側型体に設けられた押し出しピンにてカーラを押し出すことにより可動側型体からカーラを離型し、金型からのカーラの取り出しが行なわれる。
【特許文献1】特開2002−306433号公報
【特許文献2】特開2002−307498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示のカーラの製造方法を利用した場合には、成形したカーラからの中子の離脱の際に、中子によってカーラが大きく押し広げられることになるため、カーラが変形したり破損したりすることが懸念される。特に、成形直後のカーラはその温度が依然として高いため、上記無理抜きの際に変形を生じ易い。この変形を防止するためには、金型内のカーラを十分に冷えた状態となるまで放置しておくことが考えられるが、これではカーラの1つ当たりの製造に要する射出成形のタクトタイムが大幅に増加し、コストアップの要因となってしまう。
【0007】
上記方法とは別に、中子からのカーラの離型の際に、中子を型開き方向と直交する方向のうちカーラの軸方向と平行な方向に移動させることによって中子からカーラを離型することも想定される。しかしながら、このような方法を採用するためには、カーラに変形を生じさせないために中子に抜き勾配を設ける必要があり、カーラの内径が軸方向において異なるものとなってしまう。特に、血圧計のカフの内周面および外周面には、通常、シボ(微小な凹凸)加工が施されるため、その抜き勾配は3°程度以上必要となり、カーラの内径の差が軸方向において著しく大きくなるという問題が生じる。このようにして形成した軸方向における内径に差のあるカーラを具備したカフとした場合には、カフによる生体の圧迫が周方向において不均一となり、正確な血圧値の測定には適したものとはならない。
【0008】
本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたものであり、中子に抜き勾配を設けずとも変形なく金型から離型することができ、また高い生産効率にて製造が可能な血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面に基づく湾曲弾性板の製造方法は、血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて上記湾曲弾性板を成形するステップと、上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップとを備える。上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップは、上記固定側型体から遠ざかる第1の方向に、上記可動側型体および上記中子を移動させることにより、上記固定側型体から上記湾曲弾性板を離型するステップと、上記可動側型体から上記中子が相対的に遠ざかる第2の方向に、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記可動側型体から上記湾曲弾性板を離型するステップと、上記湾曲弾性板が上記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向において上記可動側型体に当接する突き当たり面を有する状態を維持しつつ、上記第3の方向に向けて上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記中子から上記湾曲弾性板を離型するステップとを含む。
【0010】
このような製造方法を採用することにより、湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に向けての中子の湾曲弾性板からの引き抜きの際に、固定側型体および可動側型体から湾曲弾性板が既に離型した状態にあるため、中子に抜き勾配を設けずとも湾曲弾性板に塑性変形を生じさせることなく中子から湾曲弾性板を離型することが可能になる。したがって、成形した湾曲弾性板を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にて湾曲弾性板を歩留まりよく製造することが可能になる。
【0011】
本発明の第2の局面に基づく湾曲弾性板の製造方法は、血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて上記湾曲弾性板を成形するステップと、上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップとを備える。上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップは、上記固定側型体から遠ざかる第1の方向に、上記可動側型体および上記中子を移動させることにより、上記固定側型体から上記湾曲弾性板を離型するステップと、上記湾曲弾性板の中空部から上記中子が離脱しない範囲内において、上記可動側型体から上記中子が相対的に遠ざかる第2の方向に、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記中子から上記湾曲弾性板を離型するステップと、上記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記湾曲弾性板の中空部から上記中子を引き抜くステップと、上記可動側型体に設けられた取り出しピンを用いて上記可動側型体から上記湾曲弾性板を離型するステップとを含む。
【0012】
このような製造方法を採用することにより、湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に向けての中子の湾曲弾性板からの引き抜きの際に、固定側型体および中子から湾曲弾性板が既に離型した状態にあるため、中子に抜き勾配を設けずとも湾曲弾性板に塑性変形を生じさせることなく湾曲弾性板を引き抜くことが可能になる。したがって、成形した湾曲弾性板を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にて湾曲弾性板を歩留まりよく製造することが可能になる。
【0013】
上記本発明の第2の局面に基づく湾曲弾性板の製造方法にあっては、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を上記第2の方向に移動させることにより、上記中子から上記湾曲弾性板を離型するステップにおいて、上記可動側型体に対する上記湾曲弾性板の固着状態を維持する固着状態維持手段を用いることにより、上記中子から上記湾曲弾性板を離型することが好ましい。
【0014】
このような製造方法を採用することにより、可動側型体および中子の少なくともいずれか一方を第2の方向に移動させる際に、意図的に固着状態維持手段によって湾曲弾性板を中子から離型することが可能になる。したがって、湾曲弾性板の金型からの取り出しの際に、湾曲弾性板の挙動を制御性よくコントロールすることが可能になり、歩留まりの向上に資するようになる。
【0015】
本発明の第3の局面に基づく湾曲弾性板の製造方法は、血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて上記湾曲弾性板を成形するステップと、上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップとを備える。上記金型から上記湾曲弾性板を離型するステップは、上記湾曲弾性板の周方向における任意の位置において、上記湾曲弾性板の内周面および外周面の少なくともいずれか一方が上記金型から離型した状態とされた後に、上記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に、上記可動側型体および上記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、上記湾曲弾性板の中空部から上記中子を引き抜くステップを含む。
【0016】
このような製造方法を採用することにより、湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に向けての中子の湾曲弾性板からの引き抜きの際に、湾曲弾性板の周方向における任意の位置において湾曲弾性板の内周面および外周面の少なくともいずれか一方が金型から既に離型した状態にあるため、中子に抜き勾配を設けずとも湾曲弾性板に塑性変形を生じさせることなく湾曲弾性板を引き抜くことが可能になる。したがって、成形した湾曲弾性板を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にて湾曲弾性板を歩留まりよく製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板を、中子に抜き勾配を設けずとも変形なく金型から離型することができるようになるとともに、高い生産効率にて製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、手首に装着して血圧値を測定することが企図された手首式血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板を特に例示して説明する。
【0019】
図1は、手首式血圧計の外観を示す斜視図であり、図2は、手首式血圧計の内部構造を示す縦断面図である。また、図3は、図2中に示すIII−III線に沿ったカフの断面図であり、図4は、カフに内包される湾曲弾性板としてのカーラの形状を示す斜視図である。以下においては、これらの図を参照して、手首式血圧計の一般的な構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、手首式血圧計100は、装置本体110とカフ130とを備える。装置本体110の表面には、表示部111と操作部112とが配置されており、この装置本体110に上述のカフ130が取付けられている。
【0021】
図2および図3に示すように、カフ130は、布等からなる袋状カバー体140と、この袋状カバー体140の内部に配置された流体袋としての空気袋150と、袋状カバー体140の内部に配置され、装着状態において空気袋150の外側に位置する湾曲弾性板としてのカーラ160とを主に備える。これら袋状カバー体140、空気袋150およびカーラ160は、カフ130の巻き付け方向を長手方向として延在している。すなわち、被測定部位である手首へのカフ130の装着状態においては、袋状カバー体140の長手方向と直交する方向である幅方向が、手首の軸方向(動脈の延伸方向)と略平行に配置されることになる。
【0022】
袋状カバー体140は、装着状態において生体側に位置する内側カバー部材141と、装着状態において生体側とは反対側に位置する外側カバー部材142とを備えており、これら内側カバー部材141と外側カバー部材142とを重ね合わせてその周縁を結合することによって袋状に形成されている。袋状カバー体140の内側カバー部材141は、好適には伸縮性に優れた部材にて構成され、袋状カバー体140の外側カバー部材142は、好適には伸縮性に乏しい部材にて構成される。
【0023】
図2に示すように、袋状カバー体140の長手方向の一方端の内周面には、面ファスナ175が設けられており、袋状カバー体140の長手方向の他方端の外周面には、上記面ファスナ175と係合する面ファスナ176が貼り付けられている。これら面ファスナ175,176は、手首にカフ130を装着した状態において、手首式血圧計100を手首に安定的に固定するための手段である。
【0024】
図2および図3に示すように、空気袋150は、樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなる。具体的には、空気袋150は、カフ130を手首に巻き付けた状態において手首側に位置する内側樹脂シート151と、上記巻き付け状態において手首とは反対側に位置する外側樹脂シート152とを重ね合わせ、その周縁を溶着することにより袋状に形成されており、内部に膨縮空間154を有している。なお、膨縮空間154は、装置本体110の内部に設けられる加圧ポンプ等の血圧測定用エア系コンポーネントと、配管を介して接続される。
【0025】
空気袋150を構成する内側樹脂シート151および外側樹脂シート152の材質としては、伸縮性に富んでおり溶着後において膨縮空間154からの漏気がないものであればどのようなものでも利用可能である。このような観点から、内側樹脂シート151および外側樹脂シート152の最適な材質としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、軟質塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、生ゴム等が挙げられる。
【0026】
空気袋150の外側には、環状に巻き回されることによって径方向に弾性変形可能に構成された湾曲弾性板としてのカーラ160が配置されている。カーラ160は、空気袋150の外周面に図示しない両面テープ等の接着手段によって接着されている。
【0027】
図4に示すように、カーラ160は、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目161を有する扁平な環状体として形成されることにより、自身の環状形態を維持することによって手首に沿うように構成されている。装着時においては、カーラ160の内部に形成された中空部に、上記切れ目161を介して手首が挿入されることになる。このカーラ160は、被験者自身によってカフ130を手首に装着し易くするためのものであり、十分な弾性力を発現する部材にて構成される。
【0028】
カーラ160は、その外周面の所定位置に装置本体110にカーラ160を固定するための係止爪部167a,167bを有している。また、カーラ160の外周面の所定位置には、上述の配管が挿通される穴168が別途設けられている。
【0029】
次に、上述の手首式血圧計100のカフ130に組付けられるカーラ160を製造する方法について、実施例毎に具体的に説明する。上述の手首式血圧計100のカフ130に組付けられるカーラ160を製造するに際しては、射出成形機による射出成形を利用する。射出成形機としては、固定側型体(キャビティプレート)と、可動側型体(コアプレート)と、中子(スライドコア)とからなる金型を具備した射出成形機を利用する。また、使用する樹脂材料としては、硬質プラスチック(たとえばポリプロピレン等)を利用する。
【0030】
(実施例1)
図5は、実施例1に係るカーラの製造方法を説明するためのフロー図である。図6ないし図10は、実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す図であり、(A)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図であり、(B)は、成形されるカーラの軸方向を含む金型の模式断面図である。なお、図6ないし図10においては、カーラの形状を、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する円筒形状に簡略化して示している。
【0031】
図6ないし図10に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法において使用される金型は、溶融した樹脂材料が注入されるキャビティを、固定側型体10および可動側型体20の型合わせ面にそれぞれ設けられた段差部11および段差部21によって構成したものであり、中子30としては段差部を型合わせ面に有しない円筒状のものが用いられる。また、カーラ160の周方向の所定位置に形成される切れ目161は、固定側型体10の段差部11内に設けられた突条部によって成形される。また、図4に示す係止爪部167a,167bは、上記中子30とは別の、可動側型体20に設けられた中子(図示せず)等によって成形され、また、穴168は、可動側型体20の段差部21内に設けられた突起部(図示せず)によって成形される。
【0032】
まず、図5に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法にあっては、ステップS101において、固定側型体、可動側型体および中子を組合わせて金型内にキャビティを形成する。次に、図5および図6に示すように、ステップS102において、固定側型体10、可動側型体20および中子30からなる金型内に形成されたキャビティに溶融したポリプロピレン等の樹脂材料を注入し、固化させることによってカーラ160を成形する。
【0033】
つづいて、図5および図7に示すように、ステップS103において、可動側型体20および中子30を第1の方向である型開き方向(図7中において矢印Aで示す方向)に移動させ、固定側型体10からカーラ160を離型する。その際、可動側型体20および中子30を型開き方向に向けて同時に同じ距離だけ移動させる。
【0034】
次に、図5および図8に示すように、ステップS104において、可動側型体20を第2の方向である型開き方向(図8中において矢印Bで示す方向)にさらに移動させ、可動側型体20からカーラ160を離型する。その際、中子30は図7に示す位置から移動させず、可動側型体20のみを距離L1だけ移動させる。このときの可動側型体20の移動距離L1は、カーラ160の厚み未満とする。これにより、カーラ160と可動側型体20との間には空間部S1が形成され、カーラ160は、中子30にのみその内周面が固着された状態となる。
【0035】
つづいて、図5および図9に示すように、中子30をカーラ160の軸方向と平行な第3の方向(図9中において矢印Cで示す方向)に移動させ、中子30からカーラ160を離型する。具体的には、前段階のステップS104において、可動側型体20の移動距離L1をカーラ160の厚み未満としているため、カーラ160は、図8に示す状態においてカーラ160の軸方向と平行な方向において可動側型体20に当接する突き当たり面162を有していることになり、上記中子30の移動の際にカーラ160は中子30の移動に追従せず、中子30からスムーズに離型することになる。
【0036】
次に、図5および図10に示すように、中子30をカーラ160の中空部から完全に引き抜いた状態とした上で、可動側型体20に設けられた取り出しピン26を用いて金型からカーラ160を取り出す。具体的には、取り出しピン26を型開き方向と反対の方向(図10中において矢印Dで示す方向)に移動させ、その先端でカーラ160の外周面を押し上げることにより、金型からカーラ160を取り出す。
【0037】
以上において説明した製造方法を採用してカーラ160を製造することにより、カーラ160の軸方向と平行な方向に向けての中子30のカーラ160からの引き抜きの際に、固定側型体10および可動側型体20からカーラ160が既に離型した状態にあるため、カーラ160は中子30にのみ固着した状態にあり、中子30に抜き勾配を設けずともカーラ160に塑性変形を生じさせることなく中子30からカーラ160をスムーズに離型することが可能になる。また、カーラ160の成形後に比較的短い冷却時間を置いてカーラ160の離型が行なえるため、カーラ160の1つ当たりの製造に要する射出成形のタクトタイムを短く設定することが可能になる。したがって、成形したカーラ160を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にてカーラ160を歩留まりよく製造することが可能になる。なお、カーラ160の表面にシボ加工を施す場合にも、上記製造方法を採用すればスムーズに金型からカーラ160を離型することが可能である。
【0038】
また、上記製造方法を用いて製造されたカーラ160は、その軸方向における内径が全域にわたって一定の大きさとなる。このように、内径が一定に形成されたカーラ160が組付けられたカフとすることにより、手首を全周囲にわたって均一に圧迫することが可能になるため、このようなカフを備えた手首式血圧計とすることにより、高精度の手首式血圧計とすることができる。
【0039】
(実施例2)
図11ないし図15は、実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図であり、(A)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図であり、(B)は、成形されるカーラの軸方向を含む金型の模式断面図である。なお、図11ないし図15においては、カーラの形状を、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する円筒形状に簡略化して示している。本実施例に係るカーラの製造方法は、上述の実施例1に係るカーラの製造方法に準ずるものであり、そのフロー自体は、図5に示すものと同じである。
【0040】
図11ないし図15に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法において使用される金型は、溶融した樹脂材料が注入されるキャビティを、中子30の型合わせ面に設けられた段差部31によって構成したものであり、固定側型体10および可動側型体20の型合わせ面としては、段差部を型合わせ面に有しない形状のものが用いられる。また、カーラ160の周方向の所定位置に形成される切れ目161は、固定側型体10の型合わせ面に設けられた突条部によって成形される。また、図4に示す係止爪部167a,167bは、上記中子30とは別の、可動側型体20に設けられた中子(図示せず)等によって成形され、また、穴168は、可動側型体20の段差部21内に設けられた突起部22によって成形される。
【0041】
まず、図5に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法にあっては、上述の実施例1に係るカーラの製造方法と同様に、ステップS101において、固定側型体、可動側型体および中子を組合わせて金型内にキャビティを形成する。次に、図5および図11に示すように、ステップS102において、固定側型体10、可動側型体20および中子30からなる金型内に形成されたキャビティに溶融したポリプロピレン等の樹脂材料を注入し、固化させることによってカーラ160を成形する。
【0042】
つづいて、図5および図12に示すように、ステップS103において、可動側型体20および中子30を第1の方向である型開き方向(図12中において矢印Aで示す方向)に移動させ、固定側型体10からカーラ160を離型する。その際、可動側型体20および中子30を型開き方向に向けて同時に同じ距離だけ移動させる。
【0043】
次に、図5および図13に示すように、ステップS104において、可動側型体20を第2の方向である型開き方向(図13中において矢印Bで示す方向)にさらに移動させ、可動側型体20からカーラ160を離型する。その際、中子30は図12に示す位置から移動させず、可動側型体20のみを距離L2だけ移動させる。このときの可動側型体20の移動距離L2は、可動側型体20に設けられた突起部22の高さ未満とする。これにより、カーラ160と可動側型体20との間には空間部S2が形成され、カーラ160は、中子30にのみその内周面が固着された状態となる。
【0044】
つづいて、図5および図14に示すように、中子30をカーラ160の軸方向と平行な第3の方向(図14中において矢印Cで示す方向)に移動させ、中子30からカーラ160を離型する。具体的には、前段階のステップS104において、可動側型体20の移動距離L2を可動側型体20に設けられた突起部22の高さ未満としているため、カーラ160は、図13に示す状態においてカーラ160の軸方向と平行な方向において可動側型体20に当接する突き当たり面163を有していることになり、上記中子30の移動の際にカーラ160は中子30の移動に追従せず、中子30からスムーズに離型することになる。
【0045】
次に、図5および図15に示すように、中子30をカーラ160の中空部から完全に引き抜いた状態とした上で、可動側型体20に設けられた取り出しピン26を用いて金型からカーラ160を取り出す。具体的には、取り出しピン26を型開き方向と反対の方向(図15中において矢印Dで示す方向)に移動させ、その先端でカーラ160の外周面を押し上げることにより、金型からカーラ160を取り出す。
【0046】
以上において説明した製造方法を採用してカーラ160を製造することにより、上述の実施例1に係るカーラの製造方法と同様に、成形したカーラ160を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にてカーラ160を歩留まりよく製造することが可能になる。
【0047】
(実施例3)
図16は、実施例3に係るカーラの製造方法を説明するためのフロー図である。図17および図18は、実施例3に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図であり、(A)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図であり、(B)は、成形されるカーラの軸方向を含む金型の模式断面図である。なお、図17および図18においては、カーラの形状を、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する円筒形状に簡略化して示している。本実施例に係るカーラの製造方法は、上述の実施例1に係るカーラの製造方法と一部のステップを除いて共通するものである。したがって、共通部分については、上述の実施例1において使用した図を利用して説明する。
【0048】
図17および図18に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法において使用される金型は、上述の実施例1に係るカーラの製造方法において使用される金型と同じ形状のものである。
【0049】
まず、図16に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法にあっては、ステップS201において、固定側型体、可動側型体および中子を組合わせて金型内にキャビティを形成する。次に、図16および図6に示すように、ステップS202において、固定側型体10、可動側型体20および中子30からなる金型内に形成されたキャビティに溶融したポリプロピレン等の樹脂材料を注入し、固化させることによってカーラ160を成形する。
【0050】
つづいて、図16および図7に示すように、ステップS203において、可動側型体20および中子30を第1の方向である型開き方向(図7中において矢印Aで示す方向)に移動させ、固定側型体10からカーラ160を離型する。その際、可動側型体20および中子30を型開き方向に向けて同時に同じ距離だけ移動させる。
【0051】
次に、図16および図17に示すように、ステップS204において、可動側型体20を第2の方向である型開き方向(図17中において矢印Bで示す方向)にさらに移動させ、中子30からカーラ160を離型する。その際、中子30は図7に示す位置から移動させず、可動側型体20のみを距離L3だけ移動させる。このときの可動側型体20の移動距離L3は、カーラ160の中空部から中子30が離脱しない範囲(すなわちカーラの内径未満)に限定されるが、より好ましくは、中子30の移動によるカーラ160の変形が小さくかつ中子30からカーラ160を離型するのに十分な距離とする。これにより、カーラ160と中子30との間には空間部S3が形成され、カーラ160は、可動側型体20にのみその外周面の一部が固着された状態となる。
【0052】
つづいて、図16および図18に示すように、中子30をカーラ160の軸方向と平行な第3の方向(図18中において矢印Cで示す方向)に移動させ、中子30をカーラ160の中空部から引き抜く。具体的には、カーラ160は、その外周面の一部が可動側型体20に固着した状態にあるため、上記中子30の移動の際にカーラ160は中子30の移動に追従せず、カーラ160から中子30がスムーズに引き抜かれることになる。
【0053】
次に、図16および図10に示すように、中子30をカーラ160の中空部から完全に引き抜いた状態とした上で、可動側型体20に設けられた取り出しピン26を用いて可動側型体20からカーラ160を離型し、金型からカーラ160を取り出す。具体的には、取り出しピン26を型開き方向と反対の方向(図10中において矢印Dで示す方向)に移動させ、その先端でカーラ160の外周面を押し上げることにより、可動側型体20からカーラ160を離型し、金型からカーラ160を取り出す。
【0054】
以上において説明した製造方法を採用してカーラ160を製造することにより、カーラ160の軸方向と平行な方向に向けての中子30のカーラ160からの引き抜きの際に、固定側型体10および中子30からカーラ160が既に離型した状態にあるため、カーラ160は可動側型体20にのみ固着した状態にあり、中子30に抜き勾配を設けずともカーラ160に塑性変形を生じさせることなく中子30からカーラ160をスムーズに引き抜くことが可能になる。また、カーラ160の成形後に比較的短い冷却時間を置いてカーラ160の離型が行なえるため、カーラ160の1つ当たりの製造に要する射出成形のタクトタイムを短く設定することが可能になる。したがって、成形したカーラ160を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にてカーラ160を歩留まりよく製造することが可能になる。なお、カーラ160の表面にシボ加工を施す場合にも、上記製造方法を採用すればスムーズに金型からカーラ160を離型することが可能である。
【0055】
また、上記製造方法を用いて製造されたカーラ160は、その軸方向における内径が全域にわたって一定の大きさとなる。このように、内径が一定に形成されたカーラ160が組付けられたカフとすることにより、手首を全周囲にわたって均一に圧迫することが可能になるため、このようなカフを備えた手首式血圧計とすることにより、高精度の手首式血圧計とすることができる。
【0056】
図19は、本実施例に係るカーラの製造方法の変形例を示す図であり、(A)ないし(C)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図である。
【0057】
上記本実施例においては、図17に示す可動側型体20の移動の際に、カーラ160の可動側型体20に対する固着が維持され、その代わりにカーラ160の中子30に対する固着が解除されている。しかしながら、カーラ160の形状によっては、可動側型体20を上記の如く移動させた場合にも、上述の実施例1の如く、カーラ160の中子30に対する固着が維持され、その代わりにカーラ160の可動側型体20に対する固着が解除されることも想定される。そこで、本変形例においては、上記可動側型体20の移動の際に必ずカーラ160の可動側型体20に対する固着が維持されるように、図19(A)ないし図19(C)に示すように、可動側型体20に固着状態維持手段としての係止ピン28を設けている。
【0058】
図19(A)ないし図19(C)に示すように、係止ピン28は、可動側型体20の型合わせ面に近い部分に可動側型体20の側面から内側に向かって移動自在に挿し込まれ、その先端は、少なくとも成形されるカーラ160の厚み部分に達することができるように構成されている。そして、カーラ160の製造に際しては、図19(A)に示すように、係止ピン28の先端がキャビティに達した状態のままカーラ160の成形が行なわれ、図19(B)に示す可動側型体20の移動の際に、係止ピン28によってカーラ160が可動側型体20の移動に追従させられ、これによりカーラ160の可動側型体20に対する固着が維持される。その後、図19(C)に示す押し出しピン26によるカーラ160の押し出しの前に、係止ピン28を図中矢印E1,E2方向に移動させ、係止ピン28によるカーラ160の係止を解除する。
【0059】
このような固着状態維持手段としての係止ピン28を用いてカーラ160を製造することにより、可動側型体20の移動の際に、意図的に係止ピン28によってカーラ160を中子30から離型することが可能になる。したがって、離型の際のカーラ160の挙動を制御性よくコントロールすることが可能になり、歩留まりの向上に資するようになる。
【0060】
(実施例4)
図20および図21は、実施例4に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図であり、(A)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図であり、(B)は、成形されるカーラの軸方向を含む金型の模式断面図である。なお、図20および図21においては、カーラの形状を、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する円筒形状に簡略化して示している。本実施例に係るカーラの製造方法は、上述の実施例3に係るカーラの製造方法に準ずるものであり、そのフロー自体は、図16に示すものと同じである。
【0061】
図20および図21に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法において使用される金型は、上述の実施例2に係るカーラの製造方法において使用される金型と同じ形状のものである。
【0062】
まず、図16に示すように、本実施例に係るカーラの製造方法にあっては、上述の実施例3に係るカーラの製造方法と同様に、ステップS201において、固定側型体、可動側型体および中子を組合わせて金型内にキャビティを形成する。次に、図16および図11に示すように、ステップS202において、固定側型体10、可動側型体20および中子30からなる金型内に形成されたキャビティに溶融したポリプロピレン等の樹脂材料を注入し、固化させることによってカーラ160を成形する。
【0063】
つづいて、図16および図12に示すように、ステップS203において、可動側型体20および中子30を第1の方向である型開き方向(図12中において矢印Aで示す方向)に移動させ、固定側型体10からカーラ160を離型する。その際、可動側型体20および中子30を型開き方向に向けて同時に同じ距離だけ移動させる。
【0064】
次に、図16および図20に示すように、ステップS204において、可動側型体20を第2の方向である型開き方向(図20中において矢印Bで示す方向)にさらに移動させ、中子30からカーラ160を離型する。その際、中子30は図12に示す位置から移動させず、可動側型体20のみを距離L4だけ移動させる。このときの可動側型体20の移動距離L4は、カーラ160の中空部から中子30が離脱しない範囲(すなわちカーラの内径未満)に限定されるが、より好ましくは、中子30の移動によるカーラ160の変形が小さくかつ中子30からカーラ160を離型するのに十分な距離とする。これにより、カーラ160と中子30との間には空間部S4が形成され、カーラ160は、可動側型体20にのみその外周面の一部が固着された状態となる。
【0065】
つづいて、図16および図21に示すように、中子30をカーラ160の軸方向と平行な第3の方向(図21中において矢印Cで示す方向)に移動させ、中子30をカーラ160の中空部から引き抜く。具体的には、カーラ160は、その外周面の一部が可動側型体20に固着した状態にあるため、上記中子30の移動の際にカーラ160は中子30の移動に追従せず、カーラ160から中子30がスムーズに引き抜かれることになる。
【0066】
次に、図16および図15に示すように、中子30をカーラ160の中空部から完全に引き抜いた状態とした上で、可動側型体20に設けられた取り出しピン26を用いて可動側型体20からカーラ160を離型し、金型からカーラ160を取り出す。具体的には、取り出しピン26を型開き方向と反対の方向(図15中において矢印Dで示す方向)に移動させ、その先端でカーラ160の外周面を押し上げることにより、可動側型体20からカーラ160を離型し、金型からカーラ160を取り出す。
【0067】
以上において説明した製造方法を採用してカーラ160を製造することにより、上述の実施例3に係るカーラの製造方法と同様に、成形したカーラ160を変形させることなく金型から直ちに離型することが可能になるため、高い生産効率にてカーラ160を歩留まりよく製造することが可能になる。
【0068】
図22は、本実施例に係るカーラの製造方法の変形例を示す図であり、(A)ないし(C)は、成形されるカーラの軸方向と直交する方向の金型の模式断面図である。
【0069】
上記本実施例においては、図20に示す可動側型体20の移動の際に、カーラ160の可動側型体20に対する固着が維持され、その代わりにカーラ160の内周面の中子30に対する固着が解除されている。しかしながら、カーラ160の形状によっては、可動側型体20を上記の如く移動させた場合にも、上述の実施例1の如く、カーラ160の中子30に対する固着が維持され、その代わりにカーラ160の可動側型体20に対する固着が解除されることも想定される。そこで、本変形例においては、上記可動側型体20の移動の際に必ずカーラ160の可動側型体20に対する固着が維持されるように、図22(A)ないし図22(C)に示すように、可動側型体20に固着状態維持手段としての係止ピン28を設けている。なお、詳細については、上述の実施例3における変形例と同様であるため、ここではその説明は省略する。
【0070】
上述の実施例1ないし4およびその変形例に係るカーラの製造方法にあっては、いずれも、可動側型体を移動させることによって中子または可動側型体からカーラを離型することとしているが、中子を移動させることによって中子または可動側型体からカーラを離型することとしてもよい。
【0071】
また、上述の実施例1ないし4およびその変形例に係るカーラの製造方法にあっては、いずれも、中子を移動させることによってカーラの中空部から中子を引き抜くこととしているが、可動側型体を移動させることによってカーラの中空部から中子を引き抜くこととしてもよい。
【0072】
また、上述の実施例1ないし4およびその変形例においては、いずれも、カーラの切れ目を可動側型体に設けた突条部で成形しているが、この切れ目を中子に設けた突条部にて成形することも可能である。
【0073】
さらには、上述の実施の形態においては、手首に装着されることが企図された手首式血圧計のカフに組付けられるカーラの製造方法を例示して説明を行なったが、本発明は、上腕やその他の身体の部位に装着されることが企図された血圧計のカフに組付けられるカーラの製造に適用することも当然に可能である。
【0074】
このように、今回開示した上記実施の形態およびそれに基づく実施例および変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】手首式血圧計の外観を示す斜視図である。
【図2】手首式血圧計の内部構造を示す縦断面図である。
【図3】図2中に示すIII−III線に沿ったカフの断面図である。
【図4】カフに内包される湾曲弾性板としてのカーラの形状を示す斜視図である。
【図5】実施例1に係るカーラの製造方法を説明するためのフロー図である。
【図6】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図7】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図8】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図9】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図10】実施例1に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図11】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図12】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図13】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図14】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図15】実施例2に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図16】実施例3に係るカーラの製造方法を説明するためのフロー図である。
【図17】実施例3に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図18】実施例3に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図19】実施例3に係るカーラの製造方法の変形例を説明するための模式断面図である。
【図20】実施例4に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図21】実施例4に係るカーラの製造方法において、カーラの金型からの離型の際の手順を示す模式断面図である。
【図22】実施例4に係るカーラの製造方法の変形例を説明するための模式断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 固定側型体、11 段差部、20 可動側型体、21 段差部、22 突起部、26 押し出しピン、28 係止ピン、30 中子、31 段差部、100 手首式血圧計、110 装置本体、111 表示部、112 操作部、130 カフ、140 袋状カバー体、141 内側カバー部材、142 外側カバー部材、150 空気袋、151 内側樹脂シート、152 外側樹脂シート、154 膨縮空間、160 カーラ、161 切れ目、162〜165 突き当たり面、167a,167b 係止爪部、168 穴、175,176 面ファスナ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、
固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて前記湾曲弾性板を成形するステップと、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップとを備え、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップは、
前記固定側型体から遠ざかる第1の方向に、前記可動側型体および前記中子を移動させることにより、前記固定側型体から前記湾曲弾性板を離型するステップと、
前記可動側型体から前記中子が相対的に遠ざかる第2の方向に、前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記可動側型体から前記湾曲弾性板を離型するステップと、
前記湾曲弾性板が前記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向において前記可動側型体に当接する突き当たり面を有する状態を維持しつつ、前記第3の方向に向けて前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記中子から前記湾曲弾性板を離型するステップとを含む、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法。
【請求項2】
血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、
固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて前記湾曲弾性板を成形するステップと、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップとを備え、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップは、
前記固定側型体から遠ざかる第1の方向に、前記可動側型体および前記中子を移動させることにより、前記固定側型体から前記湾曲弾性板を離型するステップと、
前記湾曲弾性板の中空部から前記中子が離脱しない範囲内において、前記可動側型体から前記中子が相対的に遠ざかる第2の方向に、前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記中子から前記湾曲弾性板を離型するステップと、
前記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に、前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記湾曲弾性板の中空部から前記中子を引き抜くステップと、
前記可動側型体に設けられた取り出しピンを用いて前記可動側型体から前記湾曲弾性板を離型するステップとを含む、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法。
【請求項3】
前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を前記第2の方向に移動させることにより、前記中子から前記湾曲弾性板を離型するステップにおいて、前記可動側型体に対する前記湾曲弾性板の固着状態を維持する固着状態維持手段を用いることにより、前記中子から前記湾曲弾性板を離型する、請求項2に記載の血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法。
【請求項4】
血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、
固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて前記湾曲弾性板を成形するステップと、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップとを備え、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップは、前記湾曲弾性板の周方向における任意の位置において、前記湾曲弾性板の内周面および外周面の少なくともいずれか一方が前記金型から離型した状態とされた後に、前記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に、前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記湾曲弾性板の中空部から前記中子を引き抜くステップを含む、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法。
【請求項1】
血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、
固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて前記湾曲弾性板を成形するステップと、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップとを備え、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップは、
前記固定側型体から遠ざかる第1の方向に、前記可動側型体および前記中子を移動させることにより、前記固定側型体から前記湾曲弾性板を離型するステップと、
前記可動側型体から前記中子が相対的に遠ざかる第2の方向に、前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記可動側型体から前記湾曲弾性板を離型するステップと、
前記湾曲弾性板が前記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向において前記可動側型体に当接する突き当たり面を有する状態を維持しつつ、前記第3の方向に向けて前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記中子から前記湾曲弾性板を離型するステップとを含む、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法。
【請求項2】
血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、
固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて前記湾曲弾性板を成形するステップと、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップとを備え、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップは、
前記固定側型体から遠ざかる第1の方向に、前記可動側型体および前記中子を移動させることにより、前記固定側型体から前記湾曲弾性板を離型するステップと、
前記湾曲弾性板の中空部から前記中子が離脱しない範囲内において、前記可動側型体から前記中子が相対的に遠ざかる第2の方向に、前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記中子から前記湾曲弾性板を離型するステップと、
前記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に、前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記湾曲弾性板の中空部から前記中子を引き抜くステップと、
前記可動側型体に設けられた取り出しピンを用いて前記可動側型体から前記湾曲弾性板を離型するステップとを含む、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法。
【請求項3】
前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を前記第2の方向に移動させることにより、前記中子から前記湾曲弾性板を離型するステップにおいて、前記可動側型体に対する前記湾曲弾性板の固着状態を維持する固着状態維持手段を用いることにより、前記中子から前記湾曲弾性板を離型する、請求項2に記載の血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法。
【請求項4】
血圧計のカフに組付けられる、周方向の所定位置に軸方向に延びる切れ目を有する環状形状の湾曲弾性板を製造する方法であって、
固定側型体、可動側型体および中子が組み合わされて成る金型の内部に形成されたキャビティに溶融した樹脂材料を注入し、注入した樹脂材料を固化させて前記湾曲弾性板を成形するステップと、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップとを備え、
前記金型から前記湾曲弾性板を離型するステップは、前記湾曲弾性板の周方向における任意の位置において、前記湾曲弾性板の内周面および外周面の少なくともいずれか一方が前記金型から離型した状態とされた後に、前記湾曲弾性板の軸方向と平行な第3の方向に、前記可動側型体および前記中子の少なくともいずれか一方を移動させることにより、前記湾曲弾性板の中空部から前記中子を引き抜くステップを含む、血圧計のカフに組付けられる湾曲弾性板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−167430(P2007−167430A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370537(P2005−370537)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
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