説明

血圧計用カフ

【課題】本発明は、製造が容易であり、しかも、ノイズの発生がなく、測定時に測定部位に密着し、緩めにカフを装着した場合でも、十分な駆血性能が得られる血圧計用カフを提供することを目的とする。
【解決手段】展開形状が略帯状であり、かつ、空気室が一体に形成された血圧計用カフであって、計測時に肌面と接触する内面となる側を伸縮性の大きい不通気性の布帛にて、外面となる側を伸縮性の小さい不通気性の布帛にて構成されてなる血圧計用カフ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非観血方式血圧測定に用いる血圧計用カフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧に関する関心が高まるにつれて、家庭においても容易に血圧測定を行える血圧計が普及しており、その血圧計に用いられるカフの構成も種々のものが知られている。
図2にその一例を示す。図2は従来のカフの概略上面図を示している。
図2に示すように、カフ1のほぼ中央部と一端部との間の内部には、ゴムや塩化ビニル樹脂などからなる駆血用の空気袋9が内蔵されており、側縁のほぼ中間部からは空気袋9に空気を供給するための空気注入用の空気管4が突出している。更に、カフ内面2の先端部の近傍には、ほぼ長方形の外形形状を有する面ファスナー雄材6が積層されている。
また、カフ1において、肌側に接するカフ内面2は、ほぼ全面にわたって、伸縮方向がシート面において全方向におよぶニット或いはジャージーなどのメリヤス編みされた伸縮自在な布帛を用いている。
この様に構成されたカフ1が上腕部に巻回されて、その両端部側の表面に設けられた一対のファスナ5、6が互いに着脱可能に結合されることにより、上腕部に巻回状態で装着されるようになっているとともに、この巻回状態で空気管4を介して空気袋9内へ圧力エアが供給されることによりその空気袋9内の圧力に応じた締付力で上腕部を圧迫することができるようになっている。
【0003】
また、カフの他の従来例を図3、図4に示す。図3はカフの斜視図である。図4はカフのその構成図である。図3において、カフ1は、血圧測定状態において空気室8の空気容量がある程度の大きさ以上に膨張しないように、伸びの小さな繊維をポリ塩化ビニルなどから成るシートでラミネートした繊維強化素材10を用い、高周波溶着にて形成している。
【0004】
上記、図2に示す従来例においては、肌面と接触する面には伸縮自在な布状シートからなるカフ内面2が取り付けられているので、当該カフ1を肌面に装着した後に、空気袋9を昇圧すると、肌面との接触面におけるカフ内面2は肌面上をスムーズに滑るため、空気袋9の昇圧過程において 、肌面とカフ1との間に発生する滑り摩擦による不連続な振動を防止することができると共に、測定値の精度が低下することを防止できるが、その一方、空気袋9を内臓しているために、空気袋9の昇圧過程においてカフ外面3や内面2と空気袋9との摩擦は避けられず、摩擦音がノイズとなることがあった。また、この様なカフ1を製造するには、まずカフ内面2とカフ外面3とを縫合して袋状態とし、その中に空気袋9を入れて更に残りを縫合するという工程を経なければならず、製造工程が煩雑でコストも高いものであった。
それに対して、図3に示す従来例においては、図4に示すように、高周波溶着が可能な繊維強化素材15を折り曲げて高周波溶着を行うだけでよいので製造も容易であり、しかも、高周波溶着により空気室8を一体に形成するので、第2図に示す従来例の場合のように、空気袋9とカフ内面2及びカフ外面3との摩擦によるノイズが発生することもない。しかし、当該カフは、駆血性能に関しては必ずしも十分ではなく、また、ノイズが発生し易いという問題がある。つまり、カフ内面は伸びの小さな繊維をポリ塩化ビニルなどから成るシートでラミネートした繊維強化素材からなる伸縮性の少ない、厚みのある素材で形成されているので、測定時には、カフ内面に、内外周の差から来る、「シワ」が深く或いは大きく発生し、空気室9が加圧された状態にあっても、シワは消滅せずに大きな窪みを残すことになり、該窪みが大きくできるため、カフ内面は測定部位には密着せず、駆血性能に関しては、必ずしも十分ではないものとなるのである。
窪みを小さくするには、カフを測定部位に対して緩めに装着したり、或いはカフ圧を小さくすることで可能ではあるが、この様な場合にはカフ1の幅方向について、カフ内面の装着部位への密着する長さが小さくなり、十分に駆血できないため、血圧が正確に測定できない虞がある。これは、上記のようにカフ内面の伸縮性が小さいために生じる問題である。
また、カフ内面の伸縮性が小さいために、シワ或いは窪みの変形が突発的に生じ、それにより急激な圧力変化が生じる。従って、圧力変化を検出して測定を行うものにおいては、シワ、窪みの変形に伴う急激な圧力変化がノイズとして検出されることとなり、また、コロトコフ音を検出して測定するものにおいては、当該急激な圧力変化に伴って発生する音がノイズとして検出され、いずれの場合にも測定精度の点で問題があった。
【0005】
また、特許文献1には、肌側に伸縮性の大きい軟質ポリ塩化ビニルシートを、外側に伸縮性の小さい繊維をポリ塩化ビニルシートでラミネートしたものとを溶着してなるカフが開示されているが、肌側のポリ塩化ビニルシートが肌に密着しやすく空気袋がスムーズに膨らまない虞があった。更に溶着することで溶着部分の伸縮性が損なわれたり、風合いが硬くなったり、空気袋のシール性が十分に確保できない虞があった。
また、特許文献2には、カフの布袋全体をパワーストレッチ織物で構成してなるカフが開示されており、カフの圧迫圧力の変動を及ぼすような力がカフに加わってもカフが伸縮することによりコロトコフ音の発生・消滅を確実に検出して血圧値の測定を正確になし得ることが開示されているが、ゴム嚢がカフに収容されているので、血圧測定時のゴム嚢とカフの擦過音の発生は抑えられない。
また、特許文献3には、それぞれが空気を通さない少なくとも第1並びに第2の層を有し、また、第1並びに第2の円弧形状のエッジを備え、第2のエッジは第1のエッジよりも小さい曲率を有しているか可撓性があり曲がりやすい積層体と前記第1の層と第2の層との間に形成された矩形のポケットを有する血圧用加圧体が開示されているが、円弧形状のエッジと短形ポケット間に間隔が生じ加圧体全体がスムーズに膨張しない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−280734号公報
【特許文献2】特開平05−317272号公報
【特許文献3】特開2001−78970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これら従来例の有する問題点を解決するものであって、製造が容易であり、しかも、ノイズの発生がなく、測定時に測定部位に密着し、緩めにカフを装着した場合でも、十分な駆血性能が得られる血圧計用カフを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決してなる血圧計用カフである。即ち、本発明は、
(1)に、展開形状が略帯状であり、かつ、空気室が一体に形成された血圧計用カフであって、計測時に肌面と接触する内面となる側を伸縮性の大きい不通気性の布帛にて、外面となる側を伸縮性の小さい不通気性の布帛にて構成されてなる血圧計用カフである。
また、(2)に、不通気性の布帛が、樹脂膜をその表面に形成させて不通気性を発現させてなる織物である(1)記載の血圧計用カフである。
また、(3)に、前記伸縮性の大きい布帛と前記伸縮性の小さい布帛同士を接着することで形成されている(1)または(2)記載の血圧計用カフである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の血圧計用カフは、製造が容易であると共に、測定時に測定部位に良く密着し、十分な駆血効果が得られ、しかも肌面との摩擦音も、急激な圧力変化も生じないので、精度の高い血圧測定を行うことができるものである。また、緩めに血圧計用カフを装着した場合でも、測定部位に良く密着し、十分な駆血効果が得られる。また、本発明の血圧計用カフは、カフ外面3とカフ内面2,及び空気管4とを接着するだけで容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】従来例を示す図であって、一部を切り欠いて示す上面図である。
【図3】他の従来例を示す概略斜視図である。
【図4】図3に記載の従来例の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施例の血圧計用カフの概略斜視図である。図1において、カフ1は、カフ外面3及びカフ内面2及び空気管4より構成され、カフ外面3とカフ内面2は接着シール剤により接合されており、空気管4が取り付けられる部分には空気室が形成されている。また、カフ外面3上には、面ファスナー(ループ)5が、カフ内面2上には面ファスナー(フック)6がそれぞれ取り付けられている。
【0012】
カフ外面3を形成する布帛としては、伸縮性の小さい布帛が用いられる。
カフ内面2を形成する布帛としては、伸縮性の大きい布帛を用いることが必要であるため、例えば、ポリウレタンなどの伸縮性糸を用いることが好ましい。
カフ外面3は伸縮性の小さい布帛で形成されているので、空気室8の昇圧過程においても外側に膨らむことはなく、カフ内面2は伸縮性の大きい布帛で形成されているため、空気室8の昇圧に伴って測定部位に密着する。従って、駆血効果も良好となる。また、カフ内面2は空気室8の昇圧に伴って、穏やかに、連続的に動くので、肌面との間で大きな摩擦音を発生させることはなく、また、突発的な圧力変化を生じることもない。
以上のようであるから、本実施例の血圧計用カフは、マイクによりコロトコフ音を検出する方式の血圧計にも、空気室の圧力変化を検出する方式の血圧計にも適用できるのである。
カフ外面3を形成する布帛の伸長率は0〜10%(JIS L1096 B法(定荷重法))が好ましい。伸長率が10%より大きくなると血圧測定時にカフ外面が外側に膨らみ、血管に十分な圧力が加わらず正確な血圧値が測定できない虞がある。
また、カフ内面2を形成する布帛の伸長率は10〜50%(JIS L1096 B法(定荷重法))が好ましい。伸長率が10%未満であるとカフ内面が膨らみにくく、血圧測定時にカフと肌面との間に摩擦音が発生しやすくなったり、突発的な圧力変化が起きやすくなり、正確な血圧値測定ができない虞がある。伸長率が50%を超えると血圧測定時に十分に駆血できない虞があり正確な血圧測定ができない虞がある。カフ外面3を形成する布帛の伸長率は、カフ内面2を形成する布帛の伸長率よりも小さくなければならない。
【0013】
本発明の血圧計用カフにおいて用いられる布帛とは、天然繊維糸条、再生繊維糸条や合成繊維糸条等の少なくとも一つを用いて製織される織物、編物を意味する。なかでも、機械的強度に優れ、厚さを薄くできるという点で、織物が好ましい。織物の組織は特に限定されるものでなく、平織、綾織、朱子織およびこれらの変化織、多軸織などを挙げることができるが、なかでも、機械的強度により優れた平織物が特に好ましい。
【0014】
布帛に用いられる繊維の種類は特に限定されるものでなく、綿、絹、麻などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン46などのポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維;ポリビニルアルコール繊維;ポリ塩化ビニリデン繊維;ポリ塩化ビニル繊維;アクリルなどのポリアクリロニトリル系繊維;ポリウレタン繊維;芳香族ポリアミド繊維;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維を挙げることができる。なかでも、製造が容易で、かつ耐久性に優れるという理由により、ポリアミド繊維およびポリエステル繊維が好ましく、柔軟性、耐摩耗性、耐薬品性に優れているという理由によりポリアミド繊維がより好ましい。これらの繊維には、耐熱向上剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤などを含有させてもよい。
【0015】
糸条の形態は特に限定されるものでなく、例えば、フィラメント糸、紡績糸、混紡糸、混繊糸、交撚糸、捲回糸などを挙げることができる。なかでも、生産性、コスト面、機械的強度に優れ、また、単糸の広がりにより低通気性が得られやすいという理由により無撚あるいは甘撚のフィラメント糸が好ましい。単糸(単繊維ともいう)の断面形状は特に限定されるものでなく、例えば、丸、扁平、三角、長方形、平行四辺形、中空、星型などを挙げることができる。生産性やコストの点では丸断面が好ましく、布帛の厚さを薄くでき、血圧計用カフの収納性が良くなるという点では、扁平断面が好ましい。
【0016】
単糸強度は5.4g/デシテックス以上であることが好ましく、より好ましくは7g/デシテックス以上である。単糸強度が5.4g/デシテックス未満であると、血圧計用カフとしての物理的特性を満足することが困難となる傾向にある。
【0017】
糸条の総繊度は100〜470デシテックスであることが好ましく、より好ましくは235〜470デシテックスである。総繊度が100デシテックス未満であると、布帛の強度を維持することが困難となる傾向にある。総繊度が470デシテックスを越えると、布帛の厚さが増大し、血圧計用カフとしての収納性が悪くなる傾向にある。
【0018】
布帛が織物であるとき、カバーファクターは1500〜2500であることが好ましく、より好ましくは1500〜2100である。カバーファクターが1500未満であると、織物の開口部が大きくなってしまい、カフの空気室の気密性を得ることが困難となる虞がある。カバーファクターが2500を越えると、織物の厚さが増大し、血圧計用カフの収納性が悪くなる傾向にある。ここで、カバーファクターとは、布帛の経糸総繊度をD(デシテックス)、経糸密度をN(本/2.54cm)とし、緯糸総繊度をD(デシテックス)、緯糸密度をN(本/2.54cm)としたとき、(D×0.9)1/2×N+(D×0.9)1/2×Nで表される。
【0019】
かかる繊維布帛は、精練および熱処理を施されたものであってもよい。
【0020】
また、本発明の血圧計用カフは、不通気性の布帛より構成されるものである。不通気性の布帛は、上記布帛の一方の面が樹脂でコーティングされることにより不通気性を発現させたものが好ましい。更に、樹脂でコーティングされている面はカフの空気室内面側であることが好ましい。肌面側に樹脂がコーティングされていると、血圧測定時に肌面との滑りが悪くなり正確に測定できない虞がある。
また、用いられる樹脂としては、天然ゴムの外、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴムなどの合成ゴム材料、ポリウレタン系、ポリアクリル系、シリコーン系、ポリアミド系などの合成樹脂材料が挙げられるが、気密性、耐久性、柔軟性の点でシリコーン系化合物を含む樹脂組成物により被覆された構成のものであることが好ましい。
【0021】
本発明において用いられるシリコーン系化合物は特に限定されるものでなく、例えば、ジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、トリメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、メチルシリコーンレジン、メチルフェニルシリコーンレジン、メチルビニルシリコーンレジン、アルキッド変性シリコーンレジン、エポキシ変性シリコーンレジン、アクリル変性シリコーンレジン、ポリエステル変性シリコーンレジンなどを挙げることができる。なかでも、硬化後にゴム弾性を有し、強度、伸び等に優れ、コスト面でも有利という理由によりメチルビニルシリコーンゴム等が好ましく用いられる。
シリコーン系化合物は通常市販されているものを用いることができ、そのタイプは、無溶剤型、溶剤希釈型、水分散型など特に限定されない。
【0022】
本発明においてシリコーン系化合物を含む組成物とは、少なくとも上記シリコーン系化合物を含んでおればよいが、シリコーン系樹脂皮膜硬化後の粘着性低減、シリコーン系樹脂皮膜の補強などの目的で、ポリウレタン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物など、他の高分子材料を含んでいてもよい。さらに、硬化剤、接着向上剤、充填剤、補強剤、顔料、難燃助剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0023】
組成物中、シリコーン系化合物の配合比は30重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。シリコーン系化合物の配合比が30重量%未満であると、シリコーン系化合物による耐熱性が低くなる虞がある。
【0024】
シリコーン系化合物を含む組成物の付与量は、固形分で0.1〜100g/mであることが好ましく、より好ましくは1〜45g/mである。付与量が0.1g/m未満であると、血圧計用カフの空気室の通気性が高くなり、血圧計用カフの空気室の気密性が損なわれる虞がある。付与量が100g/mを越えると、血圧計用カフの重量が増大し、カフの厚さが増大して、カフの収納性が悪くなる虞が
ある。
【0025】
これら樹脂の付与方法は特に限定されるものでなく、例えば、ナイフコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、ラミネートなどの方式を挙げることができるが、均一な皮膜形成により通気性を低くすることができるという点で、ナイフコーティングが好ましい。
また、これら樹脂を含むコーティング剤には、イソプロピルアルコールなどのアルコール類や界面活性剤など、界面張力を低下させる薬剤を添加してもよい。
【0026】
本発明の血圧計用カフ用布帛は、上記樹脂を塗布し、次いで熱処理することにより製造することができる。熱処理温度は、溶媒の揮発性や、シリコーン系化合物の皮膜形成に適した温度が好ましく、80〜220℃の範囲が適している。シリコーン系化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布した後に行う熱処理の初期段階、いわゆる乾燥段階では、皮膜の発泡やコーティング剤の急激なマイグレーションを抑えるために、80〜120℃で熱処理することが好ましい。また、付加反応型シリコーン系化合物において、架橋反応が高温で開始されるものを使用する場合には、150〜220℃の熱処理が必須である。この高温熱処理は、シリコーン系化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布した後であればどの段階で行ってもよい。また乾燥のみで強固な皮膜を形成するシリコーン系化合物を使用する場合には、特に高温の熱処理を行わなくてもよい。
【0027】
即ち、本発明は、前記伸縮性の大きい不通気性の布帛と前記伸縮性の小さい不通気性の布帛が接合されてなる血圧計用カフにおいて、上記布帛の接合部分が接着シール剤により接合されていることが好ましい。本発明の血圧計用カフにあっては、布帛の接合部分の接合手段を、接着シール剤による接着としたので、血圧計用カフ作製の際に縫製の工程を省略できる。従って、血圧計用カフ製造工程の簡略化および接合工程の自動化(例えば、接着シール剤を自動吐出機等で塗布した後に硬化させる)が可能となり、これにより製造工程の大幅な合理化が実現される。また、布帛の接合部分の接合手段を接着シール剤による接着としたので、接合部分における縫穴が無くなり、この縫穴に起因するエア漏れ等の不都合が解消されることとなり、血圧計用カフの気密性が向上する。
【0028】
本発明で用いる接着シール剤は、短時間で十分な接着性を発揮し、且つ通常の使用期間中において十分な接着性及び気密性を維持することが要求される。このような接着シール剤としては、例えばシリコーン系、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、クロロプレン系、ポリアミド系、ニトリルゴム系などが挙げられるが、特に布帛の不通気性を得るためのコーティングに使用されているシリコーン系化合物などに対する接着性が極めて優れ、しかも耐久性にも優れていることから、シリコーン系接着シール剤が好ましい。シリコーン系接着シール剤としては、短時間で充分な接着性を発揮し、作業効率も良いことから、加熱硬化型の液状シリコーンゴムが特に好ましく、一般にはメチルビニルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンを白金触媒の存在下に付加重合させる付加型液状シリコーンに、布帛への接着付与剤としてアミノ基、ビニル基、(メタ)アクリロキシ基等のケイ素原子に結合する官能基を有するアルコキシシランなどの周知のシランカップリング剤を添加したものが良いが、室温硬化型のシラノール基を有するポリオルガノシロキサンと架橋剤を有機スズ触媒などで縮合反応させる縮合型液状シリコーンゴムを用いることもできる。
【0029】
さらに接着シール剤の形状としては、1液、2液、3液以上の液状、粉体、フィルム、テープなどがあるが、液状のものや加熱することにより流動性を有する所謂、ホットメルトタイプのものを用いることができる。
【0030】
本発明で使用される接着シール剤は、破断時伸びが500%以上(JIS K6251)の弾性を有することが好ましい。破断時伸びが500%未満であると、空気室の膨張時に破断する虞があり、気密性が保たれない可能性がある。破断時伸びは、700〜2000%であることがより好ましい。
【0031】
また、そのJIS K6251に準じた硬さは、3〜50であることが好ましい。硬さが3より小さいと、シール部を触ったときの変形が大きくなり、空気室の気密性が劣る傾向にあり、50を超えると、カフが硬くなったり、収納性が悪化する傾向にある。
【0032】
接着シール剤の付与方法は特に限定されるものでなく、例えば、液状のものについては、ナイフコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、ラミネート、ディスペンサー、スクリーンプリント、スプレーなどの方式を挙げることができる。粉体のものについては、型枠を通して塗布、接着する方法、フィルム状やテープ状のものについては、所望の形状に裁断して、貼付、接着する方法などが挙げられ適宜選択すればよい。
【0033】
接着シール剤の付与幅については、1〜30mmが好ましい。幅が1mmより狭いと、接合部の強度や気密性が十分得られない虞があり、幅が30mmより広いと、接合部が嵩高となり血圧計用カフの収納性に劣るものとなる虞がある。また接着シール剤の厚みについては、0.05〜3mmが好ましい。
厚みが0.05mmより薄いと血圧計用カフの気密性が保持出来ない虞があり、厚みが3mmを越えるとカフの収納性に劣るものとなる虞がある。
【0034】
また、空気管4は、接着シール剤による接着が可能な素材、例えば、軟質ポリ塩化ビニルチューブよりなり、カフ外面3及びカフ内面2と接着シール剤部分7により結合され、空気室8を形成している。
【符号の説明】
【0035】
1 血圧計用カフ
2 カフ内面
3 カフ外面
4 空気管
5 面ファスナー雄材
6 面ファスナー雌材
7 接着部
8 空気室
9 空気袋
10 繊維強化素材
11 縫製部
12 高周波溶着部分
13 ポリ塩化ビニルシート
14 伸びの小さい繊維
15 繊維強化素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開形状が略帯状であり、かつ、空気室が一体に形成された血圧計用カフであって、計測時に肌面と接触する内面となる側を伸縮性の大きい不通気性の布帛にて、外面となる側を伸縮性の小さい不通気性の布帛にて構成されてなる血圧計用カフ。
【請求項2】
不通気性の布帛が、樹脂膜をその表面に形成させて不通気性を発現させてなる織物である請求項1記載の血圧計用カフ。
【請求項3】
前記伸縮性の大きい布帛と前記伸縮性の小さい布帛同士を接着することで形成されている請求項1または2記載の血圧計用カフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−177372(P2011−177372A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45268(P2010−45268)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】