説明

血圧降下剤

【課題】カテキン代謝物の新たな機能性を利用した血圧降下剤及びアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供するとともに、それを含有した口腔適用対象物を提供する。
【解決手段】本発明における血圧降下剤乃至アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、茶カテキン類の腸内細菌代謝物として報告のある式(I)で表されるフェニルカルボン酸、式(II)で表される5−フェニル−γ−バレロラクトンおよび式(III)で表される5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸の少なくとも1種類以上を有効成分として含有することを特徴とする血圧降下剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶カテキン由来の代謝物質を有効成分とする新しい血圧降下剤に関するものであり、更に詳細には式(I)記載のフェニルカルボン酸、式(II)記載の5−フェニル−γ−バレロラクトンおよび式(III)記載の5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸を有効成分とすることを特徴とした血圧降下剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤並びにそれらを含有し、高血圧症の予防もしくは改善のために用いられる口腔適用対象物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物ポリフェノールの一種である茶由来のカテキン類には、抗菌、抗ウイルス、抗酸化、抗癌、抗う蝕、抗突然変異、血小板凝集抑制、血中コレステロール低下、血糖上昇抑制、抗アレルギー、消臭作用など、非常に広範な生理活性があることが知られており、様々な分野で利用されている。
また、カテキン類を経口摂取した後の生体内動態に関する研究も広く行われている。カテキン類は優れた生体調節作用をもつものの、生体内への吸収量(生体利用率)は非常に低いと考えられており、カテキンを経口摂取した後に生体内に吸収されるのは、カテキン類自体よりも、腸内細菌により分解されて生じた代謝物が主であると考えられている。実際にラットや人に茶を経口投与した試験では、尿中には5−フェニル−γ−バレロラクトンやフェニル酢酸などが検出されるという報告がなされている(非特許文献1、2、10、11)。
カテキン類が腸管内で腸内細菌による分解を受けることについては多くの報告がある。カテキン類は腸内細菌により、主に5−フェニル−γ−バレロラクトン(5−phenyl−γ−valerolactone)や5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸(5−phenyl−4−hydroxy−valeric acid)に変換し、さらには5−フェニル吉草酸(5−phenyl−valeric acid)、3−フェニルプロピオン酸(3−phenyl−propionic acid)、フェニル酢酸(phenyl acetic acid)、安息香酸(benzoic acid)などに変換す
ることも報告されている(非特許文献3、4、5)。このようにカテキンは微生物分解を受けやすいため、経口摂取後に生体内に吸収されるのは、茶カテキンよりも微生物分解により生成した代謝物である可能性の方が高いと考えられている。
しかしながら、カテキン代謝産物に関しては、生体内での機能性についてほとんど知見がない。唯一、カテキン類の代謝産物である式(II)に示される化合物の一つである5−(3’,4’,5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの一酸化窒素(NO)産生抑制効果が報告されているにすぎない(非特許文献6)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.Agric.Food Chem.,49、 4102−4112,2001.
【非特許文献2】Chem.Res.Toxicol.,13, 177−184,2000.
【非特許文献10】J.Agric.Food Chem.,51、5561−5566 2003.
【非特許文献11】J.Agric.Food Chem.、51、6893−6898 2003.
【非特許文献3】J.Agric.Food Chem., 58, 1313−1321, 2010.
【非特許文献4】J.Agric.Food Chem., 58, 1296−1304, 2010.
【非特許文献5】Chem.Pharm.Bull.,45, 888−893,1997.
【非特許文献6】Bioor.Med.Chem.Lett.,15, 873−876,2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、カテキン代謝物の新たな機能性を利用した血圧降下剤及びアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供するとともに、それを含有した口腔適用対象物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、主なカテキン類の代謝物として報告のある式(I)記載のフェニルカルボン酸、式(II)記載の5−フェニル−γ−バレロラクトン、および式(III)記載の5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸の生理活性作用を検討した。その結果、これらのカテキン代謝物には、血圧上昇に関与するアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを抑制する効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。茶カテキン代謝物が血圧降下作用をもつことは、これまでに報告された例はなく、全く新しい知見である。
【0006】
すなわち、本願請求項1記載の発明は、式(I)で表されるフェニルカルボン酸、式(II)で表される5−フェニル−γ−バレロラクトンおよび式(III)で表される5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸の少なくとも1種類以上を有効成分として含有することを特徴とする血圧降下剤である。

式(I)
【化1】

(式(I)のnは整数の1−7を表し、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水酸基(OH)または水素(H)を表す。)

式(II)
【化2】

(式(II)のR1、R2はそれぞれ独立に水酸基(OH)または水素(H)を表す。)

式(III)
【化3】

(式(III)のR1、R2はそれぞれ独立に水酸基(OH)または水素(H)を表す。)

本願請求項2記載の発明は、式(I)に示すフェニルカルボン酸のnが3〜6の整数である請求項1記載の血圧降下剤である。
本願請求項3記載の発明は、式(I)で表されるフェニルカルボン酸、式(II)で表される5−フェニル-γ−バレロラクトンおよび式(III)で表される5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸の少なくとも1種類以上を有効成分として含有することを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤である。
さらに本願請求項4記載の発明は、請求項1乃至2記載の血圧降下剤、あるいは請求項3記載のアンジオテンシン変換酵素阻害剤を含有する口腔適用対象物である。
請求項5記載の本願発明は、飲食品である請求項4記載の口腔適用対象物である。
請求項6記載の本願発明は、医薬部外品または医薬品である請求項4記載の口腔適用対象物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明はカテキン代謝物である式(I)記載のフェニルカルボン酸、式(II)記載の5−フェニル-γ−バレロラクトン、および式(III)記載の5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸を有効成分とした新しい血圧降下剤およびアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供するものである。また、本発明は飲食品や医薬品などに幅広く応用出来る汎用性の高いものであり、高血圧症の予防および/または改善につなげることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で示す血圧降下作用とは血圧を下げる効果のみではなく、血圧を上昇することを抑制する作用も包含する。
【0009】
本発明におけるカテキン代謝物は、公知の有機化学合成法(非特許文献6、7)により,または必要に応じて有機合成方法を組み合わせることにより得ることができる。また腸内細菌による微生物変換法により製造することも可能である(非特許文献3、4、5)。
【非特許文献7】Synthesis 2010, No.9, pp1512−1520
【0010】
上記の有機化学合成法や微生物変換法により得られるカテキン代謝物は、医薬上または食品上許容しうる規格に適合し,本発明の効果を発揮するものであれば,粗精製物であってもよく,さらに得られた合成物や抽出物を公知の分離精製方法を適宜組み合わせて純度を上げても良い。
【0011】
有機合成方法によって該目的化合物を製造する場合、種々の既知精製手段を選択し、組合わせて行うことができる。例えば水、熱水、アルコール等の極性溶媒、または非極性溶媒を用いて行う溶剤抽出方法や、遠心分離、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等の精製手段が挙げられる。
【0012】
微生物変換によりカテキン代謝物を製造する場合、ラットの腸内細菌を含む糞や盲腸内容物を培養して腸内細菌を増殖させた後、この培養菌体を緩衝液、生理食塩水、水などに懸濁させた溶液に出発原料(基質)となる茶カテキンを加え嫌気条件でインキュベーション処理を行うことで茶カテキン代謝物を製造することが出来る。他の方法としては、カテキン類を変換する能力を持つ菌株を数種類組み合わせてインキュベーション処理を行ってもよい。この場合、茶カテキン類を変換する能力とは、式(IV)に示したカテキン類を式(V)に示したカテキン誘導体に変換する能力、また式(V)記載のカテキン誘導体を式(II)に記載の5−フェニル−γ−バレロラクトンおよび/または式(III)5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸に変換する能力を示す。
式(IV)
【化4】

(式中、Rは水酸基(OH)または水素(H)を表す)

式(V)
【化5】

(式中、R1、R2はそれぞれ独立に水酸基(OH)または水素(H)を表す)

【0013】
式(IV)に示したカテキン類を、式(V)に示したカテキン誘導体に変換する能力を持つ微生物の好ましい例としては、エガーテラ・レンタ:Eggerthella lenta JCM9979株およびアドラークルーツィア・エクオーリファシエンス:Adlercreutzia equolifaciens MT4s−5株 (受託番号FERM P−21738)を挙げることができる。
【0014】
また式(V)に示したカテキン誘導体を、式(II)記載の5−フェニル−γ−バレロラクトンおよび/または式(III)で示される5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸に変換する能力を有する微生物の好ましい例としてはユウバクテリウム属細菌およびクロスリジウム属細菌(新学名としてフラボニフラクター属細菌に属する細菌)を上げることができ、さらに好ましくは、ユウバクテリウム・プラウティ:Eubacterium plautii(新学名;フラボニフラクター・プラウティ:Flavonifractor plautii)ATCC29863株、ユウバクテリウム・プラウティ:Eubacterium plautii(新学名;フラボニフラクター・プラウティ:Flavonifractor plautii)MT42株(FERM P−21765)およびクロストリジウム・オルビシンデンス:Clostridium orbiscindens(新学名;フラボニフラクター・プラウティ:Flavonifractor plautii)ATCC49531株を挙げることができる。
【0015】
段落[0013]記載の、式(IV)に示したカテキン類を式(V)に示したカテキン誘導体に変換する能力を持つ微生物と、段落[0014]記載の、式(V)に示したカテキン誘導体含有物を式(II)記載の5−フェニル−γ−バレロラクトンおよび/また式(III)記載の5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸に変換する能力を有する微生物を共存させた培養菌体懸濁液または培養液に、式(IV)に示したカテキン類および/またはカテキン含有物を出発原料(基質)として添加して嫌気条件下でインキュベーション処理することにより、容易に上記に示した5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸および/または5−フェニル−γ−バレロラクトン含有物を得ることができる。このインキュベーション処理は、前記微生物を培養後、培養菌体を集菌し、この菌体を緩衝液、生理食塩水、水などに懸濁させた後に基質を添加するか、前記微生物を培養する際あるいは培養開始後一定期間経過した培養液に基質を添加して行うことができる。または当該微生物が生育する培養液中に、出発原料(基質)である式(IV)で示されるカテキン類および/またはカテキン含有物を添加して嫌気条件下でインキュベーション処理することにより、容易に式(II)および/または式(III)の化合物を得ることも可能である。
【0016】
なお、式(IV)に示したカテキン類のうち、Rが水素であるカテキン類を式(V)のR1およびR2が水素であるカテキン誘導体に微生物変換するためには、培地中に水素および/または蟻酸を添加することが望ましい。また、式(IV)のうちRが水酸基であるカテキン類を式(V)のR1が水酸基、R2が水素であるカテキン誘導体に微生物変換するためには、培地中に水素および/または蟻酸を添加する必要がある。さらに、水素や蟻酸を培地中に添加しない場合には、水素および/または蟻酸生成微生物を共存させることも可能である。このような微生物の例として、大腸菌(Escherichia coli)を挙げることができる。
【0017】
前記に示した微生物を培養する場合には、該微生物が生育できる栄養源含有培地に接種し、嫌気的条件下で培養する。培養菌体を得るための微生物の培養および基質存在下での微生物の培養は、一般的な嫌気性微生物の培養方法を採用することができる。また、培養菌体を集菌した後、前記基質の存在下でインキュベーション処理する場合にも、嫌気条件下で行うことが望ましい。培養に用いられる培地としては、前記微生物が生育できる培地であれば特に限定されないが、例を挙げればGAMブイヨン(日水製薬(株)製)などが利用可能である。
培養条件は、前記微生物が生育しうる範囲内で適宜選択することができる。通常、pH6.0〜7.5、35〜40℃であり、好ましくはpH6.5〜7.3、37〜39℃である。培養時間は通常24〜120時間、好ましくは48〜72時間である。上述した各種の培養条件は、使用する微生物の種類や特性、外部条件などに応じて適宜変更でき、最適条件を選択することができる。
【0018】
また、微生物変換により茶カテキン代謝物を製造する場合、調製時には数種類のカテキン代謝物を含む抽出物が得られるが、精製を重ねることで高純度の茶カテキン代謝物を得ることが出来る。有機合成方法と同様に種々の既知精製手段を選択し、組み合わせて行うことで精製度合いを調製することが出来る。例えば、酢酸エチル、エーテル、ブタノールなどを用いた溶媒抽出、合成樹脂吸着剤の脱吸着を利用する方法、シリカゲルなどのカラムクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーを単独あるいは適宜組み合わせて分離・精製することで、抽出物中の茶カテキン代謝物の含有率を調節することが出来る。
【0019】
また、微生物変換によるカテキン代謝物の製造の場合、精製度合いを調整することで抽出物中に含まれるカテキン代謝物の種類も調節することが出来る。血圧降下作用を増強させる観点から、血圧降下剤として、カテキン代謝物を数種類含む抽出物を用いてもよい。
【0020】
本発明の血圧降下剤乃至アンジオテンシン変換酵素阻害剤は利用の形態は限定されないが、たとえば液状、粉末状、顆粒状などが挙げられ、食品または栄養補助品として、通常用いられる形態、たとえば液剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、酒精剤に利用することが出来る。本発明において、口腔適用対象物とは、口に含むことができるものであれば、どのような形態でもよい。
【0021】
本発明の血圧降下剤乃至アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、更に他の血圧降下剤(例えば、α遮断薬、β遮断薬、αβ遮断薬、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、Caブロッカー、利尿薬、抗精神薬など)、各種ビタミン剤(例えばビタミンA,ビタミンB、B、B、B12、ビタミンC,ビタミンD,ビタミンEなど)と併用して利用することが可能である。
【0022】
また、本発明の血圧降下剤乃至アンジオテンシン変換酵素阻害剤を医薬品として用いる場合は、日本薬局方に収められている医薬品で口に含むことができれば特に限定されるものではなく、上記有効成分に薬学的に許容される担体を添加して、経口用の製剤とすることが出来る。製剤形態としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤、トローチ剤、チュアブル剤、液剤(ドリンク剤)などが挙げられる。
【0023】
医薬部外品としては厚生労働大臣が指定した医薬部外品で口に含むことができれば特に限定されるものではなく、例えば、内服液剤、健康飲料、ビタミン含有保健剤などが挙げられる。
【0024】
本発明の血圧降下剤あるいはアンジオテンシン変換酵素阻害剤を含有する食品はどのような形態であってもよく、例えば、水溶液や混濁物や乳化物などの液状形態であっても、ゲル状やペースト状の半固形状形態であっても、粉末や顆粒やカプセルやタブレットなどのサプリメント等の固形状形態であってもよい。
【0025】
本発明の血圧降下剤あるいはアンジオテンシン変換酵素阻害剤を含有する飲食品としては、例えば、即席食品類(即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席味噌汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズドライ食品など)、炭酸飲料、柑橘類(グレープフルーツ、オレンジ、レモンなど)の果汁や果汁飲料や果汁入り清涼飲料、柑橘類の果肉飲料や果粒入り果実飲料、トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガスなどの野菜を含む野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料やタバコなどの嗜好飲料・嗜好品類、マカロニ・スパゲッティ、麺類、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉、ギョーザの皮などの小麦粉製品、キャラメル・キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ケーキ・パイ、スナック・クラッカー、和菓子・米菓子・豆菓子、デザート菓子などの菓子類、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類、甘味料などの基礎調味料、風味調味料、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類などの複合調味料・食品類、バター、マーガリン類、マヨネーズ類、植物油などの油脂類、牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリームなどの乳・乳製品、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済み冷凍食品などの冷凍食品、水産缶詰め、果実缶詰め・ペースト類、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、水産乾物類、佃煮類などの水産加工品、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物・煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)などの農産加工品、ベビーフード、ふりかけ・お茶漬けのりなどの市販食品などが挙げられる。
【0026】
飲食品に対する本発明の組成物の配合量は、特に制限されないが、対象となる飲食品により配合量を適宜設定する。一般的には、最終製品中で0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%であることがより好ましく、0.1〜5%であることがさらに好ましい。
【実施例1】
【0027】
以下に、製造例、試験例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
製造例1:微生物変換による5−(3’,4’,5’トリハイドロキシフェニル)吉草酸[5−(3’,4’,5’−trihydroxyphenyl)−valeric acid]および5−(3’,5’−ジハイドロキシフェニル吉草酸[5−(3’,5’−dihydroxyphenyl)−valeric acid]の製造方法
Wistar系ラット(♂、日本チャールスリバー株式会社)3匹から糞便(3.6g)を採取し、GAMブイヨン(組成(1L中):ペプトン10g、ダイズペプトン3g、プロテオーゼペプトン10g、消化血清末13.5g、酵母エキス5g、肉エキス2.2g、肝臓エキス1.2g、ブドウ糖3g、リン酸二水素カリウム2.5g、塩化ナトリウム3g、溶性デンプン5g、L−システイン塩酸塩0.3g、チオグリコール酸ナトリウム0.3g、pH7.1、日水製薬(株)製)500mlに入れ、37℃で2日間嫌気培養を行った。滅菌済みの遠心管に培養液を入れ、9000rpmで20分間遠心分離を行った。上清を捨て、菌体に200mlの滅菌水を加えて菌体を洗浄した後、再度遠心分離を行った。得られた菌体を200mgのエピガロカテキン(EGC)を含む150mlの0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2)に懸濁した。37℃の嫌気条件下でインキュベーション処理を行った。培養2日目に溶液50mlを回収し、2M塩酸水を2.5ml加えpH5.5に調整し、一旦冷凍保存を行った。また培養4日後に残りの溶液100mlに2M塩酸水を5ml加えpH5.5に調整した。これらの培養液を合わせて、高速遠心分離(15000×g、20分)に供し、菌体を除去した。100mlの酢酸エチルで3回抽出を行った後、有機溶媒相を合わせてエバポレータに供し、有機溶媒を除去し、乾固させた。乾固物を10%メタノール水溶液で溶解し、分取HPLCに供した。分取HPLCの条件を以下に記載する。
【0029】
使用カラム:CAPCELLPAK MG(20×150mm、5μm、(株)資生堂製)、流速:9.8ml/分、カラム温度:40℃、溶媒A;メタノール:水:酢酸(10:90:1 容量比(v/v/v))、溶媒B;メタノール:酢酸(100:1 容量比(v/v))、グラジエント;0分:A95% B5%、30分:A60% B40%、40分:A20% B80%、43分:A10% B90%、45分:A95% B5%、検出器:UV230nmとした。
分画したフラクションをそれぞれLC/MS分析に供し、代謝物の含まれる画分を確認した。LC/MS分析条件を以下に記載する。
【0030】
使用カラム:CAPCELLPAK C18 MG(2.0×100.0mm,5μm、(株)資生堂製)、カラム温度:40℃、流速:0.2ml/分、移動相A(水/アセトニトリル/酢酸=100/2.5/0.1 容量比(v/v/v)),B(水/アセトニトリル/メタノール/酢酸=50/2.5/50/0.1 容量比(v/v/v/v))、グラジエント:0−2分 アイソクラティック A100%、2−25分 リニアグラジエント A 100−0%、B0−100%、25.1−33分 アイソクラティック A100%、検出器:UV270nm、インターフェース:ESI、ポラリティ:ネガティブ。
【0031】
LC/MS分析の結果から、代謝物が含まれる画分を確認し、エバポレータで濃縮乾固した。乾固物に5mlの純水を加えて溶解し、再度減圧下で濃縮乾固した。この操作を3回繰り返し行い、有機溶媒相に含まれていた酸を完全に除去した。乾固物に少量の純水を加えて溶解し、凍結乾燥に供した。これにより5−(3’,4’,5’−トリハイドロキシフェニル)−吉草酸[5−(3’,4’,5’−trihydroxyphenyl)−valeric acid]:15mg(HPLC面積百分率98.0%以上)、5−(3’,5’−ジハイドロキシフェニル)−吉草酸[5−(3’,5’−dihydrox
yphenyl)−valeric acid]:68.6mg(HPLC面積百分率98.0%以上)を得た。
【0032】
製造例2:微生物変換による5−(3’―ハイドロキシフェニル)−吉草酸[5−(3’―hydroxyphenyl)−valeric acid]、3−ハイドロキシフェニル酢酸[3−hydroxyphenyl acetic acid]の製造方法
Wistar系ラット(♂、日本チャールスリバー株式会社)3匹から盲腸内容物(2.0g)を採取し、GAMブイヨン(日水製薬(株)製)200mlに入れ、37℃で4日間嫌気培養を行った。滅菌済みの遠心管に培養液を入れ、9000rpmで20分間遠心分離を行った。上清を捨て、菌体に100mlの滅菌水を加えて菌体を洗浄した後、再度遠心分離を行った。得られた菌体を100mgの(−)−エピカテキン(EC)を含む150mlの0.2Mリン酸緩衝液(pH7.2)に懸濁した。37℃の嫌気条件下でインキュベーション処理を行った。培養10日後に塩酸を加えpH4.0に調整した。培養液を遠心分離(15000×g、20分)に供し、菌体を除去した。100mlの酢酸エチルで3回抽出を行った後、有機溶媒相を合わせてエバポレータに供し、有機溶媒を除去し、乾固させた。乾固物を10%メタノール水溶液で溶解し、分取HPLCに供した。分取HPLCの条件を以下に記載する。
【0033】
使用カラム:YMC−Pack ODS−A(20×150mm、5μm、(株)YMC製)、流速:9.8ml/分、カラム温度:40℃、溶媒A;メタノール:水:酢酸(10:90:1 容量比(v/v/v))、溶媒B;メタノール:酢酸(100:1 容量比(v/v))、グラジエント;0分:A80% B20%、15分:A60% B40%、30分:A30% B70%、35分:A80% B20%、検出器:UV230nmとした。
分画したフラクションをそれぞれ製造例1の段落[0030]記載のLC/MS分析法と同条件で分析し、代謝物を確認した。代謝物の含まれる画分は製造例1の段落[0031]記載の方法と同様に処理、凍結乾燥を行った。これにより5−(3’―ハイドロキシフェニル)−吉草酸[5−(3’−hydroxyphenyl)−valeric acid]:14.8mg(HPLC面積百分率98.0%以上)、3−ハイドロキシフェニル酢酸[3−hydroxyphenyl acetic acid]:5.0mg(HPLC面積百分率98.0%以上)を得た。
【0034】
製造例3:エガーテラ・レンタJCM9979株とクロストリジウム・オルビシンデンス(フラボニフラクター・プラウティ)ATCC49531株の共存下でのエピガロカテキンからの5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸および5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの製造方法
エガーテラ・レンタJCM9979株とクロストリジウム・オルビシンデンス(フラボニフラクター・プラウティ)ATCC49531株をそれぞれ30mlのGAMブイヨン(日水製薬(株)製)に植菌し、37℃で48時間嫌気培養した。エピガロカテキン221.4mgを含む同培地100mlに上記2菌株の培養液を加えた。この培地を37℃で3日間嫌気培養を行った。高速遠心分離(15000×g、10分間、10℃)により菌体を除去した後、得られた上清にリン酸を添加してpH1.5に調整した。この溶液に100mlの酢酸エチル:ブタノール(1:1、v/v)を加えてよく混合した。遠心分離機(5000×g、5分間)で2相に分けた後、有機溶媒相を回収した。この抽出操作を3回繰り返し行った。有機溶媒相(300ml)に等量(300ml)の0.1M炭酸ナトリウム水溶液(0.1%アスコルビン酸ナトリウムを含む)を加えよく混合した後、遠心分離機(5000×g、5分間)で有機溶媒相と水相に分けた。有機溶媒相は製造例1記載の方法と同様に処理を行い、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン[5−(3’、4’、5’−trihydroxyphenyl)−γ−valerolactone] 31mg(HPLC面積百分率98.0%以上)を得た。水相(300ml)は酸を加えてpHを7.0に調整後、約30mlになるまで減圧下で濃縮した。この濃縮液に5倍量のエタノールを添加し、高速遠心分離(15000×g、15分、4℃)で不溶物を除去した。得られた上清をさらに減圧下で約1mlになるまで濃縮し、2MHClでpH2.0−3.0に調整した。この溶液を分取HPLCに供した。分取HPLCの条件を以下に記載する。
【0035】
カラム:CAPCELLPAK MG(20×150mm、5μm、((株)資生堂製)、流速9.5ml/分、温度40℃、溶媒A:アセトニトリル:メタノール:水(5:5:90 容量比(v/v/v))、溶媒B:アセトニトリル:メタノール:水(5:60:35 容量比(v/v/v))、グラジエント;A80% B20%のアイソクラティック、検出器:UV230nmとした。
【0036】
分取後、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸を含む画分はさらに陽イオン交換処理を行った。5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸を含む画分(50ml)に、1/2量の純水(25ml)を添加後、減圧下で濃縮し、溶液中の溶媒を除去して水溶液にした。この水溶液を純水で平衡化した陽イオン交換樹脂(ダイアイオンSK1B ナトリウム型、10×65mm)に通液し、さらに純水で溶出した。得られた溶液を減圧濃縮し凍結乾燥した結果、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸 [5−(3’、4’、5’−trihydroxyphenyl)−4−hydroxyvaleric acid]のナトリウム塩65mg(HPLC面積百分率98.0%以上)を得た。
【0037】
製造例4:エガーテラ・レンタJCM9979株とユウバクテリウム・プラウティ(フラボニフラクター・プラウティ)ATCC29863株および大腸菌K12株の共存下での5−(3’、5’−ジハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸および5−(3’、5’−ジハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン含有物の製造方法
エガーテラ・レンタJCM9979株を30mlのGAMブイヨン(日水製薬(株)製)に植菌し、37℃で48時間嫌気培養し、前培養液とした。大腸菌K12株およびユウバクテリウム・プラウティ(フラボニフラクター・プラウティ)ATCC29863株は10mlのGAMブイヨン(日水製薬(株)製)で24時間嫌気培養し、前培養液とした。(−)−エピガロカテキン290mgを含む100mlのGAMブイヨン(日水製薬(株)製)に上記3菌株の前培養液を加え、37℃で48時間嫌気培養して変換反応を行い、5−(3’、5’−ジハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸および5−(3’、5’−ジハイドロキシフェニル)−γ―バレロラクトン含有物を得た。培養液を高速遠心分離(15000×g、10分間、10℃)し、菌体を除去した。上清に塩酸を加えpH3.5に調整した後、120mlの酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル相(約350ml)に40mM炭酸ナトリウム水溶液100mlを加えよく混合した。遠心分離(5000×g、5分間)により2相に分離させ、水相を回収した。再度酢酸エチル相に40mM炭酸ナトリウム水溶液100mlを加え、同様に2相に分離した。回収した炭酸ナトリウム水溶液のpHを7.0付近に調整した後、約5mlになるまで減圧濃縮した。さらに塩酸を加えてpH2.0〜5.0に調製し、高速遠心分離(15000×g、20分、4℃)後、上清を分取用HPLCに供した。分取HPLCは製造例3の段落[0035]記載の方法に従って行った。但しグラジエントはグラジエント;0分:A80% B20%、5分:A80% B20%、15分:A20% B80%、18分:A20% B80%、19分:A80% B20%、24分:A80% B20%、で行った。
【0038】
分取後、5−(3’、5’−ジハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを含む画分は製造例1の段落[0031]記載の方法に従い、濃縮、凍結乾燥に供し、45mgが得られた。また、5−(3’、5’−ジハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸を含む画分は製造例3の段落[0036]記載の陽イオン交換処理を行った後、凍結乾燥に供した。その結果、5−(3’、5’−ジハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸[5−(3’、5’−dihydroxyphenyl)−4−hydroxyvaleric acid]のナトリウム塩が103mg(HPLC面積百分率98.0%以上)得られた。
【0039】
製造例5:エガーテラ・レンタJCM9979株およびユウバクテリウム・プラウティ(フラボニフラクター・プラウティ)MT42(FERM P−21765)株の共存下での5−(3’、4’−ジハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン[5−(3’、4’−dihydroxyphenyl)−γ−valerolactone]の製造方法
エガーテラ・レンタJCM9979株を30mlのGAMブイヨン(日水製薬(株)製)に植菌し、37℃で48時間嫌気培養した。またユウバクテリウム・プラウティ(フラボニフラクター・プラウティ)MT42株は10mlのGAMブイヨン(日水製薬(株)製)で24時間嫌気培養した。(−)−エピカテキン215mgを含む100mlのGAMブイヨン(日水製薬(株)製)に上記2株の前培養液を加え、37℃で48時間嫌気培養して変換反応を行い、5−(3’、4’−ジハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸および5−(3’、4’−ジハイドロキシフェニル)−γ―バレロラクトンを生成させた。培養液を高速遠心分離(15000×g、10分間、10℃)して、菌体を除去後、上清に塩酸を加えpH3.5に調整した。この上清液を120mlの酢酸エチルで3回抽出し、酢酸エチル相を減圧下で濃縮乾固した。沈殿を少量の純水に溶解し、凍結乾燥した結果、5−(3’、4’−ジハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸、5−(3’、4’−ジハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン含有物506mgを得た。
【0040】
得られた含有物を純水30mlに溶解後、2M塩酸を添加してpH1.5に調整した。この水溶液を室温で24時間放置し、5−(3’、4’−ハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸を5−(3’、4’−ハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンへ変換した。水溶液のpHを1M炭酸ナトリウムで4.0に調整後、製造例1記載の方法で分取HPLC、凍結乾燥を行った。その結果、5−(3’、4’−ジハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン[5−(3’、4’−dihydroxyphenyl)−γ−valerolactone]73mg(HPLC面積百分率98.0%以上)が得られた。
【0041】
試験例1:カテキン代謝物のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性試験
以下にACE活性阻害試験について説明する。
試験に供したカテキン代謝物のうち、5−(3’、4’−ジハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン[5−(3’、4’−dihydroxyphenyl)−γ−valerolactone]、5−(3’、5’−ジハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸[5−(3’、5’−dihydroxyphenyl)−4−hydroxyvaleric acid]、5−(3’、5’−ジハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン[5−(3’、5’−dihydroxyphenyl)−γ−valerolactone]、5−(3’−ハイドロキシフェニル)−吉草酸[5−(3’−hydroxyphenyl)−valeric acid]、5−(3’,4’,5’−トリハイドロキシフェニル)−吉草酸[5−(3’,4’,5’−trihydroxyphenyl)−valeric acid]、5−(3’,5’−ジハイドロキシフェニル)−吉草酸[5−(3’,5’−dihydroxyphenyl)−valeric acid]、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン[5−(3’、4’、5’−trihydroxyphenyl)−γ−valerolactone]、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ吉草酸[5−(3’、4’、5’−trihydroxyphenyl)−4−hydroxyvaleric acid]は製造例1〜5記載の方法により調製したものを使用した。
5−フェニル吉草酸[5−phenyl−valeric acid]、6−フェニルヘキサン酸[6−phenyl−hexanoic acid]、2−ハイドロキシフェニル酢酸[2−hydroxyphenyl acetic acid]、4−ハイドロキシフェニル酢酸[4−hydroxyphenyl acetic acid]、3−(4’−ハイドロキシフェニル)−プロピオン酸[3−(4’−hydroxyphenyl)−propionic acid]、3−ハイドロキシフェニル酢酸[3−hydroxyphenyl acetic acid]はACROS ORGANICS社のものを使用した。
阻害剤として使用する上記代謝物類は一晩40℃の減圧条件下で加熱乾燥した後、重量測定を行った。各物質ごとに5%メタノールを含む1mMリン酸―クエン酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、90〜20mMの阻害剤溶液を調製した。各阻害剤溶液はさらに5%メタノールを含有する1mMリン酸―クエン酸緩衝液(pH4.0)で5段階的に希釈し、3〜20mMの濃度範囲内で段階的に異なった濃度の阻害剤溶液を調製した。
150mMのHEPES(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid)緩衝液(pH8.3)に塩化ナトリウムを450mM添加して溶解した。この溶液にさらに反応基質となるHippuryl−L−histidyl−L−leucine(HHL)を4mM添加して溶解し、基質溶液とした。
マイクロチューブに基質溶液200μl、0.1U/mlのAngiotensin Converting Enzyme(ACE)(SIGMA−ALDRICH社製)水溶液 40μl、阻害剤溶液(代謝物溶液)を60μl加え、37℃の湯浴中で30分間インキュベーションした。1Mの酢酸緩衝液(pH4.0)を200μl加えて反応を停止後、LC/MS分析に供した。Selected ion mode(SIM)により分析を行い、反応により出てきた馬尿酸を測定した。この馬尿酸測定時のLC/MS分析条件を以下に記載する。
【0042】
カラム:CAPCELLPAK MG(2.0×100.0mm,5μm (株)資生堂製)、流速:0.2ml/ml、温度:40℃、移動相A:10% アセトニトリル、0.2% ギ酸、移動相B:40% アセトニトリル、0.2% ギ酸
グラジエント条件:0−3min A100% B0%、3−15min A50% B50%、15−16min A100% B0%、16―20min A100% B0%
検出器:ポラリティ:ポジティブ、Selected ion mode(SIM)m/z180測定した結果をグラフにプロットし、指数近似による近似曲線を作成し、そこからIC50値を算出した。
【0043】
(結果)
【表1】

【0044】
表1に示すように、供試した全ての代謝物でACE阻害活性が確認された。特に式(I)記載のフェニルカルボン酸である5−(3’,4’,5’−trihydroxyphenyl)−valeric acid(R1,R2、R3は水酸基、nは整数の4)、5−(3’,5’−dihydroxyphenyl)−valeric acid(R1、R3は水酸基、R2は水素、nは整数の4)、5−(3’ −hydroxyphenyl)−valeric acid(R1は水酸基、R2,R3は水素、nは整数の4)、また式(II)記載の5−フェニル−γ−バレロラクトンである5−(3’,4’,5’−trihydroxyphenyl)−γ−valerolactone(R1、R2は水酸基)には高いACE阻害活性が確認された。
【0045】
試験例2:SHRラットを用いた血圧降下試験(100mg/kg)
(a)使用動物および方法
10週齢の雄性自然発症高血圧ラット(SHR)を購入し、飼育環境に馴化させるために4週間飼育した。飼育期間中に市販のラット用非観血式自動血圧測定装置BP−98A(ソフトロン社製)を用いて不連続的に3回以上血圧を測定し、血圧測定操作に馴れさせた後、評価試験を実施した。ラットはすべて室温23℃±3℃、相対湿度50±5%、照射時間12時間の条件下(ラット区域内飼育室)で飼育した。
【0046】
(b) 投与方法および測定方法
製造例3記載の方法に従って調製した5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン[5−(3’、4’、5’−trihydroxyphenyl)−γ−valerolactone]を生理食塩水に溶解し、ラットの体重1kg当たり100mg(100mg/kg)となるように、金属製胃ゾンデを用いてSHRラットに経口投与した。投与量は1ml/匹とし、投与群として8匹のラットに経口投与した。対照群として生理食塩水1mlを8匹のラットに投与した。投与後2時間および4時間にラット用非観血式自動血圧測定装置BP―98A(ソフトロン社製)を用いて収縮期血圧を測定した。なお、予め投与前の血圧も測定した。
【0047】
(C) 統計処理方法
得られた測定結果から、投与前と投与後の収縮期血圧の差を算出した。得られた結果を平均値(mean)および標準誤差(SE)で示し、welch’s t−testにより投与前と投与後の有意差を調べた。有意水準は*p<0.05、**p<0.01とした。
【0048】
(結果)
【表2】

【0049】
5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを100mg/kgの投与量でSHRラットに経口投与した場合、投与群では投与前の収縮期血圧に対し、投与後4時間の収縮期血圧が有意に低下することが認められた。
【0050】
試験例3:SHRラットによる血圧降下試験(150mg/kg)
(a)使用動物および方法
段落[0045]記載の使用動物および方法に準じて実施した。
【0051】
(b)投与方法および測定方法
段落[0046]記載の投与方法に従い、試験を行った。但し、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン[5−(3’、4’、5’−trihydroxyphenyl)−γ−valerolactone]をラットの体重1kg当たり150mg(150mg/kg)となるよう生理食塩水に溶解して、SHRラットに経口投与を行った。供試したラットは投与群、対照群ともに7匹とした。
【0052】
(c)統計処理方法
段落[0047]記載の方法と同様の方法である。
【0053】
(結果)
【表3】

【0054】
5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを150mg/kgの投与量でラットに経口投与した場合、投与群では投与前の収縮期血圧に対し、投与後2時間および4時間の収縮期血圧が有意に低下することが認められた。
【実施例2】
【0055】
製造例:キャンディー
砂糖:33重量%、水飴:66重量%、クエン酸:0.67重量%、香料:0.21重量%、着色料:0.07重量%及び5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン0.05重量%をキャンディー処方により常法で調製し、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを含有する高血圧の予防・改善を目的としたキャンディーを得た。
【実施例3】
【0056】
製造例:清涼飲料水
果糖ブドウ糖液糖13%、クエン酸0.3%、アスコルビン酸0.03%、クエン酸ナトリウム0.02%、香料(グレープフルーツフレーバー)0.1%、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ−吉草酸0.1%に水を加えて溶解し、5リットルの飲料を調整した。溶液は100mlをガラス瓶容器に分注して、常法により殺菌を行い、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−4−ハイドロキシ−吉草酸を含有する高血圧の予防・改善を目的とした清涼飲料を得た。
【実施例4】
【0057】
製造例:無糖茶飲料
市販無糖茶飲料として緑茶(サントリー株式会社製)500mlに2−ハイドロキシフェニル酢酸[2−hydroxyphenyl acetic acid]0.1gを添加溶解後、常法にて殺菌し、2−ハイドロキシフェニル酢酸を含有する高血圧の予防・改善を目的とした無糖茶飲料を得た。
【実施例5】
【0058】
製造例:チュアブル錠剤
5−フェニル吉草酸0.5重量部、キシリトール33.8重量部、マンニトール30.6重量部、微結晶性セルロース6.1重量部、着香料14.1重量部、ステアリン酸4.3重量部、タルク0.6重量部、ソルビトール10.0重量部を混合した粉体を錠剤プレスによって圧縮し、5−フェニル吉草酸を含有する錠剤を得た。
【実施例6】
【0059】
製造例:スポーツ飲料
5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン0.1mg、ビタミンB1塩酸塩0.45mg、ビタミンB20.2mg、ビタミンC10mg、ナイアシン0.8mg、パントテン酸Ca0.22mg、クエン酸鉄アンモニウム12.57mg、クエン酸100mg及び果糖2.5gの成分にイオン交換水を加え全量を200mlとし、5−(3’、4’、5’−トリハイドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを含有するスポーツ飲料を調製した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の血圧降下剤乃至アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、医薬品や医薬部外品などのほか、健康志向型食品として、健康食品、栄養補助食品、特定保健用食品、成分調製食品等で利用することが出来るものである。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるフェニルカルボン酸、式(II)で表される5−フェニル−γ−バレロラクトンおよび式(III)で表される5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸の少なくとも1種類以上を有効成分として含有することを特徴とする血圧降下剤。

式(I)
【化1】

(式(I)のnは整数の1−7を表し、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水酸基(OH)または水素(H)を表す。)

式(II)
【化2】

(式(II)のR1、R2はそれぞれ独立に水酸基(OH)または水素(H)を表す。)
式(III)
【化3】

(式(III)のR1、R2はそれぞれ独立に水酸基(OH)または水素(H)を表す。)

【請求項2】
式(I)に示すフェニルカルボン酸のnが3〜6の整数である請求項1記載の血圧降下剤。
【請求項3】
式(I)で表されるフェニルカルボン酸、式(II)で表される5−フェニル−γ−バレロラクトンおよび式(III)で表される5−フェニル−4−ハイドロキシ吉草酸の少なくとも1種類以上を有効成分として含有することを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤。
【請求項4】
請求項1乃至2記載の血圧降下剤、あるいは請求項3記載のアンジオテンシン変換酵素阻害剤を含有する口腔適用対象物。
【請求項5】
飲食品である請求項4記載の口腔適用対象物。
【請求項6】
医薬部外品または医薬品である請求項4記載の口腔適用対象物。


【公開番号】特開2012−144532(P2012−144532A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280973(P2011−280973)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【Fターム(参考)】