説明

血小板機能を決定するための装置及び方法

【課題】遠心分析器を用いて血小板機能の信頼性の高い単純で迅速な決定を可能にする。
【解決手段】血小板機能を決定するための測定セル1において、血小板含有液体試料を収容する第1のチャンバ11と、測定セルに遠心力が作用すると第1のチャンバ1から液体試料を捕獲する第2のチャンバ12と、第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する多孔性仕切り部材13とを備え、多孔性仕切り部材13が、血小板活性に影響する少なくとも1つの可溶性物質を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固診断の分野、より正確には血小板機能診断の分野に属し、遠心分析器内で血小板機能を決定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、血管系における血液の流動性を確保し、次に血管外失血が血餅の形成によって確実に防止されるようにする生理的過程は、止血作用という用語に包含される。止血作用の調節には、複数の蛋白因子、及び、例えば血小板(栓球)のような細胞成分も関与する。血管損傷の場合、まず血小板が内皮下コラーゲン上に集積する。この粘着はフォンウィルブランド因子(VWF)のような粘着性蛋白質が媒介する。粘着過程中、血小板は活性化され、その顆粒から媒介物質を遊離するが、その結果、さらなる血小板の凝集及び活性化の増大が誘発される。これによって、一次血管壁閉塞(一次止血作用)が生じ、これが血漿凝固系のさらなる反応(二次止血作用)によって安定化されるだけである。これらの過程の調節不全は、血栓形成傾向または出血傾向を引き起こすことになり、その重症度によっては、生死にかかわる結果になる可能性がある。
【0003】
血液凝固診断においてさまざまな生体外試験法が開発されており、これらを用いて、患者の血液が適正に凝固することができるか否か、もしくは、凝固欠陥があるか否かを決定することが可能である。凝固欠陥の場合、最適な治療的処置を選択できるようにするため、この欠陥の原因に関してより多くの正確な情報を得ることが必要になる場合が多い。対象を絞ったやり方で検査することが可能な凝固系の重要な副次機能は、ほぼ血小板の機能によって決まる一次止血作用である。
【0004】
栓球または血小板の機能を決定することは、血液凝固診断における従来の目的であり、例えば循環器病の早期検出といった多様な臨床状況において、遺伝性または後天性血小板機能欠陥を診断するため、外科的介入の前に出血による合併症を除外するため、あるいは、抗血栓療法をモニタするために重要である。心筋梗塞または脳卒中のような動脈血栓塞栓症事象の予防及び治療には、血小板の凝集を抑制する薬物療法が主として用いられる。血小板凝集抑制効果のある最も広く普及している薬剤は、アセチルサリチル酸(ASA、アスピリン(登録商標))及びチエノピリジンクロピドグレル及びチクロピジンである。
【0005】
先行技術において、血小板機能を検査するさまざまな方法が開示されている。出血時間の測定は、一次止血作用を検出する生体内試験において世界的である。出血時間は、患者に小さな切り傷あるいは刺し傷を負わせ、出血が止まるまでの時間を測定することによって求められる。これは、標準化するのは難しい、主として緊急事態で一次止血作用の概要を得るために用いられる大まかな情報をもたらす試験である。血小板凝集インヒビターを摂取すると、出血時間が増すことになる。出血時間測定の欠点は、通常の出血時間の場合に血小板機能欠陥を除外することができないという点にある。
【0006】
さまざまな生体外試験法によって、血小板機能欠陥のはるかに高感度の検出が可能になる。これらの方法において、血小板の凝集は、通常、全血試料または血小板濃縮血漿(PRP)試料中において活性化物質の添加及び/または剪断力の印加で誘発され、その凝集反応が測定される。血小板凝集の誘発に用いられる、最も一般的に用いられる活性化物質は、次の通りである。ADP(アデノシン5′−二リン酸)、コラーゲン、エピネフリン(アドレナリン)、リストセチン、及び、それらのさまざまな組合せ、さらに、トロンビン、トロンビン受容体活性化蛋白質(TRAP)、及び、セロトニン。生体内における血小板凝集の重要な誘因となる剪断力を生体外で加えるため、例えば、血小板試料を撹拌するとか、血小板を導くかまたは血小板に加圧して、小径のカニューレまたはアパーチャに血小板試料を通すといったさまざまな方法が利用されている。
【0007】
ボルン血小板凝集測定法とも呼ばれる従来の光透過血小板凝集測定法(LTA)の場合、血小板濃縮血漿中における血小板凝集効率が、凝集誘発物質の存在下で血小板凝集計によって測光法的に計測される。凝集体形成の結果として、PRP試料の光透過率が増し、従って、光透過率を測定すると、例えば凝集体形成率を求めることが可能になる。光透過率による血小板凝集測定によれば、薬用に用いられる血小板凝集インヒビターの治療効果を検出することも可能になる。光透過率による血小板凝集測定の欠点は、試料材料として血小板濃縮血漿だけしか利用できないという点にある。血小板濃縮血漿は、例えば赤血球または白血球といった血液の重要な構成成分が欠乏しているだけではなく、時間のかかる、間違いの生じやすい試料調製も必要になる。
【0008】
VerifyNow(登録商標)システム(Accumetrics)は、全血試料における血小板機能の検査を可能にする、光透過率による血小板凝集測定法を発展させたものである。このシステムでは、血小板の凝集反応がフィブリノーゲンでコーティングした微小粒子の添加によって強められる。
【0009】
血小板機能を測定する全く異なる試験原理が、血小板機能分析器(PFA−100(登録商標)、PFA−200 Siemens Healthcare Diagnostics)によって実現される。これは、一次止血作用が流動条件下で、従って強い剪断力の存在下において測定される生体外全血試験において普遍的であり、自動化され、標準化されている。比較的小さい動脈血管において関連する流動条件及び剪断力をシミュレートするため、約−40mbarの負圧が特殊測定セル内において発生させられ、試料リザーバ内にあるクェン酸塩添加全血が直径約200μmの毛細管を流れる。毛細管は、負圧によって血液が通される毛細管状の中央開口(アパーチャ)が含まれている、例えば膜のような仕切り部材によって閉鎖された測定室内へ開いている。通常は、血小板凝集を誘発する1つ又は複数の活性化物質が膜の少なくともアパーチャまわりの領域に添加されて、これを通過する血液がアパーチャ領域内の凝集誘発物質と接触するようになっている。血小板の粘着と凝集が誘発される結果として、アパーチャ領域に血小板の栓(血餅)が形成され、それが膜の開口を閉じ、血流を止める。このシステムの場合、膜開口を密閉するのに要する時間が測定される。このいわゆる閉鎖時間は、血小板の機能効率と相関している。閉鎖時間に基づいて血小板機能を決定する方法に用いられる測定セルについては、例えば、特許文献1に記載がある。一例として、コラーゲン(Col)をコーティングした、さらには、ADPまたはエピネフリン(Epi)をコーティングした膜を有する測定セルが利用される。さまざまな仕切り部材及びそれらの生産及び利用については、例えば、特許文献2に記載がある。
【0010】
さらに、血小板機能を決定するもう1つの試験原理は、フィルタに血液または血小板濃縮血漿を強制的に通過させることをベースにしたものである。
【0011】
非特許文献1には、いわゆるフィルタブリーディング時間(FBT)試験の記載がある。この方法では、定圧(約150mmHg)で全血が導かれて、ポリエステル繊維フィルタ(Dacron(登録商標))に通される。血小板凝集によって、フィルタ孔が塞がれ、流量が低下する。フィルタブリーディング時間FBTは、流れ始めから、流量が1滴/30秒未満にまで降下するまでの間に経過する時間である。
【0012】
特許文献3には、Uchiyama他によるFBT試験の開発について記載がある。この場合、全血試料が、正圧によって繊維のメッシュから構成されるフィルタに通される。フィルタは、さまざまな寸法の孔を有しており、直径が10μmまでの粒子の通過を可能にする。この効果は、わずか20〜100mmHgの低圧で試料をフィルタに通すことが可能になるという点である。比較的大きい血小板凝集体は、孔を塞ぎ、次第に試料材料の通過を妨げるようになる。流量を測定するか、または、濾過した溶離液中の血小板数と濾過していない試料中の血小板数を比較すると、血小板の凝集効率、従って血小板機能を洞察することが可能になる。
【0013】
フィルタに血液または血小板濃縮血漿を強制的に通過させることをベースにした血小板機能を決定するもう1つの方法は、いわゆる、残留試験Homburg(RTH)である(非特許文献2及び3参照)。この方法では、全血または血小板濃縮血漿が遠心力(110×gで10分間)によってPorex(登録商標)フィルタユニットに通されるが、このフィルタユニットは高さが2.3mmで、孔寸法は16〜22μmである。試料をフィルタに通した前と後の血小板数の差が求められ、残留指数(RI%)が計算される。フィルタにおける血小板残留量の減少は、血小板機能の損失を示唆している。フィルタにおける血小板残留量の増加は、血小板活性の強化を示唆している。
【0014】
最後に言及した2つの方法の欠点は、実際に試験を実施するのに加えて、各試料毎に血小板数を2回測定しなければならない点にある。このため、第1に特殊な分析機器が必要になり、第2に全ての試料を数回処理しなければならない。
【0015】
自動血液凝固診断のためのさまざまな市販の計器(凝固分析器)には、遠心分離ユニットが含まれている。遠心分離ユニットは、通常、キュベットロータから構成され、キュベットロータには分光光度計が配置されており、キュベットロータの回転中に試料が測光法的に測定される。従って、遠心分離ユニットを有する市販の計器で実施可能な血小板診断法を提供することが特に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第97/34698号
【特許文献2】国際公開第96/00899号
【特許文献3】英国特許出願公開第2175691号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Uchiyama’s他、「Thrombosis Research」、1983年、第31巻、p.99〜116
【非特許文献2】Krischek,B.他、「Seminars in Thrombosis and Hemostasis」、2005年、第31巻、第4号、p.449〜457
【非特許文献3】Krischek,B.他、「Seminars in Thrombosis and Hemostasis」、2005年、第31巻、第4号、p.458〜463
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従って、本発明の課題は、遠心分析器を用いて血小板機能の信頼性の高い単純で迅速な決定を可能にする、血小板機能を決定するための装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は、独立請求項の技術的特徴によって解決される。独立請求項には、本発明のさらなる実施形態が詳細に記載されている。
【0020】
本発明は、血小板機能を決定するための測定セルに関し、測定セルには、下記の構成要素、つまり
a.血小板含有液体試料を収容する第1のチャンバと、
b.測定セルに遠心力が作用すると第1のチャンバからの液体試料を捕獲する第2のチャンバと、
c.第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する多孔性仕切り部材とが含まれ、
仕切り部材には、血小板活性に影響する少なくとも1つの可溶性物質が含まれている。
【0021】
用語「栓球」と「血小板」とは、同義語として用いられている。
【0022】
用語「血小板含有液体試料」は、人間または動物の血小板を含有する液体試料、特に、全血、血小板濃縮血漿(PRP)、または、他の血小板標本を意味するものと理解すべきである。全血試料は、人間または動物の静脈から新しく採取された抗凝固処理血液であると望ましい。全血は抗凝固剤の添加により抗凝固されると望ましい。下記は抗凝固に用いるのに適している。例えば3.2または3.8%緩衝クェン酸ナトリウム溶液のような緩衝カルシウム結合クェン酸溶液、EDTA、ヘパリン、及び、例えばヒルジン、PPACK(D−Phe−Pro−Arg−クロロメチルケトン、HCl)アルガトロバン、及び、メラガトランのような天然または合成の直接トロンビンインヒビター、または、例えばアンチスタシン、ダニ用抗凝固ペプチド、ヤギン、ドラキュリン、GGACK(H−Glu−Glu−Arg−クロロメチルケトン)、ジアミジノ第Xa因子インヒビター、及び、モノベンザミジン第Xa因子インヒビターのような天然または合成の直接第Xa因子インヒビター。
【0023】
用語「多孔性仕切り部材」は、第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに完全に分離し、個々の血液細胞の通過を許すが、血液細胞凝集体、特に、凝集した血小板からなる血小板凝集体の通過を阻止する材料から構成されたデバイダを意味するものと理解すべきである。このため、この材料は、2〜20μmの孔サイズを有すると好ましいが、特に好ましくは5μmである。さらに、仕切り部材は無傷のものである、すなわち、いかなるタイプの貫通孔、切り欠き、または、開口もないものである。
【0024】
多孔性仕切り部材には、血小板活性に影響を及ぼし、血小板含有液体試料を仕切り部材に接触させると、その液体試料に溶融可能な少なくとも1つの物質が含まれている。
【0025】
仕切り部材は、膜の形態で具現化するのが望ましい。望ましい材料は液体吸収剤であり、従って、血小板活性に影響を及ぼす物質は溶解して用いることが可能である。特に望ましい材料は、セルロースエステル、セラミック、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。望ましい物質で濡らすか/に浸した多孔性仕切り部材は乾燥させるのが望ましい。液体試料が仕切り部材に接触する結果として、物質が仕切り部材から溶解し、血小板含有試料と混合する。
【0026】
用語「血小板活性に影響を及ぼす物質」は、血小板の凝集を誘発または抑制することが可能である物質を含む。
【0027】
実施形態の1つでは、多孔性仕切り部材に、好ましくは下記グループからの少なくとも1つの血小板活性化物質が含まれている。ADP(アデノシン5′−二リン酸塩)、2−MeSADP(2−メチルチオアデノシン 5′−二リン酸)、コラーゲン、エピネフリン、リストセチン、トロンビン、TRAP(トロンビン受容体活性化蛋白質)、アラキドン酸、U46619((Z)−7−[(1S、4R、5R、6S)−5−[(E、3S)−3−ヒドロキシオクト−1−エニル]−3−オキサビシクロ[2.2.1]ペンタ−6−イル]ヘプト−5−エン酸)、PMA(ホルボール12−ミリスタート13−アセタート)、及び、セロトニン。
【0028】
もう1つの実施形態では、多孔性仕切り部材に、好ましくは下記グループからの少なくとも1つの血小板インヒビターが含まれている。プロスタグランジン E1(PGE1)、プロスタグランジンI2、フォルスコリン、イロプロスト、及び、シカプロスト。
【0029】
もう1つの実施形態では、仕切り部材に、血小板活性化物質グループ及び血小板インヒビターグループからの1つ又は複数の物質を含むことが可能である。一例として、ADPとPGE1の組合せが、例えばクロピドグレルまたはチクロピジンのような、P2Y(12)拮抗剤のグループからの抗血栓治療薬で治療中の患者から得られた試料中において血小板活性を測定するのに特に適している。当業者には、どの物質または物質の組合せを用いて、血小板活性を測定することができるかが明らかである。
【0030】
本発明による測定セルは、仕切り部材によって第1のチャンバと第2のチャンバとが互いに完全に(すなわち中空体の直径全体にわたって)分離されるように、多孔性仕切り部材をぴったりと挿入することが可能な、一体型の好ましくは円筒状または円錐状の中空体であることが望ましい。一体型中空体は、内径が約100μm〜1cmの管が望ましい。第1のチャンバは血小板含有液体試料を収容する働きをし、このために開口を有している。第2のチャンバは、測定セルに遠心力が作用すると第1のチャンバから仕切り部材を通過してくる液体試料を捕獲する働きをする。
【0031】
代替案として、本発明による測定セルは、片側が開いていて、第2のチャンバを形成する第1の中空体と、両側が開いていて、第1のチャンバを形成する第2の中空体とから構成される2部分からなる反応槽とすることが可能である。2つの中空体は、第2の中空体の開口が第1の中空体の開口上に位置するように相互接続される。多孔性仕切り部材は、これら2つの中空体間に正確に取り付けられるか、あるいは、第1の中空体の開口内もしくは第1の中空体と向かい合った第2の中空体の開口内に取り付けられる。
【0032】
一体型反応槽の構成部分(管)または複数部分からなる反応槽の構成部分(中空体)は、光透過性材料、好ましくはプラスチックまたはガラスから構成されるのが望ましい。
【0033】
本発明による測定セルの望ましい実施形態によれば、第2のチャンバは、多孔性仕切り部材から見て第2のチャンバの長手軸線に沿って片側の近位および片側の遠位を有し、第2のチャンバの内部に、第2のチャンバのスペースを第1の部分と第2の部分とに細分する手段を有している。第1の部分は、仕切り部材を通過する試料液を捕獲して、輸送する働きをする。試料液は、第2のチャンバの片側の近位から片側の遠位に輸送される。第2の部分は、第2のチャンバ内に捕獲された試料液の液量を測定する働きをする。第1の部分と第2の部分は、捕獲されて輸送される試料液を第1の部分から第2の部分へ送り込むことができるように、第2のチャンバの片側の遠位に相互接続される。第2のチャンバ内のスペースを第1の部分(捕獲領域)と第2の部分(測定領域)とに細分することは、遠心分離中に仕切り部材を通過する試料液が第2のチャンバ全体を無制御に濡らすことがない利点がある。仕切り部材を通過する試料液が第2のチャンバ全体を無制御に濡らすと、第2の測定チャンバにおける充填レベルまたは別のパラメータの測定に誤りを生じさせる虞れがある。第2のチャンバ内のスペースを第1の部分(捕獲領域)と第2の部分(測定領域)に細分することによって、的確に試料液を捕獲し、集めて、第2のチャンバの遠位領域に輸送することが確実になり、その結果、試料液が測定セル先端の第2の部分(測定領域)において底部(遠位)から上部(近位)まで確実に溜まるようになる。
【0034】
第2のチャンバ内のスペースを第1の部分と第2の部分とに細分する手段には、さまざまな設計の可能性がある。
【0035】
1つの単純な実施形態では、第2のチャンバ内のスペースを第1の部分と第2の部分とに細分する手段は、多孔性仕切り部材に対して角度のついた面を有することもでき、あるいは、ただ単純に第2のチャンバの片側の近位から片側の遠位内に延びる角度つきの面を有する連続傾斜部材から構成されていてもよい。
【0036】
もう1つの実施形態では、第2のチャンバ内のスペースを第1の部分と第2の部分とに細分する手段は、多孔性仕切り部材に対して角度のついた面を有する第1の部分区画と、この第1の部分区画に続いて、第2のチャンバ内のスペースを区切る壁に対してほぼ平行に延び、前記壁と共に管状構造を形成する第2の部分区画を有しており、この管状構造は第2のチャンバの片側の遠位内に延びている。この実施形態では、第2のチャンバの第1の部分(捕獲領域)のスペースが第2のチャンバ内において最小に縮小され、第2のチャンバ内のできるだけ大きいスペースを第2の部分(測定領域)のために利用可能になるので有利である。例えば、これは、可能性のある最大量の利用可能領域が、測定セルに配置される測定装置のために利用可能になる点で有利である。
【0037】
もう1つの実施形態では、第2のチャンバ内のスペースを第1の部分と第2の部分とに細分する手段は、漏斗形状を有し、漏斗形状手段の管状領域が第2のチャンバの片側の遠位内に延びている。
【0038】
第2のチャンバ内のスペースを第1の部分と第2の部分とに細分する手段を有する測定セルの1つの実施形態は、第2のチャンバの第2の部分(測定領域)が、充填レベルを電気的に測定する手段、好ましくは複数の電極対を有するように設計される。
【0039】
本発明による測定セルのもう1つの実施形態は、第2のチャンバ内のスペースを第1の部分と第2の部分と第3の部分とに細分する手段を有している。第1の部分(捕獲領域)は、仕切り部材を通過する試料液を捕獲し、第2のチャンバの長手軸線に沿って片側の近位から片側の遠位に輸送する働きをする。第1の部分は、第2のチャンバの片側の遠位において第2の部分に接続され、捕獲されて輸送される試料液を第1の部分から第2の部分に送り込むことができる。第2の部分(測定領域)は、第2のチャンバ内に捕獲される試料液の流速を測定する働きをする。第2の部分(測定領域)は、第2のチャンバの片側の遠位から片側の近位に向かって立ち上がり、その端部に第3の部分に接続する開口を有する毛細管を構成している。第3の部分(オーバフロー領域)は、第2の部分からの試料液のためのオーバフロー室の働きをする。測定セルのこの実施形態は、試料液の流速の測定に基づいて血小板機能を決定するのに特に適している。
【0040】
本発明のもう1つの課題は、遠心分析器としての、本発明による少なくとも2つの測定セルを有する装置に関する。その実施形態に応じて、このような装置は100個までの測定セルを有することが可能である。このような装置の利点は、いくつかの血小板機能決定を同時に実施できることにある。そのプロセスにおいて、1つの試料の複数のアリコットまたはいくつかの異なる試料のアリコットを同時に決定することが可能である。複数の測定セルは、その構造設計に関して、または、血小板活性に影響する物質による仕切り部材のコーティングに関して同じにすることも、あるいは異なるようにすることも可能である。
【0041】
遠心分析器としての、本発明による少なくとも2つの測定セルを有する装置の実施形態の1つは、測定セルが弧状にかつ放射状に配置されるディスクである。下記文章中において、このような装置は測定セルロータとも呼ばれる。
【0042】
測定セルロータの1つの特殊な実施形態では、測定セルはその長手軸線に沿って直線形状ではなく、湾曲した形状を有している。この利点は、測定セルロータの回転中、測定セル内において一定流量状態が支配的になる点にある。測定セルの少なくとも仕切り部材を含む領域は、測定セルの残りの領域より小さい直径を有するのが望ましい。この領域は、約50〜500μmの直径を有するのが望ましい。
【0043】
本発明による測定セルロータは、例えば、光透過性プラスチックから構成し、かつ、上部および部から組み立てることもでき、あるいは、そのいずれかとすることも可能である。測定セルロータを組み立てた状態で互いに向かい合う上部と下部の面は陥凹部及び/または隆起部を有し、それによって所望の測定セル形状を形成することが可能である。上部には、各測定セル毎にピペット孔が含まれており、それを通して測定セルの第1のチャンバに試料材料を注入することが可能である。上部と下部を組み立てる前に、多孔性仕切り部材は、個別ユニットとして全ての測定セルに別個に挿入することもでき、あるいは、上部と下部の間に同心配置され、その結果ロータの全ての測定セルを通る適正な多孔性材料製の連続ストリップの形態で挿入することも可能である。血小板活性に影響する1つ又は複数の物質による多孔性材料のコーティングは、個別仕切り部材または連続ストリップの挿入前に行うこともでき、あるいは、その場で、すなわち、仕切り部材または連続ストリップが既に上部または下部に結合された状態にある時に実施することも可能である。
【0044】
少なくとも部分的に光透過性材料から構成される測定セルロータによって、第2のチャンバ内に捕獲された液体の量を測定するか、あるいは、測光法によって仕切り部材を通る試料液の流速を測定することが可能になる。このため、測定セルロータの上方に1つ又は複数の光源、好ましくは発光ダイオード(LED)を配置し、測定セルロータの下方にそれぞれ関連する光検出器を配置して(またはこの逆にして)、光がビームとなって回転面に対して垂直に測定セルの測定領域を通ることができるようにするのが望ましい。
【0045】
本発明のもう1つの課題は、本発明による1つの測定セルまたは本発明による少なくとも2つの測定セルを含む装置が利用される、血小板機能を決定する方法である。この方法には、少なくとも
i.本発明による測定セルの第1のチャンバに血小板含有液体試料を充填するステップと、
ii.液体試料を充填した測定セルに遠心力を加えるステップと、
iii.第2のチャンバ内に捕獲された液体量を測定するか、または、仕切り部材を通る試料液の流速を測定するステップが
含まれている。
【0046】
第1のチャンバに作用する遠心力の結果として第1のチャンバから仕切り部材を通り、第2のチャンバ内に捕獲されている液体の量(または液体体積)は、血小板機能と逆相関を有している。
【0047】
仕切り部材を通り第2のチャンバ内に捕獲されている試料液の流速も、血小板機能と逆相関を有している。
【0048】
血小板機能が弱まる結果として血小板の凝集が減少し、仕切り部材の孔の閉塞が減ると、所定の時間間隔内に仕切り部材を通過できる試料液の量が増加し、従って、流速または流量が増し、それに伴って第2のチャンバ内に捕獲される液体量も増加する。
【0049】
血小板機能が強まる結果として血小板の凝集が増加し、仕切り部材の孔の閉塞が増えると、所定の時間間隔内に仕切り部材を通過できる試料液の量が減少し、従って、流速または流量が減り、それに伴って第2のチャンバ内に捕獲される液体量も減少する。
【0050】
本発明によれば、測定セルに加えられる遠心力は、50〜2000×gの範囲内であると望ましい。遠心力は、従来の遠心力ユニットによって加えることが可能である。
【0051】
仕切り部材を通過し第2のチャンバ内に捕獲されている液体の量は、さまざまな方法で測定可能である。
【0052】
第1の実施形態では、第2のチャンバ内に捕獲される液体の量は測光法的に測定される。このため、本発明による測定セルにおける第2のチャンバの少なくとも1つの部分区画は、光透過性材料から構成される。さらに、複数の光源、好ましくは発光ダイオード(LED)と、それぞれの光源に対応した複数の光検出器が、第2のチャンバの長手軸線に沿って、また、本発明による測定セルの回転面または本発明による測定セルロータの回転面に対して垂直に配置されている。測定中、光源が光を放出し、その強度Iが、それぞれ光源に割り当てられた検出器によって測定される。試料液が光源と検出器との間に位置する場合、光強度は低下する。吸光度E=−log(It/I0)(It=時間tにおける光強度、I0=時間0における光強度)は、光源と検出器との間の吸光材料の量に比例する。第2のチャンバの長手軸線に対する光源の相対的位置決めによって、仕切り部材を通って流れる試料体積に関する表示が可能になる。光源−検出器対の数によって、種々の体積の識別能が規定される。最も単純な場合(n=3)、正常か異常かに関して計数的表示ができるだけであり、n=6の場合、5つの体積を識別することが可能になる。所定のポイントにおける吸光度が規定のしきい値を超えるか(ビーム光路内の試料液)、あるいはこのしきい値未満か(ビーム光路内の空気)が測定される。容器の底部から検出器までの距離と容器内の液体量との間には単純な関係がある。検出器が、吸光度の大きい手段を有する半径rの円筒形容器の底部から距離hの位置にある場合、容器内の液体の最少量はr2πhで表わされる。経時での吸光度を測定すると、時間依存的に液体量を求めることが可能になる{V=V(t)}。時間に関して液体の総量を数学的に微分する(dV(t)/dt)結果として、時間依存性流速が求められる。
【0053】
第2の実施形態では、第2のチャンバ内に捕獲される液体量は、電気的に求められる。このため、充填レベルを検出するためにさまざまな長さを有する複数の電極対が、第2の試験チャンバに配置される。第2のチャンバ内の液体体積が増すにつれて、電極が試料液とますます接触する。容器の底部から電極までの距離と容器内の液体量との間には単純な関係がある。電極の数によって、種々の体積の識別能が規定される。最も単純な場合(n=3)、正常か異常かに関して計数的表示ができるだけであり、n=6の場合、5つの体積を識別することが可能になる。最も単純な場合、測定は導電率によって行われる(オーム測定)。電極間に空気が存在し、電極間に動作電位が存在する場合、空気は電気絶縁体なので、電流は流れない。しかしながら、チャンバが試料液で充填されると、溶解塩によって血液または血漿が導電性になるので、その結果、電極間のそれぞれの回路を閉じることが可能になる。
【0054】
第3の実施形態では、流速がレーザドップラ風速測定法(LDA)によって測定される。このため、本発明による測定セルの第2のチャンバの少なくとも1つの部分区画は、光透過性材料から構成される。レーザビームを2つのビームに分割し、それらのアライメントをとって、第2のチャンバのある領域で交差するようにする。ビームが交差する測定ポイントに干渉パターンが生じる。検出器が、流動する試料液によって生じる2つの散乱波を測定する。測定信号は2つの散乱波の重ね合わせであり、その結果、ドップラ効果によってうなりが生じ、そのうなり周波数(ドップラ周波数)は流動する試料液の速度に比例する。
【0055】
第2のチャンバ内に捕獲された液体の量は、所定の時間間隔にわたって連続して測定することが可能である。このため、仕切り部材を通る時間依存性流量が測定される。
【0056】
代替案として、第2のチャンバ内に捕獲された液体の量は、定められた時間に1回測定することも可能である。一例として、測定は終点を測定することによって実施可能である。このため、ある特定時間に仕切り部材を通過した液体の総量が求められる。
【0057】
未知の試料における血小板機能は、その試料からの測定結果と既知の血小板活性に関する1つ又は複数の対照の測定結果とを比較することによって決定するのが望ましい。対照/較正物質は、健康な人間から供与された血液/血漿の集合体が望ましい。中央値は、この集合体からの試料について測定された測定結果から求めるのが望ましく、未知の試料からの測定結果がそれに関係付けられる。
【0058】
仕切り部材を通過する試料液の量は、血小板機能に反比例するので、第2のチャンバ内に捕獲される液体量Vの逆数(1/V)が、血小板機能の尺度として特に適している。未知の試料の逆数1/Vがあらかじめ設定された中央しきい値未満の場合、それは血小板機能の弱まった試料であり、出血の恐れがある。未知の試料の逆数1/Vがあらかじめ設定された中央しきい値を超える場合、それは血小板機能の強まった試料であり、血栓症の恐れがある。
【0059】
本発明は、後述する例示の図を用いてさらに詳細に説明される。ここでは、それらの図が説明的な性格のものであって、本発明の限定を意図したものでは全くない点に留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による測定セルの1つの実施形態を示す図である。
【図2】本発明による測定セルのもう1つの実施形態を示す図である。
【図3】本発明による測定セルのもう1つの実施形態を示す図である。
【図4】本発明による測定セルのもう1つの実施形態を示す図である。
【図5】本発明による測定セルのもう1つの実施形態を示す図である。
【図6】複数の測定セルが弧状に配置された本発明による測定セルロータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1
図1には、本発明による測定セル(1)の1つの実施形態が示されている。測定セル(1)には、血小板含有液体試料を収容する第1のチャンバ(11)と、測定セルに遠心力が作用すると第1のチャンバから液体試料を捕獲する第2のチャンバ(12)とが含まれている。測定セルには、さらに、中空体の直径全体にわたって第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する多孔性仕切り部材(13)も含まれている。仕切り部材(13)には、血小板活性に影響する少なくとも1つの可溶性物質が含まれている。
【0062】
図2
図2には、本発明による測定セル(2)のもう1つの実施形態が示されている。測定セル(2)には、血小板含有液体試料を収容する第1のチャンバ(21)と、測定セルに遠心力が作用すると第1のチャンバから液体試料を捕獲する第2のチャンバ(22)とが含まれている。測定セルには、さらに、中空体の直径全体にわたって第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する多孔性仕切り部材(23)も含まれている。仕切り部材(23)には、血小板活性に影響する少なくとも1つの可溶性物質が含まれている。
【0063】
さらに、ここに示す測定セル(2)は、第2のチャンバ(22)内に、第2のチャンバ内のスペースを第1の部分(221)と第2の部分(222)とに細分する傾斜板状部材の形態をなす手段(24)を含んでいる。
【0064】
第1の部分(221)は、仕切り部材を通過する試料液を捕獲して、輸送する働きをする。第2の部分(222)は、第2のチャンバ(22)内に捕獲された試料液(29)の液量を測定する働きをする。第1の部分と第2の部分は、測定セルの先端近くにおいてのみ、捕獲されて輸送される試料液を第1の部分から第2の部分へ送り込むことができるように、第2のチャンバの片側の遠位(すなわち、鎖線の下方)で相互接続される。この利点は、遠心分離中に仕切り部材(23)を通過する試料液が、第2のチャンバ全体(24)を無制御に濡らすことがなく、試料液が、的確に捕獲され、集められて、第2のチャンバの遠位領域に輸送される点にある。輸送された試料液(29)は、その結果、第2のチャンバ(22)内に、特に、測定セル先端の底部(遠位)から上部(近位)まで溜まることになる。
【0065】
さらに、ここに示す測定セル(2)には、充填レベルを検出するために長さの異なる複数の電極(25)が含まれている。第2のチャンバ(22)内における、特に、第2のチャンバ(22)の第2の部分(222)内における液体レベルが上昇するにつれて、試料液に接触する電極(25)の個数がますます多くなる。
【0066】
図3
図3には、本発明による測定セル(3)のもう1つの実施形態が示されている。測定セル(3)には、血小板含有液体試料を収容する第1のチャンバ(31)と、測定セルに遠心力が作用すると第1のチャンバから液体試料を捕獲する第2のチャンバ(32)とが含まれている。測定セルには、さらに、中空体の直径全体にわたって第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する多孔性仕切り部材(33)も含まれている。仕切り部材(33)には、血小板活性に影響する少なくとも1つの可溶性物質が含まれている。
【0067】
さらに、ここに示す測定セル(3)は、第2のチャンバ(32)内に、第2のチャンバ内のスペースを第1の部分(321)と第2の部分(322)とに細分する手段(34)を含んでいる。
【0068】
第2のチャンバ(32)内のスペースを第1の部分と第2の部分とに細分する手段(34)は、多孔性仕切り部材に対してある角度をなす面を有する第1の部分区画(341)を具備している。この手段(34)は、さらに、第1の部分区画(341)に続いて、第2のチャンバ(32)内のスペースを区切る壁(36)に対してほぼ平行に延び、前記壁と共に管状構造を形成する第2の部分区画(342)を有しており、この管状構造は第2のチャンバ(32)の片側の遠位内に延びている。この実施形態では、第2のチャンバの第1の部分(321)つまり捕獲領域のスペースが第2のチャンバ(32)内において最小に縮小され、第2のチャンバ(32)内のできるだけ大きいスペースを第2の部分(322)つまり測定領域のために利用可能になるので有利である。例えば、これは、可能性のある最大量の利用可能領域が、測定セルに配置される測定装置のために利用可能になるという点で有利である。
【0069】
さらに、ここに示す測定セル(3)には、充填レベルを検出するために長さの異なる複数の電極(35)が含まれている。第2のチャンバ(32)内における、特に、第2のチャンバ(32)の第2の部分(322)における液体レベルが上昇するにつれて、試料液(39)に接触する電極(35)の個数がますます多くなる。
【0070】
図4
図4には、本発明による測定セル(4)のもう1つの実施形態が示されている。測定セル(4)には、血小板含有液体試料を収容する第1のチャンバ(41)と、測定セルに遠心力が作用すると第1のチャンバから液体試料を捕獲する第2のチャンバ(42)とが含まれている。測定セルには、さらに、中空体の直径全体にわたって第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する多孔性仕切り部材(43)も含まれている。仕切り部材(43)には、血小板活性に影響する少なくとも1つの可溶性物質が含まれている。
【0071】
さらに、ここに示す測定セル(4)は、第2のチャンバ(42)内に、第2のチャンバ内のスペースを第1の部分(421)と第2の部分(422)とに細分する手段(44)を含んでいる。
【0072】
第2のチャンバ(42)内のスペースを第1の部分(421)と第2の部分(422)とに細分する手段(44)は、この場合、漏斗形状を有し、漏斗形状手段の管状領域が第2のチャンバ(42)の片側の遠位内に延びている。
【0073】
図4のAに示す測定セル(4)には、充填レベルを検出するために長さの異なる複数の電極(45)が含まれている。
【0074】
図4のBに示す測定セル(4)において、漏斗形状手段(44)の少なくとも管状領域は、測定セルの壁であり、光透過性材料から構成されている。測定セルのこの実施形態は、測定セルの第2のチャンバ内における試料液(49)の流速を測定するのに特に適している。従って、流速は、漏斗形状手段(44)の管状領域において、測定セルの長手軸線に沿って配置された複数の光源と複数の光検出器(不図示)を用いて測光法的に測定される。代替案として、漏斗形状手段(44)の管状領域内の流速は、レーザドップラ風速測定法(LDA)によって測定することも可能である。
【0075】
図5
図5には、本発明による測定セル(5)のもう1つの実施形態が示されている。測定セル(5)には、血小板含有液体試料を収容する第1のチャンバ(51)と、測定セルに遠心力が作用すると第1のチャンバから液体試料を捕獲する第2のチャンバ(52)とが含まれている。測定セルには、さらに、中空体の直径全体にわたって第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する多孔性仕切り部材(53)も含まれている。仕切り部材(53)には、血小板活性に影響する少なくとも1つの可溶性物質が含まれている。
【0076】
さらに、ここに示す測定セル(5)は、第2のチャンバ(52)内に、第2のチャンバ内のスペースを第1の部分(521)と第2の部分(522)と第3の部分(523)とに細分する手段(54)を有している。第1の部分(521)つまり捕獲領域は、仕切り部材を通過する試料液を捕獲し、第2のチャンバ(52)の長手軸線に沿って片側の近位から片側の遠位に輸送する働きをする。第1の部分(521)は、第2のチャンバ(52)の片側の遠位において第2の部分(522)に接続されており、捕獲されて輸送される試料液を第1の部分(521)から第2の部分(522)に送り込むことができる。第2の部分(522)つまり測定領域は、第2のチャンバ(52)内に捕獲された試料液の流速を測定する働きをする。ここで、第2の部分(522)は、第2のチャンバ(52)の片側の遠位から片側の近位に向かって立ち上がり、その端部に第3の部分(523)に接続する開口(57)を有する毛細管を構成している。第3の部分(523)つまりオーバフロー領域は、第2の部分(522)からの試料液(59)のためのオーバフロー室の働きをする。測定セルのこの実施形態は、試料液の流速の測定に基づいて血小板機能を決定するのに特に適している。
【0077】
図6
図6には、複数の測定セル(6)が弧状に配置された本発明による測定セルロータ(7)の平面図が示されているが、各測定セル(6)には、血小板含有液体試料を収容する第1のチャンバ(61)と、測定セルに遠心力が作用すると第1のチャンバから液体試料を捕獲する第2のチャンバ(62)とが含まれている。測定セルには、さらに、中空体の直径全体にわたって第1のチャンバと第2のチャンバとを互いに分離する多孔性仕切り部材(63)も含まれている。仕切り部材(63)には、血小板活性に影響する少なくとも1つの可溶性物質が含まれている。
【0078】
測定セル(6)は、その長手軸線に沿って湾曲した形状を有している。測定セル(6)において仕切り部材(63)を含む領域は、測定セルの残りの領域よりも直径が小さい。測定セルロータ(7)の上側には、ピペット孔(68)が設けられており、それを通して測定セル(6)の第1のチャンバ(61)に試料材料を注入することが可能である。矢印は測定セルロータ(7)の回転方向を示している。
【0079】
下記の典型的な実施形態は、本発明による方法を例証する働きをするものであって、限定するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0080】
例1:本発明による全血試料における血小板活性の決定
本発明による測定セルが下記のように作製された:円錐形状の遠心分離管(透明プラスチックで造られた50mlのFalcon管、Becton Dickson製)がほぼ中ほどで切断された。PVDF膜を有する使い捨てのフィルタアタッチメント(Millipore Millex(登録商標)−SV、孔寸法5μm)が切断したFalcon管の開口に取り付けられた。本発明に従い、コラーゲンとエピネフリンを含む(それぞれ、0.5mg/ml)血小板活性化物質混合物を用いてPDVF膜の前処理が行われた。このため、Millipore Millex(登録商標)−SV使い捨てフィルタアタッチメントに0.8mlのこの混合物を塗布し、その後空気乾燥させた。対照として、Millipore Millex(登録商標)−SV使い捨てフィルタアタッチメントを0.8mlの水で濡らし、その後空気乾燥させた。次に、ピストン及び注射針のないプラスチック製の使い捨て注射器(Omnifix(登録商標)、5ml、B.Braun Melsungen AG)が、切断したFalcon管に取り付けられたMillipore Millex(登録商標)−SV使い捨てフィルタアタッチメントに取り付けられた。
【0081】
次に、1.5mlの正常なクェン酸塩添加血が測定セルの第1のチャンバすなわち使い捨て注射器に注入され、遠心分離機(Rotixa R50、Andreas Hettich GmbH & Co.KG)によって、22℃で50×gの遠心作用が75秒間にわたって測定セルに加えられた。第2のチャンバすなわち切断したFalcon管で捕獲された液体の量は、容積測定法で求められた。
【0082】
表1から明らかなように、血小板活性化物質、コラーゲン、及び、エピネフリンを含浸させた仕切り部材を用いる結果として、血液試料に誘発される血小板凝集のために試料液の流量が低減することになる。
【0083】
【表1】

【符号の説明】
【0084】
1、2、3、4、5、6 測定セル
7 測定セルロータ
11、21、31、41、51、61 試料を収容する第1のチャンバ
12、22、32、42、52、62 第1のチャンバからの試料を捕獲する第2のチャンバ
13、23、33、43、53、63 仕切り部材
24、34、44、54 第2のチャンバ内のスペースを細分する手段
221、321、421、521 第2のチャンバの第1の部分(捕獲領域)
222、322、422、522 第2のチャンバの第2の部分(測定領域)
25、35、45 電極
29、39、49、59 試料液
341 第2のチャンバ内のスペースを細分する手段の第1の区画
342 第2のチャンバ内のスペースを細分する手段の第2の区画
36 壁
523 第2のチャンバの第3の部分(オーバフロー領域)
57 開口
68 ピペット孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板機能を決定するための測定セル(1、2、3、4、5、6)であって、
a.血小板含有液体試料を収容する第1のチャンバ(11、21、31、41、51、61)と、
b.前記測定セルに遠心力が作用すると前記第1のチャンバから前記液体試料を捕獲する第2のチャンバ(12、22、32、42、52、62)と、
c.前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとを互いに分離する多孔性仕切り部材(13、23、33、43、53、63)とが含まれ、
前記多孔性仕切り部材(13、23、33、43、53、63)は、前記血小板の活性度に影響する少なくとも1つの可溶性物質を含むことを特徴とする測定セル。
【請求項2】
前記血小板活性に影響する前記少なくとも1つの可溶性物質が、血小板活性化物質、好ましくは、ADP、2−MeSADP、コラーゲン、エピネフリン、リストセチン、トロンビン、TRAP、アラキドン酸、U46619、PMA、及び、セロトニンのグループからのものである請求項1に記載の測定セル。
【請求項3】
前記血小板活性に影響する前記少なくとも1つの可溶性物質が、血小板インヒビター、好ましくは、プロスタグランジン E1、プロスタグランジンI2、フォルスコリン、イロプロスト、及び、シカプロストのグループからのものである請求項1に記載の測定セル。
【請求項4】
前記多孔性仕切り部材は、さらに塩化カルシウムイオンを含む請求項1から3のいずれか1つに記載の測定セル。
【請求項5】
前記多孔性仕切り部材(13、23、33、43、53、63)が、2〜20μm、好ましくは5μmの孔寸法を有する請求項1から4のいずれか1つに記載の測定セル。
【請求項6】
前記第2のチャンバ(12、22、32、42、52、62)の少なくとも1つの部分区画が、光透過性材料から構成される請求項1から5のいずれか1つに記載の測定セル。
【請求項7】
充填レベルを電気的に測定するために、前記第2のチャンバ(12、22、32、42、52、62)に複数の電極対(25、35、45)が配置されている請求項1から6のいずれか1つに記載の測定セル。
【請求項8】
前記第2のチャンバ(22、32、42、52)が、前記多孔性仕切り部材から始まり、前記第2のチャンバの長手軸線に沿って片側の近位および片側の遠位を有し、
前記第2のチャンバ(22、32、42、52)が、その内部に、前記第2のチャンバ内のスペースを第1の部分(221、321、421、521)と第2の部分(222、322、422、522)とに細分する手段(24、34、44、54)を有し、
− 前記第1の部分が、前記多孔性仕切り部材を通過する試料液を捕獲して、輸送する働きをし、
− 前記第2の部分が、前記第2のチャンバ内に捕獲された前記試料液の液量を測定する働きをし、
− 前記第1の部分と第2の部分が、前記捕獲されて輸送される試料液を前記第1の部分から前記第2の部分へ送り込むことができるように、前記第2のチャンバの片側の遠位で相互接続されている
請求項1から7のいずれか1つに記載の測定セル(2、3、4、5)。
【請求項9】
前記第2のチャンバ(22)内のスペースを前記第1の部分(221)と第2の部分(222)とに細分する前記手段(24)が、前記多孔性仕切り部材に対して角度をなし前記第2のチャンバの前記片側の近位から前記片側の遠位内に延びる平面を有する請求項8に記載の測定セル(2)。
【請求項10】
前記第2のチャンバ(32)内のスペースを前記第1の部分(321)と第2の部分(322)とに細分する前記手段(34)が、
− 前記多孔性仕切り部材に対して角度をなす平面を持つ第1の部分区画(341)を有し、
− 前記第1の部分区画(341)に続いて、前記第2のチャンバ内のスペースを区切る壁(36)に対してほぼ平行に延び、前記壁(36)と共に管状構造を形成する第2の部分区画(342)を有し、この管状構造が前記第2のチャンバの片側の遠位内に延びる
請求項8に記載の測定セル(3)。
【請求項11】
前記第2のチャンバ(42)内のスペースを前記第1の部分(421)と第2の部分(422)とに細分する前記手段(44)が、漏斗形状を有し、その漏斗形状手段の管状領域が前記第2のチャンバの片側の遠位内に延びている請求項8に記載の測定セル(4)。
【請求項12】
前記第2のチャンバにおいて前記第2のチャンバ内に捕獲された前記試料液の液量を測定する働きをする前記第2の部分(222、322、422)が、充填レベルを電気的に測定する手段、好ましくは複数の電極対(25、35、45)を有する請求項8から11のいずれか1つに記載の測定セル(2、3、4)。
【請求項13】
前記第2のチャンバ(52)が、前記多孔性仕切り部材から始まり、前記第2のチャンバの長手軸線に沿って片側の近位および片側の遠位を有し、
前記第2のチャンバ(52)が、その内部に、前記第2のチャンバ内のスペースを第1の部分(521)と第2の部分(522)と第3の部分(523)とに細分する手段(54)を有し、
− 前記第1の部分(521)が前記多孔性仕切り部材(53)を通過する試料液を捕獲して、輸送する働きをし、前記試料液が前記第2のチャンバ(52)の長手軸線に沿って前記片側の近位から前記片側の遠位に送り込まれ、
− 前記第2の部分(522)が前記第2のチャンバ(52)内に捕獲された前記試料液(59)の流速を測定する働きをし、
− 前記第3の部分(523)が前記第2の部分(522)からの前記試料液のためのオーバフロー室の働きをし、
− 前記第1の部分(521)と第2の部分(522)とが、捕獲されて輸送される前記試料液を前記第1の部分(521)から前記第2の部分(522)へ送り込むことができるように、前記第2のチャンバの前記片側の遠位で相互接続され、
− 前記第2の部分(522)が、前記第2のチャンバの片側の遠位から片側の近位の方向に立ち上がり、その端部に前記第3の部分(523)に接続する開口(57)を有する毛細管を構成している
請求項1から6のいずれか1つに記載の測定セル(5)。
【請求項14】
複数の試料の血小板機能を同時に決定するための装置(7)であって、請求項1から13のいずれか1つに記載の少なくとも2つの測定セル(6)を含む装置(7)。
【請求項15】
血小板機能を決定する方法であって、
i.請求項1から13のいずれか1つに記載の測定セルの第1のチャンバに血小板含有液体試料を充填するステップと、
ii.前記液体試料を充填した前記測定セルに遠心力を加えるステップと、
iii.前記第2のチャンバ内に捕獲された液体量を測定するか、または、前記測定セルの前記第2のチャンバ内の前記試料液の流速を測定するステップとが含まれ、
前記捕獲された液体の量及び前記流速が前記血小板機能と逆相関を有している
方法。
【請求項16】
前記測定セルの前記第2のチャンバ内に捕獲された液体の量が測光手段または電気手段によって測定される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記測定セルの前記第2のチャンバ内の前記試料液の流速がレーザドップラ風速測定法によって測定される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記測定セルの前記第2のチャンバ内に捕獲された液体の量または前記流速が、定められた時間間隔にわたって連続測定される請求項15から17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記測定セルの前記第2のチャンバ内に捕獲された液体の量または前記流速が、定められた時間に1回測定される請求項15から17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記測定セルの前記第2のチャンバ内に捕獲された液体の量または前記流速が、前記測定セルに遠心力が作用している間に測定される請求項15から19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記測定セルに加えられる遠心力が50〜2000×gの範囲内である請求項15から20のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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