説明

血栓塞栓性疾患に対するアロイルセミカルバジド誘導体

式I、


式中、Het、R、RおよびRが請求項1に示した意味を有する、
で表される新規化合物は、凝固因子Xaの阻害剤であり、血栓塞栓性疾患の予防および/または治療、腫瘍の処置のために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I:
【化1】

式中、
Hetは、1〜3個のN、Oおよび/またはS原子を有し、Halで単置換または二置換された、単環式、または二環式の芳香族へテロ環基を示し、
は、S(O)A、Ph、NH、NHA、NA、OH、OA、PO(OA)、エチニル、ビニル、またはO(CHPhで単置換、二置換、または三置換され得るAを示し、
は、H、Hal、またはAを示し、
は、2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、3−オキソモルホリン−4−イル、4−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソイミダゾリジン−1−イル、2−イミノピペリジン−1−イル、2−イミノピロリジン−1−イル、3−イミノモルホリン−4−イル、2−イミノイミダゾリジン−1−イル、2−イミノ−1H−ピラジン−1−イル、2,6−ジオキソピペリジン−1−イル、2−オキソピペラジン−1−イル、2,6−ジオキソピペラジン−1−イル、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル、3−オキソ−2H−ピリダジン−2−イル、2−カプロラクタム−1−イル(=2−オキシアゼパン−1−イル)、2−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン−2−イル、5,6−ジヒドロ−1H−ピリミジン−2−オキソ−1−イル、2−オキソ−1,3−オキサジナン−3−イル、または4H−1,4−オキサジン−4−イルを示し、
Aは、H、1〜10個の炭素原子を有する、非分枝状、分枝状、または環状アルキルを示し、
Phはフェニルを示し、
Halは、F、Cl、Br、またはIを示し、
nは、1、2、3、4、5、または6を示し、
mは、0、1、または2を示し、
で表される、前記式Iの化合物、ならびに薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物に関する。
【0002】
本発明は、有用な性質を有する新規化合物、特に、医薬の製造のために用いることができるものを見出すことを目的とした。
式Iの化合物、およびその塩は、非常に有益な薬理学的性質を有し、非常に耐性があることは知られていた。特に、それらは、因子Xa−阻害特性を示し、従って、血栓症、心筋梗塞、動脈硬化症、炎症、卒中、狭心症、血管形成術後の再狭窄、および跛行断絶(claudicatio intermittens)などの血栓塞栓性疾患に対抗するため、および予防するために用いることができる。
【0003】
本発明による式Iの化合物は、更に凝固因子である因子VIIa、因子IXa、および血液凝固カスケード(blood coagulation cascade)のトロンビンの阻害剤になりうる。
【0004】
抗血栓活性を有する芳香族アミジン誘導体は、例えば、EP 0 540 051 B1、WO 98/28269、WO 00/71508、WO 00/71511、WO 00/71493、WO 00/71507、WO 00/71509、WO 00/71512、WO 00/71515、およびWO 00/71516に開示されている。血栓塞栓性疾患の処置のための環状グアニジンは、例えば、WO 97/08165に記載されている。因子Xa−阻害活性を有する芳香族複素環化合物は、例えば、WO 96/10022に開示されている。因子Xa阻害剤としての、置換N−[(アミノイミノメチル)フェニルアルキル]アザヘテロシクリル(cyclyl)アミドは、WO 96/40679に記載されている。
本発明の誘導体の位置異性体化合物が、DE10040783.8に記載されている(合成スキーム1の式7の化合物)。
【0005】
本発明の化合物の抗血栓効果、および抗凝固効果は、因子Xaの名で知られる活性化された凝固プロテアーゼに対する阻害活性、または因子VIIa、因子IXa、もしくはトロンビンなどの他の活性化されたセリンプロテアーゼの阻害に起因する。
【0006】
因子Xaは、血液凝固の複雑な過程に含まれるプロテアーゼの1つである。因子Xaは、プロトンビンからトロンビンへの変換を触媒する。トロンビンは、フィブリノゲンをフィブリンモノマーに開裂し、架橋後、塞栓形成に基本的な貢献をする。トロンビンの活性は、血栓塞栓性疾患の発症をもたらす。しかし、トロンビンの阻害は、塞栓形成に含まれるフィブリン形成を阻害することができる。
トロンビンの阻害は、例えば、Circulation 1996, 94, 1705-1712のG.F. Cousinsらの方法により測定することができる。
【0007】
従って、因子Xaの阻害は、トロンビンの形成を予防することができる。本発明の式I化合物、およびその塩は、因子Xaを阻害することで血液凝固過程に関与し、従って塞栓形成を阻害する。
本発明の化合物による因子Xaの阻害、ならびに抗血栓剤活性、および抗凝固剤活性の測定は、通常のインビトロ、またはインビボ方法により決定することができる。適切な方法は、例えば、J. HauptmannらによるThrombosis and Haemostasis 1990, 63, 220-223に記載されている。
【0008】
因子Xaの阻害は、例えば、Thromb. Haemostas. 1994, 71, 314-319のT. Haraらの方法により測定することができる。
凝固因子VIIaは、組織因子に結合した後、凝固カスケードの外部部位を開始し、因子Xaを与える因子Xの活性に貢献する。従って、因子VIIaの阻害は、因子Xaの形成、その後のトロンビン形成を予防する。
本発明の化合物による因子VIIaの阻害、ならびに抗血栓剤および抗凝固剤活性の測定は、通常のインビトロ、またはインビボ方法により決定することができる。因子VIIa阻害の測定のための通常の方法は、例えば、H. F. RonningらによるThrombosis Research 1996, 84, 73-81に記載されている。
【0009】
凝固因子IXaは、内部の凝固カスケードで発生し、因子Xaを与える因子Xの活性に同様に関連する。従って、因子IXaの阻害は、様々な方法で因子Xaの形成を予防することができる。
本発明の化合物による因子IXaの阻害、ならびに抗血栓および抗凝固活性の測定は、通常のインビトロ、またはインビボ方法により決定することができる。適切な方法は、例えば、J. ChangらによるJournal of Biological Chemistry 1998, 273, 12089-12094に記載されている。
【0010】
本発明の化合物は、更に、腫瘍、腫瘍疾患、および/または腫瘍転移の処置のために用いることができる。組織因子TF/因子VIIaと、種々のタイプの癌の進行との相関関係は、Biomed. Health Res. (2000), 41 (Molecular Pathogenesis of Pancreatic Cancer), 57-59において、T.TaniguchiおよびN.R. Lemoineにより示唆されている。
【0011】
以下に記載の出版物は、種々のタイプの腫瘍に対するTF−VII、および因子Xa阻害剤の制腫瘍(antitumoural)作用を開示する:
K.M. Donnelly et al. in Thromb. Haemost. 1998; 79: 1041-1047;
E.G. Fischer et al. in J. Clin. Invest. 104: 1213-1221 (1999);
B.M. Mueller et al. in J. Clin. Invest. 101: 1372-1378 (1998);
M.E. Bromberg et al. in Thromb. Haemost. 1999; 82: 88-92
【0012】
式Iの化合物は、ヒトおよび獣医薬、特に、血栓症、心筋梗塞、動脈硬化症、炎症、卒中、狭心症、血管形成術後の再狭窄、跛行断絶、静脈血栓症、肺塞栓、動脈血栓症、心筋虚血(myocardial ischaemia)、不安定狭心症、および血栓症に基づくストロークなどの血栓塞栓性疾患の処置、および予防のための医薬活性成分として用いることができる。本発明の化合物はまた、冠状動脈疾病、大脳動脈疾病、または末梢動脈疾病などのアテローム動脈硬化症性疾病の処置、または予防のために用いられる。その化合物はまた、心筋梗塞の場合、更には、血栓崩壊、経皮経管的血管形成(PTCA)、および冠状動脈バイパス手術の後の再閉塞(reocclusion)に対する予防のために、他の血栓溶解剤と組み合わせて用いられる。
【0013】
本発明の化合物は、更に、マイクロサージェリーの再血栓症(rethrombosis)の予防のため、更には、抗凝固剤として、人工臓器、または人工透析と組み合わせて用いられる。
その化合物は、更に、インビボでの患者のカテーテル、および医療扶助の洗浄、または血、血漿、およびインビトロでの他の血液製剤の保存のための抗凝固剤として用いられる。本発明の化合物は、血液凝固剤が疾病の進行に決定的な貢献をする、または、例えば転移を含む癌、関節炎を含む炎症疾患、および糖尿病などの第2の疾病の原因となる疾病のために、更に用いられる。
【0014】
本発明の化合物は、さらに、片頭痛の処置のために用いられる(F.Morales-Asin et al., Headache, 40, 2000, 45-47)。
記載した疾患を処置するのに、本発明の化合物はまた、例えば、“組織プラスミノゲン活性因子”t−PA、修正t−PA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼなどの他の血栓崩壊性活性化合物と組み合わせて用いられる。本発明の化合物は、指摘した他の物質と同時か、または前に、もしくは後に投与される。
血栓形成の再発を防ぐために、アスピリンを同時に投与するのが特に好ましい。
本発明の化合物はまた、血小板凝固を阻害する血小板糖タンパクレセプター(IIb/IIIa)拮抗薬と組み合わせて用いられる。
【0015】
本発明は、式Iの化合物およびその塩に関し、ならびに請求項1〜9に記載の式Iの化合物、および薬学的に使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、およびその立体異性体の製造方法に関し、それは、
a)式IIの化合物
【化2】

式中、
、R、およびRは、請求項1で示された意味を有する、
で表される前記化合物を、式IIIの化合物
Het−CO−L III
式中、
Lは、Cl、Br、I、またはフリーのOH基もしくは活性に官能基修飾されたOH基を示し、および
Hetは、請求項1で示された意味を有する、
で表される前記化合物と反応させ、
および/または
式Iの塩基または酸を、その塩の1種に変換することを特徴とする。
【0016】
本発明は、また任意に活性な形態(立体異性体)、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、およびこれらの化合物の水和物、溶媒和物に関する。“化合物の溶媒和物”の用語は、互いの引力により形成する、不活性溶媒分子の化合物への付加物を意味する。溶媒和物は、例えば、一水和物または二水和物、もしくはアルコラートである。
【0017】
“薬学的に使用可能な誘導体”の用語は、例えば、本発明の化合物の塩、およびいわゆるプロドラッグ化合物を意味する。
“プロドラッグ誘導体”の用語は、例えば、アルキルまたはアシル基、糖またはオリゴペプチドで修飾された式Iの化合物を意味し、それは有機体で速やかに開裂して本発明の活性化合物を形成する。
これらは、例えば、Int. J. Pharm. 115, 61-67 (1995)に記載されるように、本発明化合物の生分解性ポリマー誘導体をも含む。.
【0018】
本発明は、本発明の式Iの化合物の混合物、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100、または1:1000の比率での2つのジアステレオマー混合物にも関する。
これらは、特に好ましくは、立体性異性体化合物の混合物である。
例えばAなどの、一度以上あらわれる全ての基に対しては、それらの意味は、それぞれ独立している。
本明細書中、基またはパラメーターR、R、R 、およびRは、他で特に明記しない限り、式Iで定義したとおりである。
Aはアルキルを示し、非分枝状(直鎖状)、分枝状、または環状であり、および1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のC原子を有する。Aは、好ましくは、メチル、さらには、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、またはtert−ブチル、さらにはペンチル、1-、2-または3-メチルブチル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1-、2-、3-または4-メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチルブチル、1-または2-エチルブチル、1-エチル−1−メチルプロピル、1-エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピル、またはシクロプロピルメチル、さらに好ましくは、例えば、トリフルオロメチルである。
Aは、特に好ましくは、1、2、3、4、5、または6個のC原子を有するアルキルを示し、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル、またはトリフルオロメチルである。
環状アルキルは、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはシクロヘプチルを示す。
【0019】
Halは、好ましくは、F、Cl、またはBr、Iをも示す。
Hetは、Halの置換とは独立して、例えば、2-または3-フリル、2-または3-チエニル、1-、2-または3-ピロリル、1-、2-、4-または5-イミダゾリル、1-、3-、4-または5-ピラゾリル、2-、4-または5-オキサゾリル、3-、4-または5-イソオキサゾリル、2-、4-または5−チアゾリル、3-、4-または5-イソチアゾリル、2-、3-または4-ピリジル、2-、4-、5-または6−ピリミジニル、さらに好ましくは、1,2,3−トリアゾール−1-、-4−または-5−イル、1,2,4−トリアゾール−1-、-3−または-5-イル、1-または5-テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または-5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または-5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または-5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または-5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または-5-イル、3-または4-ピリダジニル、ピラジニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-または7−インドリル、4-または5-イソインドリル、1-、2-、4-または5-ベンズイミダゾリル、1-、3-、4-、5-、6-または7-ベンゾピラゾリル、2-、4-、5-、6-または7-ベンズオキサゾリル、3-、4-、5-、6-または7-ベンズイソオキサゾリル、2-、4-、5-、6-または7-ベンゾチアゾリル、2-、4-、5-、6-または7−ベンズイソチアゾリル、4-、5-、6-または7-ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、2-、3-、4-、5-、6-、7-または8−キノリル、1-、3-、4-、5-、6-、7-または8-イソキノリル、3-、4-、5-、6-、7-または8−シンノリニル、2-、4-、5-、6-、7-または8-キナゾリニル、5-または6-キノキサリニル、2-、3-、5-、6-、7-または8-2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−または-5−イル、または2,1,3−ベンズオキサジアゾール−5−イルである。
【0020】
Hetは、特に好ましくは、チエニル、フリル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、チアゾリルまたはオキサゾリルを示し、それぞれは、Halで単置換または二置換されている。
は、好ましくは、1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルを示し、それは、S(O)A、例えばSOCHにより、NH、NHA、例えばNHCHにより、NA、例えばN(CHにより、OH、OA、例えばOCHにより、PO(OA)、例えばPO(OCHにより、エチニル、フェニル、ビニル、またはO(CHPhにより、置換され得る。
は、特に好ましくは、1、2、3、4、5、または6個のC原子を有するアルキルを示し、それは、エチニル、フェニル、OH、またはOAにより置換され得る。
は、好ましくは、例えば、H、メチル、またはFを示す。
は、好ましくは、2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、3−オキソモルホリン−4−イル、4−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソイミダゾリジン−1−イル、2−イミノピペリジン−1−イル、2−イミノピロリジン−1−イル、3−イミノモルホリン−4−イル、2−イミノイミダゾリジン−1−イル、2−イミノ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソピペラジン−1−イル、または3−オキソ−2H−ピリダジン−2−イルである。
【0021】
式Iの化合物は、1または2以上のキラル中心を有することができ、したがって、様々の立体異性体形態を生じ得る。式Iは、これらの全ての形態を包含する。
【0022】
したがって、本発明は、特に、少なくとも1つの前記基が上記した好ましい意味の1つを有する式Iの化合物に関する。化合物のいくつかの好ましい群は、式Iに適合する以下の付属式Ia〜Ieで表現することができ、ここで、詳細には記載しない基は、式Iで定義したとおりであるが、ここで、
Iaにおいて、Rは、1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルを示し、それはエチニル、フェニル、OA、OHまたはOAで置換され得る;
Ibにおいて、Rは、2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、3−オキソモルホリン−4−イル、4−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソイミダゾリジン−1−イル、2−イミノピペリジン−1−イル、2−イミノピロリジン−1−イル、3−イミノモルホリン−4−イル、2−イミノイミダゾリジン−1−イル、2−イミノ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソピペラジン−1−イルまたは3−オキソ−2H−ピリダジン−2−イルである;
Icにおいて、R はH、メチルまたはFを示す;
Idにおいて、Hetは、チエニル、フリル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、チアゾリルまたはオキサゾリルを示し、それぞれは、Halで単置換または二置換される;
Ieにおいて、Hetは、チエニル、フリル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、チアゾリルまたはオキサゾリルを示し、それぞれは、Halで単置換または二置換され、
は、1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルを示し、それは、エチニル、フェニル、OA、OHまたはOAで置換されることができ、
は、H、HalまたはAを示し、
は、2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、3−オキソモルホリン−4−イル、4−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソイミダゾリジン−1−イル、2−イミノピペリジン−1−イル、2−イミノピロリジン−1−イル、3−イミノモルホリン−4−イル、2−イミノイミダゾリジン−1−イル、2−イミノ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソピペラジン−1−イルまたは3−オキソ−2H−ピリダジン−2−イルであり、
Aは、H、1〜10個のC原子を有する非分枝状、分枝状または環状アルキルを示し、
Phは、フェニルを示し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示し、
nは、1、2、3、4、5または6を示し、
mは、0、1または2である;
ならびに薬学的に使用可能な誘導体、溶媒和物、塩およびその立体異性体、全ての比率でのその混合物である。
【0023】
式Iの化合物、さらに、その製造のための出発物質も、文献(例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [有機化学の方法],Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartなどの標準的な本)に記載されるように、該反応に好適で既知の反応条件下、それ自体既知の方法で正確に製造される。それ自体既知で、ここでは詳細に述べない変法も用いることができる。
所望により、出発物質も、そのまま形成させることができ、反応混合物から単離することなく、さらに即座に式Iの化合物に変換させる。
式Iの化合物は、好ましくは、式IIと式IIIの化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0024】
その反応は、一般的に不活性溶媒中で、酸結合試薬の存在下、好ましくは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、好ましくはカリウム、ナトリウム、カルシウム、またはセシウムの弱酸の他の塩の存在下で行われる。トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、またはキノリンなどの有機塩基の添加も好ましくあり得る。用いられる条件に依存して、反応時間は、数分間〜14日間であり、および反応温度は約0°〜150°、通常20°〜130°である。
適切な不活性溶媒の例は、水;ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどの炭化水素;トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロメタン、クロロホルムまたはジクロロメタンなどの塩素化石炭水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、またはtert−ブタノールなどのなどのアルコール;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、またはジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテル、またはエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)などのグリコールエーテル;アセトン、ブタノンなどのケトン;アセトアミド、ジメチルアセトアミド、またはジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド;二硫化炭素;蟻酸または酢酸などのカルボン酸;ニトロメタンまたはニトロベンゼンなどのニトロ化合物;酢酸エチルなどのエステル、または前記溶媒の混合物である。
式IIおよびIIIの出発化合物は、一般的に既知である。しかしながら、それらが新規である場合、それらはそれ自体既知の方法で製造できる。
【0025】
式IIIの化合物において、Lは、好ましくは、Cl、Br、Iまたは活性に修飾されたOH基、例えば、活性化エステル、イミダゾリド、または1〜6個のC原子を有するアルキルスルホニルオキシ(好ましくはメチルスルホニルオキシもしくはトリフルオロメチルスルホニルオキシ)または6〜10個のC原子を有するアリールスルホニルオキシ(好ましくはフェニル−もしくはp−トリルスルホニルオキシ)である。
典型的なアシル化反応における、カルボキシル基の活性化のためのこのタイプの基は、文献(例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [有機化学の方法]、Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartなどの標準的な文献)に記載されている。
活性化エステルは、有利には、例えば、HOBtまたはN−ヒドロキシスクシンイミドの添加により、そのまま形成される。
【0026】
式Iの塩基は、酸を用いて、エタノールなどの不活性溶媒中で同量の酸と塩基の反応、その後の濃縮により、関連する酸付加物塩に変換することができる。この反応に適切な酸は、特に生理学的に許容できる塩を与える酸である。従って、無機酸、例えば硫酸、硝酸、ハロゲン化水素酸、例えば塩酸または臭素酸、オルトリン酸などのリン酸、またはスルファミン酸、更に有機酸、特に脂肪族、脂環式、アラリファティック(araliphatic)、芳香族、複素環式の一塩基性または多塩基性カルボン酸、スルホン酸または硫酸、例えば蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、ピバリン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタンまたはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノおよびジスルホン酸、ならびにラウリルスルホン酸である。生理学的に許容できない酸との塩、例えばピクリン酸塩は、式Iの化合物の単離および/または精製のために用いることができる。
【0027】
他方で、式Iの化合物は、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、または炭酸カリウム)を用いて、対応する金属塩、特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、または対応するアンモニウム塩に変換することができる。
生理学的に許容できる有機塩基、例えば、エタノールアミンを用いることも可能である。
【0028】
本発明による式Iの化合物は、分子構造が原因でキラルであってもよく、従って、種々の鏡像異性体で存在する。従って、それらは、ラセミ体、または光学活性体で存在することができる。
本発明化合物のラセミ化合物、または立体異性体の薬学的活性は異なるので、その鏡像異性体を用いることが好ましい。これらの場合、最終生成物、または中間体でも、当業者に既知の化学的もしくは物理的方法、または合成において用いられる方法で、鏡像異性体化合物に分離することができる。
【0029】
ラセミ化合物のアミンの場合、ジアステレオマーは、光学活性分割剤との反応により、混合物から形成する。適切な分割剤の例は、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、適切にNが保護されたアミノ酸(例えばN−ベンゾイルプロリン、またはN−ベンゼンスルホニルプロリン)、または種々の光学活性カンフルスルホン酸のR、およびS体などの光学活性な酸である。光学活性分割剤(例えば、シリカゲルに担持させたジニトロベンゾイルフェニルグリシン、セルローストリアセテートもしくは炭水化物の他の誘導体、またはキラルに誘導体化されたメタクリレートポリマー)の助けによる、クロマトグラフィー鏡像異性体分割もまた有利である。この目的のための適切な溶離液は、例えば82:15:3の比率のヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリルなどの水性、またはアルコール性溶媒混合物である。
【0030】
本発明は更に、式Iの化合物、および/またはそれらの生理学的に許容できる塩の、薬剤組成物の製造のための、特に非化学的方法による使用に関する。ここで、それらは、少なくとも1種の固体、液体および/または半液体の賦形剤または補助剤と共に、必要に応じて、1種または2種以上の更なる活性成分との任意の併用で適当な投与形態にすることができる。
本発明は更に、少なくとも1種の式Iの化合物、および/またはその薬学的に使用できる誘導体、溶媒和物、および立体異性体、それらのすべての比率での混合物、および必要に応じて、賦形剤、および/または補助剤を含む医薬に関する。
【0031】
これらの組成物は、ヒトまたは獣医薬の医薬として用いることができる。適切な賦形剤は、経腸(例えば経口)非経口投与または局所投与に適した、新規化合物と反応しない有機または無機物質であり、例えば水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、乳糖または澱粉などの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ワセリンである。
【0032】
特に錠剤、ピル、被覆剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、シロップ剤、ジュース、または点滴剤は経口投与用に適切で、座薬は直腸投与用に適切で、更に溶液、好ましくは油性液または水溶液、更に懸濁液、エマルションまたはインプラントは、非経口投与に適切で、軟膏、クリーム、または粉剤は、局所投与に適切で、もしくはスプレー式点鼻薬として適切である。新規化合物は凍結乾燥もできて、得られた凍結乾燥物を例えば、注射剤の製造に用いることができる。指摘した組成物は殺菌できて、および/または滑剤、保存剤、安定剤、および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧を修正する塩、緩衝剤、着色剤、および香味剤および/または複数の活性化合物、例えば1種または2種以上のビタミンなどの補助剤を含むこともできる。
【0033】
式Iの化合物、およびそれらの生理学的に許容できる塩は、血栓症、心筋梗塞、動脈硬化症、炎症、卒中、狭心症、血管形成術後の再狭窄および跛行断絶などの血栓塞栓症、片頭痛、腫瘍、腫瘍疾病、および/または腫瘍転移に効き、予防するために用いることができる。
【0034】
一般的に、本発明の物質は、好ましくは、投与単位当たり約1〜500mgで、特に5mg〜100mgの投与量で投与する。一日の用量は好ましくは、体重の約0.02〜10mg/kgである。しかし、各患者についての特異な投与量は、例えば、用いられる特異な化合物の効能、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与の時間と方法、排泄速度、併用薬、処置を行っている障害の重篤度の広範な様々な要因によって変動する。経口投与が好ましい。
【0035】
本発明は、また、
(a)式Iの化合物、および/またはその薬学的に使用できる誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体、すべての比率でのそれらの混合物の有効量
および
(b)他の医薬の有効量
の分離パックからなるセット(キット)に関する。
【0036】
そのセットは、ボックス、それぞれのボトル、バッグ、またはアンプルなどの適切な容器を含む。そのセットは、例えば、式Iの化合物、および/またはその薬学的に使用できる誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体、それらのすべての比率での混合物の有効量、溶解形態または凍結乾燥形態の他の医薬の有効量を、それぞれ含有する分離アンプルを含むことができる。
【0037】
本発明は更に、式Iの化合物、および/またはそれらの薬学的に使用できる誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体、それらのすべての比率での混合物の、血栓症、心筋梗塞、動脈硬化症、炎症、卒中、狭心症、血管形成術後の再狭窄、跛行断絶、腫瘍、腫瘍疾病、および/または腫瘍転移の処置に対する医薬の製造のための、少なくとも1種の他の医薬活性成分と組み合わせての使用に関する。
【0038】
本明細書中、全ての温度は℃である。以下の例での“通常の精製処理”は、必要ならば水を加え、必要ならば最終生成物の組成次第でpH2〜10に調整し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮し、生成物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーおよび/または再結晶で精製する。シリカゲルでのRf値;溶離液:酢酸エチル/メタノール 9:1
マススペクトル(MS) EI (電子衝撃イオン化) M
FAB(高速原子衝撃) (M+H)
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)(他に記載しない限り)
【0039】
例1
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−プロピルセミカルバジドを、以下のスキームと同様に製造する:
【化3】

【0040】
1. 50mlのジクロロメタン中、2.0g(10.4mmol)の4−(4−アミノフェニル)モルホリン−3−オン、2.1g(10.4mmol)の4−ニトロフェニルクロロギ酸エステル、および0.84ml(10.4mmol)のピリジンの混合物を、室温で1時間攪拌する。2.04g(10.4mmol)のベンゾフェノンヒドラゾン、5.3ml(31.2mmol)のエチルジイソプロピルアミンを、続けざまにこの混合物に加える。懸濁液を室温で2時間攪拌し、酢酸エチルで希釈し、0.5N水酸化ナトリウム溶液で洗浄する。混合物をその後に、通常の精製処理に付し、3.94g(79%)の1−ジフェニルメチレン−4−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]セミカルバジドを、241〜243°の融点を有する無色結晶として得る;MS−EI(M)=414(8%)、165(100%)
2. 30mlのアセトニトリル中、1.0g(2.4mmol)のセミカルバジド、および0.98g(3.0mmol)の炭酸セシウムの懸濁液を、室温で0.5時間攪拌する。0.29ml(3.0mmol)の1−ヨードプロパンをこの混合物に加え、さらに7時間攪拌する。150mlの氷水を加えた後、沈殿が堆積し、通常の精製処理に付すると、75〜77°の融点を有する無色結晶として、1.07g(97%)の1−ジフェニルメチレン−4−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−2−プロピルセミカルバジドを得る;MS−EI(M)=456(2%)、180(100%)
3. 5.0mlの37%塩酸溶液を、20mlエタノール中0.5g(1.1 mmol)のプロピルセミカルバジドの溶液に加え、混合物を室温で1時間攪拌する。反応溶液を30mlの水で希釈し、通常の精製処理に付すと、127−129°の融点を有する無色結晶として、0.27g(84%)の4−[4−(3−オキソ−4−モルホリニル)フェニル]−2−プロピルセミカルバジドを得る;MS−EI(M)=318(6%)、218(100%)
4. 100.0mg(0.342mmol)のセミカルバジド、55.6mg(0.342mmol)の5−クロロチオフェン−2−カルボン酸、66.2mg(0.342mmol)のN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩、および36.2mg(0.342mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを、10mlのDMFに溶解させ、38.0ml(0.342mmol)の4−メチルモルホリンを室温で加える。混合物を室温で18時間攪拌したあと、75mlの氷水に注ぎ、通常の精製処理に付すと、101−102°の融点を有する無色結晶として、77.0mg(51.5%)の1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−プロピルセミカルバジド(“A1”)を得る;MS−ESI(M+H)=437
【0041】
以下の化合物を同様にして得る
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(プロピ−2−ニル)セミカルバジド (“A2”)、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−ベンジルセミカルバジド (“A3”)、
1−(5−ブロモチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−ベンジルセミカルバジド、
1−(3−クロロベンゾ[b]チエニル−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−ベンジルセミカルバジド、
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−ベンジルセミカルバジド、
1−(5−ブロモチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(3−クロロベンゾ[b]チエニル−2−イルカルボニル)−4−[3−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[4−(2−オキソ−1H−ピラジン−1−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[4−(2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド、
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド、
1−(5−ブロモチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド
【0042】
薬理学データ
受容体との親和性
【表1】

【0043】
以下の例は医薬製剤に関する。
例A:注射用バイアル
式Iの活性成分100gとリン酸水素二ナトリウム5gを2回蒸留水3リットルに溶解した溶液を2Nの塩酸を使ってpH6.5に調節し、無菌的に濾過し、注射用バイアルに移し、無菌条件で凍結乾燥し、無菌的に密封する。各注射バイアルは活性成分を5mg含有する。
例B:座薬
式Iの活性成分20gをソーヤレシチン−100g、およびココアバター1400gの混合物を溶解し、その混合物を鋳型に注ぎ、冷却する。各座薬は活性化合物20mgを含有する。
例C:溶液
940mlの二回蒸留水中の、1gの式Iの活性成分、9.38gのNaHPO・2HO、28.48gのNaHPO・12HO、および0.1gの塩化ベンザルコニウムから溶液を調製する。pHを6.8に調節し、1リットルにし、照射によって殺菌する。この溶液は点眼液の形態で使用することが出来る。
例D:軟膏
式Iの活性成分500mgを防腐性条件でワセリン99.5gと混合する。
例E:錠剤
式Iの活性成分1kg、乳糖4kg、馬鈴薯澱粉1.2kg、タルク0.2kg、ステアリン酸マグネシウム0.1kgの混合物を通常の方法で加圧し、各錠剤が活性成分10mgを含有するように錠剤を製造する。
例F:被覆錠
例Eと同様にして、錠剤を加圧し、その後に通常の方法でスクロース、馬鈴薯澱粉、タルク、トラガカント、および着色剤の被覆で被覆した。
例G:カプセル剤
式Iの活性成分2kgを通常の方法で、各カプセルが活性成分20mgを含有するように硬ゼラチンカプセルに導入する。
例H:アンプル剤
式Iの活性化合物1kgが2回蒸留水60リットル中に溶解した溶液を無菌的に濾過し、アンプルに移し、無菌条件で凍結乾燥し、無菌的に密封した。各アンプルは活性成分10mgを含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

式中、
Hetは、1〜3個のN、Oおよび/またはS原子を有し、Halで単置換または二置換された、単環式、または二環式の芳香族へテロ環基を示し、
は、S(O)A、Ph、NH、NHA、NA、OH、OA、PO(OA)、エチニル、ビニル、またはO(CHPhで単置換、二置換、または三置換され得るAを示し、
は、H、Hal、またはAを示し、
は、2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、3−オキソモルホリン−4−イル、4−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソイミダゾリジン−1−イル、2−イミノピペリジン−1−イル、2−イミノピロリジン−1−イル、3−イミノモルホリン−4−イル、2−イミノイミダゾリジン−1−イル、2−イミノ−1H−ピラジン−1−イル、2,6−ジオキソピペリジン−1−イル、2−オキソピペラジン−1−イル、2,6−ジオキソピペラジン−1−イル、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル、3−オキソ−2H−ピリダジン−2−イル、2−カプロラクタム−1−イル(=2−オキシアゼパン−1−イル)、2−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン−2−イル、5,6−ジヒドロ−1H−ピリミジン−2−オキソ−1−イル、2−オキソ−1,3−オキサジナン−3−イル、または4H−1,4−オキサジン−4−イルを示し、
Aは、H、1〜10個の炭素原子を有する、非分枝状、分枝状、または環状アルキルを示し、
Phはフェニルを示し、
Halは、F、Cl、Br、またはIを示し、
nは、1、2、3、4、5、または6を示し、
mは、0、1、または2を示し、
で表される、前記式Iの化合物、ならびに薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物。
【請求項2】
式中、
は、1、2、3、4、5、または6個のC原子を有するアルキルを示し、それは、エチニル、フェニル、OA、OH、またはOAで置換され得る、
請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物。
【請求項3】
式中、
は、2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、3−オキソモルホリン−4−イル、4−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソイミダゾリジン−1−イル、2−イミノピペリジン−1−イル、2−イミノピロリジン−1−イル、3−イミノモルホリン−4−イル、2−イミノイミダゾリジン−1−イル、2−イミノ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソピペラジン−1−イル、または3−オキソ−2H−ピリダジン−2−イルを示す、
請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物。
【請求項4】
式中、
は、H、メチル、またはFを示す、
請求項1〜3のいずれかに記載の化合物、ならびに薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物。
【請求項5】
式中、
Hetは、チエニル、フリル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、チアゾリル、またはオキサゾリルを示し、それぞれがHalで単置換または二置換されている、
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物、ならびに薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物。
【請求項6】
式中、
Hetは、チエニル、フリル、ピロリル、ベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、チアゾリル、またはオキサゾリルを示し、それぞれがHalで単置換または二置換され、
は、1、2、3、4、5、または6個のC原子を有するアルキルを示し、それは エチニル、フェニル、OA、OH、またはOAで置換され得、
は、H、Hal、またはAを示し、
は、2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、3−オキソモルホリン−4−イル、4−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソイミダゾリジン−1−イル、2−イミノピペリジン−1−イル、2−イミノピロリジン−1−イル、3−イミノモルホリン−4−イル、2−イミノイミダゾリジン−1−イル、2−イミノ−1H−ピラジン−1−イル、2−オキソピペラジン−1−イル、または3−オキソ−2H−ピリダジン−2−イルを示し、
Aは、H、1〜10個のC原子を有する、非分枝状、分枝状、環状アルキルを示し、
Phは、フェニルを示し、
Halは、F、Cl、Br、またはIを示し、
nは、1、2、3、4、5、または6を示し、
mは、0、1、または2を示す、
請求項1〜5のいずれかに記載の化合物、ならびに薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物。
【請求項7】
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−プロピルセミカルバジド、
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(プロピ−2−ニル)セミカルバジド、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−ベンジルセミカルバジド、
1−(5−ブロモチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−ベンジルセミカルバジド、
1−(3−クロロベンゾ[b]チエニル−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−ベンジルセミカルバジド、
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−ベンジルセミカルバジド、
1−(5−ブロモチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(3−クロロベンゾ[b]チエニル−2−イルカルボニル)−4−[3−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−フルオロ−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[4−(2−オキソ−1H−ピラジン−1−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[4−(2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド、
1−(3−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド、
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−(2−メトキシエチル)セミカルバジド、
1−(5−クロロチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド、
1−(5−ブロモチエン−2−イルカルボニル)−4−[3−メチル−4−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル]−2−シクロプロピルメチルセミカルバジド、
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、ならびに薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の式Iの化合物、ならびに薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体の製造方法であって、
a) 式IIの化合物
【化2】

式中、
、R、およびRは、請求項1で示された意味を有する、
で表される前記化合物を、式IIIの化合物
Het−CO−L III
式中、
Lは、Cl、Br、I、またはフリーのOH基もしくは活性に官能基修飾されたOH基を示し、および
Hetは、請求項1で示された意味を有する、
で表される前記化合物と反応させ、
および/または
式Iの塩基または酸を、その塩の1種に変換することを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
凝固因子Xaの抑制剤としての、請求項1〜7のいずれかに記載の式Iの化合物。
【請求項10】
凝固因子VIIaの抑制剤としての、請求項1〜7のいずれかに記載の式Iの化合物。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の式Iの化合物、および/または薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物の少なくとも1種、および所望により、賦形剤および/または補助剤を含む医薬。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の式Iの化合物、および/または薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物の少なくとも1種、および少なくとも1種の他の医薬活性成分を含む医薬。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の化合物、および/または生理学的に許容可能なその誘導体、塩、溶媒和物の、血栓症、心筋梗塞、動脈硬化症、炎症、卒中、狭心症、血管形成術後の再狭窄、跛行断絶、片頭痛、腫瘍、腫瘍疾病、および/または腫瘍転移の処置のための医薬の製造への使用。
【請求項14】
(a) 請求項1〜7のいずれかに記載の式Iの化合物、および/または薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物の有効量
(b) 他の医薬活性成分の有効量
の分離パックからなるセット(キット)。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の式Iの化合物、および/または薬学的に使用可能なその誘導体、溶媒和物、塩、および立体異性体、それらの全ての比率での混合物の使用であって、少なくとも1種の他の医薬活性成分と組み合わせての、血栓症、心筋梗塞、動脈硬化症、炎症、卒中、狭心症、血管形成術後の再狭窄、跛行断絶、片頭痛、腫瘍、腫瘍疾病、および/または腫瘍転移の処置のための医薬の製造への使用。

【公表番号】特表2006−527217(P2006−527217A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515768(P2006−515768)
【出願日】平成16年5月12日(2004.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005088
【国際公開番号】WO2004/108718
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】