説明

血流促進剤および外用剤

【課題】外用基剤に安定的に、かつ容易に配合でき、優れた血流促進効果を発揮する血流促進剤を提供する。
【解決手段】外油相中に水中油型エマルジョンを内包したマイクロカプセルを含む血流促進剤であって、マイクロカプセルは平均粒子径が0.01〜3μmの油滴を内包し、且つ親水性高分子ゲル化剤をカプセル化剤として含み、この油滴中にパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンをマイクロカプセル全量に対して0.1〜30質量%含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血流促進剤に関し、より詳しくは安定に外用剤に配合でき、口腔用組成物、医薬品、化粧品等に好適に配合、使用することができる血流促進剤およびそれを含む外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に血流量は血管内径の4乗に比例するといわれており、動脈、特に細動脈の内径の狭少化は、支配領域の長期にわたる動脈血供給不全を招く。この動脈血供給不全は、局所組織の代謝障害(萎縮、変性、壊死)を起こし、口腔内においては歯周疾患、皮膚では毛血色の悪さやくすみ、頭髪では脱毛、その他肩こり、筋肉痛などの障害として現れる。
【0003】
そこで、これらの血流障害を改善するものとして、様々な製剤が開発されている。具体的には、カルバクロール及び/ 又はチモールを有効成分とする血流促進剤(特許文献1)、シトラールを有効成分とする血流促進剤(特許文献2)、安息香酸、安息香酸のアルカリ金属塩、ベンズアルデヒド、クミンアルデヒド、ミルテナール、ヒドロキシシトロネラールを有効成分とする血流促進剤(特許文献3)、トウキ、センキュウ、シャクヤク及びジオウの混合物の抽出物からなる血流促進剤(特許文献4)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−255636号公報
【特許文献2】特開2000−044467号公報
【特許文献3】特開2000−169326号公報
【特許文献4】特開2006−347898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように血流促進剤は上記したような疾患に伴って生じる種々の症状を改善することや美容にかかわっており、かかる点から血流促進作用を有するさらなる物質が求められている。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するものであって、安定で、長時間効果が継続する血流促進剤、並びに該血流促進剤を含有し、皮膚に対しては血色を良くし、くすみ、乾燥、肌荒れ、ヒビ、アカギレ、フケ、カユミ、炎症性疾患の予防、軽減又は改善に、又、毛髪に対しては、乾燥、パサツキ、枝毛、切れ毛、光沢付与等に奏効する外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、このような現状に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の油分に優れた血流促進効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、外油相中に水中油型エマルジョンを内包したマイクロカプセルを含む血流促進剤であって、
前記マイクロカプセルは平均粒子径が0.01〜3μmの油滴を内包し、且つ親水性高分子ゲル化剤をカプセル化剤として含み、
前記油滴中にパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンをマイクロカプセル全量に対して0.1〜30質量%含むことを特徴とする血流促進剤である。
【0009】
また本発明は、血流促進剤をパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンに換算して、0.01〜15質量%配合してなることを特徴とする血流促進作用を有する外用剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の血流促進剤は優れた血流促進効果を発揮し、末梢血流低下による局所組織の代謝障害を改善するものである。またマイクロカプセル化したものは外用基剤への配合が容易であり、マイクロカプセルに内包されて安定性に優れたものであるため、口腔用組成物、医薬品、化粧品、育毛剤、浴用剤、外用剤等に安定的に、かつ容易に配合でき、歯周疾患、皮膚の血色やくすみの改善、脱毛、肩こり、筋肉痛等の改善などに使用できる。
また本発明の外用剤は、優れた血流促進効果を発揮するとともに、安定性に優れ、使用性にも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明で用いられるマイクロカプセルの概念図である。
【図2】本発明による血流促進剤の血流促進作用の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
本発明の血流促進剤は、パーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンが油滴としてマイクロカプセル中に内包されたものである。本発明者らはパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンに血流促進作用があることを新たに見出した。またそれと共に、このパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンは通常用いられる乳化剤による乳化が困難であるため、製剤化に制約があったり、多配合できないといった問題点があるが、特定のマイクロカプセルに内包させることで、安定に配合することができ、種々の剤型への配合が可能となる。また、特定の方法でマイクロカプセル化することで安定に多配合することが可能で、このため大きな血流促進効果を奏する外用剤が得られる。
【0013】
すなわち本発明においては、微細な内包油滴を多数含有するマイクロカプセルとするので、比重の大きいパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンであっても多量に、かつ安定に内包させることができる。同様に油滴を内包するマイクロカプセルであっても油滴を単一粒子として内包させたマイクロカプセルでは、安定性を確保するために外水相膜を強固にする必要があり、このためカプセルが破れにくく血流促進効果が十分に発揮されない。外水相膜の強度を弱めようとすると、パーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンの含有量を少なくさせる必要があり、血流促進効果が小さくなる。
【0014】
本発明で用いられるパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンは、Cn2n+1で(ただしn=6または10)で表されるユニットを有する一種又は二種以上の混合物で、nが6、10以外のn=1〜22のフッ素化合物を含んでいてもよい。これらのフッ素化合物は、比重が1.75前後であり、外用剤に用いられる通常の油分の比重(0.75〜0.85)に比べて大きい。そのため、パーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンを含む乳化製剤とすることは一般的な方法では困難である。
パーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンは従来公知の方法で製造できる。また、たとえばFiflow AC,SC,BTX(CIT Sarl社製商品名)として入手可能である。
【0015】
次に本発明によるマイクロカプセルについて説明する。
本発明で用いられるマイクロカプセルは、パーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンを含む内包油滴となる内油相と、親水性高分子ゲル化剤を含有する水相とからO/Wエマルジョンを調製し、これを外油相中に分散乳化してO/W/Oエマルジョンとし、O/W/Oエマルジョンの水相を固化してカプセル化することによりマイクロカプセル油性分散物の形で得ることができる。図1は、本発明で用いるマイクロカプセルの概念図であり、マイクロカプセル2内には、パーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンを含む内包油滴(内油相)1を有している。
【0016】
親水性高分子ゲル化剤としては、化粧品や医薬品等において通常使用されるもので、固化して親水性のゲルを形成できるものが挙げられる。例えば、ゼラチン、コラーゲン等のタンパク質、寒天、カラギーナン、グルコマンナン、スクレログルカン、シゾフィラ
ン、ジェランガム、アルギン酸、カードラン、ペクチン、ヒアルロン酸、グアーガム等の多糖類が挙げられる。これらのうち、寒天、カラギーナンなどの加熱冷却により固化してゲルを形成するものは、イオンの影響を受けにくく、また製法が簡便で均一に固化できるという点で好ましい。本発明においては、このような加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤をカプセル化剤の主成分とすることが好適である。中でも、ゲルの性質、安定性、使用感等の点から、寒天、カラギーナンが好ましく、特に好ましくは寒天である。寒天としては、例えば、伊那寒天PS−84、Z−10、AX−30、AX−100、AX−200、T−1、S−5、M−7(伊那食品工業社製)等の市販品を用いることができる。本発明においては、親水性高分子ゲル化剤の2種以上を併用してもよい。加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤と共に、アルギン酸やカードラン、ヒアルロン酸等のように、Ca等のイオンや、その他の凝固剤により固化する親水性高分子ゲル化剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することも可能である。
【0017】
また、必要に応じてその他の親水性高分子、例えば、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースをはじめとする合成高分子や、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の天然高分子を本発明の効果を損なわない範囲で配合することも可能である。特に、ケルトロールを寒天と併用すると、カプセルが軟らかくなる傾向がある。水相としては、水の他、水に溶解又は分散可能な成分や薬剤を配合することもできる。
【0018】
本発明の内油相、外油相としては、水相と混合せず、製造時に全体として液状であれば極性油〜非極性油まで、通常使用され得る幅広い油分の中から選択することができる。例えば、炭化水素油、エステル油、高級アルコール、高級脂肪酸、天然油脂、シリコーン油
等が挙げられる。また、これら油分に溶解又は分散可能な成分や薬剤を配合することもできる。なお、内包油滴の外油相への浸潤防止の点から、内油相と外油相の極性に差がある方が好ましい。
【0019】
本発明のマイクロカプセル製造の第1段階であるO/Wエマルジョンの調製においては、平均粒径が0.01〜3μm、好ましくは0.01〜1μmと非常に微細で、しかも安定なエマルジョンとすることが必要である。粒径が大きすぎると、その後のO/W/O乳化で内油相同士の融合や、内油相と外油相との合一を生じやすく、十分な乳化を行うことができない。また、内油相のロスが大きくなる傾向がある。
【0020】
このようなO/Wエマルジョンを容易に得る方法として、例えば、親水性非イオン界面活性剤と水溶性溶媒とを用いた乳化法(特公昭57−29213号公報)が有効である。すなわち、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相を添加して水溶性
溶媒中油型エマルジョンを製造し、該エマルジョンに親水性高分子ゲル化剤水溶液を添加して、O/Wエマルジョンを得る。親水性高分子ゲル化剤の添加については、水溶性溶媒中油型エマルジョンに水を加えてO/Wエマルジョンとしてから、親水性高分子ゲル化剤水溶液で希釈してもよい。また、特に問題を生じない限り予め水溶性溶媒中に親水性高分子ゲル化剤を添加しておくことも可能である。
【0021】
前記水溶性溶媒としては、親水性非イオン界面活性剤を溶解し、その後に添加する内油相との界面に効率よく配向させる効果を持つものであり、低級一価アルコール類、低級多価アルコール類、ケトン類、アルデヒド類、エーテル類、アミン類、低級脂肪酸類、その他親水性で非イオン界面活性剤を溶解するものであれば極めて広い範囲の物質から選択することができる。具体的には、特公昭57−29213号公報記載のものが例示されるが、化粧料や医薬品において好ましくはエタノール、プロパノール等の低級一価アルコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール等の低級多価アルコールである。なお、水溶性溶媒中に少量の水、例えば水溶性溶媒に対して15重量%以下の水を含有していてもよい。
【0022】
また、親水性非イオン性界面活性剤としては、POE付加型、又はPOE・POP付加型非イオン性界面活性剤が好ましく、具体的には特公昭57−29213号公報記載のものが例示される。第2段階のO/W/Oエマルジョンの調製は、O/Wエマルジョンを外油相に分散乳化することにより行う。このとき用いる乳化機は特に限定されず、通常乳化に用いられる攪拌装置を適宜用いればよい。なお、外油相中には、乳化剤として親油性界面活性剤を配合しておくことが好ましい。親油性界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の何れも用いることができ、外油相成分の種類等に応じて公知のものから適宜選択して用いればよい。
【0023】
このようなO/W/Oエマルジョンの水相を固化することにより、微細な内包油滴を多数含有するマイクロカプセルとすることができる。本発明のマイクロカプセルの好ましい製法としては、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め水(問題のない限り他の水性成分を含んでいてもよい)に加熱溶解してゲル化剤水溶液を調製しておき、これを前記水溶性溶媒中油型エマルジョンにゲル化剤の固化温度以上で添加してO/Wエマルジョンとし、系の温度を固化温度以上に維持しながらO/W/Oエマルジョンまで調製した後、固化温度以下に冷却して水相を固化し、カプセルとする方法が挙げられる。例えば、寒天やカラギーナンの場合、固化温度は約30℃であり、ゲル化剤水溶液の調製温度は90〜100℃、エマルジョンの調製温度は約50〜90℃とすることが好適である。なお、イオン等の添加により固化するものを併用する場合には、冷却前にO/W/Oエマルジョンに、そのイオンを含む金属塩またはその水溶液を添加後、冷却すればよい。
【0024】
本発明のマイクロカプセルは、O/Wエマルジョンの段階で内油相を上記のように微細且つ安定に分散しているので、O/W/Oエマルジョン調製時の乳化条件を自由に設定でき、カプセル径のコントロールが容易である。例えば、O/W/O乳化時の温度は室温〜約90℃、攪拌速度は約100〜10,000rpmの広い範囲で行うことができ、このような場合でも、内油相のロスがなく、内油相の融合による内包油滴径の増大もほとんどない。O/W/O乳化時の温度、攪拌速度が高い程、カプセル径は小さくなり、親水性ゲル化剤濃度や外油相の粘度が高いほど、カプセル径は大きくなる傾向がある。本発明の方法によれば、マイクロカプセル径は5〜1000μmの幅広い範囲で制御可能である。
本発明のマイクロカプセルの詳細は、特開2001−97818号公報に記載されている。
【0025】
マイクロカプセル中におけるパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンの配合量は0.1〜30質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。
【0026】
なおマイクロカプセルは、油性分散物の状態で、あるいは、遠心分離、濾過等の常法により外油相の一部あるいは全部を除去したものを血流促進剤として用い、外用基剤に配合することができる。なおマイクロカプセルを固形分のまま長期にわたって放置すると収縮を生じることがあるので、水性基剤又は油性基剤中でストックすることが好ましい。
【0027】
本発明の血流促進剤は、マイクロカプセル又はその油性分散物の形で用いられる。好ましくは、マイクロカプセルの油性分散物の形で用いるのが操作性の点でよい。また本発明にかかる外用剤は、前記マイクロカプセル又はその油性分散物を血流促進剤として配合したものである。血流促進剤はファンデーションや口紅等の固形化粧料や、ローション等の水性基剤に配合することも可能である。
【0028】
本発明の血流促進剤中には、血流促進の有効成分として、前記マイクロカプセルを配合するが、それと共にその他の従来公知の血流促進成分を併して配合することができ、このように他の血流促進成分を併用することにより、より強い血流促進効果を発揮することができる。
ここで、他の血流促進成分としては、例えばシンナモイル型化合物、オイゲノール誘導体、カプサイシン、ジンゲロール、センブリエキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、トコフェロール、カルバクロール、チモール、シトラール等を挙げることができる。
【0029】
本発明の血流促進剤は、例えば口腔用組成物、医薬品、育毛剤、浴用剤、化粧品を含む外用剤などに配合して使用することができる。
【0030】
本発明の血流促進剤を口腔用組成物、医薬品、育毛剤、浴用剤、皮膚外用剤等に配合する場合、これら製剤には、通常その製剤に使用されている成分を用いることができ、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
本発明の血流促進剤は、特に外用剤として用いることが好適であり、中でも皮膚外用剤として用いることが好ましい。
【0031】
本発明の外用剤中における血流促進剤の配合量は、パーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンに換算して0.01〜15質量%、特に1〜10質量%となる範囲が好ましく、配合量が少なすぎると満足な血流促進効果が発揮されない場合があり、多すぎると配合する製剤の安定性を損なう場合がある。
【0032】
外用剤としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、ローション、美容液、マッサージ料、スクラブ料等の基礎化粧料、ボディソープ、クレンジング料等の洗浄料、ファンデーション、フェイスパウダー、頬紅、口紅、アイシャドウ、アイブロウ、マスカラ、フェイスパウダー等のメークアップ化粧料、ヘアークリーム、へアートニック、トリートメント、育毛料、シャンプー、リンス等の毛髪化粧料等が挙げられる。また、その性状としては乳化状、可溶化状、液状、固形状、ジェル状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。これらは、本発明の効果が損なわれない限り特に制限されない。
【0033】
本発明の外用剤には、上記必須成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品や医薬品等の外用剤に用いられる成分、例えば、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、植物エキス類、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0034】
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸、アルコキシサリチル酸および/またはその塩類等の他の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【実施例】
【0035】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。なお実施例において、パーフルオロヘキサンとしてはFiflow SC(CIT Sarl社製商品名)を用いた。
【0036】
試験例1(マイクロカプセル処方)
内油相:
流動パラフィン 10 質量%
パーフルオロヘキサン 10
水相:
1,3−ブチレングリコール 10
POE(60)硬化ヒマシ油 1
寒天 1.5
イオン交換水 to100
外油相:
POEメチルポリシロキサン共重合体 1
オクタメチルシクロテトラシロキサン 49
【0037】
(製法)
内油相を、1,3−ブチレングリコール及びPOE(60)硬化ヒマシ油の混合物に徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョンを得た。寒天をイオン交換水に90℃で加熱溶解して寒天水溶液を調製し、50℃まで冷却した。50℃に加熱した前記水溶性溶媒中油型エマルジョンに、前記寒天水溶液を攪拌しながら添加して、O/Wエマルジョン(平均粒子径1μm)を得た。O/Wエマルジョンを外油相に添加して50℃×500rpmで乳化し、O/W/Oエマルジョンを調製した。これを徐々に室温まで冷却し、水相の寒天を固化させることにより、マイクロカプセル油性分散物(カプセル平均粒子径100μm、内包油滴平均粒子径1μm)を得た。
【0038】
試験例2(O/W/O乳化処方)
内油相:
流動パラフィン 10 質量%
パーフルオロヘキサン 10
水相:
1,3−ブチレングリコール 10
POE(60)硬化ヒマシ油 1
イオン交換水 to100
外油相:
POEメチルポリシロキサン共重合体 1
オクタメチルシクロテトラシロキサン 49
【0039】
(製法)
内油相を、1,3−ブチレングリコール及びPOE(60)硬化ヒマシ油の混合物に徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョンを得た。前記水溶性溶媒中油型エマルジョンに、水を攪拌しながら添加して、O/Wエマルジョン(平均粒子径1μm)を得た。O/Wエマルジョンを外油相に添加して50℃×3000rpmで乳化し、O/W/Oエマルジョン(水相平均粒子径10μm、内包油滴平均粒子径1μm)を調製した。
【0040】
試験例3(O/W乳化処方)
内油相:
流動パラフィン 10 質量%
パーフルオロヘキサン 10
水相:
1,3−ブチレングリコール 10
POE(60)硬化ヒマシ油 1
イオン交換水 to100
【0041】
(製法)
内油相を、1,3−ブチレングリコール及びPOE(60)硬化ヒマシ油の混合物に徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョンを得た。前記水溶性溶媒中油型エマルジョンに、水を攪拌しながら添加して、O/Wエマルジョン(平均粒子径1μm)を得た。
【0042】
試験例4(O/W処方)
油相:
流動パラフィン 10 質量%
パーフルオロヘキサン 10
水相:
1,3−ブチレングリコール 10
POE(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 1
イオン交換水 to100
【0043】
(製法)
内油相を、1,3−ブチレングリコール及びPOE(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル、水の混合物に徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョン(平均粒子径5μm)を得た。
【0044】
試験例5(マイクロカプセル処方)
内油相:
パーフルオロヘキサン 20 質量%
水相:
1,3−ブチレングリコール 10
POE(60)硬化ヒマシ油 1
寒天 1.5
イオン交換水 to100
外油相:
POEメチルポリシロキサン共重合体 1
オクタメチルシクロテトラシロキサン 49
【0045】
(製法)
試験例1と同様の方法でマイクロカプセル油性分散物(カプセル平均粒子径10μm、内包油滴平均粒子径0.5μm)を得た。
【0046】
試験例6(マイクロカプセル処方、フッ素化合物無配合)
内油相:
流動パラフィン 20 質量%
水相:
1,3−ブチレングリコール 10
POE(60)硬化ヒマシ油 1
寒天 1.5
イオン交換水 to100
外油相:
POEメチルポリシロキサン共重合体 1
オクタメチルシクロテトラシロキサン 49
【0047】
(製法)
試験例1と同様の方法でマイクロカプセル油性分散物(カプセル平均粒子径10μm、内包油滴平均粒子径0.1μm)を得た。
【0048】
試験例7(マイクロカプセル処方)
内油相:
パーフルオロヘキサン 30 質量%
水相:
1,3−ブチレングリコール 15
POE(60)硬化ヒマシ油 1.5
寒天 2.25
イオン交換水 to100
外油相:
POEメチルポリシロキサン共重合体 0.5
オクタメチルシクロテトラシロキサン 24.5
【0049】
(製法)
試験例1と同様の方法でマイクロカプセル油性分散物(カプセル平均粒子径10μm、内包油滴平均粒子径0.5μm)を得た。
【0050】
(安定性試験)
上記で得られた試験例1〜7の分散物について、0℃、25℃、36℃、50℃で2週間静置したのちの乳化安定性を比較した。評価基準は次のとおりである。その結果を表1に示す。
○:安定(乳化粒子系変化なし)
△:やや不安定(一部乳化粒子系変化あり)
×:不安定(乳化粒子の合一、相分離あり)
【0051】
【表1】

【0052】
表1からわかるように、パーフルオロヘキサンを配合した試験例1、5、7、およびパーフルオロヘキサンを配合していない試験例6はいずれもマイクロカプセル処方であるため、0〜50℃のすべてにおいて安定であった。
試験例2〜4はいずれもマイクロカプセル化されておらず、パーフルオロヘキサンを含むものであるため、少なくとも50℃での安定性が確保されていない。
【0053】
(血流促進効果試験)
次に、試験例1および試験例5で得られたマイクロカプセル油性分散物の血流促進効果について、パーフルオロヘキサンを配合していない試験例6のマイクロカプセル油性分散物と比較した。測定方法は次のとおりである。その結果を図2に示す。
【0054】
(血流促進効果の測定方法)
恒温恒湿室(温度23℃、湿度44%)にて20分馴化後、前腕内側部(2cm×2cm四方)に薬剤を60μl塗布した。塗布前と塗布20分後にレーザードップラー組織血流計(FLO−N1:オメガフロー オメガウエイブ社製)により血流を測定し、塗布前後を比較した。
【0055】
図2から分かるように、塗布前を100%とした場合、パーフルオロヘキサンを配合していない試験例6の塗布後では150%、パーフルオロヘキサン10質量%を配合している試験例1の塗布後では275%、パーフルオロヘキサン20質量%を配合している試験例5の塗布後では370%と血流量の増加が認められた。
【0056】
実施例1(マイクロカプセル配合皮膚外用剤)
上記試験例5のマイクロカプセル油性分散物 50 質量%
(ジメチコン/(PEG−10/15))クロスポリマー 2.5
1,3−ブチレングリコール 10
イオン交換水 to100
【0057】
実施例2(マイクロカプセル配合皮膚外用剤)
上記試験例5のマイクロカプセル油性分散物 50 質量%
有機変性粘土鉱物 1.5
POEグリセロールトリイソステアリン酸 0.2
1,3−ブチレングリコール 10
イオン交換水 to100
【0058】
比較例1(0/W乳化皮膚外用剤)
パーフルオロヘキサン 3 質量%
(ジメチコン/(PEG−10/15))クロスポリマー 2.5
1,3−ブチレングリコール 10
イオン交換水 to100
【0059】
比較例2(0/W/O乳化皮膚外用剤)
パーフルオロヘキサン 3 質量%
オクタメチルシクロテトラシロキサン 20
POEグリセロールトリイソステアリン酸 0.2
1,3−ブチレングリコール 10
イオン交換水 to100
【0060】
実施例3(マイクロカプセル配合皮膚外用剤)
上記試験例7のマイクロカプセル油性分散物 50 質量%
有機変性粘土鉱物 1.5
POEグリセロールトリイソステアリン酸 0.2
1,3−ブチレングリコール 10
イオン交換水 to100
【0061】
得られた実施例1〜3、比較例1,2の乳化分散体の乳化安定性を次の基準で測定した。その結果を表2に示す。
【0062】
(乳化安定性試験)
上記で得られた実施例1〜3、比較例1,2の分散物について、0℃、25℃、36℃、50℃で2週間静置したのちの乳化安定性を比較した。評価基準は次のとおりである。その結果を表2に示す。
○:安定(乳化粒子系変化なし)
△:やや不安定(一部乳化粒子系変化あり)
×:不安定(乳化粒子の合一、相分離あり)
【0063】
【表2】

【0064】
表2から、本発明のマイクロカプセル配合皮膚外用剤である実施例1〜3は、いずれもマイクロカプセル処方であるため、0〜50℃のすべてにおいて安定であった。
比較例1,2はいずれもマイクロカプセル化されておらず、パーフルオロヘキサンを含むものであるため、パーフルオロヘキサンの配合量が少ないにもかかわらず安定性が確保されていない。
【0065】
以下に、本発明による血流促進剤(マイクロカプセル油性分散物)およびマイクロカプセル配合皮膚外用剤を説明する。本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0066】
実施例4(マイクロカプセル油性分散物)
内油相:
(1)パーフルオロデカリン 5 質量%
(2)パーフルオロオクタン 5
水相:
(3)POE(60)硬化ヒマシ油 0.5
(4)グリセリン 10
(5)寒天(PS−84) 3
(6)イオン交換水 26.5
外油相:
(7)POEメチルポリシロキサン共重合体 0.5
(8)ジメチルポリシロキサン(6cps) 49.5
合計 100.0
【0067】
製法:
(1)と(2)とを混合して内油相とした。(3)、(4)及び(6)0.5%の混合物に内油相を徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョンを得た。(5)を(6)26%に90℃で加熱溶解して寒天水溶液を調製し、50℃まで冷却した。50℃に加熱した前記水溶性溶媒中油型エマルジョンに、前記寒天水溶液を攪拌しながら添加して、O/Wエマルジョンを得た。O/Wエマルジョンを、所定の温度を維持しながら(7)と(8)の混合物に添加して乳化し、O/W/Oエマルジョンを調製した。これを徐々に室温まで冷却し、水相の寒天を固化させることにより、マイクロカプセル油性分散物を得た。
【0068】
実施例5(マイクロカプセル油性分散物)
内油相:
(1)パーフルオロプロパン 2 質量%
(2)パーフルオロヘキサン 10
水相:
(3)ソルビタンモノオレイン酸エステル 2
(4)グリセリン 5
(5)寒天(PS−84) 3
(6)イオン交換水 28
外油相:
(7)POEメチルポリシロキサン共重合体 0.5
(8)ジメチルポリシロキサン(6cps) 49.5
合計 100.0
【0069】
製法:
(1)と(2)とを混合して内油相とした。(3)、(4)及び(6)13%の混合物に内油相を添加して乳化し、O/Wエマルジョンを得た。(5)を(6)15%に90℃で加熱溶解して寒天水溶液を調製し、50℃まで冷却した。50℃に加熱した前記O/Wエマルジョンに、寒天水溶液を混合した。以下、上記実施例と同様に行った。
【0070】
実施例6
内油相:
(1)パーフルオロブチルエチルエーテル 5 質量%
(2)パーフルオロヘキシルメチルエーテル 9.5
水相:
(3)POE(60)硬化ヒマシ油 0.5
(4)1,3-ブチレングリコール 10
(5)寒天 1.5
(6)イオン交換水 23.5
外油相:
(7)POEメチルポリシロキサン共重合体 1
(8)ジメチルポリシロキサン(6cs) 48
(9)ベントン38 1
合計 100.0
【0071】
製法:
(1)と(2)とを混合して内油相とした。(3)、(4)及び(6)0.5%の混合物に内油相を徐々に添加して、水溶性溶媒中油型エマルジョンを得た。(5)を(6)の残部に90℃で加熱溶解して寒天水溶液を調製し、30℃まで冷却した。50℃に加熱した前記水溶性溶媒中油型エマルジョンに、前記カラギーナン水溶液を攪拌しながら添加して、O/Wエマルジョンを得た(平均粒子径2μm)。O/Wエマルジョンを、(7)、(8)、(9)の混合物に加え、50℃×7000rpmで乳化してO/W/Oエマルジョンを調製した。これを徐々に室温まで冷却して、水相の寒天を固化させることにより、マイクロカプセル油性分散物を得た。
【符号の説明】
【0072】
1…内包油滴(内油相)
2…マイクロカプセル
3…外油相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外油相中に水中油型エマルジョンを内包したマイクロカプセルを含む血流促進剤であって、
前記マイクロカプセルは平均粒子径が0.01〜3μmの油滴を内包し、且つ親水性高分子ゲル化剤をカプセル化剤として含み、
前記油滴中にパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンをマイクロカプセル全量に対して0.1〜30質量%含むことを特徴とする血流促進剤。
【請求項2】
前記マイクロカプセルが、
パーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンを含む内油相と、
加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め加熱溶解しておいた水相とから、該ゲル化剤の固化温度以上で平均粒子径が0.01〜100μmの水中油型(O/W)エマルジョンを調製する水中油型(O/W)調製工程と、
前記水中油型(O/W)エマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以上で外油相中に分散乳化する油中(水中油)型(O/W/O)エマルジョン調製工程と、
前記油中(水中油)型(O/W/O)エマルジョンを該ゲル化剤の固化温度以下に冷却して水相を固化するカプセル化工程と、
を経て製造されたものであることを特徴とする請求項1に記載の血流促進剤。
【請求項3】
前記水中油型(O/W)調製工程が、親水性非イオン界面活性剤を含有する水溶性溶媒中に内油相成分を添加して水溶性溶媒中油型エマルジョンを調製し、該水溶性溶媒中油型エマルジョンと、加熱冷却により固化する親水性高分子ゲル化剤を予め加熱溶解しておいた水溶液とを該ゲル化剤の固化温度以上で混合する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の血流促進剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の血流促進剤をパーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンに換算して、0.01〜15質量%配合してなることを特徴とする血流促進作用を有する外用剤。
【請求項5】
パーフルオロヘキサンおよび/またはパーフルオロデカリンを有効成分として含むことを特徴とする血流促進剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−246396(P2011−246396A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121463(P2010−121463)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】