説明

血流動態解析装置、磁気共鳴イメージング装置、血流動態解析方法、およびプログラム

【課題】算出される灌流パラメータの値の信頼性を高めることができる血流動態解析装置、磁気共鳴イメージング装置、および血流動態解析方法を提供する。
【解決手段】磁気共鳴信号の信号強度の時間変化を表す信号強度データ系列を求め、信号強度データ系列を用いて、造影剤の濃度の時間変化を表す濃度データ系列を求める。その後、ピーク値時刻から離れるに従って、造影剤の濃度の重みが小さくなるように定義された係数である重み係数で重み付けされた造影剤の濃度を用いて、フィッティング関数の3つの定数を算出する。この定数を用いて、被検体の血流の動態を解析するための灌流パラメータを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された磁気共鳴信号に基づいて被検体の血流の動態を解析する血流動態解析装置、磁気共鳴イメージング装置、血流動態解析方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に造影剤を注入して脳の血流動態を解析する方法が知られている(特許文献1参照)。脳の血流動態を解析する場合、例えば、造影剤の濃度の時間変化に基づいてΓ変量関数の定数を算出し、算出された定数に基づいて灌流パラメータ(例えば、平均通過時間MTT(Mean Transit Time)、脳血液量CBV(Cerebral Blood Volume)、脳血流量CBF(Cerebral
Blood Flow))を推定することが行われている。灌流パラメータを推定する方法として、Γ変量関数の一次モーメントを用いる一次モーメント法がある。一次モーメント法として、フィッティングを行わずにΓ変量関数の定数を算出する方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-525074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一次モーメント法において、フィッティングを行わずにΓ変量関数の定数を算出する方法では、被検体から収集した磁気共鳴信号の信号雑音比(SN比)が低い場合や、造影剤の滞留などが生じた場合、算出された灌流パラメータの値の信頼性が低くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、算出される灌流パラメータの値の信頼性を高めることができる血流動態解析装置、磁気共鳴イメージング装置、血流動態解析方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決する本発明の第1の血流動態解析装置は、
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流の動態を解析する血流動態解析装置であって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出手段と、
前記各時刻における前記造影剤の濃度を表すデータが時系列的に並べられた濃度データ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティング手段と、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出手段と、
を有し、
前記フィッティング手段は、
前記濃度データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出する。
本発明の第1の磁気共鳴イメージング装置は、本発明の第1の血流動態解析装置を有している。
【0007】
本発明の第2の血流動態解析装置は、
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流動態を解析する血流動態解析装置であって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出手段と、
算出された前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を求める対数処理手段と、
前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を表すデータが時系列的に並べられた対数値データ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティング手段と、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出手段と、
を有し、
前記フィッティング手段は、
前記対数値データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の対数値の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の対数値の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度の対数値を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度の対数値に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出する。
本発明の第2の磁気共鳴イメージング装置は、本発明の第2の血流動態解析装置を有している。
【0008】
本発明の第1の血流動態解析方法は、
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流の動態を解析する血流動態解析方法であって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出ステップと、
前記各時刻における前記造影剤の濃度を表すデータが時系列的に並べられた濃度データ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティングステップと、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
を有し、
前記フィッティングステップは、
前記濃度データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出する。
【0009】
また、本発明の第2の血流動態解析方法は、
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流動態を解析する血流動態解析方法であって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出ステップと、
算出された前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を求める対数処理ステップと、
前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を表すデータが時系列的に並べられた対数値データ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティングステップと、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
を有し、
前記フィッティングステップは、
前記対数値データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の対数値の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の対数値の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度の対数値を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度の対数値に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出する。
【0010】
本発明の第1のプログラムは、
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流の動態を解析するためのプログラムであって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出処理と、
前記各時刻における前記造影剤の濃度を表すデータが時系列的に並べられたデータ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティング処理であって、前記データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出するフィッティング処理と、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出処理と、
を実行するためのプログラムである。
【0011】
本発明の第2のプログラムは、
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流動態を解析するためのプログラムであって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出処理と、
算出された前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を求める対数変換処理と、
前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を表すデータが時系列的に並べられた対数値データ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティング処理であって、前記対数値データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の対数値の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の対数値の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度の対数値を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度の対数値に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出するフィッティング処理と、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出処理と、
を実行するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、重み付けによって、フィッティング関数の定数を算出している。したがって、算出される被検体の血流の動態を解析するためのパラメータの値の信頼性を高めることができる。
尚、本発明において、フィッティング関数の定数とは、フィッティング関数を表す式(例えば、式(4)、式(6))に含まれる係数や次数(例えば、式(4)、式(6)に含まれるα、β、γ)など、重み付けされた造影剤の濃度(又は重み付けされた造影剤の濃度の対数値)を用いることによって算出される数である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の概略図である。
【図2】MRI装置1の処理フローを示す図である。
【図3】被検体9に設定されたスライスの一例である。
【図4】スライスA1〜Anから得られるフレーム画像を示す概念図である。
【図5】スライスAkの領域Raにおける磁気共鳴信号の信号強度の時間変化を表す図である。
【図6】信号強度データ系列Dxにおけるピーク値時刻tpを示す図である。
【図7】算出されたベースラインS0を示す図である。
【図8】式(3)に従って得られた造影剤の濃度C(t)の時間変化を表す濃度データ系列Dyを示す図である。
【図9】算出されたα、β、およびγを式(4)に代入することにより得られるΓ変量関数f(t)と、濃度データ系列Dyとを示す図である。
【図10】第2の実施形態におけるMRI装置100を示す図である。
【図11】第2の実施形態におけるMRI装置100の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはなく、種々の変形が可能である。
【0015】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の概略図である。
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ)1は、コイルアセンブリ2と、テーブル3と、造影剤注入装置4と、受信コイル5と、制御装置6と、入力装置7と、表示装置8とを有している。
【0017】
コイルアセンブリ2は、被検体9が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配パルスを印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。尚、第1の実施形態では、超伝導コイル22が用いられているが、超伝導コイル22の代わりに、永久磁石を用いてもよい。
【0018】
テーブル3は、クレードル31を有している。クレードル31は、z方向および−z方向に移動するように構成されている。クレードル31がz方向に移動することによって、被検体9がボア21に搬送される。クレードル31が−z方向に移動することによって、ボア21に搬送された被検体9は、ボア21から搬出される。
【0019】
造影剤注入装置4は、被検体9に造影剤を注入する。
【0020】
受信コイル5は、被検体9の頭部9aに取り付けられている。受信コイル5が受信したMR(Magnetic Resonance)信号は、制御装置6に伝送される。
【0021】
制御装置6は、コイル制御手段61〜灌流パラメータ算出手段67を有している。
【0022】
コイル制御手段61は、オペレータ10によって入力装置7から入力された撮影命令に応答して、被検体9を撮影するためのパルスシーケンスが実行されるように、勾配コイル23および送信コイル24を制御する。
【0023】
信号強度算出手段62は、被検体9から収集された各時刻における磁気共鳴信号の信号強度を算出する。
【0024】
時刻算出手段63は、信号強度データ系列Dx(図6参照)において信号強度がピーク値になるときの時刻を算出する。また、時刻算出手段63は、信号強度データ系列Dxにピーク部が現れ始めるときの時刻を算出する。
【0025】
ベースライン決定手段64は、信号強度データ系列Dxに基づいて、被検体9の各領域に前記造影剤が到達する前の信号強度の値を表すベースラインを決定する。
【0026】
造影剤濃度算出手段65は、信号強度算出手段62が算出した各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、各時刻における前記造影剤の濃度を算出する。
【0027】
フィッティング手段66は、濃度データ系列Dy(図8参照)を用いて、後述するフィッティング関数f(t)の定数α、β、およびγ(式(4)参照)を算出する。具体的には、濃度データ系列Dyに現れるピーク部PUyにおける造影剤の濃度の重みが、ピーク部PUyよりも時間的に遅れた部分における造影剤の濃度の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けし、重み付けされた造影剤の濃度に基づいて、フィッティング関数f(t)の定数α、β、およびγを算出する。
【0028】
灌流パラメータ算出手段67は、フィティング手段66が算出したフィッティング関数f(t)の定数を用いて、被検体9の血流の動態を解析するための灌流パラメータ(例えば、平均通過時間MTT、脳血液量CBV、脳血流量CBF)を算出する。
【0029】
尚、コイル制御手段61〜灌流パラメータ算出手段67は、各手段を実行するためのプログラムを制御装置6にインストールすることにより実現されている。ただし、プログラムを用いずに、ハードウェアのみで実現してもよい。制御装置6に含まれる信号強度算出手段62、時刻算出手段63、ベースライン決定手段64、造影剤濃度算出手段65、フィッティング手段66、および灌流パラメータ算出手段67を合わせたものが、本発明の第1の実施形態における血流動態解析装置に相当する。
【0030】
入力装置7は、オペレータ10の操作に応じて、種々の命令を制御装置6に入力する。
【0031】
表示装置8は、種々の情報や画像を表示する。
【0032】
MRI装置1は上記のように構成されている。次に、MRI装置1の動作について説明する。
【0033】
図2は、MRI装置1の処理フローを示す図である。
【0034】
ステップS1では、被検体9の頭部9aの造影撮影が行われる。オペレータ10は、造影を行うために、入力装置7(図1参照)を操作して、被検体9にスライスを設定する。
【0035】
図3は、被検体9に設定されたスライスの一例である。
【0036】
被検体9には、n枚のスライスA1〜Anが設定されている。スライスの枚数は、例えば、n=12である。スライスの枚数は、必要に応じて、任意の枚数を設定することができる。
【0037】
オペレータ10は、スライスA1〜Anを設定した後、MRI装置1のコイル制御手段61(図1参照)に、被検体9を撮影する撮影命令を伝送する。この命令に応答して、造影剤注入装置4は被検体9に造影剤を注入するとともに、コイル制御手段61は、被検体9の頭部9aを撮影するためのパルスシーケンスが実行されるように、勾配コイル23および送信コイル24を制御する。
【0038】
第1の実施形態では、マルチスライススキャンにより、各スライスA1〜Anからm枚のフレーム画像を得るためのパルスシーケンスが実行される。したがって、1枚のスライスにつき、m枚のフレーム画像が得られる。例えば、フレーム画像の枚数m=85枚である。パルスシーケンスを実行することにより、スライスA1〜Anからフレーム画像のデータが収集される。
【0039】
図4は、スライスA1〜Anから得られるフレーム画像を示す概念図である。
【0040】
図4(a)は、被検体9の頭部9aに設定されたn枚のスライスA1〜Anにおけるフレーム画像を、収集順序に従って時系列に並べて示している。図4(a)では、スライスA1〜AnのうちのスライスAkにおけるフレーム画像について、符号FK1〜FKmで示されている。スライスAkにおけるフレーム画像FK1〜FKmは、時刻t1〜tmにおいて収集された画像である。
【0041】
図4(b)は、スライスAkの断面と、スライスAkから取得されたm枚のフレーム画像FK1〜FKmが示されている。各フレーム画像FK1〜FKmは、α×β個の画素P1、P2、・・・Pzを有している。図4(b)では、画素P1、P2、・・・Pzを見易くするため、画素P1、P2、・・・Pzのサイズを大きくしているが、実際の画素はもっと小さいサイズで構成されている。各フレーム画像FK1〜FKmの画素P1、P2、・・・Pzは、スライスAkの領域R1、R2、・・・Rzに対応している。
【0042】
ステップS1を実行した後、ステップS2に進む。
【0043】
ステップS2では、信号強度算出手段62(図1参照)が、被検体のスライスA1〜Anの各領域R1〜Rzごとに、磁気共鳴信号の信号強度の時間変化を求める(図5参照)。
【0044】
図5は、スライスAkの領域Raにおける磁気共鳴信号の信号強度の時間変化を表す図である。
【0045】
図5(a)には、スライスAkの断面と、スライスAkのフレーム画像FK1〜FKmが示されている(図4(c)参照)。
【0046】
図5(b)には、スライスAkの領域Raにおける磁気共鳴信号の信号強度S(t)の時間変化を表す信号強度データ系列Dxが示されている。
【0047】
横軸は、スライスAkからフレーム画像FK1〜FKmを取得した時刻tであり、縦軸は各フレーム画像FK1〜FKmの画素Paおける信号強度S(t)である。信号強度データ系列Dxは、時系列的に並ぶデータDS1〜DSmを有している。データDS1〜DSmは、それぞれフレーム画像FK1〜FKmの画素Paにおける信号強度S(t)を表している。例えば、データDS1は、フレーム画像FK1の画素Paにおける信号強度S(t)を表しており、データDSgは、フレーム画像FKgの画素Paにおける信号強度S(t)を表している。
【0048】
第1の実施形態では、DSC(Dynamic Susceptibility Contrast)法を用いて被検体を撮影している。DSC法を用いた場合、図5(b)に示すように、信号強度データ系列Dxには、信号強度S(t)が急激に低下してから再び上昇する下に凸のピーク部PUxが現れる。
【0049】
図5には、スライスAkの領域Raにおける信号強度データ系列Dxが示されているが、スライスAk内の他の領域についても、信号強度データ系列Dxが得られている。更に、スライスAk以外の他のスライスの各領域についても、同様に、信号強度データ系列Dxが得られている。信号強度データ系列Dxを作成した後、ステップS3に進む。
【0050】
尚、ステップS3〜S8では、各スライスA1〜Anの各領域R1〜Rnごとに得られた信号強度データ系列Dxに対して、同じ処理が行われる。したがって、以下では、代表して、スライスAkの領域Raにおける信号強度データ系列Dxに対して行われる処理について説明する。
【0051】
ステップS3では、時刻算出手段63(図1参照)が、信号強度データ系列Dxにおいて信号強度S(t)がピーク値(最小値)になるときのピーク値時刻tpを算出する。
【0052】
図6は、信号強度データ系列Dxにおけるピーク値時刻tpを示す図である。
【0053】
第1の実施形態では、信号強度データ系列DxのデータDS1〜DSmのうち、データDS21における信号強度S21が最小になる。したがって、時刻算出手段63は、データDS21における時刻t21を、ピーク値時刻tpとして算出する。ピーク値時刻tp=t21を算出した後、ステップS4に進む。
【0054】
ステップS4では、時刻算出手段63が、信号強度データ系列Dxにおいてピーク部PUxが現れ始めるピーク部開始時刻tsを算出する。ピーク部開始時刻tsは、種々の方法を用いて算出することができる。例えば、ピーク部PUxは下に凸となっているので、ピーク値時刻tpから時間的に遡って信号強度S(t)が所定値S(t)よりも高くなったときの時刻を求めることによって、ピーク部開始時刻tsを算出することができる。第1の実施形態では、データDS17における時刻t17をピーク部開始時刻tsとして算出する。ピーク部開始時刻ts=t17を算出した後、ステップS5に進む。
【0055】
ステップS5では、ベースライン決定手段64(図1参照)が、信号強度データ系列Dxに基づいて、スライスAkの領域Raに造影剤が到達する前の信号強度の値を表すベースラインS0を決定する。ベースラインS0は、以下のようにして決定される。
【0056】
造影剤がスライスAkの領域Raに到達すると、造影剤の影響によって、領域Raから収集された磁気共鳴信号の信号強度S(t)は急激に下がる。したがってピーク部開始時刻tsよりも前の時刻に現れる各データは、造影剤が領域Raに到達する前の信号強度S(t)を表していると考えられる。したがって、データDS1〜DS16が表す信号強度S(t)を用いることによって、ベースラインS0を決定することができる。ただし、最初のデータDS1は誤差が大きいので、データDS1が表す信号強度S(t)は、ベースラインS0を決定するためのデータから除外され、データDS2〜DS16を用いてベースラインS0を決定する。
【0057】
第1の実施形態では、データDS2〜DS16における信号強度S(t)の重み付け平均を算出することによって、ベースラインS0を決定している。ベースラインS0の算出式は、以下の通りである。
S0=(ΣSi×Wi)/ΣWi ・・・(1)
ここで、Si:データDSiにおける信号強度S(t)
Wi:重み係数
尚、i=2〜16である。
【0058】
重み係数Wiは、データDSiがピーク部開始時刻tsから離れるに従って、データDSiにおける信号強度Siの重みが小さくなるように重み付けする係数である。このような重み係数Wiは、例えば、以下の式で表すことができる。
Wi=k1/{1+k2(t−ts)} ・・・(2)
k1およびk2:任意の定数
t:時刻(t2≦t≦t16)
【0059】
式(2)で表される重み係数Wiを用いてデータDSiを重み付けすることによって、ベースラインS0が表す信号強度の値を、ピーク部開始時刻tsにおけるデータDS17が表す信号強度に近づけることができ、信頼性の高いベースラインS0が得られる。
【0060】
図7は、算出されたベースラインS0を示す図である。
【0061】
ベースラインS0によって、造影剤が到達する前の信号強度の値を決定することができる。ベースラインS0を算出した後、ステップS6に進む。
【0062】
ステップS6では、造影剤濃度算出手段65(図1参照)が、スライスAkの領域Raの各時刻t1〜tmにおける造影剤の濃度を算出する。各時刻t1〜tmにおける造影剤の濃度C(t)は、以下の式を用いて求められる。
C(t)=lnS0−lnS(t) ・・・(3)
ここで、lnS0:ベースラインS0の対数値
lnS(t):信号強度S(t)の対数値
【0063】
図8は、式(3)に従って得られた造影剤の濃度C(t)の時間変化を表す濃度データ系列Dyを示す図である。
【0064】
濃度データ系列Dyは、時系列的に並ぶデータDC1〜DCmを有している。各データDC1〜DCmは、各時刻t1〜tmにおける造影剤の濃度C(t)を表している。各時刻t1〜tmにおける造影剤の濃度C(t)を算出した後、ステップS7に進む。
【0065】
ステップS7では、フィッティング手段66(図1参照)が、濃度データ系列Dy(図8参照)の各時刻t1〜tmにおける造影剤の濃度C(t)を用いて、フィッティング関数の定数を算出する。第1の実施形態では、フィッティング関数は、以下の式(4)で表されるΓ変量関数f(t)が用いられる。
f(t)=α(t−ts)β・eγ(t−ts) ・・・(4)
ただし、t≧ts
ts:ピーク部開始時間
α、β、およびγ:t≧tsにおける造影剤の濃度に基づいて決定される定数
【0066】
Γ変量関数f(t)は、t≧tsの範囲において使用されるフィッティング関数である。したがって、Γ変量関数f(t)に含まれるα、β、およびγは、t≧tsの範囲における造影剤の濃度C(t)の値を用いて算出される。ただし、第1の実施形態では、t≧tsの造影剤の濃度C(t)を重み係数Wjで重み付けし、重み付けされた値を用いて、α、β、およびγを算出する。重み係数Wjは、ピーク値時刻tpから離れるに従って、造影剤の濃度C(t)の重みが小さくなるように、造影剤の濃度C(t)を重み付けするための係数である。このような重み係数Wjは、例えば、以下の式で表すことができる。
Wj=k1/{1+k2|t−tp|k3} ・・・(5)
k1、k2、およびk3:任意の定数
t:時刻(t≧ts)
【0067】
上記のようにして、α、β、およびγが算出される。第1の実施形態では、最小二乗法を用いてα、β、およびγを算出しているが、最小二乗法以外の別の方法を使ってもよい。次に、算出されたα、β、およびγを式(4)に代入することにより得られるΓ変量関数f(t)と、濃度データ系列Dyとの違いについて、図9を参照しながら説明する。
【0068】
図9は、算出されたα、β、およびγを式(4)に代入することにより得られるΓ変量関数f(t)と、濃度データ系列Dyとを示す図である。
【0069】
図9を参照すると、式(5)で表される重み係数Wjを用いてα、β、およびγを算出することによって、Γ変量関数f(t)は、ピーク値時刻tpの近傍の時間範囲については、濃度データ系列Dyに近い値であるが、ピーク値時刻tpから時間的に遅くなる時間範囲については、濃度データ系列Dyからのずれが大きくなり、f(t)=0に近い値となる。しかし、図9に示すΓ変量関数f(t)は、濃度データ系列Dyよりも、造影剤の濃度の時間変化を精度よく表していると考えられる。以下に、この理由について説明する。
【0070】
濃度データ系列Dyを参照すると、時刻tsにおいて、領域Raにおける造影剤の濃度C(t)は次第に大きくなり始めている。したがって、時刻tsにおいて造影剤のボーラスが領域Riに到達し始めたと考えられる。時刻tsを過ぎると、領域Raにおける造影剤の濃度C(t)は次第に大きくなり、時刻tpにおいて造影剤の濃度C(t)は最大値となるが、時間が進むにつれて造影剤のボーラスは領域Raから流出するので、濃度C(t)は次第に小さくなり、最終的には、造影剤の濃度は、C(t)=0になると考えられる。しかし、図9に示す濃度データ系列Dyのように、造影剤の濃度は、ピーク部PUyを過ぎても、C(t)=0よりある程度大きい値を有する場合がある。この場合、濃度データ系列Dyは、ピーク部PUyにおいては、造影剤の濃度の値として信頼性が高いが、ピーク部PUyよりも時間的に遅くなる部分においては、造影剤の濃度の値としては信頼性が低いと考えられる。そこで、第1の実施形態では、ピーク値時刻tpから離れるに従って、造影剤の濃度C(t)の重みが小さくなるように造影剤の濃度C(t)を重み付けし(式(5)参照)、重み付けされた造影剤の濃度C(t)を用いて、Γ変量関数f(t)のα、β、およびγを算出している。したがって、Γ変量関数f(t)は、造影剤の濃度の値として信頼性の高いピーク部PUyが現れる時間範囲においては濃度データ系列Dyに近い値になるが、ピーク部PUyが現れる時間よりも遅い時間においてはf(t)=0に近い値になる。したがって、図9に示すΓ変量関数f(t)は、濃度データ系列Dyよりも、造影剤の濃度の時間変化を精度よく表していると考えられる。
【0071】
Γ変量関数f(t)のα、β、およびγを算出した後、ステップS8に進み、灌流パラメータ算出手段67(図1参照)が、算出されたα、β、およびγを用いて、種々の灌流パラメータ(例えば、平均通過時間MTT、脳血液量CBV、脳血流量CBF)算出する。
【0072】
以上説明したように、第1の実施形態では、式(5)に示す重み付け係数Wjを用いてα、β、およびγを算出することによって、濃度データ系列Dyよりも、造影剤の濃度の時間変化を精度よく表したΓ変量関数f(t)が得られる。したがって、このように算出されたα、β、およびγを用いて種々の灌流パラメータ(例えば、平均通過時間MTT、脳血液量CBV、脳血流量CBF)を算出することによって、算出される灌流パラメータの値の信頼性を高めることができる。
【0073】
尚、第1の実施形態では、ベースラインS0を決定するために、信号強度S(t)を、式(2)の重み係数Wiを用いて重み付けしている。しかし、式(2)以外の別の式で定義される重み係数を用いて重み付けしてもよい。
【0074】
また、第1の実施形態では、Γ変量関数f(t)に含まれるα、β、およびγを算出するために、造影剤の濃度C(t)を、式(5)の重み係数Wjで重み付けしている。しかし、式(5)以外の別の式で定義される重み係数を用いて重み付けしてもよい。
【0075】
また、第1の実施形態では、DSC(Dynamic Susceptibility Contrast)法を用いて被検体を撮影しているので、図5(b)に示すように、信号強度データ系列Dxには、信号強度S(t)が急激に低下してから再び上昇する下に凸のピーク部PUxが現れる。しかし、信号強度データ系列Dxに、上に凸のピーク部が現れるような測定法を用いてもよい。信号強度データ系列Dxに、上に凸のピーク部が現れる場合は、信号強度が最大値となるときの時刻をピーク値時刻tpとし、上に凸のピーク部が現れ始めるときの時刻をピーク部開始時刻tsとして、α、β、およびγを算出すればよい。
【0076】
(2)第2の実施形態
第1の実施形態においては、式(3)のC(t)を用いて、式(4)のフィッティング関数f(t)のα、β、およびγを算出している。しかし、式(4)のフィッティング関数f(t)は、非線形であるので、α、β、およびγを算出するためには反復計算を行う必要がある。したがって、計算時間が長くなることがある。そこで、第2の実施形態では、短い計算時間でα、β、およびγを算出できる例について説明する。
【0077】
先ず、第2の実施形態において、短い計算時間でフィッティングを行うことができる原理について説明する。
【0078】
一般に、フィッティング関数が線形である場合、短い計算時間でフィッティング関数の係数を求めることができる。しかし、第1の実施形態で使用されたフィッティング関数f(t)は、非線形のフィッティング関数である。そこで、フィッティング関数f(t)を対数変換してみる。f(t)を対数変換すると、以下の式(6)で表せる。
ln{f(t)}=ln(α)+β・ln(t−ts)−γ(t−ts) ・・・(6)
ただし、t≧ts
【0079】
式(6)を参照すると、右辺が線形で表される。したがって、式(6)で表されるln{f(t)}をフィッティング関数として用いることによって、α、β、およびγを短時間で算出することが可能となる。しかし、式(6)の線形式を得るためには、f(t)を対数変換しなければならないので、f(t)のα、β、およびγを算出するために使用された造影剤の濃度C(t)(式(3)参照)も対数変換する必要がある。C(t)を対数変換すると、以下の式(7)で表される。
lnC(t)=ln{lnS0−lnS(t)} ・・・(7)
【0080】
式(6)および(7)は、ともに対数変換されているので、式(7)を用いることによって、lnf(t)のα、β、およびγを算出することができる。以下に、式(6)および(7)を用いてフィッティングを行う第2の実施形態について説明する。
【0081】
図10は、第2の実施形態におけるMRI装置100を示す図である。
【0082】
第2の実施形態におけるMRI装置100の説明に当たっては、第1の実施形態におけるMRI装置1との相違点について主に説明する。
【0083】
第2の実施形態のMRI装置100と、第1の実施形態のMRI装置1との相違点は、以下の2つである。
(1)第2の実施形態のMRI装置100は、新たな構成要素として、造影剤濃度算出手段65とフィッティング手段66との間に対数変換手段651を備えている。
(2)第2の実施形態のMRI装置100が有するフィッティング手段66は、第1の実施形態のMRI装置1が有するフィッティング手段66とは異なる構造である。
【0084】
尚、制御装置6に含まれる信号強度算出手段62、時刻算出手段63、ベースライン決定手段64、造影剤濃度算出手段65、対数変換手段651、フィッティング手段66、および灌流パラメータ算出手段67を合わせたものが、本発明の第2の実施形態における血流動態解析装置に相当する。
【0085】
以下に、第2の実施形態におけるMRI装置100の動作について説明する。
【0086】
図11は、第2の実施形態におけるMRI装置100の処理フローを示す図である。
【0087】
尚、ステップS1〜S6は、第1の実施形態における処理フロー(図2参照)と同じであるので、以下では、ステップS61から説明する。
【0088】
ステップS61では、対数変換手段651(図10参照)が、濃度データ系列Dyにおける造影剤の濃度C(t)(図8参照)の自然対数を取る。造影剤の濃度C(t)の自然対数は、上述した式(7)で表される。式(7)によって表されるlnC(t)を求めた後、ステップS7に進む。
【0089】
ステップS7では、フィッティング手段66(図10参照)が、lnC(t)を用いて、式(6)に示すフィッティング関数ln(f(t))のα、β、およびγを算出する。尚、第2の実施形態では、t≧tsのlnC(t)を重み係数Wjで重み付けし、重み付けされたlnC(t)(重み付けされた造影剤の濃度の対数値)を用いて、α、β、およびγを算出する。重み係数Wjは、第1の実施形態で使用された重み係数Wj(式(5)参照)と同じ式である。
【0090】
lnf(t)のα、β、およびγを算出した後、ステップS8に進み、灌流パラメータ算出手段67(図10参照)が、算出されたα、β、およびγを用いて、種々の灌流パラメータ(例えば、平均通過時間MTT、脳血液量CBV、脳血流量CBF)算出する。
【0091】
以上説明したように、第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、式(5)に示す重み付け係数Wjを用いてα、β、およびγを算出し、算出されたα、β、およびγを用いて種々の灌流パラメータ(例えば、平均通過時間MTT、脳血液量CBV、脳血流量CBF)を算出する。したがって、算出される灌流パラメータの値の信頼性を高めることができる。
【0092】
また、第2の実施形態では、線形で表されるlnf(t)(式(6)参照)によって、α、β、およびγを算出している。したがって、反復処理をしなくてもα、β、およびγを算出することができ、短時間でα、β、およびγを算出することができる。
【0093】
また、本発明では、フィッティング関数は、f(t)や、ln{f(t)}に限定されることは無く、本発明の範囲内において、他のフィッティング関数を使用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1、100 磁気共鳴イメージング装置
2 コイルアセンブリ
3 テーブル
4 造影剤注入装置
5 受信コイル
6 制御装置
7 入力装置
8 表示装置
9 被検体
9a 頭部
10 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
61 コイル制御手段
62 信号強度算出手段
63 時刻算出手段
64 ベースライン決定手段
65 造影剤濃度算出手段
66 フィッティング手段
67 灌流パラメータ算出手段
651 対数変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流の動態を解析する血流動態解析装置であって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出手段と、
前記各時刻における前記造影剤の濃度を表すデータが時系列的に並べられた濃度データ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティング手段と、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出手段と、
を有し、
前記フィッティング手段は、
前記濃度データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出する、血流動態解析装置。
【請求項2】
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度を算出する信号強度算出手段と、
前記各時刻における前記信号強度を表すデータが時系列的に並べられた信号強度データ系列において前記信号強度がピーク値になるときの第1の時刻を算出する時刻算出手段と、
を有し、
前記重み付け手段は、
前記第1の時刻における前記造影剤の濃度の重みが、前記第1の時刻よりも遅い第2の時刻における前記造影剤の濃度の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けする、請求項1に記載の血流動態解析装置。
【請求項3】
前記重み付け手段は、
前記第2の時刻が前記第1の時刻から離れるに従い、前記第2の時刻における前記造影剤の濃度の重みが小さくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けする、請求項2に記載の血流動態解析装置。
【請求項4】
前記信号強度算出手段が算出した各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記被検体の所定の領域に前記造影剤が到達する前の前記信号強度の値を表すベースラインを決定するベースライン決定手段を有する請求項2又は3に記載の血流動態解析装置。
【請求項5】
前記時刻算出手段は、
前記信号強度データ系列にピーク部が現れ始めるときの第3の時刻を算出し、
前記ベースライン決定手段は、
前記第3の時刻における前記信号強度の重みが、前記第3の時刻よりも早い第4の時刻における前記信号強度の重みよりも大きくなるように、前記信号強度を重み付けし、重み付けした前記信号強度を用いて、前記ベースラインを算出する、請求項4に記載の血流動態解析装置。
【請求項6】
前記ベースライン決定手段は、
前記第4の時刻が前記第3の時刻から離れるに従い、前記第4の時刻における前記信号強度の重みが小さくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けする、請求項5に記載の血流動態解析装置。
【請求項7】
前記フィッティング関数は、以下の式で表される、請求項5又は6に記載の血流動態解析装置。
f(t)=α(t−ts)β・eγ(t−ts)
ただし、t≧ts
ts:第3の時刻
α、β、およびγ:t≧tsにおける造影剤の濃度に基づいて決定される定数
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の血流動態解析装置を有する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流動態を解析する血流動態解析装置であって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出手段と、
算出された前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を求める対数変換手段と、
前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を表すデータが時系列的に並べられた対数値データ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティング手段と、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出手段と、
を有し、
前記フィッティング手段は、
前記対数値データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の対数値の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の対数値の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度の対数値を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度の対数値に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出する、血流動態解析装置。
【請求項10】
前記フィッティング関数は、以下の式で表される、請求項9に記載の血流動態解析装置。
ln{f(t)}=ln(α)+β・ln(t−ts)−γ(t−ts)
ただし、t≧ts
ts:ピーク部開始時間
α、β、およびγ:t≧tsにおける造影剤の濃度の対数値に基づいて決定される定数
【請求項11】
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流の動態を解析する血流動態解析方法であって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出ステップと、
前記各時刻における前記造影剤の濃度を表すデータが時系列的に並べられたデータ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティングステップと、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
を有し、
前記フィッティングステップは、
前記データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出する、血流動態解析方法。
【請求項12】
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流動態を解析する血流動態解析方法であって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出ステップと、
算出された前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を求める対数変換ステップと、
前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を表すデータが時系列的に並べられた対数値データ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティングステップと、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
を有し、
前記フィッティングステップは、
前記対数値データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の対数値の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の対数値の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度の対数値を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度の対数値に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出する、血流動態解析方法。
【請求項13】
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流の動態を解析するためのプログラムであって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出処理と、
前記各時刻における前記造影剤の濃度を表すデータが時系列的に並べられたデータ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティング処理であって、前記データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出するフィッティング処理と、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出処理と、
を実行するためのプログラム。
【請求項14】
造影剤が注入された被検体から各時刻における磁気共鳴信号を収集し、収集された前記磁気共鳴信号に基づいて前記被検体の血流動態を解析するためのプログラムであって、
前記被検体の所定の領域から収集された各時刻における前記磁気共鳴信号の信号強度に基づいて、前記所定の領域の各時刻における前記造影剤の濃度を算出する造影剤濃度算出処理と、
算出された前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を求める対数変換処理と、
前記各時刻における前記造影剤の濃度の対数値を表すデータが時系列的に並べられた対数値データ系列を用いて、フィッティング関数の定数を算出するフィッティング処理であって、前記対数値データ系列に現れるピーク部における前記造影剤の濃度の対数値の重みが、前記ピーク部よりも時間的に遅れた部分における前記造影剤の濃度の対数値の重みよりも大きくなるように、前記造影剤の濃度の対数値を重み付けし、重み付けされた前記造影剤の濃度の対数値に基づいて、前記フィッティング関数の定数を算出するフィッティング処理と、
算出された前記フィッティング関数の定数を用いて、前記被検体の血流の動態を解析するためのパラメータを算出するパラメータ算出処理と、
を実行するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−5162(P2011−5162A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153714(P2009−153714)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】