説明

血流可視化診断装置、及びプログラム

【課題】実際の患者において測定された血流のエネルギー効率に関係する量を可視化して表示し、有用性を向上できる血流可視化診断装置、及びプログラムを提供する。
【解決手段】体内の血管を流れる血流の流速情報を取得し、当該取得した流速情報に基づいて、血管内の血液圧力を陽に含まない演算式により、血管内の注目領域内の複数代表点における血流のエネルギー損失を演算する。そして当該演算した、複数代表点におけるエネルギー損失の大きさを表す画像を生成する血流可視化診断装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内の血管内を流れる血流に関する情報を可視化する血流可視化診断装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
体内の血管を流れる血流を可視化する技術としては、コンピュータシミュレーションを用いる方法、超音波診断装置を用いる方法、MRI(Magnetic Resonance Imaging)を用いる方法等が知られている。
【0003】
このうちコンピュータシミュレーションを用いる方法では、血流に関する種々の情報を得ることはできるが、現実に計測される患者の血管ではないのが一般的であり、診断には利用できない。また超音波診断装置やMRIを用いる方法では、患者の実際の状況を検査することができ、血管内の血液の流速の情報は得られる。しかしながら、血流速を得て可視化するだけでは、血流の状況は知ることができるが、診断上必要な情報が必ずしも得られない。
【0004】
例えば、手術等で取り付けられた人工弁の動作状態や、血管にできている瘤の状態等は、血流速の情報のみでは把握できず、血流のエネルギー効率といった観点が必要となる。
【0005】
特許文献1には、超音波信号により実際に測定した血管形状と血流情報とにより、コンピュータシミュレーションを行い、血流や血圧の分布を演算して表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4269623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の技術では、実際の患者の診断に必要な画像が必ずしも得られず、有用性に乏しいという問題点があった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、実際の患者において測定された血流のエネルギー効率に関係する量を可視化して表示し、有用性を向上できる血流可視化診断装置、及びプログラムを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決する本発明は、血流可視化診断装置であって、体内の血管を流れる血流の流速情報を取得する取得手段と、前記取得した流速情報に基づいて、血管内の血液圧力を陽に含まない演算式により、血管内の注目領域内の複数代表点における血流のエネルギー損失を演算する演算手段と、前記演算した、前記複数代表点におけるエネルギー損失の大きさを表す画像を生成する画像生成手段と、を含むこととしたものである。
【0010】
ここで前記取得手段は、体表側から体内の血管を流れる血流の流速情報を検出する検出器から、当該検出した血流情報を取得し、前記演算手段は、前記検出器との関係で定められた座標系で記述した前記演算式を用いて、血管内の注目領域内の複数代表点における血流のエネルギー損失を演算し、前記画像生成手段は、前記演算した、前記複数代表点におけるエネルギー損失の大きさを表す画像をデカルトの直交座標系に変換して生成するものであってもよい。
【0011】
さらに前記検出器は、超音波信号を体表側から体内の血管に向けて放射し、体内から反射された超音波信号を受信して、当該受信した超音波信号により血流の流速情報を検出する超音波検出器であり、前記検出器との関係で定められた座標系は、超音波検出器の超音波信号の受信位置を原点とする極座標であることとしてもよい。
【0012】
また本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、体内の血管を流れる血流の流速情報を取得する取得手段と、前記取得した流速情報に基づいて、血管内の血液圧力を陽に含まない演算式により、血管内の注目領域内の複数代表点における血流のエネルギー損失を演算する演算手段と、前記演算した、前記複数代表点におけるエネルギー損失の大きさを表す画像を生成する画像生成手段と、として機能させることとしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、診断に対する有用性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る血流可視化診断装置の構成例及び接続例を表すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る血流可視化診断装置が受け入れる血流の流速情報の例を表す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る血流可視化診断装置の例を表す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る血流可視化診断装置での演算内容を説明するための概略説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る血流可視化診断装置による診断対象となる血管の例を表す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る血流可視化診断装置に接続される検出装置が流速を測定する座標系の例を表す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る血流可視化診断装置の動作例を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る血流可視化診断装置1は、図1に例示するように、体内の血管を流れる血流の流速情報を検出する検出装置2に接続される。またこの血流可視化診断装置1は、制御部11、記憶部12、操作部13、表示部14及び入力インタフェース15を含んで構成される。
【0016】
制御部11は、CPU等のプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態では、この制御部11は、検出装置2から体内の血管を流れる血流の流速情報を取得し、当該取得した流速情報に基づいて、血管内の血液圧力を陽に含まない演算式により、血管内の注目領域内の複数代表点における血流のエネルギー損失を演算する。そして制御部11は、当該演算した、複数代表点におけるエネルギー損失の大きさを表す画像を生成して、表示出力する。この制御部11の具体的な動作については、後に詳しく述べる。
【0017】
記憶部12は、メモリデバイスやディスクデバイスを含んで構成される。この記憶部12は、制御部11によって実行されるプログラムが保持される。このプログラムは、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ可読な記録媒体に格納されて提供され、この記憶部12に複写される。また、この記憶部12は、制御部11のワークメモリとしても動作する。
【0018】
操作部13は、マウスやキーボード等であり、利用者からの指示の入力を受け入れて、当該指示の内容を表す情報を、制御部11に出力する。表示部14は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスであり、制御部11から入力される指示に従って、情報を表示出力する。入力インタフェース15は、検出装置2から、血流の流速に関する情報を受け入れて、制御部11に出力する。
【0019】
検出装置2は、例えば超音波診断装置であり、体表側から体内の血管に向けて超音波信号を放射し、体内から反射された超音波信号を受信する。具体的に超音波診断装置では、プローブ(探触子)が、予め定めた範囲(注目領域)内を走査しつつ周波数f0の超音波信号を各方向に放射する。ある方向に放射された超音波信号は、そのプローブからその方向にある血管内の赤血球で反射してプローブへ戻ってくるが、赤血球の移動速度に応じたドップラーシフトが生じるので、その周波数はf0からずれて、f0+fdとなる。このfd(ドップラー偏移周波数)によって赤血球の移動速度、すなわち血流の流速が検出できる。なお、超音波信号を二次元的に走査しつつ放射することで、二次元面内の各方向にある血流の流速の情報が得られる(図2)。この方法は、例えばカラードップラー法(CDI)等として広く知られているので、ここでの詳しい説明を省略する。
【0020】
検出装置2は、ほかには例えばMRIでもよい。通常のMRIが信号強度によって血管等を描出するのに対して(マグニチュード画像)、MRI位相画像は傾斜磁場の方向により血流速に比例した情報を表しており、空間上の任意の点の血流速度について方向とその速度の大きさとを検出できる。各方向の傾斜磁場の位相画像のシリーズを重ね合わせて、強度画像の血管形状の上にさらに重ね合わせることにより、血管内の血流の分布をベクトルで可視化することもできる。この方法はphase velocity mappingとして広く知られており、ここでの詳しい説明は省略する。
【0021】
次に本実施の形態における制御部11の動作について説明する。本実施の形態の制御部11は、図3に例示するように、機能的には、情報取得部21と、演算部22と、画像生成部23と、表示制御部24とを含んで構成される。ここで情報取得部21は、検出装置2が出力する血流の流速情報を受け入れる。この情報は、既に例示したように、二次元面内の各方向(座標x1,x2で表される各位置)にある血流の流速の情報である。ここで流速の情報は、それぞれ、3次元的な各座標軸方向の成分としてベクトル(u1,u2,u3)で表される。
【0022】
演算部22は、受け入れた血流の情報を参照し、流速の情報が得られている二次元面内の各位置をそれぞれ代表点として、各代表点の血流の流速の情報に基づき、血管内の血液圧力を陽に含まない演算式、
【数1】

を用いて、当該複数の代表点における血流のエネルギー損失ΔEを演算する。なおηは粘性を表している。
【0023】
この(1)式は、所定の体積範囲(V)を積分しなければならないが、各代表点における血流のエネルギー損失ΔEを演算する場合、被積分関数が略一定の局所的体積を積分したものとして、被積分関数そのものをエネルギー損失ΔEを表すものとして扱ってよい。すなわち、この演算部22は、(1)式の被積分関数(微分は差分で置換えて演算すればよい)を演算して、その値を出力する。この演算式がエネルギー損失を表すことについては後に説明する。
【0024】
画像生成部23は、演算部22にて得られた二次元面内の各代表点の血流のエネルギー損失ΔEに基づいて、二次元面内の対応する画素の画素値を定める。例えばエネルギー損失ΔEが0に近いほど青色、大きくなるにつれて緑、黄色、橙、赤と変化するように画素値を定める。なお、エネルギー損失ΔEそのものでなく、その対数であるlogΔEに基づいて画素値を定めてもよい。
【0025】
これにより画像生成部23は、検出装置2としての超音波診断装置が生成した二次元の画像に対応する、エネルギー損失の分布を表す画像を生成する。表示制御部24は、画像生成部23が生成した画像を、表示部14に出力して表示させる。
【0026】
ここで、演算部22が用いる(1)式により、エネルギー損失が演算できることについて説明する。血流は、非圧縮性の粘性流体であり、広く知られた流体力学の理論により、ナビエ・ストークスの方程式が成立する。
【0027】
【数2】

【数3】

【0028】
この(3)式で外力は0とした。またPは静水圧、ρは密度、ηは粘性、tは時刻を表す。また、速度uは既に述べたように、3次元的な各座標軸方向の成分を有するベクトル(u1,u2,u3)である。なお、血液では、密度ρは略1060kg/m3であり、粘性ηは3.0から5.0kg/m/sである。
【0029】
この(3)式(ナビエ・ストークスの式)は、流体のエネルギーについては陽に表していない。流体のエネルギーは流体のもつ粘性による散逸によって減少する。この流体のエネルギーは、内部エネルギーをeとして、次の(4)式で表すことができる。
【0030】
【数4】

【0031】
ここで、Tは温度、Sはエントロピー、Vは体積、Pは圧力であり、これらにより(4)式のごとく内部エネルギーを表すことができることは、熱力学の基本法則による。さらにこの(4)式を微分することにより、
【数5】

を得る。人体内の血流に関しては、断熱的かつ、非圧縮性の流れと合理的に仮定できるので、dS=0、dV=0となり、従って、(5)式は簡単に、
【数6】

と表すことができる。
【0032】
ある体積内のエネルギーEの時間変化はしたがって、
【数7】

となる。ところで(3)式から、
【数8】

とできる。ここでさらに(2)式を用いて、
【数9】

が得られる。なお、
【数10】

である。
【0033】
これを血管等、注目領域全体の体積で積分すると、ガウスの定理と(2)式の連続の式とによって、
【数11】

が得られる。ここでnは、注目領域の表面に立つ法線ベクトルであり、Aは注目領域の表面面積を意味する。すなわち右辺側第1,第2項の積分は、面積分である。
【0034】
血流においては、図4に示すように血管壁において流速は0であり、注目領域(V)に係る血流の流入路及び流出路(図4のA1,A2)では生理学的な血管では例えば末梢血管などで口径が一定で直線化された部分では十分な層流が得られていると仮定することは合理的であり、この場合当該流入面に対して速度uは垂直に交わり、これらの面で∂ui/∂ni=0と合理的に仮定できる。この仮定の下では、(11)式の右辺第2項は0になるので、(11)式は結局、
【数12】

と簡略化できる。
【0035】
さらに、血流は心臓による周期Tの脈動に影響されるから、周期境界条件
【数13】

を適用でき、(12)、(13)式より、
【数14】

を得る。この(14)式から、血流に関する合理的な仮定の下で、流体のエネルギー(左辺)が、右辺の式と等しくなることが示され、血流のエネルギー変化量ΔE、すなわち、エネルギー損失ΔEが、(1)式で表されることが理解される。
【0036】
この(14)式からはさらに次のことが理解される。この(14)式の左辺はさらに、血流の流入路と、流出路とにおける面積Aに係る被積分関数の値の和で表すことができる。つまり、流入路における圧力Pと流出路における圧力Pとの差が、エネルギー損失ΔEに影響することがわかる。いま、具体的に図5(a)から(g)の血管形状を考える。図5(a)は健康な血管形状の例である。Y字状に分岐した血管において、V字部の各血管から血液が流入するとすると、図5(a)では、合流点においてスムーズに血流が進む結果、流入路側における圧力Pや、流出路における圧力Pは略同じとなる。従って、エネルギー損失は比較的小さくなる。
【0037】
ところが、図5(b)のように一方の血管からの合流部において狭窄が生じていると、流入路側における圧力Pは上昇するが、流出路での圧力Pが減少するためエネルギー損失が大きくなる。また図5(c)に示されるように、合流部において瘤ができていると、この瘤において血液の渦が生じて流入路側での圧力Pが減少するので、結果としてエネルギー損失が大きくなる。このことは局所的に見ても同じであり、狭窄や瘤の生じた位置でのエネルギー損失は大きくなる。
【0038】
また図5(d)は弁が開ききることのできる健康な血管を示す。ここでは(14)式の右辺側に示される場所に応じた速度変化の項に相当する値は比較的0に近い値となる(どこでも流速がほとんど変わらない)。従って、エネルギー損失は比較的小さい値となる。
【0039】
一方、図5(f)は弁の開きが小さくなり、血管が狭くなった状態(血管の狭窄が生じている状態)を示している。ここでは狭い開口部から血流が勢いよく吹き出される(jet flow)。従ってこの場所での速度変化は大きくなり、この弁の場所でのエネルギー損失は比較的大きい値となる。
【0040】
さらに図5(g)は弁が閉じなくなり、血流が局所的に逆流する現象が生じた状態を表す。ここでは全体の流れに対して対流が生じることとなるので、速度変化が表れることとなり、当該部分でのエネルギー損失が比較的大きい値となる。
【0041】
このように、血流の流速そのものではなく、エネルギー損失ΔEを観測することによって、血管形状や弁の異常等によって起きる異常な血流が生じる場所を簡便に特定できることがわかる。すなわち、エネルギー損失が大きい場所では、血流を正常なものに近づけるために臓器への負担が強いられていることが理解され、患者への説明も容易になり、また医師も異常な血流のある箇所を容易に特定できる。
【0042】
なお、ここまでの説明では、検出装置2は超音波診断装置であるとして説明したが、本実施の形態はこれに限られない。すなわち、注目領域内における各部の血流の流速の情報が得られれば、(1)式による演算を行って、各部でのエネルギー損失が演算できるからである。具体的には検出装置2はMRI(Magnetic Resonance Imager)であってもよい。
【0043】
また検出装置2として、超音波診断装置のようにプローブから二次元的に広がりのある領域を走査する装置を用いる場合は、これらの検出装置2にて実際に得られている血流の流速情報は、図6に例示するように、プローブと観測対象の赤血球Bとを結ぶ線分を動径方向とした極座標(超音波信号の受信位置を原点とする極座標;r,θ,φ)によって表される。
【0044】
つまり情報取得部21が受け入れる、検出装置2が出力する血流の流速情報は、二次元面内の各方向(座標x1,x2で表される各位置)にある血流の流速の情報であるが、流速の情報自体は走査した面の座標に関わらずその成分(u1,u2,u3)が極座標系で表された値となる。
【0045】
そこで演算部22は、血管内の血液圧力を陽に含まない演算式である(1)式を極座標系で演算する。このように座標変換を行う方法については、広く知られているので、ここでの詳細な説明は省略する。すなわち演算部22は、流速の情報が得られている二次元面内の各位置(デカルトの直交座標系で表される位置)にある点をそれぞれ代表点として、各代表点における、極座標で表された血流の流速の情報に基づき、極座標系における(1)式を用いて、当該複数の代表点における血流のエネルギー損失ΔE(スカラ量)を演算する。
【0046】
画像生成部23は、演算部22にて得られた二次元面内の各代表点の血流のエネルギー損失ΔEに基づいて、二次元面内の対応する画素の画素値を定める。これにより画像生成部23は、演算された、複数代表点におけるエネルギー損失の大きさを表す画像をデカルトの直交座標系に変換して生成することとなる。表示制御部24は、画像生成部23が生成した画像を、表示部14に出力して表示させる。
【0047】
また検出装置2が他の装置である場合も、当該装置が各代表点で検出した血流の流速を表す速度ベクトルの座標系に変換した(1)式を用いてエネルギー損失ΔEを演算することとする。
なお、MRIのphase velocity mappingを用いて血流の流速情報を得る場合には、位相画像の方向により、直交座標系となることもある。この場合は直交座標系での(1)式を用いてエネルギー損失ΔEを演算する。
【0048】
本実施の形態は、以上の構成を備えてなり、次のように動作する。血流可視化診断装置1は、図7に示すように、検出装置2が出力する血流の流速情報を受け入れる(S1)。この流速情報は、二次元の面(X,Y座標系)内の各点Qi(座標(Xi,Yi))、(i=1,2,…N)における流速のベクトル値を関連付けたものである。
【0049】
そして血流可視化診断装置1は、当該受け入れた血流の情報を参照し、流速の情報が得られている二次元面内の各位置Qiをそれぞれ代表点として、各代表点Qiの血流の流速の情報に基づき、血管内の血液圧力を陽に含まない(1)式を用いて、当該複数の代表点における血流のエネルギー損失ΔE(Qi)を演算する(S2)。ここでは既に述べたように、(1)式の被積分関数(微分は差分で置換えて演算すればよい)を演算して、その値を出力することとする。
【0050】
血流可視化診断装置1は、処理S2にて得た二次元面内の各代表点Qiの血流のエネルギー損失ΔE(Qi)の対数に基づいて、二次元面内の対応する画素(Qiの座標(Xi,Yi)にある画素)の画素値を定める(S3)。例えばエネルギー損失ΔEの対数 log ΔEが小さいほど青色、大きくなるにつれて緑、黄色、橙、赤と変化するように画素値を定める。そして血流可視化診断装置1は、当該生成した画像を出力表示する(S4)。
【0051】
本実施の形態によると、血流の異常に直接関係している、血管内の各部における血流のエネルギー損失の大きさを演算して表示するので、実際の患者の診断に必要な画像を得ることができ、有用性を向上できる。
【符号の説明】
【0052】
1 血流可視化診断装置、2 検出装置、11 制御部、12 記憶部、13 操作部、14 表示部、15 入力インタフェース、21 情報取得部、22 演算部、23 画像生成部、24 表示制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の血管を流れる血流の流速情報を取得する取得手段と、
前記取得した流速情報に基づいて、血管内の血液圧力を陽に含まない演算式により、血管内の注目領域内の複数代表点における血流のエネルギー損失を演算する演算手段と、
前記演算した、前記複数代表点におけるエネルギー損失の大きさを表す画像を生成する画像生成手段と、
を含む血流可視化診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の血流可視化診断装置であって、
前記取得手段は、体表側から体内の血管を流れる血流の流速情報を検出する検出器から、当該検出した血流情報を取得し、
前記演算手段は、前記検出器との関係で定められた座標系で記述した前記演算式を用いて、血管内の注目領域内の複数代表点における血流のエネルギー損失を演算し、
前記画像生成手段は、前記演算した、前記複数代表点におけるエネルギー損失の大きさを表す画像をデカルトの直交座標系に変換して生成する血流可視化診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の血流可視化診断装置であって、
前記検出器は、超音波信号を体表側から体内の血管に向けて放射し、体内から反射された超音波信号を受信して、当該受信した超音波信号により血流の流速情報を検出する超音波検出器であり、
前記検出器との関係で定められた座標系は、超音波検出器の超音波信号の受信位置を原点とする極座標である血流可視化診断装置。
【請求項4】
コンピュータを、
体内の血管を流れる血流の流速情報を取得する取得手段と、
前記取得した流速情報に基づいて、血管内の血液圧力を陽に含まない演算式により、血管内の注目領域内の複数代表点における血流のエネルギー損失を演算する演算手段と、
前記演算した、前記複数代表点におけるエネルギー損失の大きさを表す画像を生成する画像生成手段と、
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111124(P2013−111124A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258191(P2011−258191)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本超音波医学会 第84回学術集会,日本超音波医学会,2011年5月27日〜29日
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】