説明

血流圧力血流速度状態判定装置およびその判定方法

【課題】超音波を用いて非侵襲で平常の血流圧力と血流速度が判定できる簡便で安価な血流圧力血流速度状態判定装置を提供する。
【解決手段】被験者に密着して取り付け血管に向けて超音波を発信すると同時に血管からの反射波を受信する超音波センサ160と、超音波センサ160が受信した反射波の波形を整形する波形整形部170と、波形整形部170が整形した反射波の波形から血流圧力および血流速度の状態を判定する判定部180と、判定部180で判定された血流圧力および血流速度の状態を比較表示する表示部150とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血流圧力血流速度状態判定装置およびその判定方法に係り、特に、超音波を用いて非侵襲で血流圧力と血流速度の状態が判定できる血流圧力血流速度状態判定装置およびその判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血流圧力(以下、血圧という)は、オシロメトリック法によって測定している。オシロメトリック法は次のような手順で血圧を測定する。
【0003】
まず上腕にカフを巻き付け、空気を送り込んでカフを膨らませ、カフで上腕動脈を圧迫する。血流はカフによる上腕動脈の圧迫によって止まる。次に、カフに送り込んだ空気を徐々に開放して上腕動脈への圧迫圧力を少しずつ緩和する。カフの圧迫圧力よりも血圧が大きくなると上腕動脈の血液が流れ始める。血液が流れ始める前後のカフの圧力変動を圧脈波として測定する。圧脈波が急激に大きくなったときのカフの圧力を収縮期血圧(最高血圧)といい、圧脈波が急激に小さくなったときのカフの圧力を拡張期圧力(最低血圧)という。
【0004】
オシロメトリック法は血圧が連続的に測定できないという欠点を有している。下記特許文献1は、オシロメトリック法の欠点を解消して血圧が連続的に測定できる構成を採用している。
【0005】
また、従来、血流速度を測定する装置には光を用いるものや超音波を用いるものがある。下記特許文献2は、血流速度に関する情報を求め、血流速度に関する情報に応じて三次元音響システムを鳴動する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−247193号公報
【特許文献2】特開2009−28083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような血圧の測定および血流速度の測定ができる装置は、被験者の心拍循環器の圧縮能力を測定するものであって、被験者の心拍循環器の平常の血圧および血流速度の状態を判定するものとは異なる。つまり、被験者の血圧および血流速度の状態が、一般的な人の血圧および血流速度の状態と比較して、良い状態であるのか、悪い状態であるのか、または、被験者自身の過去の血圧および血流速度の状態と比較して、良くなっているのか、悪くなっているのかを判定するものとは異なる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、超音波を用いて非侵襲で平常の血流圧力と血流速度の状態が判定できる血流圧力血流速度状態判定装置およびその判定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための血流圧力血流速度状態判定装置は、超音波センサ、波形整形部、判定部および表示部を有する。
【0010】
超音波センサは被験者に密着して取り付けられ血管に向けて超音波を発信すると同時に血管からの反射波を受信する。波形整形部は超音波センサが受信した反射波の波形を整形して血流圧力および血流速度を判定し易くする。判定部は波形整形部が整形した反射波の波形から血流圧力および血流速度の状態を判定する。血流圧力の状態の判定は整形した反射波の波形の最高波高値や最低波高値によって行い、血流速度の状態の判定は整形した反射波の波形形状によって行なう。表示部は判定部で判定された血流圧力および血流速度の状態を表示する。表示は過去のデータと測定時のデータを被験者にわかりやすいように数値で行なう。また、データ表示は外部の情報処理機器で行うこともできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超音波を用いて非侵襲で物理的影響のない平常の血流圧力と血流速度の状態が判定できるので、自分の健康状態を容易に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る血流圧力血流速度状態判定装置の外観図である。
【図2】図1に示した血流圧力血流速度状態判定装置の制御系のブロック図である。
【図3】被験者の動脈の位置を示す図である。
【図4】装置本体部を被験者の手首に装着したときの超音波センサと血管組織との位置関係を示す図である。
【図5】本実施形態に係る血流圧力血流速度状態判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】送信信号波形と受信信号波形を示す図である。
【図7】血圧と血流速度の時間変化を示す図である。
【図8】血圧および血流速度状態の判定結果の表示処理を示すフローチャートである。
【図9】血流速度波形が血管の状態によって異なることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る血流圧力血流速度状態判定装置を詳細に説明する。なお、図中、同一の部材には同一の符号を付す。
【0014】
図1は、本実施形態に係る血流圧力血流速度状態判定装置の外観図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る血流圧力血流速度状態判定装置100は、装置本体部110、ケース120、腕ベルト130を備える。
【0016】
装置本体部110は、後述する超音波センサ、波形整形部および判定部を内蔵し、血圧および血流速度の状態を表示する表示部150を備える。
【0017】
ケース120は、装置本体部110の周囲を取り囲むように形成され、表示部150以外の部分で装置本体部110をしっかりと固定する。
【0018】
腕ベルト130は、ケース120が取り付けられ、被験者の腕にケース120を装着する。腕ベルト130は、空気を自動加圧によって送り込んで膨らみ、ケース120の表面から被験者の腕側(表示部150の反対面)に露出する超音波センサを被験者の血管上に密着させる。超音波センサが被験者の血管上にきちんと密着していないと、高速血流成分がうまく検出できずにカットされてしまったり、血圧、血流速度が正確に測定できなくなってしまったりする。
【0019】
したがって、本実施形態に係る血流圧力血流速度状態判定装置を被験者に取り付ける場合は次のような手順で行なう。
【0020】
まず、表示部150を見ることができるように腕ベルト130を被験者の腕に取り付ける。
【0021】
次に、表示部150の反対面に露出する超音波センサが図3に示す尺骨動脈または橈骨動脈の血管に接触するようにケース120の位置を調整する。
【0022】
そして、装置本体部110のスタートボタンを押すと自動的に腕ベルト130は空圧で膨張し、腕ベルト130を膨らませる。腕ベルト130が膨らむと、超音波センサが尺骨動脈または橈骨動脈の血管に適度な圧力で接触する。
【0023】
この状態で血圧と血流速度の状態の判定を開始する。
【0024】
図2は、図1に示した血流圧力血流速度状態判定装置の制御系のブロック図である。
【0025】
図2に示すように、本実施形態に係る血流圧力血流速度状態判定装置100は、装置本体部110に、表示部150、超音波センサ160、波形整形部170、判定部180、入力部190および送信回路200を備えている。
【0026】
表示部150は判定した血圧と血流速度の状態を表示する。たとえば、その表示は、「最高血圧130mmHg」、「最低血圧80mmHg」、「血流速度43cm/s」、「血圧状態+10%」、「血流状態+10%」のように行なわれる。表示部150は表示された血圧と血流速度の状態を被験者が容易に見ることができるように装置本体部110の表面に設ける。
【0027】
超音波センサ160は送信振動子162および受信振動子164を備える。
【0028】
送信振動子162は血管(図3に示す尺骨動脈または橈骨動脈)に向けて超音波を発信するための振動子である。送信振動子162は超音波の進行方向が血管に対し所定の入射角になるように設定してある。
【0029】
受信振動子164は被験者の血管からの反射波(エコー)を受信するための振動子である。被験者の血管からの反射波の周波数帯域は音波の性質から送信信号に対して偏移するため、受信振動子164は偏移された信号の帯域を受信できるようにしている。
【0030】
波形整形部170は受信回路172および信号検波フィルタ処理回路174を備える。波形整形部170は超音波センサ160が受信した反射波の波形を整形してノイズ成分を除去する。
【0031】
受信回路172は受信振動子164からの反射波を受信信号として処理する回路である。受信回路172は受信振動子164からの受信信号のダイナミックレンジ、ゲイン、エコーエンハンスなどを調整し、反射波の周波数を設定する。
【0032】
信号検波フィルタ処理回路174は、受信回路172で処理された受信信号から血流によりドップラシフトされた信号部分、すなわちドップラ偏移を取り出すための回路である。より具体的には、信号検波フィルタ処理回路174は、受信信号に内部で生成した参照信号を掛け合わせ、ローパスフィルタを通すことにより、受信信号からドップラ偏移を取り出す。
【0033】
判定部180は平均サンプルデータ記憶部181、ダイナミック制御回路182、サンプルホールド回路184、周波数分析回路186および数値検出回路188を備えている。
【0034】
平均サンプルデータ記憶部181は被験者が過去に測定した血圧および血流速度のサンプルデータと健常者の平均的な血圧および血流速度のサンプルデータとを分けて記憶する。被験者が過去に測定した血圧および血流速度のサンプルデータは算出された被験者自身の血圧および血流速度に関する平均データ(個人検体データ)である。健常者の平均的な血圧および血流速度のサンプルデータは多人数の血圧および血流速度に関する平均データ(多人数平均データ)である。
【0035】
個人検体データは、過去に被験者自身が測定した血圧および血流速度に関するデータの平均値であり、被験者が現在測定した血圧および血流速度に関するデータが個人検体データと比較してどのように変化しているかを計るために用いる。被験者が測定した血圧および血流速度に関するデータと個人検体データとを比較することによって、たとえば、その人の病気が悪化する方向に進んでいるのか、直る方向に進んでいるのかがわかる。
【0036】
多人数平均データは、健常者の平均的な血圧および血流速度に関するデータの平均値であり、被験者が現在測定した血圧および血流速度に関するデータが多人数平均データと比較してどの程度ずれているかを計るために用いる。その人が測定した血圧および血流速度に関するデータと多人数平均データとを比較することによって、その人が健康体であるかどうかがわかる。
【0037】
ダイナミック制御回路182は血流圧力血流速度状態判定装置100を全体的に制御するものである。すなわち、ダイナミック制御回路182は超音波の送受信、受信信号処理、判定結果の表示、個人検体データや多人数平均データの入力を統括的に制御する。
【0038】
サンプルホールド回路184は信号検波フィルタ処理回路174によって取り出されたドップラ偏移信号から所望の測定部分を取り出すための回路である。
【0039】
周波数分析回路186は取り出されたドップラ偏移信号の周波数成分を分析し、ドップラシフト周波数を算出するための回路である。より具体的には、周波数分析回路186はフィルタ群からなるFFT(高速フーリエ変換)回路を備える。
【0040】
数値検出回路188は周波数分析回路186により得られたドップラシフト周波数から血圧と血流速度とを算出する回路である。より具体的には、数値検出回路188は、送信波の動脈に対する進入角度と送信波のパルス周波数とドップラシフト周波数とに基づいて血圧と血流速度とを算出する。なお、血圧と血流速度の算出は、超音波を利用した従来の公知の方法を用いて行なうので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0041】
入力部190は、血液測定によって得られた被験者の血圧と血流速度を入力するために設けたものである。入力部190は、被験者自身の血圧と血流速度を手入力するためのキー入力部と、あらかじめ外部において蓄積した多人数の平均的な血圧と血流速度を入力するための入力端子(不図示)とを備える。
【0042】
送信回路200は送信振動子162を駆動するための回路である。送信回路200は、ダイナミック制御回路182で生成された送信タイミング信号に基づいて送信振動子162にパルス電圧を印加する。
【0043】
次に、図3〜図7を参照しながら、本実施形態に係る血流圧力血流速度状態判定方法について説明する。
【0044】
図3は被験者の手指から甲にかけての動脈の位置を示す図である。
【0045】
図3に示すとおり、本実施形態では、被験者の皮膚表面に近く、測定し易い位置にある、尺骨動脈または橈骨動脈から血圧および血流速度を測定する。なお、上記の尺骨動脈または橈骨動脈に限らず、たとえば頚動脈、腋窩動脈、上腕動脈、大腿動脈、足背動脈、手首動脈などの動脈を用いて血圧および血流速度を測定することもできる。本実施形態では、尺骨動脈または橈骨動脈のいずれかの動脈から血圧および血流速度を測定する。なお、測定精度を高めるために尺骨動脈と橈骨動脈の両方の動脈を用いて血圧および血流速度を測定しても良い。また、尺骨動脈と橈骨動脈以外の複数の動脈を用いて血圧および血流速度を測定しても良い。
【0046】
図4は装置本体部を被験者の手首に装着したときの超音波センサと血管組織との位置関係を示す図である。
【0047】
図4に示すとおり、装置本体部110は腕ベルト130(図1参照)により手首の皮膚に密着して固定される。超音波センサ160を構成する送信振動子162および受信振動子164は、自動加圧具によって膨らんだ腕ベルト130により図の位置からさらに皮膚表面に圧接されて血管上で密着する。
【0048】
そして、測定時には、皮膚と送信振動子162および受信振動子164とが密着した状態を保ちつつ血管に対して入射角θで超音波が発信される。ここで、入射角θは、血流圧力血流速度状態判定状態装置100の最大検出可能流速、血管に対する超音波発信の入射角に起因する誤差などの要素を考慮して決定する。本実施形態では好ましい入射角として60°程度を設定している。また、本実施形態では送信振動子162の発振周波数を3MHzとし、生体内を伝搬する音波の波長が0.085mm程度になるようにしている。
【0049】
また、図4では送信振動子162および受信振動子164が各々分離されたものを示している。しかしながら、送信振動子162および受信振動子164を1つの振動子で兼ねても良い。
【0050】
図5は本実施形態に係る血流圧力血流速度状態判定方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0051】
まず、超音波センサ160を準備する。具体的には、図1および図4に示すように、装置本体部110を手首に装着し固定した状態で、送信振動子162と受信振動子164を血管上で密着させる(S101)。
【0052】
次に、図2に示すダイナミック制御回路182は処理モードが入力モードか否かを判断する(S102)。処理モードが入力モードであれば(S102:YES)、ダイナミック制御回路182は入力部190からの多人数平均データおよび個人検体データの入力を受け付ける。多人数平均データは、健常者の多人数の最高および最低血圧の平均値と健常者の多人数の血流速度の平均値である。多人数平均データは、年代や性別を問わずに採集した500人程度の健常者の平均値であっても良く、より高精度の判定を行いたい場合には、年代および性別にしたがって採集した500人程度の健常者の平均値であっても良い。多人数平均データの入力は入力部190に設けられている入力端子を用いる。入力された多人数平均データは平均サンプルデータ記憶部181に記憶される。
【0053】
また、個人検体データは血流圧力血流速度状態判定装置100を使用して測定する被験者自身の過去に測定された最高および最低血圧と血流速度である。個人検体データの入力は入力部190に設けられているキー入力部から行なう。キー入力部で入力した血圧と血流速度は、血圧と血流速度の状態を判定する際のデフォルト値となる。
【0054】
処理モードが入力モードでなければ(S102:NO)、ダイナミック制御回路182は血圧と血流速度の判定を行なうために以下の処理を行う。
【0055】
まず、送信処理が行われる(S104)。ダイナミック制御回路182は送信回路200に超音波の発信を指令し、送信回路200は送信振動子162を駆動し、送信振動子162から超音波を発信させる。超音波が発信されると超音波パルス信号が血管に向けて送信される。超音波パルス信号は図6に示すような送信信号波形が血管に射信される。超音波パルス信号は中心周波数が約3MHzで波長が約0.085mmであることが好ましい。超音波パルス信号の繰り返し周期は、送信回路200が送信振動子162に与える送信タイミング信号により数十〜数百μsの範囲で調整することができる。
【0056】
次に、受信処理が行なわれる(S105)。受信振動子164によって体組織血管などからの反射波が受信される。図6は送信信号波形と受信信号波形を示す図である。送信信号波形に示すような超音波を生体に向けて発信したときに、生体の一部から反射して帰ってくる受信信号は、図4および図6に示すように、送信振動子162からの距離が近い組織から受信振動子164に順番に届く。具体的には、皮膚から反射して帰ってくる皮膚信号、血管壁から反射して帰ってくる血管信号、血液の構成要素(赤血球、白血球、血小板など)から反射して帰ってくる血液信号、さらに、血管壁から反射して帰ってくる血管信号、血管よりも深いところに位置する体内組織から反射して帰ってくる体内組織信号の順番である。血液信号の振幅が他の皮膚信号、血管信号、体内組織信号に比較して小さいのは血液が流体だからである。
【0057】
受信信号は受信回路172、信号検波フィルタ処理回路174、およびサンプルホールド回路184で処理される。受信回路172は、受信振動子164からの受信信号のダイナミックレンジ、ゲイン、エコーエンハンスなどを調整する。受信信号の強度は、図6の受信信号波形に示すように、生体の皮膚表面からの深度、部位などにより差がある。したがって、測定対象の血管の位置などに応じてダイナミックレンジ、ゲインなどを調整することにより、測定対象の信号を取り出すことができる。
【0058】
取り出した測定対象の信号(図6では血液信号)から信号検波フィルタ処理回路174によってドップラ偏移が取り出される。具体的には、受信信号に信号検波処理フィルタ回路処理174の内部で生成された参照信号を掛け合わせ、ローパスフィルタを通すことにより、受信信号からドップラ偏移が取り出される。そして、取り出されたドップラ偏移からサンプルホールド回路184により所望の測定信号部分が取り出される。
【0059】
次に、取り出された測定信号部分が周波数解析される(S106)。本実施形態では、FFT回路でフーリエ変換が実行され、ドップラ偏移からドップラシフト周波数が算出される。
【0060】
次に、血圧および血流速度が算出される(S107)。血流速度は、数値検出回路188において、発信周波数と、発信された超音波の血管に対する入射角と、算出されたドプラシフト周波数とに基づいて算出される。本実施形態の場合、健常者の血流速度は43cm/S程度と測定された。血圧は、数値検出回路188において、算出された血流速度の大きさに基づいて求める。図7は、血圧と血流速度の時間変化を示す図である。図7に示すとおり、血流速度は、心臓の収縮によって急峻に立ち上がったのち、心臓の拡張に伴い徐々に低下する。このとき血流速度が最も小さくなるときの血流圧力が最低血圧Lになり、血流速度が最も大きくなるときの血流圧力が最高血圧Hになる。
【0061】
算出された血圧および血流速度に関するデータが平均サンプルデータ記憶部181に記憶される(S108)。平均サンプルデータ記憶部181に記憶される場合、このデータは個人検体データとして記憶されることになる。
【0062】
次に、算出された血圧および血流速度に関するデータに基づいて血圧・血流速度の状態を判定し、判定結果を表示する(S109)。判定結果の表示処理は図8のサブルーチンフローチャートに基づいて説明する。
【0063】
血圧および血流速度状態の判定結果の表示は図8のサブルーチンフローチャートに示す手順で行なわれる。
【0064】
血圧および血流速度状態の判定は、平均サンプルデータ記憶部181に記憶されている個人検体データまたは多人数平均データとの比較によって行なわれる。
【0065】
まず、ダイナミック制御回路182は、血圧および血流速度状態の判定を個人検体データとの比較で行なおうとしているのか否かを判断する(S201)。血圧および血流速度状態の判定を個人検体データとの比較で行なおうとしている場合(S201:YES)、ダイナミック制御回路182は、平均サンプルデータ記憶部181から個人検体データを取り出し、図5のフローチャートに示す手順で測定された血圧および血流速度を個人検体データの血圧および血流速度と比較する。
【0066】
その結果、たとえば、血圧が前回測定した血圧よりも10%上昇している場合にはその旨(「血圧状態+10%」)を表示部150に表示し、また、血流速度が前回測定した血流速度よりも10%上昇している場合にはその旨(「血流状態+10%」)を表示部150に表示する。また、過去に測定した血圧および血流速度が前回測定した血圧および血流速度の平均値よりも15%上昇している場合にはその旨(「血圧状態+15%」、「血流状態+15%」)を表示部150に表示する。また、前回平均値と今回測定値を並列表示して比較表示することもできる。
【0067】
この場合、被験者の血圧と血流速度が過去の血圧および血流速度から徐々に上昇していることが容易に把握できる。つまり、被験者自信の血圧と血流速度が過去の血圧と血流速度に対して上昇傾向にあるのか下降傾向にあるのか小康状態にあるのかが、表示部150に表示される数値を見れば容易に把握することができる。
【0068】
したがって、被験者が病人であれば、病気の治り具合や進行具合を把握することができる。病気を治療中の場合、図9に示すように、血圧および血流速度を示す波形が、血管の状態(正常、準正常、閉塞ぎみ、閉塞)によって大きく異なるため、健常者の血圧および血流速度との比較をしただけでは、病気の治り具合や進行具合が把握できない。このため、被験者自身の過去の血圧および血流速度との比較をしている(S202)。
【0069】
次に、ダイナミック制御回路182は、血圧および血流速度状態の判定を個人検体データとの比較で行なおうとしていない場合(S201:NO)、血圧および血流速度状態の判定を多人数平均データとの比較で行なおうとしているのか否かを判断する(S203)。
【0070】
血圧および血流速度状態の判定を多人数平均データとの比較で行なおうとしている場合(S203:YES)、ダイナミック制御回路182は、平均サンプルデータ記憶部181から多人数平均データを取り出し、図5のフローチャートに示す手順で測定された血圧および血流速度を多人数平均データの血圧(通常は最高血圧130mmHg、最低血圧85mmHg)および血流速度(通常は43cm/S)と比較する。その結果、たとえば、血圧が多人数平均データの血圧よりも10%上の場合にはその旨(「血圧状態+10%」)を表示部150に表示し、また、血流速度も多人数平均データの血流速度よりも10%上の場合にはその旨(「血流状態+10%」)を表示部150に表示する。この場合、被験者の血圧と血流速度は健常者の血圧と血流速度に対して10%上回っており、注意を要することが容易に把握できる(S204)。
【0071】
血圧および血流速度状態の判定を多人数平均データとの比較で行なおうとしていない場合(S203:NO)、単に測定された血圧および血流速度を表示部150に表示するだけで、個人検体データや多人数平均データとの比較は行なわずに、図5のフローチャートに戻る。
【0072】
なお、以上の実施形態では、心拍数を算出していないが、図7に示すように、血流速度が大きくなる周期Tを測定することによって、心拍数の算出も容易に行なうことができる。
【0073】
血流速度と血流圧力は常時変化する。測定した血圧および血流速度を被験者自身の過去の血圧および血流速度と比較することによって、被験者の現在の状態が過去の状態に比較してどのように変化しているのかが容易に把握できる。血圧と血流速度は被験者独自の特徴を有している。被験者の血圧と血流速度を健常者の血圧と血流速度に対して比較することが適切でない場合がある。この場合、被験者自身の過去の血圧と血流速度との比較を行なうことによって体調の変化を正確に把握することができる。特に、被験者が疾病者の場合、過去のデータとの比較は、病気の治り具合、進行具合を把握する上で非常に有効である。
【0074】
また、測定した血圧および血流速度を健常者の一般的な血圧および血流速度と比較することによって、被験者の現在の状態が健常者の状態と同じ状態であるのか異なる状態であるのかが容易に把握できる。
【0075】
被験者の現在の状態と過去の状態の比較は、被験者の体調を判断するための参考になる。また、被験者の現在の状態と健常者の状態の比較は、被験者の健康状態を計る上で参考になる。
【0076】
被験者の血圧、血流速度、体調の変化、健常者との比較結果などは瞬時に表示部に表示される。したがって、リアルタイムで被験者自身の状態を容易に知ることができる。
【0077】
なお、本実施形態の血流圧力血流速度状態判定装置に、測定データを他のデータ処理装置に有線または無線で送受信する装置を備えれば、測定データのさらに詳しい解析を行なうことができるようになる。
【0078】
また、本実施形態では、超音波振動子を動脈血管上の皮膚に密着する手段としてベルト自動加圧方法で説明したが、この方法に限定されるものではない。たとえば、測定器を手持ちで皮膚に押し付けて測定することもできる。
【符号の説明】
【0079】
100 血流圧力血流速度状態判定装置、
110 装置本体部、
120 ケース、
130 腕ベルト、
150 表示部、
160 超音波センサ、
162 送信振動子、
164 受信振動子、
170 波形整形部、
172 受信回路、
174 信号検波フィルタ処理回路、
180 判定部、
181 平均サンプルデータ記憶部、
182 ダイナミック制御回路、
184 サンプルホールド回路、
186 周波数分析回路、
188 数値検出回路、
190 入力部、
200 送信回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に密着して取り付けられ血管に向けて超音波を発信すると同時に当該血管からの反射波を受信する超音波センサと、
当該超音波センサが受信した反射波の波形を整形する波形整形部と、
当該波形整形部が整形した反射波の波形から血流圧力および血流速度の状態を判定する判定部と、
当該判定部が判定した血流圧力および血流速度の状態を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする血流圧力血流速度状態判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記被験者が測定した血流圧力および血流速度に関するサンプルデータを記憶する平均サンプルデータ記憶部を備え、
前記判定部は、
前記波形整形部が整形した反射波の波形に関するデータを当該平均サンプルデータ記憶部に記憶されている個人検体データと比較することによって血流圧力および血流速度の状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の血流圧力血流速度状態判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、
健常者の平均的な血流圧力および血流速度に関するサンプルデータを記憶する平均サンプルデータ記憶部を備え、
前記判定部は、
前記波形整形部が整形した反射波の波形に関するデータを当該平均サンプルデータ記憶部に記憶されている多人数平均データと比較することによって血流圧力および血流速度の状態を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の血流圧力血流速度状態判定装置。
【請求項4】
前記平均サンプルデータ記憶部に個人検体データまたは多人数平均データを入力する入力部を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の血流圧力血流速度状態判定装置。
【請求項5】
前記超音波センサ、前記波形整形部、前記判定部および前記表示部を収容する装置本体部と、
当該装置本体部を収容するケースと、
当該ケースの表面から露出する前記超音波センサを前記被験者の血管上で密着させるため前記被験者に装着する腕ベルトと、
をさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の血流圧力血流速度状態判定装置。
【請求項6】
被験者に密着して超音波センサを取り付けるステップと、
当該超音波センサから血管に向けて超音波を発信すると同時に当該血管からの反射波を受信するステップと、
前記超音波センサが受信した反射波の波形を整形するステップと、
整形した反射波の波形から血流圧力および血流速度を判定するステップと、
判定した血流圧力および血流速度の状態を表示するステップと、
を含むことを特徴とする血流圧力血流速度状態判定方法。
【請求項7】
前記血流圧力および血流速度を判定するステップは、
整形した反射波の波形に関するデータを平均サンプルデータと比較することによって血流圧力および血流速度の状態を判定するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の血流圧力血流速度状態判定方法。
【請求項8】
前記血流圧力および血流速度を判定するステップは、
整形した反射波の波形に関するデータを被験者サンプルデータと比較することによって血流圧力および血流速度の状態を判定するステップを含むことを特徴とする請求項6または7に記載の血流圧力血流速度状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−207344(P2010−207344A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55321(P2009−55321)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(390011811)コデン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】