説明

血流改善用組成物

【課題】血流改善用組成物の提供。
【解決手段】松樹皮抽出物と黒胡椒抽出物とを含有する組成物。該組成物はそのまま、又は種々の成分を加えて、飲食品類や医薬品類、化粧品類等として用いることができ、優れた血流改善効果を発揮できる。また、優れた血流改善効果があるので、肌のシミ等の美容上の問題を効果的に改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血流改善用組成物に関する。具体的には、松樹皮抽出物と黒胡椒抽出物を含有する血流改善用組成物に関する

【背景技術】
【0002】
現代社会においては、運動不足やストレスによる自律神経失調等の様々な要因により、血液の循環(本明細書では血流と呼ぶ)の不調を訴える人が多くなっている。血流量の低下は、頭痛や肩凝り、肌のくすみや冷え性等の様々な症状を引き起こすため、健康上や美容上の観点から、血流量を改善するための対策は重要である。
【0003】
そのような症状を改善するために様々な血流改善用組成物の開発がなされている。例えば、特許文献1には、ヒソップ抽出物が血液流動性および血流を改善し、さらには皮膚表面温度を上昇させ、冷え症や肩凝り等を改善できることが記載されている。また、特許文献2には、カシス濃縮物とアミノ酸または有機酸を含む組成物が、血管を拡張させて抹消血流量を増加させることが記載されている。さらに、特許文献3には、カモミール抽出エキスが、血流を改善して抹消皮膚の温度を上昇させることが記載されている。特許文献4には柑橘類から得られる物質を有効成分として含有することを特徴とする経口摂取用ストレス由来皮膚血流低下改善組成物に関する発明が記載されている。
【0004】
しかしながら、従来の血流改善用組成物は、必ずしも満足できる効果が得られていない。また、優れた美容効果を発揮する血流改善用組成物はなかった。従って、より効果的に血流を改善できる新規な組成物が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−8575号公報
【特許文献2】特開2004−262878号公報
【特許文献3】特開2005−68069号公報
【特許文献4】特開2008−214223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、効果的に皮膚血流量を増加させ、皮膚温度を高めることができ、肌のシミ等の美容上の問題を効果的に改善できる新規な血流改善用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、血流改善用組成物の開発について検討したところ、非常に優れた効果をもたらす血流改善用組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、松樹皮抽出物と黒胡椒抽出物を含有する血流改善用組成物
に関するものである。好ましくは前記松樹皮抽出物が、OPC含量が40質量%以上で構成されている血流改善用組成物である。さらに、好ましくはみかん抽出物が含有されているものである。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、松樹皮抽出物と黒胡椒抽出物が含有されているので、優れた血流改善効果がある。本発明の血流改善用組成物はそのまま、又は種々の成分を加えて、飲食品類や医薬品類、化粧品類等として用いることができ、優れた血流改善効果を発揮できる。本発明の血流改善用組成物は、優れた血流改善効果があるので、肌のシミ等の美容上の問題を効果的に改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、後述の実施形態の記載により限定されるものではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0010】
本発明は、松樹皮抽出物と黒胡椒抽出物を含有する血流改善用組成物
に関する。
【0011】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、主な有効成分の一つとして、プロアントシアニジンを含有する。プロアントシアニジンは、フラバン−3−オールおよび/又はフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。プロアントシアニジンは、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果実の皮および種に含まれていることが知られている。
【0012】
本発明に用いられる松樹皮抽出物の原料としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ等、特に制限されるわけではないが、フランス海岸松が好ましい。得られた抽出物は、必要に応じて濃縮又は乾燥して、液状、ペースト状、又は粉末としてもよい。また、株式会社東洋新薬製の松樹皮抽出物が特に好ましく用いられ得る。
【0013】
また、本発明に用いられる松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンとして重合度が2以上の縮重合体が含有される。特に、重合度が低い縮重合体が多く含まれるプロアントシアニジンが好ましい。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)でよく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)が好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)がさらに好ましい。本明細書では、重合度が2〜4の重合体を、OPC(oligomeric proanthocyanidin)という。本発明に用いられる松樹皮抽出物としては、OPCを20質量%以上の割合で含有し、好ましくは30質量%以上の割合で含有し、さらに好ましくは40質量%以上の割合で含有する抽出物である。
【0014】
さらに、本発明に用いられる松樹皮抽出物は、さらにカテキン類が含有され得る。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン(狭義のカテキンといわれる)、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、およびアフゼレキン等が知られている。松樹皮抽出物からは、(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、ならびに(+)−カテキン又はガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。
【0015】
松樹皮抽出物は、松の樹皮を水又は有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には温水・熱水が好ましく用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール等の食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が好ましく用いられる。これらの水、有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上の溶媒を組合わせて用いてもよい。特に、水、エタノール、含水エタノール等が好ましく用いられる。
【0016】
松樹皮から松樹皮抽出物を抽出する方法は特に制限はないが、例えば、加温抽出法や超臨界流体抽出法等の抽出法が用いることができる。
【0017】
松樹皮抽出物の抽出方法においては、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0018】
上述の抽出により得られた松樹皮抽出物は、吸着剤等により溶出処理することができる。溶出方法は特に制限が無いが、複数の溶出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0019】
本発明に用いられる松樹皮抽出物の摂取量としては、特に制限されないが、1日当たり5mg以上が好ましく、20mg以上がさらに好ましい。なお、前述の摂取量を1日数回に分けて摂取してもよい。
【0020】
本発明に用いられる、黒胡椒抽出物の原料となる黒胡椒については、原産地や抽出する部位、あるいは抽出方法は特に制限されないが、ピペリンを含有する黒胡椒抽出物が好ましい。黒胡椒抽出物は、必要に応じて濃縮又は乾燥して、液状、ペースト状、又は粉末としてもよい。黒胡椒抽出物の摂取量としては、特に制限されないが、1日当たり0.1mg以上が好ましく、1mg以上がさらに好ましい。なお、前述の摂取量を1日数回に分けて摂取してもよい。
【0021】
本発明に用いられる、みかん抽出物の原料となるみかんについては、原産地や抽出する部位、あるいは抽出方法は特に制限されないが、β−クリプトキサンチンを含有する酵素処理温州みかんが好ましい。みかん抽出物は、必要に応じて濃縮又は乾燥して、液状、ペースト状、又は粉末としてもよい。みかん抽出物の摂取量としては、特に制限されないが、1日当たり0.1mg以上が好ましく、1mg以上がさらに好ましい。なお、前述の摂取量を1日数回に分けて摂取してもよい。
【0022】
本発明の血流改善用組成物は、これらの成分のほか、葛花抽出物、ジャガイモ抽出物等の植物抽出物等の植物抽出物、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、ゼラチン、コラーゲンペプチド、大豆タンパク等のタンパク質、ビートオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖等のオリゴ糖、カルシウム、マグネシウム、鉄等のミネラル類、N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類、乳、発酵乳、脱脂粉乳等の乳製品、豆乳、豆乳粉末等の豆乳製品、レモン、リンゴ等の果汁を配合することができる。さらに必要に応じて通常食品分野で用いられる、デキストリン、乳糖、ショ糖、麦芽糖、果糖、乳糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、キシリトール、でんぷん等の糖類、ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ソーマチン、還元麦芽糖等の甘味料、クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ等の酸味料、酸化チタン等の着色料、アラビアガム、キサンタンガム等の増粘剤、シェラック等の光沢剤、タルク、二酸化ケイ素、セルロース、ステアリン酸カルシウム等の製造用剤等を配合することができる。
【0023】
本発明の血流改善用組成物は、食用に適した形態、例えば、粉末状・粒状・顆粒状・液状・ペースト状・クリーム状・タブレット状・カプセル状・カプレット状・ソフトカプセル状・錠剤状・棒状・板状・ブロック状・丸薬状・固形状・ゲル状・ゼリー状・グミ状・ウエハース状・ビスケット状・飴状・チュアブル状・シロップ状・スティック状等に成形して食品として提供することができる。また、水、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、青汁、ヨーグルト等に添加して使用してもよい。また、血流改善効果や美容効果を表示した健康食品、特定保健用食品として用いても良いことは言うまでもない。
【0024】
本発明の血流改善用組成物は、化粧品に適した形態、例えば、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤等の種々の形態に加工され得る。具体的には、化粧水、化粧クリーム、乳液、クリーム、パック、ヘアトニック、ヘアクリーム、シャンプー、ヘアリンス、トリートメント、ボディシャンプー、洗顔剤、石鹸、ファンデーション、育毛剤、水性軟膏、スプレー等として利用できる
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、後述の実施例に限定して解釈されるものではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。松樹皮抽出物として株式会社東洋新薬製の松樹皮抽出物(OPCを40質量%以上含有)を用いた。
【0026】
(実施例1:血流改善に関する臨床試験)
健常な成人男女7名(平均年齢28歳)を被験者とし、血流改善効果を測定する以下のような臨床試験を行った。
【0027】
まず、松樹皮抽出物および黒胡椒抽出物を用いた下記の4種類の飲料を調製した。
・水150mlのみのコントロール飲料
・松樹皮抽出物40mgを水150mlに溶かした試験飲料A
・松樹皮抽出物20mgと黒胡椒抽出物2.5mgを水150mlに溶かした試験飲料B
・松樹皮抽出物40mgと黒胡椒抽出物2.5mgを水150mlに溶かした試験飲料C
【0028】
被験者は10分間の馴化を行い、馴化後にレーザードップラーで血流量を測定した。その後、上記4種類の飲料のいずれかを摂取し、飲料摂取1時間後、再度血流量の測定を行った。
【0029】
各飲料の摂取前後の血流量の変化率についての結果は表1の示すとおりである。
(表1)

【0030】
表1のように、松樹皮抽出物と黒胡椒抽出物の併用により、血流量が相乗的に改善することが分かった。
【0031】
(実施例2:美容効果に関する臨床試験)
健常な成人女性23名(平均年齢47歳)を被験者とし、以下のような臨床試験を行い、本発明の食品用組成物の美容効果を測定した。なお、臨床試験中は、試験食品以外の美容効果を謳った健康食品、サプリメント、医薬部外品の使用は禁止とした。
【0032】
OPCを40質量%以上含有する松樹皮抽出物40mg、β−クリプトキサンチンを含有する酵素処理温州みかん抽出物10mg、およびピペリンを含有する黒胡椒抽出物2.5mgを配合した試験食品を1日1回、12週間継続して被験者に摂取させた。そして試験開始時と、試験開始4週間後、8週間後、12週間後のシミの明度の変動を測定した。
【0033】
具体的な測定方法は以下の手順である。まず、測定前に被験者は化粧を落とし、その後に洗顔し、馴化を行った。次に、ロボスキン・アナライザーにより顔面の写真を撮影し、色差計でシミの部位に対する明度の測定を行った。また、被験者には美容効果に関して自覚症状のアンケート(効果を感じたか否かのアンケート)を行った。
【0034】
測定の結果、被験者のシミの部位に対する明度(L*値)の平均値は、試験開始時が「60.7±3.5」だったのに対して、4週間後には「61.8±3.2」、8週間後には「62.1±3.1」、12週間後には「62.5±3.1」と有意に改善した(試験開始前に対して試験開始4、8、12週間後はTukey-Kramer検定(両側)で危険率5%での有意差あり)。
【0035】
被験者による自覚症状のアンケート結果は次のようになった。試験食品の摂取に関して、試験開始12週間後に、7名の被験者が「美容効果をとても感じた」、8名の被験者が「美容効果を感じた」、8名の被験者が「美容効果をやや感じた」と回答し、「効果を感じなかった」、「症状が悪化した」と回答した被験者は0名であった。
【0036】
なお、臨床試験期間中に試験食品に起因すると考えられる有害な事象は確認されなかった。よって、本発明に関する食品用組成物の長期摂取は安全であることが示された。
【0037】
(実施例3:血流改善用組成物の製造例)
下記の配合割合で飲料(500mL)を製造した。
大豆タンパク質 0.1 質量%
松樹皮抽出物 0.08 質量%
みかん抽出物 0.05 質量%
黒胡椒抽出物 0.002 質量%
ビタミンC 0.001 質量%
ビタミンE 0.001 質量%
果糖 0.3 質量%
水 残量
下記の配合割合でタブレット状の食品(500mg)を製造した。
還元麦芽糖 35 質量%
コラーゲンペプチド 15 質量%
大豆タンパク質 15 質量%
でんぷん 15 質量%
松樹皮抽出物 8 質量%
みかん抽出物 4 質量%
黒胡椒抽出物 1 質量%
ビタミンC 1 質量%
ビタミンE 1 質量%
セルロース 2 質量%
二酸化ケイ素 2 質量%
ステアリン酸カルシウム 1 質量%
【0038】
以上により、松樹皮抽出物、みかん抽出物、および黒胡椒抽出物を含有する新規な血流改善用組成物の製造が可能であることが示された。
【0039】
以上の結果より、本発明の血流改善用組成物はそのまま、又は種々の成分を加えて、飲食品類や医薬品類、化粧品類等として用いることができ、優れた血流改善効果があることが示された。また、本発明の血流改善用組成物は、優れた血流改善効果があるので、美容上の問題を効果的に改善できる
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の血流改善用組成物はそのまま、又は種々の成分を加えて、飲食品類や医薬品類、化粧品類等として用いることができ、優れた血流改善効果がある。本発明の血流改善用組成物は、優れた血流改善効果があるので、美容上の問題を効果的に改善できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
松樹皮抽出物と黒胡椒抽出物を含有する血流改善用組成物。

【請求項2】
前記松樹皮抽出物がOPC含量が40質量%以上で構成されていることを特徴とする、請求項1記載の血流改善用組成物

【請求項3】
さらにみかん抽出物が含有されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の血流改善用組成物



【公開番号】特開2012−51833(P2012−51833A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195014(P2010−195014)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】