説明

血液の加工

血液加工の方法(300)、装置及びシステムが記載される。本方法(300)は、単一の血液加工装置に結合されて、患者と血液加工装置との間で閉鎖ループを形成する患者から血液を獲得する工程(312)と、閉鎖ループ内の血液加工装置を使用して実施される白血球除去療法により、血液からバルク単核血液細胞を収集する工程(314)と、閉鎖ループ内の血液加工装置を使用して、バルク単核血液細胞中の非標的細胞から分離された標的細胞を同時に豊富化する工程(316)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2008年12月23日出願の米国特許仮出願第61/140,196号の優先権による利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、血液加工のための方法及び機器、より詳細には、白血球除去療法のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血液細胞は、個人の生涯にわたって連続して生成され、最も原始的な血液細胞、いわゆる造血幹細胞(HSC)から導かれる。このHSCは、造血前駆細胞(HPC)と、様々な細胞タイプの血液細胞(例えば、赤色血液細胞(RBC)及び白血球、即ち白色血液細胞(WBC))のもとであり、骨髄中に見出される傾向を有する。より成熟した血液細胞タイプは、血液及びリンパ組織内に見出される。造血は、個人におけるHSC及びHPCからの血液細胞の連続した産生である。この造血は、様々な骨髄性及びリンパ性系統と、異なる程度の成熟を有する多数の異なるタイプの血液細胞を有する末梢血を生じる。これらの血液細胞は、赤色血液細胞による酸素輸送、樹状細胞、B及びTリンパ球による免疫機能、並びに顆粒球及びマクロファージによる炎症性応答等の生理学的プロセスを担っている。
【0004】
アフェレーシスは、個人の血液を機器に通過させ、優位な構成成分(例えば、単核細胞)を得、他の構成成分を血液循環に返却する医療手順である。アフェレーシスは、一般に以下の3つの工程プロセスからなる(1)個人から血液を引き出す、(2)血液の構成要素を分離する(例えば、密度に基づいて)、(3)血液の所定の構成要素を個人を返却する。血液は通常、以下の3つの画分に分離される。RBC(全血の約45%)、「バフィーコート」(全血の1%未満)及び血漿(全血の約55%)。除去される血液構成要素に応じて、様々なタイプのアフェレーシス手順を使用することができる。例えば、「血漿アフェレーシス」は一般に、血漿の分離及び収集を指し、「血小板アフェレーシス」は、血小板の分離及び収集を指すと共に、「白血球除去療法」は通常、白血球(WBC)の分離及び収集を指す。
【0005】
医療科学の進歩により、アフェレーシスは患者−接続の閉鎖ループ連続フロー様式で行うことができる。この目的のための装置には、例えば、以下のアフェレーシスシステムが挙げられる。COBE(登録商標)Spectra,Trima,Spectra Optia systems(全てGambro BCTより販売)並びにAmicus及びCS−3000+(Fenwal/Baxterにより販売)。
【0006】
近年、白血球除去療法は、所定の血液単核細胞(MNC)の画分を収集して、骨髄移植及び他の疾病領域に使用するようにも利用されている。例えば、悪性腫瘍の処置のために切除を受けた患者にHSC及びHPC(末梢血中に存在するもの、末梢血前駆細胞、又はPBPCとも称される)を含むドナー単核細胞のバルク集団を注入して、患者の続く造血システムの再建を達成する。この場合、最初にバフィーコート(大部分のWBC(顆粒球、リンパ球、単球)、PBPC及び幾分かの血小板)が収集されると共に、血液の残りの構成要素(血漿、RBC、血小板及び幾分かのWBCを含む)が個人に返却される。次に、PBPCが豊富化され単離される一方、バフィーコートの残りの画分(バフィーコートのほぼ99%を構成する)が廃棄される。この細胞豊富化のプロセス(即ち、細胞の単離及び精製)は、現在、アフェレーシス機の装置とは別個の装置を使用して、患者−非接続様式で同時に行われる。この目的に使用される装置には、例えばBaxter Isolex 300i及びMiltenyi CliniMACSが挙げられ、これらは細胞表面上の特定のリガンド(CD34−両方の装置、CD133−Miltenyi)に基づいてPBPCを豊富化する。Gambro COBE 2991 Blood Cell Processor又はBaxter CytoMate(商標)Cell Washing System等の他の独立型装置は、多くの場合、細胞を洗浄し、濃縮し、又は適切な増殖若しくは注入培地内に配置するのに使用される。
【0007】
更なる用途において、白血球除去療法は、フォトフェレーシスと称されるプロセスにて個人のWBCを処理するために使用され得る。(Edelsonら、Yale J Biol Med.1989 Nov〜Dec;62(6):565〜77)。このプロセスでは、個人は最初、光活性化可能な物質(例えば、8メトキシ−ソラレン)の投与を受ける。次いで、アフェレーシスを行い、個人のWBCに紫外線A(UVA)光を照射して、物質の活性化とWBCの代謝プロセスの阻害とをもたらす。この目的に使用される装置には、例えば、UVAR AND UVAR(登録商標)XTS(商標)Photopheresis System(Therakosから販売)が挙げられる。
【0008】
上述した豊富化プロセスに加えて、収集されたPBPCはまた、個人に再注入される前に、更なるプロセスにて修飾され得る。これは、一般に、細胞培養物中で様々な技術を使用して達成される。最終的に、修飾された(例えば、表現型、遺伝子型又は活性が改変された)細胞は、所定の治療的利益のために患者内に再導入され得る。修飾プロセスの例には、抗HIV遺伝子を含有するHSC/HPCの生成(R.G.Amadoら、Human Gene Therapy 15(2004),251〜262)、及び帰巣して特定の腫瘍を殺滅するよう「教育」された細胞毒性Tリンパ球の生成が挙げられる。
【0009】
図1は、血液を患者から除去し、加工し、返却する現在の手段を示すブロック図である。ここで、細胞収集のために連続的に使用され得る装置の構成100は、白血球除去療法と、細胞洗浄、精製を用いる等の細胞豊富化技術とを使用する。図には、場合による細胞修飾も挙げられている。この方法に使用することができる例示的な装置としては、Cobe Spectra装置が挙げられる。このような白血球除去療法(収集)用の装置110は、Baxter CytoMate装置等の細胞洗浄装置120と共に連続的に使用され、(豊富化)細胞洗浄装置120は更に、Baxter Isolex 300i装置等の細胞精製(豊富化)装置130と共に使用される。加えて、このスキーム内で細胞マニピュレーション(修飾)装置140が使用されてもよく、前記細胞装置は電気穿孔、リポフェクション、ウイルス形質導入、光(UVA、UVB等)、薬物の添加、細胞活性化、圧力、加熱機能等を含むが、これらに限定されない。装置110、120、130及び140の出力として生成された加工済み血液細胞のバッグ150が患者160に提供されて、加工済み血液が返却される。
【0010】
図2は、細胞の収集、豊富化及び修飾のための方法300の特定の例を示す。この例は、5日間の期間にわたり抗HIV遺伝子をCD34+HSC/HPCに導入するのに使用される方法である。
【0011】
工程310では、単核細胞が収集され、即ち白血球除去療法により回収される。この工程310では、他の血液細胞構成成分、即ち赤色血液細胞、血小板、血漿及び多形核細胞が、患者に返却される。
【0012】
工程320では、単核細胞画分を例えばCytoMate(上記に引用)を使用して洗浄し(2日目)、標的CD34+細胞を例えばIsolex 300i装置を使用して豊富化し(2日目)、非CD34+細胞を廃棄する。
【0013】
工程330では、CD34+細胞をサイトカインの存在下で培養し(2日目)、抗HIV遺伝子(tat/vpr遺伝子の保存領域に対するリボゾーム)をマウスレトロウィルスを使用して導入する(4日目)。
【0014】
工程330後、産物放出試験を行い(5日目)、元々白血球除去された同一の個人に細胞を注入する。
【0015】
しかしながら、アフェレーシスは、固有の不都合及び制限を有する。例えば、アフェレーシスは、流体構成成分のみの収集手順である。技術的な進歩にも関わらず、標的血液細胞の収集、豊富化及び(場合による)修飾の複合工程は、本明細書で前述したように、別個の連続及び不連続装置を使用して行われる。これらの工程のうち、収集のみが、またある場合には収集及び修飾(フォトフェレーシス)が現在患者に接続されている。これらの現在の不連続プロセスは時間を要し、材料、労働者及び費用が不十分である(J.Grynら、Journal of Hematotherapy & Stem Cell Research 11(2002),719〜730;K.R.Meehanら、Journal of Hematotherapy & Stem Cell Research 9(2000),767〜771)。これらのプロセスはまた、(i)潜在的な微生物汚染による安全性、(ii)細胞の選択及び修飾のロジスティックによる加工過程の管理(即ち、正確な細胞を患者に返却すること、細胞の完全性の維持を確実にする)等の重大な懸念を導入する。例えば、溶血は、アフェレーシス収集キットのライン内の捩れを原因とする希な合併症である(R.Reddy,Transfusion and Apheresis Science 32(2005)63〜72)。
【0016】
更に説明すると、血小板減少症(血小板の枯渇)は、白血球除去療法の望ましくない周知の結果であり、子供の白血球除去療法の2次的影響として最も頻繁に報告されている(J.Sevillaら、Transfusion and Apheresis Science 31(2004)221〜231;E.Yamaguchiら、Journal of Hematotherapy & Stem Cell Research 9(2000)565〜572)。
【0017】
血小板減少症は、患者が、多くの場合、その患者に内在する疾病を原因として血小板減少性を有し、白血球除去療法中に更なる血小板損失が存在するため重要である。理想的には、所定の疾病状態を原因とする血小板数における欠乏を有する個人では、バフィーコート中のアフェレーシスされた血小板が分離され、個人に返却される必要がある。しかしながら実際には、アフェレーシスされた血小板は、廃棄物として単に廃棄される。これとは別に、バフィーコート中の血小板の低減は、CD34+前駆細胞(PBPCの一種)の免疫親和性選択の効率を、平均で1.8倍向上させる更なる利益も有する(R.Moog,Transfusion and Apheresis Science 31(2004)207〜220)。
【0018】
白血球除去療法プロセスの他の不都合は、ある患者における貴重なリンパ球の損失である。本明細書で前述したように、HSC及びHPC(特にCD34+前駆細胞)は、多くの場合、個人の造血システムの再構成を達成するために使用されるよう選択される。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した個人において、白血球除去療法を用いたCD34+前駆細胞の選択は、多くの場合、既に数少ないその個人の身体の貴重なリンパ球(CD3+及びCD4+細胞等)を取り除く。CD34+前駆細胞−動員後、約1.3%−は、PBPC白血球除去療法中に収集される最小の細胞画分である一方、リンパ球及び単球はアフェレーシス産物の70%迄を占める(V.Wittら、Journal of Clinical Apheresis 16(2001)161〜168)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本明細書で前述したものを含む、現存するシステムの1つ以上の欠点を克服し、又は少なくとも改善できる装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様によれば、血液を加工するための機器が提供される。この機器は、患者と結合されて、患者の血液循環から血液を直接受容するための入口インターフェイスと;入口インターフェイスに結合されて、受容された血液からバルク単核血液細胞を収集するための白血球除去療法モジュールと;白血球除去療法モジュールに結合されて、バルク単核血液細胞内の非標的細胞から分離された標的細胞を同時に豊富化するための豊富化モジュールと;白血球除去療法モジュール及び豊富化モジュールの少なくとも一方に結合されて、患者と結合して豊富化標的細胞を患者の前記血液循環に返却するための出口インターフェイスであって、機器と患者とが、一緒に結合された際に閉鎖ループを形成する出口インターフェイスと;入口及び出口インターフェイス、白血球除去療法モジュール、並びに豊富化モジュールの操作を自動的に制御するための制御装置と、を備える。
【0021】
本発明の別の態様によれば、血液の加工方法が提供される。本方法は、単一の血液加工装置に結合されて、患者と血液加工装置との間で閉鎖ループを形成する患者から血液を獲得する工程と、閉鎖ループ内の血液加工装置を使用して実施される白血球除去療法により、血液からバルク単核血液細胞を収集する工程と、閉鎖ループ内の血液加工装置を使用して、バルク単核血液細胞中の非標的細胞から分離された標的細胞を同時に豊富化する工程と、を含む。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、血液を加工するためのシステムが提供される。システムは、患者から血液を獲得するための機構を備え、その機構は単一の血液加工装置を含み、血液加工装置は、獲得手段と患者とに結合して、患者と血液加工装置との間で閉鎖ループを形成する。血液加工装置は、閉鎖ループ内で血液加工装置を使用して実施される白血球除去療法により、血液からバルク単核血液細胞を収集するモジュールと、閉鎖ループ内で血液加工装置を使用してバルク単核血液細胞中の非標的細胞から分離された標的細胞を同時に豊富化するモジュールと、を含む。
【0023】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下により詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施形態は、以下、図面を参照して記載される。
【図1】白血球除去療法と、細胞洗浄及び精製を用いた豊富化とによる細胞収集のための装置のブロック図。
【図2】細胞収集、豊富化及び修飾のための現在の方法の特定の例を示す概略図。
【図3】本発明の実施形態による血液の加工方法の流れ図。
【図4】同時の細胞収集、標的細胞豊富化、及び非標的細胞の返却を示す概略図。
【図5】同時の細胞収集、標的細胞豊富化、及び標的細胞の返却を示す概略図。
【図6】患者からの同時の細胞収集、標的細胞の豊富化、標的細胞の修飾、及び修飾標的細胞の患者への返却の方法を示す概略図。
【図7】
【化1】

【図8】
【化2】

【図9】収集、豊富化及び(場合による)修飾ユニット又はモジュールを含む血液加工装置の要素の斜視図。
【図10】細胞豊富化モジュール/プロセスを強調した、図9の装置による血液加工装置の要素の斜視図。
【図11】装置内の場合による細胞修飾工程を強調した、図9又は10の装置による血液加工装置の要素の斜視図。
【図12】
【化3】

【発明を実施するための形態】
【0025】
血液細胞を加工するための方法、機器及びシステムを以下に記載する。より詳細には、個人の末梢血から特定の標的細胞を同時に収集及び豊富化し、残りの血液構成要素を個人に返却することを可能にする白血球除去療法のための方法、機器及びシステムを開示する。加えて、収集された標的細胞は修飾されてもよく、アフェレーシスプロセス中に個人に返却されるか、又は後の時間に個人に返却され得る。本発明の実施形態は、個人の末梢血から特定の標的細胞を同時に収集及び豊富化し、非標的細胞を個人に返却することを可能にする閉鎖ループ装置に関する。標的細胞はそれらの表現型、遺伝子型又は活性を改変するよう修飾されてもよく、閉鎖ループの延長において個人に返却される。本発明の実施形態は、患者−接続の閉鎖ループからなる連続フロー様式でアフェレーシスプロセスを効率的に実行することにより、血液の標的構成要素のみ(例えば、CD34+前駆細胞)を豊富化する一方で、他の残りの構成成分全部を患者に返却する。加えて、修飾細胞を患者へ返却する選択肢を伴って、所定の他の機能(例えば、表現型の修飾)が標的細胞上で行われ得る。そのような装置を提供することにより、(多数の機器及び消耗品を必要とせず)操作コストが有意に低減され、製品の一貫性が確実となる。単一の装置内の単一の位置内で行われるアフェレーシス手順を可能にすることにより、産物の損傷又は損失の危険性も低減する。
【0026】
しかしながら、本開示から、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく修正及び/又は置換を為し得ることが当業者には明らかとなるであろう。
【0027】
【表1−1】

【0028】
【表1−2】

【0029】
閉鎖ループからなる多機能装置及びその使用方法は、患者−接続であり、以下の態様を含んでもよい。
a)収集:関心対象の標的細胞集団を含有するバルク単核血液細胞集団の白血球除去療法による収集を行い、同時に
b)豊富化:バルク単核血液細胞集団から、標的細胞集団を豊富化する
【0030】
豊富化された標的細胞集団は、患者に返却されるか、修飾を含む後のオフライン使用のために除去されるかのいずれかであり、後のオフライン使用は、修飾した細胞を後に患者に注入することを含み得る。標的細胞集団のオフライン使用には、研究又はモニタリングのための使用を含んでもよい。非標的細胞集団は、患者に同時に返却されてもよく、又は使用のためにオフラインで除去されてもよく、又は場合により廃棄されてもよい。本方法は更に、閉鎖ループプロセスの延長にて、標的血液細胞集団を修飾した後、修飾標的血液細胞集団を患者に返却してもよい。
【0031】
図3は、工程310〜316及び330(実線(unbroken line)のボックスで示す)を含む、血液を加工する方法300を高いレベルで示す。図3に示されていないが、工程312〜316は反復して実行されてもよい。方法300は、場合により、工程320〜326(図3で破線のボックスで示す)のうちの1つ以上を含んでもよい。同様に、これらの工程320〜326のうちの1つ以上は反復して実行されてもよい(図3に示さず)。方法300の工程が連続して特定の順序で実行されているように示されているが、方法300は、特定の順序の連続加工、又はそれらのいくつかは任意である全部の工程が実行されることに限定されない。当業者は、本開示に照らして、工程の順序付けを変更し得ることを理解するであろう。更に、1つ以上の工程を並行して実行してもよい。例えば、工程312〜316を並行して実行してもよい。また更に、工程326を工程314及び316と並行して実行してもよい。以下に、血液を加工する方法300をより詳細に説明する。
【0032】
加工は、工程310にて開始する。工程312において、患者から血液を獲得し、患者は単一の血液加工装置に結合されて、患者と血液加工装置との間で閉鎖ループを形成する。
【0033】
工程314において、閉鎖ループ内で血液加工装置を使用して実施される白血球除去療法により、血液からバルク単核血液細胞を収集する。収集工程314は、分画遠心法を用いて単核血液細胞を収集してもよい。分画遠心法は連続フローシステムにより行われてもよい。
【0034】
工程316において、閉鎖ループ内の血液加工装置を使用して、バルク単核血液細胞中の非標的細胞から分離された標的細胞を同時に豊富化する。標的細胞は、B細胞、T細胞、樹状細胞、単球、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、T調節細胞、Tヘルパー細胞、細胞毒性Tリンパ球(CTLs)、造血幹細胞(HSCs)、造血前駆細胞、内皮細胞、上皮細胞、間葉細胞、リンパ球、リンホカイン活性化キラー細胞(LAKs)又は腫瘍浸潤リンパ球(TILs)であってもよい。T細胞は、豊富化されてもよい。T細胞は、CD8+又はCD4+であってもよい。造血前駆細胞及び造血幹細胞は、豊富化されてもよい。造血幹細胞及び造血前駆細胞は、CD34、CD133及びCD143のうちの1つ以上に対して陽性であってもよい。代替的に、標的細胞は、血液由来の悪性細胞、組織由来の悪性細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、少なくとも1つのウイルス、少なくとも1つの細菌、寄生虫、胎児細胞及び病原性エフェクター細胞のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0035】
豊富化工程316は、標的細胞を豊富化するリガンド捕捉を含んでもよい。リガンドは、細胞表面リガンドに特異的な抗体であってもよい。細胞表面リガンドは、上皮細胞接着分子(EpCAM)、セレクチン、接着分子受容体、ホーミング受容体、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体又は酵素であってもよい。細胞表面リガンドは、クラスター指定(CD)抗原であってもよい。CD抗原はCD1a、CD4、CD8、CD14、CD25、CD34、CD133又はCD143であってもよい。工程316における標的細胞豊富化は、磁気学、蛍光活性化細胞選別、マイクロフルイディクス、固体担体、音響学、バイオルミネセンス、抗体標識法及び酵素基質のうちの少なくとも1つにより達成されてもよい。固体担体は、粒子を含んでもよい。粒子は、磁気粒子及び密度変更粒子(density modified particle)の少なくとも一方であってもよい。
【0036】
収集工程314及び豊富化工程316は、血液加工装置の異なる区分内で実行されてもよい。
【0037】
工程320において、豊富化標的細胞を修飾してもよい。修飾工程320は、活性化、増殖(expansion)、アポトーシスの誘導、遺伝子修飾、及び抗原特異性の誘導のうちの1つ以上を含む修飾を含んでもよい。修飾工程320は、細胞表面受容体の架橋、照射、並びにサイトカイン、ケモカイン、抗原刺激、ホルモン、薬物、圧力及び加熱のうちの少なくとも1つを用いた処理により達成される修飾を含んでもよい。照射は、γ、β、α、及び光放射のうちの少なくとも1つであってもよい。光放射は、紫外線A(UVA)、紫外線B(UVB)及び可視光のうちの少なくとも1つであってもよい。代替的に、修飾工程320は、標的細胞の少なくとも一部への遺伝子材料の移入及び形質導入の一方により達成される遺伝子修飾を含んでもよい。遺伝子材料の移入は、電気穿孔及びリポフェクションの一方によるものであってもよい。遺伝子材料の形質導入は、ウイルスベクター形質導入によるものであってもよい。更なる別の代替物において、修飾工程320は、細胞毒性Tリンパ球(CTL)活性化、T調節細胞(Treg)活性化、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)から保護された遺伝子修飾血液細胞のうちの少なくとも1つを含む修飾を含んでもよい。
【0038】
工程322において、非標的細胞を修飾してもよい。更に、工程324において、非標的細胞を患者に返却してもよい。非標的細胞は、閉鎖ループ内に接続された、又は閉鎖ループから接続解除された患者に返却されてもよい。尚、更には、非標的細胞は廃棄されてもよい。
【0039】
工程326において、収集及び豊富化工程は、細胞数に関して同時に監視されてもよい。これは十分な細胞が収集及び豊富化された直後の収集の完了を可能にし、収集を患者に誂えることができる。
【0040】
本方法は、標的細胞の加工中に患者の閉鎖ループ内での連続的な接続を維持し、又は標的細胞の加工中の時間間隔において患者を閉鎖ループから接続解除することを含んでもよい。加工は、工程330にて終結(終了)する。これら及び他の態様は、以後より詳細に記載される。
【0041】
修飾及び廃棄を含むオフライン使用のための、標的細胞の同時の細胞収集及び豊富化
図4は、患者450からの同時の細胞収集410、標的細胞豊富化420、及び非標的細胞返却452(全て、円402内に示す)の方法440を高いレベルで示す。豊富化標的細胞430は、研究/試験462、470のためにオフラインで使用され、又は廃棄482されてもよい。代替的に、豊富化標的細胞430、462は、標的細胞を後の時間に患者450に注入464するために修飾される。この態様は、閉鎖ループでの、同時の細胞収集410、標的細胞豊富化420、及び患者450に対する非標的細胞の返却452を包含する。白血球除去療法による収集工程410では、単核細胞集団を得る。標的細胞のオンライン豊富化工程420が実行される。非標的細胞が患者450に返却452される。豊富化標的細胞430はオフラインで使用されてもよく、また場合により研究、試験等470のために修飾され、又は後の時間に患者450に標的細胞が注入464されてもよい。標的細胞462は、修飾され、又は修飾されずに使用されてもよい。細胞はまた廃棄482されてもよい。標的細胞が修飾されて患者に返却464される状況では、非標的細胞452は必ずしも患者450に戻されない。同時の細胞収集410、標的細胞豊富化420及びオフラインでの細胞修飾からなるプロセス400は、例えば標的細胞の所定の数に到達する迄、必要に応じて多数反復されてもよい。標的細胞豊富化420は1つ又は数個の細胞タイプのためであってもよい。標的細胞修飾は、1つ又は数個の細胞タイプのためであってもよい。閉鎖ループは細胞収集410及び細胞返却452の時間に患者450に接続される。
【0042】
非標的細胞がオフラインで使用され又は廃棄される、返却のための標的細胞の同時の細胞収集及び豊富化
図5は、患者550からの同時の細胞収集510、標的細胞豊富化520、及び標的細胞552の患者550への返却の、方法500を高いレベルで示す。次に、豊富化された非標的細胞530は、修飾され、又は修飾されずに、研究/試験562、570のためにオフラインで使用され、又は廃棄される582。再度、白血球除去療法による収集工程510では、単核細胞集団を得る。標的細胞のオンライン豊富化工程520が実行される。標的細胞552は、患者550に返却される。この態様は、同時の細胞収集510、標的細胞豊富化520、及び患者550に対する標的細胞の返却552を包含する。非標的細胞562は、オフラインで研究、試験等570(修飾工程を有し又は有さず)のために使用されてもよく、又は廃棄される582。閉鎖ループは細胞収集510及び細胞返却552の時間に患者550に接続される。
【0043】
標的細胞の同時の細胞収集、豊富化及び修飾
図6は、患者650からの同時の細胞収集610、標的細胞の豊富化620、標的細胞630の修飾660、及び修飾標的細胞670の患者650への返却の、方法600を高いレベルで示す。非標的細胞652も患者650に返却され得る。この態様は、閉鎖ループ手順での、同時の細胞収集610、標的細胞の豊富化620、標的細胞の修飾660、及び患者650に対する修飾標的細胞670の返却を包含する。非標的細胞652も場合により患者に返却され得る。閉鎖ループは細胞収集610及び細胞返却652、670の時間に患者650に接続される。
【0044】
細胞収集
本発明の実施形態は、細胞収集と、同時の細胞豊富化とを含む。収集は、そこから標的血液細胞が豊富化される細胞である、バルク単核血液細胞の白血球除去療法による収集である。この工程は、分画遠心法の使用を含むがこれに限定されない、患者から単核細胞を獲得する当技術分野にて公知の任意の方法を使用してもよい。この目的のための装置には、COBE(登録商標)Spectra、Trima Spectra Optia systems(全てGambro BCTより販売)及びAmicus又はCS−300(Fenwal/Baxterより販売)Gambro Cobe Spectra又はOptia、Fenwal Amicus又はCS−3000が挙げられる。分画遠心法は、連続フローシステムにより行われることが好ましい。好ましい実施形態において、このバルク血液細胞収集は、その優れた収集効率と、他の装置と比較して小さい体外容積により、Therakos CellEx technologyを使用し、これは上記に列挙したような装置を含む。白血球除去療法中、非単核細胞集団が個人に再注入される。
【0045】
図9は、本発明の実施形態による血液加工装置を示す。患者940は、閉鎖ループ様式で装置900に結合され、入口カテーテル950は患者950に結合されて血液を入力として装置900に提供し、出力カテーテル952は装置900から患者への返却路として結合される。装置900は、患者の血液循環から血液を直接受容するための入口インターフェイスを有する。装置900は豊富化された標的及び/又は非標的細胞を患者の血液循環に返却するための出口インターフェイスも有する。装置900と患者とは、一緒に結合された際に閉鎖ループを形成する。装置900は、白血球除去療法による収集ユニット910及び豊富化ユニット920を含む。(白血球除去療法による)収集ユニット、即ちモジュール910は、受容された血液からバルク単核血液細胞を収集する。豊富化ユニット、即ちモジュール920は、バルク単核血液細胞中の非標的細胞から分離された標的細胞を同時に豊富化する。装置900は、入力を受容し、出力を操作者(図示せず)に提供する操作者インターフェイス960を有する。装置900は、ポンプ/弁デッキ964も備え得る。装置900は、場合によっては修飾ユニット930も備え得る。装置900は、以後説明するような、血液細胞の加工のための遠心分離器962を備える。制御装置(図示せず)が操作者インターフェイス960及び他のモジュールに結合されて、装置900の操作を自動的に制御する。
【0046】
Therakos CellEx systemでは、例えばその全体が参照により本明細書に組み込まれる1981年12月1日にLatham,Jrに発行された「Apparatus for separating blood into components thereof」と題された米国特許第4,303,193号に示されるレーサムボウル(Latham bowl)のような遠心分離ボウルが、血液を赤色血液細胞と「バフィーコート」とに分離する。レーサムボウルは以前から医療用白血球除去療法の業界、及び体外フォトフェレーシス(ECP)等の医学療法にて使用されている血液構成要素分離器である。米国特許第5984887号「Photopheresis treatment of leukocyte」は、体外フォトフェレーシスと、その細胞分離及び遠心分離法との記載を提供している。
【0047】
図7は、図9に示す血液加工装置(及び以後記載する図10のシステム)のより詳細な概略図である。図7にて血液加工装置700は、患者736に結合されて示されている。収集ノード702及び返却ノード756は、図9に示す様式で患者に接続されている。収集ノード702は、カテーテル704を含む入力インターフェイスの一部であり、カテーテル704は次に圧力(「収集」)センサー720に接続されている。順に、収集圧センサー720は空気検出器722に結合され、空気検出器722は収集弁724に結合される。収集弁724は「収集」蠕動ポンプ726に結合され、ポンプ726は次にボウル圧センサー728に結合される。圧力センサー720は収集ポンプ726の操作に影響を与える。ボウル圧センサー728は、遠心分離ボウル730に結合される。遠心分離ボウル730の1つの出力が赤色血液細胞ポンプ(RBC)732及びカテーテル734に結合され、カテーテル734は次に、以後より詳細に記載する返却路に結合される。
【0048】
抗凝固薬(AC)バッグ710は、抗凝固薬蠕動ポンプ712及び適切なカテーテルに結合される。ポンプ712は次に弁714に結合され、弁714は次に空気検出器716に結合される。空気検出器716は、好適なカテーテルにより入力カテーテル704及び収集圧センサー720に結合される。この構成により抗凝固薬は、患者736から装置700への血液入力に適用されることができる。
【0049】
他の1つのカテーテル770は遠心分離ボウル730からの出力を提供し、弁772に結合される。カテーテル770には弁784に結合されたカテーテル782も結合される。次に弁784は返却バッグ740に結合される。返却バッグ740は空気検出器742に結合され、空気検出器742は次に弁744に結合される。弁744は次に弁798、生理食塩水弁760に結合され、前記生理食塩水弁760は、次に生理食塩水バッグ762、カテーテル734及び返却ポンプ746に結合される。返却バッグ740、空気検出器742、弁744は、返却ポンプ746と共に返却路を形成する。ポンプ746は、返却弁748に結合され、返却弁748は空気検出器750に結合される。空気検出器750は返却圧センサー752に結合され、返却圧センサー752はカテーテル754及び返却ノード756に結合される。
【0050】
弁772は、赤色血液細胞を検出可能なセンサー788に結合される。弁772にはカテーテル774も結合され、カテーテル774は次にバフィーポンプ776に結合される。バフィーポンプ776は、プレート778に結合される。プレート778の出力はカテーテル797に結合され、カテーテル797は次に弁798に結合される。弁798は返却ポンプ746に結合される。HCTセンサー788は、平行に構成された弁790及び791に結合される。弁790は、収集バッグ786に結合される。弁791は、豊富化のための薬剤が添加される処理バッグ737に結合される。処理バッグ737は弁793に結合され、弁793は次に空気検出器794に結合される。空気検出器794は、弁798に結合される。
【0051】
選択バッファバッグ795は弁796に結合され、弁796は次に空気検出器794に結合される。
【0052】
細胞豊富化
図10は、装置1000と番号を付け直した図9の装置900を示す。患者1040は、入力カテーテル1050及び出力カテーテル1052により、閉鎖ループ様式にて装置1000に結合される。この実施形態では、単核細胞集団1010は、例えば磁気粒子捕捉等の抗体被覆粒子捕捉により豊富化1020に供される。豊富化1020の出力は豊富化された標的細胞1060であり、これらは患者に返却されてもよい。豊富化1020からの残りの非標的細胞も装置1000を経由して患者104に返却され得る。細胞は特定の目的のために豊富化され、その目的は以下を含むがこれらに限定されない。
1.血液の流れからの排除(例えば、白血病リンパ腫、骨髄腫細胞):これらの細胞タイプは、血液から排除されるべき細胞として選択され、廃棄される。
2.積極的な利益のために患者に戻される修飾:いくつかの例は以下を含む。
a.白血病細胞又は転移性癌細胞の豊富化及び修飾による免疫応答の誘発、
b.特定の癌を標的とする細胞毒性Tリンパ球生成ための修飾、
c.疾病プロセスに影響する遺伝子、例えばHIV/AIDSに影響する抗HIV遺伝子を含むためのHSC/HPCの修飾。
3.研究又は試験等のための使用、これは場合による修飾工程を含んでもよい。
【0053】
標的細胞は、バルク単核細胞収集後の末梢血から豊富化された細胞である。白血球除去療法のバルク産物から豊富化され得る細胞タイプには、Bリンパ球、Tリンパ球、CD4及びCD8 Tリンパ球、樹状細胞、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、T調節細胞、T−ヘルパー細胞、細胞毒性Tリンパ球(CTLs)、造血幹細胞(HSCs)、造血前駆細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンホカイン活性化キラー細胞(LAKs)、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)、間葉幹細胞及び上皮細胞が挙げられるが、これらに限定されない。−表1を参照されたい。(Fundamental Immunology By William E.Paul 2003 Lippincott Williams & Wilkins ISBN 0781735149;Essential Haematology,Hoffbrand,Pettit and Moss)。
【0054】
【表2】

【0055】
廃棄を目的とする他の細胞タイプは当技術分野にて公知であり得、例えば血液若しくは他の組織由来の癌/白血病細胞、ウイルス若しくは細菌感染細胞、ウイルス若しくは細菌若しくは寄生虫、胎児細胞、又は病原性エフェクター細胞を含むが、これらに限定されない。これらの細胞は、適切な表面抗原を使用して豊富化されることができる。これら後者の細胞はまた、上記の目的#2の通りの修飾を目的としてもよく、即ち細胞を修飾し、修飾細胞を戻して治療的免疫応答を達成する。
【0056】
豊富化工程中、2つ以上の標的細胞タイプが豊富化されてもよい。システムは、様々な方法で多数の細胞タイプを豊富化してもよく、例えば細胞タイプは装置(図9及び10の900、1000)の異なるチャンバ内で別々に豊富化されてもよい異なる細胞タイプは一緒に管理されてもよく(例えば、全部が返却され、又は廃棄され、又は修飾される)、又は別々に管理されてもよく(例えば、1つの組が返却され、1つの組が廃棄され、1つの組が修飾され、又は全部の組が修飾されるが、異なる方法で修飾される)、又はそれらのバリエーションであってもよい。
【0057】
標的細胞の豊富化は、末梢血から標的細胞を排除することであってもよく(白血病細胞内等)、又は治療的用途若しくは研究/試験等に必要な百分率純度に豊富化することであってもよい。
【0058】
標的細胞の豊富化は、化学的又は物理的手段、例えば捕捉によるものであってもよく、標的細胞は例えば、バルク血液細胞集団から単離された、即ち豊富化されたと言われる。豊富化手順は、抗原捕捉、ビーズ、磁気学、蛍光活性化細胞選別、マイクロフルイディクス、固体担体、音響学、バイオルミネセンス、抗体標識法又は酵素基質を含むが、これらに限定されない当技術分野にて公知の1つ以上の方法を使用してもよい。好適な固体担体には、強磁性粒子及び密度変更粒子を含むが、これらに限定されない粒子が挙げられる。これらは、例えばMiltenyi Biotec and Dynal(Curr Opin Immunol.1991 Apr;3(2):238〜241)から得ることができる。捕捉細胞の解放に使用され得る方法が存在し、その方法は、i)過剰のリガンドとの競合、ii)酵素消化、iii)pHの変化、iv)イオン強度の変化、v)磁場の除去、vi)物理的撹拌を含む。
【0059】
標的細胞集団に特異的なリガンドは、当該技術分野にて公知の任意のリガンドであってもよく、細胞表面リガンドに特異的な抗体が好ましい。細胞表面リガンドは、CD1a、CD4、CD8、CD14、CD25、CD34及びCD133を含むがこれらに限定されないクラスター指定(CD)抗原であってもよく、クラスター指定(CD)抗原は通常、特定の抗体を使用して標的細胞を捕捉/選択する。細胞表面リガンドは、EpCAM(上皮細胞接着分子)、セレクチン、接着分子受容体、ホーミング受容体、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、並びにアルデヒド脱水素酵素及び他の細胞内酵素を含む酵素であってもよいが、これらに限定されない。表1に、様々な表面マーカーが示されている。
【0060】
1つの例として、細胞豊富化の1つの方法は、抗体又はアプタマーの使用である。抗体という用語は、抗原上に存在するエピトープに結合可能な免疫グロブリン分子を指す。本明細書で使用されるとき、抗体という用語は、細胞結合分子を指す。この用語はモノクローナル及びポリクローナル抗体等の無傷免疫グロブリン分子のみでなく、二特異性抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗イディオパシー(anti-idiopathic)(抗−ID)抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、融合タンパク質、及び必要な特異性を有するリガンド認識部位を含む前述の任意の修飾物も包含するものとする。本明細書で使用されるとき、アプタマーは、標的に対する所望の作用を有する、天然に存在しない核酸又はペプチドである。所望の作用には、標的の結合、標的を触媒的に変化させる、標的又は標的の機能的活性を修飾/改変するやり方で標的と反応する、自殺阻害剤におけるように標的に共有結合する、標的と他の1つの分子との間の反応を促進することが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
HSC/HPCは、細胞表面マーカーCD34若しくはCD133の使用、又は高い濃度のアルコール脱水素酵素(ALDH)を含む多様な方法で豊富化されることができる。本発明の一実施形態では、CD34+ HSC/HPC細胞は、豊富化された後、抗HIV遺伝子導入の工程により修飾される。この導入は、多様な手段、例えばレトロウイルス形質導入により実行することができる。
【0062】
標的細胞は、患者に返却されてもよい。所定の医学的状態においては、標的細胞集団を廃棄し、又は診断/監視目的のために維持することが有利であり得る。例えば、Immunicon Inc.により開発されたCellSearch(商標)と称される診断手順では、希少腫瘍細胞が磁気ビーズ分離システムにより血液中で測定される(参考文献)。この大規模収集手順は、そのような診断方法の感度を増大させる場合がある。特定の標的腫瘍細胞、又は自己免疫疾病におけるTh17細胞等の病原性細胞の廃棄は有益であり得る(参考文献)。最終的に、リンパ球減少症の誘導は、細胞療法の余地を提供する等の理由により、所定の治療法に対するより良好な成果と関連付けられている(Dudley,MEら、Science.2002 Oct 25;298(5594):850〜4.Epub 2002 Sep 19)。廃棄を目的とした細胞集団は、血液若しくは他の組織由来の悪性細胞、ウイルス若しくは細菌感染細胞、ウイルス若しくは細菌若しくは寄生虫、胎児細胞、又はTh1、Th17、CTL等の病原性エフェクター細胞を含むが、これらに限定されない当技術分野にて公知の任意のものであってよい。この豊富化が行われ、治療用途に必要なパーセント純度が達成される。所定の場合に、特定の百分率の豊富化が必要である(下記参照)。病原性細胞、例えば癌/白血病細胞の除去の場合、血液からのクリアランスの効率が実際の最終的なパーセント純度よりも重要である。これらの細胞はまた、上記の目的#2の通りの修飾を目的としてもよい。
【0063】
単一の装置内にて閉鎖ループ様式で、細胞の収集及び豊富化の2つの工程が実行される。工程は、装置の同一の又は異なる区分で実行されてもよい。非標的細胞は、治療的要求に応じて患者に返却され、若しくは廃棄されてもよく、又はオフラインで研究/試験のために使用されてもよい。HIV等の免疫低下又はリンパ球減少性状態等の場合、例えば非標的細胞が閉鎖ループシステム内で返却されて、その損失が患者を損なう可能性がある必須細胞が返却されるようにしてもよい。非標的細胞が返却される必要がなく、又は非標的細胞が返却されないことにより利益が存在する場合、非標的細胞は廃棄され、又はオフラインで他の目的に使用されてもよい。それらの利益は、患者をリンパ球減少性とする結果により生じる可能性があり、患者をリンパ球減少性とすることは、例えば所定の細胞療法の効果を高める場合がある(Dudley,MEら、Science.2002 Oct 25;298(5594):850〜4.Epub 2002 Sep 19)。
【0064】
細胞修飾
図11は、装置1100として番号を付け直した図9又は10の装置900又は1000を示す。患者1140は、入力カテーテル1150及び出力カテーテル1152により、閉鎖ループ様式で装置1100に結合される。この実施形態では、標的細胞の更なる修飾工程が閉鎖ループの患者−接続様式で提供される。この工程は、細胞の収集及び豊富化からなる患者−接続閉鎖ループシステムの延長を表す。患者−接続閉鎖ループシステムにおける標的細胞の修飾は、収集及び豊富化からなる患者−接続閉鎖ループシステムの延長として実行されてもよい。図11に示すように、豊富化された標的細胞1160は容器1170内で修飾されて、修飾標的細胞1180を提供する。場合によって修飾は、電気穿孔、リポフェクション、ウイルス形質導入、光(紫外線A(UVA)、紫外線B(UVB)等)、薬物の添加、細胞活性化、圧力、加熱等のうちの任意の1つ以上であってもよい。
【0065】
図8は、図11に示した血液加工装置のより詳細な概略図である。血液加工装置800は、図8にて患者836に結合されて示されている。第1桁が変更されて図番と対応されている(7XX及び8XX)以外は、図8の装置800と同一である図7に示した装置700の要素は、同一の対応参照番号が付されており、したがって図7の収集ノード702は、図8の収集ノード802である。単に簡潔さのために、図8と同一の図7の要素は同一の機能及び形態を有するため、対応する特徴の記載は図8の記載に反復されない。代わりに、以後、図7と8との間の違いのみ記載する。収集バッグ886は修飾ポンプ831に結合され、ポンプ831は次に修飾ユニット、即ちモジュール833に結合される。修飾モジュール833は次に修飾細胞バッグ835に結合される。その他の図8の装置800の形態は、図7の形態と同一である。
【0066】
修飾はまた不連続なエクスビボ細胞修飾として実行されて、細胞表現型、遺伝子型又は活性が改変されてもよい。これは、サイトカインの添加、特定の受容体の架橋、抗原の添加、DNA、RNA又はタンパク質の移入、アポトーシス細胞誘導、ウイルス形質導入を含む遺伝子組み込みによるものであってもよい。この実施形態では、豊富化された標的細胞集団1160は別個の不連続修飾工程のために引き出されて、細胞表現型/遺伝子型/活性が改変される。次いで、修飾細胞は、研究のために使用され、又は治療的用途のために患者へ注入し戻されてもよい。豊富化の程度は、研究/試験目的、又は治療的用途に必要な程度である。
【0067】
豊富化標的細胞集団は、活性化、増殖、アポトーシスの誘導、遺伝子マニピュレーション、抗原特異性の誘導等を含むがこれらに限定されない、当技術分野にて公知の任意の方法により修飾されてもよい。これは例えば、サイトカインの添加、特定の受容体の架橋、抗原の添加、DNA、RNA又はタンパク質の導入、ウイルス形質導入、電気穿孔、リポフェクション、様々な波長の光を用いた処理、薬物の添加、細胞又は細胞構成成分の捕捉、圧力、加熱等により達成され得る。
【0068】
細胞は、独立型プロセス又は独立型装置による患者−非接続プロセスで行われるフォトフェレーシス(下記参照)のうちの1つを除いた全部の場合において、多様な手段により修飾されることができる。細胞表現型/遺伝子型/活性を改変するエクスビボ細胞修飾を含む、患者−非接続手順の現在の多数の例が存在し、これは例えばサイトカインの添加、特定の受容体の架橋、抗原の添加、DNA若しくはRNAの移入、タンパク質の導入、アポトーシス細胞誘導、又は例えばウイルス形質導入による遺伝子組み込みであってもよい。これを行うための手段としては、電気穿孔、リポフェクション、ウイルス形質導入、照射、薬物とのインキュベーション、細胞捕捉、細胞活性化、圧力、加熱、細胞表面受容体の架橋、サイトカイン、ケモカイン、ホルモンを用いた処理等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、電気穿孔又は電気透過化(electropermeabilization)は、外部から印加された電場を原因とする細胞膜の浸透性の増大により、遺伝子材料(DNA又はRNA)等の細胞外化合物を細胞内に導入するのに使用される方法である。この技術は現在、研究目的で日常的に使用され、その技術のヒト治療における潜在的な有用性を示す臨床試験が行われている。
【0069】
修飾の標的となる細胞には、Bリンパ球、Tリンパ球、CD4及びCD8 Tリンパ球、樹状細胞、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、T調節細胞、T−ヘルパー細胞、細胞毒性Tリンパ球(CTLs)、造血幹細胞(HSCs)、造血前駆細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンホカイン活性化キラー細胞(LAKs)、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)及び上皮細胞が挙げられるが、これらに限定されない。−表1を参照されたい。(Fundamental Immunology by William E.Paul 2003 Lippincott Williams & Wilkins ISBN 0781735149;Essential Haematology,Hoffbrand,Pettit and Moss)。
【0070】
これらの修飾細胞は、多様な疾病及び状態を処置するのに有用である。例えば、養子T細胞療法は、C.H.June.J.Clin.Invest.117,(2007)1466〜1476に記載されている。この例では、患者から末梢血リンパ球が収集され、別個の工程にて豊富化され、活性化システムと共にインキュベートされて抗−腫瘍CTL活性が増大する。HSCは長年、骨髄移植に使用されており、心血管療法及び創傷治癒等の他の用途にも益々使用されている。
【0071】
修飾は、標的細胞集団の少なくとも一部内への遺伝子材料の移入若しくは形質導入、特定の受容体の架橋、又はサイトカインを用いた処理を含むがこれらに限定されない、当技術分野にて公知の任意の方法を用いて達成することができる。遺伝子材料の移入又は形質導入は、ベクター形質導入、電気穿孔又はリポフェクションを含むがこれらに限定されない、当技術分野にて公知の任意の方法によるものであってもよい。修飾は細胞毒性Tリンパ球(CTL)活性化、T調節細胞(Treg)活性化、アポトーシスの誘導又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)からの保護のための血液細胞の遺伝子修飾を含むがこれらに限定されない、当技術分野にて公知のものであり得る。
【0072】
遺伝子修飾造血前駆/幹細胞を用いたHIVの処理は、Amadoら(2004)の国際(PCT)特許公開第WO 03/006691号に記載されている。このシステムでは、患者から白血球除去療法により単核細胞画分の一部としてHSC/HPCが収集され、別個のBaxter装置により豊富化され、患者に注入される前に形質導入及びインキュベートされる(図2参照)。本発明の実施形態では、患者はより短時間で白血球除去され、細胞は閉鎖ループ内で安全に豊富化され、最も重要なことには、非標的細胞がリンパ球減少性のこれらの患者に返却されることができる(図4参照)。
【0073】
この装置により豊富化され、治療法に使用されることができる多数の他の標的細胞が存在し、そのいくつかの例は本明細書に提供されている。樹状細胞は、癌、感染症及び免疫不全疾患の処置に使用される(Nature.2007 Sep 27;449(7161):419〜26.Review)。NK細胞は、癌の処置に使用される。T−調節細胞は、移植片対宿主病(GvHD)(Semin Immunol.2006 Apr;18(2):78〜88)、免疫不全疾患、アトピー性皮膚炎及び喘息(Curr Opin Allergy Clin Immunol.2006 Feb;6(1):12〜6.Review)の処置のために試験されている。CTLsは、癌、感染症及びアレルギーの処置に使用される。内皮細胞は、膀胱、脈管系等の細胞再生療法に使用される。
【0074】
患者−接続閉鎖ループ内に収集、豊富化及び修飾の3工程の全てを組み合わせた実施形態では、豊富化及び修飾の程度は、治療的用途に必要とされる値により決定される。例えば、HIV遺伝子療法では、抗HIV遺伝子コンストラクトにより多数のHSC/HPCに形質導入できるようにHSC/HPCの>20%、より好ましくは>80%の豊富化が必要である。形質導入は、多数の遺伝子−修飾HSC/HPCが患者に再注入されるように最適化される必要がある。前述したものは、例のみを目的として提供される。
【0075】
別の例では、T−調節細胞は豊富化された後、増殖されてもよく、一般に必要とされる純度は、修飾/刺激工程中のエフェクターT細胞の過増殖を制限するよう>75%、好ましくは>90%である。したがって、豊富化及び修飾パラメータは、疾病及び医学的必要性により変動する。再度、前述したものは、例のみを目的として提供される。
【0076】
更なる実施形態において、本発明の実施形態は、工程が行われる際に工程を監視することを可能にし、即ちヘマトクリット、細胞数、細胞表現型、細胞活性化、細胞サイズ等の測定のような工程をリアルタイムで監視することを可能にする。例えば、HSC/HPCの豊富化&修飾の場合、これは例えばCD34+細胞の数及び形質導入CD34+細胞の数の測定が行われるのと同時のプロセスパラメータの決定を可能にする。
【0077】
本明細書で引用する全ての参考文献は、参照により組み込まれる。この参考文献は、2007年5月1日にBriggsらに発行された米国特許第7211037号(「Apparatus for the continuous separation of biological fluids into components and methods of using same」)、及び2007年3月6日にBriggsらに発行された同第7186230号(「Method and apparatus for the continuous separation of biological fluids into components」)を含む。以下の実施例は、本発明の実施形態を説明するよう提供されるが、本発明の実施形態を限定するものではない。
【実施例】
【0078】
実施例1.末梢血からの単核細胞の収集と、CD4+T−リンパ球の豊富化
模造患者を表す末梢血バッグを調製した。健康なドナーからのABOマッチされた全血の4つのユニットを、使用の1〜2日前にACD−A抗凝固薬中に収集した。血液のユニットはSepacell白血球除去フィルターを通した濾過により白色血液細胞が枯渇され、2L血液バッグ内に貯められた。leukopakバフィーコートを加えて白血球カウントを生理学的濃度とし、模造患者バッグを揺動プラットフォーム上にて室温で維持して、均質な細胞懸濁を確実にした。模造患者バッグから10mLの試料を引き出し、ベースライン細胞組成物をBeckman Coulter AcT計数器上での電子細胞計数及び自動分類により決定し、免疫表現型はCD45−FITC、CD3−PECy7、CD4−APC、CD8−PECy5、CD14−PECy7、CD15−PE、CD20−APC、CD34−PEを含むモノクローナル抗体のパネルを使用したフローサイトメトリーにより評価した。
【0079】
模造患者バッグ内の細胞組成の例は:
【0080】
【表3】

【0081】
血液加工システム
血液加工装置の土台であるTherakos CellEx Photopheresis Systemを形成した。図9に示すように、システム900は、遠心分離器チャンバ962、ポンプデッキ964、光活性化チャンバ、及びユーザフレンドリーなソフトウェア駆動による操作者インターフェイス960を含む数個の構成要素を備える。必要に応じて追加のクランプ及びポンプが加えられ、CellExフォトフェレーシス手順に特有の単回使用使い捨てセットが、この実施例で使用するために変更された。末梢血からの、単核細胞の収集とCD4+細胞の豊富化からなる本実施例では、光活性化チャンバは必要ない。CellEx Photopheresis Systemは、1−ω 2−ω遠心分離法を使用し、遠心分離法は、3ポートルーメン駆動チューブに結合したレーサムボウルと組み合わされて連続全血液加工を可能にする。他の白血球除去療法装置と比較すると、同様の数の単核細胞の収集が、縮小された体外容積から達成できる。CellEx Photopheresis Systemは、単一ニードル(バッチ返却)又は二重ニードル(連続返却)のアクセスモードで操作することができ、これは患者に柔軟性を提供する。本実施例では、模造患者バッグから模造患者返却バッグへの血液の単一通過のために二重ニードルモードを使用した。
【0082】
単核細胞の収集に先だって、Therakos CellEx Photopheresis Systemは、使い捨て手順キットの装填及びプライミングを必要とする。キットはレーサム遠心分離ボウル、ポンプチューブオーガナイザー及び光活性化モジュールを含む数個の要素を備えた、単回使用の不可欠な使い捨てセットであった。この実施例では、追加のバッグ及びクランプを備えるよう手順キットを変更した。変更した手順キットをTherakos CellEx Photopheresis Systemの操作者マニュアルの通りに備え付け及びプライミングした。キットを装填した後、システムは7分間の自動化プライミング手順を実行して、適切なキット装填を確実にし、キットの完全性を試験し、器具の完全性を試験し、また抗凝固薬を用いて無菌流体経路をプライミングした。この実施例で使用した抗凝固薬は、ACD−Aであった。
【0083】
プライミング後、システムは模造患者接続の準備ができていた。2Lの模造患者血液バッグをCellEx System使い捨てキットの入口、即ち「キット収集アクセス」ラインに接続した。空の2L血液バッグを出口、即ち「キット返却アクセス」ラインに接続して、模造患者の他方の腕を表し、また「返却バッグ」と指定した。2つのドナーアクセスラインの接続後、CellEx Systemを二重ニードルモードで操作するよう構成した。他の全てのシステムパラメータは初期設定で使用した。システムパラメータは、
1)プロセス1500mL全血、
2)血液収集速度50mL/分、及び
3)抗凝固薬比10:1であった。
【0084】
操作者インターフェイス上の開始ボタンを押して血液収集を開始し、システムは1500mLの標的全血を自動的に加工した。
【0085】
血液が模造患者からレーサムボウルに連続的に揚送されるにつれて赤色血液細胞及び血漿が連続的に除去され、この実施例では「返却バッグ」により表される第2の静脈内ラインを経由して返却された。単一ニードルモードでは、赤血球及び血漿はバッチモードで同一のラインを経由して返却された。CellEx Systemポンプデッキは多数のポンプを駆動し、血液加工全体において血液構成要素を案内し及び移動させる。単核細胞はボウル内の赤色血液細胞と血漿との間の白血球又は「バフィーコート」層として維持された「バフィーコート」の位置はレーザービームにより監視された。
【0086】
1500mLの全血が加工された際、CellEx Systemは「バフィーコート収集」モードに入った。単核細胞の回収は、赤色血液細胞の「返却バッグ」への流れを制御するポンプを停止することにより達成された。これにより赤色血液細胞がボウルに入り、白血球層の乱れが幾分存在したが、「バフィーコート」を上方へ移動させることができ、ボウル頂部の血漿ポートを経由して開放弁を介して退出されることができた。血漿及びバフィーコートは、抗凝固薬を用いたプライミングに先だって、「処理バッグ」に案内された。システムのヘマトクリット光学センサーが3%のヘマトクリットを検出した際、収集ポンプは一時的に停止し、ボウルが高速回転して白血球バンドを改良した。次いで、処理バッグ内への収集は光学センサーが24%のヘマトクリットを検出する迄、進行した。これは弁の閉鎖を引き起こし、流体をボウルから返却ラインへ迂回させた。この時点で「処理バッグ」は、収集された単核細胞製剤を収容していた。「処理バッグ」は単核細胞から優位に構成されていたが血小板も収容し、また低濃度の顆粒球と赤血球を有し、おおよそ1〜2%のヘマトクリットを含んでいた。細胞「処理バッグ」は豊富化を目的として、変更手順セットを経由して追加のバッグに接続された。
【0087】
抗凝固剤処理した1570mLの全血(模造患者)からの単核細胞収集の例
【0088】
【表4】

【0089】
収集された単核細胞からのCD4+標的細胞の豊富化
CellEx単核細胞収集が完了した後、単核細胞産物の画分を細胞豊富化バッファで洗浄し、「処理バッグ」の無ニードルアクセスポートを経由して、CD4+選択ビーズ(Dynal)を所定の濃度で導入した。単核細胞とビーズとの混合物を、CellEx使い捨てキットの光活性化モジュールのS字経路を通して再循環させながら30分間インキュベートした。細胞を蠕動ポンプを経由して磁気粒子濃縮器内に配置されたバッグ内に移動させることにより、インキュベーションを終結させた。CD4+標的細胞は「豊富化細胞バッグ」内に保持され、細胞解離用ビーズ(detechabeads)を加えてダイナビーズを除去した。標的CD4+豊富化画分と非標的細胞画分との両方が、別個の収集バッグ内に収集された。試料を採取して、細胞計数器と、関連した細胞表面マーカーのフローサイトメトリーとを用いて細胞数、収率及び純度を測定した。
【0090】
以下に示す数は、収集した単核細胞の2mLアリコートに関するものである。
【0091】
【表5】

【0092】
実施例2.末梢血からの単核細胞の収集と、CD8+細胞の豊富化
概観
図12は、図7のシステム700に関連した変更システム1200を示す。単に簡潔さのために、図12のシステム1200と同一の図7の特徴は同一の参照番号を維持する(例えば、図7及び12にて抗凝固薬ポンプ712)。また、これら同一の番号が付された特徴は、以後特に明確に記載しない限り、図12のシステム1200にて同一の形態を維持する。図12のシステム1200は、収集及び豊富化(2型)を含む血液加工装置であり、3つの新しいバッグ、6つの新しいクランプ、及び2つの磁石を備える。標準的なCellEx手順キットを、図12に示すように変更した。光活性化チャンバを、CLINIcell25バッグ1278で置き換えた。図12にて患者1200は、返却ノード756に結合された患者バッグ#1 1206と、図12に示されないがバッグ1206を置き換え得る患者バッグ#2とにより表され、患者バッグ#2は、プロセスの異なる段階で返却ノード756に結合されて、収集及び豊富化の間に細胞を数え上げることができる。
【0093】
図12のシステムは、以下のように変更される。プレート778に隣接して磁石1276が配置され、プレート778に対して係合及び離脱され得る。図7ではHCTセンサー788の出力が、弁790及び791(NEW1及びNEW2)に平行に結合され、弁790及び791は次に、それぞれ収集バッグ786及び処理バッグ737に結合される。図12では、この形態は維持されるが、HCTセンサー788の出力には追加の平行経路が加えられている。弁(NEW6)1240がHCTセンサー788の出力に結合され、次に廃棄物バッグ1242に結合される。更なる弁(NEW5)1250がHCT788の出力に結合され、カテーテル1252が弁1250及び弁(NEW3)793と空気検出器794との間に結合される。更に、図12では、弁(NEW4)796の出力が、図7に示した空気検出器794と弁798との間ではなく弁793と空気検出器794との間に結合される。最終的に、二次磁石1254が弁(NEW1)790と収集バッグ786との間の経路に隣接して配置されている。
【0094】
4つの全血ユニットは、収集ノード702に結合された模造患者1204を形成し、coulter計数器及びフローサイトメトリー分析のために試料が採取された。変更キットをCellEx装置上に乗せ、弁NEW1 790、NEW4 796、NEW5 1250及びNEW6 1240を閉鎖し、弁NEW2 791及びNEW3 794を開放した。これは、当初の状態として、処理バッグ737を通した流体連通用の開放チャネルを提供した。標準的なCellExソフトウェアを使用してキットをプライミングし、ラップトップ上で動作する診断ソフトウェアをCellExのIRポートに接続して、使用者構成によるポンプ、弁及び遠心分離器の更なる操作を可能にした。
【0095】
プライミング
弁NEW2 791を閉鎖し、弁NEW1 790を開放して収集バッグ786に至る経路を形成し、バフィー/再循環ポンプ776を時計回りに循環させることによりこのラインをバッファでプライミングした。ラインのプライミング後、ポンプ776を停止し、弁NEW3 793を閉鎖し、弁NEW4 796を開放して、選択バッファ795のキット全体の揚送を可能にした。バフィー/再循環ポンプ776を反時計回りに作動させた。選択バッファ795に至るラインをプライミングした後、ポンプ776を停止し、弁NEW1 790を閉鎖し、弁NEW6 1240を開放した。これにより廃棄物バッグ1242に至る経路が開放される。バフィー/再循環ポンプ776を時計方向に起動させることにより、廃棄物バッグ1242に至るラインがプライミングされた。この廃棄物バッグ1242に至るラインがプライミングされた際、ポンプ776を停止し、弁NEW6 1240及びNEW4 796を閉鎖し、弁NEW5 1252を開放して、バフィー/再循環ポンプを反時計回りに回転させることにより、処理バッグ737を迂回するライン1252をプライミングした。ライン1252、1250がプライミングされた後、ポンプ776を停止し、弁NEW5 1250を閉鎖し、弁NEW2 791及びNEW3 793を開放し、プライミングが完了した。
【0096】
「患者」の接続と収集
「模造患者」1204を収集ライン702、704に接続し、患者バッグ#1 1206を返却ライン756、754に接続した。初期設定を使用した標準的なCellEx二重ニードル手順を行って、(前述の実施例1に記載したように)バフィーコートを収集した。バフィーコート収集の直後、「停止」ボタンを押して自動化CellExソフトウェアを中断した。次いで、CellExポンプ、NEW弁及び遠心分離器を、ラップトップ上の診断ソフトウェアを用いて操作者により操作した。
【0097】
標的細胞の豊富化
弁(NEW2)791、(NEW4)796、(青色−血漿下部)744、(桃色−血漿上部)784及び(返却)748を除いて、システム1200内の全部の弁を閉鎖した。これはボウル730及び返却バッグ740内の残りの材料が、患者バッグ#1 1206に揚送される開放経路を形成した。これは赤色血液細胞ポンプ732を時計回りに回転可能とし、返却ポンプ746を半時計回りに回転可能とすることにより達成された。これにより、遠心分離ボウルからポンプ732及び746を通って要素748、750、752、754及び756を経由して、返却バッグ740を通して患者バッグ#1 1206へ至る経路が形成された。ポンプ732、746を停止し、弁(青色−血漿下部)744を閉鎖し、生理食塩水弁764を開放した。ボウル730を洗浄するために赤血球ポンプ732を反時計方向に起動させ、生理食塩水バッグ762からの生理食塩水をボウル730内に揚送した。ボウル730がおおよそ半分満たされた際、ポンプ732を停止し、生理食塩水弁764を閉鎖した。次いで、遠心分離器730を律動的に駆動させ、時計回りの赤色血液細胞ポンプ732と反時計回りの返却ポンプ746とを経由して血液を患者バッグ#1 1206に揚送した。ボウル730が空になった際、赤色血液細胞ポンプ732の動作を停止し、返却ポンプ746の速度を短時間上昇させて、残りの血液をラインから患者バッグ#1 1206内へフラッシュした。ポンプ746を停止し、患者バッグ#1 1206を患者バッグ#2(図12に示さず)と置き換え、患者バッグ#2は返却ノード756に結合された。患者バッグ#1からの試料をcoulter計数器上で分析し、フローサイトメトリーにより細胞組成を分析した。全有核細胞カウント6.6×106/mLにおける全体で1800mLの血液を加工した。CD8細胞は、8.1%の出発物質を含んでいた。豊富化の後、nバフィーは139mLであり、全有核細胞カウントは24.2×106/mLであり、そのうち22.4%がCD8陽性であった(回収=78%)。
【0098】
チューブ内に残留した細胞を、バフィー/再循環ポンプ776を時計回りに100ミリメートル/分で数秒間操作することにより、処理バッグ737内に揚送した。次いで、ポンプ776を停止し、弁NEW4 796を閉鎖し、弁NEW3 793を開放し、収集バフィーの容積を重量により測定した。処理バッグ737を撹拌して内容物を混合し、coulter計数器及びフローサイトメトリー分析のために試料を収集した。
【0099】
この実施例では、処理バッグ791内の細胞数は1×109に調整され、この数は、1つの5mLバイアルのダイナビーズを使用して捕捉できると報告されている数である。ダイナビーズを処理バッグ737内に投入し、バフィー/再循環ポンプ776を時計回りに起動させることにより、ビーズ/細胞混合物をプレート778及び処理バッグ737に通して循環させた。このモードでは、弁1240、1250、790、796、772及び798は閉鎖している。弁791及び793は開放している。したがって、循環は処理バッグ737を通して要素793、794及び780を経由してプレート778迄生じる。磁石1276は、プレート778から離脱されている。循環は、プレート778からバフィーポンプ776、HCTセンサー788及び弁791を通って処理バッグ737へ継続する。したがって、このモードでは、この経路を通した循環は反時計回りである。このインキュベーション期間中、特定の細胞抗原(この実施例ではCD8)を発現している細胞は、抗体被覆ダイナビーズに結合される。このインキュベーション及び循環は、処理バッグ737及びプレート778の混合及び撹拌を伴って少なくとも30秒間継続する。
【0100】
抗原/抗体循環工程が完了した際、磁石1276が係合したプレート778をDynal ClinExVivo MPC(8kGauss磁石)1276内に配置した。バフィー/再循環ポンプ776は数分間揚送を継続して、プレート778と処理バッグ737の上部との間のチューブから任意のダイナビーズを除去した。
【0101】
プレート778と処理バッグ737との間のラインが一掃された後、ポンプ776を停止し、弁(NEW2)791を閉鎖し、弁(NEW6)1240を開放した後、バフィー/再循環ポンプ776を時計方向に再起動した。これにより、閉鎖されている弁791によって処理バッグ737内への流体連通が遮断された。循環は、処理バッグから要素793、794、780を通して、磁石1276が係合したプレート778に流れた。処理バッグ737内の全細胞を、プレート778を通して揚送した。Dynabead−細胞複合体(CD8陽性又は豊富化画分)を磁石1276によりプレート778内に捕捉した。循環は、弁(NEW6)1240が開放された際にプレート778からバフィーポンプ776及びHCTセンサー788を通して廃棄物バッグ1242に継続した。このように、細胞の残り(陰性画分)は廃棄物バッグ1242内に流れた。
【0102】
処理バッグ737が空になった際にバフィー/再循環ポンプ776を停止し、弁(NEW3)793を閉鎖し、弁(NEW4)796を開放し、ポンプ776を同一方向に再起動して、バッグ795からの選択バッファを処理バッグ737の下部からプレート778を通して廃棄物バッグ1242へフラッシュするようにし、ライン内に残留する大部分の細胞の加工を確実にした。
【0103】
ラインをバッファで数分間フラッシュした後、バフィー/再循環ポンプ776を停止し、弁(NEW6)1240を閉鎖し、弁(NEW2)791を開放し、プレート778を磁石1276から除去した。バフィー/再循環ポンプ776を時計回りに循環させることにより、バッグ795からのバッファをプレート778及び処理バッグ737に加えた。十分なバッファが加えられた際、ポンプ776を停止し、弁(NEW4)796を閉鎖し、弁(NEW3)793を開放した後、ポンプ776を再開させた。細胞−ビーズ混合物をプレート778及び処理バッグ737を通して数分間循環させて、Dynabead−細胞複合体を再懸濁した。循環は、処理バッグ737を通して要素793、794及び780を経由してプレート778迄生じる。循環は、プレート778からバフィーポンプ776、HCTセンサー788及び弁791を通って処理バッグ737へ継続する。したがって、このモードでは、この経路を通した循環は反時計回りである。この工程を反復し、陽性画分の洗浄と一緒にして不純物を除去してもよい。
【0104】
洗浄後、2mLのDynalのDETACHaBEADを処理バッグ737内に投入し、バフィー/再循環ポンプ776を時計回りに少なくとも45分間起動することにより、Dynabead−細胞複合体と共にインキュベートした。インキュベーション後、プレート778を磁石1276内に配置した。バフィー/再循環ポンプ776を時計回りに数分間回転させて、プレート778と処理バッグ737の上部との間のチューブから任意のダイナビーズを一掃した。ラインのダイナビーズが一掃された後、ポンプ776を停止し、処理バッグ737内への弁(NEW2)791を閉鎖し、収集バッグ786内への弁(NEW1)790を開放し、バフィー/再循環ポンプ776を時計方向に再起動した。循環は、処理バッグ737から要素793、794及び780を経由してプレート778へと生じる。循環は、プレート778からバフィーポンプ776、HCTセンサー788及び弁790を通って収集バッグ786へ継続する。磁石1276は、プレート778と係合したままで残留した。
【0105】
処理バッグ737内の流体及び細胞をプレート778に通して揚送し、ダイナビーズ(この時点で細胞から分離されている)を磁石1276で捕捉した一方、細胞(陽性選択)は収集バッグ786内に流れた。次いで、主要な磁石1276で捕捉されなかった任意のダイナビーズを、収集バッグ786内に入る前に二次磁石1254で捕捉する必要があった。処理バッグ786が空となった際、バフィー/再循環ポンプ776を停止し、弁(NEW3)793を閉鎖し、弁(NEW4)796を開放した後、ポンプ776を同一方向に再起動した。選択バッファバッグ795からのバッファを、処理バッグ737の下部からプレート778を通して収集バッグ786へ至るラインにフラッシュして、ライン内の大部分の細胞の加工を確実にした。
【0106】
ラインをバッファで数分間フラッシュした後、バフィー/再循環ポンプ776を停止した。廃棄物バッグ1240及び収集バッグ786を秤量して収集容積を測定し、廃棄物バッグ1240(陰性画分)をcoulter計数器、フローサイトメトリー及びpH分析のために標本抽出した。収集バッグ786内の豊富化画分を濃縮した後、coulter計数器、フローサイトメトリー及びpH分析のために標本抽出した。CD8陽性細胞の収率は33%であり、純度は92%であった。
【0107】
非標的細胞の返却
患者バッグ#2(図12に示されていないが、バッグ1206を置き換え得る)で表される患者に返却するために、廃棄物バッグ1242内の細胞を濃縮した。全て開放された、弁(NEW5)1250、弁(NEW6)1240、弁(緑色−バフィー下部)798、弁(桃色−血漿上部)784及び弁(返却)748を除いて、システム1200内の全部の弁を閉鎖した。これは廃棄物バッグ1242の内容物をボウル730内に移動する路を開放し、あふれた物は返却バッグ740内に収集された。このように、廃棄物バッグ1242からの循環は弁140及び1250、空気検出器794、弁798及びポンプ732を通して遠心分離ボウル730迄であった。循環はボウル730から784を経由して返却バッグ740内迄であった。これは赤血球ポンプ732を半時計回りに回転させることにより達成された。
【0108】
廃棄物バッグ1240が空となった後、ポンプ732を停止し、弁(青色−血漿下部)744、(桃色−血漿上部)784及び(返却)748を除いて全部の弁を閉鎖した。次いで、赤血球ポンプ732を20ミリリットル/分で半時計方向に起動させてボウル730内の全ての空気をパージする一方、同時に遠心分離器730を速度600〜1000RPMに迄数秒間オンとし、次いで遠心分離器730を停止した。この赤血球ポンプ732を連続的にポンピングする間に遠心分離器730をオン及びオフにするプロセスを、ボウル730から去る気泡が全く見られなくなる迄、数回反復した。完了した後、ポンプ732が尚起動している状態で、遠心分離器730をゆっくりと最高速度迄上昇させ、ボウル730の内容物を数分間分離させた。
【0109】
分離が生じた後、赤血球ポンプ732を停止し、弁(NEW2)791及び(黄色−バフィー上部)772を開放し、弁(桃色−血漿上部)784を閉鎖した。赤血球ポンプ732の反時計回り揚送を20ミリリットル/分で再開した。循環は、返却バッグ742から空気検出器742、弁774及びポンプ732を経由して遠心分離ボウル730迄である。循環は、ボウル730から弁772、HCTセンサー788及び弁791を経由して、処理バッグ迄継続する。このプロセスはボウル730の上部から生理食塩水を除去した一方、血液産物中の大部分の非標的細胞はボウル730内に残留する。
【0110】
返却バッグ740が空となった際、遠心分離器730を停止し、ボウル730の全内容物が時計回りの赤血球ポンプ732を経由し、弁748、空気検出器750、圧力センサー752及び返却ノード756を通した反時計回りの返却ポンプ746を経由して、患者バッグ#2(図12に示さず)に返却された。ボウル730が空となった際、両方のポンプ732及び746を停止し、弁(青色−血漿下部)744を閉鎖し、生理食塩水弁764を開放し、返却ポンプ746を100ミリメートル/分で反時計回りに数秒間再起動(reactived)して、残りの非標的血液細胞を患者バッグ#2(図12に示さず)内にフラッシュした。ポンプ746を停止し、患者バッグ#2を秤量して全容積を測定し、coulter計数器及びフローサイトメトリー分析のために標本抽出した。非標的細胞は、2.7%のみのCD8細胞を含んでいた。
【0111】
実施例3.末梢血からの単核細胞の収集と、CD34+細胞の豊富化
CD34+細胞の収集及び豊富化は、CD34に特異的に結合する材料を使用して、実施例1及び2に記載されているように行うことができる。
【0112】
収集された単核細胞からのCD34+細胞の豊富化
本発明の一実施形態では、対象はG−CSFにより動員されてもよい。標準的なCellEx単核細胞収集の完了後、「収集バッグ」の無ニードルアクセスポートを経由して導入されるHSA及びCD34+選択ビーズ(Miltenyi)で補充された細胞豊富化バッファPBS/EDTA(Miltenyi)で単核細胞産物を洗浄する。単核細胞とビーズとの混合物を変更CellEx使い捨てキットの捕捉モジュールを通して再循環させながら30分間インキュベートし、細胞をおおよそ製造業者の提案する流速にて蠕動ポンプを経由してMiltenyi CliniMACS磁石システム内に移動することにより終結させる。CD34+標的細胞を非標的細胞から豊富化してもよく、標的細胞画分及び非標的細胞画分の両方を別個の収集バッグ内に収集し、更に修飾し、又は患者に返却されてもよい。
【0113】
結果
Therakos CellEx Photopheresis Systemは、単核細胞を高収率で収集でき、また標的細胞を更に豊富化するために単一流体路内で細胞豊富化システムに接続され得る。更に、組み合わせシステムの収集モジュールと豊富化モジュールとの間の接続及びインターフェイスの改良は、標的細胞の回収及び収率を向上させることができる。
【0114】
実施例4.末梢血からの単核細胞の収集、CD4+細胞の豊富化、及び修飾。
実施例1又は2の細胞は、図8に示すような閉鎖流体路にて修飾されてもよい。
【0115】
豊富化される細胞はポンプにより修飾チャンバ内に移動される。増殖因子(例、インターロイキン−2)、ペプチド及び/又は遺伝子送達剤(例、ウイルスベクター)等の薬剤を導入し、細胞を一定の温度に維持する(培養する)。このことは、細胞の表現型及び/遺伝子型を改変し、細胞に異なる物理的及び機能的特性を有するようにさせる。修飾細胞は更に培養されて、治療薬として使用されてもよい。
【0116】
ハードウェア及びソフトウェア要求事項に関する注記
ポンプデッキは実質上、現存するCellExと同一のまま残留し、追加のポンプヘッドを加える必要がある−ポンプデッキの下部左角に場所が存在する。
【0117】
フォトフェレーシスに使用される球体(globe)及びボードがCellExから除去される場合、選択と、更には修飾とに必要なものを加える多くの空間が存在する。追加のバッグフックは、器具の左側に加えることができる。
【0118】
前述した様式にて、血液細胞の加工のための多数の方法、機器及びシステムが開示された。少数のみの実施形態が開示されたが、当業者には、この開示に照らして、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく多数の変更及び置換を為し得ることが明白となるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を加工するための機器であって、
患者と結合されて、前記患者の血液循環から血液を直接受容するための入口インターフェイスと、
前記入口インターフェイスに結合されて、前記受容された血液からバルク単核血液細胞を収集するための白血球除去療法モジュールと、
前記白血球除去療法モジュールに結合されて、前記バルク単核血液細胞内の非標的細胞から分離された標的細胞を同時に豊富化するための豊富化モジュールと、
前記白血球除去療法モジュール及び前記豊富化モジュールの少なくとも一方に結合されて、前記患者と結合して豊富化標的細胞を前記患者の前記血液循環に返却するための出口インターフェイスであって、前記機器と前記患者とが、一緒に結合された際に閉鎖ループを形成する出口インターフェイスと、
前記入口及び出口インターフェイス、前記白血球除去療法モジュール、並びに前記豊富化モジュールの操作を自動的に制御するための制御装置と、を備える、機器。
【請求項2】
前記制御装置が、
前記入口及び出口、前記白血球除去療法モジュール及び前記豊富化モジュールの操作の自動制御のためのデータ及び指示を保存するためのメモリと、
前記メモリに結合され、前記データ及び前記指示にアクセス可能であり、前記入口及び出口インターフェイス、前記白血球除去療法モジュール及び前記豊富化モジュールの操作の自動制御のための前記指示を実行するよう適合された、プロセッサーと、
を備える請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記白血球除去療法モジュール及び前記豊富化モジュールの少なくとも一方に結合された標的細胞修飾モジュールを更に備え、前記修飾モジュールが、前記豊富化標的細胞を修飾する、請求項1に記載の機器。
【請求項4】
前記修飾標的細胞を前記患者に返却するための手段を更に備える、請求項3に記載の機器。
【請求項5】
前記白血球除去療法モジュール及び前記豊富化モジュールの少なくとも一方に結合された非標的細胞修飾モジュールを更に備え、前記非修飾細胞モジュールが、非標的細胞を修飾する、請求項1に記載の機器。
【請求項6】
前記修飾非標的細胞を前記患者に返却するための手段を更に備える、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
前記機器内の前記血液の少なくとも一部を循環させるための少なくとも1つのポンプを更に備える、請求項1に記載の機器。
【請求項8】
前記入口インターフェイスに結合されて、前記血液を前記白血球除去療法モジュールに提供するためのポンプ及び少なくとも1つの弁と、前記出口インターフェイスに結合されて、前記機器からの血液を返却するための別の1つのポンプ及び少なくとも1つの弁と、を更に備える、請求項7に記載の機器。
【請求項9】
前記白血球除去療法モジュールが、分画遠心法を使用して前記単核血液細胞を収集する遠心分離ボウルを含む、請求項1に記載の機器。
【請求項10】
前記分画遠心法が連続フローシステムにより行われる、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
血液加工方法であって、
単一の血液加工装置に結合されて、患者と血液加工装置との間で閉鎖ループを形成する前記患者から血液を獲得する工程と、
前記閉鎖ループ内の前記血液加工装置を使用して実施される白血球除去療法により、前記血液からバルク単核血液細胞を収集する工程と、
前記閉鎖ループ内の前記血液加工装置を使用して、前記バルク単核血液細胞中の非標的細胞から分離された標的細胞を同時に豊富化する工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
前記非標的細胞を廃棄する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記標的細胞の加工中に、前記閉鎖ループ内の前記患者の連続的な接続を維持する工程を更に含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記標的細胞の加工中の時間間隔において、前記閉鎖ループから前記患者を接続解除する工程を更に含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記収集工程及び豊富化工程を同時に監視する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記収集工程及び豊富化工程が、前記血液加工装置の異なる区分内で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記収集工程が分画遠心法を使用して前記単核血液細胞を収集することを含み、前記豊富化工程がリガンド捕捉を使用して前記標的細胞を豊富化することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記分画遠心法が連続フローシステムにより行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記リガンドが細胞表面リガンドに特異的な抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞表面リガンドが、上皮細胞接着分子(EpCAM)、セレクチン、接着分子受容体、ホーミング受容体、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体及び酵素からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞表面リガンドがクラスター指定(CD)抗原である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記CD抗原が、CD1a、CD4、CD8、CD14、CD25、CD34、CD133及びCD143からなる群から選択される、求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記標的細胞が、B細胞、T細胞、樹状細胞、単球、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、T調節細胞、T−ヘルパー細胞、細胞毒性Tリンパ球(CTLs)、造血幹細胞(HSCs)、造血前駆細胞、内皮細胞、上皮細胞、間葉細胞、リンパ球、リンホカイン活性化キラー細胞(LAKs)及び腫瘍浸潤リンパ球(TILs)からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記造血前駆細胞及び前記造血幹細胞が豊富化される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記造血幹細胞及び前記造血前駆細胞が、CD34、CD133及びCD143のうちの少なくとも1つに対して陽性である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記豊富化標的細胞を修飾する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
前記修飾工程が、活性化、増殖、アポトーシスの誘導、遺伝子修飾、及び抗原特異性の誘導からなる群から選択される修飾を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記修飾工程が、細胞表面受容体の架橋と、照射と、並びにサイトカイン、ケモカイン、抗原刺激、ホルモン、薬物、圧力及び加熱のうちの少なくとも1つを用いた処理のうちの少なくとも1つと、により達成される修飾を含む、処請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記修飾工程が、前記標的細胞の少なくとも一部内への遺伝子材料の移入及び形質導入の一方により達成される遺伝子修飾を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
遺伝子材料の移入が、電気穿孔又はリポフェクションの一方によるものである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記修飾工程が、細胞毒性Tリンパ球(CTL)活性化、T調節細胞(Treg)活性化、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)から保護された遺伝子修飾血液細胞からなる群から選択される修飾を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記標的細胞が、血液由来の悪性細胞、組織由来の悪性細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、少なくとも1つのウイルス、少なくとも1つの細菌、寄生虫、胎児細胞及び病原性エフェクター細胞からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項33】
前記閉鎖ループ内に接続され又は前記閉鎖ループから接続解除された前記患者に非標的細胞を返却する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項34】
非標的細胞を修飾し、前記非標的細胞を前記閉鎖ループ内に接続され又は前記閉鎖ループから接続解除された前記患者に返却する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項35】
標的細胞豊富化が、磁気学、蛍光活性化細胞選別、マイクロフルイディクス、固体担体、音響学、バイオルミネセンス、抗体標識法及び酵素基質のうちの少なくとも1つにより達成される、請求項11に記載の方法。
【請求項36】
前記粒子が、磁気粒子及び密度変更粒子からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
血液を加工するためのシステムであって、
患者から血液を獲得するための手段と、
前記獲得手段及び前記患者に結合されて、前記患者と前記血液加工装置との間で閉鎖ループを形成する、単一の血液加工装置と、を備え、前記血液加工装置が、
前記閉鎖ループ内の前記血液加工装置を使用して実施される白血球除去療法により、前記血液からバルク単核血液細胞を収集するための手段と、
前記閉鎖ループ内の前記血液加工装置を使用して、前記バルク単核血液細胞中の非標的細胞から分離された標的細胞を同時に豊富化するための手段と、を含む、システム。
【請求項38】
前記非標的細胞を廃棄するための手段を更に備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記収集手段及び豊富化手段のそれぞれの前記収集及び豊富化を同時に監視するための手段を更に備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記収集手段が分画遠心法を使用して前記単核血液細胞を収集し、前記豊富化手段がリガンド捕捉を使用して前記標的細胞を豊富化する、請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
前記リガンドが細胞表面リガンドに特異的な抗体である、請求項40に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−513287(P2012−513287A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543573(P2011−543573)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/068005
【国際公開番号】WO2010/075061
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511154412)テラコス・インコーポレーテツド (1)
【Fターム(参考)】