説明

血液ガンを治療するための方法および組成物

【課題】血液ガンを治療および/または予防するための新規な方法の提供。
【解決手段】対象における血液ガンを治療および/または予防するための方法であって、治療効果的な量のピコルナウイルスまたはその改変形態を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによる腫瘍退縮を受けるように投与することを含む方法。コクサッキーウイルスのようなピコルナウイルスを用いて、静脈内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、自家幹細胞移植に先立つ自家移植片内の悪性細胞の生体外除去、または移植に先立つ自家移植片内の悪性細胞の生体外除去によって投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍退縮性ピコルナウイルス、ならびに、血液ガンを有する対象を治療するための方法および組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
血液ガンは「血液系の」ガンである。このガンは通常、赤血球(酸素運搬細胞)ではなく、むしろ白血球(疾患および感染と闘う細胞)を冒す。このガンの中には、すべての血液細胞が作られる骨髄に存在するものもあれば、白血球がその中を流れるリンパ節および他のリンパ組織に存在するものもある。白血球の一般的なガンが、白血病、ホジキンリンパ腫、他のリンパ腫および多発性骨髄腫である。
【0003】
多発性骨髄腫(MM)は、全タイプのヒトガンの約1%を占めるB細胞悪性腫瘍であり、骨髄性白血病またはホジキン病よりも一般的である。
【0004】
多発性骨髄腫は、貧血、重度の骨の痛み、ならびに、一部の場合には、病的骨折、感染の危険性増大、高カルシウム血症および腎不全の原因になり得る。化学療法が症候性MMのための好ましい最初の治療ではあるが、この疾患は化学療法剤に対して非常に抵抗性があり、また、そのような治療に対して最初に応答する患者のほとんどが最終的には再発する。
【0005】
ガンの進行を抑制することにおける新しい方法が、腫瘍退縮性ウイルスの使用によるものである。腫瘍退縮性ウイルスは、正常な宿主細胞を無傷のままにしながら、悪性の細胞を選択的に破壊または「溶解」することができるウイルスである。数多くのヒト固形ガンが、選択的な腫瘍退縮を媒介するための特有の生物学をそれぞれが有する数多くのウイルスの腫瘍退縮活性に対して感受性である。いくつかの悪性腫瘍に対して効果的であり得る3つの既知の腫瘍退縮性ウイルスには、レオウイルス(Alain T他、Blood、2002、100:4146〜4153;Thirukkumaran CM他、Blood、2003、102:377〜387)、麻疹ウイルス(Grote D他、Blood、2001、97:3746〜3754)およびニューカッスル病ウイルス(Schirrmacher V他、Int J Oncol.2001、18:945〜952)がある。
【0006】
近年、感冒ウイルスのコクサッキーウイルスA21(CVA21)が免疫不全マウスモデルにおけるヒトメラノーマ異種移植片に対して効果的であることが明らかにされた(Shafren DR他、Clin Cancer Res.2004、10:53〜60)。CVA21は、細胞への感染を媒介するために細胞表面分子の細胞間接着分子1(ICAM−1)および崩壊促進因子(DAF)を選択的に利用することが知られているエンテロウイルスである。CVA21はDAFに結合することができるが、細胞表面でのICAM−1発現がない場合、CVA21は、正常な条件のもとでは、細胞進入を引き起こし、宿主細胞の感染を達成することができないので、ICAM−1が細胞のCVA21感染のための重要な受容体である。
【0007】
本出願人は、ICAM−1を認識する腫瘍退縮性ウイルスを使用して充実性腫瘍悪性物を治療するための新規な方法を以前に開発していた(国際特許出願PCT/AU00/01461(国際特許出願公開WO01/37866)、発明の名称:対象における悪性腫瘍を治療するための方法およびその方法において使用される医薬組成物)。優れた治療結果が、様々なコクサッキーウイルスA株を数多くの充実性腫瘍細胞タイプに対して使用することによって得られた。インテグリンαβを細胞への感染のために認識するウイルス(例えば、エコーウイルスなど)を使用して哺乳動物における異常な細胞(例えば、ガン細胞など)を治療するための新規な方法もまた本出願人によって開発されていた(国際特許出願PCT/AU2003/001688(国際特許出願公開WO2004/054613)、発明の名称:直接的なピコルナウイルス媒介の腫瘍退縮によって対象における悪性腫瘍を治療する方法)。可能性のあるこのガン治療を拡大し、かつ、さらに一層効果的な治療を提供するために、本発明者らは、驚くことに、ピコルナウイルス単離物もまた、血液ガンにおける腫瘍退縮性薬剤として好適であり得ることを見出している。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において、本発明は、対象における血液ガンを治療および/または予防するための方法であって、治療効果的な量のピコルナウイルスまたはその改変形態を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによる腫瘍退縮を受けるように投与することを含む方法を提供する。
【0009】
第2の態様において、本発明は、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B前リンパ球性白血病および単球性白血病からなる群から選択される対象における血液ガンを治療および/または予防するための方法であって、治療効果的な量のピコルナウイルスまたはその改変形態を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによる腫瘍退縮を受けるように投与することを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の好ましい形態において、対象はヒトである。
【0011】
ピコルナウイルスは、既知で、分類されているピコルナウイルス、および、まだ分類されていないピコルナウイルスを含めて、任意のピコルナウイルスであり得る。好ましくは、ピコルナウイルスは、原型株および臨床単離株の両方からなる群から選択される。1つの好ましい方法において、ピコルナウイルスは、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルスおよび未分類のエンテロウイルスを含むエンテロウイルスであるか、または、ライノウイルス、パラエコーウイルス、ヘパトウイルス、カルジオウイルス、アフトウイルス、エルボウイルス、コボウイルスおよびテスコウイルスを含み得るピコルナウイルスの他の属に由来する。
【0012】
好ましい形態において、ピコルナウイルスはコクサッキーウイルスである。好ましくは、コクサッキーA群ウイルスが、CVA13、CVA15、CVA18、CVA20、CVA21、その改変形態、および、その組合せからなる群から選択される。より好ましくは、コクサッキーA群ウイルスは、CVA13、CVA15、CVA18、CVA20またはCVA21から選択される。
【0013】
好ましい形態において、コクサッキーA群ウイルスはCVA15またはCVA21である。好ましくは、コクサッキーA群ウイルスはCVA15である。より好ましくは、CVA15はG−9である。
【0014】
別の好ましい形態において、コクサッキーA群ウイルスはCVA21である。より好ましくは、CVA21はKuykendall株である。
【0015】
本明細書中で使用される用語「血液ガン」には、非充実性腫瘍、例えば、白血病、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキン病、脊髄形成異常およびリンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫など)などが挙げられる。白血病の例には、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、B前リンパ球性白血病および単球性白血病が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい形態において、血液ガンは多発性骨髄腫である。
【0016】
好ましい形態において、血液ガンは1つまたは複数の化学療法剤に対して抵抗性があるか、あるいは、1つまたは複数の化学療法剤に対して抵抗性がある細胞を含む。
【0017】
好ましい形態において、ピコルナウイルスは任意の好適な様式でヒト対象に投与される。例えば、ウイルスは、静脈内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、眼内投与、皮下投与、経口投与または局所的投与によって、あるいは、自家幹細胞移植に先立つ自家移植片内の悪性細胞の生体外除去によって投与することができる。1つの形態において、本発明の方法は、例えば、MGUSに対する予防的治療を含む。1つの形態において、本発明の方法は血液ガン(例えば、多発性骨髄腫)に対する全身的な抗腫瘍剤を含む。1つの形態において、本発明の方法は移植前における自家移植片内の悪性細胞の生体外除去を含む。好ましくは、自家移植片は造血系幹細胞を含む。
【0018】
好ましい形態において、ウイルス用量の範囲は約0.01感染性ウイルスユニット/細胞〜約1000感染性ウイルスユニット/細胞であり得る。
【0019】
1つの好ましい形態において、ウイルスは効果的な量の化学療法剤との組合せで対象に投与することができる。
【0020】
別の好ましい形態において、ウイルスは効果的な量のプロバイオティクス剤との組合せで対象に投与することができる。
【0021】
血液ガンの細胞はウイルス−細胞進入受容体分子の細胞間接着分子−1(ICAM−1)および/または崩壊促進因子(DAF)を過剰発現する場合がある。
【0022】
血液ガンの細胞はNF−κBを構成的に発現する場合がある。
【0023】
第3の態様において、本発明は、対象における血液ガンを治療および/または予防するための方法であって、ピコルナウイルスまたはその改変形態に由来する核酸分子の治療効果的な量を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによって殺されるように投与することを含む方法を提供する。
【0024】
核酸分子は、ウイルスに由来する一本鎖RNAまたは相補的DNAであり得る。
【0025】
好ましい形態において、ピコルナウイルスはコクサッキーウイルスである。好ましくは、コクサッキーウイルスはA型であり、より好ましくはコクサッキーウイルスA21(CVA21)である。好ましくは、CVA21はKuykendall株である。
【0026】
第4の態様において、本発明は、対象における血液ガンを治療および/または予防することにおいて使用される医薬組成物であって、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態の効果的な量を、医薬的に許容され得る賦形剤、希釈剤またはキャリアと一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0027】
医薬的に許容され得る賦形剤、希釈剤またはキャリアは当業者によって広く知られており、これらには、治療剤の投与のためのビヒクルとして使用することができる任意の不活性な物質が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい形態において、医薬的に許容され得るキャリアはリポソームであり得る。
【0028】
第5の態様において、本発明は、対象における血液ガンを治療および/または予防することにおいて使用される医薬組成物であって、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態に由来する核酸分子の効果的な量を、医薬的に許容され得る賦形剤、希釈剤またはキャリアと一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0029】
好ましい形態において、医薬組成物はさらに、特定の腫瘍マーカーに結合し、これにより、核酸−リポソーム複合体の標的化を可能にするモノクローナル抗体もまた含有し得るリポソームを含む。
【0030】
第6の態様において、本発明は、対象における血液ガンを治療および/または予防する方法であって、本発明の第3または第4の態様による医薬組成物の治療効果的な量を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによる腫瘍退縮を受けるように投与することを含む方法を提供する。
【0031】
第7の態様において、本発明は、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態を、対象における血液ガンを治療および/または予防する方法において、医薬的に許容され得る賦形剤または希釈剤と一緒に使用することを提供する。
【0032】
第8の態様において、本発明は、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態に由来する核酸分子を、対象における血液ガンを治療および/または予防する方法において、医薬的に許容され得る賦形剤または希釈剤と一緒に使用することを提供する。
【0033】
第9の態様において、本発明は、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態を、対象における血液ガンを治療および/または予防するための医薬品の製造において使用することを提供する。
【0034】
第10の態様において、本発明は、本発明は、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態に由来する核酸分子を、対象における血液ガンを治療および/または予防するための医薬品の製造において使用することを提供する。
【0035】
第11の態様において、本発明は、血液腫瘍細胞または血液ガン細胞に対する哺乳動物における免疫応答を誘導するための方法を提供し、この場合、この方法は、哺乳動物における前記細胞に、治療効果的な量のピコルナウイルスまたはその改変形態を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによる腫瘍退縮を受けるように感染させることを含む。
【0036】
本明細書全体を通して、文脈が他のことを要求しない限り、語句「含む(“comprise”)」または変化形(“comprises”または“comprising”など)は、言及された要素、完全体または工程、あるいは、要素、完全体または工程の群を包含することを意味し、任意の他の要素、完全体または工程、あるいは、要素、完全体または工程の群を除外することを意味しないことが理解される。
【0037】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイスまたは論文などの議論はいずれも、ある特定の状況を本発明に提供するという目的のためだけである。そのことは、これらの事柄のいずれかまたはすべてが先行技術の基礎の一部を形成しているか、あるいは、本出願の優先日の前において、オーストラリアまたはその他の地域で本発明に関連する分野における広く既知の一般的な知識であったことを認めるものとして理解してはならない。
【0038】
本発明がより明快に理解され得るために、好ましい形態が、下記の図面および実施例を参照して記載される。
【0039】
(略称)
略称「MM」は本明細書中では多発性骨髄腫の代わりに使用される。
【0040】
略称「CVA」は本明細書中ではコクサッキーウイルスA群ウイルスの代わりに使用され、例えば、CVA21はコクサッキーウイルスA21の略称である。この分野における文献では、略称「CVA」および略称「CVA」コクサッキーA群ウイルスが様々に使用されており、これらの略称が同じ生物を示し、従って、交換可能であることが本出願のためには理解される。
【0041】
略称「MOI」は本明細書中では感染多重度の代わりに使用される。
【0042】
略称「MGUS」は本明細書中では、意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症の代わりに使用される。
【0043】
略称「BM」は本明細書中では骨髄の代わりに使用される。
【0044】
略称「CFU−GM」は本明細書中では顆粒球/マクロファージコロニー形成ユニットの代わりに使用される。
【0045】
略称「MTTアッセイ」は本明細書中では、化学物質の3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミドを使用する微量培養テトラゾリウムアッセイの代わりに使用される。
【0046】
略称「PI」は本明細書中ではヨウ化プロピジウムの代わりに使用される。
【0047】
略称「PBMC」は本明細書中では末梢血単核細胞の代わりに使用される。
【0048】
略称「BMSC」は本明細書中では骨髄間質細胞の代わりに使用される。
【0049】
略称「mAb」は本明細書中ではモノクローナル抗体の代わりに使用される。
【0050】
略称「TCID50」は本明細書中では50%組織培養感染量の代わりに使用される。
【0051】
略称「PFU」は本明細書中ではプラーク形成ユニットの代わりに使用される。
【0052】
略称「CPE」は本明細書中では細胞変性効果の代わりに使用される。
【0053】
略称「ICAM−1」は本明細書中では細胞間接着分子1の代わりに使用される。
【0054】
略称「DAF」は本明細書中では崩壊促進因子の代わりに使用される。
【0055】
略称「kb」は本明細書中ではキロベースの代わりに使用される。
【0056】
略称「DNA」は本明細書中ではデオキシリボ核酸の代わりに使用される。
【0057】
略称「RNA」は本明細書中ではリボ核酸の代わりに使用される。
【0058】
略称「ELISA」は本明細書中では酵素結合免疫吸着アッセイの代わりに使用される。
【0059】
(図面の簡単な説明)
図1は、多発性骨髄腫細胞株に対するICAM−1およびDAFのフローサイトメトリー分析を示す。多発性骨髄腫細胞株(RPMI−8226、U266およびNCI−H929)および正常なPBMCを抗ICAM−1mAbおよび抗DAFmAbにより二重染色した。抗ICAM−1mAbはFITCと直接にコンジュゲート化され、抗DAFmAbが、PEに連結された二次コンジュゲートを介して間接的に染色された。
図2は、多発性骨髄腫細胞株に対するCVA21の細胞変性効果を示す。多発性骨髄腫細胞株および正常なPBMCに対するCVA21の細胞変性効果を評価するために、RPMI−8226、U266、NCI−H929およびPMBCの6ウエルプレートでの培養物をCVA21の存在下または非存在下において37℃で48時間インキュベーションした(約1MOI)。細胞上清をウエルのそれぞれから注意深く吸引し、細胞を0.01%トリパンブルー溶液で染色した。CVA21によって破壊された非生存性細胞がトリパンブルーによって陽性に染色され、一方、生存性細胞はこの色素を排除することができた。顕微鏡写真を100倍の倍率で撮影した。
図3は、MMTアッセイを使用するMM細胞株および正常なPBMCに対するCVA21の腫瘍退縮作用を示す。MM細胞株(RPMI−8226、U266およびNCI−H929)および正常なPBMCは、48時間にわたる連続CVA21に対する示差的感受性を明らかにする。誤差バーは群あたり四連ウエルの平均値の標準誤差を示す。
図4は、多発性骨髄腫細胞株感染後のCVA21収量を示す。CVA21による24時間および48時間の感染の後における感染性ウイルス粒子を生じさせるMM細胞株(NCI−H929、U266およびRPMI−8226)の能力。約1MOIのCVA21を感染させた後、ウイルスの増加を、正常なPBMCとは対照的に、多発性骨髄腫細胞株のそれぞれにおいて検出することができる。
図5は、多発性骨髄腫細胞におけるCVA21のウイルス成長曲線を示す。同時感染(約1の感染多重度)および示された時間間隔でのウイルス子孫の回収の後でのU266(黒丸)、NCI−H929(白丸)およびRPMI−8226(下向き黒三角)の細胞株におけるCVA21のウイルス成長曲線。サンプルの滴定を三連で行い、各時点での平均ウイルス収量をプロットした。
図6は、CVA21を感染させたRPMI−8226細胞、NCI−H929細胞およびU266細胞におけるDNA断片化の分析を示す。RPMI−8226細胞、NCI−H929細胞およびU266細胞にCVA21を24時間感染させた(〜10TCID50/細胞のMOI)。総DNAを感染細胞および非感染細胞から抽出し、断片化をアガロースゲル電気泳動によって評価した。骨髄腫細胞株からのDNAサンプルが示される:RPMI−8226(レーン1および2)、NCI−H929(レーン3および4)およびU266(レーン5および6)。レーン「M」は1kbのDNAラダーを含有する。培地単独で培養されたMM細胞株から抽出されたDNAが、レーン1、レーン3およびレーン5に示され、これに対して、レーン2、レーン4およびレーン6は、CVA21により処理された細胞株から抽出された細胞DNAを含有する。
図7は、PBMCとの混合物からの多発性骨髄腫細胞の生体外除去を示す。正常なPBMCと多発性骨髄腫細胞(RPMI−8226およびU266)との混合物を一緒に培養し、これにCVA21を3日間感染させて、多発性骨髄腫除去の効率を評価した。生存している骨髄腫細胞(CD138/PI)およびPBMC(CD138/PI)をフローサイトメトリーによって評価した。除去処理サンプル(「CVA21」)および除去非処理サンプル(「ウイルスなし」)のフローサイトメトリープロットがRPMI−8226細胞株およびU266細胞株の両方について示される。
図8は、多発性骨髄腫の臨床サンプルにおけるICAM−1発現の分析(図8A)およびCVA21の成長阻害(図8B)を示す。図8A:患者の骨髄吸引物を多発性骨髄腫患者から得て(臨床サンプル#001)、単一細胞懸濁物を得るために処理した。細胞を抗CD138抗体および抗ICAM−1抗体により二重染色した。ICAM−1の発現について陽性である骨髄腫細胞がドットプロットの上部右側象限(CD138/ICAM−1)に現れる。原発性腫瘍サンプルにおける細胞の約37%がCD138のプラスマ細胞からなっていた。図8B:患者からの臨床での骨髄細胞に、その後、CVA21を様々な濃度で感染させ、ガン細胞の成長阻害をMTTアッセイによって評価した。グラフは、サンプル#001について、異なる投入量のウイルスでの細胞生存率を示す。
図9は、多発性骨髄腫プラスマ細胞を骨髄臨床サンプルから除去するCVA21の能力を示す(図9A〜図9C)。図9A:患者#001からの骨髄サンプルを、ウイルスなし、〜2.75TCID50/細胞、〜5.5TCID50/細胞または〜11TCID50/細胞のいずれかと72時間インキュベーションし、その後、フローサイトメトリーにより分析して、依然として生存している骨髄腫細胞の割合を評価した。細胞をヨウ化プロピジウムおよび抗CD138−FITC抗体により二重染色した。異なる濃度のウイルスによる除去処理の後で残っている生存している骨髄腫細胞を各ドットプロットの下部右側象限(CD138/PI)に認めることができる。図9B:0TCID50/細胞、〜2.75TCID50/細胞、〜5.5TCID50/細胞を48時間感染させたCVA21感染の原発性腫瘍サンプルの顕微鏡写真。細胞の集塊化を、ウイルスなしのコントロールと比較して、両方のウイルス処理サンプルにおいて認めることができる(40倍の倍率)。図9C:上記のフローサイトメトリーデータから計算された、異なる濃度のウイルスによる攻撃の後での生存性骨髄腫細胞の割合。
図10は、CVA21はプラスマ細胞をMMおよびMGUSのBMから選択的に除去することを示す(図10A〜図10E)。図10A:CD138細胞におけるICAM−1発現。抗CD138および抗ICAM−1による染色の後における、患者#005からの代表的なドットプロット。図10B(i):再発MM患者(#001、#002および#008)、部分的寛解でのMM患者(#003)、意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)の患者(#004、#006)、および、診断時にMMの患者(#007)から得られたBMサンプルのインビトロ感染および殺傷。7名の患者から得られたBMサンプルに、CVA21を、0TCID50/細胞(mock)、3TCID50/細胞または10TCID50/細胞の感染多重度(MOI)でインビトロ感染させた。サンプルを感染後48時間で集め、CD138について染色した後でフローサイトメトリーによって分析した。10,000個の事象をサンプルあたり記録した。CD138陽性であった生存性細胞の割合が示される。図10B(ii):本明細書中の表1に示されるような様々な条件による合計で19個の臨床サンプルについての累積的結果。図10C:BM子孫はCVA21に対して抵抗性がある。CVA21を、0TCID50/細胞(mock)、3TCID50/細胞および10TCID50/細胞のMOIで48時間感染させた3つのBMサンプルからの残存細胞(約10,000個の細胞)を3mlのMethoCult GF4434完全メチルセルロース培養培地(Stem Cell Technologies、Vancouver、カナダ)で培養した。CFU−GMの培養を6ウエルプレートのウエルで行い、37℃および5%COにおいて14日間インキュベーションした。CFU−GMを、倒立型顕微鏡を使用して、20個以上の細胞の顆粒球および/またはマクロファージからなるコロニーとしてスコア化した。それぞれの濃度でのCVA21による感染の後における平均コロニー数が示される。誤差バーは3つのサンプルの平均値の標準誤差を示す。示されるコロニー数は、置床された1x10細胞あたりである。CFU−GM、顆粒球/マクロファージのコロニー形成ユニット。図10D:PBMC(CD138)集団は、フローサイトメトリーによって評価されたとき、CVA21除去処理後も依然として生存性であった。上記の(B)(i)に記載される7つの患者BMサンプルへの感染の後、CD138細胞を同様に定量した。この集団はCVA21感染後も比較的変化を受けずにいた。図10E:図10B(ii)に記載されるような患者由来のBMサンプルのインビトロ感染および殺傷。結果がCD138細胞の減少率として表される。
図11は、B細胞リンパ腫、B前リンパ球性白血病、急性前骨髄球性白血病(APML)、単球性白血病および多発性骨髄腫の細胞株に対するICAM−1およびDAFのフローサイトメトリー分析を示す(図11A〜図11B)。(A)B細胞リンパ腫細胞株SCOTT、B前リンパ球性白血病細胞株JVM13、急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株NB4、および、(B)急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株HL−60、単球性白血病細胞株U937および多発性骨髄腫細胞株H929を、抗ICAM−1mAbおよび抗DAFmAbにより二重染色した。抗ICAM−1mAbはFITCと直接にコンジュゲート化され、抗DAFmAbが、PEに連結された二次コンジュゲートを介して間接的に染色された。
図12は、MMTアッセイを使用した、選択された血液ガン細胞株に対するCVA21、CVA18、CVA15およびCVA13の腫瘍退縮作用を示すグラフである(図12A〜図12C)。(A)MM細胞株RPMI−8226、(B)単球性白血病細胞株U937および(C)急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株HL−60は、48時間について示されるように、連続ウイルスに対する示差的な感受性を明らかにする。
図13は、選択された血液ガン細胞株の感染後におけるCVA21収量を示すグラフである。CVA21による24時間および48時間の感染の後で感染性ウイルス粒子を生じさせる、(菱形)MM細胞株RPMI−8226、(四角)単球性白血病細胞株U937および(三角)急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株HL−60の能力。約10TCID50/細胞のCVA21を感染させた後、ウイルスの増加がMM細胞株RPMI−8226においてだけ検出された。
【発明を実施するための形態】
【0060】
いくつかの天然に存在するピコルナウイルスおよび他のウイルス(例えば、レオウイルスなど)が、限られたタイプのガンの治療における使用のために好適であることが知られているが、改善された治療を開発することが依然として求められている。
【0061】
本明細書中に記載されるように、本発明者らは、ピコルナウイルスが、血液腫瘍または血液ガンに溶解感染させるために使用できることを発見している。「感受性」である細胞は、細胞変性効果の誘導、ウイルスタンパク質合成および/またはウイルス産生を明らかにする細胞である。
【0062】
これらの発見に基づいて、本発明者らは、哺乳動物における血液ガンの治療および/または予防のための方法および組成物を開発している。哺乳動物は、本発明による治療を必要としている任意の哺乳動物であり得る。哺乳動物は、ヒト、あるいは、社会的、経済的または研究的に重要である任意の生物種の個体であってもよく、これらには、マウス、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、非ヒト霊長類およびヒトが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0063】
細胞の死は、典型的にはウイルスによる細胞への感染から生じ、ウイルスの細胞内複製に起因する細胞の溶解によるか、または、細胞のカスパーゼの活性化の結果であることが最も考えられるアポトーシスを誘導する感染によるかのいずれかで引き起こされ得る。溶解されると、感染細胞の細胞質ゾル内容物が、破裂した原形質膜から漏れ出る場合があり、また、異常な細胞に対する免疫応答を誘発することができる細胞表面抗原を含む様々な抗原が放出される場合がある。従って、本発明の方法による哺乳動物における血液腫瘍細胞または血液ガン細胞の治療は、そのような細胞に対抗する哺乳動物の免疫性に対する押し上げを提供し得る。
【0064】
ピコルナウイルスは、既知で、分類されているピコルナウイルス、および、まだ分類されていないピコルナウイルスを含めて、任意のピコルナウイルスであり得る。ピコルナウイルスは、原型株および臨床単離株の両方からなる群から選択され得る。ヒトピコルナウイルスの代表的なタイプには、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルスおよび未分類のエンテロウイルス、ライノウイルス、パラエコーウイルス、ヘパトウイルスおよびカルジオウイルスが挙げられる。1つの好ましい方法において、ピコルナウイルスは、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルスおよび未分類のエンテロウイルスを含むエンテロウイルスであるか、または、ライノウイルス、パラエコーウイルス、ヘパトウイルス、カルジオウイルス、アフトウイルス、エルボウイルス、コボウイルスおよびテスコウイルスを含み得るピコルナウイルスの他の属に由来する。好ましい形態において、ピコルナウイルスはコクサッキーウイルスである。好ましくは、コクサッキーウイルスはA型であり、より好ましくはコクサッキーウイルスA21である。
【0065】
望ましくは、ウイルスはコクサッキーA群ウイルスから選択され得る。CVA21が好ましく、特に、CVA21(Kuykendall)(Sickles G.M.、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、102:742;Shafren D.他、J.Virol.、1997、71:4736;Hughes他、J.Gen.Virol.、1989、70:2943;Schmidt、N.J.他、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、1961、107:63)が好ましい。CVA21(Kuykendall)は、American Type Culture Collection(ATCC)(10801 University Boulevard、Manassas、Virginia 20110−2209、アメリカ合衆国)からアクセション番号VR−850で入手可能である。他の好ましいコクサッキーA群ウイルスもまたATCCから入手可能であり、これらには、CVA13(アクセション番号VR−171)、CVA15、特にG−9(アクセション番号VR−1021)、および、CVA18(アクセション番号VR−1024および同VR−176)が挙げられる。
【0066】
ピコルナウイルスは天然に存在するものであり得るか、または改変されたものであり得る。ピコルナウイルスは、自然界の分離源から単離することができ、かつ、実験室においてヒトによって意図的に改変されていないとき、「天然に存在する」ものである。例えば、ピコルナウイルスは、「現場の分離源」から、すなわち、ヒト患者から得られる場合がある。
【0067】
ピコルナウイルスは改変される場合があるが、血液腫瘍または血液ガンに依然として溶解感染することができる。
【0068】
好ましくは、本明細書中に記載される方法または組成物において使用されるピコルナウイルスは、受入れ患者においてウイルス感染の臨床的症状をほとんど引き起こさないか、または、受入れ患者においてウイルス感染のほんの軽度の臨床的症状を引き起こすだけである。
【0069】
ピコルナウイルスは、異なる抗原性決定基を含有し、それにより、ピコルナウイルスのあるサブタイプに以前にさらされた哺乳動物による免疫応答を軽減または防止するように病原性表現型が異なる2つ以上のタイプのピコルナウイルスに由来する組換えピコルナウイルスであってもよい。
【0070】
本発明の方法では、ピコルナウイルスを個々の対象における血液腫瘍または血液ガンに投与することができる。異なる血清型および/または異なる株および/または異なる種および/または異なる属のピコルナウイルス(例えば、異なる動物種に由来するコクサッキーウイルスなど)の組合せを使用することができる。所望される場合、ピコルナウイルスは、新生物への投与に先立って、(例えば、プロテアーゼ(例えば、キモトリプシンまたはトリプシンなど)による処理によって)化学的または生化学的に前処理することができる。そのような前処理により、ウイルスの外皮が除かれ、それにより、ウイルスのより良好な感染性がもたらされ得る。
【0071】
ピコルナウイルスは他の治療剤との組合せで投与または使用することができる。例えば、ピコルナウイルスは1つまたは複数の異なる株または血清型または種または属のピコルナウイルスとともに投与することができる。さらなる株または血清型または種または属のピコルナウイルスは、細胞感染のための受容体要求が本発明のピコルナウイルスと同じまたは異なる場合がある。
【0072】
さらなる一例として、ピコルナウイルスまたはその組合せを、治療されている個体における免疫応答を調節または抑制することができる1つまたは複数の薬剤との組合せで投与することができる。この様式では、ウイルス感染に対する個体の自然の免疫応答が変化する場合があり、それにより、より効率的なウイルス感染および/または腫瘍退縮結果および/または治療結果が可能になる。典型的には、免疫応答を変化させることができる薬剤は、免疫応答を抑制することができる薬剤である。個体(例えば、ヒト個体など)における免疫応答を調節または抑制することができる様々な薬剤が、例えば、The Merck Index(第13版、Merck&Co.Inc.、Whitehouse Station、NJ、米国)に記載される(その内容は参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0073】
ピコルナウイルスまたはその組合せは1つまたは複数の化学療法剤(これはまた抗新生物剤とも呼ばれる)との組合せで使用することができる。様々な抗新生物剤が、例えば、The Merck Index(第13版、Merck&Co.Inc.、Whitehouse Station、NJ、米国)に記載される。例えば、ピコルナウイルスを下記の化学療法剤とともに投与することができる:例えば、アドリアマイシン、タキソール、フルオロウラシル、メルファラン、シスプラチン、α−インターフェロン、COMP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、メトトレキサートおよびプレドニゾン)、エトポシド、mBACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびデキサメタゾン)、PROMACE/MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート(ロイコボリン救済とともに)、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソール、エトポシド/メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、アンギオインヒビン、TNP−470、ペントサンポリサルファート、血小板因子4、アンギオスタチン、LM−609、SU−101、CM−101、テクガラン、サリドマイドおよびSP−PGなど。他の化学療法剤には、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、メルファン、クロラムブチル、シクロホスファミドおよびイホスファミドが挙げられる);ニトロソウレア剤(カルムスチン、ロムスチン、セムスチンおよびストレプトゾシンが挙げられる);アルキルスルホナート剤(ブスルファンが挙げられる);トリアジン系薬剤(ダカルバジンが挙げられる);エチレンイミン系薬剤(チオテパおよびヘキサメチルメラミンが挙げられる);葉酸アナログ(メトトレキサートが挙げられる);ピリミジンアナログ(5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシドが挙げられる);プリンアナログ(6−メルカプトプリンおよび6−チオグアニンが挙げられる);抗腫瘍抗生物質(アクチノマシンDが挙げられる);アントラサイクリン系薬剤(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンCおよびメトラマイシンが挙げられる);ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト(タモキシフェンおよびコルチコステロイドが挙げられる);ならびに、その他の薬剤(シスプラチンおよびブレキナルが挙げられる)が挙げられる。ピコルナウイルスは、例えば、メラノーマの治療のために、ブレオマイシン、ビンデシン、ビンクリスチン、ダクタマイシン、プロカルバジン、ロムスチンまたはダカルバジンの1つまたは複数との組合せで使用することができる。ピコルナウイルスは、例えば、卵巣ガンの治療のために、シスプラチンおよびカルボプラチンの1つまたは複数との組合せで使用することができる。例えば、乳ガンの治療のために、ピコルナウイルスとの組合せで使用することができる化学療法剤のさらなる例には、シクロホスファミド(Cytoxan)、メトトレキサート(Amethopterin、Mexate、Folex)およびフルオロウラシル(Fluorouracil、5−FU、Adrucil)[CMFと略称される];シクロホスファミド、ドキソルビシン(Adriamycin)およびフルオロウラシル[CAFと略称される];ドキソルビシン(Adriamycin)およびシクロホスファミド[ACと略称される];パクリタキセル(Taxol)を伴うドキソルビシン(Adriamycin)およびシクロホスファミド;ドキソルビシン(Adriamycin)、続いてCMF;シクロホスファミド、エピルビシン(Ellence)およびフルオロウラシルが挙げられる。乳ガンの女性を治療するために使用される他の化学療法剤には、例えば、ドセタキセル(Taxotere)、ビノレルビン(Navelbine)、ゲムシタビン(Gemzar)およびカペシタビン(Xeloda)が挙げられる。
【0074】
ピコルナウイルスまたはその組合せは、血液ガンの治療のための既知の治療法(例えば、サリドマイド、プロテオソーム阻害剤および三酸化ヒ素を用いた骨髄腫の治療など)との組合せで使用され得ることが理解される。
【0075】
1つまたは複数のさらなる薬剤(例えば、1つまたは複数のさらなるピコルナウイルス、免疫応答を調節または刺激することができる1つまたは複数の薬剤、あるいは、1つまたは複数の抗新生物剤など)との「組合せでの」ピコルナウイルスの使用または投与は、そのようなピコルナウイルスおよびさらなる薬剤が治療効果(例えば、重なる時間的効果など)を有する任意の様式での使用または投与を意味することが理解される。組合せの要素は同時に投与することができ、または、所望の治療効果を提供する任意の順序で個々に投与することができる。混合治療のために意図されるとき、ピコルナウイルスおよびさらなる薬剤は、物理的に混合された状態であり得るか、あるいは、例えば、投与のための説明書を伴うか、または伴わないキット形態などで、別々に提供され得る。本発明によるキットはまた、本発明の方法を行うために要求または所望されるような他の構成要素(例えば、緩衝剤および/または希釈剤など)を含むことができる。キットは典型的には、様々な構成要素を収容するための容器、および、本発明の方法においてキットの構成要素を使用するための説明書を含む。
【0076】
本発明の医薬組成物には、ピコルナウイルスを唯一の治療活性な薬剤として含む組成物だけでなく、1つまたは複数のさらなる治療剤との物理的混合でのピコルナウイルスの組成物が挙げられることが理解される。
【0077】
ピコルナウイルスは効果的な量のプロバイオティクス剤との組合せで投与することができる。プロバイオティクス剤には、Lactobacillus acidophilus、L.gasseri、L.confusus、Streptococcus thermophilus、Bifidobacterium breveおよびB.longumが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0078】
血液ガン(例えば、白血病、リンパ腫および骨髄腫など)は、骨髄細胞またはリンパ系組織から生じるガンである。血液ガンは充実性腫瘍または別々の細胞(そのような場合、細胞は白血病細胞として血液中に存在する)として成長することができる。
【0079】
通常、血液ガンの細胞の少なくとも一部がICAM−1および/またはDAFを発現する。通常、血液ガンの細胞の少なくとも一部が、非悪性細胞と比較して、ICAM−1および/またはDAFを過剰発現する。本発明の方法による治療に対して特に感受性である血液腫瘍または血液ガンには、白血病、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキン病、骨髄形成異常およびリンパ腫が挙げられる。白血病の例には、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
ピコルナウイルスは、典型的には、生理学的に許容され得るキャリアまたはビヒクル(例えば、リン酸塩緩衝化生理的食塩水など)において血液ガンに投与される。「血液ガンへの投与」は、ピコルナウイルスが血液ガンの細胞と接触するような様式でピコルナウイルスが投与されることを示す。ピコルナウイルスが投与される経路は、配合物、キャリアまたはビヒクルと同様に、新生物の存在位置ならびにタイプに依存する。広範囲の様々な投与経路を用いることができる。例えば、近づくことができる充実性新生物については、ピコルナウイルスを注射によって新生物に対して直接に投与することができる。造血系新生物については、例えば、ピコルナウイルスを典型的には静脈内または血管内に投与することができる。例えば、静脈内送達は、単回または複数回のボーラス服用量注射によってか、または例えば滴剤を用いる静脈系への緩速注入によって投与することができる。体内において容易に近づくことができない新生物(例えば、転移物または脳ガンなど)については、ピコルナウイルスは、ピコルナウイルスが哺乳動物の身体中を通って全身に輸送され、それにより、新生物に到達し得るような様式で投与される(例えば、クモ膜下、静脈内または筋肉内)。あるいは、ピコルナウイルスを1つだけの充実性新生物に対して直接に投与することができ、この場合、ピコルナウイルスは、その後、全身的に身体中を通って転移物に運ばれる。ピコルナウイルスはまた、皮下、腹腔内、局所的、経口、直腸、膣、鼻腔に、または、吸入スプレーによって投与することができる。
【0081】
一般には、好適な組成物を当業者に既知の方法に従って調製することができ、従って、好適な組成物は、医薬的に許容され得るキャリア、希釈剤および/または補助剤を含むことができる。
【0082】
組成物は標準的な経路によって投与することができる。一般に、組成物は、非経口経路(例えば、静脈内経路、髄腔内経路、皮下経路または筋肉内経路)、経口経路または局所経路によって投与することができる。より好ましくは、投与は非経口経路によってである。
【0083】
キャリア、希釈剤および補助剤は、組成物の他の成分との適合性を有し、かつ、その被投与者に対して有害でないという点で「許容され得る」ことが必要である。
【0084】
医薬的に許容され得るキャリアまたは希釈剤の例には、脱塩水または蒸留水;生理的食塩水溶液;植物系オイル、例えば、ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、ダイズ油、ゴマ油、例えば、ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、ダイズ油、ゴマ油、ラッカセイ油またはココナッツ油など;シリコーンオイル、ポリシロキサン(例えば、メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサンなど)が含まれる;揮発性シリコーン;鉱油、例えば、流動パラフィン、軟パラフィンまたはスクアレンなど;セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど;低級アルカノール、例えば、エタノールまたはイソプロパノール;低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールまたはグリセリンなど;脂肪酸エステル、例えば、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルまたはオレイン酸エチルなど;ポリビニルピロリドン;寒天;トラガカントゴムまたはアラビアゴム、およびワセリンがある。典型的には、キャリアは組成物の10重量%〜99.9重量%を形成する。
【0085】
組成物は、注射による投与のために好適な形態、経口摂取のために好適な配合物の形態(例えば、カプセル、錠剤、カプレット、エリキシル剤)、局所投与のために好適な軟膏、クリームまたはローションの形態、点眼剤としての送達のために好適な形態、吸入による投与(例えば、鼻腔内吸入または経口吸入などによる投与)のために好適なエアロゾル形態、非経口投与(すなわち、皮下注射、筋肉内注射または静脈内注射)のために好適な形態にすることができる。
【0086】
注射可能な溶液または懸濁物として投与される場合、非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤またはキャリアには、リンゲル液、等張性の生理的食塩水、リン酸塩緩衝化生理的食塩水、エタノールおよび1,2−プロピレングリコールが含まれ得る。
【0087】
経口使用される好適なキャリア、希釈剤、賦形剤および補助剤のいくつかの例には、ピーナッツ油、流動パラフィン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチンおよびレシチンが含まれる。加えて、これらの経口配合物は、好適な矯味矯臭剤および着色剤を含有することができる。カプセル形態で使用されるとき、カプセルは、崩壊を遅らせる化合物(例えば、グリセリルモノステアラートまたはグリセリルジステアラートなど)でコーティングすることができる。
【0088】
補助剤には、典型的には、皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、保存剤、殺菌剤および緩衝化剤が含まれる。
【0089】
経口投与される固体形態物は、ヒトおよび動物の製薬実務において許容され得る結合剤、甘味剤、崩壊剤、希釈剤、矯味矯臭剤、コーティング剤、保存剤、滑剤および/または時間遅延剤を含有することができる。好適な結合剤には、アラビアゴム、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースまたはポリエチレングリコールが含まれる。好適な甘味剤には、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンが含まれる。好適な崩壊剤には、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアールガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天が含まれる。好適な希釈剤には、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウムまたはリン酸二カルシウムが含まれる。好適な矯味矯臭剤には、ハッカ油、ウインターグリーン油、サクランボ、オレンジまたはラズベリーの香料が含まれる。好適なコーティング剤には、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそれらのエステルのポリマーまたはコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、セラックまたはグルテンが含まれる。好適な保存剤には、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは重亜硫酸ナトリウムが含まれる。好適な滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルクが含まれる。好適な時間遅延剤には、グリセリルモノステアラートまたはグリセリルジステアラートが含まれる。
【0090】
経口投与される液体形態物は、上記の薬剤に加えて、液体キャリアを含有することができる。好適な液体キャリアには、水、オイル、例えば、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ラッカセイ油、ココナッツ油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリドなど、またはその混合物が含まれる。
【0091】
経口投与される懸濁物は分散化剤および/または懸濁化剤をさらに含むことができる。好適な懸濁化剤には、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムまたはアセチルアルコールが含まれる。好適な分散化剤には、レシチン、脂肪酸(例えば、ステアリン酸など)のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアートまたはポリオキシエチレンソルビトールジオレアート、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアラートまたはポリオキシエチレンソルビトールジステアラート、ポリオキシエチレンソルビトールモノラウラートまたはポリオキシエチレンソルビトールジラウラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートまたはポリオキシエチレンソルビタンジオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラートまたはポリオキシエチレンソルビタンジステアラート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートまたはポリオキシエチレンソルビタンジラウラートなどが含まれる。
【0092】
経口投与されるエマルションは1つまたは複数の乳化剤をさらに含むことができる。好適な乳化剤には、上記で例示されたような分散化剤、または、天然ゴム(例えば、グアールガム、アラビアガムまたはトラガカントガムなど)が含まれる。
【0093】
非経口投与可能な組成物を調製するための様々な方法が当業者には明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、これは本明細書により参考として本明細書中に組み込まれる)においてより詳しく記載される。
【0094】
本発明の局所配合物は、1つまたは複数の許容され得るキャリアと一緒での有効成分と、必要な場合には任意の他の治療的成分とを含む。局所投与のために好適な配合物には、治療が必要とされる部位への皮膚を介した浸透のために好適な液体または半液体の調製物(例えば、リニメント剤、ローション、クリーム、軟膏またはペーストなど)、および、眼、耳または鼻への投与のために好適な滴剤が含まれる。
【0095】
本発明による滴剤は無菌の水性または油性の溶液または懸濁物を含むことができる。これらは、有効成分を、殺菌剤および/または抗真菌剤および/または任意の他の好適な保存剤の水溶液に溶解し、そして、必要な場合には、表面活性剤を含むことによって調製することができる。得られる溶液は、その後、ろ過によって清澄化され、好適な容器に移され、滅菌され得る。滅菌は、オートクレーブ処理するか、または、90℃〜100℃で半時間維持することによって、あるいは、ろ過し、その後、無菌技術によって容器に移すことによって達成することができる。滴剤に含めるために好適な殺菌剤および抗真菌剤の例には、硝酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀(0.002%)、ベンザルコニウムクロリド(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)がある。油性溶液を調製するための好適な溶媒には、グリセロール、希釈されたアルコールおよびプロピレングリコールが含まれる。
【0096】
本発明によるローションには、皮膚または眼に対する適用のために好適なローションが含まれる。眼用ローションは、殺菌剤を場合により含有する無菌の水溶液を含むことができ、滴剤の調製に関連して上記で記載された方法と類似する方法によって調製することができる。皮膚に適用されるローションまたはリニメント剤はまた、乾燥を急がせ、また、皮膚を冷やすための薬剤(例えば、アルコールまたはアセトンなど)、および/または、保湿剤(例えば、グリセロールなど)、または、オイル(例えば、ひまし油またはラッカセイ油など)を含むことができる。
【0097】
本発明によるクリーム、軟膏またはペーストは、外用適用のための有効成分の半固体配合物である。それらは、細かく分割された形態または粉末化された形態での有効成分を、単独で、あるいは、水性流体または非水性流体における溶液または懸濁物で、脂肪性または非脂肪性の基剤と混合することによって作製することができる。このような基剤は、炭化水素(例えば、硬パラフィン、軟パラフィンまたは流動パラフィンなど)、グリセロール、蜜ろう、金属石けん;粘漿剤;天然起源のオイル、例えば、アーモンド油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ひまし油またはオリーブ油など;羊毛脂またはその誘導体、あるいは、アルコール(例えば、プロピレングリコールまたはマクロゴールなど)と一緒での脂肪酸(例えば、ステアリン酸またはオレイン酸など)を含むことができる。
【0098】
本発明の組成物は、任意の好適な界面活性剤、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤など、例えば、ソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体などを含むことができる。懸濁化剤(例えば、天然ゴム、セルロース誘導体または無機物質(例えば、ケイ酸系シリカなど)など)および他の成分(例えば、ラノリンなど)もまた含めることができる。
【0099】
ピコルナウイルスの多数回の投与が所望される場合、異なるウイルスを、前回に投与されたウイルスに対する何らかの免疫応答の影響を避け、または最小限に抑えるために、毎回投与することができ、また、治療の経過を、主治医によって決定され得るように1週間〜2週間またはそれ以上にわたって、例えば1ヶ月間〜2ヶ月間またはそれ以上にわたって、延長することができる。最も好ましくは、哺乳動物が以前にさらされていないウイルス、または、哺乳動物が、標準的な技術によって明らかにされ得るような比較的軽微な免疫応答を生じさせるウイルスを投与することができる。
【0100】
広範囲の様々な投与経路を用いることができる。例えば、血液ガンについては、投与経路は、静脈内、腫瘍内、腹腔内、筋肉内、眼内、皮下、経口または局所的であり得るか、あるいは、自家幹細胞移植に先立つ自家移植片内の悪性細胞の生体外除去による場合がある。
【0101】
ピコルナウイルスは、血液ガンを治療するために十分である量(例えば、「効果的な量」)で投与される。血液ガンは、ガンの細胞へのピコルナウイルスの投与がガン細胞の少なくとも一部の腫瘍退縮を達成し、ガンの程度の低下、または、好ましくは、ガンの完全な除去をもたらすとき、「治療される」。ガンの程度の低下、または、好ましくは、ガンの除去は、一般には、ピコルナウイルスによる血液ガン細胞の溶解(「腫瘍退縮」)によって引き起こされる。
【0102】
効果的な量は、個体に基づいて決定され、少なくとも部分的には、ピコルナウイルスのタイプ;個体の体格、年齢、性別;ならびに血液ガンのタイプ、範囲および他の特徴に基づくことができる。例えば、ヒトの治療については、約10〜約1010プラーク形成ユニット(CFU)のピコルナウイルスを、具体的な状況(例えば、存在するガンのタイプ、サイズおよび範囲など)に依存して使用することができる。例えば、接種物は約10PFUを超えて含有することができ、例えば、約10PFU〜約10PFUまたは約10PFU〜約10PFUまたは約10PFU〜約10PFUを含有することができる。さらなる一例として、ウイルス用量の範囲は約0.01〜約1000感染性ウイルスユニット/細胞である場合があり、例えば、約0.01〜約0.1感染性ウイルスユニット/細胞、または、約0.1〜約1感染性ウイルスユニット/細胞、または、約1〜約10感染性ウイルスユニット/細胞、または、約10〜約100感染性ウイルスユニット/細胞、または、約100〜約1000感染性ウイルスユニット/細胞であり得る。
【0103】
ピコルナウイルスは単回服用量または複数回服用量(すなわち、2回以上の服用量)で投与することができる。複数回服用量は、同時に、または、(例えば、数日または数週間の期間にわたって)連続して投与することができる。典型的には、治療的適用では、治療は疾患状態の継続期間において行われ、例えば、少なくとも、血液ガンが通常の手段によってもはや検出できなくなるまでである。例えば、検出できない新生物が存在する可能性があることを治療医が疑う場合、検出可能なガンの存在がなくなるまでの期間にわたって継続することが望ましい場合があることもまた意図される。ピコルナウイルスはまた、同じ個体における2つ以上の血液ガンに対して投与することができる。
【0104】
ピコルナウイルスは、ウイルス感染のガン細胞における溶解応答の生成を可能にするためにRNAゲノムあるいはゲノムまたはその十分な一部分の相補的なDNA複製体を使用することによって間接的に投与され得ることもまた理解される。投与されたとき、ピコルナウイルスは依然として、細胞において複製し、かつ、所望する溶解感染および殺傷を引き起こすことができる。
【0105】
典型的には、患者はウイルスの最初の用量で治療され、続いて、ウイルスの最初の投与に対する患者の応答、ならびに、最初の治療から生じるウイルス感染の程度および悪性細胞の死などの要因の結果を待ちながら、さらなるウイルスを患者に投与するための決定がなされるまでの好適な期間にわたってモニターされる。
【0106】
望ましくは、個体は所定の間隔で一定期間にわたってウイルスにより治療される。間隔は、それぞれの状況において適切であると決定されるように、毎日であり得るか、あるいは、24時間〜72時間以上(例えば、毎週または毎月など)の範囲であり得る。同じウイルスまたは異なるウイルスを、例えば、前回に投与されたウイルスまたは以前に遭遇したウイルスに対する何らかの免疫応答の影響を回避するか、または最小限に抑えるために、そのたび毎に投与することができ、また、治療経過を、主治医によって決定され得るように、1週間〜2週間以上に延ばすことができる。最も好ましくは、個体が以前にさらされていないウイルス、または、個体が、標準的な技術によって明らかにされるような比較的軽い免疫応答を生じさせるウイルスが投与される。あるいは、所望される場合、ウイルスの投与は、例えば、投与されたウイルスに対する受容者の免疫応答を軽減することが所望される場合には、免疫調節剤との組合せであり得る。
【0107】
容易に入手可能な既知のウイルスを本発明の方法において好適に用いることができる一方で、従来の技術を使用して改変または操作されたウイルスもまた利用することができる。例えば、ウイルスを、さらなる細胞接着分子を細胞受容体として用いるために改変することができる。例えば、ペプチドモチーフ「RGD」が、コクサッキーウイルスA9(CVA−9)の場合と同様にウイルスのキャプシド表面に発現されるように、コクサッキーウイルスA21を、部位特異的変異誘発を使用して改変することができる。RGDモチーフはすべてのαインテグリンヘテロ二量体によって認識され、このキャプシド改変は、例えば、ウイルスがインテグリンαβ(悪性メラノーマ病変の表面でのICAM−1との組合せでアップレギュレーションされ、インテグリン分子との相互作用またはICAM−1とのその後の相互作用を介してウイルスの高まった取り込みをもたらすことが知られている細胞接着分子)と結合することを可能にし得る。あるいは、ウイルスを、セレクチン(例えば、E−セレクチンなど)を認識するように、または、NF−κBのシグナル伝達経路を標的化するように改変することができる。
【0108】
ウイルスは、細胞進入のための別の分子を認識するように改変または選択することができる。そのような改変および選択のための方法が本出願人の同時係属中の国際特許出願PCT/AU2005/000048(発明の名称:改変された腫瘍退縮性ウイルス)に記載される(その内容は参考として本明細書中に組み込まれる)。例えば、国際特許出願PCT/AU2005/000048は、細胞上の崩壊促進因子(DAF)を介するなどして、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的に非存在下で細胞に溶解感染することができるか、または、細胞間接着分子−1(ICAM−1)の実質的に非存在下で細胞におけるアポトーシスを誘導することができる単離されている選択されたウイルスを開示する。
【実施例】
【0109】
次に、本発明が、具体的な実施例を参照することによってより詳しく記載されるが、実施例は、いかなる点においても本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0110】
材料および方法
細胞およびウイルス
コクサッキーAウイルスCVA21の原型株(Kuykendall株)をM.Kennett博士(Enterorespiratory Laboratory、Fairfield Hospital、Melbourne、Victoria、オーストラリア)から得た。CVA21を2回プラーク精製し、ICAM−1を発現するメラノーマ細胞(SK−Mel−28)において成長させた。ウイルスは、CVA21、CVA18、CVA15およびCVA13の研究室保存株であった。コクサッキーAウイルスのこれらの原型株、CVA13(Flores)、CVA15(G−9)、CVA18(G−13)およびCVA21(Kuykendall)もまたM.Kennett博士から得た。最初に、CVA13、CVA15およびCVA18をHeLa−B細胞において増殖させ、一方、CVA21KuykendallをRD−ICAM−1細胞において増殖させた。その後、これらのウイルスの作業用の研究室ストックをSK−Mel−28細胞においてこれらの保存株から調製した。
【0111】
SK−Mel−28細胞はP.Hersey博士(Oncology、Mater Hospital、Waratah、New South Wales、オーストラリア)からの譲渡であった。U266、RPMI−8226およびNCI−H929の多発性骨髄腫細胞株をL.Lincz博士(Hematology、Mater Misericordiate Hospital(Hunter Hematology Research Group)、Edith Street、Waratah、New South Wales、オーストラリア)から得た。さらなる細胞株(B細胞リンパ腫細胞株SCOTT、B前リンパ球性白血病細胞株JVM13、急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株のNB4およびHL−60、ならびに単球性白血病細胞株U937)もまたL.Lincz博士から得た。SK−Mel−28細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)を含有するDMEMにおいて維持し、一方、U266細胞、RPMI−8226細胞、NCI−H929細胞、SCOTT細胞、JVM13細胞、NB4細胞、HL−60細胞およびU937細胞を、10%FCSを含有するRPMIにおいて培養した。すべての細胞株は5%COの環境とともに37℃で維持された。健康なドナーからの正常な末梢血単核細胞(PBMC)を、400xgで35分間の遠心分離の前に全血サンプルをFicoll−Hypaque Plusグラジエント上に4:1の比率で重層することによって単離した。中間層を集め、さらなる使用の前にリン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に再懸濁し、その後、PBSで2回洗浄した。
【0112】
原発性腫瘍細胞
すべての手順が、University of Newcastle Human Care and Ethics Committee(Newcastle、NSW、オーストラリア)およびHunter Area Health Service Human Care and Ethics Committee(Newcastle、NSW、オーストラリア)で承認された。原発性腫瘍細胞を、多発性骨髄腫の診断のために定期的な骨髄検査を受けている患者から得た。骨髄吸引物を、表1に示されるように19名の患者から集めた。

【0113】
「PR」は部分的寛解である;「吸引不能」は骨髄なしを意味する(骨粒子)。すべての患者からインフォームドコンセントを得た。単一細胞懸濁物を、サンプルをLymphoprep溶液(Nycomed、Oslo、ノルウェー)に2:1の比率で重層し、400xgで30分間遠心分離することによって骨髄サンプルから得た。単核細胞の層を厚め、さらなる実験での使用の前にPBSで2回洗浄し、5%FCSを含有するRPMIに再懸濁した。
【0114】
抗体
ICAM−1のN末端ドメイン(Berendt AR他、Cell、1992、68:71〜81)に対する、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)とコンジュゲート化された市販の抗CD54抗体(Immunotech Coulter、Marseilles、フランス)を、表面に発現したICAM−1を染色するために使用した。抗DAFmAbをB.Loveland博士(Austin Research Institute、Heidelberg、Victoria、オーストラリア)から得た。抗CD138−FITCmAb(Serotec、Oxford、英国)はプラスマ細胞抗原Syndecan−1に対して特異的であった。フィコエリトリン(PE)とコンジュゲート化されている別の市販の抗CD138抗体をMiltenyi Biotec(CA、米国)から得た。
【0115】
フローサイトメトリー
多発性骨髄腫細胞株および他の血液ガン細胞株(B細胞リンパ腫、B前リンパ球性白血病、急性前骨髄球性白血病(APML)および単球性白血病)におけるICAM−1およびDAFの表面発現を二色フローサイトメトリーによって分析した。簡単に記載すると、分散させた細胞(1x10個)を、直接にコンジュゲート化された抗CD54−FITCmAb(リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)に希釈された5μg/ml)と氷上で20分間インキュベーションした。その後、細胞をPBSにより洗浄し、1000xgで5分間ペレット化し、その後、抗DAF IH4mAb(PBSにおいて5μg/ml)による二重標識化を氷上で20分間行った。細胞をPBSにより洗浄し、100μlの二次抗体溶液(PBSにおいて1:100希釈されたヤギ抗マウス免疫グロブリンのR−フィコエリトリンコンジュゲート化F(ab’)フラグメント)(DAKO A/S、デンマーク)に再懸濁し、氷上で20分間インキュベーションした。それぞれの細胞株について、適切なコンジュゲートコントロール抗体による染色もまた並行して行った。細胞を上記のように洗浄およびペレット化し、PBSに再懸濁し、FACStar分析計(Becton Dickinson、Sydney、オーストラリア)を使用してICAM−1発現およびDAF発現について分析した。
【0116】
ウイルス溶解感染および細胞生存性アッセイ
多発性骨髄腫細胞株のRPMI−8226、U266およびNCI−H929を、CVA21の存在下または非存在下で48時間、6ウエルプレートで培養した。健康な志願者から得られた正常なヒト末梢血単核細胞をコントロールとして使用した。感染多重度(MOI)はそれぞれの培養物について約5TCID50/細胞であった。細胞変性効果(CPE)を、トリパンブルー生存性染色を使用してCVA21感染後48時間で評価した。多発性骨髄腫細胞株によって上清中に分泌されたタンパク質に対するトリパンブルーの親和性のために、培養上清を、染色前に、先を丸めた26ゲージのニードルによるゆっくりした吸引によって最初に除いた。残った細胞を0.4%トリパンブルー溶液により5分間染色した。写真を100倍の倍率で撮影した。
【0117】
インビトロ成長阻害アッセイ
改変型の微量培養テトラゾリウムアッセイ(Alley MC他、Cancer Res.、1988、48:589〜601)を、多発性骨髄腫細胞株の成長に対する、CVA21濃度を増大させたときの影響を調べるために使用した。簡単に記載すると、多発性骨髄腫細胞を指数期の維持培養物から集め、100μlの体積で反復して96ウエル培養プレートにおいて分散させた(1x10細胞/ウエル)。100μlの培養培地、または、ウイルスを含有する培養培地(2x10−5〜20TCID50/細胞)を適切なウエルに分注した。他のコクサッキーAウイルス(CVA13、CVA15およびCVA18)の成長阻害をCVA21と比較するために、1x10−4〜100TCID50/細胞の範囲での10倍の連続希釈物を使用した。細胞を含有しないウエルを培地単独またはウイルス溶液単独の「バックグラウンド」測定のために利用した。
【0118】
培養プレートを、MTT試薬(Sigma Chemicals、Sydney、New South Wales、オーストラリア)の添加前に、37℃で2日間インキュベーションした。MTTストック溶液を5mg MTT/mlのPBS溶液として調製し、0.2μmのフィルターユニットで滅菌ろ過し、4℃で貯蔵した。2日間のインキュベーションの後での成長阻害のレベルを測定するために、20μlのストックMTT溶液をそれぞれの培養ウエルに加え、37℃でさらに4時間インキュベーションした。
【0119】
インキュベーション後、細胞上清を、先を丸めた26ゲージのニードルによるゆっくりした吸引によってウエルから除き、150μlのDMSOにより置き換えた。ホルマザンの結晶を室温(RT)での穏やかな振とうによって完全に溶解し、各ウエルの吸光度を、ELISAプレートリーダー(Flow Laboratories、McLean、Virginia、米国)を使用して540nmで測定した。続いて、細胞株の成長阻害を、平均吸光度ユニットに関して、平均「バックグラウンド」吸光度を引いた後のコントロールの吸光度読み取り値の百分率として表した。
【0120】
ウイルス収量および終点滴定
CVA21のCPEを3つの骨髄腫細胞株で測定した後、感染期間中に産生された感染性ウイルス粒子の収量を測定するための実験を、U266細胞、RPMI−8226細胞、NCI−H929細胞およびPBMCにおいて行った。各細胞株に由来する約3x10個の細胞を1TCID50/細胞のMOIにより感染させた。CVA21を接種したU266細胞、RPMI−8226細胞、NCI−H929細胞およびPBMCをPBSにより2回洗浄し、600μlのRPMIに再懸濁し、その後、それぞれを3つの200μlのアリコートに分割した(約1x10細胞/チューブ)。これらのチューブを37℃でインキュベーションし、細胞株のそれぞれに由来する1つのアリコートを、0時間、12時間、24時間および48時間の時間で集め、細胞を3回の連続した凍結・解凍サイクルによって集めた。細胞溶解物のそれぞれにおけるウイルス収量をSK−Mel−28細胞における終点滴定アッセイによって評価した。結果が図4に示される。
【0121】
簡単に記載すると、終点滴定アッセイのために、96ウエル組織培養プレートにおけるSK−Mel−28細胞のコンフルエントな単層にウイルスの10倍連続希釈物を接種し(四連での100μl/ウエル)、単層を37℃で5%COの環境において48時間インキュベーションした。細胞の生存率を、クリスタルバイオレット/メタノール溶液(PBSにおいて0.1%クリスタルバイオレット、20%メタノール、4.0%ホルムアルデヒド)(100μl/ウエル)との24時間のインキュベーション、その後、蒸留水による3回の洗浄によって定量した。個々のウエルの相対的な吸光度をマルチスキャン酵素結合免疫吸着アッセイプレートリーダー(Flow Laboratories、McLean、Virginia、米国)で540nmにおいて読み取った。50パーセントのウイルス終点力価を、吸光度の値がコントロール(ウイルスなしのウエル)の平均−3倍標準偏差(SD)よりも小さいならば、陽性としてウエルをスコア化することによって、SpearmanKarber法を使用して計算した。
【0122】
感染期間中に産生された感染性ウイルス粒子(CVA21)の収量を測定するための実験を、選択された血液ガン細胞株(すなわち、MM細胞株RPMI−8226、単球性白血病細胞株U937および急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株HL−60)においてもまた行った。この方法は上記の方法と類似するが、細胞にはCVA21を10TCID50/細胞で感染させ、ウイルスを洗浄前に37℃で30分間結合させ、その後、新鮮な培地(RPMI、10%FCS)に入れた。細胞および上清を、感染後の0時間、24時間および48時間で集め、ウイルスの量をSK−MEL−28細胞の単層での終点滴定によって求めた。結果が図13に示される。
【0123】
ウイルス成長速度
3つの骨髄腫細胞株におけるCVA21の複製速度を調べるために、1x10個のU266細胞、RPMI−8226細胞またはNCI−H929細胞を含有するチューブに、約3x10TCID50のCVA21を含有する100μlのウイルスアリコートを感染させた(〜3TCID50/細胞のMOI)。チューブを室温で30分間穏やかに振とうし、その後、細胞を毎回5mlのRPMIにより5回洗浄し、細胞を、1%FCSを含有するRPMIの1mlに再懸濁した。その後、CVA21を接種した細胞のそれぞれのチューブを、適切な時点での回収のために9個の別個の100μlアリコート(〜1x10細胞/チューブ)に分割した。チューブを実験期間中37℃でインキュベーションした。同時感染を、0時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、24時間および48時間の時間間隔で中断し、試験された細胞株のそれぞれに由来する1つのアリコートをそれぞれの時点で集め、細胞を3回の連続した凍結・解凍サイクルによって溶解し、室温における5分間の10,000xgでの遠心分離に供し、その後、細胞溶解物におけるウイルス収量を終点滴定アッセイで測定した。
【0124】
DNA断片化アッセイ
MM細胞のCVA21感染によるアポトーシスの誘導を、ゲノムDNAの断片化を検出することによって測定した。MM細胞株のRPMI−8226、U266およびNCI−H929を6ウエルプレートで培養し(5x10細胞/ウエル)、分析前に37℃で24時間、CVA21(〜10TCID50/細胞のMOI)により感染させたか、または、培地単独により非感染のままにした。細胞を800gでの5分間の遠心分離によってペレット化し、その後、500μlの溶解緩衝液(5mMのTris−HCl、20mMのEDTA、0.5%のTritonX−100、pH8.0)を細胞ペレットに加え、氷上で20分間インキュベーションした。溶解物を12,000gで20分間遠心分離し、DNAを、フェノール:クロロホルムを使用して上清から抽出した。DNAをエタノール沈殿し、70%エタノールで洗浄し、RNase(50μg/ml)を含有する30μlのTAEに再懸濁した。DNAサンプルをアガロースゲル電気泳動による分析の前に37℃で30分間インキュベーションした。15μlの抽出されたDNAを3μlの負荷緩衝液(TAEにおいて0.25%のオレンジG、40%のグリセロール)と混合し、その後、臭化エチジウムを含有する1.2%TAEアガロースゲルで分離した。ゲルをUV光のもとで可視化し、像を、Gel Docシステム(Bio−RAD、Regents Park、New South Wales、オーストラリア)を使用してデジタル画像として記録した。
【0125】
正常な末梢血単核細胞と同時培養された骨髄腫細胞株の選択的なCVA21感染
U266およびRPMI−8226の骨髄腫細胞株をそれぞれ、10%の最終的なプラスマ細胞濃度をもたらすように、10%FCSが補充されたRPMI培地においてPBMCと混合した。細胞混合物を、72時間、CVA21(総細胞集団あたり1MOI)で処理したか、または、非処理のままにした。除去の3日目に、細胞集団の各混合物からのサンプルをPBSにおいて集め、無傷のガン細胞の数を、抗CD138−FITC(10μl/ml)で最初に30分間染色し、その後、ヨウ化プロピジウム(PI)(5μg/ml)で10分間染色した後、フローサイトメトリーを使用して評価した。FACStar分析計(Becton Dickinson、Sydney、オーストラリア)での分析の前に、細胞を5mlのPBSで洗浄し、1000gでの遠心分離によってペレット化した。もはや生存していないか、または無傷でない細胞がヨウ化プロピジウムにより陽性に染色され(PI)、一方、抗CD138−FITCによる染色を、多発性骨髄腫細胞(CD138)を正常なPBMC(CD138)から明らかにするために使用した。
【0126】
CVA21による患者骨髄サンプルの生体外除去処理
原発性腫瘍サンプルを、インフォームドコンセントが得られた2名の多発性骨髄腫患者から得た。定期的な診断のときに採取された骨髄吸引物からの余剰細胞のみをこの研究では使用した。最初に、ICAM−1受容体のレベルを、上記で記載されたような標準的な表面受容体染色プロトコルに基づく、原発性腫瘍細胞(1x10細胞)の抗CD138−PE抗体(10μg/ml)および抗ICAM−1−FITC抗体(5μg/ml)による二重染色によってそれぞれの臨床サンプルについて評価した。その後、成長阻害/MTTアッセイを、CVA21を感染させた臨床サンプルに対して三連で行った。約1x10細胞(5%FCSを含有するRPMIにおいて)を、その後、0TCID50/細胞から16TCID50/細胞までの範囲での10倍連続希釈でCVA21による腫瘍退縮を評価するために96ウエルプレートのウエルに接種した。これらの細胞を、MTTアッセイを使用する分析の前に37℃で48時間インキュベーションした。
【0127】
成長阻害アッセイ後、臨床骨髄サンプルからの単一細胞懸濁物(5%FCSを含有するRPMIにおいて1x10個の細胞)を6ウエルプレートの各ウエルに接種し、0TCID50/細胞、2.75TCID50/細胞、5.5TCID50/細胞および11TCID50/細胞の濃度で48時間、CVA21とインキュベーションした。その後、細胞を穏やかなピペッティングによって集め、4mlのPBSに再懸濁し、1回洗浄し、その後、細胞生存性についての分析を続けた。MM細胞についてのCVA21媒介による腫瘍退縮の選択性を、細胞生存性色素ヨウ化プロピジウム(5μg/ml)および抗CD138−FITC抗体(10μg/ml)を使用するフローサイトメトリーによって測定した。
【0128】
表1に示されるようなさらなる臨床サンプル(合計で19個)を同様にアッセイした。
【0129】
結果
MM細胞はICAM−1およびDAFを発現する
フローサイトメトリーを使用して、いくつかのMM細胞株の表面におけるCVA21細胞進入受容体のICAM−1およびDAFの相対的なレベルを評価した。U266細胞、RPMI−8226細胞およびNCI−H929細胞を、抗ICAM−1抗体および抗DAF抗体による二重染色の後でのフローサイトメトリーによって分析した。これら3つの細胞株のそれぞれが、コンジュゲートコントロールと比較して、それぞれのドットプロット(図1)の上部右側象限における染色細胞によって強調されるように、ICAM−1およびDAFの両方の上昇したレベルを明らかにした。しかしながら、PBMCサンプルにおけるすべての細胞がICAM−1の表面発現を示したわけではなく、細胞の大部分がICAM−1について陰性に染色された。しかしながら、PBMCは、コンジュゲートサンプルとは対照的に、二重染色されたサンプルでのPBMC集団の上方への移動において見られるように、DAF発現について陽性であった。
【0130】
血液ガン細胞株におけるICAM−1およびDAFの発現
ピコルナウイルスによる感染および溶解に対する血液ガンの潜在的な感受性をさらに調べるために、細胞進入受容体のICAM−1およびDAFの発現を一連の代表的な細胞株について明らかにした。フローサイトメトリーを使用して、B細胞リンパ腫細胞株SCOTT、B前リンパ球性白血病細胞株JVM13、急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株のNB4およびHL−60、単球性白血病細胞株U937、ならびに多発性骨髄腫細胞株H929の表面におけるCVA21細胞進入受容体のICAM−1およびDAFの相対的なレベルを抗ICAM−1抗体および抗DAF抗体による二重染色の後で評価した。B細胞リンパ腫細胞株SCOTT、B前リンパ球性白血病細胞株JVM13およびMM細胞株H929は、コンジュゲートコントロールと比較して、それぞれのドットプロット(図11Aおよび図11B)の上部右側象限における染色細胞によって強調されるように、ICAM−1およびDAFの両方の発現を明らかにした。単球性白血病細胞株U937もまた、より少程度ではあったが、ICAM−1およびDAFの上昇したレベルを明らかにした。DAF発現について陽性に染色されたが、急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株のNB4およびHL−60における細胞の大部分がICAM−1について陰性に染色された。
【0131】
MM細胞はCVA21による溶解感染に対して感受性である
ICAM−1およびDAFを発現する多発性骨髄腫細胞がCVA21による腫瘍退縮に対して感受性であるかどうかを評価するために、細胞にCVA21(約5TCID50/細胞のMOI)を37℃で48時間感染させた。多発性骨髄腫細胞株のそれぞれが24時間においてCVA21感染の初期徴候を示した。U266細胞株、RPMI−8226細胞株およびNCI−H929細胞株におけるCVA21の最大の細胞変性効果が、細胞の集塊化および凝集ならびにトリパンブルーの取り込み(図2)によって見られるように、感染後の24時間〜48時間で観測された。ヒト末梢血単核細胞における細胞変性効果は、これら3つの多発性骨髄腫細胞株と比較して最小限であった。
【0132】
CVA21感染はMM細胞の成長を阻害する
様々な多発性骨髄腫細胞株に対するCVA21の示差的な殺傷および成長阻害を、MTT細胞生存性アッセイを使用して、より詳しく調べた。平板培養されたU266細胞、RPMI−8226細胞およびNCI−H929細胞を、増大する濃度のCVA21に48時間さらした。CVA21の腫瘍退縮作用をCVA21の増大する用量の関数としてのMTT生存率によって明らかにした。図3はCVA21暴露後の成長阻害プロフィルおよび用量依存的な肩を例示する。アッセイされたMM細胞株のそれぞれが感受性であることが見出され、RPMI−8226細胞株およびU266細胞株では、低濃度のCVA21に対する応答における著しい成長阻害が明らかにされた。正常なPBMCは、高濃度のウイルスに対する暴露の後では成長が阻害され、しかしながら、20MOIでさえ、PBMCの生存率は、それぞれが10%未満の生存率であったMM細胞株と比較して、80%であった。
【0133】
MM細胞は子孫CVA21の繁殖を支援する
さらなる腫瘍退縮作用のために感染性子孫を産生するCVA21感染のMM細胞の能力を明らかにするために、U266、RPMI−8226、NCI−H929およびPBMCとのCVA21感染の後におけるウイルス収量を測定した。感染後の24時間および48時間で、3つの骨髄腫細胞株からのウイルス収量は、0時間の時点と比較して、ウイルス力価の劇的な増大を示した(図4)。しかしながら、PBMCはCVA21収量の増大を示しておらず、このことは、CVA21は正常なヒトPBMCにおける複製が許容されないという証拠を提供している。CVA21は、CVA21複製またはウイルス収量の増大を何ら伴うことなく、6日の延長された期間までPBMCにおいて増殖することができた(データ示さず)。
【0134】
類似するが、同一でない条件のもとでアッセイされたとき、単球性白血病細胞株U937および急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株HL−60は、感染後の24時間または48時間のいずれでも、CVA21収量の増大を示さず、このことは、CVA21はU937またはHL−90のいずれにおいても複製が許容されないことを示唆している(図13)。
【0135】
CVA21はMM細胞において迅速な成長速度を有する
悪性細胞のウイルス療法の1つの利点は、局所的部位または遠方の部位でさえ、周囲の悪性細胞をさらに標的とすることができる感染性子孫ウイルスが産生され得ることである。3つの多発性骨髄腫細胞株の同時感染の後、完全な細胞および上清を、示された時点で集めた(図5)。ガン性細胞株におけるCVA21の複製が非常に迅速であることが見出され、感染させた多発性骨髄腫細胞からのウイルス力価の増大が、CVA21によるウイルス接種後の4時間もの早期に観測された。U266細胞、RPMI−8226細胞およびNCI−H929細胞におけるCVA21の1段階成長曲線分析では、感染後の8時間〜12時間での最大力価への効率的なウイルス複製が明らかにされた。
【0136】
CVA21はRPMI−8226細胞およびNCI−H929細胞においてアポトーシスを誘導した
CVA21が感染期間中に多発性骨髄腫細胞のアポトーシスを誘導するかどうかを明らかにするために、CVA21を、RPMI−8226細胞、NCI−H929細胞またはU266細胞のいずれかと〜10TCID50/細胞のMOIとインキュベーションし、アポトーシスを感染後24時間でのDNA断片化アッセイによって評価した。CVA21は、感染させたU266細胞(レーン6)ではなく、感染させたRPMI−8226細胞およびNCI−H929細胞(それぞれ、レーン2およびレーン4)においてアポトーシスに特徴的なDNAラダー化を誘導した(図6)。DNA断片化が、CVA21で処理されたU266細胞では観測されなかった。このことは、この細胞株におけるCVA21による腫瘍退縮はアポトーシスを誘導しなかったことを示している。これらの結果は、CVA21はRPMI−8226細胞およびNCI−H929細胞においてアポトーシスを誘導することができ、しかし、U266骨髄腫細胞の腫瘍退縮の期間中にはアポトーシス防止のシグナル伝達経路を活性化し得ることを示唆する。レーン1、レーン3およびレーン5は、mock感染のコントロール細胞から抽出されたDNAを含有した。
【0137】
悪性細胞および非悪性細胞を含有する骨髄腫同時培養物の生体外除去処理
正常な細胞ではなく、多発性骨髄腫細胞の腫瘍退縮についてのCVA21の特異性を、多発性骨髄腫細胞を、約10%の腫瘍負荷をもたらすように正常なヒト末梢血単核細胞と混合し、CVA21による3日間の除去処理を行うことによって調べた。抗CD138−FITCおよびPIで染色することによって、正常なPBMCおよび多発性骨髄腫細胞の生存性集団および非生存性集団を区別することができる。図7(「ウイルスなし」)に示されるように、CVA21による感染の前では生存性のRPMI−8226細胞またはU266細胞の集団(CD138/PI)をフローサイトメトリーのドットプロットの下部右側象限に見ることができる。RPMI−8226同時培養物またはU266同時培養物をCVA21により3日間にわたって1TCID50/細胞のMOIで除去処理した後では、0.26%未満および0.51%未満の生存性骨髄腫細胞がそれぞれ残存している。CVA21は約98%のRPMI−8226細胞および約95.7%のU266細胞を同時培養物から除去することができた。生存性リンパ球集団が下部左側象限に示され、CD138およびPIに関して陰性に染色される。ウイルスを感染させた後、これらの集団は、CVA21に対する3日間の暴露の後でさえ、比較的変化しないままである。
【0138】
臨床骨髄サンプルからの多発性骨髄腫細胞の除去
いくつかの多発性骨髄腫細胞株の効果的な腫瘍退縮をインビトロで明らかにした後、2つの原発性多発性骨髄腫の骨髄サンプルからのガン性細胞の生体外除去を確認した。定期的な診断を受けている2名の患者からの骨髄吸引物を単一細胞懸濁物に処理した。細胞を最初に、多発性骨髄腫細胞におけるICAM−1の表面発現を明らかにするために、抗CD138抗体および抗ICAM−1抗体により染色した。骨髄腫状態(CD138)とICAM−1発現との間での著しい相関が、調べられた両方の臨床サンプルにおいて見出された。臨床サンプルの一方からの結果が図8Aに示される。臨床サンプル#001において、総細胞の約37%が多発性骨髄腫プラスマ細胞であり、CD138マーカーおよびICAM−1の両方を発現していた。骨髄腫細胞の類似する集団が第2の患者において見出され、約41%の細胞がCD138およびICAM−1の両方により染色された(データ示さず)。
【0139】
患者の臨床サンプルに対するMTTアッセイからの結果により、CVA21治療は、骨髄腫細胞の成長を種々の濃度のウイルスとの48時間のインキュベーションの後において用量依存的な様式で効果的に阻害したことが確認された。原発性腫瘍細胞(サンプル#001)を様々な濃度のCVA21により攻撃した後では、増殖性細胞の割合は、ウイルスの投入量が大きくなるに伴い、着実に低下した(図8B)。原発性腫瘍サンプルもまた非悪性細胞の集団を含有していたので、MM細胞に特異的に感染するCVA21の特異性はまだ検討されていなかった。
【0140】
CVA21が、正常な細胞ではなく、多発性骨髄腫細胞の特異的な溶解を媒介することにおいて選択的であるかどうかを調べるために、原発性腫瘍サンプルに様々な濃度のCVA21を48時間感染させ、その後、原発性腫瘍サンプルを、抗CD138抗体およびヨウ化プロピジウムによる染色によって分析した。フローサイトメトリーを使用して、CD138細胞およびCD138細胞の生存性を明らかにし(図9A)、細胞変性効果をCVA21感染の3つの濃度で48時間において観測した(図9B)。臨床サンプル#001からの腫瘍細胞を、0TCID50/細胞、2.75TCID50/細胞、5.5TCID50/細胞および11TCID50/細胞の濃度でCVA21と48時間インキュベーションしたとき、フローサイトメトリーによって計数された生存している骨髄腫細胞(CD138/PI)の割合が、ウイルス投入量の増大とともに低下したことが明らかにされた(図9A)。CVA21を11TCID50/細胞で感染させた原発性腫瘍細胞は、検出された悪性骨髄腫細胞の割合において74%の低下をもたらした。この原発性腫瘍サンプルにおいて、非生存性骨髄腫細胞(CD138/PI)の数は着実に増大し、生存性骨髄腫細胞(CD138/PI)の減少に対応していた。
【0141】
これらの結果はそれ以外の臨床サンプルでもまた反映され、CVA21とのより長いインキュベーションの後では、生存性腫瘍細胞における最大で90%の減少が達成された(データ示さず)。ウイルス治療がない場合でさえ、両方の臨床サンプルは低レベルの非生存性細胞が存在しており、より重要なことに、非生存性CD138細胞のレベルが、調べられた臨床サンプルにおけるウイルス治療の後では実質的に増大していなかった。検討すべき別の要因は、48時間にわたるこれらの細胞の生体外培養もまた、ウイルスなしのコントロールにおいて観測されるように、低レベルの細胞死に寄与し得ることである。種々の濃度のCVA21による治療の後で残留している臨床サンプル#001由来の生存性骨髄腫細胞の割合がフローサイトメトリーからまとめられ、図9Cに示される。
【0142】
生体外除去用薬剤としてのCVA21の臨床的有用性をさらに評価するために、さらなるBM吸引物を調べた。CVA21をおよそ3MOIおよび10MOIの濃度で感染させた、5名のMM患者および2名のMGUS患者からのBM吸引物についての結果が図10B(i)に示される。様々な状態を有する合計で19個の臨床サンプル(表1)についての累積的な結果が図10B(ii)に示される。調べられたすべての臨床サンプルからのCD138細胞の集団がICAM−1を発現していた。患者サンプル#006からの代表的なドットプロットが示される(図10A)。CVA21は、生存性CD138細胞の実質的な減少によって示されるように、ウイルスによる1回の治療の後で調べられた7個すべての臨床サンプルにおいて腫瘍退縮性の強力な除去作用を有しており、MM細胞の最大で97.2%の除去がサンプル#008において認められた(図10B(i)および図10E)。生存性CD138の正常な細胞のレベルはウイルス治療の後では実質的に低下していなかった(図10D)。より重要なことに、この画分における前駆体細胞は、造血を支援する能力を保持していた。図10Cは、生存性前駆体幹細胞がCVA21による原発性サンプルの治療の後において培養され得ることを明らかにする;3つの患者サンプルからのCFU−GMコロニーの平均数が示される。mock感染のコントロールサンプルと比較して、CFU−GMコロニーの数はウイルス処置群の方が57%〜70%低かった。
【0143】
CVA13、CVA15およびCVA18に対する血液ガン細胞株の感受性
細胞に感染し、細胞を破壊するためにICAM−1を使用する他のコクサッキーAウイルス(例えば、CVA13、CVA15およびCVA18など)もまた、多発性骨髄腫細胞の成長を阻害することができた。RPMI−8226細胞を代表的な多発性骨髄腫細胞株として使用したとき、この細胞のCVA13処置、CVA15処置およびCVA18処置では、0.1TCID50/ml〜100TCID50/mlの濃度で、CVA21の抗腫瘍効果と類似する抗腫瘍効果が明らかにされた(図12A)。CVA13、CVA15、CVA18およびCVA21の効果は、多発性骨髄腫でないガン細胞のU937およびHL−60に対してアッセイされたとき、それほど一致していなかった(図12Bおよび図12C)。ある程度の成長阻害がU937細胞およびHL−60細胞に対してこれらのウイルスのそれぞれにより観測されたが、これらの細胞の感染の後でのCVA21成長の収量に対する詳細な研究では、ガン細胞株のU937およびHL−60はウイルスの複製を支援することができず、従って、ウイルス療法のための理想的な候補になり得ないことが示唆される(図13)。
【0144】
考察
コクサッキーウイルスA21は、悪性メラノーマに対する効果的な抗腫瘍性薬剤であることが初めて示された新規な腫瘍退縮薬剤である。CVA21は、軽い上部気道感染症に広く伴うピコルナウイルスであり、ヒトにおいて重篤な疾患を引き起こすことは知られていない(Rueckert RR、ピコルナウイルス科:ウイルスおよびその複製、Fields BN、Knipe DM、Howley PM編、Fields Virology、第1巻、Philadelphia:Lippincott−Raven;1996:609〜645)。これらの結果は、CVA21が、いくつかのMM細胞株のインビトロ試験の後において多発性骨髄腫に対する強力な腫瘍退縮性薬剤であることを明らかにしている。この結論は、MM細胞株に対するCVA21の観測された細胞変性効果(図2)によって、また、MTTアッセイを介して確認されるようなMM細胞に対するCVA21の著しい成長阻害/細胞毒性(図3)によって裏付けられる。
【0145】
本明細書中に報告されるデータはまた、CVA13、CVA15およびCVA18によって例示される他のピコルナウイルスが、MM細胞に対する強力な腫瘍退縮性薬剤であることを明らかにする(図12)。
【0146】
この効果は、MM細胞よりも見かけ上大きな用量依存性を伴うが、CVA13、CVA15、CVA18およびCVA21に対する単球性白血病細胞株U937の応答性によって本明細書中に明らかにされるようにMM細胞に限定されない(図12B)。
【0147】
フローサイトメトリーを使用して、多発性骨髄腫細胞株のU266、RPMI−8226およびNCI−H929が高レベルのCVA21ウイルス進入受容体のICAM−1およびDAF(これら2つの分子はCVA21による腫瘍退縮の選択性および効力の決定因子である)を発現していることが確認された(図1)。
【0148】
さらなる血液ガンから確立された細胞株におけるICAM−1およびDAFの発現もまた本明細書中で明らかにされた。このことから、ピコルナウイルスによる血液ガンの治療の幅広い潜在的可能性が強調される。図11に示されるように、B細胞リンパ腫細胞株SCOTTおよびB前リンパ球性白血病細胞株JVM13ではともに、ICAM−1およびDAFの両方の発現が明らかにされた。単球性白血病細胞株U937でもまた、より低い程度ではあったが、上昇したレベルのICAM−1およびDAFが明らかにされた。CVA21に対する急性前骨髄球性白血病(APML)細胞株HL−60の検出可能な感受性が見かけ上ないことと一致して、HL−60細胞の大部分がICAM−1について陰性に染色された。
【0149】
B細胞リンパ腫細胞株SCOTTおよびB前リンパ球性白血病細胞株JVM13は、本明細書中で使用された条件のもとでは非常にゆっくり成長していた。結果として、様々な他の血液ガン細胞株について明らかにされたような、CVAによるこれらの細胞株のいずれかの腫瘍退縮感染の効力を直接に明らかにすることが不可能であった。しかしながら、これらの細胞株のそれぞれでのICAM−1およびDAFの明らかにされた発現を考慮して、本出願人は、B細胞リンパ腫およびB前リンパ球性白血病のそれぞれが本発明の方法に対して感受性であると考えられている。
【0150】
MM細胞による高レベルのICAM−1発現が文献には広く報告されており、これにより、MMに対する潜在的な治療としての抗ICAM−1mAb治療についていくつかの提案がなされている(van de Stolpe A、van der Saag PT、Journal of Molecular Medicine、1996、74:13〜33;Huang YW他、Cancer Res.、1995、55:610〜616)。MM細胞におけるこの高レベルのICAM−1発現に対する理由は、MM細胞における転写因子NF−κBの構成的な活性化によって説明することができる(Hideshima T他、J Biol Chem、2002、277:16639〜16647)。
【0151】
NF−κBは、MMの病理発生および薬物抵抗性に関連づけられる細胞生存因子であり、MM細胞における接着分子発現の重要な調節因子である(Chauhan D他、Blood、1996、87:1104〜1112)。ICAM−1遺伝子の5’プロモーター領域は数個のκBエンハンサーエレメントを含有しており、ICAM−1発現の調節における最も重要な転写調節エレメントの1つである。MM細胞におけるNF−κBの活性化、および、接着分子(例えば、ICAM−1など)の生じるアップレギュレーションが、骨髄間質細胞(BMSC)に対するMM細胞の結合を増大させることが示されている(Hideshima T他、Oncogene、2001、20:4519〜4527)。BMSCに対するMM細胞の接着は、BMSCによるIL−6(インターロイキン−6)(これはMMにおける増殖因子かつ抗アポトーシス因子である)の転写のNF−κB依存的なアップレギュレーションを誘導することもまた確認されている(Chauhan D他、Blood、1997、89:227〜234)。
【0152】
MTT/成長阻害アッセイでは、最大レベルの細胞毒性/成長阻害が20TCID50/細胞の最初のCVA21投入用量で観測されたことが明らかにされた(図3)。本発明者らの結果は、CVA21が、調べられた3つすべての多発性骨髄腫細胞株に対する強力な細胞毒性作用および細胞破壊作用を有し、一方、正常なヒト末梢血単核細胞に対しては低下した細胞毒性を有することを明らかにしており(図3)、このことから、CVA21感染後に観測される細胞変性効果が確認される(図2)。
【0153】
好ましい腫瘍退縮性ウイルスの1つの理想的な属性は、局所的部位または遠方の部位における周囲の未感染の腫瘍細胞に伝播して、さらなる腫瘍退縮を引き起こすことができる子孫ウイルスを産生するその能力である。結果は、CVA21が多発性骨髄腫細胞株のそれぞれにおいて効率的に複製することができたことを示しており、このことは、複製能を有する腫瘍退縮性薬剤としてのその使用を裏付けている。種々の骨髄腫細胞株におけるCVA21の複製は、同じ条件のもとでのCVA21感染の正常なPBMCにおける増殖性ウイルスの産生を全く伴うことなく、100倍〜1000倍の最初の投入用量の増幅をもたらした(図4)。
【0154】
好ましい腫瘍退縮性ウイルスの別の重要な属性は、最適なレベルの複製効率である。1段階ウイルス成長曲線分析から、CVA21がMM細胞内で効率的かつ迅速に複製し、感染後の8時間〜12時間でウイルス産生のピークレベルに達している(図5)。この比較的迅速な複製サイクルにより、伝播し、かつ、MM疾患の進行を抑える子孫ウイルスの能力を促進させることができる。MM細胞の成長を阻害するためのCVA21の複製能および細胞毒性は、MMのCVA21ウイルス療法(例えば、MMのインビボでの治療、および、MM細胞の生体外での選択的除去など)を支援するためのさらなる証拠である。
【0155】
本明細書中に報告される結果は、子孫ウイルスの産生は、局所的部位または遠方の部位における周囲の未感染の腫瘍細胞に伝播して、さらなる腫瘍退縮を引き起こすことを可能にするために好ましい一方で、ピコルナウイルスによる腫瘍退縮性感染を介した血液ガン細胞の死には要求されないことを明らかにしている。単球性白血病細胞株U937は、CVAに対して許容性であること(図12)が本明細書中において明らかにされたが、それにもかかわらず、CVA21の成長を支援する観測可能な能力は明らかにされなかった(図13)。そのようなガンの治療では、ピコルナウイルスの多数回の投与からの利益を特に受けることができる。
【0156】
CVA21がMM細胞の死を引き起こす正確な機構は今後、明らかにされなければならない。だが、そのプロセスは、種々の臨床サンプルおよびMM細胞株に存在する細胞の形質転換事象および遺伝的変異に非常に依存していると考えられる。CVA21ならびに他のピコルナウイルスは、宿主細胞のタンパク質合成の遮断、細胞の糖タンパク質の輸送阻害、アポトーシスの誘導、および、転写因子のタンパク質分解的消化の組合せによって細胞死を媒介すると考えられる(Rueckert RR、ピコルナウイルス科:ウイルスおよびその複製、Fields BN、Knipe DM、Howley PM編、Fields Virology、第1巻、Philadelphia:Lippincott−Raven;1996:609〜645)。CVA21感染のRPMI−8226細胞およびNCI−H929細胞に対して行われたDNA断片化アッセイによれば、CVA21は、U266細胞においてではなく、これら2つの細胞株においてアポトーシスを誘導することができる(図6)。U266細胞は細胞の生存および成長についてオートクリンまたはパラクリンによるIL−6刺激に依存している。転写のシグナル伝達物質および活性化因子(STAT)−3のようなサイトカイン媒介転写因子の活性化に連結して、IL−6のシグナル伝達経路は、CVA21感染後、U266細胞の抗アポトーシス応答に対する何らかの影響を有し得る。
【0157】
最近の研究(Bharti AC他、Blood、2004、103:3175〜3184)では、U266細胞が、構成的に活性化されたSTAT3を細胞の核において示し、一方で、RPMI−8226細胞は、構成的に活性化されたSTAT3について陰性であったことが確認された。しかしながら、NF−κBの化学的阻害剤は、STAT3の活性化にもかかわらず、U266細胞株およびRPMI−8226細胞株の両方のアポトーシスを誘導することが示されており、このことは、STAT3が、化学的なNF−κB阻害剤によって誘発されるアポトーシスにおいて役割を果たしていないようであることを示唆している。しかしながら、本発明者らの結果は、STAT3のシグナル伝達経路の活性化がCVA21感染の骨髄腫細胞の腫瘍退縮における抗アポトーシス的役割を実際に果たし得ることを示している。
【0158】
NF−κBファミリーの転写因子の役割は実際には複雑であり、NF−κBが前アポトーシスおよび抗アポトーシスの両方のシグナル伝達において役割を果たし得ることを示唆する証拠が存在する。MMの治療のための新規な薬剤、例えば、サリドマイド(Keifer JA他、J Biol.Chem.、2001、276:22382〜22387)、プロテアソーム阻害剤PS−341(Hideshima T他、Cancer Res.、2001、61:3071〜3076)および三酸化ヒ素As(Kapahi P他、J.Biol.Chem.、2000、275:36062〜36066)などは、前臨床試験および初期臨床試験においてNF−κBの活性化を阻害し、かつ、MMの従来の薬物抵抗性を克服することを助けることが示されている。
【0159】
本研究において臨床サンプルから集められたデータは、CVA21および他のピコルナウイルスの観測された腫瘍退縮能力が多発性骨髄腫細胞株に限定されるのではなく、他の血液ガン細胞株および生体外感染の原発性腫瘍サンプルにおいてもまた効果的であることを示唆する。臨床サンプルは、著しいレベルのCD138プラスマ細胞が骨髄に存在し、そのすべてが、フローサイトメトリーによって調べられたとき、ICAM−1を発現していた(図8A)。増大する用量のCVA21を感染させたとき、実質的な成長停止および腫瘍細胞の除去がすべての臨床サンプルにおいて観測され、1つのサンプル(#008)では最大で98%の阻害であった。正常な細胞および悪性細胞に対するCVA21の影響をより詳しく調べるために、細胞を、フローサイトメトリーを使用する分析の前に抗CD138およびPIにより染色した。CVA21は、17個の測定可能な臨床サンプルのうちの14個で、悪性細胞の割合を、80%を超えて効果的に減少させた(図10E)。さらなる臨床サンプル(合計で19個まで)の分析では、これらの観察結果の一般性が確認された(図10)。ウイルス投入量の増大およびCVA21感染の延長はガン細胞除去レベルを増大させることができる。本研究で使用された臨床サンプルにより、CVA21によるMM細胞の有益な除去が確認される。
【0160】
前駆体幹細胞の永続的な生存性とともに、患者サンプルからの骨髄腫腫瘍細胞の実質的な除去は、CVA21が、正常な前駆体細胞に対する比較的最小限の影響を伴って骨髄腫細胞を特異的に殺すことができることを明瞭に明らかにしている。加えて、CVA21治療は、以前には治療されなかった化学療法耐性の腫瘍細胞および激しく前処理された化学療法耐性の腫瘍細胞の両方に対して効果的であった。このことは、CVA21はMMのための有用な治療選択肢であり得ることを示している。MMに対する無症候性前駆体、MGUSと診断された患者から前ガン性プラスマ細胞を除去することにおけるCVA21の有効性もまた著しかった。そのような患者の30%までがMMを発症するように移行し、しかしながら、個体の予後を予測することは現時点では不可能であり、従って、この良性の悪液質は一般には治療されないままである。この患者コホートにおける予防法としてのCVA21の潜在的使用では、MMに対する予防的治療としてのウイルス療法のための新規な役割が示唆される。
【0161】
CVA21はまた、悪性細胞に対する直接的な細胞毒性作用とは別に、MMの治療において他の役割を有し得る。ほとんどのMM細胞は最初、既存の薬物治療に対して感受性であるが、薬物抵抗性がほとんどの場合においてMMの共通する特徴である。ビンクリスチンおよびドキソルビシンなどの薬剤との組合せでの化学感作剤としてのCVA21の使用は、いずれかの薬剤を単独で使用するよりも改善された結果をもたらす場合があり、MM治療法としてCVA21を研究するためのさらなる理由である。
【0162】
現在、多発性骨髄腫のための治療手段は限られており、新しい治療が求められている。多発性骨髄腫患者の免疫低下状態はこの悪性腫瘍の患者のウイルス療法についての真の懸念を提起する一方で、CVA21ウイルス療法が、抗ウイルス免疫性がないことによる最も成功した結果を有するのはこのような患者においてであり得る。加えて、MMは、ゆっくり増殖する悪性プラスマ細胞の蓄積によって特徴づけられる疾患であり、従って、腫瘍負荷をCVA21腫瘍退縮によって効果的に抑制するための理想的な機会を提供する。子孫ウイルスの伝播が十分でないならば、迅速に成長する腫瘍はウイルスによる腫瘍退縮を逃れることがあるので、ウイルス療法は、ゆっくり成長する悪性腫瘍において最も効率的であることが予測されている。
【0163】
CVA21が患者において有害な結果を有するならば、CVA21の感染を抗ウイルス化合物(例えば、プレコナリル(Rogers JM他、Adv Exp Med Biol、1999、458:69〜76)など)または免疫血清グロブリン(Rotbart HA他、Pediatr Infect Dis J、1999、18:632〜633)によって抑えることができる。別の代替法では、MM細胞および他の血液腫瘍細胞を生体外で除去するためのCVA21の使用が挙げられる。近年、自家幹細胞移植のための新規な除去法としての腫瘍退縮性レオウイルスの使用が様々な血液悪性腫瘍について評価されたが、しかしながら、アフェレーシス生成物の混合物からの濃縮された生体外多発性骨髄腫細胞の除去処理は不完全であった(Thirukkumaran CM他、Blood、2003、102:377〜387)。CVA21は、多発性骨髄腫細胞に対する選択的な細胞毒性を有する特異な腫瘍退縮性ウイルスであり、生体外除去薬剤としての強化された潜在的可能性もまた有し得る。
【0164】
要約
本発明者らのデータは、インビボでのMM細胞および血液ガン細胞の直接的な腫瘍退縮における潜在的な適用、そして、末梢幹細胞の自家移植片の生体外での除去処理における潜在的な適用とともに、CVA21および他のピコルナウイルス(例えば、CVA13、CVA15およびCVA18など)がインビトロでの多発性骨髄腫細胞株および他の血液ガン細胞株に対する効果的な腫瘍退縮性薬剤であることを明らかにしている。
【0165】
本発明は、上記のような様式で詳細に記載されているが、形式または細部における様々な省略、置き換えおよび/または変化を含めて、数多くの変形および/または改変が、広範囲に記載されるような本発明の精神または範囲から逸脱することなく特定の実施形態において示されるように本発明に対してなされ得ることが当業者によって理解される。従って、これらの実施形態は、すべての点で、限定としてではなく、例示であるとして見なされなければならない。
【0166】


【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】多発性骨髄腫細胞株に対するICAM−1およびDAFのフローサイトメトリー分析を示す。
【図2】多発性骨髄腫細胞株に対するCVA21の細胞変性効果を示す。
【図3】MMTアッセイを使用するMM細胞株および正常なPBMCに対するCVA21の腫瘍退縮作用を示す。
【図4】多発性骨髄腫細胞株感染後のCVA21収量を示す。
【図5】多発性骨髄腫細胞におけるCVA21のウイルス成長曲線を示す。
【図6】CVA21を感染させたRPMI−8226細胞、NCI−H929細胞およびU266細胞におけるDNA断片化の分析を示す。
【図7】PBMCとの混合物からの多発性骨髄腫細胞の生体外除去を示す。
【図8A】多発性骨髄腫の臨床サンプルにおけるICAM−1発現の分析を示す。
【図8B】多発性骨髄腫の臨床サンプルにおけるCVA21の成長阻害を示す。
【図9A】多発性骨髄腫プラスマ細胞を骨髄臨床サンプルから除去するCVA21の能力を示す。
【図9B−C】多発性骨髄腫プラスマ細胞を骨髄臨床サンプルから除去するCVA21の能力を示す。
【図10A−B(i)】CVA21はプラスマ細胞をMMおよびMGUSのBMから選択的に除去することを示す。
【図10B(ii)】CVA21はプラスマ細胞をMMおよびMGUSのBMから選択的に除去することを示す。
【図10C−D】CVA21はプラスマ細胞をMMおよびMGUSのBMから選択的に除去することを示す。
【図10E】CVA21はプラスマ細胞をMMおよびMGUSのBMから選択的に除去することを示す。
【図11A】B細胞リンパ腫、B前リンパ球性白血病、急性前骨髄球性白血病(APML)、単球性白血病および多発性骨髄腫の細胞株に対するICAM−1およびDAFのフローサイトメトリー分析を示す。
【図11B】B細胞リンパ腫、B前リンパ球性白血病、急性前骨髄球性白血病(APML)、単球性白血病および多発性骨髄腫の細胞株に対するICAM−1およびDAFのフローサイトメトリー分析を示す。
【図12A−B】MMTアッセイを使用した、選択された血液ガン細胞株に対するCVA21、CVA18、CVA15およびCVA13の腫瘍退縮作用を示すグラフである。
【図12C】MMTアッセイを使用した、選択された血液ガン細胞株に対するCVA21、CVA18、CVA15およびCVA13の腫瘍退縮作用を示すグラフである。
【図13】選択された血液ガン細胞株の感染後におけるCVA21収量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における血液ガンを治療および/または予防するための方法であって、治療効果的な量のピコルナウイルスまたはその改変形態を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによる腫瘍退縮を受けるように投与することを含む、方法。
【請求項2】
ピコルナウイルスは、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ポリオウイルス、未分類のエンテロウイルスを含むエンテロウイルス、ライノウイルス、パラエコーウイルス、ヘパトウイルスおよびカルジオウイルスの原型株および臨床単離株からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ピコルナウイルスは、CVA13、CVA15、CVA18、CVA20、CVA21、その改変形態およびその組合せからなる群から選択されるコクサッキーA群ウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ピコルナウイルスは、静脈内投与、腫瘍内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、自家幹細胞移植に先立つ自家移植片内の悪性細胞の生体外除去、または移植に先立つ自家移植片内の悪性細胞の生体外除去によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
自家移植片は造血系幹細胞を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ウイルス用量の範囲は、約0.01感染性ウイルスユニット/細胞〜約1000感染性ウイルスユニット/細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ウイルスは、効果的な量の化学療法剤との組合せで対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ウイルスは、効果的な量のプロバイオティクス剤との組合せで対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
血液ガンは、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B前リンパ球性白血病および単球性白血病からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
血液ガンの細胞は、ウイルス−細胞進入受容体分子の細胞間接着分子−1(ICAM−1)および/または崩壊促進因子(DAF)を過剰発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
血液ガンの細胞はNF−κBを構成的に発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
対象における多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B前リンパ球性白血病および単球性白血病からなる群から選択される血液ガンを、治療および/または予防するための方法であって、CVA13、CVA15、CVA18およびCVA21またはその組合せからなる群から選択されるピコルナウイルスの治療効果的な量を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによる腫瘍退縮を受けるように投与することを含む、方法。
【請求項13】
対象における血液ガンを治療および/または予防するための方法であって、ピコルナウイルスまたはその改変形態に由来する核酸分子の治療効果的な量を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによって殺されるように投与することを含む、方法。
【請求項14】
ピコルナウイルスは、CVA13、CVA15、CVA18、CVA20、CVA21からなる群から選択されるコクサッキーA群ウイルスである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対象はヒトである、請求項1または13に記載の方法。
【請求項16】
対象における血液ガンを治療および/または予防することにおいて使用される医薬組成物であって、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態の効果的な量を、医薬的に許容され得る賦形剤、希釈剤またはキャリアと一緒に含む、医薬組成物。
【請求項17】
対象における血液ガンを治療および/または予防することにおいて使用される医薬組成物であって、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態に由来する核酸分子の効果的な量を、医薬的に許容され得る賦形剤、希釈剤またはキャリアと一緒に含む、医薬組成物。
【請求項18】
対象における血液ガンを治療および/または予防するための医薬品の製造における、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態の使用。
【請求項19】
ピコルナウイルスは、CVA13、CVA15、CVA18、CVA20、CVA21からなる群から選択されるコクサッキーA群ウイルスである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
血液ガンは、多発性骨髄腫、B細胞リンパ腫、B前リンパ球性白血病および単球性白血病からなる群から選択される、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
対象における血液ガンを治療および/または予防するための医薬品の製造における、血液ガンに溶解感染することができるピコルナウイルスまたはその改変形態に由来する核酸分子の使用。
【請求項22】
血液腫瘍細胞または血液ガン細胞に対する対象における免疫応答を誘導するための方法であって、対象の前記細胞に、治療効果的な量のピコルナウイルスまたはその改変形態を、ガンの少なくとも一部の細胞がウイルスによる腫瘍退縮を受けるように感染させることを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B−C】
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【図10A−B(i)】
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【図10B(ii)】
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【図10C−D】
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【図10E】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A−B】
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【図12C】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−144549(P2012−144549A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−55445(P2012−55445)
【出願日】平成24年3月13日(2012.3.13)
【分割の表示】特願2007−526129(P2007−526129)の分割
【原出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(507055567)ヴィラリティクス リミテッド (2)
【Fターム(参考)】