説明

血液サンプルの液状成分を分離する装置および方法、ならびにそのような装置を備える分析装置

【課題】本発明の目的は、血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離するとともに、血液サンプルの非液状成分が液状成分の分離部と再度混ざり合うことを阻止できる装置を提供することである。
【解決手段】少なくとも1つの血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離する分離装置において、隔壁(61〜68)により複数の部分(151〜158)に分割されている容器本体(41)と、複数の前記血液サンプルを受け入れて、分離後に分離した液状成分の少なくとも一部を保持する複数の試料区画(51〜58)とを有し、部分(151〜158)の少なくとも1つは、分離後に血液サンプルの非液状成分(32)を保持する保持用多孔質材層(84)を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離する装置および方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、上述した種類の装置を備える分析装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血液サンプルの液状成分、例えば血漿および血清、を分離する操作は、臨床診断においては必要かつ重要な、分析前のステップである。
【0004】
上述の分離を実施する周知の方法は、かなりの労力および時間を要する。その手作業を自動化することは、処理能力、ワークフローおよび信頼性という観点から必須になる。
【0005】
重要なパラメータは、遠心分離中に血漿および血清の分離に要する時間である。この時間は、従来からの揺動バケツ法を用いる代わりに、その対称軸を中心にして試料チューブに遠心力を作用させることにより大幅に短縮することができる。これは、その対称軸を中心にして試料容器に遠心力を作用させたとき、血液サンプルの血球成分が辿る移動経路長が、従来からの揺動バケツにより主試料チューブに遠心力を作用させる場合より非常に短いからである。血液サンプルが入った試料チューブに揺動バケツにより遠心力を作用させるときには、回転軸が試料チューブの長さ方向の軸に直交することになるために、遠心分離中に血液サンプルの血球成分が辿る移動経路は、血球成分が試料チューブの底に向け、このチューブの長さに沿って移動するために非常に長くなる。
【0006】
本発明による装置を用いて血漿または血清を分離するために必要な遠心分離時間は、血液サンプルの血球成分が移動する距離が短くなるために、従来からの揺動バケツにより主試料チューブに遠心力を作用させるときに要する遠心分離時間より短縮される。試料容器が試料チューブである図1〜9に示した実施形態において、血液サンプルの血球成分の移動距離は、試料容器断面の半径の大きさの二分の一未満である。図10〜17に示した実施形態においては、血液サンプルの血球成分の移動距離は、試料容器の外壁に向けて飛ばされた血液層の厚さの大きさのほぼ二分の一だけである。
【0007】
主試料チューブがその対称軸を中心にして遠心力を作用させる、例えば主試料容器として用いられている場合、遠心分離中に血液サンプルの血球成分が辿る移動経路長は、主試料チューブの半径の大きさ未満、例えば1〜4mmの間である。
【0008】
その対称軸を中心にして遠心力を作用させる主試料チューブに伴う問題は、遠心分離動作終了後の分離状態の維持である。分離した非液状成分は、試料チューブの内壁に一時的には押し付けられるが、液状成分と再度混ざり合い、次いで、チューブの底にゆっくりと沈殿する。
【0009】
特許文献1には、その垂直軸に沿って遠心力を作用させることにより血球を捕捉する多孔質材料を有する試料チューブが開示されている。特別に設計された蓋が、多孔質材料をチューブ内壁の所定位置に保持できるようになっている。しかし、多孔質材料に血球を着実に捕捉することができないという問題は解決されていない。この文献は、血球をその原料から除去するために血漿そのものが使用可能であることを開示している。このことは、分離した血漿を迅速に除去しなかった場合、血漿が血球と再度混ざり合うことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4509941号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一つの目的は、血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離するとともに、血液サンプルの非液状成分が液状成分の分離部と再度混ざり合うことを阻止できる装置を提供することである。これは、血球の保持用多孔質材料からの自然漏出を阻止するバリアとして作用するとともに、遠心力を作用させたときには血球を透過可能な適切な分離・透過材層により実現可能である。
【0012】
本発明の別の目的は、処理量を増大させ、また、異なる血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を同時に分離する装置を提供することにより、ある量を超える血漿を得ることができるようにすることである。これは、独創的な装置を、隔壁により複数の部分および各々の試料区画に分割することにより実現可能である。
【0013】
本発明の別の利点は、分離装置に既に組み込まれている品質検査のような試験ができるようになっていることである。これは、独創的な装置の底の、分離された液状成分の一部を受け入れるための測光分析区画を一体化させることにより実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離する分離装置に関し、分離装置は、容器本体、血液サンプルを受け入れ、分離後に分離した液状成分の少なくとも一部を保持する少なくとも1つの試料区画、保持用多孔質材層および分離・透過材層を有し、保持用多孔質材料は、非液状成分に遠心力を作用させ、それらが分離・透過材層を透過して保持用多孔質材層に侵入した後、血液サンプルの非液状成分を保持する。
【0015】
血液の非液状成分とは、重力による分離または遠心分離を比較的短時間で行うことができる濃度の粒子状物質を意味する。例としては、血球、細胞集合体、微小血塊等がある。これは、最終的には存在が確認されるウイルスのような極めて小さい成分は含まない。
【0016】
血液の液状成分は、非液状成分を分離後の、まず第1に血漿または血清、およびタンパク質、電解質等のようなその成分である。
【0017】
本発明によると、分離・透過材料は、遠心分離の条件下においては、血液サンプルの非液状成分の典型的なサイズの物質を透過するが、定常状態においては、透過を阻止する大きさの、近接して配置された多数の穴を有する材料である。分離・透過材料は、メッシュまたはステントの形状であり、また、不活性で、好ましくは接触角が90〜140°の間にある好ましくは疎水性ポリマーにより形成されていることが好ましい。孔の大きさまたはメッシュの目は、90〜200μmであることが好ましい。不活性とは、血液サンプルと相互に作用を及ぼし合わないことを意味する。好適な材料は、例えばナイロン、テフロン(登録商標)等である。好適な材料の例は、スイス連邦のシーファー(Sefar)社製のナイテックス・ナイロン(Nitex Nylon)03−171である。それ故に、その材料の機能は、単なる構造上のそれに止まらない。そのような材料は、保持用多孔質材層を所定位置に保持するだけでなく、遠心分離後に血液サンプルの分離された液状成分の下降流をより確実に発生させて、血液サンプルの非液状成分が液状成分の分離部に還流することを阻止する。
【0018】
保持用多孔質材料は、遠心力をその材料に向かう方向に作用させたとき、非液状成分を細孔内に保持することができるよう血液サンプルの非液状成分を集積可能な材料である。この材料は、オープンセル発泡体、発泡ゴム、フリース、マット、ハニカム材料等を含む群から選ぶことが好ましく、また、保持対象の非液状成分の量より大きい容積を有することが好ましい。好適な材料の例は、ドイツのケップ・シャウム社(KOEPP Schaum GmbH)が網状および非網状の形態で市販しているfoam S6050HYである。
【0019】
選好実施形態によると、容器本体は、隔壁により複数の部分に分割されている。保持用多孔質材層および分離多孔質材層は、その部分の少なくとも1つに配置されている。
【0020】
従って、本発明による分離装置は、血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離するための単一の試料区画または複数の血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を同時に分離するための複数の区画を有する。
【0021】
両方の種類の装置は、
−垂直方向の回転軸、
−血液サンプルを受け入れて、分離後に分離された液状成分の少なくとも一部を保持する少なくとも1つの試料区画、ここで、少なくとも1つの試料区画は、回転軸と分離・透過材層との間に位置する、および、
−分離・透過材層と容器本体の側壁との間に配置されている保持用多孔質材層を有する。
【0022】
複数区画装置の場合の分離条件、よって分離効率は、分離が対称軸を中心にして遠心力を作用させることにより実施される単一区画装置のそれらと同様であることは理解できる。
【0023】
分離装置を垂直方向の回転軸を中心にして回転させるために必要な遠心機は、小さいために自動運転の遠心分離機として臨床診断用分析装置と一体化させるのに好適である。そのような分析装置は、分析装置内の試料の全てについて1つまたは複数のそのような遠心分離機を備える。しかし、そのような遠心分離機は、独立装置であってもまたは、例えばサンプル前処理ユニットのような別の装置と一体化されていてもよい。
【0024】
これらの分離装置は1つまたは複数の区画、好ましくは、例えば2、4、6、8、12、18のような偶数の区画を有するために、それらは、小さいバッチの高速処理にも極めて好適である。
【0025】
本発明による装置で分離された液状成分は、分析の前にピペット針により取ることが好ましい。ピペット針は、分析装置の自動ピペットユニットの一部であることが好ましい。分離した液状成分の採取のために、ピペット針は、装置を封止しているカバーを貫通する。このように、この方法は、従来技術による揺動バケツ遠心分離機を分析装置の外に取り出す必要がある従来の方法より、非常に簡単で、高速で、また、より便利である。
【0026】
本発明の選好実施形態によると、分析装置は、少なくとも1つの試料区画に連通されている少なくとも1つの測光分析区画をさらに有し、その区画は、分離した液状成分の少なくとも一部を受け入れ、また、その中に受け入れた液状成分を測光分析または反射測光分析できるよう構成され、また、大きさが決められている。
【0027】
別の実施形態によると、本発明は、少なくとも1つの血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離する分離装置を提供し、装置は、
−容器本体、
−血液サンプルを受け入れて、分離後に分離した液状成分の少なくとも一部を保持する少なくとも1つの試料区画および血液サンプルの非液状成分を保持する保持用多孔質材層、ならびに
−少なくとも1つの試料区画に連通されている少なくとも1つの測光分析区画を有し、測光分析区画は、分離した液状成分の少なくとも一部を受け入れ、また、その中に受け入れた液状成分を測光分析できるよう構成され、また、大きさが決められている。
【0028】
従って、これらの実施形態は、血清指標の測定を含むサンプル完全性試験を実施することを可能にする。このように、血液サンプルに対する必要な完全性試験は、通常の血漿または血清の分析を実施する前に、同じ分離装置および同じ分析装置により自動的に実施することができる。
【0029】
別の実施形態によると、本発明は、少なくとも1つの血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離する分離装置を提供し、装置は、
−隔壁により複数の部分に分割されている容器本体、および
−複数の血液サンプルを受け入れて、分離後に分離した液状成分の少なくとも一部を保持する複数の試料区画を有し、
その部分の少なくとも1つは、分離後に血液サンプルの非液状成分を保持する保持用多孔質材層を有する。
【0030】
別の選好実施形態によると、その部分の少なくとも1つは、血液サンプルの非液状成分が液状成分の分離部に還流することを阻止する分離・透過材層をさらに有する。
【0031】
別の選好実施形態によると、分離装置は、容器本体下部の底壁の開口を介して少なくとも1つの試料区画に連通されている少なくとも1つの測光分析区画をさらに有し、測光分析区画は、分離した液状成分の少なくとも一部を受け入れ、また、その中に受け入れた液状成分を測光分析できるよう構成され、また、大きさが決められている。
【0032】
本発明は、また、少なくとも1つの血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離する方法に関し、
(a)いずれかの選好実施形態による分離装置を準備すること、
(b)血液サンプルを分離装置の少なくとも1つの試料区画に注入すること、
(c)血液サンプルの液状成分をその非液状成分から分離するために、軸を中心にして装置を予め決められたスピードで回転させること、および
(d)回転を止めることにより、少なくとも1つの血液サンプルの分離した液状成分が少なくとも1つの試料区画の中央下部に向けて流れることができるようにすることを含み、血液サンプルの非液状成分および血液サンプルの液状成分の一部は、保持用多孔質材層により保持されることを含むものである。
【0033】
測光分析区画を有する実施形態の装置の場合には、上述した方法は、装置の少なくとも1つの測光分析区画に受け入れた液状成分の少なくとも一部について、光度測定を実施する工程をさらに含む。
【0034】
従って、本発明による臨床診断用分析装置は、いずれかの実施形態による装置、装置に軸を中心にして遠心力を作用させる手段、および装置の測光分析区画の収容物について測光分析または反射測光分析を実施するための検出器を有する。
【0035】
ここで、本発明の選好実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。これらの実施形態は、本発明の理解を助けるために提示するものであり、限定すると解釈されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による装置の第1の実施形態の断面図であり、断面図は、容器本体11の対称軸13を通る面による。
【図2】図1に示したものに類似の容器本体11および容器本体11に注入された血液サンプル31の断面図である。
【図3】容器本体11についての軸を中心にした遠心分離終了時の、図1に示したものに類似の容器本体11の断面図であり、遠心分離は、その対称軸13を中心にして容器本体11を回転させて実施された。図3は、血液サンプルの非液状成分32と液状成分33への分離状態を模式的に示す。
【図4】その対称軸を中心にした容器本体11についての遠心分離終了後の、図1に示したものに類似の容器本体11の断面図であり、このチューブは静止状態にある。
【図5】図3に示した容器本体11の拡大断面図であり、断面図は、容器本体11の対称軸に直交する面による。図5は、その対称軸13を中心にした容器本体11についての遠心分離終了時の、血液サンプルの非液状成分32と液状成分33の空間分布をより詳細に示す。
【図6】図1に示した実施形態の変更例の断面図であり、底壁19の開口23を介して容器本体11の内部に連通されているとともに、測光分析を実施するのに好適な測光分析区画22を有する。
【図7】図6に示したものに類似の容器本体11および容器本体11に注入された血液サンプル31の断面図である。
【図8】容器本体11についての軸を中心にした遠心分離終了時の、図6に示したものに類似の容器本体11の断面図である。図8は、血液サンプルの非液状成分32と液状成分33への分離状態を模式的に示す。
【図9】対称軸を中心にした容器本体11についての遠心分離終了後の、図6に示したものに類似の容器本体11の断面図であり、このチューブは静止状態にある。
【図10】本発明による複数区画を有する実施形態の平面図である。
【図11】図10に示した装置の、面A−Aによる断面図である。
【図12】図10に示した装置の、図11の面B−Bによる断面図である。
【図13】図10に示した装置の、区画52、56への血液サンプル注入後の面A−Aによる断面図であり、この装置は静止状態にある。
【図14】図10に示した装置の、軸を中心にした容器本体41についての遠心分離終了時の面A−Aによる断面図であり、遠心分離は、その対称軸43を中心にして容器本体41を回転させて実施された。
【図15】図1に示した装置の、軸を中心にした装置についての遠心分離終了時の面A−Aによる断面図であり、この装置は静止状態にある。
【図16】図10に示した装置の変更例の断面図である。図16は、区画52、56に各々連通されているとともに、測光分析を実施するのに好適な測光分析区画102、106を示す。
【図17】図16に示した装置の変更例の正面図である。図17は、この変更例の区画の1つだけ示しており、また、区画52に連通されているとともに、測光分析を実施するのに好適な測光分析区画132を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明による装置の第1の実施例
以下、本発明による装置の第1の実施例について、図1を参照しつつ説明する。
【0038】
装置の容器本体11は試料チューブであり、保持用多孔質材層24が、試料チューブ11の内部に配置されている。
【0039】
試料チューブ11は、対称軸13、円筒形側壁15、上部開口16、底部領域18および底壁19を有する。試料チューブ11の上部開口16は、ピペット針により穿刺可能な蓋21により封止されている。試料チューブ11の内部は、上部14と下部17とを有する。容器は、血液サンプルを受け入れて、液状成分の分離部を保持する試料区画をさらに有する。
【0040】
層24の外面は、円筒形側壁15の内面25に接触して、少なくとも部分的に覆っている。選好実施形態において、多孔質材層24は、円筒形側壁15の内面25全体を覆っている。
【0041】
多孔質材層24は、血液サンプル31の非液状成分32を保持するのに好適である。
【0042】
多孔質材層24は、例えばオープンセル発泡体、発泡ゴム、フリース、マット、ハニカム材料等により形成されている。
【0043】
選好実施形態において、装置は、保持用多孔質材層24の内面に接触して、少なくとも部分的に覆うメッシュまたはステントのような分離・透過材層26をさらに有する。選好実施形態において、層26は、層24の内面全体を覆っている。
【0044】
分離・透過材料26は、例えばナイロン、テフロン(登録商標)等のプラスチック材から形成されていることが好ましい。層26は、層24を所定位置に保持して、血液サンプルの液状成分の分離部の下降流をより確実に発生させて、分離された非液状成分が液状成分の分離部に還流することを阻止する。
【0045】
本発明による方法の第1の実施例
血液サンプルから液状成分を分離する本発明による方法の第1の実施例は、図1を参照して上述した装置を利用しているとともに、図2〜5に示した以下の工程を含む:
(a)(図2に示した)血液サンプル31をチューブ11の試料区画30に注入する工程、
(b)(図3と図5に示したように)血液サンプルの液状成分をその非液状成分から分離するために、予め決められたスピードで試料チューブをその対称軸13を中心にして回転させる工程、および
(c)試料チューブ11の回転を止めることにより、血液サンプルの液状成分が、試料区画30の中央下部に向けて流れることができるようにし、血液サンプル31の非液状成分および血液サンプルの液状成分の一部が、保持用多孔質材層24により保持される工程。
【0046】
工程(b)は、1000〜20000rpmの間に調節した値の回転スピードで実施される。分離に要する時間は、回転スピードに依る。分離に要する時間は、回転スピードを増すことによって短縮される。試料チューブ11についての遠心分離の場合、適用回転スピードおよび得られた分離時間の長さの例は、下記の通りである:
回転スピード 1000rpm 20000rpm
分離時間 20分 15秒
回転スピードが20000rpmの場合には、30〜60秒の範囲の分離時間で、血液サンプルから血小板のない(μL当り1000血小板未満の)血漿を分離することが可能である。
【0047】
工程(c)の後に、血液サンプルの液状成分の一部は、栓21を介してピペットにより取ることができるが、血液サンプル31の非液状成分および血液サンプルの液状成分の一部は、保持用多孔質材層24により保持される。
【0048】
分離・透過材層26は、試料区画30と保持用多孔質材層24の間に配置されている。血液サンプルの非液状成分31は、遠心分離中に分離・透過材層26を透過することが可能であるが、分離・透過材層26は、一方では分離終了後に、非液状成分31が試料区画30の液状成分の分離部に還流することを阻止する。
【0049】
図5の断面図は、工程(b)による試料チューブ11についての軸を中心にした遠心分離終了時の、しかし、上述の方法において、また、図3に模式的に示したように、回転を止める前の血液サンプル31の液状成分33と非液状成分32の空間分布を示す。図5に示したように、非液状成分32は、保持用多孔質材層24の外側環状部24aを占め、液状成分33の第1の部分は、保持用多孔質材層24の内側環状部24bを占め、さらに、液状成分33の第2の部分は、分離・透過材層26と試料区画30内の空気が占める空間27の間の環状空間を占める。
【0050】
上述した方法の一実施形態において、試料チューブ11は、内部が真空の血液採取チューブである。このチューブは、抗凝固剤が封入されており、血液サンプル31は、静脈穿刺を介して血液採取チューブ内に導入される。この場合、上述の方法により分離される液状成分33は、血漿である。
【0051】
上述した方法の別の実施形態において、試料チューブ11は、内部が真空の血液採取チューブである。このチューブは、抗凝固剤が封入されていないまたは凝固促進剤が封入されており、血液サンプル31は、静脈穿刺を介して血液採取チューブ内に導入される。この場合、上述の方法により分離される液状成分33は、血清である。
【0052】
工程(c)の後に、試料チューブ11およびその中に収容された分離液状成分33は、試料チューブ11およびその内容物が液状成分33の分析のために臨床診断用分析装置に移送されるまで、通常は適切な温度の下で保管される。しかし、全工程を同じ臨床診断用分析装置により実施してもよい。血液サンプルの液状成分33は、次に、蓋21を貫通して試料チューブ11に侵入して液状成分33を吸引するピペット針により試料チューブ11から取られ、臨床診断用分析装置の、例えば反応キュベットに移送される。
【0053】
本発明による装置の第2の実施例
以下、本発明による装置の第2の実施例について、図6を参照しつつ説明する。
【0054】
この第2の実施例の構造は、図1に示した実施例の構造の変形例である。この変形例において、図6に示した試料チューブ11は、試料チューブ11の底壁19の開口23を介して試料区画30に連通されている測光分析区画22をさらに有する。測光分析区画22は、その中に受け入れた液体を測光分析できるよう構成され、また、大きさが決められている。
【0055】
本発明による方法の第2の実施例
血液サンプルから液状成分を分離する本発明による方法の第2の実施例は、図6を参照して上述した装置を利用しているとともに、図7〜9に示す以下の工程を含む:
(a)(図7に示した)血液サンプル31を(図6に示したように)チューブ11の試料区画30に注入する工程、
(b)(図8に示したように)血液サンプル31の液状成分をその非液状成分から分離するために、予め決められたスピードで試料チューブ11をその対称軸13を中心にして回転させる工程、および
(c)試料チューブ11の回転を止めることにより、血液サンプルの液状成分が、試料区画30の中央下部に向かって測光分析区画22に流れ込むことができるようにし、血液サンプル31の非液状成分および血液サンプルの液状成分33の一部が、保持用多孔質材層24により保持される工程。
【0056】
工程(b)は、第1の実施形態と同様に実施される。
【0057】
工程(c)の後に、血液サンプルの液状成分の一部は、栓21を介してピペットにより取ることができるが、血液サンプル31の非液状成分および血液サンプルの液状成分の一部は、保持用多孔質材層24により保持される。
【0058】
本発明による方法のこの第2の実施形態において、分離された液状成分33は、測光分析区画22に受け入れ、その中で測光分析される。
【0059】
上述した方法の一実施形態において、試料チューブ11は、内部が真空の血液採取チューブである。このチューブは、抗凝固剤が封入されており、血液サンプル31は、静脈穿刺を介して血液採取チューブ内に導入される。この場合、上述の方法により分離されて、測光分析区画22に収容される液状成分33は、血漿である。
【0060】
上述した方法の別の実施形態において、試料チューブ11は、内部が真空の血液採取チューブである。このチューブは、抗凝固剤が封入されていないまたは凝固促進剤が封入されており、血液サンプル31は、静脈穿刺を介して血液採取チューブ内に導入される。この場合、上述の方法により分離されて、測光分析区画22に収容される液状成分33は、血清である。
【0061】
この場合、血清指標の測定を含むサンプル完全性試験は、カップ22に収容された血清試料を測光分析して行うことができる。
【0062】
工程(c)後の、試料チューブ11についてのその他の処理は、例えば本発明による方法の第1の実施例において上述した方法と同じである。
【0063】
本発明による装置の第3の実施例
以下、本発明による装置の第3の実施例について、図10〜12を参照しつつ説明する。
【0064】
これらの図は、対称回転軸43を備える容器本体41を有する複数区画装置に関する。図12に示したように、容器本体41の内部は、隔壁61〜68により複数の部分51〜58および各々の試料区画151〜158に分割されている。区画51〜58の各々は、血液サンプルを受け入れることができるようになっている。全ての区画51〜58は、同一形状、同一の大きさであることが好ましく、また、区画数は、偶数であることが好ましい。選好実施形態において、容器は、12区画に分割されている。部分151〜158の各々は、図11に示した72、76のような底部領域を有する。選好実施形態において、容器本体41は、一体形成の容器本体である。
【0065】
容器本体41は、上部44および下部47を有する。容器本体41の上部44は、円筒形側壁45および上部開口46を有する。容器本体41の下部47は、円錐台形であり、円錐形側壁48および底壁49を有する。
【0066】
図10〜12に示した装置は、部分151〜158の各々の内部に配置された保持用多孔質材層84をさらに有する。層84の外面は、その区画に含まれる円筒形側壁45部の内面85に接触して、少なくとも部分的に覆っている。選好実施形態において、保持用多孔質材層84は、部分151〜158の各々に含まれる円筒形側壁45部の全内面を覆っている。
【0067】
図10〜12に示した装置は、容器本体41の上部開口46の蓋82をさらに有する。蓋82は、容器本体41に固定されている。蓋82は、試料区画51〜58の各々について少なくとも1つのピペット用孔89を有する。少なくとも1つのピペット用孔89は、ピペット針がそれを貫通して、血液サンプルをピペットにより試料区画51〜58の1つに注入するまたは取り出すことを可能にする。選好実施形態において、蓋82は、試料区画51〜58の各々について第1のピペット用孔88と第2のピペット用孔89とを有する。第1のピペット用孔88は、ピペット針がそれを貫通して、血液サンプルを試料区画51〜58の1つにピペットにより注入することを可能にする。第2のピペット用孔89は、ピペット針がそれを貫通して、その血液サンプルから分離された液状成分をピペットにより試料区画51〜58の1つから取り出すことを可能にする。
【0068】
選好実施形態において、図10〜12に示した装置は、保持用多孔質材層84の内面に接触して、少なくとも部分的に覆う分離・透過材層86をさらに有する。選好実施形態において、層86は、層84の全内面を覆っている。
【0069】
本発明による方法の第3の実施例
血液サンプルから液状成分を分離する本発明による方法の第3の実施例は、図10〜12を参照して上述した装置を利用しているとともに、容器本体41の区画52、56が示されている図13〜15に示す以下の工程を含む:
(a)(図13に示した)血液サンプル312、316を、本発明による装置の第3の実施例について上述した装置の容器本体41の区画52、56各々に注入する工程、
(b)(図14に示したように)血液サンプル312、316の液状成分332、336をその非液状成分322、326から分離するために、矢印50により示すように、予め決められたスピードで容器本体41をその対称軸43を中心にして回転させる工程、および
(c)容器本体41の回転を止めることにより、血液サンプル312、316の液状成分332、336が、容器本体41の区画52、56各々の中央底部領域72、76に向かって流れることができるようにし、血液サンプル312、316の非液状成分322、326および血液サンプル312、316の液状成分332、336の一部が、保持用多孔質材層84により保持される工程。
【0070】
工程(b)は、500〜10000rpmの間に調節した値の回転スピードで実施される。分離に要する時間は、回転スピードに依る。分離に要する時間は、回転スピードを増すことによって短縮される。容器本体41についての遠心分離の場合、適用回転スピードおよび得られた分離時間の長さの例は、下記の通りである:
回転スピード 500rpm 10000rpm
分離時間 20分 15秒
回転スピードが10000rpmの場合には、30〜60秒の範囲の分離時間で、血液サンプルから血小板のない(μL当り1000血小板未満の)血漿を分離することが可能である。
【0071】
工程(c)の後に、血液サンプルの液状成分332、336の一部は、蓋82のピペット用孔89を通して挿入したピペット針により取ることができるが、血液サンプル312、316の非液状成分322、326および血液サンプル312、316の液状成分332、336の一部は、保持用多孔質材層84により保持される。
【0072】
分離・透過材層86は、試料区画52、56と保持用多孔質材層84の間に配置されている。血液サンプルの非液状成分は、遠心分離中に分離・透過材層86を透過することが可能であるが、分離・透過材層86は、一方では分離終了後に、非液状成分31が試料区画52、56の液状成分が分離された部分に還流することを阻止する。
【0073】
上述した方法の工程(b)における容器本体41についての遠心分離中の、また、図14に模式的に示した、血液サンプル312の液状成分332および非液状成分322の空間分布は、容器本体は試料チューブ11である図5の空間分布に類似しているが、唯一の違いは、容器本体41の内部は部分151〜158に再分割されているが、試料チューブ11の内部は再分割されていないことである。工程(b)における容器本体41についての遠心分離終了時に、全ての試料区画51〜58内の血液サンプルの非液状成分322、326は、保持用多孔質材層84の外側環状部84aの部分を占め、液状成分の液状成分332、336の第1の部分は、保持用多孔質材層84の内側環状部84bを占め、さらに、液状成分の第2の部分は、分離・透過材層86と容器本体41の試料区画51〜58内の空気が占める空間の間の各々の空間を占める。
【0074】
上述した方法の一実施形態において、ピペットにより蓋82のピペット用孔88を介して容器41の区画52、56に注入された血液サンプル312、316の各々は、内部が真空の血液採取チューブによって取られる。このチューブは、抗凝固剤が封入されており、血液サンプル312、316は、静脈穿刺を介して血液採取チューブ内に導入される。抗凝固剤は、容器本体41の試料区画52、56内にもまたは代替として試料区画52、56内に配置してもよい。この場合、上述の方法により分離される液状成分332、336は、血漿である。
【0075】
上述した方法の別の実施形態において、ピペットにより蓋82のピペット用孔88を介して容器41の区画52、56に注入された血液サンプル312、316の各々は、内部が真空の血液採取チューブによって取られる。この試料チューブは、抗凝固剤が封入されていないまたは凝固促進剤が封入されており、血液サンプル312、316は、静脈穿刺を介して血液採取チューブ内に導入される。凝固促進剤は、容器本体41の試料区画51〜58内にもまたは代替として試料区画52、56内に配置してもよい。この場合、上述の方法により分離される液状成分332、336は、血清である。
【0076】
工程(c)の後に、容器本体41および容器本体41の試料区画52、56に収容された分離液状成分332、336は、容器本体41およびその内容物が液状成分332、336の分析のために臨床診断用分析装置に移送されるまで、通常は適切な温度の下で保管される。しかし、全工程を同じ臨床診断用分析装置により実施してもよい。血液サンプルの液状成分332、336は、次に、ピペット用孔89を介して容器本体の区画に導入され、液状成分332、336の試料を吸引するピペット針により容器本体41の試料区画51〜58の内部から吸引され、それらを臨床診断用分析装置の、例えば反応キュベットに移送する。
【0077】
選好実施形態において、工程(b)は、自動ピペットユニットを備える臨床診断用分析装置の一部である遠心分離機により実施され、処理対象の血液サンプルは、後者のピペットユニットにより容器41の蓋82の孔88を介して、この容器の試料区画52、56に導入され、分析器のピペットユニットは、血液サンプルの液状成分と非液状成分の分離後に、容器41の試料区画52、56の下部から液状成分の試料を吸引し、さらに、この試料は、臨床診断用分析装置により分析される。
【0078】
選好実施形態において、血液サンプルは、上述の方法の工程(a)で容器本体41の区画51〜58の各々に注入される。
【0079】
本発明による装置の第4の実施例
以下、本発明による装置の第4の実施例について、図16を参照しつつ説明する。
【0080】
この装置の構造は、図10〜12を参照しつつ先に説明した装置の構造に類似しているが、この第4の実施例において、容器本体41の区画51〜58の各々は、容器本体41の底壁49の開口92、96を介して、その区画52、56に連通されている測光分析区画102、106をさらに有する。測光分析区画102、106の各々は、その中に受け入れた液体を測光分析できるよう構成され、また、大きさが決められている。図16に示すように、測光分析区画102、106は、対応する区画52、56の底壁の開口92、96から下向きに延出する平面状で平行な側壁を有する。
【0081】
図16は、入射光線121、123がその区画に向けて照射されたとき、光線122、124が鏡112、116により反射されるようにするために、鏡112、116を測光分析区画102、106とどのように一体化できるかを示す。鏡112、116の区画102、106内におけるこの配置が、その区画102、106に収容された液体の測光分析を可能にする。
【0082】
本発明による装置の第5の実施例
以下、本発明による装置の第5の実施例について、図17を参照しつつ説明する。これは、図16に示した装置の変形例である。図17は、矢印130で示した方向から、装置の区画の1つだけを見たときの正面図であり、区画52に連通されていて、測光分析を実施するのに好適な測光分析区画132を示す。
【0083】
図17に示すように、装置の区画132は、対応する区画52の底壁の開口92から下向きに延出する平面状で平行な側壁を有する。
【0084】
図17は、その区画に収容された液体の測光分析する中に光を誘導するために、鏡141、142を区画132の外部に配置する方法の一例を示す。この場合、入射光線143が鏡141に向けて照射され、対応する光線144が、鏡141により反射されて区画132を透過し、さらに、鏡142により反射されて対応する反射光線145を放つ。
【0085】
本発明による方法の第4の実施例
血液サンプルから液状成分を分離する本発明による方法の第4の実施例は、図16を参照して上述したまたは図17を参照して上述した装置を利用しているとともに、以下の工程を含む:
(a)(図13に示したように)血液サンプル312、316を、本発明による装置の第3の実施例について上述した装置の容器本体41の試料区画52、56の各々に注入する工程、
(b)(図14に示したように)血液サンプル312、316の液状成分332、336をその非液状成分322、326から分離するために、矢印50により示すように、予め決められたスピードで容器本体41をその対称軸43を中心にして回転させる工程、および
(c)容器本体41の回転を止めることにより、血液サンプル312、316の液状成分332、336が、容器本体41の試料区画52、56各々の中央底部領域72、76に向かって、さらに、測光分析区画102、106、132の中へと流れることができるようにし、血液サンプル312、316の非液状成分322、326および血液サンプル312、316の液状成分332、336の一部が、保持用多孔質材層84により保持される工程。
【0086】
工程(b)は、実施例3同様に実施される。
【0087】
工程(c)の後に、血液サンプルの液状成分332、336の一部は、蓋82のピペット用孔89を介してピペットにより取ることができるが、血液サンプル312、316の非液状成分322、326および血液サンプル312、316の液状成分332、336の一部は、保持用多孔質材層84により保持される。
【0088】
分離・透過材層86は、試料区画52、56と保持用多孔質材層84の間に配置されている。血液サンプルの非液状成分は、遠心分離中に分離・透過材層86を透過することができるが、一方で分離・透過材層86は、分離完了後に非液状成分31が液状成分の分離部に還流することを阻止する。
【0089】
本発明による方法のこの第4の実施例において、分離した液状成分332、336の一部は測光分析区画102、106、または132に取られ、その中で測光分析が行われる。
【0090】
ここでも、抗凝固剤または凝固促進剤を用いて、血漿または血清をそれぞれ得るようにしてもよい。
【0091】
選好実施形態において、上述した方法の工程(a)では、血液サンプルが容器本体41の区画51〜58の各々に注入される。
【0092】
血清指標の測定を含むサンプル完全性試験は、測光分析区画102、106、または132に収容された血清試料を測光分析して行うことができる。
【0093】
工程(c)後の、容器本体41の内容物についてのその他の処理は、例えば本発明による方法の第3の実施例において上述した方法と同じである。
【0094】
本発明による分析装置の第1の実施例
本発明による分析装置の第1の実施例は、例えば、図1を参照して上述した装置およびその対称軸13を中心にして、そのような装置の試料チューブ11に遠心力を作用させる構造を有する臨床診断用分析装置である。
【0095】
選好実施形態において、この装置は、図6を参照して上述した装置およびその装置内の測光分析区画22の収容物について測光分析を実施する電気光学的手段を備える検出器を有する。
【0096】
本発明による分析装置の第2の実施例
本発明による分析装置の第2の実施例は、例えば、図10〜12を参照して上述した装置に内蔵される遠心分離機およびその対称軸43を中心にして、そのような装置の容器本体41に遠心力を作用させる構造を有する臨床診断用分析装置である。
【0097】
選好実施形態において、この装置は、図16と図17を参照して上述した装置およびその装置内の測光分析カップ102、106、または132の収容物について測光分析を実施する電気光学的手段を有する。
【0098】
実験データ
図10〜15を参照して上述した種類の装置において、容器本体41は、好適なプラスチックの射出成形により形成されており、径が6.5mmであり、また、各々の容積が4.7mLの8つの区画51〜58を有する。区画の各々に、保持用多孔質材層84および分離・透過材層86が配置されている。層84は、容積が0.95mLであり、ドイツのケップ・シャウム社(Koepp Schaum GmbH)製の網状フォームS605oHYである。層86は、スイス連邦のシーファー(Sefar)社製のナイテックス・ナイロン(Nytex Nylon)03−171である。
【0099】
ヘパリン・リチウム製試験管(ベクトン・ディキンソン社のヴァキュテーナー(登録商標))に収容されていた、異なる患者の各々の量が1.5mLの血液サンプルが容器本体41の異なる区画に注入される。
【0100】
次いで、装置は、ドイツのエッペンドルフ(Eppendorf)製の遠心分離機ミニスピン(登録商標)プラス(Minispin(R) Plus)を用いて35秒間、14000rpmで回転させられる。
【0101】
遠心分離後、500mLの量の血漿が、容器本体41の区画各々の下部から取られる。
【0102】
これらの血漿試料の品質は、従来の遠心分離機を用いて10分間、1900gを掛けて遠心分離する従来の方法によって同一の血液サンプルから得た基準血漿の品質と比較される。
【0103】
血漿品質の基準は、血漿に残留する血小板の数である。これは、日本のシスメックス(株)製の自動血液分析器KX−21Nにより測定した。
【0104】
基準試料の平均血小板数は、約25000であったが、本発明の装置を用いて得た血漿の平均血小板数は、ほぼ1000より少なかった。
【0105】
従って、本発明による装置は、高品質の血漿試料を短時間で得ることを可能にすることは明白である。
【符号の説明】
【0106】
11 単一区画容器本体またはサンプルチューブ
13 軸を中心にして容器本体11に遠心力を作用させるための回転軸
14 容器本体11の上部
15 容器本体11の側壁
16 容器本体11の上部開口
17 容器本体11の下部
18 容器本体11の底部領域
19 容器本体11の底壁
21 容器本体11の蓋
22 容器本体11の内部と接続された測光分析区画
23 容器本体11の底壁16の開口
24 保持用多孔質材層
24a 層24の外側環状部
24b 層24の内側環状部
25 円筒形側壁15の内面
26 透過・分離材層
27 空気
30 容器本体11の試料区画
31 血液サンプル
32 血液サンプル31の非液状成分
33 血液サンプル31の液状成分
41 複数区画容器本体
43 軸を中心にして容器本体41に遠心力を作用させるための回転軸
44 容器本体41の上部
45 容器本体41の側壁
46 容器本体41の上部開口
47 容器本体41の下部
48 容器本体41の傾斜側壁
49 容器本体41の底壁
50 矢印
51〜58 容器本体41の試料区画
61〜68 容器本体41の隔壁
72 区画52の底部領域
76 区画56の底部領域
82 容器本体41の上部開口46の蓋
84 保持用多孔質材層
84a 層84の外側部分
84b 層84の内側部分
85 側壁45の内面
86 透過・分離材層
87 空気
88 ピペット用孔/穿刺可能なピペット用孔
89 ピペット用孔/穿刺可能なピペット用孔
92 区画52底壁の開口
96 区画56底壁の開口
102 区画52に接続された測光分析区画
106 区画56に接続された測光分析区画
112 カップ102内に配置された鏡
116 カップ106内に配置された鏡
121 入射光線
122 反射光線
123 入射光線
124 反射光線
130 矢印
132 区画52に接続された測光分析区画
141 鏡
142 鏡
143 入射光線
144 反射光線
145 反射光線
151〜158 容器本体41の部分
312 区画52内の血液サンプル
316 区画56内の血液サンプル
322 血液サンプル312の非液状成分
326 血液サンプル316の非液状成分
332 血液サンプル312の液状成分
336 血液サンプル316の液状成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの血液サンプルの液状成分の少なくとも一部を分離する分離装置において、
隔壁(61〜68)により複数の部分(151〜158)に分割されている容器本体(41)と、
複数の前記血液サンプルを受け入れて、分離後に分離した前記液状成分の少なくとも一部を保持する複数の試料区画(51〜58)とを有し、
前記部分(151〜158)の少なくとも1つは、分離後に前記血液サンプルの非液状成分(32)を保持する保持用多孔質材層(84)を有することを特徴とする分離装置。
【請求項2】
前記部分(151〜158)の前記少なくとも1つは、前記血液サンプルの前記非液状成分が前記液状成分が分離された部分に還流することを阻止する分離・透過材層(86)をさらに有することを特徴とする請求項1記載の分離装置。
【請求項3】
前記分離・透過材層(86)は、遠心分離された血液サンプルの非液状成分にとって典型的な大きさの物質を透過することができる、近接して配置された多数の孔を有するメッシュまたはステント(86)であることを特徴とする請求項2記載の分離装置。
【請求項4】
前記メッシュまたはステント(86)は、ナイロン、テフロン(登録商標)の群から選ばれた不活性ポリマーにより形成されていることを特徴とする請求項3記載の分離装置。
【請求項5】
前記分離・透過材層は、前記保持用多孔質材層(84)に接触して、少なくとも部分的に覆っていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項6】
前記保持用多孔質材層(84)は、オープンセル発泡体、発泡ゴム、フリース、マット、ハニカム材料を含む群から選ばれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項7】
前記容器本体(41)の下部(45)の底壁(49)の開口(61〜68)を介して前記少なくとも1つの試料区画(52、56)に連通されている少なくとも1つの測光分析区画(22、102、106)をさらに有し、
前記少なくとも1つの測光分析区画(22、102、106)は、前記少なくとも1つの試料区画(30、51〜58)と流体が移動できるように接続され、
前記少なくとも1つの測光分析区画(22、102、106)が、分離した液状成分の少なくとも一部を受け入れ、また、その中に受け入れた前記液状成分を測光分析できるよう構成され、また、大きさが決められていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項8】
少なくとも1つの血液サンプル(31)の液状成分の少なくとも一部を分離する方法において、
(a)請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置を準備することと、
(b)血液サンプル(31)を前記装置の少なくとも1つの試料区画(30、51〜58)に注入することと、
(c)前記血液サンプル(31)の液状成分(33)をその非液状成分(32)から分離するために、軸(13、43)を中心にして装置を予め決められたスピードで回転させることと、
(d)前記回転を止めることにより、前記血液サンプルの分離した液状成分が前記少なくとも1つの試料区画(30、51〜58)の中央下部に向けて流れることができるようにすることとを含み、前記血液サンプル(31)の前記非液状成分(32)および前記血液サンプル(31)の前記液状成分(33)の一部は、保持用多孔質材層(24、84)により保持されることを特徴とする方法。
【請求項9】
少なくとも1つの血液サンプル(31)の液状成分の少なくとも一部を分析する方法において、
(a)請求項7記載の装置を準備することと、
(b)請求項8記載の方法により、前記血液サンプル(31)の液状成分の少なくとも一部を分離することと、
(c)前記装置の少なくとも1つの測光分析区画(22、102)に受け入れた前記液状成分の少なくとも一部について測光分析を実施することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
(a)請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置と、
(b)軸(13、43)を中心にして前記装置に遠心力を作用させる手段とを有することを特徴とする臨床診断用分析装置。
【請求項11】
前記装置の測光分析区画(22、102)の収容物について測光分析を実施するための検出器をさらに有することを特徴とする請求項10記載の臨床診断用分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−58256(P2012−58256A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257653(P2011−257653)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【分割の表示】特願2009−546686(P2009−546686)の分割
【原出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】