説明

血液凝固促進剤含有組成物及び血液検査用容器

【課題】血液を短時間で凝固させることができ、例えば血液検査用容器に血液を収容した際に、気泡の発生と同時に血液の凝固が瞬時に起こり、泡状の血餅が生成されるのを抑制することができる血液凝固促進剤含有組成物、及びそれを用いた血液検査用容器を提供する。
【解決手段】血液の凝固を促進する血液凝固促進剤と、血小板の凝集を抑制する血小板凝集抑制剤とを含む血液凝固促進剤含有組成物4、並びに該血液凝固促進剤含有組成物4が管状容器2内に収容され、管状容器2の開口2aに栓体3が気密的に取り付けられている血液検査用容器1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清生化学検査や血清免疫学検査などの臨床検査等に用いられる血液凝固促進剤含有組成物に関し、より詳細には、血液を短時間で凝固させることができ、血餅による汚染のない血清を得ることを可能とする血液凝固促進剤含有組成物、及びそれを用いた血液検査用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
病気の予防や診断を目的として、血液検査が広く行われている。血液検査の多くは、血清生化学検査、血清免疫学検査、血清内分泌物質検査、血清腫瘍マーカー検査及び血清薬物濃度検査などの血清検査である。
【0003】
血清検査に際して、血液から血清を採取するために、血液検査用容器が広く用いられている。血液検査用容器に血液が採取され、採取された血液が凝固した後に、遠心分離によって血清が比重の異なる血餅と分離され、血清が取り出されている。
【0004】
血液が採取される血液検査用容器としては、従来、ガラス製の容器や、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製の容器が使用されている。ガラス製の血液検査用容器を用いた場合には、血液を比較的短時間で凝固させることができるが、血液が凝固するまでに40〜60分程度要していた。一方、合成樹脂製の血液検査用容器を用いた場合には、血液が凝固するまでに4時間以上要していた。そこで、血液をより一層短時間で凝固させるために、血液の凝固を促進する血液凝固促進剤が用いられている。
【0005】
血液の凝固は、血液凝固第XII因子の活性化により開始し、その後、多くの反応段階を経て、最終的にフィブリノーゲンがフィブリンに転化した時点で終了する複雑な経路によって起こることが知られている。下記の特許文献1では、血液の凝固を促進する血液凝固促進剤として、血液の凝固の最終段階であるフィブリノーゲンがフィブリンに転化する反応を促進するトロンビンや蛇毒酵素等の酵素系薬剤が用いられている。これらの酵素系薬剤を血液凝固促進剤として用いることにより、5分以内に血液を凝固させることができる。
【特許文献1】特開平5−157747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、血液検査用容器に血液を添加あるいは真空吸引する際には、気泡が発生することがある。特許文献1に記載のような従来の血液凝固促進剤を用いた場合には、気泡の発生と同時に血液の凝固が瞬時に起こり、泡状の血餅が生成しがちであった。比重の軽い泡状の血餅が生成している状態で遠心分離を行うと、泡状の血餅が血清と接触し、溶血が生じ、漏洩した血球内成分が血清に混入することがあった。さらに、遠心分離後に、泡状の血餅によって、分離された血清の採取が阻害されることがあった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の現状に鑑み、血液を短時間で凝固させることができ、例えば血液検査用容器に血液を収容した際に、気泡の発生と同時に血液の凝固が瞬時に起こり、泡状の血餅が生成されるのを抑制することができる血液凝固促進剤含有組成物、及びそれを用いた血液検査用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、血液の凝固を促進する血液凝固促進剤と、血小板の凝集を抑制する血小板凝集抑制剤とを含むことを特徴とする、血液凝固促進剤含有組成物が提供される。
【0009】
本発明に係る血液凝固促進剤含有組成物は、上記血液凝固促進剤及び血小板凝集抑制剤に加えて、水溶性バインダーをさらに含むことが好ましい。それによって、例えば血液凝固促進剤含有組成物が血液検査用容器内に収容されて用いられる場合に、血液検査用容器全体に均一に固着することができる。
【0010】
また、本発明に係る血液凝固促進剤含有組成物は、血餅付着防止剤をさらに含むことが好ましく、それによって、例えば血液凝固促進剤含有組成物が血液検査用容器内に収容されて用いられる場合に、血液が凝固した後に血餅が容器の内壁面に付着するのを防止することができる。
【0011】
本発明のある特定の局面では、血小板凝集抑制剤は、Glycoprotein阻害剤、Cox抑制剤、PGI2誘導体製剤、PGE1誘導体製剤、Ca拮抗剤及びPDE阻害剤から選択された少なくとも1種である。これらの血小板凝集抑制剤を用いた場合には、血小板の凝集を効果的に抑制し、泡状の血餅の生成をより一層抑制することができる。
【0012】
本発明の他の特定の局面では、水溶性バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系共重合体及びポリオキシアルキレンブロック共重合体から選択された少なくとも1種である。これらの水溶性バインダーを用いた場合には、血液検査用容器全体に均一に固着することができる。
【0013】
本発明に係る血液検査用容器は、開口を有する管状容器と、前記管状容器の開口に気密的に取付けられた栓体とを備え、本発明に従って構成された血液凝固促進剤含有組成物が、前記管状容器内に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る血液凝固促進剤含有組成物では、血液の凝固を促進する血液凝固促進剤と、血小板の凝集を抑制する血小板凝集抑制剤とを含むので、血液を短時間で凝固させることができる。さらに、例えば血液凝固促進剤含有組成物を血液検査用容器に収容し、該血液検査用容器に血液を採取したときに、気泡の発生と同時に血液の凝固が起こり難く、泡状の血餅が生成され難い。よって、遠心分離時に溶血が生じ難く、漏洩した血球内成分の血清への混入を抑制することができる。さらに、遠心分離後に、泡状の血餅によって、分離された血清の採取が阻害されるのを抑制することができる。
【0015】
本発明に係る血液検査用容器では、開口を有する管状容器と、管状容器の開口に気密的に取付けられた栓体とを備え、本発明に従って構成された血液凝固促進剤含有組成物が管状容器内に収容されているので、泡状の血餅の生成を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0017】
本発明に係る血液凝固促進剤含有組成物は、血液の凝固を促進する血液凝固促進剤と、血小板の凝集を抑制する血小板凝集抑制剤とを含む。
【0018】
本発明に係る血液凝固促進剤含有組成物は、特に限定されないが、例えば血液検査用容器内に収容されて、用いられる。
【0019】
図1(a)、(b)に本発明の一実施形態に係る血液検査用容器を外観斜視図及び正面断面図で示す。
【0020】
図1(a)、(b)に示すように、血液検査用容器1は、管状容器2と栓体3とを備えている。管状容器2は、一端に開口2aを有し、一端とは反対側の他端に丸底2bを有する。栓体3は、大径部3aと、大径部3aよりも径が小さな小径部3bとを有する。管状容器2の開口2aに、栓体3の小径部3bが圧入され、栓体3が気密的に取付けられている。
【0021】
血液検査用容器1では、血液凝固促進剤含有組成物4は、血液が採取される前に予め管状容器2内に収容されている。血液凝固促進剤含有組成物4は、管状容器2内に血液を採取した後に、管状容器2内に加えられてもよい。
【0022】
上記管状容器2の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ−アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、エチルキチン等の変性天然樹脂、ソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラス、石英ガラスなどのガラス、及びこれらを主成分とするもののいずれもが用いられる。
【0023】
上記栓体3としては、管状容器2の開口2aに気密的に取付けることが可能な材質、形状からなるものが用いられる。栓体3の材質としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、ゴム、アルミニウム箔などの金属箔等が挙げられる。上記ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等が好適に用いられる。
【0024】
血液検査用容器1の内部は、減圧されていることが好ましい。この場合、血液検査用容器1を真空採血管として用いることができる。
【0025】
本発明において、血液凝固促進剤及び血小板凝集抑制剤は混合されていてもよいし、それぞれが別の担体に担持されるなどして分離されており、使用持に併用される形態とされていてもよい。担体に担持させる方法としては、血液凝固促進剤含有組成物に含まれる全成分または各成分の水溶液又は水分散液をスプレーにより塗布したり、該水溶液又は分散液に担体を浸漬することにより担持させる方法等を挙げることができる。
【0026】
(血液凝固促進剤)
上記血液凝固促進剤としては、特に限定されないが、ペプチド鎖のアルギニンと任意のアミノ酸残基との結合及び/又はリジンと任意のアミノ酸残基との結合を加水分解し得る加水分解酵素が好適に用いられる。
【0027】
上記加水分解酵素としては、例えば、トリプシン、トロンビン、蛇毒トロンビン様酵素等のセリンプロテアーゼ;カテプシンB、フィシン等のチオールプロテアーゼ;キニナーゼI等の金属プロテアーゼ等が挙げられ、特にセリンプロテアーゼが好適に用いられる。
【0028】
上記血液凝固促進剤は少なすぎると、血液の凝固が不完全になることがあり、多すぎると、検査値に悪影響を及ぼすおそれがある。よって、血液凝固促進剤の量は、採血後の血液1mLあたり0.1〜100単位が好ましく、0.5〜50単位がより好ましい。
【0029】
(血小板凝集抑制剤)
上記血小板凝集抑制剤としては、特に限定されないが、アデノシン2リン酸の作用を抑制するチクロピジンなどのGlycoprotein阻害剤、トロンボキサンの産生を抑制するアセチルサリチル酸などのCox抑制剤、PGI2やPGE1の産生を増加させるPGI2誘導体製剤やPGE1誘導体製剤、Ca2+の流入を抑制するためのCa拮抗剤、ジピリダモールまたはシロスタゾールなどのPDE阻害剤等が挙げられる。
【0030】
血小板の凝集を効果的に抑制し、泡状の血餅の生成をより一層抑制することができるので、上記血小板凝集抑制剤としては、Glycoprotein阻害剤、Cox抑制剤、PGI2誘導体製剤、PGE1誘導体製剤、Ca拮抗剤及びPDE阻害剤から選択された少なくとも1種が好ましい。
【0031】
上記血小板凝集抑制剤は少なすぎると、血小板の凝集を抑制する効果が充分に得られないことがあり、生成した気泡が消泡する前に血液の凝固が起こるため、泡状の血餅が血清検体と接触し、溶血する恐れがある。一方、多すぎると、不溶物が残存したり、血小板凝集抑制剤自体が溶血を生じさせることがあり、検査値に悪影響を及ぼすおそれがある。よって、血小板凝集抑制剤の採血後の最終濃度は、0.01mmol/L〜10mmol/Lが好ましく、0.1mmol/L〜5mmol/Lがより好ましい。
【0032】
(水溶性バインダー)
本発明の血液凝固促進剤含有組成物は、水溶性バインダーを含むことが好ましい。血液凝固促進剤含有組成物が、例えば前述の血液検査用容器1内に収容されて用いられる場合に、管状容器2内に水溶性バインダーが存在することにより、血液検査用容器全体に均一に固着することができる。水溶性バインダーは、血液が収容される前に管状容器2の内壁面2cに予め収容されていることが好ましい。
【0033】
上記水溶性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系共重合体、ポリオキシアルキレンブロック共重合体から選択された少なくとも1種が好ましい。
【0034】
(血餅付着防止剤)
本発明の血液凝固促進剤含有組成物は、血餅付着防止剤を含むことが好ましい。血液凝固促進剤含有組成物は、上記水溶性バインダーとともに、血餅付着防止剤を含むことがより好ましい。血液凝固促進剤含有組成物が、例えば前述の血液検査用容器1内に収容されて用いられる場合に、上記血餅付着防止剤が管状容器2の内壁面2cに存在することにより、血液が凝固した後に、血餅の管状容器2の内壁面2cへの付着が防止される。よって、遠心分離時に、血餅の移動が制限されることなく、血餅と血清とが良好に分離される。
【0035】
上記血餅付着防止剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーンオイル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレン、これらの誘導体が挙げられ、これらは単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。シリコーンオイルとしては水溶性タイプの変性シリコーンオイルを用いることもできる。好適に用いられるポリオキシアルキレン及びその誘導体としては、例えば、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレングリセリルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
(血清分離剤)
本発明の血液凝固促進剤含有組成物は、血清分離剤を含むことが好ましい。血液凝固促進剤含有組成物が、例えば前述の血液検査用容器1に収容されて用いられる場合に、管状容器2内に血清分離剤が存在することにより、遠心分離時に血清分離剤が血餅と血清の間に移動し、隔壁が形成されて、血清が効果的に分離される。血清分離剤は、血液が収容される前に管状容器2の底部2bに予め収容されていることが好ましい。
【0037】
上記血清分離剤はチクソトロピー性を有するゲル状物であり、例えば、常温で流動性を有する合成樹脂などに、チクソトロピー性付与剤、比重調整剤や、粘度調整剤などの添加剤を添加し混合することにより得られる。
【0038】
上記合成樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエンのオリゴマー等が挙げられる。上記チクソトロピー性付与剤としては、例えば、ソルビトールと芳香族アルデヒドとの縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンブロック共重合体等が挙げられる。上記比重調整剤としては、例えば、シリカ等が挙げられる。上記粘度調整剤としては、例えば、フタル酸エステル等が挙げられる。
【0039】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
実施例及び比較例では、下記試薬及び容器を用いた。
【0041】
血液凝固促進剤:トロンビン(商品名:トロンビン伊藤、伊藤製薬社製)
血小板凝集抑制剤:アセチルサリチル酸(和光純薬社製)
管状容器:ポリエチレンテレフタレート製管状容器(内容積7mL、直径13mm×長さ100mm、積水化学工業社製)
水溶性バインダー:ポリビニルピロリドン(PVPK−30、和光純薬社製)
血餅付着防止剤:シリコーンオイル(東レダウコーニング社製)
【0042】
(実施例1)
トロンビン、ポリビニルピロリドン及びシリコーンオイルを注射用水に溶解した溶液を、管状容器の内壁面にスプレーし、風乾した。しかる後、アセチルサリチル酸を生理食塩水に溶解した溶液10μLを、アセチルサリチル酸の採血後の最終濃度が0.01mmol/Lとなるように、管状容器の底部に添加した。さらに、管状容器の開口にゴム栓を気密的に取り付け、内部を減圧し、血液検査用容器としての真空採血管を得た。
【0043】
(実施例2)
アセチルサリチル酸を生理食塩水に溶解した溶液10μLを、アセチルサリチル酸の採血後の最終濃度が0.1mmol/Lとなるように、管状容器の底部に添加したこと以外は実施例1と同様にして、真空採血管を得た。
【0044】
(実施例3)
アセチルサリチル酸を生理食塩水に溶解した溶液10μLを、アセチルサリチル酸の採血後の最終濃度が0.5mmol/Lとなるように、管状容器の底部に添加したこと以外は実施例1と同様にして、真空採血管を得た。
【0045】
(実施例4)
アセチルサリチル酸を生理食塩水に溶解した溶液10μLを、アセチルサリチル酸の採血後の最終濃度が3mmol/Lとなるように、管状容器の底部に添加したこと以外は実施例1と同様にして、真空採血管を得た。
【0046】
(実施例5)
アセチルサリチル酸を生理食塩水に溶解した溶液10μLを、アセチルサリチル酸の採血後の最終濃度が5mmol/Lとなるように、管状容器の底部に添加したこと以外は実施例1と同様にして、真空採血管を得た。
【0047】
(実施例6)
アセチルサリチル酸を生理食塩水に溶解した溶液10μLを、アセチルサリチル酸の採血後の最終濃度が10mmol/Lとなるように、管状容器の底部に添加したこと以外は実施例1と同様にして、真空採血管を得た。
【0048】
(比較例1)
トロンビン、ポリビニルピロリドン及びシリコーンオイルを注射用水に溶解した溶液を、管状容器の内壁面にスプレーし、風乾した。しかる後、管状容器の開口にゴム栓を気密的に取り付け、内部を減圧し、血液検査用容器としての真空採血管を得た。
【0049】
(評価)
各真空採血管の管状容器内に血液を真空吸引した後、5秒かけて5回転倒混和した。管状容器内に収容された血液が凝固した後、遠心分離を行った。このときの流動性消失時間、及び遠心分離後の分離状態、溶血の有無を評価した。
【0050】
上記流動性消失時間は、血液を吸引してから血液の凝固が目視で確認されるまでの時間を測定することにより評価した。また、上記遠心分離後の分離状態は、上層の血清内に血餅が突出しており、血清内において血餅が接触している場合を「×」、上層の血清内に血餅が突出していない場合を「○」とし、評価した。また、遠心分離後30分経過時の血清検体の溶血有無を評価した。結果を下記の表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
アセチルサリチル酸を添加していない比較例1の真空採血管では、管状容器内に血液を吸引した後、血液の凝固が瞬時におこり、泡状の血餅が生成し、該泡状の血餅が消泡することなく、血液が凝固した。そして、泡状の血餅を含む状態で遠心分離を行ったため、比重の軽い泡状の血餅が、上層の血清内に突出していた。採血後の最終濃度が0.01mmol/Lとなるようにアセチルサリチル酸を添加した実施例1の真空採血管では、血液吸引後に流動性の向上は見られたが、転倒混和中に血液が凝固し始めた。しかし、遠心分離後に泡状の血餅は確認されなかった。
【0053】
実施例2〜6では、いずれも転倒混和が終了するまで流動性が保たれ、遠心分離後の血餅にも泡状血餅は観察されなかった。しかし、アセチルサリチル酸が高濃度である実施例6では遠心分離後の検体が微溶血していた。
【0054】
以上の結果より、アセチルサリチル酸の採血後の最終濃度、すなわち血小板凝集抑制剤の採血後の最終濃度は0.01mmol/L〜10mmol/Lの範囲が好ましく、0.1mmol/L〜5mmol/Lの範囲がより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る血液検査用容器を示す外観斜視図及び正面断面図。
【符号の説明】
【0056】
1…血液検査用容器
2…管状容器
2a…開口
2b…底部
2c…内壁面
3…栓体
3a…大径部
3b…小径部
4…血液凝固促進剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液の凝固を促進する血液凝固促進剤と、血小板の凝集を抑制する血小板凝集抑制剤とを含むことを特徴とする、血液凝固促進剤含有組成物。
【請求項2】
水溶性バインダーをさらに含む、請求項1に記載の血液凝固促進剤含有組成物。
【請求項3】
血餅付着防止剤をさらに含む、請求項1または2に記載の血液凝固促進剤含有組成物。
【請求項4】
前記血小板凝集抑制剤が、Glycoprotein阻害剤、Cox抑制剤、PGI2誘導体製剤、PGE1誘導体製剤、Ca拮抗剤及びPDE阻害剤から選択された少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液凝固促進剤含有組成物。
【請求項5】
前記水溶性バインダーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系共重合体及びポリオキシアルキレンブロック共重合体から選択された少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液凝固促進剤含有組成物。
【請求項6】
開口を有する管状容器と、前記管状容器の開口に気密的に取付けられた栓体とを備え、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の血液凝固促進剤含有組成物が、前記管状容器内に収容されていることを特徴とする、血液検査用容器。


【図1】
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【公開番号】特開2008−304207(P2008−304207A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149153(P2007−149153)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】