説明

血液分離回収デバイス

【課題】安価で簡単な操作により微量な全血サンプルから血球を分離し血漿を定量的に回収する血液分離回収デバイスを提供すること。
【解決手段】遠心分離操作により全血を遠心分離し血漿を回収する際に用いる血液分離回収デバイスであって、第1の母材及び第2の母材から構成され、第1の母材に全血採取部及び血球成分分離部が連通されて形成され、第2の母材に血漿回収部が形成され、前記全血採取部が毛細管現象により全血を採取可能であり、前記血漿回収部が毛細管現象により前記血球成分分離部の血漿を回収可能であり、第1の母材と第2の母材が着脱可能である血液分離回収デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血から血球成分を分離し血漿を回収するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血液中の成分を測定する生化学検査は各種の診断、観察に広く利用され、臨床検査として重要な検査法となっている。各種の生化学検査装置が開発され多数の検体や多数の検査項目が分析されている。従来の健康診断や疾病状態の診断は、患者から数ccの多量の血液を採取し、その分析に大規模な自動血液分析装置で得た測定値より行われてきた。通常、このような自動分析装置は、病院などの医療機関に設置されており、規模が大きく、また、その操作は専門を有するものに限られるものであった。
【0003】
しかし、近年、極度に進歩した半導体装置作製に用いられる微細加工技術を応用し、数mmから数cm四方の基板上に種々のセンサなどの分析装置を配置して、そこに被験者の血液などの体液を導き、被験者の健康状態を瞬時に把握することができる新しいデバイスの開発とその実用化の気運高まってきている。このような安価なデバイスの出現により、将来の高齢化社会において高齢者の日々の健康管理を在宅で可能にすることなどで増加の一途を辿る健康保険給付金の圧縮を図れる。また救急医療の現場においては被験者の感染症(肝炎、後天性免疫不全症など)の有無などを、本デバイスを用いて迅速に判断できれば適切な対応ができるなど、種々の社会的な効果が期待されるために非常に注目されつつある技術分野である。このように従来の自動分析装置に代わって、血液分析を各家庭で自らの手で実施することを目指した小型で簡便な血液分析方法ならびに血液分析装置が開発されている。このような検査において、血液中の特定の成分、特に血球成分は、測定値に高いバックグランドを生じるか、または測定装置の性能を妨害するためサンプル中の血球成分の除去が望まれる。また、検査装置は多くの場合少量サンプル量での測定が可能であることが望ましい。
【0004】
従来の健康診断や疾病状態の診断においては、サンプル中の血液成分の除去をするために遠心分離による方法が用いられてきたが血液が数cc必要であること、遠心分離した後に上澄みを作業者が吸い取るといった熟練を要する作業が必要であった。
【0005】
特許文献1には、血球成分分離構造物では、遠心力で血液を分離するチップが開示されているが、検体である血液を導入し遠心力により分離したのち、チップを90°回転させ分離した血液を秤量送液し、さらに90°回転させ試薬と混合するといった複雑な手順を踏むものであり、マイクロチップを取り外しすることで作業に時間を要し、人為的ミスによりマイクロチップを落下させたり、ぶつけたりするおそれがあった。
【0006】
特許文献2に開示されている血球成分分離構造物では、遠心力で血液を分離し回転の中心を機械側で操作することにより分離と送液を可能にしているが、装置が煩雑となり高価になってしまう問題がある。
【0007】
特許文献3に開示されている血球成分分離構造物では、毛細管現象によりサンプルを経路内に導入し、経路内部に配置した多数の欠けた月または弾丸の形をした障害物を利用して血球成分を分離している。しかしながら、このような毛細管現象と経路内部の障害物とを利用した血球成分分離構造物でも、必要な血液量に関しては未だ改善の余地がある。現在チップタイプの血糖値センサに使用されるサンプル容量は約0.3〜4μLであるが上記の血液成分分離構造物は血液の濾過を行うために、20〜50μLのサンプル容量を必要とする。したがって、血球を分離せずに血糖値センサでの検査を行う場合に比べていまだに多量のサンプルが必要とされる。
【0008】
特許文献4開示される血球成分分離構造物では、マイクロ流路中に隙間が約0.1μm〜2μmと微小なスリットを設け、スリットが血球成分で目詰まりしないように約2μm〜10μmのキャビティを設けることを特徴としており、微量な血液試料から血球成分を濾過することが出来る。しかしながら、マイクロ流路中に隙間が0.1μm〜2μmの微小なスリットを設ける加工は簡単ではなく、工業的に難しく、この構造を有したチップは高価となってしまう問題がある。
【0009】
上記のように、安価で簡単な操作により微量な全血サンプルから血球を分離し血漿を定量的に回収する血液分離回収デバイスはなかった。
【0010】
【特許文献1】特開2004−109099号公報
【特許文献2】特開2006−110491号公報
【特許文献3】米国特許第6319719号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/097393号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、安価で簡単な操作により微量な全血サンプルから血球を分離し血漿を定量的に回収する血液分離回収デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の通りである。
(1)遠心分離操作により全血を遠心分離し血漿を回収する際に用いる血液分離回収デバイスであって、第1の母材及び第2の母材から構成され、第1の母材に全血採取部及び血球成分分離部が連通されて形成され、第2の母材に血漿回収部が形成され、前記全血採取部が毛細管現象により全血を採取可能であり、前記血漿回収部が毛細管現象により前記血球成分分離部の血漿を回収可能であり、第1の母材と第2の母材が着脱可能であることを特徴とする血液分離回収デバイス。
(2)前記全血採取部及び前記血漿回収部が管状形状であり、断面積が0.01〜1.2mmである(1)記載の血液分離回収デバイス。
(3)前記全血採取部、前記血球成分分離部、及び前記血漿回収部が高分子又はガラスからなる(1)又は(2)記載の血液分離回収デバイス。
(4)前記血球成分分離部にゲル状物質が具備されている(1)〜(3)いずれか記載の血液分離回収デバイス。
(5)前記血液採取部及び前記血漿回収部の内表面の水に対する接触角が60°以下である(1)〜(4)いずれか記載の血液分離回収デバイス。
(6)前記血液採取部及び前記血漿回収部の内表面の水に対する接触角が60°以下にするための処理方法が、プラズマ処理、コロナ処理、ガンマ線照射処理、又は親水性ポリマー処理のいずれかである(5)記載の血液分離回収デバイス。
(7)前記親水性ポリマー処理方法が、ポリエチレングリコール(PEG)、エバール(EVOH)、ポバール(PVOH)、又はホスホリルコリン基を有するポリマーを成分とする親水性ポリマーを表面コート処理することである(6)記載の血液分離回収デバイス。
【発明の効果】
【0013】
本発明の血液分離回収デバイスを用いることにより、安価で簡単な操作により微量な全血サンプルから血球を分離し血漿を定量的に回収することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図を用いて説明する。
図1に本発明の血液分離回収デバイスの一例の断面の概略平面図を示す。
血液分離回収デバイスは第1の母材1及び第2の母材5から構成され、第1の母材1に全血採取部2及び血球成分分離部3が連通されて形成され、第2の母材5に血漿回収部4が形成され、全血採取部2が毛細管現象により全血を採取可能であり、血漿回収部4が毛細管現象により血球成分分離部3の血漿を回収可能であり、第1の母材1と第2の母材5が着脱可能であることを特徴とする。
【0015】
本発明に使用する第1の母材1及び第2の母材5の材質は、Si、ガラス、プラスチック等が挙げられ、母材1、5は同一材質である必要は無い。このような候補の中で自由な形状に加工しやすく量産が容易であるプラスチック材料が材質として特に好ましい。プラスチックの材質としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、環状ポリオレフィン樹脂(COC)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、ビニル−アセテート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、アクリルニトリル−スチレン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリメチルペンテン、シリコン樹脂、アミノ樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、ポリイミド等の種々のプラスチック材料を選択することが可能である。また、これらのプラスチック材料に、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤等の添加物を適宜混合してもよい。
【0016】
本発明において、母材を所定の形状に加工する加工方法としては任意であり、切削加工、射出成形、溶剤キャスト法、フォトリソグラフィー、レーザーアブレーション、ホットエンボス法などの方法を利用できる。
【0017】
全血採取部2及び血漿回収部3は中空の管状形状であることが好ましく、角柱状、円柱状等の形状が好ましい。全血採取部2及び血漿回収部3は、母材を直接加工して形成しても良く、又は予め形成した管状形状等の部材を母材に接着、嵌合しても良い。
【0018】
全血採取部2及び血漿回収部3の中空部分の断面積は、0.01mm以上1.2mm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05mm以上1.0mm以下である。全血採取部2又は血漿回収部3の断面積が下限値未満では管状形状を作製する際に技術を要し工業的な生産が困難であること、ある特定量の全血を採取および血漿を回収する際に管状形状の長さを長くする必要があり経済的でないこと、毛細管現象を利用して全血を採取および血漿を回収するため細く長い管状形状では特定量を採取および回収するためには時間を要するため好ましくない。全血採取部2又は血漿回収部3の断面積が上限値を超えると表面張力やキャピラリー効果による流体の移動効果が薄くなり全血の採取および血漿を回収するにあたり時間を要し、更には全血の採取および血漿の回収ができなくなるため好ましくない。
【0019】
全血採取部2及び血漿回収部3の水に対する接触角は60°以下であることが好ましく、更に好ましくは40°以下である。全血採取部と血漿回収部の水に対する接触角が上限値を超えると表面張力やキャピラリー効果による流体の移動効果が薄くなり液体が流路を流れる際に時間を要するため好ましくない。全血採取部2と血漿回収部3の水に対する接触角を60°以下にする手法として、プラズマ処理またはコロナ放電処理、ガンマ線照射処理やポリエチレングリコール(PEG)、エバール(EVOH)、ポバール(PVOH)、又はホスホリルコリン基を有するポリマーを成分とする親水性ポリマーを表面コート処理することが好ましいが、血液成分の組成物や組成比を変化させるような悪い影響を与えない方法であれば特に限定しない。
【0020】
図2に全血を採取したときの血液分離回収デバイスの断面の概略平面図を示す。全血サンプルを全血採取部2の先端部に接触させることにより毛細管現象により全血採取部に採取された全血サンプル6を採取することができる。全血採取部2の管の面積および長さを適宜設計することにより特定量の全血サンプルを採取することができる。
【0021】
図3に遠心分離したときの血液分離回収デバイスの断面の概略平面図を示す。全血採取部2で全血サンプルを特定量採取した後、図3に示す遠心力作用方向に遠心操作することにより採取された全血は血球成分分離部3へと移動し、血球成分分離部3で遠心分離された血球成分9と遠心分離された血漿7に分離される。
【0022】
血球成分分離部3には血漿と血球成分の中間に層を成すゲル状物質8が具備されていることが好ましい。ゲル状物質を具備することにより遠心分離後に血球成分と血漿が明確に分離することができ、また、ゲル状物質であるため毛細管現象により血漿回収部へと導入されることがなく血漿回収部で血漿を回収する際に血球成分が混入することを防ぐことができる。
【0023】
遠心分離後、血球成分分離部3で分離された血漿は血漿回収部4の先端から血漿回収部4へと毛細管現象により特定量の血漿が回収される。血球成分分離部3の体積は、全血採取部で採取する全血サンプル6の量と血漿と血球成分の中間に層を成すゲル状物質8の量により適宜設計されるが、全血採取部で採取する全血サンプル6の量と血漿と血球成分の中間に層を成すゲル状物質8の量を合せた体積よりも大きい方が好ましく、より好ましくは同じ量の体積を持つことである。
【0024】
血球成分分離部3の断面積は、血漿回収部4の先端が血球成分分離部3へ入り込む大きさ以上に設計する必要があるが、血球成分分離部3の断面積が大きすぎると遠心分離された血漿7および遠心分離された血球成分9の高さが低くなるため血球回収部4の先端位置の精度が必要となり設計上難しくなるため好ましくない。
【0025】
血漿回収部4が遠心分離された血漿6に接する先端の位置は全血採取部で採取する全血サンプル6の量および血球成分分離部3の体積、血漿と血球成分の中間に層を成すゲル状物質8の体積、血漿回収部で回収される血漿11の体積により適宜設計される。より詳細には、血漿回収部4の先端が遠心分離された血漿7に触れる位置であり、血漿回収部4で回収する特定量の血漿に触れる位置となるように適宜設計される。血漿回収部4の管の面積および長さを設計することにより特定量の血漿を回収することができる。
【0026】
図4に遠心分離後に第1の母材から第2の母材を外して、血漿回収部を取り外したときの第1の母材における全血採取部2および血球成分分離部3の一例を示す。血漿回収部4へ血漿が回収され回収されなかった余剰の血漿10と血漿と血球成分の中間に層を成すゲル状物質8と遠心分離された血球成分9が残される。
【0027】
図5に遠心分離後に第1の母材から第2の母材を外して、血漿回収部を取り外したときの第2の母材における血漿回収部の一例を示す。毛細管現象により血漿回収部に回収された血漿11が特定量回収され取り外される。特定量の血漿が回収された血漿回収部4を使用することにより、測定値に高いバックグランドを生じる可能性があり装置の性能を妨害する可能性のある血球成分を取り除いた形で血液分析をすることができる。
【0028】
これらの血液分離回収デバイスの流路設計は検出対象物、利便性を考慮に適宜設計される。血液分離回収デバイスとして、膜、ポンプ、バルブ、センサー、モーター、ミキサー、ギア、クラッチ、マイクロレンズ、電気回路等を装備したり、複数本のマイクロチャネルを同一基板上に加工することにより複合化したりすることも可能である。
【実施例】
【0029】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
第1及び第2の母材として、環状ポリオレフィン(COC)を使用し切削加工により図1のようなデバイス形状を作製した。血球成分分離部3を断面1.0mm角で5mm高さの管状形状とした。全血採取部2として内径1.0mmφ、外径1.4mm、長さ6mmのガラス管(ガラス管容積:約5μL)を使用し母材1に接着剤により固定した。血漿回収部4として内径0.6mmφ、外形0.9mmφ、長さ7mmのガラス管(ガラス管容積:約2μL)を使用し血漿回収部4のガラス管の先端が血球成分分離部3の入口から2.0mmの長さだけ血球成分分離部へ入った位置となるように母材5に接着剤により固定した。ガラス管に使用したガラスと同じ材質のガラス基板の水との接触角を測定したところ25°であった。指先から無痛針を使用し全血採取部に全血を毛細管現象により採取し、2000Gで30秒間遠心分離操作を実施した。5秒静置後、血漿回収部を血漿分離回収デバイスから取り外したところ血漿回収部に血漿が透明な液体として採取された。採取された血漿の体積を測定したところ2μLであった。
【0031】
(実施例2)
第1の母材1として、ポリプロピレン(PP)を使用し切削加工により図1のようなデバイス形状を作製した。血球成分分離部3を断面1.0mm角で3mm高さの管状形状とした。全血採取部2として内径0.69mmφ、外径0.97mm、長さ8mmのガラス管(ガラス管容積:約3μL)を使用し母材1に接着剤により固定した。血漿回収部4としてポリスチレン(PS)を材料とする第2の母材5に幅0.5mm、深さ0.5mm、長さ4mmの流路(流路容積:約1.0μL)を切削加工で加工し血漿回収部4の流路の先端が血球成分分離部3の入口から1.8mm長さ血球成分分離部へ入った位置となるように母材を加工した。加工した血漿回収部4にホスホリルコリン基を有するポリマーを成分とする親水性ポリマー(日本油脂株式会社製、MPCポリマー)をマイクロ流路に導入しエタノールで洗浄し遠心乾燥することで流路表面に親水性ポリマーを塗布した。別のポリスチレン(PS)基板にMPCポリマーを同様に塗布し水との接触角を測定したところ55°であった。
指先から無痛針を使用し全血採取部に全血を毛細管現象により採取し、500Gで10分間遠心分離操作を実施した。10秒静置後血漿回収部を血漿分離回収デバイスから取り外したところ血漿回収部に血漿が透明な液体として採取された。採取された血漿の体積を測定したところ1.0μLであった。
【0032】
(実施例3)
第1の母材1として、ポリプロピレン(PP)を使用し成形により図1のようなデバイス形状を作製した。血球成分分離部3を断面1.0mm角で7mm高さの管状形状とした。全血採取部2として内径1.0mmφ、外径1.4mm、長さ6mmのガラス管(ガラス管容積:約5μL)を使用し母材1に接着剤により固定した。血漿回収部4としてポリカーボネート(PC)を材料とする第2の母材に幅0.5mm、深さ0.5mm、長さ6mmの流路(流路容積:約1.5μL)を切削加工で加工し、血漿回収部4の流路の先端が血球成分分離部3の入口から1.5mm長さ血球成分分離部へ入った位置となるように母材を加工した。加工した血漿回収部4に酸素プラズマ処理を実施した。プラズマ処理の装置としてブランソン製プラズマ照射機(IPC7150−12436ST)を使用し、プラズマ処理条件として電力700W、酸素流量300sccm、プラズマ照射時間は10分を採用した。別のポリカーボネート(PC)基板に同様の酸素プラズマ処理を実施し水との接触角を測定したところ45°であった。血球成分の中間に層を成すゲル状物質(日本ペイント株式会社製、PS Gel No460)を2μL血液成分分離部に注入した。
指先から無痛針を使用し全血採取部に全血を毛細管現象により採取し、2000Gで60秒間遠心分離操作を実施した。10秒静置後血漿回収部を血漿分離回収デバイスから取り外したところ血漿回収部に血漿が透明な液体として採取された。採取された血漿の体積を測定したところ1.5μLであった。
【0033】
(比較例1)
実施例1と比較し、全血採血部2の材質をガラス管からフッ素チューブへと変更した以外は実施例1と同様の方法で血液分離回収デバイスを作製した。指先から無痛針を使用し全血採取部に全血を毛細管現象により採取しようとしたが毛細管現象で全血を採取できなかったため、全血分離回収デバイスとして機能しなかった。
【0034】
(比較例2)
実施例1と比較し、第1の母材と第2の母材が一体型となり分離できない血液分離デバイスを作製した以外は実施例1と同様の方法で血液分離回収デバイスを作製した。指先から無痛針を使用し全血採取部に全血を毛細管現象により採取し、2000Gで30秒間遠心分離操作を実施した。5秒静置後血漿回収部から血漿を回収するために、シリンジを用いて2μLを血漿回収部から吸い上げたが血球成分が混じり血漿が回収できなかった。
【0035】
(比較例3)
実施例1と比較し、血漿回収部4の材質をガラス管からポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなるチューブへと変更した以外は実施例1と同様の方法で血液分離回収デバイスを作製した。
指先から無痛針を使用し全血採取部に全血を毛細管現象により採取し、2000Gで30秒間遠心分離操作を実施した。5秒静置後血漿回収部を血漿分離回収デバイスから取り外したところ血漿回収部には液体が採取されておらず、血液分離回収デバイスとして機能しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明を用いることにより、安価で簡単な操作により微量な全血サンプルから血球を分離し血漿を定量的に回収する血液分離回収デバイスが提供され、化学、生化学、食品衛生、環境測定、医学分野などの液体サンプルを遠心分離し回収する分野に利用が可能である。より具体的には化学、生化学、医学などの分野における臨床試験、特にポイントオブケア検査または家庭などで使用する血液分離が必要とされる検査に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】血液分離回収デバイスの一例の断面の概略平面図
【図2】全血を採取したときの血液分離回収デバイスの断面の概略平面図
【図3】遠心分離したときの血液分離回収デバイスの断面の概略平面図
【図4】遠心分離後に血漿回収部を取り外したときの全血採取部及び血球成分分離部の断面の概略平面図
【図5】遠心分離後に血漿回収部を取り外したときの血漿回収部の断面の概略平面図
【符号の説明】
【0038】
1 血液分離回収デバイス本体の第1の母材
2 全血採取部
3 血球成分分離部
4 血漿回収部
5 血液分離回収デバイス血漿回収部の第2の母材
6 全血採取部に採取された全血サンプル
7 遠心分離された血漿
8 血漿と血球成分の中間に層を成すゲル状物質
9 遠心分離された血球成分
10 血漿回収部に回収されなかった余剰の血漿
11 血漿回収部に回収された血漿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離操作により全血を遠心分離し血漿を回収する際に用いる血液分離回収デバイスであって、第1の母材及び第2の母材から構成され、第1の母材に全血採取部及び血球成分分離部が連通されて形成され、第2の母材に血漿回収部が形成され、前記全血採取部が毛細管現象により全血を採取可能であり、前記血漿回収部が毛細管現象により前記血球成分分離部の血漿を回収可能であり、第1の母材と第2の母材が着脱可能であることを特徴とする血液分離回収デバイス。
【請求項2】
前記全血採取部及び前記血漿回収部が管状形状であり、断面積が0.01〜1.2mmである請求項1記載の血液分離回収デバイス。
【請求項3】
前記全血採取部、前記血球成分分離部、及び前記血漿回収部が高分子又はガラスからなる請求項1又は2記載の血液分離回収デバイス。
【請求項4】
前記血球成分分離部にゲル状物質が具備されている請求項1〜3いずれか記載の血液分離回収デバイス。
【請求項5】
前記血液採取部及び前記血漿回収部の内表面の水に対する接触角が60°以下である請求項1〜4いずれか記載の血液分離回収デバイス。
【請求項6】
前記血液採取部及び前記血漿回収部の内表面の水に対する接触角が60°以下にするための処理方法が、プラズマ処理、コロナ処理、ガンマ線照射処理、又は親水性ポリマー処理のいずれかである請求項5記載の血液分離回収デバイス。
【請求項7】
前記親水性ポリマー処理方法が、ポリエチレングリコール(PEG)、エバール(EVOH)、ポバール(PVOH)、又はホスホリルコリン基を有するポリマーを成分とする親水性ポリマーを表面コート処理することである請求項6記載の血液分離回収デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−8401(P2009−8401A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167167(P2007−167167)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】