血液分離用具及び血液の分離方法
【課題】 広範囲のヘマトクリット値の血液に対応でき、また、どのような保持材であっても、溶血や血球もれを生じることなく、正確な検査をすることができる血液分離用具、及び血液の分離方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の血液分離用具は、血液を透過させず、血液を保持できる血液受容部を備えた血液受容材と、血液から血球を分離できる血球分離材と、血漿又は血清を保持できる血漿又は血清保持材とを備えており、使用時に前記血液受容材の血液受容部と血球分離材とが対向して隣接可能、かつ前記血球分離材と血漿又は血清保持材とが接触可能なものである。また、本発明の血液の分離方法は、前記血液分離用具の血液受容部に、採取した血液を置いた後、血液受容部と血球分離材とを対向して隣接させるとともに、血球分離材と血漿又は血清保持材とを接触させる方法である。
【解決手段】 本発明の血液分離用具は、血液を透過させず、血液を保持できる血液受容部を備えた血液受容材と、血液から血球を分離できる血球分離材と、血漿又は血清を保持できる血漿又は血清保持材とを備えており、使用時に前記血液受容材の血液受容部と血球分離材とが対向して隣接可能、かつ前記血球分離材と血漿又は血清保持材とが接触可能なものである。また、本発明の血液の分離方法は、前記血液分離用具の血液受容部に、採取した血液を置いた後、血液受容部と血球分離材とを対向して隣接させるとともに、血球分離材と血漿又は血清保持材とを接触させる方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液分離用具及び血液の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種疾患の診断等のために生化学検査が広く行われている。この生化学検査においては、赤血球等の血球による影響を排除するために、血液から血漿又は血清を分離している。このように血液から血漿又は血清を分離する方法として、血液を凝固させた後に遠心分離する方法、分離材により分離する方法などが知られている。これらの中でも分離材により分離する方法によれば、時間がかからず、簡易に行なうことができるため、医療施設内における生化学検査以外に、遠隔臨床検査システムにおいても使用することができる。この遠隔臨床検査システムは、自宅で患者自らが採血し、採血した血液を血液分離用具の分離材に置き、分離材によって濾過された血漿又は血清を医療施設へ送付し、検査を行なうシステムである。
【0003】
このような血液分離用具は、血漿又は血清のみを濾過する分離材(血球分離材)と、分離材により濾過分離された血漿又は血清を保持する保持材とを備えている。このような血液検査用用具における分離材として非繊維質微多孔性膜や繊維質微多孔性膜(ガラスフィルター等)などを使用し、保持材としてろ紙や多孔質フィルムなどを使用するのが一般的であった(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−249699号公報(段落番号0014、0015、実施例1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような血液分離用具においては、高ヘマトクリット値の血液を分離材に置くと、血漿中に溶血や血球もれがあり、正確な検査ができない場合があった。また、保持材として吸収力の高いものを使用した場合にも同様に、血漿中に溶血や血球もれがあり、正確な検査ができない場合があった。
【0006】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、広範囲のヘマトクリット値の血液に対応でき、また、どのような保持材であっても、溶血や血球もれを生じることなく、正確な検査をすることができる血液分離用具、及び血液の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、「血液を透過させず、血液を保持できる血液受容部を備えた血液受容材と、血液から血球を分離できる血球分離材と、血漿又は血清を保持できる血漿又は血清保持材とを備えており、使用時に前記血液受容材の血液受容部と血球分離材とが対向して隣接可能、かつ前記血球分離材と血漿又は血清保持材とが接触可能であることを特徴とする血液分離用具。」である。
【0008】
本発明の請求項2にかかる発明は、「血球分離材の一方の面における平均孔径と他方の面における平均孔径とが異なり、血球分離材の平均孔径のより大きい面が血液受容材の血液受容部と対向して隣接可能であることを特徴とする、請求項1記載の血液分離用具。」である。
【0009】
本発明の請求項3にかかる発明は、「血漿又は血清保持材が、平均繊維径が2μm以下、かつ全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下の極細繊維集合体からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の血液分離用具。」である。
【0010】
本発明の請求項4にかかる発明は、「血漿又は血清保持材が、静電紡糸法により製造された極細繊維集合体からなることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の血液分離用具。」である。
【0011】
本発明の請求項5にかかる発明は、「請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の血液分離用具の血液受容部に、採取した血液を置いた後、血液受容部と血球分離材とを対向して隣接させるとともに、血球分離材と血漿又は血清保持材とを接触させることを特徴とする、血液の分離方法。」である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1にかかる血液分離用具は、血液受容部が血液を透過させず、血液を保持できるため、血液受容部に採取した血液を置いた後に、血液受容部と血球分離材とを対向して隣接させることにより、血液受容部の血液が血球分離材によって吸い上げられるとともに、血漿又は血清のみが濾過分離される。そして、血球分離材によって濾過分離された血漿又は血清は血球分離材に接触した血漿又は血清保持材によって保持される。このような血液分離用具にあっては、血液を吸い上げることによって濾過分離することになるが、血球の比重が高く血漿又は血清の比重が低いことから、血漿又は血清を吸い上げやすいことに起因するのか、溶血や血球もれを生じることなく、正確な検査をすることができることを見出した。
【0013】
本発明の請求項2にかかる血液分離用具は、血球分離材の平均孔径のより大きい面が血液受容部と対向して隣接できるため、血液を速やかに吸収できるとともに、吸い上げられるにしたがって孔径が小さくなるため、効果的に血漿又は血清を濾過分離することができる。
【0014】
本発明の請求項3にかかる血液分離用具は、孔径が揃っており、かつ孔径の小さい血漿又は血清保持材であるため、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れており、結果として採取率の高いものである。そのため、1〜2滴の少量の血液で検査することができ、患者の苦痛を和らげることができる。
【0015】
本発明の請求項4にかかる血液分離用具は、静電紡糸法により孔径が揃っており、かつ孔径の小さい血漿又は血清の保持材を製造できるため、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れている。また、通常、溶融紡糸法では作製できない、血漿又は血清との馴染みの良い樹脂であっても、静電紡糸法によれば血漿又は血清の保持材を製造できるため、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れていることができる。更には、静電紡糸法により製造した血漿又は血清の保持材は繊維間の接着が緩やかで、血漿又は血清を保持材が吸収した際に膨らみやすいため、吸収時に血球分離材との密着性が高まり、更に吸収性が良くなる。
【0016】
本発明の請求項5にかかる血液の分離方法は、上記の血液分離用具を使用し、血液を吸い上げることによって血漿又は血清を濾過分離する方法であるため、溶血や血球もれを生じることなく、正確な検査をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の血液分離用具について、血液分離用具使用前の模式的斜視図である図1、図1におけるI−I線切断面図である図2、及び血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図である図3〜図6をもとに説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明の血液分離用具1は血液を透過させず、血液を保持できる血液受容部13を備えた血液受容材10と、血液から血球を分離できる血球分離材20と、血漿又は血清を保持できる血漿又は血清保持材30とを備えている。
【0019】
図1及び図2の血液分離用具1においては、血液受容材10は段差を有するものの上面から下面へ貫通する中空孔を有する円筒状の外枠12と、前記段差に載置されたフィルム11からなる。このフィルム11とそれを取り囲む外枠12の内壁面が血液受容部13を構成する。なお、このフィルム11の外径は外枠12の径の大きい内径とほぼ同じであるため、血液受容部13に血液を置いたとしても、血液を透過させることなく、血液を保持することができる。
【0020】
血球分離材20は上面から下面へ貫通する中空孔を有するたて方向断面T字状の支持体21の下面側に固定された状態にある。なお、前記支持体21は下面の直径が前記外枠12の径の大きい内径よりもやや小さく、しかも前記外枠12の上面から段差までの距離よりもやや短い高さをもつ円筒状突起部21aと、前記円筒状突起部の上面側端部から外側に伸び、外径が前記外枠12の外径とほぼ一致するつば部21bとから構成されている。そのため、使用時に支持体21の円筒状突起部21aを前記外枠12の中空孔に挿入することによって、血液受容部13と血球分離材20とが向かい合って隣接することができる。
【0021】
血漿又は血清保持材30は断面T字状の保持体31の下面側に固定された状態にある。この保持体31は下面の直径が前記支持体21の内径よりもやや小さく、しかも前記支持体21の上面から血液分離材20までの距離とほぼ同じ高さをもつ円筒状突起部31aと、前記円筒状突起部31aの上面側端部から外側に伸び、外径が前記外枠12の外径とほぼ一致するつば部31bとから構成されている。そのため、使用時に保持体31の円筒状突起部31aを前記支持体21の中空孔に挿入することによって、血球分離材20と血漿又は血清保持材30とが接触することができる。
【0022】
このような血液分離用具1を用いて血液を分離する場合、まず、血液受容材10の血液受容部13に採取した血液を置く(図3)。次いで、血球分離材20を支持する支持体21の下面側を血液受容材10を構成する外枠12の中空孔に挿入することによって、血液受容部13と血球分離材20とを対向して隣接させ、血液受容部13の血液を血球分離材20によって吸い上げるとともに、血漿又は血清のみを濾過分離する(図4)。次いで、保持体31の下面側を支持体21の中空孔に挿入することによって、血球分離材20と血漿又は血清保持材30とを接触させ、血漿又は血清保持材30によって血漿又は血清を保持する(図5)。そして、保持体31及び血漿又は血清保持材30を支持体21の中空孔から取り出し、乾燥する(図6)。
【0023】
本発明の血液分離用具1は上記のような構造からなり、上記のようにして血液受容部13の血液を重力に逆らって、血球分離材20によって吸い上げているため、血球の比重が高く血漿又は血清の比重が血球より低いことから、高ヘマトクリット値の血液や、血漿又は血清保持材30が吸収力の高い場合であっても、血漿中に溶血や血球もれを生じることなく、正確な検査をすることができる。なお、上述の血液分離用具1においては、血液受容部13の一部としてフィルム11を使用し、フィルム11を載置しただけで固定していないため、血球分離材20の支持体21を挿入し、血液を吸い上げるにしたがって、フィルム11が浮上する。そのため、血球分離材20とフィルム11とが一定間隔を保ち、血球分離材20の全面を使って血漿又は血清を均一に濾過分離することができる。
【0024】
このような本発明の血液分離用具1は、例えば、外枠12、フィルム11、支持体21、血球分離材20、保持体31、及び血漿又は血清保持材30をそれぞれ準備した後、外枠12の段差にフィルム11を載置し、支持体21に血球分離材を固定し、保持体31に血漿又は血清保持材30を固定することによって製造することができる。
【0025】
上述の図面においては、血液受容材10は外枠12とフィルム11とから構成されているが、血液を透過させず、血液を保持できるのであれば、フィルム11である必要はない。なお、外枠12とフィルム11とを使用する必要はなく、外枠12自体が中空孔が貫通していないことによって血液受容部13を形成する、容器状のものであっても良い。また、上述の説明においては、血液受容材10、血球分離材20及び血漿又は血清保持材30が完全に分離した状態にあるが、少なくとも2つの材料が図示しない材料によって連結された状態にあっても良い。このような状態にあることによって、材料の紛失を防ぐことができる。
【0026】
また、血液分離用具1を使用する際に、上述の説明においては、血球分離材20を血液受容部13と対向して隣接させ、血液を血球分離材20によって吸い上げた後に、血漿又は血清保持材30を接触させているが、保持体31の下面側を支持体21の中空孔に挿入し、血球分離材20と血漿又は血清保持材30とを接触させた状態で、支持体21の下面側を外枠12の中空孔に挿入しても同様に血漿又は血清を分離濾過することができる。
【0027】
本発明の血液分離用具1は上述のような構成からなるが、血球分離材20は一方の面における平均孔径と他方の面における平均孔径とが異なり、平均孔径のより大きい面が血液受容材10の血液受容部13と対向して隣接できるのが好ましい。血液を速やかに吸い上げることができ、吸い上げるにしたがって平均孔径が小さくなるため、効果的に血漿又は血清を濾過分離することができるためである。このような血球分離材としては、例えば、非対称性多孔質膜(例えば、BTS−SP300(ポール社製))や、ガラスフィルター、メルトブロー不織布、或いは静電紡糸不織布を平均孔径が異なるように2枚以上積層したもの、などを挙げることができる。なお、血液を吸い上げやすいように、平均孔径のより大きい面の平均孔径が30〜200μmであり、血球もれが生じないように、平均孔径の小さい面の平均孔径が0.1〜20μmであるのが好ましい。この「平均孔径」は200個の孔の直径の算術平均値を意味し、孔の直径は血液分離材の表面における電子顕微鏡写真で観察できる孔の最も長く採ることのできる長さを意味する。例えば、孔が楕円形状である場合には、長径が孔の直径に該当する。
【0028】
血漿又は血清保持材30は、平均繊維径が2μm以下、かつ全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下の極細繊維集合体からなるのが好ましい。孔径が揃っており、かつ孔径が小さいため、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れ、採取率が高く、1〜2滴の少量の血液で検査することができ、患者の苦痛を和らげることができるためである。本発明の血液分離用具1は血漿又は血清の吸収性に優れるものであっても、溶血や血球もれを生じることなく、血漿又は血清を分離し、保持することができるため、前記極細繊維集合体であっても好適に使用することができる。
【0029】
極細繊維の平均繊維径が小さければ小さい程、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れているため、極細繊維の平均繊維径は1.5μm以下であるのが好ましく、1.2μm以下であるのがより好ましく、0.8μm以下であるのが更に好ましい。なお、極細繊維の平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、1nm程度が適当である。本発明における極細繊維の「繊維径」は、血漿又は血清保持材30の断面方向における電子顕微鏡写真から測定して得られる極細繊維の横断面における直径を意味し、極細繊維の横断面形状が非円形である場合には、横断面積と同じ面積の円の直径を極細繊維の繊維径とみなす。また、極細繊維の「平均繊維径」は極細繊維100本の繊維径の算術平均値をいう。
【0030】
保持材を構成する極細繊維は連続繊維であっても、非連続繊維であっても良いが、連続繊維であると、血液分離用具1の作製時又は使用時に極細繊維の脱落が生じにくいため好適である。また、保持材を構成する極細繊維はどのような樹脂から構成されていても良いが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリアミドなど血漿又は血清の吸収性の良いものを使用することができる。また、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド等の撥水性樹脂であっても、紫外線照射、プラズマ照射、或いは親水性樹脂を極細繊維表面に付与するなどの親水化処理を実施することによって使用することができる。なお、血漿又は血清の検査項目としてタンパクが含まれている場合には、検査結果に影響を及ぼさないように、タンパク吸着性の低い樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水化処理したポリフッ化ビニリデンなど)からなるのが好ましい。タンパク吸着を防ぐために、リン脂質系高分子などの低タンパク吸着素材を繊維表面に付与しても良い。以上から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水化処理したポリフッ化ビニリデンは吸収性が高いことのみならず、低タンパク吸着性といった点から特に好ましい。なお、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンは水溶性であるため、架橋させて不溶化させるのが好ましい。更に、極細繊維は上述のような樹脂1種類からなる必要はなく、2種類以上の樹脂が混合又は複合されていても良い。
【0031】
保持材は極細繊維集合体の全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下であるのが好ましいが、この径が小さければ小さい程、毛細管作用が働きやすく、吸収性及び保持性に優れているため、この径は3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのが更に好ましく、1μm以下であるのが更に好ましい。他方、前記径の下限値は特に限定するものではない。なお、全部の孔の体積の95%を占める孔の径を前記値としているのは、仮に5%程度前記値を超えるような大きな孔があったとしても、残りの95%の体積を占める孔によって十分に毛細管作用が働き、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れているためである。また、本発明における「全部の孔の体積の95%を占める孔の径」は、ASTM E1294−89に規定されている「自動細孔径分布測定機を使ったメンブレンフィルターの細孔径の特性に対する標準試験方法」にしたがって孔径を測定し、最小の孔径から積算して体積の95%が含まれる孔径の最大値をいう。
【0032】
保持材は上述のような極細繊維の集合体からなるのが好ましいが、静電紡糸法により製造されたものであると、孔径が揃っており、かつ孔径の小さい保持材であることができ、血漿又は血清の吸収性及び保持性が優れているため好適である。また、好適であるポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンからなる極細繊維であっても紡糸できるため、このような極細繊維を紡糸した場合には血漿又は血清の吸収性及び保持性が更に優れている。更に、静電紡糸法により製造した保持材は繊維間の接着が緩やかで、血漿又は血清を保持材が吸収した際に膨らみやすいため、吸収時に血球分離材との密着性が高まり、更に吸収性が良くなるという効果も奏する。この静電紡糸法とは樹脂を溶媒に溶解させた紡糸溶液の溶媒を揮発させるとともに電気的に延伸して繊維化する方法であり、従来から公知の方法である。
【0033】
保持材の目付及び厚さは特に限定するものではないが、目付は血漿又は血清の保持性に優れているように、5g/m2以上であるのが好ましい。厚さは血球分離材と密着しやすいクッション性を有するように、50μm以上であるのが好ましく、100μm以上であるのがより好ましい。保持材が1枚の極細繊維集合体から構成されている場合には、1枚の極細繊維集合体の厚さが前記値の範囲にあるのが好ましく、2枚以上の極細繊維集合体から構成されている場合には、積層された極細繊維集合体の厚さが前記値の範囲にあるのが好ましい。この「厚さ」は10kPa加圧時の厚さを10点で測定し、その10点の算術平均値をいう。
【0034】
また、保持材は血漿又は血清の保持量が多いように、またクッション性に優れ血球分離材との密着性に優れるように、空隙率が30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのが更に好ましく、80%以上であるのが更に好ましい。他方、保持材の機械的強度に優れているように、空隙率は98%以下であるのが好ましく、95%以下であるのがより好ましく、90%以下であるのが更に好ましい。なお、「空隙率(P)」は次の式から算出される値をいう。
P={1−W/(T×d)}×100
ここで、Wは保持材の目付(g/m2)を意味し、Tは保持材の厚さ(μm)を意味し、dは繊維構成樹脂の密度(g/cm3)をそれぞれ意味する。
【0035】
なお、極細繊維集合体の全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下の血漿又は血清保持材30は、静電紡糸法により紡糸する際に、紡糸溶液の濃度、粘度、溶媒の種類、ノズル先端と捕集板の距離、印加電圧、紡糸環境の温度、湿度、ノズル先端からの紡糸溶液の吐出量などの条件を適宜調整することによって製造することができる。例えば、水溶性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール)の場合、紡糸溶液の濃度は10〜20wt%、粘度は100〜12000mPa・s、溶媒は純水、ノズル先端と捕集板との距離は10〜20cm、印加電圧は15〜20kV、紡糸環境の温度20〜30℃、湿度40〜60%RH、ノズル先端からの紡糸溶液の吐出量0.1〜1.0g/時間とすることにより製造しやすい。また、水と混和する有機溶剤(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解する樹脂の場合、紡糸溶液の濃度は10〜30wt%、粘度は100〜5000mPa・s、ノズル先端と捕集板との距離は5〜15cm、印加電圧は10〜20kV、紡糸環境の温度20〜30℃、湿度10〜40%RH、ノズル先端からの紡糸溶液の吐出量0.1〜3.0g/時間程度とすることにより製造しやすい。
【0036】
なお、血漿又は血清保持材30は上述のような極細繊維集合体からなるものに限定されず、セルロース繊維、セルロースアセテート繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、及び/又はポリアクリロニトリル繊維からなる繊維集合体であっても使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
上面における内径が1.15cmで、下面における内径が0.91cmで、上面から0.82cmの位置に段差を有する中空孔を有する円筒状の外枠12(外径:1.53cm)と、直径1.14cmのポリエステルフィルム11(厚さ:100μm)を用意した。そして、前記段差に前記フィルム11を載置して血液受容材10とした。
【0039】
また、外径が1.10cmで、高さが0.75cmの円筒状突起部21aと、前記円筒状突起部の上面側端部から外側に伸びるつば部21b(外径:1.54cm、高さ:0.36cm)とを有し、しかも前記つば部21bの上面から円筒状突起部21aの下面へ貫通する内径が0.90cmの中空孔を有する断面T字状の支持体21と、直径が1.10cm、平均孔径の大きい面における平均孔径が100μmで、平均孔径の小さい面における平均孔径が2μmの非対称性多孔質膜(BTS−SP300(ポール社製))を用意した。そして、前記支持体21の円筒状突起部21a下面に前記非対称性多孔質膜の平均孔径の小さい面が当接するように、接着剤で固定し、分離材−支持体複合材を形成した。
【0040】
更に、外径が0.86cmで、高さが1.07cmの円筒状突出部31aと、前記円筒状突起部31aの上面側端部から外側に伸びるつば部31b(外径:1.22cm、高さ:0.72cm)とを有する、断面T字状の保持体31と、静電紡糸法により紡糸し、集積させた後に、温度180℃に設定したオーブン中で10分間熱処理をして架橋させた、直径が0.8cmのポリビニルアルコール極細連続繊維集合体(=血漿又は血清保持材30、平均繊維径:0.22μm、全部の孔の体積の95%を占める孔の径:0.6μm以下、目付:140g/m2、厚さ:430μm、空隙率:75%)を用意した。そして、前記保持体31の下面に前記ポリビニルアルコール極細連続繊維集合体を接着剤で固定し、保持材−保持体複合材を形成した。以上の血液受容材、分離材−支持体複合材及び保持材−保持体複合材から血液分離用具を構成した。
【0041】
この血液分離用具の血液受容材10にヘマトクリット値が41%の血液50μLを入れた後、上記分離材−支持体複合材の中空孔に上記保持材−保持体複合材を挿入し、血球分離材20と保持材30とが接触した状態で、分離材−支持体複合材の支持体21の下面側を血液受容材10を構成する外枠12の中空孔に挿入して、血球分離を行い、保持材によって血漿を保持させた。その後、保持材−保持体複合材を抜き出し、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、保持材の血漿保持前後における質量変化から保持材に吸収された血漿量(bpm、単位:mg)を算出した。そして、次の式から血漿採取率(bpr)を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
bpr=[(bpm/1.03)/{50×(1−H/100)}]×100
ここで、bprは血漿採取率(%)、bpmは保持材に吸収された血漿量(mg)、Hはヘマトクリット値(%)、1.03は血漿の平均比重をそれぞれ意味する。
【0042】
(実施例2)
直径が0.80cmの静電紡糸法により製造したポリアクリロニトリル極細連続繊維集合体(平均繊維径:0.4μm、全部の孔の体積の95%を占める孔の径:1.6μm、目付:118g/m2、厚さ:400μm、空隙率:73%)を血漿又は血清保持材30として用いて、保持材−保持体複合材を形成したこと以外は実施例1と同様にして、血液受容材、分離材−支持体複合材及び保持材−保持体複合材から血液分離用具を構成した。
【0043】
そして、実施例1と同様にして、ヘマトクリット値が41%の血液から血漿を分離濾過し、保持材によって血漿を保持させ、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0044】
(実施例3)
実施例2と同じ血液分離用具を用い、実施例1と同様にして、ヘマトクリット値が58%の血液から血漿を分離濾過し、保持材によって血漿を保持させ、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0045】
(実施例4)
実施例1と同じ血液分離用具を用い、実施例1と同様にして、ヘマトクリット値が35%の血液から血漿を分離濾過し、保持材によって血漿を保持させ、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0046】
(実施例5)
実施例2と同じ血液分離用具を用い、実施例1と同様にして、ヘマトクリット値が35%の血液から血漿を分離濾過し、保持材によって血漿を保持させ、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0047】
(比較例1)
実施例1の分離材−支持体複合材の中空孔に保持材−保持体複合材を挿入し、血球分離材20と保持材30とが接触した状態のものを、実施例1の血液受容材10を構成するフィルム11を取り除いた外枠12の中空孔に挿入し、血液分離用具とした。この血液分離用具を、上から外枠12、分離材20、保持材30となるように置いた後、分離材の上からヘマトクリット値が41%の血液を50μL滴下して血球分離を行い、保持材によって血漿を保持させた。その後、保持材−保持体複合材を分離し、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0048】
(比較例2)
ヘマトクリット値が58%の血液を滴下したこと以外は比較例1と全く同様にして血球分離を行い、保持材によって血漿を保持させた。その後、保持材−保持体複合材を分離し、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0049】
(比較例3)
実施例2の分離材−支持体複合材の中空孔に保持材−保持体複合材を挿入し、血球分離材20と保持材30とが接触した状態のものを、実施例2の血液受容材10を構成するフィルム11を取り除いた外枠12の中空孔に挿入し、血液分離用具とした。この血液分離用具を、上から外枠12、分離材20、保持材30となるように置いた後、分離材の上からヘマトクリット値が58%の血液を50μL滴下して血球分離を行い、保持材によって血漿を保持させた。その後、保持材−保持体複合材を分離し、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0050】
【表1】
保持材:PVA・・ポリビニルアルコール、PAN・・ポリアクリロニトリル
【0051】
表1から明らかなように、本発明の血液分離用具は高ヘマトクリット値の血液を使用した場合や吸収力の強い保持材を使用した場合であっても、溶血や血球もれを生じることなく、血漿を得ることができるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】血液分離用具使用前の模式的斜視図
【図2】図1におけるI−I線切断面図
【図3】血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図
【図4】血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図
【図5】血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図
【図6】血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図
【符号の説明】
【0053】
1 血液分離用具
10 血液受容材
11 フィルム
12 外枠
13 血液受容部
20 血球分離材
21 支持体
21a 円筒状突起部
21b つば部
30 血漿又は血清保持材
31 保持体
31a 円筒状突起部
31b つば部
【技術分野】
【0001】
本発明は血液分離用具及び血液の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から各種疾患の診断等のために生化学検査が広く行われている。この生化学検査においては、赤血球等の血球による影響を排除するために、血液から血漿又は血清を分離している。このように血液から血漿又は血清を分離する方法として、血液を凝固させた後に遠心分離する方法、分離材により分離する方法などが知られている。これらの中でも分離材により分離する方法によれば、時間がかからず、簡易に行なうことができるため、医療施設内における生化学検査以外に、遠隔臨床検査システムにおいても使用することができる。この遠隔臨床検査システムは、自宅で患者自らが採血し、採血した血液を血液分離用具の分離材に置き、分離材によって濾過された血漿又は血清を医療施設へ送付し、検査を行なうシステムである。
【0003】
このような血液分離用具は、血漿又は血清のみを濾過する分離材(血球分離材)と、分離材により濾過分離された血漿又は血清を保持する保持材とを備えている。このような血液検査用用具における分離材として非繊維質微多孔性膜や繊維質微多孔性膜(ガラスフィルター等)などを使用し、保持材としてろ紙や多孔質フィルムなどを使用するのが一般的であった(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−249699号公報(段落番号0014、0015、実施例1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような血液分離用具においては、高ヘマトクリット値の血液を分離材に置くと、血漿中に溶血や血球もれがあり、正確な検査ができない場合があった。また、保持材として吸収力の高いものを使用した場合にも同様に、血漿中に溶血や血球もれがあり、正確な検査ができない場合があった。
【0006】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、広範囲のヘマトクリット値の血液に対応でき、また、どのような保持材であっても、溶血や血球もれを生じることなく、正確な検査をすることができる血液分離用具、及び血液の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、「血液を透過させず、血液を保持できる血液受容部を備えた血液受容材と、血液から血球を分離できる血球分離材と、血漿又は血清を保持できる血漿又は血清保持材とを備えており、使用時に前記血液受容材の血液受容部と血球分離材とが対向して隣接可能、かつ前記血球分離材と血漿又は血清保持材とが接触可能であることを特徴とする血液分離用具。」である。
【0008】
本発明の請求項2にかかる発明は、「血球分離材の一方の面における平均孔径と他方の面における平均孔径とが異なり、血球分離材の平均孔径のより大きい面が血液受容材の血液受容部と対向して隣接可能であることを特徴とする、請求項1記載の血液分離用具。」である。
【0009】
本発明の請求項3にかかる発明は、「血漿又は血清保持材が、平均繊維径が2μm以下、かつ全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下の極細繊維集合体からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の血液分離用具。」である。
【0010】
本発明の請求項4にかかる発明は、「血漿又は血清保持材が、静電紡糸法により製造された極細繊維集合体からなることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の血液分離用具。」である。
【0011】
本発明の請求項5にかかる発明は、「請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の血液分離用具の血液受容部に、採取した血液を置いた後、血液受容部と血球分離材とを対向して隣接させるとともに、血球分離材と血漿又は血清保持材とを接触させることを特徴とする、血液の分離方法。」である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1にかかる血液分離用具は、血液受容部が血液を透過させず、血液を保持できるため、血液受容部に採取した血液を置いた後に、血液受容部と血球分離材とを対向して隣接させることにより、血液受容部の血液が血球分離材によって吸い上げられるとともに、血漿又は血清のみが濾過分離される。そして、血球分離材によって濾過分離された血漿又は血清は血球分離材に接触した血漿又は血清保持材によって保持される。このような血液分離用具にあっては、血液を吸い上げることによって濾過分離することになるが、血球の比重が高く血漿又は血清の比重が低いことから、血漿又は血清を吸い上げやすいことに起因するのか、溶血や血球もれを生じることなく、正確な検査をすることができることを見出した。
【0013】
本発明の請求項2にかかる血液分離用具は、血球分離材の平均孔径のより大きい面が血液受容部と対向して隣接できるため、血液を速やかに吸収できるとともに、吸い上げられるにしたがって孔径が小さくなるため、効果的に血漿又は血清を濾過分離することができる。
【0014】
本発明の請求項3にかかる血液分離用具は、孔径が揃っており、かつ孔径の小さい血漿又は血清保持材であるため、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れており、結果として採取率の高いものである。そのため、1〜2滴の少量の血液で検査することができ、患者の苦痛を和らげることができる。
【0015】
本発明の請求項4にかかる血液分離用具は、静電紡糸法により孔径が揃っており、かつ孔径の小さい血漿又は血清の保持材を製造できるため、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れている。また、通常、溶融紡糸法では作製できない、血漿又は血清との馴染みの良い樹脂であっても、静電紡糸法によれば血漿又は血清の保持材を製造できるため、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れていることができる。更には、静電紡糸法により製造した血漿又は血清の保持材は繊維間の接着が緩やかで、血漿又は血清を保持材が吸収した際に膨らみやすいため、吸収時に血球分離材との密着性が高まり、更に吸収性が良くなる。
【0016】
本発明の請求項5にかかる血液の分離方法は、上記の血液分離用具を使用し、血液を吸い上げることによって血漿又は血清を濾過分離する方法であるため、溶血や血球もれを生じることなく、正確な検査をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の血液分離用具について、血液分離用具使用前の模式的斜視図である図1、図1におけるI−I線切断面図である図2、及び血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図である図3〜図6をもとに説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本発明の血液分離用具1は血液を透過させず、血液を保持できる血液受容部13を備えた血液受容材10と、血液から血球を分離できる血球分離材20と、血漿又は血清を保持できる血漿又は血清保持材30とを備えている。
【0019】
図1及び図2の血液分離用具1においては、血液受容材10は段差を有するものの上面から下面へ貫通する中空孔を有する円筒状の外枠12と、前記段差に載置されたフィルム11からなる。このフィルム11とそれを取り囲む外枠12の内壁面が血液受容部13を構成する。なお、このフィルム11の外径は外枠12の径の大きい内径とほぼ同じであるため、血液受容部13に血液を置いたとしても、血液を透過させることなく、血液を保持することができる。
【0020】
血球分離材20は上面から下面へ貫通する中空孔を有するたて方向断面T字状の支持体21の下面側に固定された状態にある。なお、前記支持体21は下面の直径が前記外枠12の径の大きい内径よりもやや小さく、しかも前記外枠12の上面から段差までの距離よりもやや短い高さをもつ円筒状突起部21aと、前記円筒状突起部の上面側端部から外側に伸び、外径が前記外枠12の外径とほぼ一致するつば部21bとから構成されている。そのため、使用時に支持体21の円筒状突起部21aを前記外枠12の中空孔に挿入することによって、血液受容部13と血球分離材20とが向かい合って隣接することができる。
【0021】
血漿又は血清保持材30は断面T字状の保持体31の下面側に固定された状態にある。この保持体31は下面の直径が前記支持体21の内径よりもやや小さく、しかも前記支持体21の上面から血液分離材20までの距離とほぼ同じ高さをもつ円筒状突起部31aと、前記円筒状突起部31aの上面側端部から外側に伸び、外径が前記外枠12の外径とほぼ一致するつば部31bとから構成されている。そのため、使用時に保持体31の円筒状突起部31aを前記支持体21の中空孔に挿入することによって、血球分離材20と血漿又は血清保持材30とが接触することができる。
【0022】
このような血液分離用具1を用いて血液を分離する場合、まず、血液受容材10の血液受容部13に採取した血液を置く(図3)。次いで、血球分離材20を支持する支持体21の下面側を血液受容材10を構成する外枠12の中空孔に挿入することによって、血液受容部13と血球分離材20とを対向して隣接させ、血液受容部13の血液を血球分離材20によって吸い上げるとともに、血漿又は血清のみを濾過分離する(図4)。次いで、保持体31の下面側を支持体21の中空孔に挿入することによって、血球分離材20と血漿又は血清保持材30とを接触させ、血漿又は血清保持材30によって血漿又は血清を保持する(図5)。そして、保持体31及び血漿又は血清保持材30を支持体21の中空孔から取り出し、乾燥する(図6)。
【0023】
本発明の血液分離用具1は上記のような構造からなり、上記のようにして血液受容部13の血液を重力に逆らって、血球分離材20によって吸い上げているため、血球の比重が高く血漿又は血清の比重が血球より低いことから、高ヘマトクリット値の血液や、血漿又は血清保持材30が吸収力の高い場合であっても、血漿中に溶血や血球もれを生じることなく、正確な検査をすることができる。なお、上述の血液分離用具1においては、血液受容部13の一部としてフィルム11を使用し、フィルム11を載置しただけで固定していないため、血球分離材20の支持体21を挿入し、血液を吸い上げるにしたがって、フィルム11が浮上する。そのため、血球分離材20とフィルム11とが一定間隔を保ち、血球分離材20の全面を使って血漿又は血清を均一に濾過分離することができる。
【0024】
このような本発明の血液分離用具1は、例えば、外枠12、フィルム11、支持体21、血球分離材20、保持体31、及び血漿又は血清保持材30をそれぞれ準備した後、外枠12の段差にフィルム11を載置し、支持体21に血球分離材を固定し、保持体31に血漿又は血清保持材30を固定することによって製造することができる。
【0025】
上述の図面においては、血液受容材10は外枠12とフィルム11とから構成されているが、血液を透過させず、血液を保持できるのであれば、フィルム11である必要はない。なお、外枠12とフィルム11とを使用する必要はなく、外枠12自体が中空孔が貫通していないことによって血液受容部13を形成する、容器状のものであっても良い。また、上述の説明においては、血液受容材10、血球分離材20及び血漿又は血清保持材30が完全に分離した状態にあるが、少なくとも2つの材料が図示しない材料によって連結された状態にあっても良い。このような状態にあることによって、材料の紛失を防ぐことができる。
【0026】
また、血液分離用具1を使用する際に、上述の説明においては、血球分離材20を血液受容部13と対向して隣接させ、血液を血球分離材20によって吸い上げた後に、血漿又は血清保持材30を接触させているが、保持体31の下面側を支持体21の中空孔に挿入し、血球分離材20と血漿又は血清保持材30とを接触させた状態で、支持体21の下面側を外枠12の中空孔に挿入しても同様に血漿又は血清を分離濾過することができる。
【0027】
本発明の血液分離用具1は上述のような構成からなるが、血球分離材20は一方の面における平均孔径と他方の面における平均孔径とが異なり、平均孔径のより大きい面が血液受容材10の血液受容部13と対向して隣接できるのが好ましい。血液を速やかに吸い上げることができ、吸い上げるにしたがって平均孔径が小さくなるため、効果的に血漿又は血清を濾過分離することができるためである。このような血球分離材としては、例えば、非対称性多孔質膜(例えば、BTS−SP300(ポール社製))や、ガラスフィルター、メルトブロー不織布、或いは静電紡糸不織布を平均孔径が異なるように2枚以上積層したもの、などを挙げることができる。なお、血液を吸い上げやすいように、平均孔径のより大きい面の平均孔径が30〜200μmであり、血球もれが生じないように、平均孔径の小さい面の平均孔径が0.1〜20μmであるのが好ましい。この「平均孔径」は200個の孔の直径の算術平均値を意味し、孔の直径は血液分離材の表面における電子顕微鏡写真で観察できる孔の最も長く採ることのできる長さを意味する。例えば、孔が楕円形状である場合には、長径が孔の直径に該当する。
【0028】
血漿又は血清保持材30は、平均繊維径が2μm以下、かつ全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下の極細繊維集合体からなるのが好ましい。孔径が揃っており、かつ孔径が小さいため、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れ、採取率が高く、1〜2滴の少量の血液で検査することができ、患者の苦痛を和らげることができるためである。本発明の血液分離用具1は血漿又は血清の吸収性に優れるものであっても、溶血や血球もれを生じることなく、血漿又は血清を分離し、保持することができるため、前記極細繊維集合体であっても好適に使用することができる。
【0029】
極細繊維の平均繊維径が小さければ小さい程、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れているため、極細繊維の平均繊維径は1.5μm以下であるのが好ましく、1.2μm以下であるのがより好ましく、0.8μm以下であるのが更に好ましい。なお、極細繊維の平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、1nm程度が適当である。本発明における極細繊維の「繊維径」は、血漿又は血清保持材30の断面方向における電子顕微鏡写真から測定して得られる極細繊維の横断面における直径を意味し、極細繊維の横断面形状が非円形である場合には、横断面積と同じ面積の円の直径を極細繊維の繊維径とみなす。また、極細繊維の「平均繊維径」は極細繊維100本の繊維径の算術平均値をいう。
【0030】
保持材を構成する極細繊維は連続繊維であっても、非連続繊維であっても良いが、連続繊維であると、血液分離用具1の作製時又は使用時に極細繊維の脱落が生じにくいため好適である。また、保持材を構成する極細繊維はどのような樹脂から構成されていても良いが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリアミドなど血漿又は血清の吸収性の良いものを使用することができる。また、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド等の撥水性樹脂であっても、紫外線照射、プラズマ照射、或いは親水性樹脂を極細繊維表面に付与するなどの親水化処理を実施することによって使用することができる。なお、血漿又は血清の検査項目としてタンパクが含まれている場合には、検査結果に影響を及ぼさないように、タンパク吸着性の低い樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水化処理したポリフッ化ビニリデンなど)からなるのが好ましい。タンパク吸着を防ぐために、リン脂質系高分子などの低タンパク吸着素材を繊維表面に付与しても良い。以上から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水化処理したポリフッ化ビニリデンは吸収性が高いことのみならず、低タンパク吸着性といった点から特に好ましい。なお、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンは水溶性であるため、架橋させて不溶化させるのが好ましい。更に、極細繊維は上述のような樹脂1種類からなる必要はなく、2種類以上の樹脂が混合又は複合されていても良い。
【0031】
保持材は極細繊維集合体の全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下であるのが好ましいが、この径が小さければ小さい程、毛細管作用が働きやすく、吸収性及び保持性に優れているため、この径は3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下であるのが更に好ましく、1μm以下であるのが更に好ましい。他方、前記径の下限値は特に限定するものではない。なお、全部の孔の体積の95%を占める孔の径を前記値としているのは、仮に5%程度前記値を超えるような大きな孔があったとしても、残りの95%の体積を占める孔によって十分に毛細管作用が働き、血漿又は血清の吸収性及び保持性に優れているためである。また、本発明における「全部の孔の体積の95%を占める孔の径」は、ASTM E1294−89に規定されている「自動細孔径分布測定機を使ったメンブレンフィルターの細孔径の特性に対する標準試験方法」にしたがって孔径を測定し、最小の孔径から積算して体積の95%が含まれる孔径の最大値をいう。
【0032】
保持材は上述のような極細繊維の集合体からなるのが好ましいが、静電紡糸法により製造されたものであると、孔径が揃っており、かつ孔径の小さい保持材であることができ、血漿又は血清の吸収性及び保持性が優れているため好適である。また、好適であるポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンからなる極細繊維であっても紡糸できるため、このような極細繊維を紡糸した場合には血漿又は血清の吸収性及び保持性が更に優れている。更に、静電紡糸法により製造した保持材は繊維間の接着が緩やかで、血漿又は血清を保持材が吸収した際に膨らみやすいため、吸収時に血球分離材との密着性が高まり、更に吸収性が良くなるという効果も奏する。この静電紡糸法とは樹脂を溶媒に溶解させた紡糸溶液の溶媒を揮発させるとともに電気的に延伸して繊維化する方法であり、従来から公知の方法である。
【0033】
保持材の目付及び厚さは特に限定するものではないが、目付は血漿又は血清の保持性に優れているように、5g/m2以上であるのが好ましい。厚さは血球分離材と密着しやすいクッション性を有するように、50μm以上であるのが好ましく、100μm以上であるのがより好ましい。保持材が1枚の極細繊維集合体から構成されている場合には、1枚の極細繊維集合体の厚さが前記値の範囲にあるのが好ましく、2枚以上の極細繊維集合体から構成されている場合には、積層された極細繊維集合体の厚さが前記値の範囲にあるのが好ましい。この「厚さ」は10kPa加圧時の厚さを10点で測定し、その10点の算術平均値をいう。
【0034】
また、保持材は血漿又は血清の保持量が多いように、またクッション性に優れ血球分離材との密着性に優れるように、空隙率が30%以上であるのが好ましく、50%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのが更に好ましく、80%以上であるのが更に好ましい。他方、保持材の機械的強度に優れているように、空隙率は98%以下であるのが好ましく、95%以下であるのがより好ましく、90%以下であるのが更に好ましい。なお、「空隙率(P)」は次の式から算出される値をいう。
P={1−W/(T×d)}×100
ここで、Wは保持材の目付(g/m2)を意味し、Tは保持材の厚さ(μm)を意味し、dは繊維構成樹脂の密度(g/cm3)をそれぞれ意味する。
【0035】
なお、極細繊維集合体の全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下の血漿又は血清保持材30は、静電紡糸法により紡糸する際に、紡糸溶液の濃度、粘度、溶媒の種類、ノズル先端と捕集板の距離、印加電圧、紡糸環境の温度、湿度、ノズル先端からの紡糸溶液の吐出量などの条件を適宜調整することによって製造することができる。例えば、水溶性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール)の場合、紡糸溶液の濃度は10〜20wt%、粘度は100〜12000mPa・s、溶媒は純水、ノズル先端と捕集板との距離は10〜20cm、印加電圧は15〜20kV、紡糸環境の温度20〜30℃、湿度40〜60%RH、ノズル先端からの紡糸溶液の吐出量0.1〜1.0g/時間とすることにより製造しやすい。また、水と混和する有機溶剤(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解する樹脂の場合、紡糸溶液の濃度は10〜30wt%、粘度は100〜5000mPa・s、ノズル先端と捕集板との距離は5〜15cm、印加電圧は10〜20kV、紡糸環境の温度20〜30℃、湿度10〜40%RH、ノズル先端からの紡糸溶液の吐出量0.1〜3.0g/時間程度とすることにより製造しやすい。
【0036】
なお、血漿又は血清保持材30は上述のような極細繊維集合体からなるものに限定されず、セルロース繊維、セルロースアセテート繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、及び/又はポリアクリロニトリル繊維からなる繊維集合体であっても使用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)
上面における内径が1.15cmで、下面における内径が0.91cmで、上面から0.82cmの位置に段差を有する中空孔を有する円筒状の外枠12(外径:1.53cm)と、直径1.14cmのポリエステルフィルム11(厚さ:100μm)を用意した。そして、前記段差に前記フィルム11を載置して血液受容材10とした。
【0039】
また、外径が1.10cmで、高さが0.75cmの円筒状突起部21aと、前記円筒状突起部の上面側端部から外側に伸びるつば部21b(外径:1.54cm、高さ:0.36cm)とを有し、しかも前記つば部21bの上面から円筒状突起部21aの下面へ貫通する内径が0.90cmの中空孔を有する断面T字状の支持体21と、直径が1.10cm、平均孔径の大きい面における平均孔径が100μmで、平均孔径の小さい面における平均孔径が2μmの非対称性多孔質膜(BTS−SP300(ポール社製))を用意した。そして、前記支持体21の円筒状突起部21a下面に前記非対称性多孔質膜の平均孔径の小さい面が当接するように、接着剤で固定し、分離材−支持体複合材を形成した。
【0040】
更に、外径が0.86cmで、高さが1.07cmの円筒状突出部31aと、前記円筒状突起部31aの上面側端部から外側に伸びるつば部31b(外径:1.22cm、高さ:0.72cm)とを有する、断面T字状の保持体31と、静電紡糸法により紡糸し、集積させた後に、温度180℃に設定したオーブン中で10分間熱処理をして架橋させた、直径が0.8cmのポリビニルアルコール極細連続繊維集合体(=血漿又は血清保持材30、平均繊維径:0.22μm、全部の孔の体積の95%を占める孔の径:0.6μm以下、目付:140g/m2、厚さ:430μm、空隙率:75%)を用意した。そして、前記保持体31の下面に前記ポリビニルアルコール極細連続繊維集合体を接着剤で固定し、保持材−保持体複合材を形成した。以上の血液受容材、分離材−支持体複合材及び保持材−保持体複合材から血液分離用具を構成した。
【0041】
この血液分離用具の血液受容材10にヘマトクリット値が41%の血液50μLを入れた後、上記分離材−支持体複合材の中空孔に上記保持材−保持体複合材を挿入し、血球分離材20と保持材30とが接触した状態で、分離材−支持体複合材の支持体21の下面側を血液受容材10を構成する外枠12の中空孔に挿入して、血球分離を行い、保持材によって血漿を保持させた。その後、保持材−保持体複合材を抜き出し、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、保持材の血漿保持前後における質量変化から保持材に吸収された血漿量(bpm、単位:mg)を算出した。そして、次の式から血漿採取率(bpr)を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
bpr=[(bpm/1.03)/{50×(1−H/100)}]×100
ここで、bprは血漿採取率(%)、bpmは保持材に吸収された血漿量(mg)、Hはヘマトクリット値(%)、1.03は血漿の平均比重をそれぞれ意味する。
【0042】
(実施例2)
直径が0.80cmの静電紡糸法により製造したポリアクリロニトリル極細連続繊維集合体(平均繊維径:0.4μm、全部の孔の体積の95%を占める孔の径:1.6μm、目付:118g/m2、厚さ:400μm、空隙率:73%)を血漿又は血清保持材30として用いて、保持材−保持体複合材を形成したこと以外は実施例1と同様にして、血液受容材、分離材−支持体複合材及び保持材−保持体複合材から血液分離用具を構成した。
【0043】
そして、実施例1と同様にして、ヘマトクリット値が41%の血液から血漿を分離濾過し、保持材によって血漿を保持させ、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0044】
(実施例3)
実施例2と同じ血液分離用具を用い、実施例1と同様にして、ヘマトクリット値が58%の血液から血漿を分離濾過し、保持材によって血漿を保持させ、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0045】
(実施例4)
実施例1と同じ血液分離用具を用い、実施例1と同様にして、ヘマトクリット値が35%の血液から血漿を分離濾過し、保持材によって血漿を保持させ、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0046】
(実施例5)
実施例2と同じ血液分離用具を用い、実施例1と同様にして、ヘマトクリット値が35%の血液から血漿を分離濾過し、保持材によって血漿を保持させ、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0047】
(比較例1)
実施例1の分離材−支持体複合材の中空孔に保持材−保持体複合材を挿入し、血球分離材20と保持材30とが接触した状態のものを、実施例1の血液受容材10を構成するフィルム11を取り除いた外枠12の中空孔に挿入し、血液分離用具とした。この血液分離用具を、上から外枠12、分離材20、保持材30となるように置いた後、分離材の上からヘマトクリット値が41%の血液を50μL滴下して血球分離を行い、保持材によって血漿を保持させた。その後、保持材−保持体複合材を分離し、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0048】
(比較例2)
ヘマトクリット値が58%の血液を滴下したこと以外は比較例1と全く同様にして血球分離を行い、保持材によって血漿を保持させた。その後、保持材−保持体複合材を分離し、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0049】
(比較例3)
実施例2の分離材−支持体複合材の中空孔に保持材−保持体複合材を挿入し、血球分離材20と保持材30とが接触した状態のものを、実施例2の血液受容材10を構成するフィルム11を取り除いた外枠12の中空孔に挿入し、血液分離用具とした。この血液分離用具を、上から外枠12、分離材20、保持材30となるように置いた後、分離材の上からヘマトクリット値が58%の血液を50μL滴下して血球分離を行い、保持材によって血漿を保持させた。その後、保持材−保持体複合材を分離し、血漿中に溶血や血球もれがあるかどうかを観察するとともに、血漿採取率を算出した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0050】
【表1】
保持材:PVA・・ポリビニルアルコール、PAN・・ポリアクリロニトリル
【0051】
表1から明らかなように、本発明の血液分離用具は高ヘマトクリット値の血液を使用した場合や吸収力の強い保持材を使用した場合であっても、溶血や血球もれを生じることなく、血漿を得ることができるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】血液分離用具使用前の模式的斜視図
【図2】図1におけるI−I線切断面図
【図3】血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図
【図4】血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図
【図5】血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図
【図6】血液分離用具の使用方法を説明する模式的断面図
【符号の説明】
【0053】
1 血液分離用具
10 血液受容材
11 フィルム
12 外枠
13 血液受容部
20 血球分離材
21 支持体
21a 円筒状突起部
21b つば部
30 血漿又は血清保持材
31 保持体
31a 円筒状突起部
31b つば部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を透過させず、血液を保持できる血液受容部を備えた血液受容材と、血液から血球を分離できる血球分離材と、血漿又は血清を保持できる血漿又は血清保持材とを備えており、使用時に前記血液受容材の血液受容部と血球分離材とが対向して隣接可能、かつ前記血球分離材と血漿又は血清保持材とが接触可能であることを特徴とする血液分離用具。
【請求項2】
血球分離材の一方の面における平均孔径と他方の面における平均孔径とが異なり、血球分離材の平均孔径のより大きい面が血液受容材の血液受容部と対向して隣接可能であることを特徴とする、請求項1記載の血液分離用具。
【請求項3】
血漿又は血清保持材が、平均繊維径が2μm以下、かつ全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下の極細繊維集合体からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の血液分離用具。
【請求項4】
血漿又は血清保持材が、静電紡糸法により製造された極細繊維集合体からなることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の血液分離用具。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の血液分離用具の血液受容部に、採取した血液を置いた後、血液受容部と血球分離材とを対向して隣接させるとともに、血球分離材と血漿又は血清保持材とを接触させることを特徴とする、血液の分離方法。
【請求項1】
血液を透過させず、血液を保持できる血液受容部を備えた血液受容材と、血液から血球を分離できる血球分離材と、血漿又は血清を保持できる血漿又は血清保持材とを備えており、使用時に前記血液受容材の血液受容部と血球分離材とが対向して隣接可能、かつ前記血球分離材と血漿又は血清保持材とが接触可能であることを特徴とする血液分離用具。
【請求項2】
血球分離材の一方の面における平均孔径と他方の面における平均孔径とが異なり、血球分離材の平均孔径のより大きい面が血液受容材の血液受容部と対向して隣接可能であることを特徴とする、請求項1記載の血液分離用具。
【請求項3】
血漿又は血清保持材が、平均繊維径が2μm以下、かつ全部の孔の体積の95%を占める孔の径が5μm以下の極細繊維集合体からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の血液分離用具。
【請求項4】
血漿又は血清保持材が、静電紡糸法により製造された極細繊維集合体からなることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の血液分離用具。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の血液分離用具の血液受容部に、採取した血液を置いた後、血液受容部と血球分離材とを対向して隣接させるとともに、血球分離材と血漿又は血清保持材とを接触させることを特徴とする、血液の分離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−33086(P2007−33086A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213327(P2005−213327)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】
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