説明

血液成分分析装置および血液成分分析装置用の受光回路

【課題】外乱光が強い場合でも、受光量に対応する電気信号が検出限界電圧まで飽和することを防止する血液成分分析装置を提供する。
【解決手段】本発明の血液成分分析装置は、発光素子130と、受光素子150と、フィルタ回路162と、ピークホールド回路164と、演算制御部110と、を有する。発光素子130は、血液が付着した試験片121に向けてパルス光を発光する。受光素子150は、試験片121から反射されたパルス光を受光して電気信号に変換する。フィルタ回路162は、電気信号の直流成分を抑制する。ピークホールド回路は164、フィルタ回路162を通過した電気信号の信号レベルの最大値を保持する。演算制御部110は、信号レベルの最大値と発光素子130がパルス光を発光する前の電気信号の信号レベルとに基づいて血液成分量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分分析装置および血液成分分析装置用の受光回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血糖測定装置など血液成分分析装置の小型化および軽量化に伴って屋外で成分分析をする機会が増加している。しかし、光学式の血液成分分析装置においては、屋外での成分分析は外乱光による影響を受ける場合がある。光学的に血糖を測定する血糖測定装置を例にとると、屋外で血糖を測定する際、太陽光などの外乱光の影響により測定誤差が生じる場合がある。外乱光による測定誤差を軽減する技術としては、下記の特許文献1の光学測定装置が知られている。特許文献1の光学測定装置では、血糖値を算出する段階において、発光素子の点灯時の受光量から発光素子の消灯時の受光量を差し引くことにより、外乱光の影響による測定誤差を軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−232662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外乱光が強い場合では、発光素子の点灯時の受光量から発光素子の消灯時の受光量を差し引く前の段階において、受光量に対応する電気信号を増幅する際に既に電気信号が検出限界電圧まで飽和してしまうおそれがある。このように、電気信号が飽和してしまった場合には、上記先行技術のように発光素子の点灯時の受光量から発光素子の消灯時の受光量を差し引くだけでは、血糖を正確に測定することが難しい。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の目的は、外乱光が強い場合でも、受光量に対応する電気信号が検出限界電圧まで飽和することを防止する血液成分分析装置を提供することである。
【0006】
また、本発明の他の目的は、上記血液成分分析装置用の受光回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
本発明の血液成分分析装置は、血液に含まれる成分と反応した試薬の色の変化に基づいて前記成分を分析する血液成分分析装置であって、発光手段と、受光手段と、フィルタリング手段と、ピーク保持手段と、算出手段と、を有する。発光手段は、血液が付着した試験片に向けてパルス光を発光する。受光手段は、前記パルス光が前記試験片で反射された反射光を受光して電気信号に変換する。フィルタリング手段は、前記電気信号の直流成分を抑制する。ピーク保持手段は、前記フィルタリング手段を通過した電気信号の信号レベルの最大値を保持する。算出手段は、前記信号レベルの最大値と前記発光手段がパルス光を発光する前の前記電気信号の信号レベルとに基づいて前記成分の量を算出する。
【0009】
また、本発明の受光回路は、血液成分分析装置用の受光回路であって、受光手段と、フィルタリング手段と、ピーク保持手段と、を有する。受光手段は、パルス光を受光して電気信号に変換する。フィルタリング手段は、前記電気信号の直流成分を抑制する。ピーク保持手段は、前記フィルタリング手段を通過した電気信号の信号レベルの最大値を保持する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外乱光が強い場合でも、受光量に対応する電気信号が検出限界電圧まで飽和することを防止するので、外乱光による影響を低減することができ、太陽光下など明るい場所においても成分分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態における血液成分分析装置を説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示す受光処理部の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】図2に示す受光処理部の動作を説明するための波形図である。
【図4】図4(A)は図2に示す受光処理部に対する比較例としての受信処理部の構成を説明するためのブロック図であり、図4(B)は図4(A)の増幅回路の出力信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して本発明の血液成分分析装置の実施の形態を説明する。なお、図中、同一の部材には同一の符号を用いた。
【0013】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態における血液成分分析装置を説明するためのブロック図である。本実施の形態の血液成分分析装置は、受光量に対応する電気信号の直流成分を抑制することにより、電気信号が検出限界電圧まで飽和することを防止するものである。なお、以下では本実施の形態の血液成分分析装置の主要部について説明し、従来の血液成分分析装置と同様の部分については説明を省略する。
【0014】
本実施の形態では、血液に含まれるグルコースと反応した試薬の色の変化に基づいて血糖値を測定する比色式血糖測定装置を例示して説明する。比色式血糖測定装置では、血液が付着した試験紙(試験片)に光を照射し、試験紙からの反射光を受光して血液と反応した試薬の色の変化に基づいて血液に含まれる成分を分析する。試験紙には、血液中のグルコースに反応して発色する試薬が含まれており、グルコース濃度が濃くなるほど試験紙の発色が濃くなる。この発色濃度の違いにより受光量が変化することを利用して血糖値を測定する。
【0015】
図1に示すとおり、本実施の形態の血液成分分析装置(比色式血糖測定装置)100は、演算制御部110、装着部120、発光素子130、発光駆動部140、受光素子150、受光処理部160、操作部180、および表示部190を有する。なお、受光素子150と受光処理部160とを合せて受光回路170を構成する。以下、図1に示す各構成要素を順に説明する。
【0016】
演算制御部110は、血液成分分析装置100の全体制御および血糖値の算出を実行する。より具体的には、演算制御部110は、たとえばCPU、メモリ、A/Dコンバータ、サンプルホールド回路、通信回路などを含む周辺回路を備えており、発光駆動部140、受光処理部160、操作部180、および表示部190と電気的に接続されている。演算制御部110は、操作部180を介して入力される、操作者からの指示に応じて血液成分分析装置100を起動し、所定の手順にしたがって血糖測定処理を実行する。
【0017】
血液成分分析装置100の起動手順および測定処理手順は、ROMなどの不揮発性メモリにプログラムとして予め記憶されており、CPUはプログラムを逐次的に実行する。演算制御部110は、血液成分分析装置100を起動したのち、発光駆動部140に対して所定のパルス信号を出力するように指示するとともに、受光処理部160で処理された信号を受光量データとしてRAMなどの揮発性メモリに格納するように指示する。
【0018】
受光処理部160で処理された信号は、所定のタイミングにサンプルホールド回路でサンプリングされ、A/Dコンバータを介してディジタル値の受光量データに変換されてメモリに格納される。そして、演算制御部110は、格納された受光量データに基づいて血糖値を算出して表示部190に出力する。
【0019】
演算制御部110は、受光処理部160で処理された信号を所定のタイミングでサンプリングする。サンプリングのタイミングは、発光素子130を発光させるタイミングと関連して決定される。より具体的には、演算制御部110は、発光素子130がパルス光を発光する直前の第1タイミングと、信号レベルが最大値(ピーク電圧)となったのちの第2タイミングでサンプリングをする。最大値をサンプリングする第2タイミングは、第1タイミングから所定時間経過後に設定される。そして、演算制御部110は、第2タイミングでの信号レベルの最大値と第1タイミングでの信号レベルとの差を受光量データとして格納し、血液成分量の算出に用いる。より具体的には、演算制御部110は、第2タイミングでの信号レベルの最大値と第1タイミングでの信号レベルとの差分に基づいて血糖値を算出する。
【0020】
本実施の形態では、試験紙に血液を付着させる前後における試験紙の吸光度に基づいて血糖値を算出する。血液を付着させる前の試験紙は、白色に近い色であるため吸光度が小さい値を示す一方で、血液を付着させた後の試験紙は、血液成分と試薬との反応が進行するにつれて発色して吸光度が増大する。このため、血液を付着させた後の吸光度としては、血液成分と試薬との反応が完結した状態に近づき吸光度の増加率が所定値以内となったときの吸光度を採用する。演算制御部110は、算出手段として、メモリに格納された受光量データを利用して試験紙に血液を付着させる前後における試験紙の吸光度を算出したのち、吸光度とグルコースとの対応関係を利用して血糖値を算出する。吸光度とグルコース濃度との対応関係は、ルックアップテーブルとして予めROMなどの不揮発性メモリに記憶されているか、あるいは吸光度とグルコース濃度との関係式から計算される。
【0021】
装着部120は、試験紙121を保持する。装着部120は、血液成分分析装置100の筐体(不図示)に取り付けられており、血液が付着される試験紙121を保持する。
【0022】
発光素子130は、発光手段として、試験紙121に向けてパルス光を発光する。発光素子130は、その発光面が試験紙121の方向を向くように血液成分分析装置100の筐体に取り付けられている。発光素子130からの照射光は、図示されていないレンズによってスポット状に集光されて試験紙121を照射する。発光素子130は、たとえば500〜720nm程度の波長の範囲内で発光する発光ダイオード(LED)である。
【0023】
発光駆動部140は、発光素子130にパルス信号を供給する。より具体的には、発光駆動部140は、演算制御部110の指示に基づいて発光素子130に所定のパルス幅、強度、および周期を有するパルス信号を供給する。発光素子130は、供給されたパルス信号に応じてこのパルス幅の期間だけ点灯し、次のパルス信号の立ち上りまで消灯することを繰り返す。パルス幅は、概ね数十〜数百μsであり、好適には100μs程度である。また、周期は数ms程度であり、好適には2ms程度である。なお、パルス幅、強度、および周期は、他の構成要素の設計条件に応じて適宜変更されうる。
【0024】
受光素子150は、受光手段として、パルス光が試験紙121で反射された反射光を受光して電流信号(光電流)に変換する。受光素子150は、その受光面が試験紙121の方向に向くように血液成分分析装置100の筐体に取り付けられる。受光素子150は、たとえばフォトダイオード(PD)である。屋外で血液成分分析装置を作動させる場合、受光素子150には、パルス光が試験紙121で反射された反射光の他に太陽光などの外乱光も入射する可能性がある。一般に太陽光などの外乱光は、時間的に変動の少ない定常的な光であるので、その周波数は100Hz以下であり、特に太陽光は概ね0Hzである。そのため、受光素子150は、パルス光が試験紙121で反射された反射光の成分が外乱光による直流成分によってバイアスされた電流信号を生成する。
【0025】
受光処理部160は、受光素子150で変換された電流信号を信号処理する。より具体的には、受光処理部160は、受光素子150で変換された電気信号の直流成分を抑制したのち、信号レベルの最大値を保持する。受光処理部160の詳細については後述する。なお、受光素子150と受光処理部160とを合わせて受光回路170を構成する。
【0026】
操作部180は、操作者からの指示を演算制御部110に伝達する。操作部180は、たとえば押しボタンスイッチを有しており、血液成分分析装置100の筐体に取り付けられる。操作者は、操作部180を介して血液成分分析装置100の起動・停止、測定結果の表示などを指示する。
【0027】
表示部190は、演算制御部110で算出された血糖値を表示する。表示部190は、たとえば液晶表示パネルを有しており、血液成分分析装置100の筐体に取り付けられる。
【0028】
以上のとおり構成される本実施の形態の血液成分分析装置は、血液が付着した試験紙121に向けて発光素子130がパルス光を発光し、パルス光が試験紙121で反射された反射光を受光素子150が受光して電気信号に変換する。受光処理部160は、電気信号の直流成分を抑制したのち、信号レベルの最大値を保持する。そして、演算制御部110は、信号レベルの最大値と発光素子130がパルス光を発光する直前の電気信号の信号レベルとの差に基づいて血糖値を算出する。
【0029】
次に、図2〜図4を参照して、図1に示す受光処理部についてより詳しく説明する。図2は、図1に示す受光処理部の構成を説明するためのブロック図であり、図3は、図2に示す受光処理部の動作を説明するための波形図である。
【0030】
図2に示すとおり、本実施の形態における血液成分分析装置100の受光処理部160は、I/V変換回路(電流電圧変換回路)161、フィルタ回路162、増幅回路163、およびピークホールド回路164を有する。以下、図2に示す受光処理部160の各構成要素を順に説明する。
【0031】
I/V変換回路161は、受光素子150で生成された電流信号を電圧信号に変換する。I/V変換回路161の出力端には、受光素子150で生成された電流信号の大きさに比例した大きさの電圧信号が出力される。図3に示すとおり、I/V変換回路161の出力端には、パルス光が試験紙121で反射された反射光の成分が外乱光による直流成分によって基準電圧からバイアスされた電圧が出力される。ここで、基準電圧は、受光素子150に光が照射されていない状態におけるI/V変換回路161の出力電圧である。なお、受光素子150が受光量に応じた光電流ではなく光電圧を出力する電圧出力型の素子の場合には、I/V変換回路161は省略できる。
【0032】
フィルタ回路162は、フィルタリング手段として、I/V変換回路161の出力信号の直流成分を抑制する。一般に太陽光などの外乱光は、時間的に変動の少ない定常的な光であるので、その強度に関わらず周波数は概ね0Hzである。フィルタ回路162は、たとえばハイパスフィルタ(HPF)を有しているので、図3に示すとおりフィルタ回路162の出力端には、I/V変換回路161の出力信号から直流成分、すなわち外乱光によるバイアス分が除去された信号が出力される。したがって、後段の増幅回路163で信号が増幅される際に検出限界電圧まで飽和することが防止される。
【0033】
ハイパスフィルタが遮断する周波数帯域は、ハイパスフィルタの低域遮断周波数で決定され、低域遮断周波数よりも低い周波数の信号成分は大幅に抑制される。とくに、直流成分についてはハイパスフィルタでほぼ完全に遮断される。ハイパスフィルタの低域遮断周波数は、他の構成要素の設計条件に応じて数百〜数kHzの間で設定することができ、好適には数kHz程度に設定される。
【0034】
また、本実施の形態では、低域遮断周波数が数kHzに設定されているため、数kHzより低い周波数成分は大幅に抑制される。したがって、フィルタ回路162の出力信号は、低周波成分が抑制される影響でI/V変換回路161の出力信号と比較して波形が歪む可能性がある。より具体的には、フィルタ回路162の出力信号は、その最大値が一定である期間が短くなる可能性がある。
【0035】
増幅回路163は、フィルタ回路162の出力信号を所定の増幅率で増幅する。図3に示すとおり、増幅回路163は、後段の演算制御部110において血糖値を算出する際に適した受光量データとなるように、フィルタ回路162の出力信号を所定の増幅率で増幅してダイナミックレンジを調整する。増幅回路163は、たとえばオペアンプを用いて構成することができる。
【0036】
ピークホールド回路164は、ピーク保持手段として、増幅回路163の出力信号の最大値(ピーク電圧)を保持する。上述のとおり、フィルタ回路162の出力信号の最大値が一定である期間が短いため、増幅回路163の出力信号の最大値も一定である期間が短い。信号の最大値が一定である期間が短いと、信号をサンプリングする際にタイミングによってその最大値を得られない可能性が高くなる。そこで、本実施の形態では、図3に示すとおり、ピークホールド回路164を利用して増幅回路163の出力信号の最大値を確実に保持する。
【0037】
ピークホールド回路164は、演算制御部110の指示を受けて増幅回路163の出力信号の最大値を保持し、保持した最大値を所定のタイミングでクリアする。保持された最大値は、演算制御部110に伝達される。本実施の形態のピークホールド回路164は、クリアされた状態では増幅回路163の出力信号をそのまま通過させて演算制御部110に伝達する。したがって、ピークホールド回路164は、発光素子130が発光する直前の第1タイミングT1では基準電圧が出力され、その後、増幅回路163の出力信号の最大値が保持された状態ではこの最大値が出力され続ける。そして、ピークホールド回路164は、第1タイミングT1から所定時間後の第3タイミングで保持された最大値をクリアして基準電圧を再び出力する。
【0038】
以上のとおり構成される本実施の形態における血液成分分析装置100の受光処理部160は、I/V変換回路161、フィルタ回路162、増幅回路163、およびピークホールド回路164を有する。I/V変換回路161は、受光素子150で生成された電流信号を電圧信号に変換し、フィルタ回路162は、I/V変換回路161の出力信号の直流成分を抑制する。そして、増幅回路163は、フィルタ回路162の出力信号を所定の増幅率で増幅し、ピークホールド回路164は、増幅回路163の出力信号の最大値を保持する。
【0039】
次に、図4を参照して、本実施の形態における直流成分の抑制効果についてより詳しく説明する。図4(A)は、図2に示す受光処理部に対する比較例としての受信処理部の構成を説明するためのブロック図であり、図4(B)は図4(A)の増幅回路の出力信号の波形図である。
【0040】
図4(A)に示すとおり、本実施の形態に対する比較例としての受光処理部160’は、I/V変換回路161’および増幅回路163’を有しており、I/V変換回路161’は、増幅回路163’に直接的に接続されている。
【0041】
受光処理回路160’では、I/V変換回路161’の出力信号の直流成分は抑制されずにそのまま増幅回路163‘に伝達されるので、増幅回路163’の出力信号は、検出限界電圧まで飽和してしまう場合がある。
【0042】
たとえば、図4(B)に示すとおり、外乱光によるバイアス電圧が低いvb1の場合、増幅回路163’の出力信号は飽和しない。しかしながら、外乱光によるバイアス電圧が高いvb2の場合、増幅回路163’の出力信号は検出限界電圧まで飽和するので、破線で示す部分の信号が再現されない。
【0043】
一方、本実施の形態の受光処理回路160では、フィルタ回路162がI/V変換回路161の出力信号の直流成分を抑制するので、太陽光などの外乱光によるバイアス分が低減されて増幅回路163の出力信号が検出限界電圧まで飽和することを防止する。
【0044】
以上のとおり、説明した本実施の形態は以下の効果を奏する。
【0045】
(a)本実施の形態の血液成分分析装置によれば、外乱光が強い場合でも、受光量に対応する電気信号が検出限界電圧まで飽和することを防止するので、外乱光による影響を低減することができ、太陽光下など明るい場所においても成分分析が可能となる。
【0046】
(b)本実施の形態の血液成分分析装置は、フィルタ回路を通過した電気信号を増幅したのちにピークホールド回路に伝達する増幅回路をさらに有するので、電気信号のダイナミックレンジを調整することができる。
【0047】
(c)本実施の形態の受光回路によれば、外乱光が強い場合でも、受光量に対応する電気信号が検出限界電圧まで飽和することを防止するので、外乱光による影響を低減することができ、太陽光下など明るい場所においても成分分析が可能となる。
【0048】
以上のとおり、実施の形態において、本発明の血液成分分析装置および血液成分分析装置用の受光回路を説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
【0049】
たとえば、本実施の形態では、演算制御部は、信号レベルの最大値と発光素子がパルス光を発光する直前の第1タイミングでの信号レベルとの差分に基づいて血糖値を算出する方法を説明した。しかしながら、演算制御部が血糖値を算出する方法は上記の方法に限定されない。たとえば、演算制御部は、信号レベルの最大値と第1タイミングでの信号レベルとにそれぞれ所定の係数を乗じた上で差分を計算して血糖を算出することもできる。
【0050】
また、本実施の形態では、サンプルホールド回路が演算制御部に内蔵される場合を説明した。しかしながら、サンプルホールド回路は、受光処理部に内蔵されてもよい。
【0051】
また、本発明は、血糖値を算出するのに好適に用いることができるが、パルス波の反射光や透過光の受光量を定量的に測定して血液成分分析を行う分野において広く利用できることはもちろんである。
【符号の説明】
【0052】
100 血液成分分析装置、
110 演算制御部(算出手段)、
120 装着部、
121 試験紙(試験片)、
130 発光素子(発光手段)、
140 発光駆動部、
150 受光素子(受光手段)、
160 受光処理部(フィルタリング手段、ピーク保持手段)、
161 I/V変換回路、
162 フィルタ回路、
163 増幅回路、
164 ピークホールド回路、
170 受光回路、
180 操作部、
190 表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液に含まれる成分と反応した試薬の色の変化に基づいて前記成分を分析する血液成分分析装置であって、
前記血液が付着した試験片に向けてパルス光を発光する発光手段と、
前記パルス光が前記試験片で反射された反射光を受光して電気信号に変換する受光手段と、
前記電気信号の直流成分を抑制するフィルタリング手段と、
前記フィルタリング手段を通過した電気信号の信号レベルの最大値を保持するピーク保持手段と、
前記信号レベルの最大値と前記発光手段がパルス光を発光する前の前記電気信号の信号レベルとに基づいて前記成分の量を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする血液成分分析装置。
【請求項2】
前記フィルタリング手段は、ハイパスフィルタを有することを特徴とする請求項1に記載の血液成分分析装置。
【請求項3】
前記フィルタリング手段を通過した電気信号を増幅したのちに前記ピーク保持手段に伝達する増幅手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の血液成分分析装置。
【請求項4】
血液成分分析装置用の受光回路であって、
パルス光を受光して電気信号に変換する受光手段と、
前記電気信号の直流成分を抑制するフィルタリング手段と、
前記フィルタリング手段を通過した電気信号の信号レベルの最大値を保持するピーク保持手段と、
を有することを特徴とする受光回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−13523(P2012−13523A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149983(P2010−149983)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】