血液成分測定装置
【課題】穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させて、計測エラーを抑制する。
【解決手段】血糖計10aは、試験片12が装着される先端装着部30と、先端装着部30に装着された試験片12における血液導入路24を介して採取された血液の成分を測定する測定部32と、測定部32によって測定された結果を表示するモニタ34とを有する。モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とし、モニタ34の表示面を上向きとして水平面に載置したときに、試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向している。血糖計10aは、モニタ34が設けられる主部44と、主部44と先端装着部30との間に設けられる中継部46とを有する。中継部46の上面46aは、中心軸線Cと略平行に設定されており、イジェクタレバー36が設けられている。
【解決手段】血糖計10aは、試験片12が装着される先端装着部30と、先端装着部30に装着された試験片12における血液導入路24を介して採取された血液の成分を測定する測定部32と、測定部32によって測定された結果を表示するモニタ34とを有する。モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とし、モニタ34の表示面を上向きとして水平面に載置したときに、試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向している。血糖計10aは、モニタ34が設けられる主部44と、主部44と先端装着部30との間に設けられる中継部46とを有する。中継部46の上面46aは、中心軸線Cと略平行に設定されており、イジェクタレバー36が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端装着部に試験片が装着され、該試験片における血液導入路を介して採取された血液から、ブドウ糖等の成分を測定するための血液成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者には、血糖値の変動を測定することによる日常的な管理が推奨されている。血糖値の測定は、血液中のブドウ糖量に応じて呈色する試薬が含浸された試験紙等の測定部を設け、該試験紙に血液を供給して呈色させ、その呈色の度合いを光学的に測定することにより血糖値を求めて表示をする血糖計が実用化されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。試験紙はディスポーザブルの試験片に設けられ、該試験片が血糖計の先端装着部に装着される。また、電気化学センサーを用いた血糖計も実用化されている。
【0003】
糖尿病患者の血液を採取する際には、先ず、所定の穿刺装置により皮膚(例えば、指、手の平等)を穿刺し、穿刺後には血液を微量流出させる。次いで、試験片を血糖計に装着しておき、該試験片における先端の点着部を血液玉に接触させ、細径の流通路を毛管現象によって血液を試験紙まで導入させる。
【0004】
一方、近時の血糖計は、糖尿病患者自身が日常的に血糖計測を行うのに用いるためのパーソナルユース以外に、医療施設に入院している複数の患者に対して医療従事者が計測を行う院内用途の要請がある。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3135393号公報(図2、図8)
【特許文献2】米国特許第7077328号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、糖尿病患者等は高齢者が多く、しかも糖尿病の合併症により手指が不自由である場合がある。また、特に手指が不自由でなくても、操作に不慣れな場合には、心理的要因等によって指先が震えて血糖計をうまく扱えない患者もいる。特に、穿刺によって得られる血液玉は微小であることから、この部分に試験片の点着部を接触させることは糖尿病患者にとって必ずしも容易な作業ではない。また、手が震えた状態で作業を行うと、点着部が血液玉に接触しても十分な血液が試験紙に含浸されないことがある。このような場合には、血糖計が正しく計測されないことから、試験片を交換した後に再度穿刺をして計測をやり直すことになる。
【0007】
本願発明者が行った調査によると、両腕を空中で自由な状態とすると手元が不安定となって血液玉に点着部を接触させることが困難であるが、手首部又はその近傍をテーブルに載せておくと手元が安定する患者が多いことが分かった。
【0008】
しかしながら、手首をテーブルに載せておくと該手首の動作の自由度が抑制され、血糖計の向きを適切に設定できなくなり、結局、血液玉に点着部を接触させることが困難である患者が多かった。すなわち、図16に示すように、一方の手(以下、左手とする。)において穿刺によって得られた血液玉900は垂れ落ちないように略上向きとしておくが、右手で把持する血糖計901及び試験片902は斜め上向き(図16の矢印参照)となり、先端の点着部903を血液玉900に当てることが困難になる。
【0009】
また、点着動作を空中で行う場合でも、図17に示すように、血液玉900を略上向きとしておくと、血液玉900に対して血糖計901を上方又は斜め上方から接近させることになり、血糖計901及び右手によって血液玉900や試験片902の点着部903が死角となってしまい、視認性に劣ることになり、点着動作をしにくい場合がある。試験片の点着部は血糖計測時における操作対象部分であることから操作時における視認性が求められるとともに、テーブルに載置しておく時にも状態確認のために視認性が求められる。
【0010】
さらに、血糖計の操作に習熟している医療従事者であっても、微小な血液玉に点着部を接触させることは注意力を要する作業であって、特に、多数の患者に対して計測を行う場合には、個々の計測処理はできる限り簡便に行えることが望ましいとともに、点着部の視認性が確保されることが望ましい。
【0011】
さらにまた、テーブル載置時に、血糖計に装着された試験片には無用な外力が加わらないことが望ましい。
【0012】
また、テーブル載置時に、点着部を血液玉と予め近づけておいた後に、血液と点着できることが望ましい。
【0013】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させて、計測エラーを抑制することのできる血液成分測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る血液成分測定装置は、試験片が装着される血液成分測定装置において、前記試験片が装着される先端装着部と、前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタとを有し、前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする。
【0015】
このように、水平面に載置したときに、試験片の中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る血液成分測定装置は、試験片が装着される血液成分測定装置において、前記試験片が装着される先端装着部と、前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタとを有し、前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、側面視で、前記モニタの表示面の延長線を基準として、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする。
【0017】
このように、モニタの表示面の延長線を基準として、試験片の中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0018】
前記延長線と前記中心軸線とのなす角度は10°〜40°であってもよい。このような角度設定によれば、試験片の点着部が血液玉の方向をより正しく指向する。
【0019】
前記モニタが設けられる主部と、前記主部と前記先端装着部との間に設けられる中継部とを有し、前記中継部の上面は、前記中心軸線と略平行に設定されていてもよい。このような中継部には先端装着部に関わる幾つかの機構を設けるスペースが好適な向きに確保されるとともに、中継部を設けることにより試験片の中心軸線を先端側に向けて斜め下方を指向させやすい。また、中継部の上面を試験片の中心軸線と略平行に設定することにより、視覚的に試験片の向きを把握しやすい。
【0020】
前記中継部の上面には、先端側に向かって押し出し操作をすることによって、装着された前記試験片を取り外すイジェクタレバーが設けられていてもよい。これにより、イジェクタレバーは上面に沿った動作をすることになり、操作しやすくなり、しかもイジェクタレバーの移動スペースを確保できる。
【0021】
上面視で、前記中継部は、前記主部から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっていてもよい。これにより中継部は適度に細くなり、しかも凹状であることから、指先で把持しやすい。また、中継部は先端装着部に近いことから、中継部を把持することにより、装着された試験片を安定させることができる。
【0022】
前記主部は、上下方向の厚みが略一定で、側面視で、前記主部と前記中継部は、下面が凹状の連続的な曲面で接続されていてもよい。このような凹状で連続的な曲面には指をかけやすく、血液成分測定装置を把持しやすい。
【0023】
前記先端装着部に前記試験片を装着し、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片における先端の点着部と前記水平面との距離が3mm〜30mmであってもよい。これにより、血液玉を形成した指や手の平をテーブルに載せる一方、血糖計をテーブルに載置したまま点着部を血液玉に近づけるように移動させて、血液点着を行うことができるので、手指の不自由な患者でも容易に血糖計測を行うことができる。また、テーブルに載置しておく時に点着部の視認性がよく、その状態確認をすることができる。
【0024】
前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、下面における最高点と前記水平面との距離が3mm〜20mmであってもよい。これにより、テーブルに載置したときに指を入れるために適度な隙間が確保され、把持しやすくなる。
【0025】
前記先端装着部に前記試験片を装着し、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片は前記水平面から離間していてもよい。これにより、試験片に無用な外力が加わることがない。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る血液成分測定装置は、水平面に載置したときに、試験片の中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状(換言すれば、モニタの表示面の延長線を基準として、中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状)、とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る血液成分測定装置について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図15を参照しながら説明する。
【0028】
図1、図2及び図3に示すように、本実施の形態に係る血糖計(血液成分測定装置)10aは、先端に試験片12が装着される。先ず試験片12について説明する。
【0029】
図4に示すように、試験片12は、ベース筒14と、ベース筒14の一方を覆うフランジ16と、フランジ16から突出する錐状の突起18と、フランジ16の裏面に貼られた試験紙20とを有する。ベース筒14には複数のスリット14a(図1参照)が設けられている。突起18の中心には、先端の点着部22から試験紙20に連通する直線状の血液導入路24が設けられている。試験紙20の材質としては、例えば、ポリエーテルスルホンが挙げられる。試験紙20に含浸される試薬としては、例えば、グルコースオキシターゼ(GOD)、ペルオキシターゼ(POD)、4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)等の発色剤が挙げられる。また、試薬には所定の緩衝剤が含まれていてもよい。血液導入路24は、一般的に、試験片12の中心軸線C上に設けられている。試験片12の中心軸線Cとは、試験片12の点着部22の向いている方向であって、点着部22の先端を通過する直線とする。
【0030】
試験片12は、いわゆるディスポーザブル品であり、図示しない個包装体に包装され、予め滅菌されている。血液導入路24は、血液を毛管現象により吸い上げる程度に十分細径に設定されており、点着部22に接触した血液を試験紙20まで導入する。試験片12は、従来品をそのまま適用可能である。
【0031】
図1〜図3に戻り、本実施の形態に係る血糖計10aは、試験片12が装着される先端装着部30と、先端装着部30に装着された試験片12における血液導入路24を介して採取された血液の成分による試験紙20の呈色を測定する測定部32と、測定部32によって測定された結果を制御部(マイクロコンピュータ等)33を介して表示する液晶のモニタ34と、先端側に向かって押し出し操作をすることによって装着された試験片12を取り外すイジェクタレバー36と、操作ボタン群38と、補助機能ボタン40と、先端装着部30を保護するキャップ39とを有する。血糖計10aは、全体的に角部のない滑らかな形状である。煩雑となるため、図1以外ではキャップ39を省略している。前記測定部32は、試験片12の成分検出方式に合わせ、種々の機構が採用できる。
【0032】
血糖計10aは、医療施設に入院している複数の患者に対して医療従事者が計測を行う院内用途であり、患者毎のデータ記録・呼び出し機能や、そのためのボタンが設けられており、後述するパーソナルユースの血糖計10c(図13参照)よりもやや大型である。もちろん、特段の改造をすることなく、血糖計10aをそのままパーソナルユースとすることも可能である。
【0033】
先端装着部30は、試験片12が装着されることから円筒形状となっており、ベース筒14(図4参照)を挿入することにより試験片12を容易且つ安定して装着可能である。
【0034】
血糖計10aは、内部の制御部33によって制御されており、光学手段で構成される測定部32により試験紙20に対して投光及び受光を連続的に行い、その呈色に基づいた所定の計算により血糖値を求めてモニタ34に表示を行う。試験紙20の呈色反応が観測されず、又は不十分である場合には所定のエラー表示を行う。血糖計10aによる血糖値計測の制御手順は、基本的には従来技術に係る血糖計と同じである。
【0035】
モニタ34は、血糖値を表示する血糖値表示部34aと、時刻やその他の情報を表示する補助表示部34bとを含む。血糖値表示部34aは、数字3桁の表示及び、所定の文字表示(例えば、「OK」という文字)が可能である。糖尿病患者には視力が弱い者もいることから、視認性を考慮してモニタ34は十分に大きい設定となっている。モニタ34は、少なくともその液晶表示面は平面である。
【0036】
操作ボタン群38は、基端側にまとめて設けられており、電源ボタン38a、移動ボタン38b、38c、選択ボタン38d、38e及びLED表示部38fを含む。移動ボタン38b、38cは、モニタ34に表示される項目を移動させ、あるいは移動に伴い画面をスクロールさせる等の機能を有する。選択ボタン38d、38eは、それぞれの位置に対応したモニタ34に表示された機能を選択する等の機能を有する。LED表示部38fは、LEDにより種々の色で点灯、点滅等して、血糖計の状態を報知する等の機能を有する。
【0037】
イジェクタレバー36は、先端装着部30の近傍における上面46aに設けられ、指をかけるのに適した大きさの丸型のレバーであり、基端側の平坦部36aと、先端側の突起部36bとを有する。イジェクタレバー36は、上面46aに沿って移動可能である。平坦部36aには滑り防止のため、横方向の複数の筋が設けられている。突起部36bは指先を当てるのに適した幅及び高さを有する。イジェクタレバー36は適度に弱い弾性体によって基端側に向けて弾性付勢されており、指を掛けて先端側に押し出し操作をすると円筒形状の先端装着部30の軸方向と平行に移動し、内部のイジェクタ機構が連動して試験片12を押し出し、先端装着部30から取り外すことができる。また、このような構成によれば、汚れの拭き取りを容易に行うことができる。
【0038】
補助機能ボタン40は、院内用途に特有の機能に用いられるボタンである。
【0039】
次に、血糖計10aの形状について説明する。説明の便宜上、モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とするが、使用時及び保管時等における血糖計10aの向きはこれに限定されることがないことはもちろんである。
【0040】
血糖計10aのハウジングは、主に、モニタ34及び操作ボタン群38が設けられた上ハウジング42aと、下側部分を構成する下ハウジング42bを合わせて構成されている。血糖計10aをテーブルTに置くときに、下ハウジング42bでテーブルTに接触する部分には、小突起43が設けられている。
【0041】
血糖計10aは、上面視で(図2参照)、モニタ34及び操作ボタン群38が設けられた主部44と、主部44と先端装着部30との間に設けられる中継部46とに区分することができる。中継部46は、主部44から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅に構成されており、その先端面には先端装着部30が設けられている。
【0042】
主部44は、モニタ34が設けられていて、ある程度の幅があるが、人手により把持可能な程度の幅である。主部44は、長さ方向(図2及び図3の矢印A方向)について、上面視(図2参照)で幅が略一定、側面視(図3参照)で上下方向の厚みが略一定となっており、把持しやすい。また、血糖計10aは左右対称形状であって、右手及び左手のいずれでも把持しやすい。
【0043】
血糖計10aは主部44以外に、中継部46を把持することも可能である。図5に示すように、中継部46は、主部44から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっており、適度に細く、しかも凹状であることから、指先で把持しやすい。また、中継部46は先端装着部30に近いことから、中継部46を把持することにより、装着された試験片12を安定させることができる。
【0044】
中継部46には先端装着部30に関わる幾つかの機構(例えば、試験紙20に対する測定部32、試験片12のイジェクト機構、先端装着部30を保持する機構等)を設けるスペースが好適な向きに確保されるとともに、中継部46を設けることにより試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向させやすい。また、中継部46の上面46aは試験片12の中心軸線Cと略平行に設定されており、視覚的に試験片12の向きを把握しやすい。
【0045】
さらに、中継部46の上面46aには、イジェクタレバー36が設けられており、該イジェクタレバー36は上面46aに沿った動作をすることになり、操作しやすくなり、しかもイジェクタレバー36の移動スペースを確保できる。
【0046】
側面視(図3参照)で、モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とし、モニタ34の表示面の延長線Lを基準として、中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向している。換言すると、モニタ34の表示面を上向きとして水平なテーブルT(水平面)に載置したときに、試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向する。このとき、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は27°であり、延長線LとテーブルTとのなす角度θ2は7°である。また、先端装着部30に装着された試験片12は、テーブルTから離間しており、試験片12に無用な外力が加わることがない。
【0047】
主部44の下面と中継部46の下面は、側面視で凹状の連続的な曲面50で接続されている。曲面50からみて基端側の近傍部には、指掛け突起52が設けられている。指掛け突起52は、側面視で低い三角形状であって、曲面50とともに滑らかな略円弧をなし、指1本が入るほどのスペースが形成されている。このような曲面50には指をかけやすく、血糖計10aを把持しやすい。
【0048】
血糖計10aにおける点着部22とテーブルTとの距離H1は13mmであり、下面の最高点PとテーブルTとの距離H2は11mmである。最高点Pは曲面50の一部である。
【0049】
点着部22は血糖計測時における操作対象部分であることから操作時における視認性が求められるとともに、テーブルTに載置しておく時にも状態確認のために視認性が求められており、該点着部22はテーブルTから離間させておくことが好適であるが、一方、無駄に離間させることは合理的でない。さらに、後述するように(図8及び図9参照)、血糖計10aをテーブルTに載置したまま点着動作をすることも考慮すると距離H1の好適な範囲がある。このような観点から、距離H1は3mm〜30mmの範囲、好ましくは9mm〜14mmの範囲に設定するとよい。
【0050】
テーブルTに載置した血糖計10aを把持する際には、最高点PとテーブルTとの間には指を入れるために適度な隙間があることが望ましく、距離H2は3mm〜20mmの範囲、好ましくは7mm〜12mmの範囲に設定するとよい。
【0051】
次に、このように構成される血糖計10aの使用方法について説明する。
【0052】
先ず、血糖計10aの電源を入れて、キャップ39を取り外し、試験片12を個包装体のケースとともにクリック感があるまで先端装着部30に押し込み、その後ケースだけを取り除く。これにより、試験片12が先端装着部30に装着される。測定部32では、試験紙20を検出した後、モニタ34に「OK」の表示を行い、血糖計測モードに自動的に移行する。さらに、所定の穿刺装置によって穿刺を行い指先(以下、左手の人差し指とする。)に血液玉60を設けておく。
【0053】
図6に示すように、患者は、右手で血糖計10aを把持した状態で血液玉60に対して試験片12の点着部22を接触させる点着動作を行う。このとき、左右の手首又はその近傍部をテーブルTに載せて安定させておく。
【0054】
図6から明らかなように、左右の手首部を普通にテーブルTに載せると各手の甲は斜め外向きとなって、左手人差し指は内向きとなるとともに、右手の手の平で握られる血糖計10aの主部44は斜め内向きを指向する。そうすると、中継部46は主部44に対してθ1(=27°)だけ屈曲していることから、試験片12の突起18及び中心軸線Cは内向きで略水平となって血液玉60を指向する。このとき、左手の血液玉60及び右手側の点着部22は、それぞれ内向きで接近しており、しかも患者の視線から遮るものはなく、視認性がよい。
【0055】
次いで、図7に示すように、両手首部をテーブルTに載せたまま右手と左手を略水平に接近させて点着動作を行う。
【0056】
このときの動作は、例えば、両手首部を内向きに軽く捻ればよく、簡単な動作であり、テーブルTに手首部を載せた状態で安定して行うことができる。したがって、手指が不自由な場合や、血糖計10aの操作に不慣れな場合であっても、手先が震えることなく、互いに小さい血液玉60と点着部22とを正しく接触させ、確実な点着動作がなされる。突起18及び中心軸線Cは、血液玉60を指向した状態で接触することから、血液玉60は点着部22の周辺や、突起18の側面又はフランジ16の部分に付着してしまうことが防止できる。
【0057】
図8に示すように、一層確実な点着動作を行うためには、血糖計10aをテーブルTに載置する一方、血液玉60を形成した1本の指68(例えば、人差し指)をテーブルTに載せたまま血糖計10aを近づけて点着を行ってもよい。
【0058】
前記の通り、点着部22のテーブルTからの距離H1は13mmである。一方、1本の指68をテーブルTに載せると血液玉60の高さは概ね3mm〜20mmの範囲で、通常は5mm〜14mm程度であって、当初13mmでなくても、指68の向き及び高さはこのような範囲で調整可能であることから、点着部22に対して高さを合わせることは容易であり、該点着部22を血液玉60に点着させやすい。このとき、指68及び血糖計10aはテーブルTに直接載せていることからそれぞれ極めて安定しており、確実な点着動作が行われる。
【0059】
また、図9に示すように、血液玉60を形成した指68に隣接する1本の指69(例えば、中指)をテーブルTに載せ、指68はその上に載せておいてもよい。2本の指68及び69をテーブルTに載せると上側の指68における血液玉60の高さは指の組み方、指の置き方等によって変化し、概ね5mm〜30mmの範囲で、通常は9mm〜20mm程度であって、当初13mmでなくても、指68の向き及び高さはこのような範囲で調整可能であることから、点着部22に対して高さを合わせることは容易であり、該点着部22を血液玉60に点着させやすい。このとき、血糖計10aはテーブルTに直接載せていることから極めて安定している。指68は指69の上に置かれ、適度に安定しており、確実な点着動作が行われる。
【0060】
すなわち、指68を1本だけテーブルTに置くと(図8参照)、安定性が高くなり、指68及び指69の2本をテーブルTに置くと(図9参照)、点着部22の高さの調整が容易となるので、患者の慣れに応じていずれかの点着動作を行うとよい。
【0061】
ところが3本以上の指(例えば、人差し指、中指及び薬指)をテーブルTに載せると、健常者であっても一番上の指(人差し指)は不安定になり、増して、手指が不自由な患者ではかなり不安定になることがあり、点着動作が却って行いにくい場合がある。したがって、テーブルTから点着部22までの距離H1は、1本の指又は2本の指に対応した高さである3mm〜30mmの範囲、好ましくは9mm〜14mmの範囲に設定することが好ましいのである。
【0062】
もちろん、血糖計10aの使用法として、手の震え等の懸念がない場合には点着動作を、テーブルTを用いることなく空中で行ってもよい。
【0063】
次に、正しい点着動作を行うと、血液玉60は毛管現象によって血液導入路24に吸い込まれ、試験紙20に十分な量が含浸され、試薬によって血糖値に応じて呈色反応を示す。測定部32では試験紙20の呈色反応を観測し、該呈色反応が安定した段階で、その呈色に基づいて制御部33で所定の計算により血糖値を求めてモニタ34に表示を行うとともに、ブザーにより計測が終了したことを報知する。呈色反応の観測中及び血糖値の計算の最中には、計測進行状況を示すため、モニタ34に計測終了までの予定時間を表示してもよい。
【0064】
この後、後処理として、試験片12に対して個包装体のカバーで覆った状態でイジェクタレバー36を操作して該カバーといっしょに試験片12を取り外し、電源をオフにして、先端装着部30にキャップ39をかぶせる。
【0065】
図6〜図9に示す操作方法は、患者自身が血糖計測を行うパーソナルユースの場合であるが、図10に示すように、院内用途として医療従事者62が血糖計10aの操作をしてもよい。図10から明らかなように、ベッド63に寝る患者64に対して医療従事者62が点着動作をする場合に、中継部46は主部44に対して下向きに屈曲していることから、中継部46をある程度角度をつけた状態でも主部44は略水平となり、医療従事者62は肘を下げた楽な姿勢で血糖計10aを把持することができ、しかも手の平66は血液玉60及び点着部22が死角となることがなく、視認性に優れている。したがって、血糖計10aでは、このような院内用途においても、血液玉60に対して点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0066】
上述したように、本実施の形態に係る血糖計10aによれば、水平なテーブルTに載置したときに、試験片12の中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している形状(換言すれば、モニタ34の表示面の延長線Lを基準として、中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している形状)とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉60に対して、試験片12の点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0067】
延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は、点着部22が血液玉60の方向をより正しく指向させるためには、10°以上、好ましくは15°以上とするとよい。一方、角度θ1を大きくすると中継部46が過度に下向きとなることから、血糖計10aを把持したとき及び載置時に点着部22の視認性が悪くなったり、安定感が損なわれたり、点着部22が血液玉60の方向を指向しなくなり、又は、載置時に試験片12がテーブルTに接触してしまう懸念がある。したがって、角度θ1は、40°以下、好ましくは30°以下にするとよい。結局、角度θ1は、各部の寸法に対する影響も勘案しながら、10°〜40°の範囲とし、好ましくは15°〜30°の範囲に設定するとよい。
【0068】
次に、変形例に係る血糖計10b、10c及び10dについて説明する。血糖計10b〜10dについて、血糖計10aと同じ箇所については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0069】
図11に示すように、第1の変形例に係る血糖計10bは、試験片70を装着可能なように、血糖計10aの先端装着部30を先端装着部72に変えたものである。図12に示すように、試験片70は薄く細い板状であり、中心軸線C上に血液導入路74が設けられている。試験片70は、従来品をそのまま適用可能である。
【0070】
血糖計10bでは、前記の血糖計10aと異なって、測定部32において光学手段ではなく、採取された血液を電気化学センサーによって求められる電流値に基づいて血糖値を計測する。
【0071】
血糖計10bでは、前記の血糖計10aと同様に、試験片70の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向しており、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は27°に設定されている。
【0072】
図13及び図14に示すように、第2の変形例に係る血糖計10cは、パーソナルユースのものであって、血糖計10aと比較して、操作ボタン群38におけるボタンの数が少なく、補助機能ボタン40がなく、小型である。血糖値を表示するモニタ76は前記のモニタ34よりも小さい。
【0073】
血糖計10cでは、血糖計10aよりも小さいことから、各部の寸法との関係上、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1を18°、角度θ2を5°、H1を10mm、H2を7mmに設定している。
【0074】
図15に示すように、第3の変形例に係る血糖計10dは、携帯に適した小さく細い形状であり、前記の中継部46に相当する部分はなく、先端部端面78に先端装着部30が設けられている。先端部端面78は、側面視(側面図は省略する。)で斜めに傾斜した形状であり、モニタ80の表示面の延長線Lを基準として、試験片12の中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している。
【0075】
このような第1〜第3の変形例に係る血糖計10b〜10dでは、前記の血糖計10aと同様に、延長線Lを基準として、試験片12(又は試験片70)の中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している。したがって、院内用途及びパーソナルユースのいずれの場合でも、試験片12(又は試験片70)の点着部22が血液玉60の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉60に対して、点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0076】
血糖計10a〜10dは、試料の特性として血糖値を計測するが、これに限られるものではなく、ホルモン濃度やコレステロール濃度等を測定する装置(血液成分測定装置)としても適用可能である。
【0077】
本発明に係る血液成分測定装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施の形態に係る血糖計の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る血糖計の平面図である。
【図3】本実施の形態に係る血糖計の側面図である。
【図4】試験片の断面図である。
【図5】中継部を把持した状態の血糖計の模式図である。
【図6】左右の手首又はその近傍部をテーブルに載せて、血糖計を把持し点着動作を行う前段階の模式図である。
【図7】左右の手首又はその近傍部をテーブルに載せて、血糖計を把持し点着動作をしている状態の模式図である。
【図8】1本の指をテーブルに載せて、該テーブルに載置した血糖計によって点着動作を行う模式図である。
【図9】2本の指をテーブルに載せて、該テーブルに載置した血糖計によって点着動作を行う模式図である。
【図10】医療従事者が患者に対して点着動作をしている状態の模式図である。
【図11】第1の変形例に係る血糖計の斜視図である。
【図12】第1の変形例に係る血糖計に適用される試験片の斜視図である。
【図13】第2の変形例に係る血糖計の平面図である。
【図14】第2の変形例に係る血糖計の側面図である。
【図15】第3の変形例に係る血糖計の斜視図である。
【図16】従来技術に係る血糖計により点着動作をする第1例の模式図である。
【図17】従来技術に係る血糖計により点着動作をする第2例の模式図である。
【符号の説明】
【0079】
10a〜10d、901…血糖計 12、70、902…試験片
20…試験紙 22、903…点着部
24、74…血液導入路 30、72…先端装着部
32…測定部 34、76、80…モニタ
34a…血糖値表示部 34b…補助表示部
36…イジェクタレバー 44…主部
46…中継部 46a…上面
50…曲面 60、900…血液玉
C…中心軸線 L…延長線
P…最高点 T…テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端装着部に試験片が装着され、該試験片における血液導入路を介して採取された血液から、ブドウ糖等の成分を測定するための血液成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者には、血糖値の変動を測定することによる日常的な管理が推奨されている。血糖値の測定は、血液中のブドウ糖量に応じて呈色する試薬が含浸された試験紙等の測定部を設け、該試験紙に血液を供給して呈色させ、その呈色の度合いを光学的に測定することにより血糖値を求めて表示をする血糖計が実用化されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。試験紙はディスポーザブルの試験片に設けられ、該試験片が血糖計の先端装着部に装着される。また、電気化学センサーを用いた血糖計も実用化されている。
【0003】
糖尿病患者の血液を採取する際には、先ず、所定の穿刺装置により皮膚(例えば、指、手の平等)を穿刺し、穿刺後には血液を微量流出させる。次いで、試験片を血糖計に装着しておき、該試験片における先端の点着部を血液玉に接触させ、細径の流通路を毛管現象によって血液を試験紙まで導入させる。
【0004】
一方、近時の血糖計は、糖尿病患者自身が日常的に血糖計測を行うのに用いるためのパーソナルユース以外に、医療施設に入院している複数の患者に対して医療従事者が計測を行う院内用途の要請がある。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3135393号公報(図2、図8)
【特許文献2】米国特許第7077328号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、糖尿病患者等は高齢者が多く、しかも糖尿病の合併症により手指が不自由である場合がある。また、特に手指が不自由でなくても、操作に不慣れな場合には、心理的要因等によって指先が震えて血糖計をうまく扱えない患者もいる。特に、穿刺によって得られる血液玉は微小であることから、この部分に試験片の点着部を接触させることは糖尿病患者にとって必ずしも容易な作業ではない。また、手が震えた状態で作業を行うと、点着部が血液玉に接触しても十分な血液が試験紙に含浸されないことがある。このような場合には、血糖計が正しく計測されないことから、試験片を交換した後に再度穿刺をして計測をやり直すことになる。
【0007】
本願発明者が行った調査によると、両腕を空中で自由な状態とすると手元が不安定となって血液玉に点着部を接触させることが困難であるが、手首部又はその近傍をテーブルに載せておくと手元が安定する患者が多いことが分かった。
【0008】
しかしながら、手首をテーブルに載せておくと該手首の動作の自由度が抑制され、血糖計の向きを適切に設定できなくなり、結局、血液玉に点着部を接触させることが困難である患者が多かった。すなわち、図16に示すように、一方の手(以下、左手とする。)において穿刺によって得られた血液玉900は垂れ落ちないように略上向きとしておくが、右手で把持する血糖計901及び試験片902は斜め上向き(図16の矢印参照)となり、先端の点着部903を血液玉900に当てることが困難になる。
【0009】
また、点着動作を空中で行う場合でも、図17に示すように、血液玉900を略上向きとしておくと、血液玉900に対して血糖計901を上方又は斜め上方から接近させることになり、血糖計901及び右手によって血液玉900や試験片902の点着部903が死角となってしまい、視認性に劣ることになり、点着動作をしにくい場合がある。試験片の点着部は血糖計測時における操作対象部分であることから操作時における視認性が求められるとともに、テーブルに載置しておく時にも状態確認のために視認性が求められる。
【0010】
さらに、血糖計の操作に習熟している医療従事者であっても、微小な血液玉に点着部を接触させることは注意力を要する作業であって、特に、多数の患者に対して計測を行う場合には、個々の計測処理はできる限り簡便に行えることが望ましいとともに、点着部の視認性が確保されることが望ましい。
【0011】
さらにまた、テーブル載置時に、血糖計に装着された試験片には無用な外力が加わらないことが望ましい。
【0012】
また、テーブル載置時に、点着部を血液玉と予め近づけておいた後に、血液と点着できることが望ましい。
【0013】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させて、計測エラーを抑制することのできる血液成分測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る血液成分測定装置は、試験片が装着される血液成分測定装置において、前記試験片が装着される先端装着部と、前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタとを有し、前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする。
【0015】
このように、水平面に載置したときに、試験片の中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る血液成分測定装置は、試験片が装着される血液成分測定装置において、前記試験片が装着される先端装着部と、前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタとを有し、前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、側面視で、前記モニタの表示面の延長線を基準として、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする。
【0017】
このように、モニタの表示面の延長線を基準として、試験片の中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0018】
前記延長線と前記中心軸線とのなす角度は10°〜40°であってもよい。このような角度設定によれば、試験片の点着部が血液玉の方向をより正しく指向する。
【0019】
前記モニタが設けられる主部と、前記主部と前記先端装着部との間に設けられる中継部とを有し、前記中継部の上面は、前記中心軸線と略平行に設定されていてもよい。このような中継部には先端装着部に関わる幾つかの機構を設けるスペースが好適な向きに確保されるとともに、中継部を設けることにより試験片の中心軸線を先端側に向けて斜め下方を指向させやすい。また、中継部の上面を試験片の中心軸線と略平行に設定することにより、視覚的に試験片の向きを把握しやすい。
【0020】
前記中継部の上面には、先端側に向かって押し出し操作をすることによって、装着された前記試験片を取り外すイジェクタレバーが設けられていてもよい。これにより、イジェクタレバーは上面に沿った動作をすることになり、操作しやすくなり、しかもイジェクタレバーの移動スペースを確保できる。
【0021】
上面視で、前記中継部は、前記主部から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっていてもよい。これにより中継部は適度に細くなり、しかも凹状であることから、指先で把持しやすい。また、中継部は先端装着部に近いことから、中継部を把持することにより、装着された試験片を安定させることができる。
【0022】
前記主部は、上下方向の厚みが略一定で、側面視で、前記主部と前記中継部は、下面が凹状の連続的な曲面で接続されていてもよい。このような凹状で連続的な曲面には指をかけやすく、血液成分測定装置を把持しやすい。
【0023】
前記先端装着部に前記試験片を装着し、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片における先端の点着部と前記水平面との距離が3mm〜30mmであってもよい。これにより、血液玉を形成した指や手の平をテーブルに載せる一方、血糖計をテーブルに載置したまま点着部を血液玉に近づけるように移動させて、血液点着を行うことができるので、手指の不自由な患者でも容易に血糖計測を行うことができる。また、テーブルに載置しておく時に点着部の視認性がよく、その状態確認をすることができる。
【0024】
前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、下面における最高点と前記水平面との距離が3mm〜20mmであってもよい。これにより、テーブルに載置したときに指を入れるために適度な隙間が確保され、把持しやすくなる。
【0025】
前記先端装着部に前記試験片を装着し、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片は前記水平面から離間していてもよい。これにより、試験片に無用な外力が加わることがない。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る血液成分測定装置は、水平面に載置したときに、試験片の中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状(換言すれば、モニタの表示面の延長線を基準として、中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状)、とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る血液成分測定装置について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図15を参照しながら説明する。
【0028】
図1、図2及び図3に示すように、本実施の形態に係る血糖計(血液成分測定装置)10aは、先端に試験片12が装着される。先ず試験片12について説明する。
【0029】
図4に示すように、試験片12は、ベース筒14と、ベース筒14の一方を覆うフランジ16と、フランジ16から突出する錐状の突起18と、フランジ16の裏面に貼られた試験紙20とを有する。ベース筒14には複数のスリット14a(図1参照)が設けられている。突起18の中心には、先端の点着部22から試験紙20に連通する直線状の血液導入路24が設けられている。試験紙20の材質としては、例えば、ポリエーテルスルホンが挙げられる。試験紙20に含浸される試薬としては、例えば、グルコースオキシターゼ(GOD)、ペルオキシターゼ(POD)、4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)等の発色剤が挙げられる。また、試薬には所定の緩衝剤が含まれていてもよい。血液導入路24は、一般的に、試験片12の中心軸線C上に設けられている。試験片12の中心軸線Cとは、試験片12の点着部22の向いている方向であって、点着部22の先端を通過する直線とする。
【0030】
試験片12は、いわゆるディスポーザブル品であり、図示しない個包装体に包装され、予め滅菌されている。血液導入路24は、血液を毛管現象により吸い上げる程度に十分細径に設定されており、点着部22に接触した血液を試験紙20まで導入する。試験片12は、従来品をそのまま適用可能である。
【0031】
図1〜図3に戻り、本実施の形態に係る血糖計10aは、試験片12が装着される先端装着部30と、先端装着部30に装着された試験片12における血液導入路24を介して採取された血液の成分による試験紙20の呈色を測定する測定部32と、測定部32によって測定された結果を制御部(マイクロコンピュータ等)33を介して表示する液晶のモニタ34と、先端側に向かって押し出し操作をすることによって装着された試験片12を取り外すイジェクタレバー36と、操作ボタン群38と、補助機能ボタン40と、先端装着部30を保護するキャップ39とを有する。血糖計10aは、全体的に角部のない滑らかな形状である。煩雑となるため、図1以外ではキャップ39を省略している。前記測定部32は、試験片12の成分検出方式に合わせ、種々の機構が採用できる。
【0032】
血糖計10aは、医療施設に入院している複数の患者に対して医療従事者が計測を行う院内用途であり、患者毎のデータ記録・呼び出し機能や、そのためのボタンが設けられており、後述するパーソナルユースの血糖計10c(図13参照)よりもやや大型である。もちろん、特段の改造をすることなく、血糖計10aをそのままパーソナルユースとすることも可能である。
【0033】
先端装着部30は、試験片12が装着されることから円筒形状となっており、ベース筒14(図4参照)を挿入することにより試験片12を容易且つ安定して装着可能である。
【0034】
血糖計10aは、内部の制御部33によって制御されており、光学手段で構成される測定部32により試験紙20に対して投光及び受光を連続的に行い、その呈色に基づいた所定の計算により血糖値を求めてモニタ34に表示を行う。試験紙20の呈色反応が観測されず、又は不十分である場合には所定のエラー表示を行う。血糖計10aによる血糖値計測の制御手順は、基本的には従来技術に係る血糖計と同じである。
【0035】
モニタ34は、血糖値を表示する血糖値表示部34aと、時刻やその他の情報を表示する補助表示部34bとを含む。血糖値表示部34aは、数字3桁の表示及び、所定の文字表示(例えば、「OK」という文字)が可能である。糖尿病患者には視力が弱い者もいることから、視認性を考慮してモニタ34は十分に大きい設定となっている。モニタ34は、少なくともその液晶表示面は平面である。
【0036】
操作ボタン群38は、基端側にまとめて設けられており、電源ボタン38a、移動ボタン38b、38c、選択ボタン38d、38e及びLED表示部38fを含む。移動ボタン38b、38cは、モニタ34に表示される項目を移動させ、あるいは移動に伴い画面をスクロールさせる等の機能を有する。選択ボタン38d、38eは、それぞれの位置に対応したモニタ34に表示された機能を選択する等の機能を有する。LED表示部38fは、LEDにより種々の色で点灯、点滅等して、血糖計の状態を報知する等の機能を有する。
【0037】
イジェクタレバー36は、先端装着部30の近傍における上面46aに設けられ、指をかけるのに適した大きさの丸型のレバーであり、基端側の平坦部36aと、先端側の突起部36bとを有する。イジェクタレバー36は、上面46aに沿って移動可能である。平坦部36aには滑り防止のため、横方向の複数の筋が設けられている。突起部36bは指先を当てるのに適した幅及び高さを有する。イジェクタレバー36は適度に弱い弾性体によって基端側に向けて弾性付勢されており、指を掛けて先端側に押し出し操作をすると円筒形状の先端装着部30の軸方向と平行に移動し、内部のイジェクタ機構が連動して試験片12を押し出し、先端装着部30から取り外すことができる。また、このような構成によれば、汚れの拭き取りを容易に行うことができる。
【0038】
補助機能ボタン40は、院内用途に特有の機能に用いられるボタンである。
【0039】
次に、血糖計10aの形状について説明する。説明の便宜上、モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とするが、使用時及び保管時等における血糖計10aの向きはこれに限定されることがないことはもちろんである。
【0040】
血糖計10aのハウジングは、主に、モニタ34及び操作ボタン群38が設けられた上ハウジング42aと、下側部分を構成する下ハウジング42bを合わせて構成されている。血糖計10aをテーブルTに置くときに、下ハウジング42bでテーブルTに接触する部分には、小突起43が設けられている。
【0041】
血糖計10aは、上面視で(図2参照)、モニタ34及び操作ボタン群38が設けられた主部44と、主部44と先端装着部30との間に設けられる中継部46とに区分することができる。中継部46は、主部44から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅に構成されており、その先端面には先端装着部30が設けられている。
【0042】
主部44は、モニタ34が設けられていて、ある程度の幅があるが、人手により把持可能な程度の幅である。主部44は、長さ方向(図2及び図3の矢印A方向)について、上面視(図2参照)で幅が略一定、側面視(図3参照)で上下方向の厚みが略一定となっており、把持しやすい。また、血糖計10aは左右対称形状であって、右手及び左手のいずれでも把持しやすい。
【0043】
血糖計10aは主部44以外に、中継部46を把持することも可能である。図5に示すように、中継部46は、主部44から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっており、適度に細く、しかも凹状であることから、指先で把持しやすい。また、中継部46は先端装着部30に近いことから、中継部46を把持することにより、装着された試験片12を安定させることができる。
【0044】
中継部46には先端装着部30に関わる幾つかの機構(例えば、試験紙20に対する測定部32、試験片12のイジェクト機構、先端装着部30を保持する機構等)を設けるスペースが好適な向きに確保されるとともに、中継部46を設けることにより試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向させやすい。また、中継部46の上面46aは試験片12の中心軸線Cと略平行に設定されており、視覚的に試験片12の向きを把握しやすい。
【0045】
さらに、中継部46の上面46aには、イジェクタレバー36が設けられており、該イジェクタレバー36は上面46aに沿った動作をすることになり、操作しやすくなり、しかもイジェクタレバー36の移動スペースを確保できる。
【0046】
側面視(図3参照)で、モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とし、モニタ34の表示面の延長線Lを基準として、中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向している。換言すると、モニタ34の表示面を上向きとして水平なテーブルT(水平面)に載置したときに、試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向する。このとき、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は27°であり、延長線LとテーブルTとのなす角度θ2は7°である。また、先端装着部30に装着された試験片12は、テーブルTから離間しており、試験片12に無用な外力が加わることがない。
【0047】
主部44の下面と中継部46の下面は、側面視で凹状の連続的な曲面50で接続されている。曲面50からみて基端側の近傍部には、指掛け突起52が設けられている。指掛け突起52は、側面視で低い三角形状であって、曲面50とともに滑らかな略円弧をなし、指1本が入るほどのスペースが形成されている。このような曲面50には指をかけやすく、血糖計10aを把持しやすい。
【0048】
血糖計10aにおける点着部22とテーブルTとの距離H1は13mmであり、下面の最高点PとテーブルTとの距離H2は11mmである。最高点Pは曲面50の一部である。
【0049】
点着部22は血糖計測時における操作対象部分であることから操作時における視認性が求められるとともに、テーブルTに載置しておく時にも状態確認のために視認性が求められており、該点着部22はテーブルTから離間させておくことが好適であるが、一方、無駄に離間させることは合理的でない。さらに、後述するように(図8及び図9参照)、血糖計10aをテーブルTに載置したまま点着動作をすることも考慮すると距離H1の好適な範囲がある。このような観点から、距離H1は3mm〜30mmの範囲、好ましくは9mm〜14mmの範囲に設定するとよい。
【0050】
テーブルTに載置した血糖計10aを把持する際には、最高点PとテーブルTとの間には指を入れるために適度な隙間があることが望ましく、距離H2は3mm〜20mmの範囲、好ましくは7mm〜12mmの範囲に設定するとよい。
【0051】
次に、このように構成される血糖計10aの使用方法について説明する。
【0052】
先ず、血糖計10aの電源を入れて、キャップ39を取り外し、試験片12を個包装体のケースとともにクリック感があるまで先端装着部30に押し込み、その後ケースだけを取り除く。これにより、試験片12が先端装着部30に装着される。測定部32では、試験紙20を検出した後、モニタ34に「OK」の表示を行い、血糖計測モードに自動的に移行する。さらに、所定の穿刺装置によって穿刺を行い指先(以下、左手の人差し指とする。)に血液玉60を設けておく。
【0053】
図6に示すように、患者は、右手で血糖計10aを把持した状態で血液玉60に対して試験片12の点着部22を接触させる点着動作を行う。このとき、左右の手首又はその近傍部をテーブルTに載せて安定させておく。
【0054】
図6から明らかなように、左右の手首部を普通にテーブルTに載せると各手の甲は斜め外向きとなって、左手人差し指は内向きとなるとともに、右手の手の平で握られる血糖計10aの主部44は斜め内向きを指向する。そうすると、中継部46は主部44に対してθ1(=27°)だけ屈曲していることから、試験片12の突起18及び中心軸線Cは内向きで略水平となって血液玉60を指向する。このとき、左手の血液玉60及び右手側の点着部22は、それぞれ内向きで接近しており、しかも患者の視線から遮るものはなく、視認性がよい。
【0055】
次いで、図7に示すように、両手首部をテーブルTに載せたまま右手と左手を略水平に接近させて点着動作を行う。
【0056】
このときの動作は、例えば、両手首部を内向きに軽く捻ればよく、簡単な動作であり、テーブルTに手首部を載せた状態で安定して行うことができる。したがって、手指が不自由な場合や、血糖計10aの操作に不慣れな場合であっても、手先が震えることなく、互いに小さい血液玉60と点着部22とを正しく接触させ、確実な点着動作がなされる。突起18及び中心軸線Cは、血液玉60を指向した状態で接触することから、血液玉60は点着部22の周辺や、突起18の側面又はフランジ16の部分に付着してしまうことが防止できる。
【0057】
図8に示すように、一層確実な点着動作を行うためには、血糖計10aをテーブルTに載置する一方、血液玉60を形成した1本の指68(例えば、人差し指)をテーブルTに載せたまま血糖計10aを近づけて点着を行ってもよい。
【0058】
前記の通り、点着部22のテーブルTからの距離H1は13mmである。一方、1本の指68をテーブルTに載せると血液玉60の高さは概ね3mm〜20mmの範囲で、通常は5mm〜14mm程度であって、当初13mmでなくても、指68の向き及び高さはこのような範囲で調整可能であることから、点着部22に対して高さを合わせることは容易であり、該点着部22を血液玉60に点着させやすい。このとき、指68及び血糖計10aはテーブルTに直接載せていることからそれぞれ極めて安定しており、確実な点着動作が行われる。
【0059】
また、図9に示すように、血液玉60を形成した指68に隣接する1本の指69(例えば、中指)をテーブルTに載せ、指68はその上に載せておいてもよい。2本の指68及び69をテーブルTに載せると上側の指68における血液玉60の高さは指の組み方、指の置き方等によって変化し、概ね5mm〜30mmの範囲で、通常は9mm〜20mm程度であって、当初13mmでなくても、指68の向き及び高さはこのような範囲で調整可能であることから、点着部22に対して高さを合わせることは容易であり、該点着部22を血液玉60に点着させやすい。このとき、血糖計10aはテーブルTに直接載せていることから極めて安定している。指68は指69の上に置かれ、適度に安定しており、確実な点着動作が行われる。
【0060】
すなわち、指68を1本だけテーブルTに置くと(図8参照)、安定性が高くなり、指68及び指69の2本をテーブルTに置くと(図9参照)、点着部22の高さの調整が容易となるので、患者の慣れに応じていずれかの点着動作を行うとよい。
【0061】
ところが3本以上の指(例えば、人差し指、中指及び薬指)をテーブルTに載せると、健常者であっても一番上の指(人差し指)は不安定になり、増して、手指が不自由な患者ではかなり不安定になることがあり、点着動作が却って行いにくい場合がある。したがって、テーブルTから点着部22までの距離H1は、1本の指又は2本の指に対応した高さである3mm〜30mmの範囲、好ましくは9mm〜14mmの範囲に設定することが好ましいのである。
【0062】
もちろん、血糖計10aの使用法として、手の震え等の懸念がない場合には点着動作を、テーブルTを用いることなく空中で行ってもよい。
【0063】
次に、正しい点着動作を行うと、血液玉60は毛管現象によって血液導入路24に吸い込まれ、試験紙20に十分な量が含浸され、試薬によって血糖値に応じて呈色反応を示す。測定部32では試験紙20の呈色反応を観測し、該呈色反応が安定した段階で、その呈色に基づいて制御部33で所定の計算により血糖値を求めてモニタ34に表示を行うとともに、ブザーにより計測が終了したことを報知する。呈色反応の観測中及び血糖値の計算の最中には、計測進行状況を示すため、モニタ34に計測終了までの予定時間を表示してもよい。
【0064】
この後、後処理として、試験片12に対して個包装体のカバーで覆った状態でイジェクタレバー36を操作して該カバーといっしょに試験片12を取り外し、電源をオフにして、先端装着部30にキャップ39をかぶせる。
【0065】
図6〜図9に示す操作方法は、患者自身が血糖計測を行うパーソナルユースの場合であるが、図10に示すように、院内用途として医療従事者62が血糖計10aの操作をしてもよい。図10から明らかなように、ベッド63に寝る患者64に対して医療従事者62が点着動作をする場合に、中継部46は主部44に対して下向きに屈曲していることから、中継部46をある程度角度をつけた状態でも主部44は略水平となり、医療従事者62は肘を下げた楽な姿勢で血糖計10aを把持することができ、しかも手の平66は血液玉60及び点着部22が死角となることがなく、視認性に優れている。したがって、血糖計10aでは、このような院内用途においても、血液玉60に対して点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0066】
上述したように、本実施の形態に係る血糖計10aによれば、水平なテーブルTに載置したときに、試験片12の中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している形状(換言すれば、モニタ34の表示面の延長線Lを基準として、中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している形状)とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉60に対して、試験片12の点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0067】
延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は、点着部22が血液玉60の方向をより正しく指向させるためには、10°以上、好ましくは15°以上とするとよい。一方、角度θ1を大きくすると中継部46が過度に下向きとなることから、血糖計10aを把持したとき及び載置時に点着部22の視認性が悪くなったり、安定感が損なわれたり、点着部22が血液玉60の方向を指向しなくなり、又は、載置時に試験片12がテーブルTに接触してしまう懸念がある。したがって、角度θ1は、40°以下、好ましくは30°以下にするとよい。結局、角度θ1は、各部の寸法に対する影響も勘案しながら、10°〜40°の範囲とし、好ましくは15°〜30°の範囲に設定するとよい。
【0068】
次に、変形例に係る血糖計10b、10c及び10dについて説明する。血糖計10b〜10dについて、血糖計10aと同じ箇所については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0069】
図11に示すように、第1の変形例に係る血糖計10bは、試験片70を装着可能なように、血糖計10aの先端装着部30を先端装着部72に変えたものである。図12に示すように、試験片70は薄く細い板状であり、中心軸線C上に血液導入路74が設けられている。試験片70は、従来品をそのまま適用可能である。
【0070】
血糖計10bでは、前記の血糖計10aと異なって、測定部32において光学手段ではなく、採取された血液を電気化学センサーによって求められる電流値に基づいて血糖値を計測する。
【0071】
血糖計10bでは、前記の血糖計10aと同様に、試験片70の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向しており、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は27°に設定されている。
【0072】
図13及び図14に示すように、第2の変形例に係る血糖計10cは、パーソナルユースのものであって、血糖計10aと比較して、操作ボタン群38におけるボタンの数が少なく、補助機能ボタン40がなく、小型である。血糖値を表示するモニタ76は前記のモニタ34よりも小さい。
【0073】
血糖計10cでは、血糖計10aよりも小さいことから、各部の寸法との関係上、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1を18°、角度θ2を5°、H1を10mm、H2を7mmに設定している。
【0074】
図15に示すように、第3の変形例に係る血糖計10dは、携帯に適した小さく細い形状であり、前記の中継部46に相当する部分はなく、先端部端面78に先端装着部30が設けられている。先端部端面78は、側面視(側面図は省略する。)で斜めに傾斜した形状であり、モニタ80の表示面の延長線Lを基準として、試験片12の中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している。
【0075】
このような第1〜第3の変形例に係る血糖計10b〜10dでは、前記の血糖計10aと同様に、延長線Lを基準として、試験片12(又は試験片70)の中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している。したがって、院内用途及びパーソナルユースのいずれの場合でも、試験片12(又は試験片70)の点着部22が血液玉60の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉60に対して、点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0076】
血糖計10a〜10dは、試料の特性として血糖値を計測するが、これに限られるものではなく、ホルモン濃度やコレステロール濃度等を測定する装置(血液成分測定装置)としても適用可能である。
【0077】
本発明に係る血液成分測定装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施の形態に係る血糖計の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る血糖計の平面図である。
【図3】本実施の形態に係る血糖計の側面図である。
【図4】試験片の断面図である。
【図5】中継部を把持した状態の血糖計の模式図である。
【図6】左右の手首又はその近傍部をテーブルに載せて、血糖計を把持し点着動作を行う前段階の模式図である。
【図7】左右の手首又はその近傍部をテーブルに載せて、血糖計を把持し点着動作をしている状態の模式図である。
【図8】1本の指をテーブルに載せて、該テーブルに載置した血糖計によって点着動作を行う模式図である。
【図9】2本の指をテーブルに載せて、該テーブルに載置した血糖計によって点着動作を行う模式図である。
【図10】医療従事者が患者に対して点着動作をしている状態の模式図である。
【図11】第1の変形例に係る血糖計の斜視図である。
【図12】第1の変形例に係る血糖計に適用される試験片の斜視図である。
【図13】第2の変形例に係る血糖計の平面図である。
【図14】第2の変形例に係る血糖計の側面図である。
【図15】第3の変形例に係る血糖計の斜視図である。
【図16】従来技術に係る血糖計により点着動作をする第1例の模式図である。
【図17】従来技術に係る血糖計により点着動作をする第2例の模式図である。
【符号の説明】
【0079】
10a〜10d、901…血糖計 12、70、902…試験片
20…試験紙 22、903…点着部
24、74…血液導入路 30、72…先端装着部
32…測定部 34、76、80…モニタ
34a…血糖値表示部 34b…補助表示部
36…イジェクタレバー 44…主部
46…中継部 46a…上面
50…曲面 60、900…血液玉
C…中心軸線 L…延長線
P…最高点 T…テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片が装着される血液成分測定装置において、
前記試験片が装着される先端装着部と、
前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、
前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタと、
を有し、
前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、
前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、
前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項2】
試験片が装着される血液成分測定装置において、
前記試験片が装着される先端装着部と、
前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、
前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタと、
を有し、
前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、
側面視で、前記モニタの表示面の延長線を基準として、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の血液成分測定装置において、
前記延長線と前記中心軸線とのなす角度は10°〜40°であることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記モニタが設けられる主部と、
前記主部と前記先端装着部との間に設けられる中継部と、
を有し、
前記中継部の上面は、前記中心軸線と略平行に設定されていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の血液成分測定装置において、
前記中継部の上面には、先端側に向かって押し出し操作をすることによって、装着された前記試験片を取り外すイジェクタレバーが設けられていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の血液成分測定装置において、
上面視で、前記中継部は、前記主部から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記主部は、上下方向の厚みが略一定で、
側面視で、前記主部と前記中継部は、下面が凹状の連続的な曲面で接続されていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項8】
請求項7記載の血液成分測定装置において、
前記先端装着部に前記試験片を装着し、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片における先端の点着部と前記水平面との距離が3mm〜30mmであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、下面における最高点と前記水平面との距離が3mm〜20mmであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記先端装着部に前記試験片を装着し、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片は前記水平面から離間していることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項1】
試験片が装着される血液成分測定装置において、
前記試験片が装着される先端装着部と、
前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、
前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタと、
を有し、
前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、
前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、
前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項2】
試験片が装着される血液成分測定装置において、
前記試験片が装着される先端装着部と、
前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、
前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタと、
を有し、
前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、
側面視で、前記モニタの表示面の延長線を基準として、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の血液成分測定装置において、
前記延長線と前記中心軸線とのなす角度は10°〜40°であることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記モニタが設けられる主部と、
前記主部と前記先端装着部との間に設けられる中継部と、
を有し、
前記中継部の上面は、前記中心軸線と略平行に設定されていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の血液成分測定装置において、
前記中継部の上面には、先端側に向かって押し出し操作をすることによって、装着された前記試験片を取り外すイジェクタレバーが設けられていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の血液成分測定装置において、
上面視で、前記中継部は、前記主部から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記主部は、上下方向の厚みが略一定で、
側面視で、前記主部と前記中継部は、下面が凹状の連続的な曲面で接続されていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項8】
請求項7記載の血液成分測定装置において、
前記先端装着部に前記試験片を装着し、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片における先端の点着部と前記水平面との距離が3mm〜30mmであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、下面における最高点と前記水平面との距離が3mm〜20mmであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記先端装着部に前記試験片を装着し、前記モニタの表示面を上向きとして水平面に載置したときに、前記試験片は前記水平面から離間していることを特徴とする血液成分測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−122147(P2010−122147A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297869(P2008−297869)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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