血液成分測定装置
【課題】血液成分測定装置で、操作者識別データ等のデータ読み込みを簡便、迅速且つ安定して行う。
【解決手段】血糖計10aは、試験片12が装着される先端装着部30と、先端装着部30に装着された試験片12における血液導入路24を介して採取された血液の成分を測定する測定部32と、測定部32によって測定された結果を表示するモニタ34と、後端に設けられたバーコードリーダ48と、モニタ34が設けられる主部44と、該主部44と先端装着部30との間に設けられる中継部46と、主部44と中継部46との接続箇所で、側面視で下面が凹状の曲面部50とを有する。モニタ34が設けられる側の面で、モニタ34と先端装着部30との間に、バーコードリーダ48の操作をするデータ読取ボタン40が設けられている。
【解決手段】血糖計10aは、試験片12が装着される先端装着部30と、先端装着部30に装着された試験片12における血液導入路24を介して採取された血液の成分を測定する測定部32と、測定部32によって測定された結果を表示するモニタ34と、後端に設けられたバーコードリーダ48と、モニタ34が設けられる主部44と、該主部44と先端装着部30との間に設けられる中継部46と、主部44と中継部46との接続箇所で、側面視で下面が凹状の曲面部50とを有する。モニタ34が設けられる側の面で、モニタ34と先端装着部30との間に、バーコードリーダ48の操作をするデータ読取ボタン40が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端装着部に試験片が装着され、該試験片における血液導入路を介して採取された血液から、ブドウ糖等の成分を測定するための血液成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者には、血糖値の変動を測定することによる日常的な管理が推奨されている。血糖値の測定は、血液中のブドウ糖量に応じて呈色する試薬が含浸された試験紙等の測定部を設け、該試験紙に血液を供給して呈色させ、その呈色の度合いを光学的に測定することにより血糖値を求めて表示をする血糖計が実用化されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。試験紙はディスポーザブルの試験片に設けられ、該試験片が血糖計の先端装着部に装着される。また、電気化学センサーを用いた血糖計も実用化されている。
【0003】
糖尿病患者の血液を採取する際には、先ず、所定の穿刺装置により皮膚(例えば、指、手の平等)を穿刺し、穿刺後には血液を微量流出させる。次いで、試験片を血糖計に装着しておき、該試験片における先端の点着部を血液玉に接触させ、細径の流通路を毛管現象によって血液を試験紙まで導入させる。
【0004】
特許文献3記載の血糖計は、スキャンボタンを押すことによってバーコードデータの計測をするバーコードリーダが先端窓部内に設けられており、患者、使用者、試験片、制御器等の情報を読み取り可能になっている。先端部における先端窓の近傍には、血液計測部が設けられている。
【0005】
一方、近時の血糖計は、糖尿病患者自身が日常的に血糖計測を行うのに用いるためのパーソナルユース以外に、医療施設に入院している複数の患者に対して医療従事者が計測を行う院内用途の要請がある。
【0006】
血糖計には、複数回の血糖計測値を記憶しておく機能を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3135393号公報(図2、図8)
【特許文献2】特開2000−46834号公報
【特許文献3】米国特許第7077328号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医療施設内においては、患者及び医療従事者(看護師、医師等)がそれぞれ複数存在していることから、血糖計を院内用途して用いる場合には、パーソナルユースとは異なる仕様が必要になると考えられる。
【0009】
すなわち、血糖計には複数回の血糖計測値を記憶しておく機能を有するものがあるが、医療施設では1台の血糖計を複数の患者の血糖計測に用いることが想定されるので、計測した血糖値を患者毎に区別して記憶する必要が生じる。また、いわゆるトレーサビリティの記録のため、1回の計測毎に血糖計測を行った操作者を特定できることが望まれる。このように患者及び使用者を特定するためには、その識別情報を血糖計に読み込むことが必要になる。
【0010】
さらに、このような識別情報の取得は、患者に対して違和感を与えることなく、迅速且つ安定して行えることが望ましい。
【0011】
一方、前記の特許文献3記載の血糖計では、幾つかの問題が考えられる。
【0012】
第1に、バーコードリーダが先端に設けられていることから、スキャン時に発生するレーザ光が患者の方向に向かい患者に違和感を与える懸念がある。
【0013】
第2に、バーコードリーダと先端計測部が極めて近くに配置されていることから、バーコードの読み取りの際に先端計測部に装着される試験片を何らかの他の物体(生体を含む)に当ててしまう可能性がある。血糖値計測の前であれば、試験片の点着部が汚れ又は破損して、正しい計測ができなくなる懸念がある。血糖値計測の後であれば、点着部には血液が付着しており、当接した他の物体を汚してしまう。
【0014】
第3に、モニタが先端計測部の近傍に配置されていることから、先端部がかなり大きくなってバランスが悪く、しかも把持部はモニタよりも後方にあることから先端計測部から遠く、結果として先端計測部が不安定になり易い。
【0015】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、データの読取を簡便、迅速且つ安定してい行うことができる血液成分測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る血液成分測定装置は、試験片が装着される血液成分測定装置において、前記試験片が装着される先端装着部と、前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタと、後端に設けられたデータ読取光学手段と、前記モニタが設けられる主部と、前記主部と前記先端装着部との間に設けられる中継部と、前記主部と前記中継部との接続箇所で、側面視で下面が凹状の曲面部とを有することを特徴とする。
【0017】
後端部にデータ読取光学手段を設けることにより、先端装着部から離れて逆方向を指向することから、データの読み取りの際に試験片を何らかの他の物体に当ててしまうことが防止される。また、凹状の曲面部は、把持部として用いることができ、しかも先端装着部に近いことから血液玉に試験片の点着部を合わせることが容易となり、安定した操作が可能となる。このように、本発明に係る血液成分測定装置によれば、データの読取りを簡便、迅速且つ安定して行うことができる。
【0018】
前記モニタが設けられる側の面で、モニタと前記先端装着部との間に、前記データ読取光学手段の操作スイッチを有してもよい。
【0019】
モニタと先端装着部との間は操作スイッチの操作をし易い場所であり、操作スイッチを設けるのに好適である。また、この位置に操作スイッチが設けられることにより、血液成分の測定操作時とデータの読取操作時で手の位置を握り替える必要がなく、効率的である。操作スイッチは曲面部の略反対側になり、該曲面部に当てられた指(例えば人差し指)と操作スイッチを押す指(例えば、親指)により挟持されて安定した把持及び操作が可能になる。
【0020】
前記データ読取光学手段は、バーコードリーダであってもよい。
【0021】
前記データ読取手段は、2次元コードを読み取るカメラであってもよい。
【0022】
上面視で、前記中継部は、前記主部から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっていてもよい。これにより中継部は適度に細くなり、しかも凹状であることから、指先で把持し易い。また、中継部は先端装着部に近いことから、中継部を把持することにより、装着された試験片の点着部に血液玉を接触しやすく、安定した操作をすることができる。
【0023】
前記曲面部の曲率半径は、5mm〜25mmであると、指を当て易い。
【0024】
前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、側面視で、前記モニタの表示面の延長線を基準として、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していてもよい。このように、モニタの表示面の延長線を基準として、試験片の中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る血液成分測定装置によれば、非接触で簡便なデータ読取が可能となる。また、コネクタ接続操作等が不要で、迅速にデータ読取を行うことができる。
【0026】
データ読取光学手段は、後端部に設けられていることから先端の試験片及び測定部とは逆方向であって、患者とは逆を指向することになり患者に対して違和感を与えることが少ない。
【0027】
主部と中継部との接続箇所には下面が凹状の曲面部が設けられていることから、指が当てられて血液成分測定装置が安定する。したがってデータ読取光学手段による光学的な読取が安定して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態に係る血糖計の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る血糖計の平面図である。
【図3】本実施の形態に係る血糖計の側面図である。
【図4】本実施の形態に係る血糖計の後端部の拡大斜視図図である。
【図5】試験片の断面図である。
【図6】曲面部に指を入れて把持した状態の血糖計の側面図である。
【図7】中継部を把持した状態の血糖計の模式図である。
【図8】医療従事者が血糖計によって自分の測定者識別データを読み込む様子を示す図である。
【図9】医療従事者が血糖計によって患者識別データを読み込む様子を示す図である。
【図10】1本の指をテーブルに載せて、該テーブルに載置した血糖計によって点着動作を行う模式図である。
【図11】2本の指をテーブルに載せて、該テーブルに載置した血糖計によって点着動作を行う模式図である。
【図12】医療従事者が患者に対して点着動作をしている状態の模式図である。
【図13】第1の変形例に係る血糖計の斜視図である。
【図14】第1の変形例に係る血糖計に適用される試験片の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る血液成分測定装置について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図14を参照しながら説明する。
【0030】
図1、図2、図3及び図4に示すように、本実施の形態に係る血糖計(血液成分測定装置)10aは、先端に試験片12が装着される。血糖計10aは複数回の血糖計測値を記憶しておく機能を有しており、医療施設では1台の血糖計10aを複数の患者の血糖計測に用いることができる。先ず試験片12について説明する。
【0031】
図5に示すように、試験片12は、ベース筒14と、ベース筒14の一方を覆うフランジ16と、フランジ16から突出する錐状の突起18と、フランジ16の裏面に貼られた試験紙20とを有する。ベース筒14には複数のスリット14a(図1参照)が設けられている。突起18の中心には、先端の点着部22から試験紙20に連通する直線状の血液導入路24が設けられている。試験紙20の材質としては、例えば、ポリエーテルスルホンが挙げられる。試験紙20に含浸される試薬としては、例えば、グルコースオキシターゼ(GOD)、ペルオキシターゼ(POD)、4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)等の発色剤が挙げられる。また、試薬には所定の緩衝剤が含まれていてもよい。血液導入路24は、一般的に、試験片12の中心軸線C上に設けられている。試験片12の中心軸線Cとは、試験片12の点着部22の向いている方向であって、点着部22の先端を通過する直線とする。
【0032】
試験片12は、いわゆるディスポーザブル品であり、図示しない個包装体に包装され、予め滅菌されている。血液導入路24は、血液を毛管現象により吸い上げる程度に十分細径に設定されており、点着部22に接触した血液を試験紙20まで導入する。試験片12は、従来品をそのまま適用可能である。
【0033】
図1〜図4に戻り、本実施の形態に係る血糖計10aは、試験片12が装着される先端装着部30と、先端装着部30に装着された試験片12における血液導入路24を介して採取された血液の成分による試験紙20の呈色を測定する測定部32と、測定部32によって測定された結果を制御部(マイクロコンピュータ等)33を介して表示する液晶のモニタ34と、先端側に向かって押し出し操作をすることによって装着された試験片12を取り外すイジェクタレバー36と、操作ボタン群38と、データ読取ボタン40と、先端装着部30を保護するキャップ39とを有する。血糖計10aは、全体的に角部のない滑らかな形状である。煩雑となるため、図1以外ではキャップ39を省略している。前記測定部32は、試験片12の成分検出方式に合わせ、種々の機構が採用できる。
【0034】
血糖計10aは、医療施設に入院している複数の患者に対して医療従事者が計測を行う院内用途であり、患者毎のデータ記録・呼び出し機能や、そのためのボタンが設けられている。もちろん、特段の改造をすることなく、血糖計10aをそのままパーソナルユースとすることも可能である。
【0035】
先端装着部30は、試験片12が装着されることから円筒形状となっており、ベース筒14(図5参照)を挿入することにより試験片12を容易且つ安定して装着可能である。
【0036】
血糖計10aは、内部の制御部33によって制御されており、光学手段で構成される測定部32により試験紙20に対して投光及び受光を連続的に行い、その呈色に基づいた所定の計算により血糖値を求めてモニタ34に表示を行う。試験紙20の呈色反応が観測されず、又は不十分である場合には所定のエラー表示を行う。血糖計10aによる血糖値計測の制御手順は、基本的には従来技術に係る血糖計と同じである。
【0037】
モニタ34は、血糖値を表示する血糖値表示部34aと、時刻やその他の情報を表示する補助表示部34bとを含む。血糖値表示部34aは、数字3桁の表示及び、所定の文字表示(例えば、「OK」という文字)が可能である。糖尿病患者には視力が弱い者もいることから、視認性を考慮してモニタ34は十分に大きい設定となっている。補助表示部34bには、後述するバーコードリーダ48で読み取られる患者識別データ、操作者識別データ及び試験片識別データも表示される。モニタ34は、少なくともその液晶表示面は平面である。
【0038】
操作ボタン群38は、基端側にまとめて設けられており、電源ボタン38a、移動ボタン38b、38c、選択ボタン38d、38e及びLED表示部38fを含む。移動ボタン38b、38cは、モニタ34に表示される項目を移動させ、あるいは移動に伴い画面をスクロールさせる等の機能を有する。選択ボタン38d、38eは、それぞれの位置に対応したモニタ34に表示された機能を選択する等の機能を有する。LED表示部38fは、LEDにより種々の色で点灯、点滅するなどして、血糖計の状態を報知する等の機能を有する。
【0039】
イジェクタレバー36は、先端装着部30の近傍における上面46aに設けられ、指をかけるのに適した大きさの丸型のレバーであり、基端側の平坦部36aと、先端側の突起部36bとを有する。イジェクタレバー36は、上面46aに沿って移動可能である。平坦部36aには滑り防止のため、横方向の複数の筋が設けられている。突起部36bは指先を当てるのに適した幅及び高さを有する。イジェクタレバー36は適度に弱い弾性体によって基端側に向けて弾性付勢されており、指を掛けて先端側に押し出し操作をすると円筒形状の先端装着部30の軸方向と平行に移動し、内部のイジェクタ機構が連動して試験片12を押し出し、先端装着部30から取り外すことができる。また、このような構成によれば、汚れの拭き取りを容易に行うことができる。
【0040】
データ読取ボタン40は、後端部に設けられるバーコードリーダ(データ読取光学手段)48の操作スイッチである。該データ読取ボタン40は、モニタ34が設けられる側の面(以下、モニタ面とも呼ぶ。)で、該モニタ34と先端装着部30との間に設けられていると操作をし易い。また、この位置にデータ読取ボタン40が設けられることにより、血液成分の測定操作時とデータの読取操作時で手の位置を握り替える必要がなく、効率的である。
【0041】
データ読取ボタン40は用途(例えば、患者識別データ読取用、計測者識別データ読取用及び試験片識別データ読取用)に応じて近接位置に複数設けられていてもよい。また、操作方法(スイッチオン時間の違いや、所定の短時間におけるスイッチオン回数の違い等)に応じて異なる処理を実行可能なようにしてもよい。
【0042】
図4に示すように、血糖計10aの後端部の凹部49にはバーコードリーダ48が設けられている。バーコードリーダ48は、患者識別データ、計測者識別データ及び試験片識別データとしてのバーコードをレーザスキャンによって読み取る手段である。バーコードリーダ48は、一般的なレーザ式であって廉価である。
【0043】
血糖計10aの後端部は、側面視(図3参照)モニタ面に向かって広がるように傾斜している。バーコードリーダ48は、このような傾斜した後端部で、しかも凹部49に設けられていることから不用意に触れることがなく(図6参照)、計測面が汚れにくい。
【0044】
血糖計10aは複数回の血糖計測値を記憶しておく機能を有しており、バーコードリーダ48で読み取った患者識別データに基づいて血糖計測値を患者毎に区別して記憶することができる。また、いわゆるトレーサビリティの記録のため、バーコードリーダ48で読み取った計測者識別データに基づいて、1回の計測毎に血糖計測を行った操作者を特定できる。さらに、試験片12の種類を特定する識別データに基づいて、適正な試験片12が用いられることを確認できる。バーコードリーダ48によって読み取られる情報は、データ読取ボタン40の操作方法によって区別され、モニタ34に区別して表示される。血糖計10aでは、バーコードリーダ48によって、患者識別データ、計測者識別データ及び試験片識別データを読み取った後に、所定の計測モードに移行するものとする。これにより、正しい手順によって計測が開始される。
【0045】
バーコードリーダ48は、後端部に設けられていることから先端の試験片12及び測定部32とは矢印Aに沿って逆方向であって、患者とは逆を指向することになり患者に対して違和感を与えることが少ない。また、逆方向に設けられていることから、血糖計測とデータ読取の使い分けが容易である。
【0046】
バーコードリーダ48と試験片12及び測定部32は逆側に設けられていることから設計レイアウト上の自由度があり、例えば、中継部46を適度に細くすることができる。
【0047】
次に、血糖計10aの形状について説明する。説明の便宜上、モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とするが、使用時及び保管時等における血糖計10aの向きはこれに限定されることがないことはもちろんである。
【0048】
血糖計10aのハウジングは、主に、モニタ34及び操作ボタン群38が設けられた上ハウジング42aと、下側部分を構成する下ハウジング42bを合わせて構成されている。血糖計10aをテーブルTに置くときに、下ハウジング42bでテーブルTに接触する部分には、小突起43が設けられている。
【0049】
血糖計10aは、上面視で(図2参照)、モニタ34及び操作ボタン群38が設けられた主部44と、主部44と先端装着部30との間に設けられる中継部46とに区分することができる。中継部46は、主部44から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅に構成されており、その先端面には先端装着部30が設けられている。データ読取ボタン40は、ちょうど主部44と中継部46との境に設けられており、触れやすく、操作し易い。
【0050】
主部44は、モニタ34が設けられていてある程度の幅があるが、人手により把持可能な程度の幅である。主部44は、長さ方向(図2及び図3の矢印A方向)について、上面視(図2参照)で幅が略一定、側面視(図3参照)で上下方向の厚みが略一定となっており、把持し易い。また、血糖計10aは左右対称形状であって、右手及び左手のいずれでも把持し易い。
【0051】
血糖計10aは主部44以外に、中継部46を把持することも可能である。図7に示すように、中継部46は、主部44から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっており、適度に細く、しかも凹状であることから、指先で把持し易い。また、中継部46は先端装着部30に近いことから、中継部46を把持することにより、装着された試験片12を安定させることができる。
【0052】
中継部46には先端装着部30に関わる幾つかの機構(例えば、試験紙20に対する測定部32、試験片12のイジェクト機構、先端装着部30を保持する機構等)を設けるスペースが好適な向きに確保されるとともに、中継部46を設けることにより試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向させ易い。また、中継部46の上面46aは試験片12の中心軸線Cと略平行に設定されており、視覚的に試験片12の向きを把握し易い。
【0053】
さらに、中継部46の上面46aには、イジェクタレバー36が設けられており、該イジェクタレバー36は上面46aに沿った動作をすることになり、操作しやすくなり、しかもイジェクタレバー36の移動スペースを確保できる。
【0054】
側面視(図3参照)で、モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とし、モニタ34の表示面の延長線Lを基準として、中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向している。換言すると、モニタ34の表示面を上向きとして水平なテーブルT(水平面)に載置したときに、試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向する。このとき、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は27°であり、延長線LとテーブルTとのなす角度θ2は7°である。また、先端装着部30に装着された試験片12は、テーブルTから離間しており、試験片12に無用な外力が加わることがない。
【0055】
主部44の下面と中継部46の下面は、側面視で凹状の連続的な曲面部50で接続されている。曲面部50からみて基端側の近傍部には、指掛け突起52が設けられている。指掛け突起52は、側面視で低い三角形状であって、曲面部50とともに滑らかな略円弧をなし、指1本が入るほどのスペースが形成されている。この曲面部の曲率半径は、5mm〜25mmであると指を当てやすくて好適であり、より好ましくは8mm〜20mmにするとよい。このような曲面部50には指をかけやすく、血糖計10aを把持し易い。
【0056】
つまり、図6に示すように、血糖計10aは曲面部50に指(例えば、人差し指)を当てることによって安定して把持することができる。このように主部44と中継部46との接続箇所には下面が凹状の曲面部50が設けられていることから、指が当てられて血糖計10aが安定し、バーコードリーダ48による光学的な読み取りが安定して行われる。
【0057】
また、データ読取ボタン40は曲面部50の略反対側になっており、該曲面部50に当てられた指(例えば人差し指)とデータ読取ボタン40を押す指(例えば、親指)により挟持されて安定した把持及び操作が可能になる。
【0058】
凹状の曲面部50は、把持部として用いることができ、しかも先端装着部30に近いことから血液玉60に点着部22を合わせることが容易となり、安定した操作が可能となる。
【0059】
血糖計10aにおける点着部22とテーブルTとの距離H1は13mmであり、下面の最高点PとテーブルTとの距離H2は11mmである。最高点Pは曲面部50の一部である。
【0060】
点着部22は血糖計測時における操作対象部分であることから操作時における視認性が求められるとともに、テーブルTに載置しておく時にも状態確認のために視認性が求められており、該点着部22はテーブルTから離間させておくことが好適であるが、一方、無駄に離間させることは合理的でない。さらに、後述するように(図10及び図11参照)、血糖計10aをテーブルTに載置したまま点着動作をすることも考慮すると距離H1の好適な範囲がある。このような観点から、距離H1は3mm〜30mmの範囲、好ましくは9mm〜14mmの範囲に設定するとよい。
【0061】
テーブルTに載置した血糖計10aを把持する際には、最高点PとテーブルTとの間には指を入れるために適度な隙間があることが望ましく、距離H2は3mm〜20mmの範囲、好ましくは7mm〜12mmの範囲に設定するとよい。
【0062】
次に、このように構成される血糖計10aの使用方法について説明する。
【0063】
先ず、血糖計10aの電源を入れて、試験片12の個包装体に表示された所定のバーコードをバーコードリーダ48によって読取る。
【0064】
次に、図8に示すように、医療従事者62は、自分の操作者識別データを示すバーコード62bが記録されたカードに対してバーコードリーダ48を向けて、データ読取ボタン40を押して操作者識別データを読み取る。該データは、血糖計測値とともに記録され、例えば手技のトレーサビリティの確認に用いられる。
【0065】
このとき、図8から明らかなように、バーコードリーダ48は医療従事者62の方向を向いていることから、患者64にレーザ光が当たることはなく、該患者64に違和感を与えることがない。
【0066】
また、バーコードリーダ48は試験片12とは逆側に設けられるとともに、データ読取ボタン40は、親指等によって操作し易い箇所に設けられていることから、血液成分の測定操作時とデータの読取操作時で手の位置を握り替える必要がなく、効率的である。
【0067】
この後、図9に示すように、バーコードリーダ48によってリストバンド64aに示された患者64の患者識別データを読み取る。これにより、1台の血糖計10aを複数の患者の血糖計測に用いる場合、計測した血糖値を患者毎に区別して記憶することができる。
【0068】
血糖計10aでは、このように患者識別データ、計測者識別データ及び試験片識別データを読み取った後に、計測モードに移行する。
【0069】
次いで、キャップ39を取り外し、試験片12を個包装体のケースとともにクリック感があるまで先端装着部30に押し込み、その後ケースだけを取り除く。これにより、試験片12が先端装着部30に装着される。測定部32では、試験紙20を検出した後、モニタ34に「OK」の表示を行い、血糖計測モードに自動的に移行する。さらに、所定の穿刺装置によって穿刺を行い指先(以下、左手の人差し指とする。)に血液玉60を設けておく。
【0070】
患者は、例えば、右手で血糖計10aを把持した状態で血液玉60に対して試験片12の点着部22を接触させる点着動作を行う。このとき、左右の手首又はその近傍部をテーブルTに載せて安定させておく。
【0071】
一層確実な点着動作を行うためには、血糖計10aをテーブルTに載置する一方、血液玉60を形成した1本の指68(例えば、人差し指)をテーブルTに載せたまま血糖計10aを近づけて点着を行ってもよい。
【0072】
前記の通り、点着部22のテーブルTからの距離H1は13mmである。一方、1本の指68をテーブルTに載せると血液玉60の高さは概ね3mm〜20mmの範囲で、通常は5mm〜14mm程度であって、当初13mmでなくても、指68の向き高さはこのような範囲で調整可能であることから、点着部22に対して高さを合わせることは容易であり、該点着部22を血液玉60に点着させ易い。このとき、指68及び血糖計10aはテーブルTに直接載せていることからそれぞれ極めて安定しており、確実な点着動作が行われる。
【0073】
また、図11に示すように、血液玉60を形成した指68に隣接する1本の指69(例えば、人差し指)をテーブルTに載せ、指68はその上に載せておいてもよい。2本の指68及び69をテーブルTに載せると上側の指68における血液玉60の高さは指の組み方、指の置き方等によって変化し、概ね5mm〜30mmの範囲で、通常は9mm〜20mm程度であって、当初13mmでなくても、指68の向き高さはこのような範囲で調整可能であることから、点着部22に対して高さを合わせることは容易であり、該点着部22を血液玉60に点着させ易い。このとき、血糖計10aはテーブルTに直接載せていることから極めて安定している。指68は指69の上に置かれ、適度に安定しており、確実な点着動作が行われる。
【0074】
ところが3本以上の指(例えば、人差し指、中指及び薬指)をテーブルTに載せると、健常者であっても一番上の指(人差し指)は不安定になり、増して、手指が不自由な患者ではかなり不安定になることがあり、点着動作が却って行いにくい場合がある。したがって、テーブルTから点着部22までの距離H1は、1本の指又は2本の指に対応した高さである3mm〜30mmの範囲、より好ましくは9mm〜14mmの範囲に設定することがよい。
【0075】
もちろん、血糖計10aの使用法として、手の震え等の懸念がない場合には点着動作を、テーブルTを用いることなく空中で行ってもよい。
【0076】
次に、正しい点着動作を行うと、血液玉60は毛管現象によって血液導入路24に吸い込まれ、試験紙20に十分な量が含浸され、試薬によって血糖値に応じて呈色反応を示す。測定部32では試験紙20の呈色反応を観測し、該呈色反応が安定した段階で、その呈色に基づいて制御部33で所定の計算により血糖値を求めてモニタ34に表示を行うとともに、ブザーにより計測が終了したことを報知する。呈色反応の観測中及び血糖値の計算の最中には、計測進行状況を示すため、モニタ34に計測終了までの予定時間を表示してもよい。
【0077】
この後、後処理として、試験片12に対して個包装体のカバーで覆った状態でイジェクタレバー36を操作して該カバーといっしょに試験片12を取り外し、電源をオフにして、先端装着部30にキャップ39をかぶせる。
【0078】
図10及び図11に示す操作方法は、テーブル上で点着動作を行う例であるが、図12に示すような血糖計10aの操作をしてもよい。図12に示すように、患者64に対して医療従事者62が点着動作をする場合に、中継部46は主部44に対して下向きに屈曲していることから、中継部46をある程度角度をつけた状態でも主部44は略水平となり、医療従事者62は肘を下げた楽な姿勢で血糖計10aを把持することができ、しかも手の平66は血液玉60及び点着部22が死角となることがなく、視認性に優れている。したがって、血糖計10aでは、このような院内用途においても、血液玉60に対して点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0079】
図12から明らかなように、このとき不用意にデータ読取ボタン40を押しても、バーコードリーダ48から発するレーザは患者64にレーザ光が当たることはない。
【0080】
図8に示す処理、図9に示す処理及びその後の血糖計測処理は、いずれの順に行ってもよい。各識別データの読み取り処理は、いずれか1つ以上を行ってもよい。また、血糖計測を行いながらデータの読取を可能な構成にしてもよい。
【0081】
上述したように、本実施の形態に係る血糖計10aによれば、試験片122は先端装着部30に設けられ、バーコードリーダ48が反対の後端面に設けられていることから、不用意にデータ読取ボタン40を押してしまっても、スキャン用のレーザ光が患者の方向に向かって発せられることがなく、患者に違和感を与えることがない。図9に示すように、患者識別データの読み込み時には、レーザは患者の方向に向く場合があるが、このとき使用者はレーザ読み込みを十分留意しながら操作をしており、しかもレーザハリスとリストバンド64aに当たるだけであって、少なくとも患者の顔にレーザが向かうことはない。
【0082】
また、バーコードリーダ48と試験片12は十分に離れており、しかも計測方向は反対向きであることから、バーコードリーダ48の読み取りの際に試験片12を何らかの他の物体に当ててしまうことがない。つまり、血糖値計測の前であれば、試験片12の点着部22が汚れたり破損することがなく、正しい計測が行われる。血糖値計測の後であれば、点着部22には血液が付着しているが、他の物体に血液を付着して汚すということがない。
【0083】
さらに、モニタ34は、データ読取ボタン40よりも後側に配置されており、それよりも先端側の中継部46及び先端装着部30は適度に細く且つ軽く成ってバランスがよく、中継部46や曲面部50を把持することにより、すぐ近くの試験片12を安定させることができる(図7参照)。
【0084】
さらにまた、試験片12による血糖値の計測操作と、バーコードリーダ48によるデータの読み取り操作は、操作が明らかに異なり、誤操作が防止される。データ読取光学手段としてのバーコードリーダ48を用いることにより非接触で簡便なデータ読取が可能となる。データ読取光学手段は適度に指向性があり、無線のような混信の懸念がなく、確実なデータ読取が可能である。
【0085】
主部44と中継部46との接続箇所には下面が凹状の曲面部50が設けられていることから、指が当てられて血糖計10aが安定し、バーコードリーダ48による光学的な読取が安定して行われる。
【0086】
バーコードリーダ48によって読み取られたデータは、所定の通信ポート又はメモリカード等を介して所定のデータ管理コンピュータに移すようにしてもよい。データ読取光学手段にあわせてデータ送信光学手段(例えば、IrDA(Infrared Data Association))を設けることにより、計測血糖値等のデータを管理コンピュータに送信してもよい。
【0087】
また、本実施の形態に係る血糖計10aは、水平なテーブルTに載置したときに、試験片12の中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している形状(換言すれば、モニタ34の表示面の延長線Lを基準として、中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している形状)とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉60に対して、試験片12の点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0088】
延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は、点着部22が血液玉60の方向をより正しく指向させるためには、10°以上、好ましくは15°以上とするとよい。一方、角度θ1を大きくすると中継部46が過度に下向きとなることから、血糖計10aを把持したとき及び載置時に点着部22の視認性が悪くなったり、安定感が損なわれたり、点着部22が血液玉60の方向を指向しなくなり、又は、載置時に試験片12がテーブルTに接触してしまう懸念がある。したがって、角度θ1は、40°以下、好ましくは30°以下にするとよい。結局、角度θ1は、各部の寸法に対する影響も勘案しながら、10°〜40°の範囲とし、好ましくは15°〜30°の範囲に設定するとよい。
【0089】
次に、変形例に係る血糖計10bについて説明する。血糖計10bについて、血糖計10aと同じ箇所については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0090】
図13に示すように、第1の変形例に係る血糖計10bは、試験片70を装着可能なように、血糖計10aの先端装着部30を先端装着部72に変えたものである。図14に示すように、試験片70は薄く細い板状であり、中心軸線C上に血液導入路74が設けられている。試験片70は、公知の血液成分測定用試験片をそのまま適用可能である。
【0091】
血糖計10bでは、前記の血糖計10aと異なって、測定部32において光学手段ではなく、採取された血液を電気化学センサーによって求められる電流値に基づいて血糖値を計測する。
【0092】
血糖計10bでは、前記の血糖計10aと同様に、試験片70の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向しており、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は27°に設定されている。
【0093】
血糖計10a及び10bは、試料の特性として血糖値を計測するが、これに限られるものではなく、ホルモン濃度やコレステロール濃度等を測定する装置(血液成分測定装置)としても適用可能である。
【0094】
血糖計10a及び10bにおけるバーコードリーダ48は、他のデータ読取光学手段であってもよく、例えば、マニュアルスキャン方式、CCDスキャン方式、レーザスキャン方式、イメージセンシング方式等のいずれでもよい。
【0095】
CCDカメラによるスキャン方式では、2次元コードの読取が可能になって、読取可能な情報量が増える。2次元コードを読み取る場合には、例えば、所定の処方箋情報等を読み取って、計測した血糖値と照合することによりインスリン投与量を求めるようにしてもよい。バーコードリーダ48で読み取るデータ種類は上記の例に限定されない。
【0096】
本発明に係る血液成分測定装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0097】
10a、10b…血糖計 12、70…試験片
20…試験紙 22…点着部
24、74…血液導入路 30、72…先端装着部
32…測定部 34…モニタ
34a…血糖値表示部 34b…補助表示部
36…イジェクタレバー 40…データ読取ボタン
44…主部 46…中継部
46a…上面
48…バーコードリーダ(データ読取光学手段) 50…曲面部
60…血液玉
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端装着部に試験片が装着され、該試験片における血液導入路を介して採取された血液から、ブドウ糖等の成分を測定するための血液成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者には、血糖値の変動を測定することによる日常的な管理が推奨されている。血糖値の測定は、血液中のブドウ糖量に応じて呈色する試薬が含浸された試験紙等の測定部を設け、該試験紙に血液を供給して呈色させ、その呈色の度合いを光学的に測定することにより血糖値を求めて表示をする血糖計が実用化されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。試験紙はディスポーザブルの試験片に設けられ、該試験片が血糖計の先端装着部に装着される。また、電気化学センサーを用いた血糖計も実用化されている。
【0003】
糖尿病患者の血液を採取する際には、先ず、所定の穿刺装置により皮膚(例えば、指、手の平等)を穿刺し、穿刺後には血液を微量流出させる。次いで、試験片を血糖計に装着しておき、該試験片における先端の点着部を血液玉に接触させ、細径の流通路を毛管現象によって血液を試験紙まで導入させる。
【0004】
特許文献3記載の血糖計は、スキャンボタンを押すことによってバーコードデータの計測をするバーコードリーダが先端窓部内に設けられており、患者、使用者、試験片、制御器等の情報を読み取り可能になっている。先端部における先端窓の近傍には、血液計測部が設けられている。
【0005】
一方、近時の血糖計は、糖尿病患者自身が日常的に血糖計測を行うのに用いるためのパーソナルユース以外に、医療施設に入院している複数の患者に対して医療従事者が計測を行う院内用途の要請がある。
【0006】
血糖計には、複数回の血糖計測値を記憶しておく機能を有するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3135393号公報(図2、図8)
【特許文献2】特開2000−46834号公報
【特許文献3】米国特許第7077328号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医療施設内においては、患者及び医療従事者(看護師、医師等)がそれぞれ複数存在していることから、血糖計を院内用途して用いる場合には、パーソナルユースとは異なる仕様が必要になると考えられる。
【0009】
すなわち、血糖計には複数回の血糖計測値を記憶しておく機能を有するものがあるが、医療施設では1台の血糖計を複数の患者の血糖計測に用いることが想定されるので、計測した血糖値を患者毎に区別して記憶する必要が生じる。また、いわゆるトレーサビリティの記録のため、1回の計測毎に血糖計測を行った操作者を特定できることが望まれる。このように患者及び使用者を特定するためには、その識別情報を血糖計に読み込むことが必要になる。
【0010】
さらに、このような識別情報の取得は、患者に対して違和感を与えることなく、迅速且つ安定して行えることが望ましい。
【0011】
一方、前記の特許文献3記載の血糖計では、幾つかの問題が考えられる。
【0012】
第1に、バーコードリーダが先端に設けられていることから、スキャン時に発生するレーザ光が患者の方向に向かい患者に違和感を与える懸念がある。
【0013】
第2に、バーコードリーダと先端計測部が極めて近くに配置されていることから、バーコードの読み取りの際に先端計測部に装着される試験片を何らかの他の物体(生体を含む)に当ててしまう可能性がある。血糖値計測の前であれば、試験片の点着部が汚れ又は破損して、正しい計測ができなくなる懸念がある。血糖値計測の後であれば、点着部には血液が付着しており、当接した他の物体を汚してしまう。
【0014】
第3に、モニタが先端計測部の近傍に配置されていることから、先端部がかなり大きくなってバランスが悪く、しかも把持部はモニタよりも後方にあることから先端計測部から遠く、結果として先端計測部が不安定になり易い。
【0015】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、データの読取を簡便、迅速且つ安定してい行うことができる血液成分測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る血液成分測定装置は、試験片が装着される血液成分測定装置において、前記試験片が装着される先端装着部と、前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタと、後端に設けられたデータ読取光学手段と、前記モニタが設けられる主部と、前記主部と前記先端装着部との間に設けられる中継部と、前記主部と前記中継部との接続箇所で、側面視で下面が凹状の曲面部とを有することを特徴とする。
【0017】
後端部にデータ読取光学手段を設けることにより、先端装着部から離れて逆方向を指向することから、データの読み取りの際に試験片を何らかの他の物体に当ててしまうことが防止される。また、凹状の曲面部は、把持部として用いることができ、しかも先端装着部に近いことから血液玉に試験片の点着部を合わせることが容易となり、安定した操作が可能となる。このように、本発明に係る血液成分測定装置によれば、データの読取りを簡便、迅速且つ安定して行うことができる。
【0018】
前記モニタが設けられる側の面で、モニタと前記先端装着部との間に、前記データ読取光学手段の操作スイッチを有してもよい。
【0019】
モニタと先端装着部との間は操作スイッチの操作をし易い場所であり、操作スイッチを設けるのに好適である。また、この位置に操作スイッチが設けられることにより、血液成分の測定操作時とデータの読取操作時で手の位置を握り替える必要がなく、効率的である。操作スイッチは曲面部の略反対側になり、該曲面部に当てられた指(例えば人差し指)と操作スイッチを押す指(例えば、親指)により挟持されて安定した把持及び操作が可能になる。
【0020】
前記データ読取光学手段は、バーコードリーダであってもよい。
【0021】
前記データ読取手段は、2次元コードを読み取るカメラであってもよい。
【0022】
上面視で、前記中継部は、前記主部から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっていてもよい。これにより中継部は適度に細くなり、しかも凹状であることから、指先で把持し易い。また、中継部は先端装着部に近いことから、中継部を把持することにより、装着された試験片の点着部に血液玉を接触しやすく、安定した操作をすることができる。
【0023】
前記曲面部の曲率半径は、5mm〜25mmであると、指を当て易い。
【0024】
前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、側面視で、前記モニタの表示面の延長線を基準として、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していてもよい。このように、モニタの表示面の延長線を基準として、試験片の中心軸線が先端側に向けて斜め下方を指向している形状とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉に対して、試験片の点着部を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る血液成分測定装置によれば、非接触で簡便なデータ読取が可能となる。また、コネクタ接続操作等が不要で、迅速にデータ読取を行うことができる。
【0026】
データ読取光学手段は、後端部に設けられていることから先端の試験片及び測定部とは逆方向であって、患者とは逆を指向することになり患者に対して違和感を与えることが少ない。
【0027】
主部と中継部との接続箇所には下面が凹状の曲面部が設けられていることから、指が当てられて血液成分測定装置が安定する。したがってデータ読取光学手段による光学的な読取が安定して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態に係る血糖計の斜視図である。
【図2】本実施の形態に係る血糖計の平面図である。
【図3】本実施の形態に係る血糖計の側面図である。
【図4】本実施の形態に係る血糖計の後端部の拡大斜視図図である。
【図5】試験片の断面図である。
【図6】曲面部に指を入れて把持した状態の血糖計の側面図である。
【図7】中継部を把持した状態の血糖計の模式図である。
【図8】医療従事者が血糖計によって自分の測定者識別データを読み込む様子を示す図である。
【図9】医療従事者が血糖計によって患者識別データを読み込む様子を示す図である。
【図10】1本の指をテーブルに載せて、該テーブルに載置した血糖計によって点着動作を行う模式図である。
【図11】2本の指をテーブルに載せて、該テーブルに載置した血糖計によって点着動作を行う模式図である。
【図12】医療従事者が患者に対して点着動作をしている状態の模式図である。
【図13】第1の変形例に係る血糖計の斜視図である。
【図14】第1の変形例に係る血糖計に適用される試験片の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る血液成分測定装置について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図14を参照しながら説明する。
【0030】
図1、図2、図3及び図4に示すように、本実施の形態に係る血糖計(血液成分測定装置)10aは、先端に試験片12が装着される。血糖計10aは複数回の血糖計測値を記憶しておく機能を有しており、医療施設では1台の血糖計10aを複数の患者の血糖計測に用いることができる。先ず試験片12について説明する。
【0031】
図5に示すように、試験片12は、ベース筒14と、ベース筒14の一方を覆うフランジ16と、フランジ16から突出する錐状の突起18と、フランジ16の裏面に貼られた試験紙20とを有する。ベース筒14には複数のスリット14a(図1参照)が設けられている。突起18の中心には、先端の点着部22から試験紙20に連通する直線状の血液導入路24が設けられている。試験紙20の材質としては、例えば、ポリエーテルスルホンが挙げられる。試験紙20に含浸される試薬としては、例えば、グルコースオキシターゼ(GOD)、ペルオキシターゼ(POD)、4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)等の発色剤が挙げられる。また、試薬には所定の緩衝剤が含まれていてもよい。血液導入路24は、一般的に、試験片12の中心軸線C上に設けられている。試験片12の中心軸線Cとは、試験片12の点着部22の向いている方向であって、点着部22の先端を通過する直線とする。
【0032】
試験片12は、いわゆるディスポーザブル品であり、図示しない個包装体に包装され、予め滅菌されている。血液導入路24は、血液を毛管現象により吸い上げる程度に十分細径に設定されており、点着部22に接触した血液を試験紙20まで導入する。試験片12は、従来品をそのまま適用可能である。
【0033】
図1〜図4に戻り、本実施の形態に係る血糖計10aは、試験片12が装着される先端装着部30と、先端装着部30に装着された試験片12における血液導入路24を介して採取された血液の成分による試験紙20の呈色を測定する測定部32と、測定部32によって測定された結果を制御部(マイクロコンピュータ等)33を介して表示する液晶のモニタ34と、先端側に向かって押し出し操作をすることによって装着された試験片12を取り外すイジェクタレバー36と、操作ボタン群38と、データ読取ボタン40と、先端装着部30を保護するキャップ39とを有する。血糖計10aは、全体的に角部のない滑らかな形状である。煩雑となるため、図1以外ではキャップ39を省略している。前記測定部32は、試験片12の成分検出方式に合わせ、種々の機構が採用できる。
【0034】
血糖計10aは、医療施設に入院している複数の患者に対して医療従事者が計測を行う院内用途であり、患者毎のデータ記録・呼び出し機能や、そのためのボタンが設けられている。もちろん、特段の改造をすることなく、血糖計10aをそのままパーソナルユースとすることも可能である。
【0035】
先端装着部30は、試験片12が装着されることから円筒形状となっており、ベース筒14(図5参照)を挿入することにより試験片12を容易且つ安定して装着可能である。
【0036】
血糖計10aは、内部の制御部33によって制御されており、光学手段で構成される測定部32により試験紙20に対して投光及び受光を連続的に行い、その呈色に基づいた所定の計算により血糖値を求めてモニタ34に表示を行う。試験紙20の呈色反応が観測されず、又は不十分である場合には所定のエラー表示を行う。血糖計10aによる血糖値計測の制御手順は、基本的には従来技術に係る血糖計と同じである。
【0037】
モニタ34は、血糖値を表示する血糖値表示部34aと、時刻やその他の情報を表示する補助表示部34bとを含む。血糖値表示部34aは、数字3桁の表示及び、所定の文字表示(例えば、「OK」という文字)が可能である。糖尿病患者には視力が弱い者もいることから、視認性を考慮してモニタ34は十分に大きい設定となっている。補助表示部34bには、後述するバーコードリーダ48で読み取られる患者識別データ、操作者識別データ及び試験片識別データも表示される。モニタ34は、少なくともその液晶表示面は平面である。
【0038】
操作ボタン群38は、基端側にまとめて設けられており、電源ボタン38a、移動ボタン38b、38c、選択ボタン38d、38e及びLED表示部38fを含む。移動ボタン38b、38cは、モニタ34に表示される項目を移動させ、あるいは移動に伴い画面をスクロールさせる等の機能を有する。選択ボタン38d、38eは、それぞれの位置に対応したモニタ34に表示された機能を選択する等の機能を有する。LED表示部38fは、LEDにより種々の色で点灯、点滅するなどして、血糖計の状態を報知する等の機能を有する。
【0039】
イジェクタレバー36は、先端装着部30の近傍における上面46aに設けられ、指をかけるのに適した大きさの丸型のレバーであり、基端側の平坦部36aと、先端側の突起部36bとを有する。イジェクタレバー36は、上面46aに沿って移動可能である。平坦部36aには滑り防止のため、横方向の複数の筋が設けられている。突起部36bは指先を当てるのに適した幅及び高さを有する。イジェクタレバー36は適度に弱い弾性体によって基端側に向けて弾性付勢されており、指を掛けて先端側に押し出し操作をすると円筒形状の先端装着部30の軸方向と平行に移動し、内部のイジェクタ機構が連動して試験片12を押し出し、先端装着部30から取り外すことができる。また、このような構成によれば、汚れの拭き取りを容易に行うことができる。
【0040】
データ読取ボタン40は、後端部に設けられるバーコードリーダ(データ読取光学手段)48の操作スイッチである。該データ読取ボタン40は、モニタ34が設けられる側の面(以下、モニタ面とも呼ぶ。)で、該モニタ34と先端装着部30との間に設けられていると操作をし易い。また、この位置にデータ読取ボタン40が設けられることにより、血液成分の測定操作時とデータの読取操作時で手の位置を握り替える必要がなく、効率的である。
【0041】
データ読取ボタン40は用途(例えば、患者識別データ読取用、計測者識別データ読取用及び試験片識別データ読取用)に応じて近接位置に複数設けられていてもよい。また、操作方法(スイッチオン時間の違いや、所定の短時間におけるスイッチオン回数の違い等)に応じて異なる処理を実行可能なようにしてもよい。
【0042】
図4に示すように、血糖計10aの後端部の凹部49にはバーコードリーダ48が設けられている。バーコードリーダ48は、患者識別データ、計測者識別データ及び試験片識別データとしてのバーコードをレーザスキャンによって読み取る手段である。バーコードリーダ48は、一般的なレーザ式であって廉価である。
【0043】
血糖計10aの後端部は、側面視(図3参照)モニタ面に向かって広がるように傾斜している。バーコードリーダ48は、このような傾斜した後端部で、しかも凹部49に設けられていることから不用意に触れることがなく(図6参照)、計測面が汚れにくい。
【0044】
血糖計10aは複数回の血糖計測値を記憶しておく機能を有しており、バーコードリーダ48で読み取った患者識別データに基づいて血糖計測値を患者毎に区別して記憶することができる。また、いわゆるトレーサビリティの記録のため、バーコードリーダ48で読み取った計測者識別データに基づいて、1回の計測毎に血糖計測を行った操作者を特定できる。さらに、試験片12の種類を特定する識別データに基づいて、適正な試験片12が用いられることを確認できる。バーコードリーダ48によって読み取られる情報は、データ読取ボタン40の操作方法によって区別され、モニタ34に区別して表示される。血糖計10aでは、バーコードリーダ48によって、患者識別データ、計測者識別データ及び試験片識別データを読み取った後に、所定の計測モードに移行するものとする。これにより、正しい手順によって計測が開始される。
【0045】
バーコードリーダ48は、後端部に設けられていることから先端の試験片12及び測定部32とは矢印Aに沿って逆方向であって、患者とは逆を指向することになり患者に対して違和感を与えることが少ない。また、逆方向に設けられていることから、血糖計測とデータ読取の使い分けが容易である。
【0046】
バーコードリーダ48と試験片12及び測定部32は逆側に設けられていることから設計レイアウト上の自由度があり、例えば、中継部46を適度に細くすることができる。
【0047】
次に、血糖計10aの形状について説明する。説明の便宜上、モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とするが、使用時及び保管時等における血糖計10aの向きはこれに限定されることがないことはもちろんである。
【0048】
血糖計10aのハウジングは、主に、モニタ34及び操作ボタン群38が設けられた上ハウジング42aと、下側部分を構成する下ハウジング42bを合わせて構成されている。血糖計10aをテーブルTに置くときに、下ハウジング42bでテーブルTに接触する部分には、小突起43が設けられている。
【0049】
血糖計10aは、上面視で(図2参照)、モニタ34及び操作ボタン群38が設けられた主部44と、主部44と先端装着部30との間に設けられる中継部46とに区分することができる。中継部46は、主部44から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅に構成されており、その先端面には先端装着部30が設けられている。データ読取ボタン40は、ちょうど主部44と中継部46との境に設けられており、触れやすく、操作し易い。
【0050】
主部44は、モニタ34が設けられていてある程度の幅があるが、人手により把持可能な程度の幅である。主部44は、長さ方向(図2及び図3の矢印A方向)について、上面視(図2参照)で幅が略一定、側面視(図3参照)で上下方向の厚みが略一定となっており、把持し易い。また、血糖計10aは左右対称形状であって、右手及び左手のいずれでも把持し易い。
【0051】
血糖計10aは主部44以外に、中継部46を把持することも可能である。図7に示すように、中継部46は、主部44から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっており、適度に細く、しかも凹状であることから、指先で把持し易い。また、中継部46は先端装着部30に近いことから、中継部46を把持することにより、装着された試験片12を安定させることができる。
【0052】
中継部46には先端装着部30に関わる幾つかの機構(例えば、試験紙20に対する測定部32、試験片12のイジェクト機構、先端装着部30を保持する機構等)を設けるスペースが好適な向きに確保されるとともに、中継部46を設けることにより試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向させ易い。また、中継部46の上面46aは試験片12の中心軸線Cと略平行に設定されており、視覚的に試験片12の向きを把握し易い。
【0053】
さらに、中継部46の上面46aには、イジェクタレバー36が設けられており、該イジェクタレバー36は上面46aに沿った動作をすることになり、操作しやすくなり、しかもイジェクタレバー36の移動スペースを確保できる。
【0054】
側面視(図3参照)で、モニタ34の表示面を上側、その反対側を下側とし、モニタ34の表示面の延長線Lを基準として、中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向している。換言すると、モニタ34の表示面を上向きとして水平なテーブルT(水平面)に載置したときに、試験片12の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向する。このとき、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は27°であり、延長線LとテーブルTとのなす角度θ2は7°である。また、先端装着部30に装着された試験片12は、テーブルTから離間しており、試験片12に無用な外力が加わることがない。
【0055】
主部44の下面と中継部46の下面は、側面視で凹状の連続的な曲面部50で接続されている。曲面部50からみて基端側の近傍部には、指掛け突起52が設けられている。指掛け突起52は、側面視で低い三角形状であって、曲面部50とともに滑らかな略円弧をなし、指1本が入るほどのスペースが形成されている。この曲面部の曲率半径は、5mm〜25mmであると指を当てやすくて好適であり、より好ましくは8mm〜20mmにするとよい。このような曲面部50には指をかけやすく、血糖計10aを把持し易い。
【0056】
つまり、図6に示すように、血糖計10aは曲面部50に指(例えば、人差し指)を当てることによって安定して把持することができる。このように主部44と中継部46との接続箇所には下面が凹状の曲面部50が設けられていることから、指が当てられて血糖計10aが安定し、バーコードリーダ48による光学的な読み取りが安定して行われる。
【0057】
また、データ読取ボタン40は曲面部50の略反対側になっており、該曲面部50に当てられた指(例えば人差し指)とデータ読取ボタン40を押す指(例えば、親指)により挟持されて安定した把持及び操作が可能になる。
【0058】
凹状の曲面部50は、把持部として用いることができ、しかも先端装着部30に近いことから血液玉60に点着部22を合わせることが容易となり、安定した操作が可能となる。
【0059】
血糖計10aにおける点着部22とテーブルTとの距離H1は13mmであり、下面の最高点PとテーブルTとの距離H2は11mmである。最高点Pは曲面部50の一部である。
【0060】
点着部22は血糖計測時における操作対象部分であることから操作時における視認性が求められるとともに、テーブルTに載置しておく時にも状態確認のために視認性が求められており、該点着部22はテーブルTから離間させておくことが好適であるが、一方、無駄に離間させることは合理的でない。さらに、後述するように(図10及び図11参照)、血糖計10aをテーブルTに載置したまま点着動作をすることも考慮すると距離H1の好適な範囲がある。このような観点から、距離H1は3mm〜30mmの範囲、好ましくは9mm〜14mmの範囲に設定するとよい。
【0061】
テーブルTに載置した血糖計10aを把持する際には、最高点PとテーブルTとの間には指を入れるために適度な隙間があることが望ましく、距離H2は3mm〜20mmの範囲、好ましくは7mm〜12mmの範囲に設定するとよい。
【0062】
次に、このように構成される血糖計10aの使用方法について説明する。
【0063】
先ず、血糖計10aの電源を入れて、試験片12の個包装体に表示された所定のバーコードをバーコードリーダ48によって読取る。
【0064】
次に、図8に示すように、医療従事者62は、自分の操作者識別データを示すバーコード62bが記録されたカードに対してバーコードリーダ48を向けて、データ読取ボタン40を押して操作者識別データを読み取る。該データは、血糖計測値とともに記録され、例えば手技のトレーサビリティの確認に用いられる。
【0065】
このとき、図8から明らかなように、バーコードリーダ48は医療従事者62の方向を向いていることから、患者64にレーザ光が当たることはなく、該患者64に違和感を与えることがない。
【0066】
また、バーコードリーダ48は試験片12とは逆側に設けられるとともに、データ読取ボタン40は、親指等によって操作し易い箇所に設けられていることから、血液成分の測定操作時とデータの読取操作時で手の位置を握り替える必要がなく、効率的である。
【0067】
この後、図9に示すように、バーコードリーダ48によってリストバンド64aに示された患者64の患者識別データを読み取る。これにより、1台の血糖計10aを複数の患者の血糖計測に用いる場合、計測した血糖値を患者毎に区別して記憶することができる。
【0068】
血糖計10aでは、このように患者識別データ、計測者識別データ及び試験片識別データを読み取った後に、計測モードに移行する。
【0069】
次いで、キャップ39を取り外し、試験片12を個包装体のケースとともにクリック感があるまで先端装着部30に押し込み、その後ケースだけを取り除く。これにより、試験片12が先端装着部30に装着される。測定部32では、試験紙20を検出した後、モニタ34に「OK」の表示を行い、血糖計測モードに自動的に移行する。さらに、所定の穿刺装置によって穿刺を行い指先(以下、左手の人差し指とする。)に血液玉60を設けておく。
【0070】
患者は、例えば、右手で血糖計10aを把持した状態で血液玉60に対して試験片12の点着部22を接触させる点着動作を行う。このとき、左右の手首又はその近傍部をテーブルTに載せて安定させておく。
【0071】
一層確実な点着動作を行うためには、血糖計10aをテーブルTに載置する一方、血液玉60を形成した1本の指68(例えば、人差し指)をテーブルTに載せたまま血糖計10aを近づけて点着を行ってもよい。
【0072】
前記の通り、点着部22のテーブルTからの距離H1は13mmである。一方、1本の指68をテーブルTに載せると血液玉60の高さは概ね3mm〜20mmの範囲で、通常は5mm〜14mm程度であって、当初13mmでなくても、指68の向き高さはこのような範囲で調整可能であることから、点着部22に対して高さを合わせることは容易であり、該点着部22を血液玉60に点着させ易い。このとき、指68及び血糖計10aはテーブルTに直接載せていることからそれぞれ極めて安定しており、確実な点着動作が行われる。
【0073】
また、図11に示すように、血液玉60を形成した指68に隣接する1本の指69(例えば、人差し指)をテーブルTに載せ、指68はその上に載せておいてもよい。2本の指68及び69をテーブルTに載せると上側の指68における血液玉60の高さは指の組み方、指の置き方等によって変化し、概ね5mm〜30mmの範囲で、通常は9mm〜20mm程度であって、当初13mmでなくても、指68の向き高さはこのような範囲で調整可能であることから、点着部22に対して高さを合わせることは容易であり、該点着部22を血液玉60に点着させ易い。このとき、血糖計10aはテーブルTに直接載せていることから極めて安定している。指68は指69の上に置かれ、適度に安定しており、確実な点着動作が行われる。
【0074】
ところが3本以上の指(例えば、人差し指、中指及び薬指)をテーブルTに載せると、健常者であっても一番上の指(人差し指)は不安定になり、増して、手指が不自由な患者ではかなり不安定になることがあり、点着動作が却って行いにくい場合がある。したがって、テーブルTから点着部22までの距離H1は、1本の指又は2本の指に対応した高さである3mm〜30mmの範囲、より好ましくは9mm〜14mmの範囲に設定することがよい。
【0075】
もちろん、血糖計10aの使用法として、手の震え等の懸念がない場合には点着動作を、テーブルTを用いることなく空中で行ってもよい。
【0076】
次に、正しい点着動作を行うと、血液玉60は毛管現象によって血液導入路24に吸い込まれ、試験紙20に十分な量が含浸され、試薬によって血糖値に応じて呈色反応を示す。測定部32では試験紙20の呈色反応を観測し、該呈色反応が安定した段階で、その呈色に基づいて制御部33で所定の計算により血糖値を求めてモニタ34に表示を行うとともに、ブザーにより計測が終了したことを報知する。呈色反応の観測中及び血糖値の計算の最中には、計測進行状況を示すため、モニタ34に計測終了までの予定時間を表示してもよい。
【0077】
この後、後処理として、試験片12に対して個包装体のカバーで覆った状態でイジェクタレバー36を操作して該カバーといっしょに試験片12を取り外し、電源をオフにして、先端装着部30にキャップ39をかぶせる。
【0078】
図10及び図11に示す操作方法は、テーブル上で点着動作を行う例であるが、図12に示すような血糖計10aの操作をしてもよい。図12に示すように、患者64に対して医療従事者62が点着動作をする場合に、中継部46は主部44に対して下向きに屈曲していることから、中継部46をある程度角度をつけた状態でも主部44は略水平となり、医療従事者62は肘を下げた楽な姿勢で血糖計10aを把持することができ、しかも手の平66は血液玉60及び点着部22が死角となることがなく、視認性に優れている。したがって、血糖計10aでは、このような院内用途においても、血液玉60に対して点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0079】
図12から明らかなように、このとき不用意にデータ読取ボタン40を押しても、バーコードリーダ48から発するレーザは患者64にレーザ光が当たることはない。
【0080】
図8に示す処理、図9に示す処理及びその後の血糖計測処理は、いずれの順に行ってもよい。各識別データの読み取り処理は、いずれか1つ以上を行ってもよい。また、血糖計測を行いながらデータの読取を可能な構成にしてもよい。
【0081】
上述したように、本実施の形態に係る血糖計10aによれば、試験片122は先端装着部30に設けられ、バーコードリーダ48が反対の後端面に設けられていることから、不用意にデータ読取ボタン40を押してしまっても、スキャン用のレーザ光が患者の方向に向かって発せられることがなく、患者に違和感を与えることがない。図9に示すように、患者識別データの読み込み時には、レーザは患者の方向に向く場合があるが、このとき使用者はレーザ読み込みを十分留意しながら操作をしており、しかもレーザハリスとリストバンド64aに当たるだけであって、少なくとも患者の顔にレーザが向かうことはない。
【0082】
また、バーコードリーダ48と試験片12は十分に離れており、しかも計測方向は反対向きであることから、バーコードリーダ48の読み取りの際に試験片12を何らかの他の物体に当ててしまうことがない。つまり、血糖値計測の前であれば、試験片12の点着部22が汚れたり破損することがなく、正しい計測が行われる。血糖値計測の後であれば、点着部22には血液が付着しているが、他の物体に血液を付着して汚すということがない。
【0083】
さらに、モニタ34は、データ読取ボタン40よりも後側に配置されており、それよりも先端側の中継部46及び先端装着部30は適度に細く且つ軽く成ってバランスがよく、中継部46や曲面部50を把持することにより、すぐ近くの試験片12を安定させることができる(図7参照)。
【0084】
さらにまた、試験片12による血糖値の計測操作と、バーコードリーダ48によるデータの読み取り操作は、操作が明らかに異なり、誤操作が防止される。データ読取光学手段としてのバーコードリーダ48を用いることにより非接触で簡便なデータ読取が可能となる。データ読取光学手段は適度に指向性があり、無線のような混信の懸念がなく、確実なデータ読取が可能である。
【0085】
主部44と中継部46との接続箇所には下面が凹状の曲面部50が設けられていることから、指が当てられて血糖計10aが安定し、バーコードリーダ48による光学的な読取が安定して行われる。
【0086】
バーコードリーダ48によって読み取られたデータは、所定の通信ポート又はメモリカード等を介して所定のデータ管理コンピュータに移すようにしてもよい。データ読取光学手段にあわせてデータ送信光学手段(例えば、IrDA(Infrared Data Association))を設けることにより、計測血糖値等のデータを管理コンピュータに送信してもよい。
【0087】
また、本実施の形態に係る血糖計10aは、水平なテーブルTに載置したときに、試験片12の中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している形状(換言すれば、モニタ34の表示面の延長線Lを基準として、中心軸線Cが先端側に向けて斜め下方を指向している形状)とすることにより、試験片の点着部が血液玉の方向を指向しやすくなり、穿刺によって得られた血液玉60に対して、試験片12の点着部22を容易且つ確実に接触させることができ、計測エラーを抑制することができる。
【0088】
延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は、点着部22が血液玉60の方向をより正しく指向させるためには、10°以上、好ましくは15°以上とするとよい。一方、角度θ1を大きくすると中継部46が過度に下向きとなることから、血糖計10aを把持したとき及び載置時に点着部22の視認性が悪くなったり、安定感が損なわれたり、点着部22が血液玉60の方向を指向しなくなり、又は、載置時に試験片12がテーブルTに接触してしまう懸念がある。したがって、角度θ1は、40°以下、好ましくは30°以下にするとよい。結局、角度θ1は、各部の寸法に対する影響も勘案しながら、10°〜40°の範囲とし、好ましくは15°〜30°の範囲に設定するとよい。
【0089】
次に、変形例に係る血糖計10bについて説明する。血糖計10bについて、血糖計10aと同じ箇所については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0090】
図13に示すように、第1の変形例に係る血糖計10bは、試験片70を装着可能なように、血糖計10aの先端装着部30を先端装着部72に変えたものである。図14に示すように、試験片70は薄く細い板状であり、中心軸線C上に血液導入路74が設けられている。試験片70は、公知の血液成分測定用試験片をそのまま適用可能である。
【0091】
血糖計10bでは、前記の血糖計10aと異なって、測定部32において光学手段ではなく、採取された血液を電気化学センサーによって求められる電流値に基づいて血糖値を計測する。
【0092】
血糖計10bでは、前記の血糖計10aと同様に、試験片70の中心軸線Cは先端側に向けて斜め下方を指向しており、延長線Lと中心軸線Cとのなす角度θ1は27°に設定されている。
【0093】
血糖計10a及び10bは、試料の特性として血糖値を計測するが、これに限られるものではなく、ホルモン濃度やコレステロール濃度等を測定する装置(血液成分測定装置)としても適用可能である。
【0094】
血糖計10a及び10bにおけるバーコードリーダ48は、他のデータ読取光学手段であってもよく、例えば、マニュアルスキャン方式、CCDスキャン方式、レーザスキャン方式、イメージセンシング方式等のいずれでもよい。
【0095】
CCDカメラによるスキャン方式では、2次元コードの読取が可能になって、読取可能な情報量が増える。2次元コードを読み取る場合には、例えば、所定の処方箋情報等を読み取って、計測した血糖値と照合することによりインスリン投与量を求めるようにしてもよい。バーコードリーダ48で読み取るデータ種類は上記の例に限定されない。
【0096】
本発明に係る血液成分測定装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0097】
10a、10b…血糖計 12、70…試験片
20…試験紙 22…点着部
24、74…血液導入路 30、72…先端装着部
32…測定部 34…モニタ
34a…血糖値表示部 34b…補助表示部
36…イジェクタレバー 40…データ読取ボタン
44…主部 46…中継部
46a…上面
48…バーコードリーダ(データ読取光学手段) 50…曲面部
60…血液玉
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片が装着される血液成分測定装置において、
前記試験片が装着される先端装着部と、
前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、
前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタと、
後端に設けられたデータ読取光学手段と、
前記モニタが設けられる主部と、
前記主部と前記先端装着部との間に設けられる中継部と、
前記主部と前記中継部との接続箇所で、側面視で下面が凹状の曲面部と、
を有することを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の血液成分測定装置において、
前記モニタが設けられる側の面で、モニタと前記先端装着部との間に、前記データ読取光学手段の操作スイッチを有することを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の血液成分測定装置において、
前記データ読取光学手段は、バーコードリーダであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記データ読取手段は、2次元コードを読み取るカメラであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
上面視で、前記中継部は、前記主部から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記曲面部の曲率半径は、5mm〜25mmであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、
側面視で、前記モニタの表示面の延長線を基準として、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項1】
試験片が装着される血液成分測定装置において、
前記試験片が装着される先端装着部と、
前記先端装着部に装着された前記試験片における血液導入路を介して採取された血液の成分を測定する測定部と、
前記測定部及び所定の制御部によって求められた結果を表示するモニタと、
後端に設けられたデータ読取光学手段と、
前記モニタが設けられる主部と、
前記主部と前記先端装着部との間に設けられる中継部と、
前記主部と前記中継部との接続箇所で、側面視で下面が凹状の曲面部と、
を有することを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の血液成分測定装置において、
前記モニタが設けられる側の面で、モニタと前記先端装着部との間に、前記データ読取光学手段の操作スイッチを有することを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の血液成分測定装置において、
前記データ読取光学手段は、バーコードリーダであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記データ読取手段は、2次元コードを読み取るカメラであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
上面視で、前記中継部は、前記主部から連続的且つ凹状に、先端側へ向かって狭幅になっていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記曲面部の曲率半径は、5mm〜25mmであることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の血液成分測定装置において、
前記モニタの表示面を上側、その反対側を下側とし、
側面視で、前記モニタの表示面の延長線を基準として、前記試験片の中心軸線は先端側に向けて斜め下方を指向していることを特徴とする血液成分測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−201006(P2010−201006A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50494(P2009−50494)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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