説明

血液成分製剤用検査装置及び血液成分分離装置

【課題】バッグの種類に関わらず血液成分製剤の良否を比較的簡便に判別することが可能な血液成分製剤用検査装置を提供する。
【解決手段】可視光を照射する発光部26と、反射光を受光する受光部28と、受光した光のスペクトルを測定し当該スペクトルに数学的処理を施す演算処理部30と、演算処理部30による演算結果に基づいて、血漿製剤の良否を判別する判別部36とを備える血液成分製剤用検査装置1。演算処理部30は、受光部28が受光した光のスペクトルを測定するスペクトル測定部32と、スペクトルを2次微分して所定の可視光波長領域におけるピーク強度を算出するピーク強度算出部34とを有する。判別部36は、算出されたピーク強度の換算値が、所定の基準値を超えているか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、血漿製剤の良否を判別する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血漿製剤等の血液成分製剤を検査するための血液成分製剤用検査装置及び血液を成分ごとに分離するための血液成分分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血漿製剤用の検査装置として、従来、血漿製剤(製剤化前の血漿バッグを含む)に向けて光を投射する発光部及び血漿製剤を透過又は反射した光を受光する受光部を有する色調センサと、色情報を記憶する記憶手段を有する制御部と、比較対象となる色情報を切り替える切替スイッチとを備える血漿製剤用検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の血漿製剤用検査装置によれば、上記した色調センサ及び制御部を備えているため、受光部が受光した透過光又は反射光の色と記憶手段に記憶された色情報とを比較することにより、血漿製剤が良品であるか不良品であるかを判別することが可能となる。
【0004】
また、血漿製剤は、バッグ容量によってバッグの厚みが異なるし、バッグに使用する材料についてもバッグメーカーによって異なるため、そのような種類(容量やメーカー)の異なるバッグに同一の血漿を注入したとしても、血漿製剤の色調が微妙に異なってしまい、検査結果に影響を及ぼしかねない。
【0005】
これに対し、従来の血漿製剤用検査装置によれば、上記した切替スイッチを備えているため、使用者は、載置するバッグの種類に応じて切替スイッチを操作することにより、バッグの種類に適した色情報でもって血漿製剤の良否を判別することができる。その結果、バッグの種類が異なることによる検査結果への影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−85824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、血漿製剤の検査を実際に行う現場においては、非常に多くの血漿製剤を取り扱わなければならないことから、血漿製剤の良否をより簡便に判別したいという要望がある。
【0008】
しかしながら、従来の血漿製剤用検査装置においては、載置するバッグの種類に応じて切替スイッチを手動で操作しなければならず、切替操作が煩わしい。
【0009】
なお、上記した要望は、血漿製剤を検査するための血漿製剤用検査装置に限ったものではなく、例えば血小板製剤など、他の血液成分からなる血液成分製剤を検査するための検査装置に関しても存在する。また、上記した要望は、血液成分製剤を検査するための検査装置に限ったものでもなく、血液を成分ごとに分離するための血液成分分離装置に関しても存在する。
【0010】
そこで、本発明は、上記の要望を鑑みてなされたもので、バッグの種類に関わらず血液成分製剤の良否を比較的簡便に判別することが可能な血液成分製剤用検査装置及び血液成分分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記した目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、血液成分製剤に向けて可視光を照射したときに得られるスペクトルを2次微分すると、2次微分した後のスペクトル(以下、2次微分スペクトルと略す。)の所定の波長領域においてピークが先鋭化されるという知見を得た。また、この2次微分スペクトルに現れるピークは、バッグの種類(容量やメーカー)を変えたとしても必ず所定の波長領域に現れるという知見も得た。
【0012】
そこで、本発明者らは以上の知見に基づいて、血液成分製剤に向けて可視光を照射することによって得られるスペクトルを2次微分し、その2次微分スペクトルに現れたピークにおけるピーク強度の絶対値又は換算値が所定の基準値を超えているか否かを判定すれば、バッグの種類に関わらず血液成分製剤の良否を比較的簡便に判別するのが可能となることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の血液成分製剤用検査装置(1)は、検査対象となる血液成分製剤に向けて可視光を照射する発光部(26)と、前記発光部(26)から照射され前記血液成分製剤を透過した光又は前記血液成分製剤で反射した光を受光する受光部(28)と、前記受光部(28)が受光した光のスペクトルを測定し、当該スペクトルに数学的処理を施す演算処理部(30)と、前記演算処理部(30)による演算結果に基づいて、前記血液成分製剤の良否を判別する判別部(36)とを備え、前記演算処理部(30)は、前記受光部(28)が受光した光のスペクトルを測定するスペクトル測定部(32)と、前記スペクトルを2次微分して所定の可視光波長領域におけるピーク強度を算出するピーク強度算出部(34)とを有し、前記判別部(36)は、算出された前記ピーク強度の絶対値又は換算値が、所定の基準値を超えているか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、前記血液成分製剤の良否を判別する機能を有することを特徴とする。
【0014】
このため、本発明の血液成分製剤用検査装置によれば、上記したスペクトル測定部及びピーク強度算出部を有する演算処理部並びに判別部を備えているため、血液成分製剤に向けて可視光を照射することによって得られるスペクトルを2次微分し、その2次微分スペクトルに現れたピークにおけるピーク強度の絶対値又は換算値が所定の基準値を超えているか否かを判定することができる。その結果、バッグの種類に関わらず血液成分製剤の良否を比較的簡便に判別することが可能となる。また、従来の血液成分製剤用検査装置の場合に必要とされた「切替スイッチによる手動操作」について、本発明の血液成分製剤用検査装置では、そのような煩わしい操作が不要となる。
【0015】
本発明の血液成分製剤用検査装置(1)においては、前記所定の基準値に関する基準値情報を記憶する記憶部(42)をさらに備え、前記判別部(36)は、前記判定を行うにあたって、前記記憶部(42)に記憶された前記基準値情報を参照する機能を有することが好ましい。
【0016】
このように構成することにより、予め基準値情報を記憶部に記憶させておくことができるため、血液成分製剤の良否をより一層簡便に判別することができるようになる。
【0017】
本発明の血液成分製剤用検査装置(1)においては、前記ピーク強度算出部(34)が算出対象とする前記所定の可視光波長領域は、400nm〜600nmの範囲であることが好ましい。
【0018】
本発明者らの実験によると、血漿製剤を検査対象とした場合、2次微分スペクトルにおける400nm〜600nmの範囲において明確なピークが出現した。このことから、本発明の血液成分製剤用検査装置は、検査対象が血漿製剤である場合に特に好適な検査装置となる。
【0019】
本発明の血液成分製剤用検査装置(1)においては、前記ピーク強度算出部(34)が算出対象とする前記所定の可視光波長領域は、500nm〜600nmの範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明者らの実験によると、溶血によりヘモグロビンが混入した血漿製剤又は赤血球が溶血していない状態でそのまま混入した血漿製剤を検査対象とした場合、2次微分スペクトルにおける500nm〜600nmの範囲において明確なピークが出現した。このことから、本発明の血液成分製剤用検査装置は、血漿製剤へのヘモグロビン混入又は赤血球混入を判別するのに好適な検査装置であると言える。
【0021】
本発明の血液成分製剤用検査装置(1)においては、前記発光部(26)は、LEDからなることが好ましい。
【0022】
本発明者らの実験によると、溶血によりヘモグロビンが混入した血漿製剤又は赤血球がそのままの状態で混入した血漿製剤を検査対象とした場合、発光部をハロゲンランプとしたときには、血漿製剤へのヘモグロビン混入は良好に判別できたが、血漿製剤への赤血球混入は判別するのが容易ではないことが判明した。その一方、発光部をハロゲンランプから上記したLEDに変えたときには、血漿製剤へのヘモグロビン混入も赤血球混入もともに良好に判別できることが判明した。このことから、本発明の血液成分製剤用検査装置は、血漿製剤へのヘモグロビン混入又は赤血球混入を判別するのにさらに好適な検査装置であると言える。
【0023】
本発明の血液成分製剤用検査装置(1)においては、前記発光部(26)から照射された可視光が前記受光部(28)で受光されるまでの光路長を調整する光路長調整部(38)をさらに備えることが好ましい。
【0024】
ところで、例えば血漿製剤の中には、乳び(血液中に含まれる脂肪成分)によって血漿が白濁したものがあり、乳びが強い血漿製剤におけるヘモグロビン混入又は赤血球混入を判別する場合は、その濁度の大きさに起因して検査できなかったり、検査できたとしても検査結果に悪影響を及ぼしたりする可能性が考えられなくもない。
これに対し、本発明の血液成分製剤用検査装置によれば、光路長調整部を備えていることによって光路長を調整することができるため、血漿製剤の白濁度に応じて光路長を短くすることが可能となる。ここで、ランベルトの法則及びベールの法則に基づけば、光路長を短くすることによって溶液の濃度が吸光度に与える影響を低減することができることから、本発明の血液成分製剤用検査装置は、乳びが強い血漿製剤など、濁度が比較的大きい血液成分製剤を検査する場合であっても、良好に検査することが可能な検査装置となる。
【0025】
本発明の血液成分製剤用検査装置(1)においては、前記スペクトル測定部(32)は、前記スペクトルの測定時間を調整する機能を有することが好ましい。
【0026】
このように構成することにより、例えば乳びが強い血漿製剤など、濁度が比較的大きい血液成分製剤を検査する場合においては、スペクトルの測定時間を長くすることによって、濁度による検査結果への影響を低減することが可能となる。
【0027】
本発明の血液成分分離装置(100)は、複数の血液成分を含む血液を血液成分ごとに分離してバッグに送液する送液機構(150)と、血液成分が送液された前記バッグ(191)に向けて可視光を照射する発光部(126)と、前記発光部(126)から照射され前記バッグ(191)を透過した光又は前記バッグ(191)で反射した光を受光する受光部(128)と、前記受光部(128)が受光した光のスペクトルを測定し、当該スペクトルに数学的処理を施す演算処理部(130)と、前記演算処理部(130)による演算結果に基づいて、前記バッグ(191)の良否を判別する判別部(136)と、少なくとも前記送液機構(150)、前記発光部(126)及び前記演算処理部(130)を制御する制御部(140)とを備え、前記演算処理部(130)は、前記受光部(128)が受光した光のスペクトルを測定するスペクトル測定部(132)と、前記スペクトルを2次微分して所定の可視光波長領域におけるピーク強度を算出するピーク強度算出部(134)とを有し、前記判別部(136)は、算出された前記ピーク強度の絶対値又は換算値が、所定の基準値を超えているか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、前記バッグ(191)の良否を判別する機能を有することを特徴とする。
【0028】
このため、本発明の血液成分分離装置によれば、上記したスペクトル測定部及びピーク強度算出部を有する演算処理部並びに判別部を備えているため、バッグに向けて可視光を照射することによって得られるスペクトルを2次微分し、その2次微分スペクトルに現れたピークにおけるピーク強度の絶対値又は換算値が所定の基準値を超えているか否かを判定することができる。その結果、バッグの種類に関わらず、バッグに送液した血液成分の良否を比較的簡便に判別することが可能となる。
【0029】
本発明の血液成分分離装置(100)においては、前記バッグに連通するチューブをシールするシール機構(160)をさらに備え、前記制御部(140)は、前記判別部(136)の前記判定結果に基づいて、前記シール機構(160)のシール動作を制御する機能をさらに有することが好ましい。
【0030】
このように構成することにより、判別部による良否判別結果に基づいてシールの可否を決定することが可能となる。
【0031】
本発明の血液成分分離装置(100)においては、前記所定の基準値に関する基準値情報を記憶する記憶部(142)をさらに備え、前記判別部(136)は、前記判定を行うにあたって、前記記憶部(142)に記憶された前記基準値情報を参照する機能を有することが好ましい。
【0032】
このように構成することにより、予め基準値情報を記憶部に記憶させておくことができるため、バッグに送液された血液成分の良否をより一層簡便に判別することができるようになる。
【0033】
本発明の血液成分分離装置(100)においては、前記ピーク強度算出部(134)が算出対象とする前記所定の可視光波長領域は、400nm〜600nmの範囲であることが好ましく、500nm〜600nmの範囲であることがより好ましい。
【0034】
このように構成することにより、血漿成分を送液したバッグについて、当該バッグへのヘモグロビン混入又は赤血球混入を良好に判別することが可能となる。
【0035】
本発明の血液成分分離装置(100)においては、前記発光部(126)は、LEDからなることが好ましい。
【0036】
このように構成することにより、血漿成分を送液したバッグについて、当該バッグへのヘモグロビン混入又は赤血球混入をさらに良好に判別することが可能となる。
【0037】
本発明の血液成分分離装置(100)においては、前記発光部(126)から照射された可視光が前記受光部(128)で受光されるまでの光路長を調整する光路長調整部(138)をさらに備えることが好ましい。
【0038】
このように構成することにより、例えば乳びが強い血漿成分など、濁度が比較的大きい血液成分がバッグに送液された場合であっても、光路長を短くすることによって良好に検査することが可能となる。
【0039】
本発明の血液成分分離装置(100)においては、前記スペクトル測定部(132)は、前記スペクトルの測定時間を調整する機能を有することが好ましい。
【0040】
このように構成することにより、例えば乳びが強い血漿成分など、濁度が比較的大きい血液成分がバッグに送液された場合であっても、スペクトルの測定時間を長くすることによって良好に検査することが可能となる。
【0041】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1の電気的構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1の外観斜視図。
【図3】第2実施形態に係る血液成分分離装置100の電気的構成を示すブロック図。
【図4】第2実施形態に係る血液成分分離装置100の外観斜視図。
【図5】第2実施形態に係る血液成分分離装置100を正面上方から見た図。
【図6】第2実施形態に係る血液成分分離装置100を説明するために示す図。
【図7】試料A−1及びA−2の吸光度スペクトルを示す図。
【図8】試料A−1及びA−2の2次微分スペクトルを示す図。
【図9】試験例1におけるヘモグロビン濃度と吸光度との関係を示す図。
【図10】試験例1におけるヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係を示す図。
【図11】試料B−1及びB−2の吸光度スペクトルを示す図。
【図12】試料B−1及びB−2の2次微分スペクトルを示す図。
【図13】試験例2におけるヘモグロビン濃度と吸光度との関係を示す図。
【図14】試験例2におけるヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係を示す図。
【図15】試料C−1及びC−2の吸光度スペクトルを示す図。
【図16】試料C−1及びC−2の2次微分スペクトルを示す図。
【図17】試料D−1及びD−2の吸光度スペクトルを示す図。
【図18】試料D−1及びD−2の2次微分スペクトルを示す図。
【図19】試験例4におけるヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の血液成分製剤用検査装置及び血液成分分離装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0044】
[第1実施形態]
第1実施形態は、本発明の血液成分製剤用検査装置を説明するための実施形態である。
【0045】
まず、第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1の構成について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1の電気的構成を示すブロック図である。図2は、第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1の外観斜視図である。
【0046】
第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1は、例えば血漿製剤へのヘモグロビン混入又は赤血球混入を検査するための検査装置であって、図1及び図2に示すように、装置本体10の載置部12に載置された血漿製剤に向けて可視光を照射する発光部26と、発光部26から照射され血漿製剤で反射した光を受光する受光部28と、受光部28が受光した光のスペクトルを測定し、当該スペクトルに数学的処理を施す演算処理部30と、演算処理部30による演算結果に基づいて、血漿製剤の良否を判別する判別部36と、判別部36による良否判別結果を作業者に報知する報知部24と、記憶部42と、書換部44と、血液成分製剤用検査装置1内の各部に電力を供給するための電源部46と、装置本体10の上面に設けられた電源スイッチ22と、光路長調整部38と、血液成分製剤用検査装置1内の各部を統括制御する制御部40とを備える。これら各部のうち報知部24及び電源スイッチ22を除いたものは、装置本体10の内部に設けられている。
【0047】
装置本体10の上面には、検査対象となるバッグが載置される載置部12が設けられている。載置部12は、装置本体10の正面から奥に向かうにつれて高くなるように傾斜した傾斜面からなる。このように傾斜した載置部12に血漿製剤を載置すると、血漿製剤中の空気がバッグ上方に移動するため、精度良くスペクトルの測定を行うことが可能となる。
【0048】
載置部12の略中央部分には、発光部26からの光を通すための発光部用孔16と、発光部26から照射され血漿製剤で反射した光を通すための受光部用孔18とが形成されている。図示による説明は省略するが、載置部12の下方に発光部26及び受光部28が設置されており、発光部26からの光が発光部用孔16を介して血漿製剤に良好に照射され、かつ、血漿製剤で反射された光が受光部用孔18を介して受光部28に良好に入射するように、発光部26及び受光部28の設置角度が調整されている。
【0049】
装置本体10の正面には、図2に示すように、例えば外部記録媒体としての外部メモリ(例えはSDカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)など)を挿入可能なスロット部14が設けられている。
【0050】
発光部26は、例えば、青色発光素子と黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDから構成されている。
【0051】
受光部28は、例えば、分光センサからなる。
【0052】
演算処理部30は、図1に示すように、受光部28が受光した光のスペクトルを測定するスペクトル測定部32と、スペクトル測定部32が測定したスペクトルを2次微分し、当該2次微分スペクトルのうち500nm〜600nmの範囲のピーク強度を算出するピーク強度算出部34とを有する。
【0053】
スペクトル測定部32は、スペクトルを測定するときの当該測定時間を調整する機能をさらに有する。
【0054】
ピーク強度算出部34は、算出したピーク強度をヘモグロビン量に換算し、当該換算値を判別部36に出力する。
【0055】
判別部36は、算出されたピーク強度の換算値が、所定の基準値を超えているか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、血漿製剤の良否を判別する良否判別機能と、判定を行うにあたって、記憶部42に記憶された基準値情報を参照する基準値情報参照機能とを有する。
【0056】
記憶部42は、良品としての血漿製剤と不良品としての血漿製剤との境目となるヘモグロビン量を、基準値情報として記憶している。そして、判別部36が上記した基準値情報参照機能を発揮したときに、当該基準値情報を判別部36に出力する。
【0057】
書換部44は、基準値情報に関するデータを装置外部から受け付け、当該データに基づいて、記憶部42に記憶された基準値情報を書き換える機能を有する。具体的には、装置本体10のスロット部14に外部メモリを挿入すると、書換部44は、外部メモリに記憶された基準値情報に関するデータを読み出し、読み出した当該データに基づいて、記憶部42に記憶された基準値情報(旧基準値情報)を新たな基準値情報に書き換える。なお、書換部44が外部メモリからデータを読み出す手段については、電気的であってもよいし、磁気的あるいは光学的であってもよい。
【0058】
電源部46は、外部の商用電源などから電源ケーブル(図示せず。)を介して交流電力を導き、内蔵するAC/DC変換部(図示せず。)で変圧・整流・平滑などの処理を行って、血液成分製剤用検査装置1の各部に電力を供給する機能を有する。
【0059】
電源スイッチ22をON側/OFF側に切り替えることにより、血液成分製剤用検査装置1の電源のON/OFFを切り替え可能に構成されている。
【0060】
光路長調整部38は、制御部40からの指示によって、発光部26から照射された可視光が受光部28で受光されるまでの光路長を調整する機能を有する。具体的には、制御部40からの指示によって受光部28の位置を調整することにより、当該光路長を調整している。
【0061】
制御部40は、例えばマイクロコンピュータ等から構成されている。
【0062】
報知部24は、例えば液晶モニターであり、図2に示すように、上蓋20の裏面側に設置されている。報知部24は、判別部36による良否判別結果を、文字情報及び画像情報によって作業者に報知可能に構成されている。なお、装置本体10と上蓋20とは蝶番(図示せず。)によって接続されており、上蓋20を倒すことによって載置部12上の空間(すなわち血漿製剤の周囲)を暗室状態とすることができる。
【0063】
以上のように構成された第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1によれば、上記したスペクトル測定部32及びピーク強度算出部34を有する演算処理部30並びに判別部36を備えているため、血漿製剤に向けて可視光を照射することによって得られるスペクトルを2次微分し、その2次微分スペクトルに現れたピークにおけるピーク強度の換算値が所定の基準値を超えているか否かを判定することができる。その結果、バッグの種類に関わらず血漿製剤の良否を比較的簡便に判別することが可能となる。
【0064】
第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1においては、判別部36は、上記した基準値情報参照機能を有するため、予め基準値情報を記憶部42に記憶させておくことが可能となる。その結果、血漿製剤の良否をより一層簡便に判別することができるようになる。
【0065】
第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1においては、ピーク強度算出部34が算出対象とする可視光波長領域は、500nm〜600nmの範囲である。詳しくは実施例にて説明するが、溶血によりヘモグロビンが混入した血漿製剤又は赤血球が溶血していない状態でそのまま混入した血漿製剤を検査対象とした場合、2次微分スペクトルにおける500nm〜600nmの範囲において明確なピークが出現することから、血液成分製剤用検査装置1は、血漿製剤へのヘモグロビン混入又は赤血球混入を判別するのに好適な検査装置となる。
【0066】
第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1においては、発光部26はLED(青色発光素子と黄色蛍光体を組み合わせた白色LED)からなるため、血漿製剤へのヘモグロビン混入又は赤血球混入を判別するのにさらに好適な検査装置となる。なお、青色発光素子と黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDの発光スペクトルは、約450nm付近と500nm〜650nmの範囲とにピークを有しており、ピーク強度算出部34が算出対象とする可視光波長領域(500nm〜600nmの範囲)においてピークの一部が重なっていることから、青色発光素子と黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDからなる発光部26は、ピーク強度算出部34に適した光源となる。
【0067】
第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1においては、光路長調整部38を備えていることによって発光部26から照射された可視光が受光部28で受光されるまでの光路長を調整することができるため、血漿製剤の白濁度に応じて光路長を短くすることが可能となる。その結果、第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1は、乳びが強い血漿製剤など、濁度が比較的大きい血液成分製剤を検査する場合であっても、良好に検査することが可能な検査装置となる。
【0068】
第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1においては、スペクトル測定部32は、スペクトルの測定時間を調整する機能を有する。これにより、例えば乳びが強い血漿製剤を検査する場合においては、スペクトルの測定時間を長くすることによって、濁度による検査結果への影響を低減することが可能となる。
【0069】
[第2実施形態]
第2実施形態は、本発明の血液成分分離装置を説明するための実施形態である。
【0070】
まず、第2実施形態に係る血液成分分離装置100の構成について、図3〜図5を用いて説明する。
図3は、第2実施形態に係る血液成分分離装置100の電気的構成を示すブロック図である。図4は、第2実施形態に係る血液成分分離装置100の外観斜視図である。図5は、第2実施形態に係る血液成分分離装置100を正面上方から見た図である。
【0071】
第2実施形態に係る血液成分分離装置100は、例えば血液を赤血球成分と血漿成分とに分離するための分離装置であって、図3〜図5に示すように、第1載置部112に載置されたバッグ191に向けて可視光を照射する発光部126と、発光部126から照射されバッグ191で反射した光を受光する受光部128と、受光部128が受光した光のスペクトルを測定し、当該スペクトルに数学的処理を施す演算処理部130と、演算処理部130による演算結果に基づいて、バッグ191の良否を判別する判別部136と、各種情報を作業者に報知する報知部としての第1報知部124及び第2報知部125と、記憶部142と、書換部144と、血液成分分離装置100内の各部に電力を供給するための電源部146と、装置本体110の前面下部に設けられた電源スイッチ122と、電源スイッチ122の上方に設けられた操作パネル123と、光路長調整部138と、赤血球成分及び血漿成分を含む血液を血液成分ごとに分離してバッグに送液する送液機構150と、バッグに連通するチューブをシールするシール機構160と、血液成分分離装置100内の各部を統括制御する制御部140とを備える。これら各部のうち送液機構150、シール機構160、第1報知部124及び第2報知部125、電源スイッチ122並びに操作パネル123を除いたものは、装置本体110の内部に設けられている。
【0072】
装置本体110の前面には、バッグ190が装着されるバッグ装着部111が設けられている。装置本体110の上面左奥には、バッグ191が載置される第1載置部112が設けられており、装置本体110の上面右奥には、バッグ192が載置される第2載置部113が設けられている。
【0073】
ここで、血液成分分離装置100に装着される各バッグ190〜192について説明する。図5に示すバッグ190は、赤血球成分及び血漿成分を含む血液が収容された血液バッグであり、他の遠心分離器等を用いることによって赤血球成分と血漿成分が上下に分離された状態で収容されている。バッグ190をバッグ装着部111に装着した状態では、赤血球成分が下層となり血漿成分が上層となる。バッグ191は、バッグ190中の血漿成分のみを収容するためのバッグであり、バッグ190中の血漿成分を移動させる前の状態においては空の状態である。バッグ192は、MAP液(mannitol−adenine−phosphate)等の赤血球保存用添加液を収容しておくためのバッグである。これらバッグ190〜192は、チューブ193〜195及びY字管196によって接続されている。
【0074】
第1載置部112の略中央部分には、図4に示すように、発光部126からの光及び発光部126から照射されバッグ191で反射した光を通すための光通過用孔116が形成されている。図示による説明は省略するが、第1載置部112の下方に発光部126及び受光部128が設置されており、発光部126からの光が光通過用孔116を介してバッグ191に良好に照射され、かつ、バッグ191で反射された光が光通過用孔116を介して受光部128に良好に入射するように、発光部126及び受光部128の設置角度が調整されている。
【0075】
図示は省略するが、装置本体110の背面には、例えば外部記録媒体としての外部メモリ(例えはSDカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)など)を挿入可能なスロット部114が設けられている。
【0076】
発光部126は、例えば、青色発光素子と黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDから構成されている。
【0077】
受光部128は、例えば、分光センサからなる。
【0078】
演算処理部130は、図3に示すように、受光部128が受光した光のスペクトルを測定するスペクトル測定部132と、スペクトル測定部132が測定したスペクトルを2次微分し、当該2次微分スペクトルのうち500nm〜600nmの範囲のピーク強度を算出するピーク強度算出部134とを有する。
【0079】
スペクトル測定部132は、スペクトルを測定するときの当該測定時間を調整する機能をさらに有する。
【0080】
ピーク強度算出部134は、算出したピーク強度をヘモグロビン量に換算し、当該換算値を判別部136に出力する。
【0081】
判別部136は、算出されたピーク強度の換算値が、所定の基準値を超えているか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、バッグ191の良否を判別する良否判別機能と、判定を行うにあたって、記憶部142に記憶された基準値情報を参照する基準値情報参照機能とを有する。
【0082】
記憶部142は、良品としてのバッグ191と不良品としてのバッグ191との境目となるヘモグロビン量を、基準値情報として記憶している。そして、判別部136が上記した基準値情報参照機能を発揮したときに、当該基準値情報を判別部136に出力する。
【0083】
書換部144は、基準値情報に関するデータを装置外部から受け付け、当該データに基づいて、記憶部142に記憶された基準値情報を書き換える機能を有する。書換部144の具体的機能及び構成については、第1実施形態で説明した書換部44と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0084】
電源部146は、外部の商用電源などから電源ケーブル(図示せず。)を介して交流電力を導き、内蔵するAC/DC変換部(図示せず。)で変圧・整流・平滑などの処理を行って、血液成分分離装置100の各部に電力を供給する機能を有する。
【0085】
電源スイッチ122を押下することにより、血液成分分離装置100の電源のON/OFFを切り替え可能に構成されている。
【0086】
光路長調整部138は、制御部140からの指示によって、発光部126から照射された可視光が受光部128で受光されるまでの光路長を調整する機能を有する。具体的には、制御部140からの指示によって受光部128の位置を調整することにより、当該光路長を調整している。
【0087】
送液機構150は、図3に示すように、バッグ装着部111に装着されたバッグ190をバッグ外面から加圧することにより、バッグ190内の血液成分の一部を他のバッグに送液するための第1送液部151と、第1載置部112に載置されたバッグ191をバッグ外面から加圧することにより、バッグ191内の血液成分の一部を他のバッグに送液するための第2送液部152と、第2載置部113に載置されたバッグ192をバッグ外面から加圧することにより、バッグ192内の液体を他のバッグに送液するための第3送液部153とを有する。
【0088】
第1送液部151は、図4及び図5に示す第1加圧板154と、第1加圧板154を回動させるためのモータ(図示せず。)と、バッグ190内の赤血球成分と血漿成分との境界面を検出するための境界検出センサ(図示せず。)とを有する。第1加圧板154は、図4に示すバッグ装着部111を覆うように装置本体110の前面に設置されており、第1加圧板154の下側部分を回動中心として装置本体110の前後方向に回動可能に設けられている。
【0089】
第2送液部152は、図4及び図5に示す第2加圧板155と、第2加圧板155を回動させるためのモータ(図示せず。)とを有する。第2加圧板155は、第1載置部112の上方に設置されており、第2加圧板155の奥側部分を回動中心として装置本体110の上下方向に回動可能に設けられている。
【0090】
第3送液部153は、図4及び図5に示す第3加圧板156と、第3加圧板156を回動させるためのモータ(図示せず。)とを有する。第3加圧板156は、第2載置部113の上方に設置されており、第3加圧板156の奥側部分を回動中心として装置本体110の上下方向に回動可能に設けられている。
【0091】
シール機構160は、図3〜図5に示すように、バッグ190からY字管196までをつなぐチューブ193をシールするための第1シール部161と、Y字管196からバッグ191までをつなぐチューブ194をシールするための第2シール部162と、Y字管196からバッグ192までをつなぐチューブ195をシールするための第3シール部163とを有する。第1〜第3シール部161〜163におけるチューブと接触する部分は、電極で構成されており、各電極にチューブが挟まれた状態で電流を印加することにより、チューブをシール(封止)可能に構成されている。なお、これら第1〜第3シール部161〜163は、各電極に電流を印加させずにチューブを挟持することで、チューブ内の連通状態を一時的に遮断させることも可能である。
【0092】
制御部140は、例えばマイクロコンピュータ等から構成されている。
【0093】
第1報知部124は、例えば液晶モニターであり、図4及び図5に示すように、装置本体110の正面右寄りの位置に設置されている。第1報知部124は、判別部136による良否判別結果を、文字情報及び画像情報によって作業者に報知可能に構成されている。
【0094】
第2報知部125は、例えば警告表示灯であり、図4に示すように、装置本体110の上面奥方(第1載置部112の近く)に設置されている。第2報知部125は、例えば緑色、黄色及び赤色の3色の光を点灯又は点滅可能に構成されている。第2報知部125は、判別部136による良否判別結果を、光の点灯又は点滅によって作業者に報知可能に構成されている。
【0095】
操作パネル123は、装置本体110の前面であって、第1報知部124の下方に設置されている。操作パネル123には複数のボタンが配設されており、各ボタンを押下することによって、各種数値の設定変更や、血液成分を分離する際の動作の実行又は停止等を操作することができる。
【0096】
次に、血液成分分離装置100によってバッグ190内の血液成分が赤血球成分と血漿成分とに分離される流れについて、図6を用いて説明する。
図6は、第2実施形態に係る血液成分分離装置100を説明するために示す図である。図6(a)〜図6(f)においては、バッグ190内の血液成分が分離されてバッグ190,191内に収容される流れを模式的に図示している。なお、図6(a)〜図6(f)に示すバッグ190〜192について、右上がりで間隔の狭い斜線は赤血球成分を示しており、右上がりで間隔の広い斜線は血漿成分を示しており、右下がりの斜線は赤血球保存用添加液を示しており、図6(f)に示す交差する斜線は赤血球保存用添加液が添加された後の赤血球成分を示しており、斜線等を付けていない白色で示すバッグは空バッグである。
【0097】
血液成分分離装置100を用いて血液成分を分離するにあたって、まず、赤血球成分及び血漿成分を含む血液が収容されたバッグ190をバッグ装着部111に装着し、空バッグからなるバッグ191を第1載置部112に載置し、赤血球保存用添加液が収容されたバッグ192を第2載置部113に載置する。各チューブ193〜195及びY字管196については、所定位置に配置固定する(図5及び図6(a)参照。)。
【0098】
作業者が操作パネル123を操作して分離操作が実行されると、制御部140はシール機構160を駆動制御し、第1及び第2シール部161,162を開いてチューブ193,194の連通状態を確保し、第3シール部163を閉じてチューブ195の連通状態を一時的に遮断する。この状態で、制御部140がさらに第1送液部151のモータを駆動制御し、第1加圧板154を回動させてバッグ190を加圧する(図6(b)参照。)。
【0099】
すると、バッグ190内に収容された血液成分のうち上層の血漿成分が、チューブ193,194を通ってバッグ191に移動する。上層の血漿成分の大半が移動して赤血球成分と血漿成分との境界面が境界検出センサ(図示せず。)によって検出されると、当該検出信号が制御部140に送られる。当該検出信号を受けた制御部140は、第1送液部151のモータの駆動を停止させ、第1加圧板154によるバッグ190への加圧を停止させるとともに、第2シール部162を閉じてチューブ194の連通状態を一時的に遮断する。これにより、バッグ190には赤血球成分だけが残り、バッグ191には血漿成分が移動することとなる(図6(c)参照。)。
【0100】
次に、制御部140は発光部126及び演算処理部130等を制御して、バッグ191へのヘモグロビン混入又は赤血球混入を検査する(図6(d)参照。)。判別部136による良否判別結果は、制御部140を通じて第1報知部124及び第2報知部125に送られて作業者に報知される。
【0101】
検査によってバッグ191が良品であることを確認した後、制御部140はシール機構160を駆動制御し、第3シール部163を開いてチューブ193,195の連通状態を確保する。この状態で、制御部140がさらに第3送液部153のモータを駆動制御し、第3加圧板156を回動させてバッグ192を加圧する(図6(e)参照。)。
【0102】
すると、バッグ192内に収容されていた赤血球保存用添加液が、チューブ193,195を通ってバッグ190に移動する。赤血球保存用添加液の移動が完了すると、制御部140は第3送液部153のモータの駆動を停止させ、第3加圧板156によるバッグ192への加圧を停止させるとともに、第1シール部161を閉じてチューブ193の連通状態を一時的に遮断する。これにより、バッグ190には赤血球成分に赤血球保存用添加液が添加された赤血球製剤が作製される(図6(f)参照。)。
【0103】
最後に、制御部140は第1シール部161の電極及び第2シール部162の電極に電流を印加して、チューブ193,194を封止して切り離す。これにより、赤血球成分に赤血球保存用添加液が添加された赤血球製剤(バッグ190)と、血漿成分からなる血漿製剤(バッグ191)とを得ることができる。
【0104】
なお、図6(d)に示す検査工程において、仮にバッグ191が不良品であると判定された場合、制御部140は図6(e)及び図6(f)で説明した送液機構150及びシール機構160の駆動制御を行わず、作業者からの指示を待つ待機状態に移行する。
【0105】
以上のように構成された第2実施形態に係る血液成分分離装置100によれば、上記したスペクトル測定部132及びピーク強度算出部134を有する演算処理部130並びに判別部136を備えているため、バッグ191に向けて可視光を照射することによって得られるスペクトルを2次微分し、その2次微分スペクトルに現れたピークにおけるピーク強度の換算値が所定の基準値を超えているか否かを判定することができる。その結果、バッグの種類に関わらず、バッグ191に送液した血漿成分の良否を比較的簡便に判別することが可能となる。
【0106】
第2実施形態に係る血液成分分離装置100においては、制御部140は、判別部136の判定結果に基づいて、シール機構160のシール動作を制御する機能(シール動作制御機能)を有するため、判別部136による良否判別結果に基づいてシールの可否を決定することが可能となる。すなわち、例えば「判別部136によって不良であると判別された場合にはチューブをシールしない」と制御部140にプログラミングしておけば、判別部136が不良と判別した場合にチューブをシールせずに済むこととなる。不良と判別されたバッグが仮に赤血球混入に起因するものであれば、当該バッグを装置から一旦取り外して再度遠心装置にかけた後、血液成分分離装置100に再びセットして赤血球成分の分離を図ることが可能となる。つまり、制御部140が上述したシール動作制御機能を有することにより、不良と判別されたバッグの有効利用を図ることができる。
【0107】
第2実施形態に係る血液成分分離装置100においては、判別部136は、上記した基準値情報参照機能を有するため、予め基準値情報を記憶部142に記憶させておくことが可能となる。その結果、バッグ191に送液された血漿成分の良否をより一層簡便に判別することができるようになる。
【0108】
第2実施形態に係る血液成分分離装置100においては、ピーク強度算出部134が算出対象とする可視光波長領域は、500nm〜600nmの範囲である。これにより、血漿成分を送液したバッグ191へのヘモグロビン混入又は赤血球混入を良好に判別することが可能となる。
【0109】
第2実施形態に係る血液成分分離装置100においては、発光部126は、LEDからなるため、血漿成分を送液したバッグ191へのヘモグロビン混入又は赤血球混入をさらに良好に判別することが可能となる。また、発光部126は青色発光素子と黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDからなるため、算出対象波長領域が500nm〜600nmであるピーク強度算出部134にとって、発光部126は適した光源となる。
【0110】
第2実施形態に係る血液成分分離装置100においては、光路長調整部138をさらに備えているため、例えば乳びが強い血漿成分など、濁度が比較的大きい血漿成分がバッグ191に送液された場合であっても、光路長を短くすることによって良好に検査することが可能となる。
【0111】
第2実施形態に係る血液成分分離装置100においては、スペクトル測定部132は、スペクトルの測定時間を調整する機能を有する。これにより、例えば乳びが強い血漿成分など、濁度が比較的大きい血漿成分がバッグ191に送液された場合であっても、スペクトルの測定時間を長くすることによって良好に検査することが可能となる。
【0112】
以上、本発明の血液成分製剤用検査装置及び血液成分分離装置を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0113】
(1)上記各実施形態においては、発光部から照射され血漿製剤(バッグ191)で反射された光を受光部が受光する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発光部から照射され血漿製剤(バッグ191)を透過した光を受光部が受光するように、発光部と受光部を対向配置してもよい。
【0114】
(2)上記各実施形態においては、ピーク強度算出部が、2次微分スペクトルから算出されるピーク強度をヘモグロビン量に換算し、当該換算値が所定の基準値を超えているか否かを判別部によって判定する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ピーク強度算出部は2次微分スペクトルからピーク強度の絶対値を算出し、当該絶対値が所定の基準値を超えているか否か判別部によって判定するように構成されていてもよい。すなわち、2次微分スペクトルから算出されるピーク強度をヘモグロビン量に換算した換算値に基づいて良否判定を行ってもよいし、ヘモグロビン量に換算せずに、2次微分スペクトルから算出されるピーク強度の絶対値に基づいて良否判定を行ってもよい。
【0115】
(3)上記各実施形態においては、発光部が、青色発光素子と黄色蛍光体を組み合わせた白色LEDから構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、500nm〜600nmの波長帯域において比較的高輝度である略黄緑色のLEDを用いてもよい。この略黄緑色のLEDとしては、単体で略黄緑色に発光するLEDであってもよいし、略黄緑色以外の色で発光するLEDを複数組み合わせることで略黄緑色を呈するLED集合体であってもよい。
【0116】
(4)上記各実施形態においては、受光部が分光センサからなる場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、刺激値直読式の3つのセンサを用いてもよい。
【0117】
(5)上記各実施形態においては、書換部が、スロット部に挿入された外部メモリからデータを読み出すように構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、パソコンなどの外部情報端末から送信されたデータ情報を受け付けて、当該データ情報に基づいて、記憶部に記憶された基準値情報を書き換えるように構成されていてもよい。
【0118】
(6)上記各実施形態においては、光路長調整部が、受光部の位置を調整することにより光路長を調整する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発光部の位置を調整することにより光路長を調整してもよいし、発光部及び受光部の両方の位置を調整することにより光路長を調整してもよい。また、制御部からの指示によって光路長を調整する場合に限定されるものではなく、例えば、作業者が能動的に受光部や発光部の位置を調整して光路長を調整できるように構成してもよい。
【0119】
(7)上記第1実施形態においては、発光部用孔16と受光部用孔18が分離している場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2実施形態で説明した光通過用孔116のように一体化されたものであってもよい。反対に、上記第2実施形態で説明した光通過用孔116について、第1実施形態で説明した発光部用孔16及び受光部用孔18のように分離されていてもよい。
【0120】
(8)上記第1実施形態においては、判別部による良否判別結果を作業者に報知する機能を有する報知部が、液晶モニターである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液晶以外の表示素子(例えば有機EL素子など)からなる画像表示手段であってもよいし、光の点灯又は点滅によって作業者に報知可能に構成された照明手段であってもよいし、音によって作業者に報知可能に構成された音響発生手段であってもよい。上記第2実施形態においても同様に、報知部として、液晶モニターからなる第1報知部124と3色の光を発する警告表示灯からなる第2報知部125を備える場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画像表示手段の種類を変更してもよいし、他の構成からなる照明手段を用いてもよいし、音響発生手段を第3の報知部として追加してもよい。
【0121】
(9)上記第1実施形態においては、血漿製剤へのヘモグロビン混入又は赤血球混入を検査するための検査装置を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば血小板製剤へのヘモグロビン混入又は赤血球混入を検査するための検査装置など、他の血液成分からなる血液成分製剤を検査するための検査装置としても用いることができることは言うまでもない。
【0122】
(10)上記第1実施形態においては、図2に示したように、上蓋20を閉じると箱型となる据置き型の検査装置である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、バーコードリーダーのような形状を有する携帯型の検査装置であってもよい。
【0123】
(11)上記第2実施形態においては、図6(d)及び図6(e)に示したように、検査によってバッグ191が良品であることを確認した後で、バッグ192への加圧による赤血球保存用添加液の移動を行う場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バッグ191の良否判定を行いながら、バッグ192への加圧による赤血球保存用添加液の移動を行うように構成されていてもよいし、バッグ192への加圧による赤血球保存用添加液の移動を行った後で、バッグ191の良否判定が行われるように構成されていてもよい。
【0124】
なお、上記の第1実施形態に係る血液成分製剤用検査装置1及び第2実施形態に係る血液成分分離装置100を構成するにあたっては、以下の各試験例の結果を参考にした。
【0125】
[試験例1]
試験例1は、バッグの違いによる影響を確認するための試験例である。試験では、メーカーの異なる2種類のバッグを使用し、ヘモグロビン濃度を20mg/dLに調製したウシ血液製ヘモグロビン溶液を各バッグに所定量充填し、2種類の試料(試料A−1,A−2)を作製した。そして、各試料の吸光度スペクトルを測定するとともに、当該スペクトルを2次微分して各試料の2次微分スペクトルを求めた。
【0126】
図7は、試料A−1及びA−2の吸光度スペクトルを示す図である。図8は、試料A−1及びA−2の2次微分スペクトルを示す図である。
【0127】
各試料の吸光度スペクトルについて、図7に示すように、試料A−1及びA−2ともに、500nm〜600nmの範囲においては目立ったピークが現れず、568nm付近において非常にわずかな変動が見られる程度で、吸光度のなだらかな低下が認められる一方、各試料の2次微分スペクトルについては、図8に示すように、試料A−1及びA−2ともに、500nm〜600nmの範囲において大きな変動が複数見られた。
つまり、バッグに向けて可視光を照射したときに得られるスペクトルを2次微分すると、当該2次微分スペクトルの例えば500nm〜600nmの範囲においてピークが先鋭化されるということが確認できた。
【0128】
また、試料A−1と試料A−2のデータを見比べると、図7に示す吸光度スペクトルについては、約500nm〜700nmの範囲において吸光度の値に開きが見られる一方、図8に示す2次微分スペクトルについては、少なくとも500nm〜600nmの範囲においてピークが現れる波長及びそのピークの高さがほぼ同じとなっており、両者が描く曲線に極めて高い一致性が認められた。
このことから、2次微分スペクトルに現れるピークは、バッグの種類を変えたとしても必ず所定の波長領域(500nm〜600nm)に現れるということが確認できた。
【0129】
次に、各バッグのヘモグロビン濃度を変更したときにおける、バッグの違いによる影響を確認するため、以下の追加試験を行った。
【0130】
まず、ヘモグロビン濃度を20mg/dLとした場合に使用したバッグと同じ2種類のバッグを準備し、ヘモグロビン濃度を10mg/dL、25mg/dL、30mg/dLの3段階に設定した試料を作製した後、各試料の吸光度スペクトル及び2次微分スペクトルを求めた。そして、各試料の吸光度スペクトルから、試料A−1及びA−2の場合に若干の変動が見られた568nmにおける吸光度を求めるとともに、各試料の2次微分スペクトルから、試料A−1及びA−2の場合においてピークの1つとして現れた582nmにおける吸光度2次微分値を求め、これら各数値に試料A−1及びA−2の場合の数値をデータとして加えた上で、ヘモグロビン濃度との関係をグラフで示した。
【0131】
図9は、試験例1におけるヘモグロビン濃度と吸光度との関係を示す図である。図10は、試験例1におけるヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係を示す図である。図中、白抜きの菱形で示す点は「A社製バッグから得られたデータ」であり、太線からなる直線はその回帰直線である。黒塗りの三角形で示す点は「B社製バッグから得られたデータ」であり、細線からなる直線はその回帰直線である。
【0132】
この追加試験の結果によると、図9及び図10から分かるように、ヘモグロビン濃度と吸光度との間には正の相関が見られ、ヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との間には負の相関が見られた。両者の相関性の強さを相関係数Rの二乗値で比較すると、ヘモグロビン濃度と吸光度との相関については、A社製バッグが0.845でありB社製バッグが0.516であった。一方、ヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との相関については、A社製バッグが0.997でありB社製バッグが0.986であった。これより、A社製バッグ及びB社製バッグのいずれにおいても、ヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係の方が、相関が強いということが確認できた。
【0133】
[試験例2]
試験例2は、赤血球混入及び溶血によるヘモグロビン混入のいずれにおいても血液成分製剤の良否が判別可能であることを明らかにするための試験例である。試験では、ヒトの血液をもとにして所定濃度のヘモグロビン溶液を作製し、当該溶液をヘモグロビン濃度が20mg/dLとなるまで希釈してバッグに所定量充填した。このとき、希釈水として生理食塩水を用いたものが、赤血球混入を確認するための試料(試料B−1)であり、希釈水として純水を用いたものが、溶血によるヘモグロビン混入を確認するための試料(試料B−2)である。そして、各試料の吸光度スペクトルを測定するとともに、当該スペクトルを2次微分して各試料の2次微分スペクトルを求めた。なお、使用したバッグはすべて同じ種類である。
【0134】
図11は、試料B−1及びB−2の吸光度スペクトルを示す図である。図12は、試料B−1及びB−2の2次微分スペクトルを示す図である。
【0135】
各試料の吸光度スペクトルについて、図11に示すように、試料B−1及びB−2ともに、500nm〜600nmの範囲においては多少の変動が見られる程度である一方、各試料の2次微分スペクトルについては、図12に示すように、試料B−1及びB−2ともに、500nm〜600nmの範囲において大きな変動が複数見られた。
つまり、赤血球がそのままの状態で混入した場合であっても、溶血によってヘモグロビンが混入した場合であっても、2次微分スペクトルに現れたピークにおけるピーク強度の絶対値又は換算値が所定の基準値を超えているかどうかを判定すれば、血液成分製剤の良否を比較的簡便に判別できることが確認できた。
【0136】
次に、バッグ中のヘモグロビン濃度が20mg/dL以外であったとしても上記したことが言えるか否か確認するため、以下の追加試験を行った。
【0137】
まず、希釈水として生理食塩水を用いたもの(赤血球混入モデル)と純水を用いたもの(溶血モデル)のそれぞれにおいて、ヘモグロビン濃度を10mg/dL、25mg/dLの2段階に設定した試料を作製した後、各試料の吸光度スペクトル及び2次微分スペクトルを求めた。そして、各試料の吸光度スペクトルから、試料B−1及びB−2の場合に変動が見られた570nmにおける吸光度を求めるとともに、各試料の2次微分スペクトルから、試料B−1及びB−2の場合においてピークの1つとして現れた580nmにおける吸光度2次微分値を求め、これら各数値に試料B−1及びB−2の場合の数値をデータとして加えた上で、ヘモグロビン濃度との関係をグラフで示した。
【0138】
図13は、試験例2におけるヘモグロビン濃度と吸光度との関係を示す図である。図14は、試験例2におけるヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係を示す図である。図中、白抜きの菱形で示す点は、赤血球混入モデルのデータであり、太線からなる直線はその回帰直線である。黒塗りの三角形で示す点は、溶血モデルのデータであり、細線からなる直線はその回帰直線である。
【0139】
この追加試験の結果によると、図13及び図14から分かるように、ヘモグロビン濃度と吸光度との間には正の相関が見られ、ヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との間には負の相関が見られた。両者の相関性の強さを相関係数Rの二乗値で比較すると、ヘモグロビン濃度と吸光度との相関については、赤血球混入モデルが0.996であり溶血モデルが0.781であった。一方、ヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との相関については、赤血球混入モデルが0.999であり溶血モデルが0.989であった。これより、赤血球混入モデル及び溶血モデルのいずれにおいても、ヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係の方が、相関が強いということが確認できた。
【0140】
[試験例3]
試験例3は、供血者の違いによる影響を確認するための試験例である。試験では、異なる2者のヒト血液をもとにして所定濃度のヘモグロビン溶液を2種類作製し、当該溶液をヘモグロビン濃度が20mg/dLとなるまで希釈してバッグに所定量充填した。このとき、希釈水として生理食塩水を用いたものが赤血球混入モデル(試料C−1,C−2)であり、希釈水として純水を用いたものが溶血モデル(試料D−1,D−2)である。また、試料C−1及びD−1は供血者Aの血液をもとに作製した試料であり、試料C−2及びD−2は供血者Bの血液をもとに作製した試料である。そして、各試料の吸光度スペクトルを測定するとともに、当該スペクトルを2次微分して各試料の2次微分スペクトルを求めた。なお、使用したバッグはすべて同じ種類である。
【0141】
図15は、試料C−1及びC−2の吸光度スペクトルを示す図である。図16は、試料C−1及びC−2の2次微分スペクトルを示す図である。図17は、試料D−1及びD−2の吸光度スペクトルを示す図である。図18は、試料D−1及びD−2の2次微分スペクトルを示す図である。
【0142】
各試料の吸光度スペクトルについて、図15及び図17に示すように、試料C−1及びC−2並びにD−1及びD−2ともに、500nm〜600nmの範囲においては多少の変動が見られる程度である一方、各試料の2次微分スペクトルについては、図16及び図18に示すように、試料C−1及びC−2並びにD−1及びD−2ともに、500nm〜600nmの範囲において大きな変動が複数見られた。
【0143】
また、試料C−1と試料C−2のデータを見比べると、図15に示す吸光度スペクトルについては、約460nm〜700nmの範囲において吸光度の値に開きが見られる一方、図16に示す2次微分スペクトルについては、少なくとも500nm〜600nmの範囲においてピークが現れる波長がほぼ同じとなっており、両者が描く曲線に極めて高い一致性が認められた。このことは、図17及び図18に示す試料D−1と試料D−2のデータを見比べたときにも言えることである。
【0144】
つまり、赤血球がそのままの状態で混入した場合であっても、溶血によってヘモグロビンが混入した場合であっても、供血者の違いに関わらず、2次微分スペクトルにおける所定の波長領域(500nm〜600nm)に現れたピークにおけるピーク強度の絶対値又は換算値が所定の基準値を超えているかどうかを判定すれば、血液成分製剤の良否を比較的簡便に判別できることが確認できた。
【0145】
[試験例4]
試験例4は、ヒト血液をもとにした場合のヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係を確認するための試験例である。試験では、複数のヒト検体血液をもとに、それぞれ所定条件のもとで遠心分離して上清の血漿を採取し、この血漿中のヘモグロビン濃度をロイコクリスタルバイオレット法(LCV法)によって測定した。また、各血漿の吸光度スペクトルを測定し、当該スペクトルを2次微分して得られる吸光度2次微分値を算出した。
【0146】
図19は、試験例4におけるヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係を示す図である。図中に示す直線は、各データから得られる回帰直線である。
【0147】
試験結果によると、図19から分かるように、ヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との間には負の相関が見られた。相関係数Rの二乗値は0.95を示したことから、ヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との間には比較的強い相関があるということが確認できた。
【0148】
なお、図19に示す回帰直線のように、複数のデータに基づいてヘモグロビン濃度と吸光度2次微分値との関係式を予め求めておけば、検査対象物の吸光度を測定することによって得られる吸光度スペクトル及びその2次微分スペクトルからピーク強度の吸光度2次微分値を算出し、さらに当該関係式に代入することにより、ピーク強度の換算値を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の血液成分製剤用検査装置及び血液成分分離装置は、バッグの種類に関わらず、血漿製剤などの血液成分製剤(製剤化前のバッグを含む)の良否を比較的簡便に判別することが可能な検査装置又は分離装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0150】
1 血液成分製剤用検査装置
10,110 装置本体
12 載置部
14 スロット部
16 発光部用孔
18 受光部用孔
20 上蓋
22,122 電源スイッチ
24 報知部
26,126 発光部
28,128 受光部
30,130 演算処理部
32,132 スペクトル測定部
34,134 ピーク強度算出部
36,136 判別部
38,138 光路長調整部
40,140 制御部
42,142 記憶部
44,144 書換部
46,146 電源部
100 血液成分分離装置
111 バッグ装着部
112 第1載置部
113 第2載置部
116 光通過用孔
123 操作パネル
124 第1報知部
125 第2報知部
150 送液機構
151,152,153 第1〜第3送液部
154,155,156 第1〜第3加圧板
160 シール機構
161,162,163 第1〜第3シール部
190,191,192 バッグ
193,194,195 チューブ
196 Y字管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象となる血液成分製剤に向けて可視光を照射する発光部(26)と、
前記発光部(26)から照射され前記血液成分製剤を透過した光又は前記血液成分製剤で反射した光を受光する受光部(28)と、
前記受光部(28)が受光した光のスペクトルを測定し、当該スペクトルに数学的処理を施す演算処理部(30)と、
前記演算処理部(30)による演算結果に基づいて、前記血液成分製剤の良否を判別する判別部(36)とを備え、
前記演算処理部(30)は、
前記受光部(28)が受光した光のスペクトルを測定するスペクトル測定部(32)と、
前記スペクトルを2次微分して所定の可視光波長領域におけるピーク強度を算出するピーク強度算出部(34)とを有し、
前記判別部(36)は、算出された前記ピーク強度の絶対値又は換算値が、所定の基準値を超えているか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、前記血液成分製剤の良否を判別する機能を有することを特徴とする血液成分製剤用検査装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血液成分製剤用検査装置において、
前記所定の基準値に関する基準値情報を記憶する記憶部(42)をさらに備え、
前記判別部(36)は、前記判定を行うにあたって、前記記憶部(42)に記憶された前記基準値情報を参照する機能を有することを特徴とする血液成分製剤用検査装置(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の血液成分製剤用検査装置において、
前記ピーク強度算出部(34)が算出対象とする前記所定の可視光波長領域は、400nm〜600nmの範囲であることを特徴とする血液成分製剤用検査装置(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の血液成分製剤用検査装置において、
前記ピーク強度算出部(34)が算出対象とする前記所定の可視光波長領域は、500nm〜600nmの範囲であることを特徴とする血液成分製剤用検査装置(1)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の血液成分製剤用検査装置において、
前記発光部(26)から照射された可視光が前記受光部(28)で受光されるまでの光路長を調整する光路長調整部(38)をさらに備えることを特徴とする血液成分製剤用検査装置(1)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の血液成分製剤用検査装置(1)において、
前記スペクトル測定部(32)は、
前記スペクトルの測定時間を調整する機能を有することを特徴とする血液成分製剤用検査装置(1)。
【請求項7】
複数の血液成分を含む血液を血液成分ごとに分離してバッグに送液する送液機構(150)と、
血液成分が送液された前記バッグ(191)に向けて可視光を照射する発光部(126)と、
前記発光部(126)から照射され前記バッグ(191)を透過した光又は前記バッグ(191)で反射した光を受光する受光部(128)と、
前記受光部(128)が受光した光のスペクトルを測定し、当該スペクトルに数学的処理を施す演算処理部(130)と、
前記演算処理部(130)による演算結果に基づいて、前記バッグ(191)の良否を判別する判別部(136)と、
少なくとも前記送液機構(150)、前記発光部(126)及び前記演算処理部(130)を制御する制御部(140)とを備え、
前記演算処理部(130)は、
前記受光部(128)が受光した光のスペクトルを測定するスペクトル測定部(132)と、
前記スペクトルを2次微分して所定の可視光波長領域におけるピーク強度を算出するピーク強度算出部(134)とを有し、
前記判別部(136)は、算出された前記ピーク強度の絶対値又は換算値が、所定の基準値を超えているか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、前記バッグ(191)の良否を判別する機能を有することを特徴とする血液成分分離装置(100)。
【請求項8】
請求項7に記載の血液成分分離装置において、
前記バッグに連通するチューブをシールするシール機構(160)をさらに備え、
前記制御部(140)は、前記判別部(136)の前記判定結果に基づいて、前記シール機構(160)のシール動作を制御する機能をさらに有することを特徴とする血液成分分離装置(100)。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の血液成分分離装置において、
前記所定の基準値に関する基準値情報を記憶する記憶部(142)をさらに備え、
前記判別部(136)は、前記判定を行うにあたって、前記記憶部(142)に記憶された前記基準値情報を参照する機能を有することを特徴とする血液成分分離装置(100)。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の血液成分分離装置において、
前記ピーク強度算出部(134)が算出対象とする前記所定の可視光波長領域は、400nm〜600nmの範囲であることを特徴とする血液成分分離装置(100)。
【請求項11】
請求項10に記載の血液成分分離装置において、
前記ピーク強度算出部(134)が算出対象とする前記所定の可視光波長領域は、500nm〜600nmの範囲であることを特徴とする血液成分分離装置(100)。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に記載の血液成分分離装置において、
前記発光部(126)から照射された可視光が前記受光部(128)で受光されるまでの光路長を調整する光路長調整部(138)をさらに備えることを特徴とする血液成分分離装置(100)。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか一項に記載の血液成分分離装置において、
前記スペクトル測定部(132)は、
前記スペクトルの測定時間を調整する機能を有することを特徴とする血液成分分離装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52092(P2013−52092A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191976(P2011−191976)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【出願人】(000231729)日本赤十字社 (7)
【Fターム(参考)】