血液採取装置
【課題】容易に血管の位置を特定することができる血管位置特定装置の提供する。
【解決手段】近赤外光発光ユニット121の発光ユニット光軸J121と照射面P1の法線N1との間の角度α、受光側レンズ123cの光軸J123と照射面P1の法線方向N1との間の角度β、及びフォトダイオードアレイ123の受光面P3と受光ユニット光軸J123との間の角度γを、使用条件、使用部品等により、適宜、選択することによって、より適切に血管位置の特定を行うことが可能となる。これにより、皮膚下の血管について、照射面P1の法線N1の深さを、フォトダイオードアレイ123fにおける照度の変化を用いて特定することができる。よって、簡単に皮膚下の血管の位置を特定することができる。
【解決手段】近赤外光発光ユニット121の発光ユニット光軸J121と照射面P1の法線N1との間の角度α、受光側レンズ123cの光軸J123と照射面P1の法線方向N1との間の角度β、及びフォトダイオードアレイ123の受光面P3と受光ユニット光軸J123との間の角度γを、使用条件、使用部品等により、適宜、選択することによって、より適切に血管位置の特定を行うことが可能となる。これにより、皮膚下の血管について、照射面P1の法線N1の深さを、フォトダイオードアレイ123fにおける照度の変化を用いて特定することができる。よって、簡単に皮膚下の血管の位置を特定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚下の血管から血液を採取する血液採取装置に関し、特に、近赤外線を用いて血管の位置を特定するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の血液位置特定装置の一つである血管位置提示装置について、図11を用いて説明する。血管位置提示装置は、血管の位置や方向を確認することを可能にする装置である。
【0003】
図11の血管位置提示装置は、撮像手段101、画像処理手段102、照明手段103、表示手段104、マーク制御手段105、マーク照射手段106を含んで構成される。
【0004】
照明手段103は、近赤外波長領域の照明光である近赤外照明光127を生体に照射するものであり、例えば近赤外LEDを含んで構成される。
【0005】
撮像手段101は、生体を撮影するもので、例えば可視光波長から近赤外波長において分光感度の高い白黒CCDカメラもしくは白黒CMOSカメラである。生体からの反射光129から得られる撮像情報は、生体映像情報121として画像処理手段102に転送される。撮像手段101は、照明光を照射した時の生体映像情報である近赤外画像情報と、照明光を照射しない時の生体映像情報である無光画像情報を取得して、画像処理手段に転送する。
【0006】
表示手段104は、画像処理手段102からの出力される画像情報124に基づく画像を液晶ディスプレイ等で表示するものである。
【0007】
マーク照射手段106は、生体の表面に、穿刺位置を示す穿刺マークを投影するための穿刺マーク投影光128を照射するものであり、可視光レーザを含んで構成される。マーク照射手段106は、マーク制御手段105からの駆動信号126に基づく照射タイミング及び照射方向で、穿刺マーク投影光128を照射する。
【0008】
マーク制御手段105は、画像処理手段102からの指示信号122に基づいて駆動信号126を生成する。指示信号122には、表示手段104に表示される画像に含まれる穿刺マークの表示位置と外部から入力される穿刺マークの目標位置とのずれ情報が含まれ、マーク制御手段105は、このずれ情報を利用して、穿刺マークの表示位置と穿刺マークの目標位置とを一致させるための駆動信号126を生成する。
【0009】
画像処理手段102は、照明光を照射した時の生体映像情報である近赤外画像情報に基づいて血管像と注射針像を画像強調した加工近赤外画像情報を生成し、照明光を照射しない時の生体映像情報である無光画像情報に基づいて穿刺マークの像を画像強調した加工無光画像情報を生成する。そして、加工近赤外画像情報と加工無光画像情報を合成して表示画像情報を得る。
【0010】
図11に示される各要素は所定の筐体に収納され、血管位置を検出しようとする生体と所定の位置関係に設置されて使用される。
【0011】
図12に、血管位置提示装置の一例の概観図を示す。図12は、血管位置提示装置と生体が非固定で使用される例であり、筐体202は、足場209、210によって支持される。足場209、210は、筐体202と血管位置を検出しようとする腕201とを所定の距離離した状態で安定させ、筐体202と足場209、210で腕201を囲むように設置される。
【0012】
筐体202の上面には、表示手段104を構成する液晶表示部203、液晶表示部203に表示されたカーソル207を移動させるトラックボール204、カーソル207の位置を穿刺マークの目標位置として設定するための入力用ボタン208が設けられる。なお、図2の液晶表示部203には、血管206、カーソル207が表示されている。また、腕201の表面には、スポット状の穿刺マーク205が投影されている。
【0013】
図12の血管位置提示装置を使用する場合、医師や看護師は、トラックボール204を用いて穿刺マークの目標位置を設定するためのカーソル207を、液晶表示部203の画面上で動かし、入力用ボタン208を押すことでカーソル207が指示する位置を穿刺マークの目標位置として確定させる。穿刺マーク205は、マーク照射手段106によって投影されるマークであり、肉眼では赤く見える。穿刺マーク205は、初期状態では腕201表面上の任意の箇所を指し示しているが、カーソル207によって目標位置が確定した時点で、撮像手段101が撮像する映像上で、穿刺マーク205の位置と目標位置(この時点では、カーソルの位置)とが一致するように、マーク照射手段106の赤色可視光レーザが向きを変更する。
【0014】
画像処理手段102は、照明手段103が近赤外光を照射した時に撮像した近赤外画像情報と照明手段103が光を照射しない時に撮像した無光画像情報を、生体映像情報121として撮像手段101から受け取るが、一例としてこの2種類の画像情報は、時分割で交互に入力される。静脈血は近赤外光の吸収率が高いため、近赤外画像情報に基づく画像には、血管部分が黒っぽく映り、注射針は白っぽく映る。また、無光画像情報に基づく画像には、可視光の穿刺マーク投影光128によって腕201上に投影された穿刺マークが映っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−102110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述の血管位置提示装置には、以下に示すような改善すべき点がある。血管位置提示装置では、画像処理手段102が加工近赤外画像情報と加工無光画像情報を合成して表示画像情報を生成する。また、画像処理手段102は、近赤外画像情報に基づいて血管像と注射針像を画像強調した加工近赤外画像情報を生成する。さらに、画像処理手段102は、無光画像情報に基づいて穿刺マークの像を画像強調した加工無光画像情報を生成する。
【0017】
このように、従来の血管位置提示装置では、所定の画像情報を加工することによって、血管位置を提示している。よって、処理能力が高い画像処理手段が必要となる。
【0018】
また、画像情報を扱うために、画像情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示手段104が必要となる。さらに、生体の表面に、穿刺位置を示す穿刺マークを投影するための穿刺マーク投影光128を照射するためのマーク照射手段106が必要となる。
【0019】
このように、従来の血管位置提示装置では、必要とする部品が多いので、装置自体が大きくなり、いつでもどこでも、例えば外出中に使用することが難しい、という改善すべき点がある。
【0020】
また、従来の血管位置提示装置では、必要とする部品が多く、また、高価な部品も必要とするため、個人が所有することは難しい、という改善すべき点がある。
【0021】
そこで、本発明は、容易に血管の位置を特定することができる血管位置特定装置の提供を目的とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0023】
本発明に係る血管位置特定装置は、皮膚の下に存在する血管の位置を特定する血管位置特定装置であって、所定の照射面の法線に対して所定の角度を有する投光軸を有する投光手段であって、前記投光軸と前記法線との交点の方向に向かって近赤外線を投光する投光手段、前記照射面に対して前記投光手段が位置する側と同じ側に位置し、前記投光手段が投光した前記近赤外線の反射光を受光し、分光する分光レンズであって、前記照射面の前記法線に対して所定の角度を有する光軸を有する分光レンズ、前記分光された反射光を受光する受光面を有する受光手段、前記受光面での前記反射光の明るさを用いて、前記血管の位置を算出する血管位置算出手段、を有し、前記投光軸と前記分光レンズの前記光軸との交点は、前記照射面に対して前記投光手段及び前記分光レンズが位置する側と反対側に位置すること、を特徴とする。
【0024】
皮膚に向かって近赤外線を投光すると、皮膚の下に血管が存在する位置では、血管によって吸収される。一方、血管が存在しない位置では、皮膚表面、皮膚内部で乱反射し、一部は皮膚外に向かう反射光となる。したがって、皮膚に向かって投光した近赤外線の反射光を受光し、照射面の法線方向に関して分光することによって、反射光の明るさの変化を分析することによって、血管の存在位置を特定することができる。
【0025】
このように、本発明に係る血管位置特定装置は、近赤外光の反射光の明るさの変化を用いて、血管位置を容易に特定することができる。
【0026】
本発明に係る血管位置特定装置では、前記受光手段は、前記受光面が前記光軸に対して傾斜して配置されていること、を特徴とする。
【0027】
これにより、分光された反射光の受光面での結像位置を、照射面の法線方向の深さに応じて、変化させることができる。したがって、本発明に係る血管位置特定装置は、近赤外光の反射光の明るさの変化を用いて、血管位置を容易に特定することができる。
【0028】
本発明に係る血管位置特定装置は、前記投光手段の前記投光軸と前記分光レンズの前記光軸とが、同一平面内に存在すること、を特徴とする。
【0029】
これにより、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面と平行に存在する血管の位置を精度よく特定することができる。
【0030】
本発明に係る血管位置特定装置では、前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面と、前記分光レンズの前記光軸及び前記照射面の前記法線を含む面とが、所定の角度で配置されていること、を特徴とする。
【0031】
これにより、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面に対して所定角度で存在する血管の位置を精度よく特定することができる。
【0032】
本発明に係る血管位置特定装置では、前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面と、前記分光レンズの前記光軸及び前記照射面の前記法線を含む面とが、90度で配置されていること、を特徴とする。
【0033】
これにより、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面に対して90度で存在する血管の位置を精度よく特定することができる。また、前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面を互いに直交するように配置することによって、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面と平行に存在する血管から、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面に対して90度で存在する血管まで、精度よく位置を特定することができる。
【0034】
本発明に係る血管位置特定装置では、前記分光レンズは、非球面レンズであること、を特徴とする。これにより、反射光を精度よく分光することができる。
【0035】
本発明に係る血液採取装置は、皮膚の下に存在する血管から血液を採取する血液採取装置であって、請求項1〜請求項6に係るいずれかの血管位置特定装置、血液採取に用いる針を有する針射出手段であって、算出した前記血管の位置に前記針を射出する針射出手段、を有する。
【0036】
これにより、使用者は、血液の採取に失敗することがなく、確実かつ容易に血液を採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る血管位置特定装置111を含む血液採取装置100の外観図である。
【図2】本発明に係る血管位置特定装置111を含む血液採取装置100の外観図である。
【図3】血液採取装置100の上面図である。
【図4】図3におけるX−X断面の断面図である。
【図5】図3におけるY−Y断面の断面図である。
【図6】血管位置の特定方法の原理を説明するための図である。
【図7】シミュレーションの条件を示す図である。
【図8】シミュレーションの結果を示す図である。
【図9】シミュレーションの結果を示す図である。
【図10】シミュレーションの結果を示す図である。
【図11】従来の血管位置特定装置の一例を示す図である。
【図12】従来の血管位置特定装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0039】
第1 構成
1.血液採取装置100の構成
本発明に係る血液採取装置100について図1を用いて説明する。図1は斜め上方から見た血液採取装置100の斜視図を示している。血液採取装置100は、血管位置特定装置111及び穿刺装置113を有している。穿刺装置113は、体外から血管に注射針を刺して、血液を採取する装置である。血管位置特定装置111は、血液を採取する血管の位置を特定する装置である。
【0040】
穿刺装置113は、血管位置特定装置111に取り付け、取り外し可能である。穿刺装置113は、内部に穿刺針113b(図2参照)を有している。穿刺装置113の側面には、穿刺ボタンB113配置されている。穿刺装置113は、穿刺ボタンB113が押されると、内部に配置する穿刺針113bを外部に突出させる。
【0041】
斜め下方から見た血液採取装置100の斜視図を図2に示す。血液採取装置100では、血管位置特定装置111は、底部に穿刺用開孔111a及び密着面111sを有している。密着面111sは、穿刺用開孔111aの周辺に配置されている。穿刺装置113の穿刺針113bは、穿刺用開孔111aから外部に突出する。
【0042】
血液採取装置100の使用者は、穿刺装置113を血管位置特定装置111に取り付ける。使用者は、血液を採取しようとする皮膚を密着面111sに密着させるように穿刺装置113を配置する。このとき、血管位置特定装置111の穿刺用開孔111aの位置にある皮膚によって、照射面が形成される。
【0043】
血管位置特定装置111を配置した後、穿刺ボタンB113を押す。これにより、穿刺針113bが穿刺装置113の先端から飛び出し、体内に挿入される。
【0044】
2.血管位置特定装置111の構成
血管位置特定装置111の構成について図3、図4、図5を用いて説明する。血液採取装置100の上面図を図3に示す。また、図3に示す血液採取装置100のX−X断面を図4に、Y−Y断面を図5に、それぞれ示す。なお、図4及び図5では、血液採取装置100を人の所定の位置に配置した状態を示している。また、図4は、血液採取装置100の一部断面図を示している。
【0045】
図4に示すように、血管位置特定装置111は、近赤外光発光ユニット121、反射光受光ユニット123、及び筐体125を有している。近赤外光発光ユニット121及び反射光受光ユニット123は、筐体125の所定の位置に取り付けられている。
【0046】
近赤外光発光ユニット121は、近赤外光発光ダイオード121d、発光側レンズ121c、及び筐体121kを有している。近赤外光発光ユニット121は、光軸J121(以下、発光ユニット光軸J121とする)を有している。近赤外光発光ダイオード121dは、中心軸が発光ユニット光軸J121と一致するように筐体121kの所定の位置に固定されている。また、発光側レンズ121cは、光軸が発光ユニット光軸J121と一致するように筐体121kの所定の位置に固定されている。
【0047】
近赤外光発光ユニット121の発光ユニット光軸J121は、照射面P1の法線N1に対して角度αを有している。近赤外光発光ユニット121は、発光ユニット光軸J121と照射面P1の法線N1との交点Q1の方向(投光方向)に向かって近赤外線を投光する。
【0048】
近赤外光発光ダイオード121dは、可視光と赤外光の間にある波長700nm〜3000nmの近赤外光を発光する。近赤外光は、血液のヘモグロビンによって吸収されることが知られている。近赤外光発光ダイオード121dは、接続線121lを介して、所定の制御部、電源部と接続される。
【0049】
反射光受光ユニット123は、受光側レンズ123c、フォトダイオードアレイ123f、及び筐体123kを有している。受光側レンズ123cは、非球面レンズである。受光側レンズ123cは、近赤外光発光ユニット121が投光した近赤外線の反射光を分光する。受光側レンズ123cの光軸J123は、照射面P1の法線方向N1に対して角度βを有している。受光側レンズ123cは、筐体123kの所定の位置に固定されている。
【0050】
フォトダイオードアレイ123fは、複数のフォトダイオードを所定の形状に配列したものである。フォトダイオードアレイ123fは、表面を受光面P3として、受光側レンズ123cによって分光された反射光を受光する。フォトダイオードアレイ123の受光面P3は、受光ユニット光軸J123に対して角度γを有している。このように、受光面P3を受光ユニット光軸J123に対して傾斜させて、フォトダイオードアレイ123を配置することによって、入射面P1の法線方向N1の物質の変化を、受光面P3における反射光の照度の変化として取得することができる。
【0051】
フォトダイオードアレイ123fは、接続線123lを介して、解析回路(図示せず)等と接続されている。
【0052】
発光ユニット光軸J121と受光側レンズ123cの光軸とは、同一平面内に存在している。発光ユニット光軸J121と受光側レンズ123cの光軸J123とは、照射面P1から体内方向へ距離dの位置で交差するように配置されている。血管位置特定装置111では、発光ユニット光軸J121と光軸J123Cとの交点における血管の有無を検出する。
【0053】
近赤外光発光ユニット121の発光ユニット光軸J121と照射面P1の法線N1との間の角度α、受光側レンズ123cの光軸J123と照射面P1の法線方向N1との間の角度β、及びフォトダイオードアレイ123の受光面P3と受光ユニット光軸J123との間の角度γを、使用条件、使用部品等により、適宜、選択することによって、より適切に血管位置の特定を行うことが可能となる。
【0054】
解析回路は、フォトダイオードアレイ123fに接続されている。解析回路は、フォトダイオードアレイ123fの受光結果から、照射面P1の法線N1の深さ方向の照度を算出する。
【0055】
図5に示すように、血管位置特定装置111は、さらにもう一つの近赤外光発光ユニット127を有している。近赤外光発光ユニット127の構成は、近赤外光発光ユニット121と同様である。ただし、近赤外光発光ユニット127の発光ユニット光軸J127と照射面P1の法線N1とを含む面と、受光側レンズ123cの光軸J123と照射面P1の法線N1とを含む面とは、90度で配置されている。
【0056】
このように、反射光受光ユニット123に対して、異なる位置に複数の近赤外光発光ユニットを配置することによって、血管の配置状況に関わらず、血管の位置を特定することが可能となる。
【0057】
筐体125は、内部に近赤外光発光ユニット121、127及び反射光受光ユニット123を有している。筐体125は、底面に、皮膚の表面と接触する密着面111sを有している。また、筐体125は、密着面111sに、穿刺用開孔111aを有している。穿刺用開孔111aの開口面は、照射面P1を形成する。穿刺用開孔111aは、赤外光発光ユニット121、127が投光する近赤外線を外部に通過させ、また、血管位置の特定に必要な反射光のみを内部に通過させる一方、外乱光等、不必要な反射光の通過を防止する。
【0058】
なお、血管位置特定装置111は、筐体125に設けられている測定開始ボタン(図示せず)が操作されると、血管位置の特定を開始する。
【0059】
第2 血管位置の特定原理とシミュレーション結果
血管位置特定装置111における血管位置の特定方法の原理について図6を用いて説明する。近赤外光発光ダイオード121dから投光された近赤外線光R1は、発光側集光レンズ121cを介して皮膚に入射する。皮膚に入射した近赤外線光R1は、一部は皮膚の表面での反射光R3となる。また、他の一部は、皮膚の内部まで入射する。皮膚の内部に入射した近赤外線光は、皮膚内部で乱反射を繰り返し、一部は皮膚内部からの反射光R5となり、皮膚の表面から外部に出ていく。
【0060】
また、皮膚内部に入射した近赤外線光のうち血管に到達した近赤外線光R7は、血管内のヘモグロビンに吸収される。
【0061】
このように、近赤外光発光ユニット121dが投光した近赤外線光R1の反射光には、血液に吸収された近赤外線光R7は含まれていない。よって、近赤外線光R1の反射光を分析することによって、血液の存在位置、つまり血管の位置を特定することが可能となる。
【0062】
血管位置特定装置111によって血管の位置を特定した実験結果を図7〜図10に示す。図7〜図10は、近赤外光発光ユニット121dが投光した近赤外線光R1がどのような経路を辿るのかを、コンピュータによりシミュレーションした結果を示している。
【0063】
図7に、シミュレーションの際に構築したモデルの条件を示す。図7に示すように、本シミュレーションにおいては、血管をミー散乱体として取り扱っている。したがって、血管に到達した近赤外線光は血管中の血液に吸収されるのではなく、血管で反射する。したがって、血管位置特定装置111によって実際に反射光を分析する場合では、血管が存在する深さで反射光の強度が小さくなるが、シミュレーションでは、血管が存在する深さで反射光の強度が大きくなる。
【0064】
図8は、皮膚下、上下平行に2本の血管が、近赤外線光の入射面と直交して存在している場合のシミュレーションの結果を示している。図8左に示すように、血管を、それぞれ、皮膚下1mm、5mmの深さに存在させている。
【0065】
このとき、図8右に示す検出面上の照度分布が示すように、深さ1mm付近、及び、深さ5mm付近で照度が大きくなっている。つまり、血管位置特定装置111は、近赤外線光の入射面と直交する血管が、皮膚下1mm、5mmの深さに存在することを特定できている。
【0066】
図9は、皮膚下、1本の血管が、近赤外線光の入射面と直交して存在している場合のシミュレーションの結果を示している。図9左に示すように、血管を皮膚下3mmの深さに存在させている。
【0067】
このとき、図9右に示す検出面上の照度分布が示すように、深さ3mm付近で照度が大きくなっている。つまり、血管位置特定装置111は、近赤外線光の入射面と直交する血管が、皮膚下3mmの深さに存在することを特定できている。
【0068】
図10は、皮膚下、1本の血管が、近赤外線光の入射面と平行して存在している場合のシミュレーションの結果を示している。図10左に示すように、血管を皮膚下3mmの深さに存在させている。
【0069】
このとき、図10右に示す検出面上の照度分布が示すように、深さ3mmより深い位置で照度が大きくなっている。つまり、血管位置特定装置111は、皮膚下深さ3mmに存在する血管を、皮膚下3mmより深い位置に存在すると特定している。
【0070】
図9及び図10のシミュレーションの結果から、血管位置特定装置111では、血管が近赤外線光の入射面と平行して存在している場合よりも、血管が近赤外線光の入射面と直交して存在している場合の方が、より適切に深さを特定できる。したがって、血管位置特定装置111では、近赤外線光の入射面が互いに直交するように、2つの近赤外光発光ユニット121を配置している。これにより、血管の位置をより適切に特定することが可能となる。
【0071】
[その他の実施例]
(1) 血液採取装置100の構成 : 前述の実施例1においては、血液採取装置100は、互いに分離可能な血管位置特定装置111及び穿刺装置113により構成されるとしたが、分離不可能な血管位置特定装置111及び穿刺装置113により一体として構成されるものであってもよい。
【0072】
(2) 近赤外光発光ユニットの配置 : 前述の実施例1においては、2つの近赤外光発光ユニット121、127を、反射光受光ユニット123に対して直交する位置に配置するとしたが、異なる位置であれば例示のものに限定されない。
【0073】
また、血液採取装置100に、一つの近赤外光発光ユニット121のみを配置するようにしてもよい。さらに、反射光受光ユニット123に対して互いに異なる位置に、3つ以上の近赤外光発光ユニットを配置するようにしてもよい。
【0074】
(3) 受光側レンズ123c : 前述の実施例1においては、受光側レンズ123cは非球面レンズとしたが、反射光を分光できるレンズであれば、例示のものに限定されない。例えば、球面レンズであってもよい。
【0075】
(4) フォトダイオードアレイ123f : 前述の実施例1においては、反射光の明るさを取得するものとしてフォトダイオードアレイ123fを示したが、反射光の明るさを取得できるものであれば、例示のものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る血管位置特定装置は、例えば、血液検査の際に必要となる血液を採取する血液採取装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
100・・・・・血液採取装置
111・・・・・血管位置特定装置
121・・・・近赤外光発光ユニット
121d・・近赤外線発光ダイオード
121c・・発光側レンズ
123・・・・反射光受光ユニット
123c・・受光側レンズ
123f・・フォトダイオードアレイ
113・・・・・穿刺装置
113b・・・穿刺針
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚下の血管から血液を採取する血液採取装置に関し、特に、近赤外線を用いて血管の位置を特定するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の血液位置特定装置の一つである血管位置提示装置について、図11を用いて説明する。血管位置提示装置は、血管の位置や方向を確認することを可能にする装置である。
【0003】
図11の血管位置提示装置は、撮像手段101、画像処理手段102、照明手段103、表示手段104、マーク制御手段105、マーク照射手段106を含んで構成される。
【0004】
照明手段103は、近赤外波長領域の照明光である近赤外照明光127を生体に照射するものであり、例えば近赤外LEDを含んで構成される。
【0005】
撮像手段101は、生体を撮影するもので、例えば可視光波長から近赤外波長において分光感度の高い白黒CCDカメラもしくは白黒CMOSカメラである。生体からの反射光129から得られる撮像情報は、生体映像情報121として画像処理手段102に転送される。撮像手段101は、照明光を照射した時の生体映像情報である近赤外画像情報と、照明光を照射しない時の生体映像情報である無光画像情報を取得して、画像処理手段に転送する。
【0006】
表示手段104は、画像処理手段102からの出力される画像情報124に基づく画像を液晶ディスプレイ等で表示するものである。
【0007】
マーク照射手段106は、生体の表面に、穿刺位置を示す穿刺マークを投影するための穿刺マーク投影光128を照射するものであり、可視光レーザを含んで構成される。マーク照射手段106は、マーク制御手段105からの駆動信号126に基づく照射タイミング及び照射方向で、穿刺マーク投影光128を照射する。
【0008】
マーク制御手段105は、画像処理手段102からの指示信号122に基づいて駆動信号126を生成する。指示信号122には、表示手段104に表示される画像に含まれる穿刺マークの表示位置と外部から入力される穿刺マークの目標位置とのずれ情報が含まれ、マーク制御手段105は、このずれ情報を利用して、穿刺マークの表示位置と穿刺マークの目標位置とを一致させるための駆動信号126を生成する。
【0009】
画像処理手段102は、照明光を照射した時の生体映像情報である近赤外画像情報に基づいて血管像と注射針像を画像強調した加工近赤外画像情報を生成し、照明光を照射しない時の生体映像情報である無光画像情報に基づいて穿刺マークの像を画像強調した加工無光画像情報を生成する。そして、加工近赤外画像情報と加工無光画像情報を合成して表示画像情報を得る。
【0010】
図11に示される各要素は所定の筐体に収納され、血管位置を検出しようとする生体と所定の位置関係に設置されて使用される。
【0011】
図12に、血管位置提示装置の一例の概観図を示す。図12は、血管位置提示装置と生体が非固定で使用される例であり、筐体202は、足場209、210によって支持される。足場209、210は、筐体202と血管位置を検出しようとする腕201とを所定の距離離した状態で安定させ、筐体202と足場209、210で腕201を囲むように設置される。
【0012】
筐体202の上面には、表示手段104を構成する液晶表示部203、液晶表示部203に表示されたカーソル207を移動させるトラックボール204、カーソル207の位置を穿刺マークの目標位置として設定するための入力用ボタン208が設けられる。なお、図2の液晶表示部203には、血管206、カーソル207が表示されている。また、腕201の表面には、スポット状の穿刺マーク205が投影されている。
【0013】
図12の血管位置提示装置を使用する場合、医師や看護師は、トラックボール204を用いて穿刺マークの目標位置を設定するためのカーソル207を、液晶表示部203の画面上で動かし、入力用ボタン208を押すことでカーソル207が指示する位置を穿刺マークの目標位置として確定させる。穿刺マーク205は、マーク照射手段106によって投影されるマークであり、肉眼では赤く見える。穿刺マーク205は、初期状態では腕201表面上の任意の箇所を指し示しているが、カーソル207によって目標位置が確定した時点で、撮像手段101が撮像する映像上で、穿刺マーク205の位置と目標位置(この時点では、カーソルの位置)とが一致するように、マーク照射手段106の赤色可視光レーザが向きを変更する。
【0014】
画像処理手段102は、照明手段103が近赤外光を照射した時に撮像した近赤外画像情報と照明手段103が光を照射しない時に撮像した無光画像情報を、生体映像情報121として撮像手段101から受け取るが、一例としてこの2種類の画像情報は、時分割で交互に入力される。静脈血は近赤外光の吸収率が高いため、近赤外画像情報に基づく画像には、血管部分が黒っぽく映り、注射針は白っぽく映る。また、無光画像情報に基づく画像には、可視光の穿刺マーク投影光128によって腕201上に投影された穿刺マークが映っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−102110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述の血管位置提示装置には、以下に示すような改善すべき点がある。血管位置提示装置では、画像処理手段102が加工近赤外画像情報と加工無光画像情報を合成して表示画像情報を生成する。また、画像処理手段102は、近赤外画像情報に基づいて血管像と注射針像を画像強調した加工近赤外画像情報を生成する。さらに、画像処理手段102は、無光画像情報に基づいて穿刺マークの像を画像強調した加工無光画像情報を生成する。
【0017】
このように、従来の血管位置提示装置では、所定の画像情報を加工することによって、血管位置を提示している。よって、処理能力が高い画像処理手段が必要となる。
【0018】
また、画像情報を扱うために、画像情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示手段104が必要となる。さらに、生体の表面に、穿刺位置を示す穿刺マークを投影するための穿刺マーク投影光128を照射するためのマーク照射手段106が必要となる。
【0019】
このように、従来の血管位置提示装置では、必要とする部品が多いので、装置自体が大きくなり、いつでもどこでも、例えば外出中に使用することが難しい、という改善すべき点がある。
【0020】
また、従来の血管位置提示装置では、必要とする部品が多く、また、高価な部品も必要とするため、個人が所有することは難しい、という改善すべき点がある。
【0021】
そこで、本発明は、容易に血管の位置を特定することができる血管位置特定装置の提供を目的とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0023】
本発明に係る血管位置特定装置は、皮膚の下に存在する血管の位置を特定する血管位置特定装置であって、所定の照射面の法線に対して所定の角度を有する投光軸を有する投光手段であって、前記投光軸と前記法線との交点の方向に向かって近赤外線を投光する投光手段、前記照射面に対して前記投光手段が位置する側と同じ側に位置し、前記投光手段が投光した前記近赤外線の反射光を受光し、分光する分光レンズであって、前記照射面の前記法線に対して所定の角度を有する光軸を有する分光レンズ、前記分光された反射光を受光する受光面を有する受光手段、前記受光面での前記反射光の明るさを用いて、前記血管の位置を算出する血管位置算出手段、を有し、前記投光軸と前記分光レンズの前記光軸との交点は、前記照射面に対して前記投光手段及び前記分光レンズが位置する側と反対側に位置すること、を特徴とする。
【0024】
皮膚に向かって近赤外線を投光すると、皮膚の下に血管が存在する位置では、血管によって吸収される。一方、血管が存在しない位置では、皮膚表面、皮膚内部で乱反射し、一部は皮膚外に向かう反射光となる。したがって、皮膚に向かって投光した近赤外線の反射光を受光し、照射面の法線方向に関して分光することによって、反射光の明るさの変化を分析することによって、血管の存在位置を特定することができる。
【0025】
このように、本発明に係る血管位置特定装置は、近赤外光の反射光の明るさの変化を用いて、血管位置を容易に特定することができる。
【0026】
本発明に係る血管位置特定装置では、前記受光手段は、前記受光面が前記光軸に対して傾斜して配置されていること、を特徴とする。
【0027】
これにより、分光された反射光の受光面での結像位置を、照射面の法線方向の深さに応じて、変化させることができる。したがって、本発明に係る血管位置特定装置は、近赤外光の反射光の明るさの変化を用いて、血管位置を容易に特定することができる。
【0028】
本発明に係る血管位置特定装置は、前記投光手段の前記投光軸と前記分光レンズの前記光軸とが、同一平面内に存在すること、を特徴とする。
【0029】
これにより、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面と平行に存在する血管の位置を精度よく特定することができる。
【0030】
本発明に係る血管位置特定装置では、前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面と、前記分光レンズの前記光軸及び前記照射面の前記法線を含む面とが、所定の角度で配置されていること、を特徴とする。
【0031】
これにより、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面に対して所定角度で存在する血管の位置を精度よく特定することができる。
【0032】
本発明に係る血管位置特定装置では、前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面と、前記分光レンズの前記光軸及び前記照射面の前記法線を含む面とが、90度で配置されていること、を特徴とする。
【0033】
これにより、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面に対して90度で存在する血管の位置を精度よく特定することができる。また、前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面を互いに直交するように配置することによって、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面と平行に存在する血管から、前記投光手段の前記投光軸及び前記分光レンズの前記光軸が存在する平面に対して90度で存在する血管まで、精度よく位置を特定することができる。
【0034】
本発明に係る血管位置特定装置では、前記分光レンズは、非球面レンズであること、を特徴とする。これにより、反射光を精度よく分光することができる。
【0035】
本発明に係る血液採取装置は、皮膚の下に存在する血管から血液を採取する血液採取装置であって、請求項1〜請求項6に係るいずれかの血管位置特定装置、血液採取に用いる針を有する針射出手段であって、算出した前記血管の位置に前記針を射出する針射出手段、を有する。
【0036】
これにより、使用者は、血液の採取に失敗することがなく、確実かつ容易に血液を採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る血管位置特定装置111を含む血液採取装置100の外観図である。
【図2】本発明に係る血管位置特定装置111を含む血液採取装置100の外観図である。
【図3】血液採取装置100の上面図である。
【図4】図3におけるX−X断面の断面図である。
【図5】図3におけるY−Y断面の断面図である。
【図6】血管位置の特定方法の原理を説明するための図である。
【図7】シミュレーションの条件を示す図である。
【図8】シミュレーションの結果を示す図である。
【図9】シミュレーションの結果を示す図である。
【図10】シミュレーションの結果を示す図である。
【図11】従来の血管位置特定装置の一例を示す図である。
【図12】従来の血管位置特定装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0039】
第1 構成
1.血液採取装置100の構成
本発明に係る血液採取装置100について図1を用いて説明する。図1は斜め上方から見た血液採取装置100の斜視図を示している。血液採取装置100は、血管位置特定装置111及び穿刺装置113を有している。穿刺装置113は、体外から血管に注射針を刺して、血液を採取する装置である。血管位置特定装置111は、血液を採取する血管の位置を特定する装置である。
【0040】
穿刺装置113は、血管位置特定装置111に取り付け、取り外し可能である。穿刺装置113は、内部に穿刺針113b(図2参照)を有している。穿刺装置113の側面には、穿刺ボタンB113配置されている。穿刺装置113は、穿刺ボタンB113が押されると、内部に配置する穿刺針113bを外部に突出させる。
【0041】
斜め下方から見た血液採取装置100の斜視図を図2に示す。血液採取装置100では、血管位置特定装置111は、底部に穿刺用開孔111a及び密着面111sを有している。密着面111sは、穿刺用開孔111aの周辺に配置されている。穿刺装置113の穿刺針113bは、穿刺用開孔111aから外部に突出する。
【0042】
血液採取装置100の使用者は、穿刺装置113を血管位置特定装置111に取り付ける。使用者は、血液を採取しようとする皮膚を密着面111sに密着させるように穿刺装置113を配置する。このとき、血管位置特定装置111の穿刺用開孔111aの位置にある皮膚によって、照射面が形成される。
【0043】
血管位置特定装置111を配置した後、穿刺ボタンB113を押す。これにより、穿刺針113bが穿刺装置113の先端から飛び出し、体内に挿入される。
【0044】
2.血管位置特定装置111の構成
血管位置特定装置111の構成について図3、図4、図5を用いて説明する。血液採取装置100の上面図を図3に示す。また、図3に示す血液採取装置100のX−X断面を図4に、Y−Y断面を図5に、それぞれ示す。なお、図4及び図5では、血液採取装置100を人の所定の位置に配置した状態を示している。また、図4は、血液採取装置100の一部断面図を示している。
【0045】
図4に示すように、血管位置特定装置111は、近赤外光発光ユニット121、反射光受光ユニット123、及び筐体125を有している。近赤外光発光ユニット121及び反射光受光ユニット123は、筐体125の所定の位置に取り付けられている。
【0046】
近赤外光発光ユニット121は、近赤外光発光ダイオード121d、発光側レンズ121c、及び筐体121kを有している。近赤外光発光ユニット121は、光軸J121(以下、発光ユニット光軸J121とする)を有している。近赤外光発光ダイオード121dは、中心軸が発光ユニット光軸J121と一致するように筐体121kの所定の位置に固定されている。また、発光側レンズ121cは、光軸が発光ユニット光軸J121と一致するように筐体121kの所定の位置に固定されている。
【0047】
近赤外光発光ユニット121の発光ユニット光軸J121は、照射面P1の法線N1に対して角度αを有している。近赤外光発光ユニット121は、発光ユニット光軸J121と照射面P1の法線N1との交点Q1の方向(投光方向)に向かって近赤外線を投光する。
【0048】
近赤外光発光ダイオード121dは、可視光と赤外光の間にある波長700nm〜3000nmの近赤外光を発光する。近赤外光は、血液のヘモグロビンによって吸収されることが知られている。近赤外光発光ダイオード121dは、接続線121lを介して、所定の制御部、電源部と接続される。
【0049】
反射光受光ユニット123は、受光側レンズ123c、フォトダイオードアレイ123f、及び筐体123kを有している。受光側レンズ123cは、非球面レンズである。受光側レンズ123cは、近赤外光発光ユニット121が投光した近赤外線の反射光を分光する。受光側レンズ123cの光軸J123は、照射面P1の法線方向N1に対して角度βを有している。受光側レンズ123cは、筐体123kの所定の位置に固定されている。
【0050】
フォトダイオードアレイ123fは、複数のフォトダイオードを所定の形状に配列したものである。フォトダイオードアレイ123fは、表面を受光面P3として、受光側レンズ123cによって分光された反射光を受光する。フォトダイオードアレイ123の受光面P3は、受光ユニット光軸J123に対して角度γを有している。このように、受光面P3を受光ユニット光軸J123に対して傾斜させて、フォトダイオードアレイ123を配置することによって、入射面P1の法線方向N1の物質の変化を、受光面P3における反射光の照度の変化として取得することができる。
【0051】
フォトダイオードアレイ123fは、接続線123lを介して、解析回路(図示せず)等と接続されている。
【0052】
発光ユニット光軸J121と受光側レンズ123cの光軸とは、同一平面内に存在している。発光ユニット光軸J121と受光側レンズ123cの光軸J123とは、照射面P1から体内方向へ距離dの位置で交差するように配置されている。血管位置特定装置111では、発光ユニット光軸J121と光軸J123Cとの交点における血管の有無を検出する。
【0053】
近赤外光発光ユニット121の発光ユニット光軸J121と照射面P1の法線N1との間の角度α、受光側レンズ123cの光軸J123と照射面P1の法線方向N1との間の角度β、及びフォトダイオードアレイ123の受光面P3と受光ユニット光軸J123との間の角度γを、使用条件、使用部品等により、適宜、選択することによって、より適切に血管位置の特定を行うことが可能となる。
【0054】
解析回路は、フォトダイオードアレイ123fに接続されている。解析回路は、フォトダイオードアレイ123fの受光結果から、照射面P1の法線N1の深さ方向の照度を算出する。
【0055】
図5に示すように、血管位置特定装置111は、さらにもう一つの近赤外光発光ユニット127を有している。近赤外光発光ユニット127の構成は、近赤外光発光ユニット121と同様である。ただし、近赤外光発光ユニット127の発光ユニット光軸J127と照射面P1の法線N1とを含む面と、受光側レンズ123cの光軸J123と照射面P1の法線N1とを含む面とは、90度で配置されている。
【0056】
このように、反射光受光ユニット123に対して、異なる位置に複数の近赤外光発光ユニットを配置することによって、血管の配置状況に関わらず、血管の位置を特定することが可能となる。
【0057】
筐体125は、内部に近赤外光発光ユニット121、127及び反射光受光ユニット123を有している。筐体125は、底面に、皮膚の表面と接触する密着面111sを有している。また、筐体125は、密着面111sに、穿刺用開孔111aを有している。穿刺用開孔111aの開口面は、照射面P1を形成する。穿刺用開孔111aは、赤外光発光ユニット121、127が投光する近赤外線を外部に通過させ、また、血管位置の特定に必要な反射光のみを内部に通過させる一方、外乱光等、不必要な反射光の通過を防止する。
【0058】
なお、血管位置特定装置111は、筐体125に設けられている測定開始ボタン(図示せず)が操作されると、血管位置の特定を開始する。
【0059】
第2 血管位置の特定原理とシミュレーション結果
血管位置特定装置111における血管位置の特定方法の原理について図6を用いて説明する。近赤外光発光ダイオード121dから投光された近赤外線光R1は、発光側集光レンズ121cを介して皮膚に入射する。皮膚に入射した近赤外線光R1は、一部は皮膚の表面での反射光R3となる。また、他の一部は、皮膚の内部まで入射する。皮膚の内部に入射した近赤外線光は、皮膚内部で乱反射を繰り返し、一部は皮膚内部からの反射光R5となり、皮膚の表面から外部に出ていく。
【0060】
また、皮膚内部に入射した近赤外線光のうち血管に到達した近赤外線光R7は、血管内のヘモグロビンに吸収される。
【0061】
このように、近赤外光発光ユニット121dが投光した近赤外線光R1の反射光には、血液に吸収された近赤外線光R7は含まれていない。よって、近赤外線光R1の反射光を分析することによって、血液の存在位置、つまり血管の位置を特定することが可能となる。
【0062】
血管位置特定装置111によって血管の位置を特定した実験結果を図7〜図10に示す。図7〜図10は、近赤外光発光ユニット121dが投光した近赤外線光R1がどのような経路を辿るのかを、コンピュータによりシミュレーションした結果を示している。
【0063】
図7に、シミュレーションの際に構築したモデルの条件を示す。図7に示すように、本シミュレーションにおいては、血管をミー散乱体として取り扱っている。したがって、血管に到達した近赤外線光は血管中の血液に吸収されるのではなく、血管で反射する。したがって、血管位置特定装置111によって実際に反射光を分析する場合では、血管が存在する深さで反射光の強度が小さくなるが、シミュレーションでは、血管が存在する深さで反射光の強度が大きくなる。
【0064】
図8は、皮膚下、上下平行に2本の血管が、近赤外線光の入射面と直交して存在している場合のシミュレーションの結果を示している。図8左に示すように、血管を、それぞれ、皮膚下1mm、5mmの深さに存在させている。
【0065】
このとき、図8右に示す検出面上の照度分布が示すように、深さ1mm付近、及び、深さ5mm付近で照度が大きくなっている。つまり、血管位置特定装置111は、近赤外線光の入射面と直交する血管が、皮膚下1mm、5mmの深さに存在することを特定できている。
【0066】
図9は、皮膚下、1本の血管が、近赤外線光の入射面と直交して存在している場合のシミュレーションの結果を示している。図9左に示すように、血管を皮膚下3mmの深さに存在させている。
【0067】
このとき、図9右に示す検出面上の照度分布が示すように、深さ3mm付近で照度が大きくなっている。つまり、血管位置特定装置111は、近赤外線光の入射面と直交する血管が、皮膚下3mmの深さに存在することを特定できている。
【0068】
図10は、皮膚下、1本の血管が、近赤外線光の入射面と平行して存在している場合のシミュレーションの結果を示している。図10左に示すように、血管を皮膚下3mmの深さに存在させている。
【0069】
このとき、図10右に示す検出面上の照度分布が示すように、深さ3mmより深い位置で照度が大きくなっている。つまり、血管位置特定装置111は、皮膚下深さ3mmに存在する血管を、皮膚下3mmより深い位置に存在すると特定している。
【0070】
図9及び図10のシミュレーションの結果から、血管位置特定装置111では、血管が近赤外線光の入射面と平行して存在している場合よりも、血管が近赤外線光の入射面と直交して存在している場合の方が、より適切に深さを特定できる。したがって、血管位置特定装置111では、近赤外線光の入射面が互いに直交するように、2つの近赤外光発光ユニット121を配置している。これにより、血管の位置をより適切に特定することが可能となる。
【0071】
[その他の実施例]
(1) 血液採取装置100の構成 : 前述の実施例1においては、血液採取装置100は、互いに分離可能な血管位置特定装置111及び穿刺装置113により構成されるとしたが、分離不可能な血管位置特定装置111及び穿刺装置113により一体として構成されるものであってもよい。
【0072】
(2) 近赤外光発光ユニットの配置 : 前述の実施例1においては、2つの近赤外光発光ユニット121、127を、反射光受光ユニット123に対して直交する位置に配置するとしたが、異なる位置であれば例示のものに限定されない。
【0073】
また、血液採取装置100に、一つの近赤外光発光ユニット121のみを配置するようにしてもよい。さらに、反射光受光ユニット123に対して互いに異なる位置に、3つ以上の近赤外光発光ユニットを配置するようにしてもよい。
【0074】
(3) 受光側レンズ123c : 前述の実施例1においては、受光側レンズ123cは非球面レンズとしたが、反射光を分光できるレンズであれば、例示のものに限定されない。例えば、球面レンズであってもよい。
【0075】
(4) フォトダイオードアレイ123f : 前述の実施例1においては、反射光の明るさを取得するものとしてフォトダイオードアレイ123fを示したが、反射光の明るさを取得できるものであれば、例示のものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る血管位置特定装置は、例えば、血液検査の際に必要となる血液を採取する血液採取装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
100・・・・・血液採取装置
111・・・・・血管位置特定装置
121・・・・近赤外光発光ユニット
121d・・近赤外線発光ダイオード
121c・・発光側レンズ
123・・・・反射光受光ユニット
123c・・受光側レンズ
123f・・フォトダイオードアレイ
113・・・・・穿刺装置
113b・・・穿刺針
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の下に存在する血管の位置を特定する血管位置特定装置であって、
所定の照射面の法線に対して所定の角度を有する投光軸を有する投光手段であって、前記投光軸と前記法線との交点の方向に向かって近赤外線を投光する投光手段、
前記照射面に対して前記投光手段が位置する側と同じ側に位置し、前記投光手段が投光した前記近赤外線の反射光を受光し、分光する分光レンズであって、前記照射面の前記法線に対して所定の角度を有する光軸を有する分光レンズ、
前記分光された反射光を受光する受光面を有する受光手段、
前記受光面での前記反射光の明るさを用いて、前記血管の位置を算出する血管位置算出手段、
を有し、
前記投光軸と前記分光レンズの前記光軸との交点は、前記照射面に対して前記投光手段及び前記分光レンズが位置する側と反対側に位置すること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項2】
請求項1に係る血管位置特定装置において、
前記受光手段は、
前記受光面が前記光軸に対して傾斜して配置されていること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求2に係る血管位置特定装置において、
前記投光手段の前記投光軸と前記分光レンズの前記光軸とが、同一平面内に存在すること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に係る血管位置特定装置において、
前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面と、前記分光レンズの前記光軸及び前記照射面の前記法線を含む面とが、所定の角度で配置されていること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項5】
請求項4に係る血管位置特定装置において、
前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面と、前記分光レンズの前記光軸及び前記照射面の前記法線を含む面とが、90度で配置されていること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項6に係る血管位置特定装置のいずれかにおいて、
前記分光レンズは、
非球面レンズであること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項7】
皮膚の下に存在する血管から血液を採取する血液採取装置であって、
請求項1〜請求項6に係るいずれかの血管位置特定装置、
血液採取に用いる針を有する針射出手段であって、算出した前記血管の位置に前記針を射出する針射出手段、
を有する血液採取装置。
【請求項8】
皮膚の下に存在する血管から血液を採取する血液採取方法であって、
所定の照射面の法線方向に対して所定の角度を有する方向を投光方向として近赤外線を投光し、
前記照射面に対して前記投光手段が位置する側と同じ側に位置し、前記照射面の前記法線方向に対して所定の角度を有する方向を光軸方向とする分光レンズを用いて、前記投光手段が投光した前記近赤外線の反射光を分光し、
前記分光された反射光を受光面で受光し、
前記受光面での前記反射光の明るさを用いて、前記血管の位置を算出し、
算出した前記血管の位置に、血液採取に用いる針を射出すること、
を特徴とする血液採取方法。
【請求項1】
皮膚の下に存在する血管の位置を特定する血管位置特定装置であって、
所定の照射面の法線に対して所定の角度を有する投光軸を有する投光手段であって、前記投光軸と前記法線との交点の方向に向かって近赤外線を投光する投光手段、
前記照射面に対して前記投光手段が位置する側と同じ側に位置し、前記投光手段が投光した前記近赤外線の反射光を受光し、分光する分光レンズであって、前記照射面の前記法線に対して所定の角度を有する光軸を有する分光レンズ、
前記分光された反射光を受光する受光面を有する受光手段、
前記受光面での前記反射光の明るさを用いて、前記血管の位置を算出する血管位置算出手段、
を有し、
前記投光軸と前記分光レンズの前記光軸との交点は、前記照射面に対して前記投光手段及び前記分光レンズが位置する側と反対側に位置すること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項2】
請求項1に係る血管位置特定装置において、
前記受光手段は、
前記受光面が前記光軸に対して傾斜して配置されていること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求2に係る血管位置特定装置において、
前記投光手段の前記投光軸と前記分光レンズの前記光軸とが、同一平面内に存在すること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に係る血管位置特定装置において、
前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面と、前記分光レンズの前記光軸及び前記照射面の前記法線を含む面とが、所定の角度で配置されていること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項5】
請求項4に係る血管位置特定装置において、
前記投光手段の前記投光軸及び前記照射面の前記法線を含む面と、前記分光レンズの前記光軸及び前記照射面の前記法線を含む面とが、90度で配置されていること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項6に係る血管位置特定装置のいずれかにおいて、
前記分光レンズは、
非球面レンズであること、
を特徴とする血管位置特定装置。
【請求項7】
皮膚の下に存在する血管から血液を採取する血液採取装置であって、
請求項1〜請求項6に係るいずれかの血管位置特定装置、
血液採取に用いる針を有する針射出手段であって、算出した前記血管の位置に前記針を射出する針射出手段、
を有する血液採取装置。
【請求項8】
皮膚の下に存在する血管から血液を採取する血液採取方法であって、
所定の照射面の法線方向に対して所定の角度を有する方向を投光方向として近赤外線を投光し、
前記照射面に対して前記投光手段が位置する側と同じ側に位置し、前記照射面の前記法線方向に対して所定の角度を有する方向を光軸方向とする分光レンズを用いて、前記投光手段が投光した前記近赤外線の反射光を分光し、
前記分光された反射光を受光面で受光し、
前記受光面での前記反射光の明るさを用いて、前記血管の位置を算出し、
算出した前記血管の位置に、血液採取に用いる針を射出すること、
を特徴とする血液採取方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−206088(P2011−206088A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73947(P2010−73947)
【出願日】平成22年3月27日(2010.3.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、都市エリア産学官連携促進事業(発展型)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501397920)旭光電機株式会社 (45)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月27日(2010.3.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、都市エリア産学官連携促進事業(発展型)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501397920)旭光電機株式会社 (45)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】
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