説明

血液検査用容器

【課題】放射線が照射されたとしても、血液凝固促進剤に血液凝固性能が低下し難く、常温下もしくはそれ以上の高温下に長期間保存された場合でも、血液凝固促進剤に含まれている血液凝固促進作用を有する酵素の活性の変動が小さく、安定性に優れており、高い血液凝固性能を長期間にわたって維持し得る血液検査用容器を提供する。
【解決手段】開口を有する合成樹脂製の管状容器内に、ペプチド鎖において、アルギニンと任意のアミノ酸残基との結合及び/又はリジンと任意のアミノ酸残基との結合を加水分解し得る酵素及びβ−アラニンを含む血液凝固促進剤が収容されており、かつ前記管状容器及び前記血液凝固促進剤中に含まれる総水分量が水分を含まない前記管状容器及び前記血液凝固促進剤の総重量に対して、0.05〜0.3重量%とされており、前記管状容器の開口に栓体が気密的に取付けられている、血液検査用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固性能を有する血液凝固促進剤が収容されている血液検査用容器に関し、より詳細には、血清生化学検査などの臨床検査等に用いられる血液検査用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
血清生化学検査などの臨床検査等において、短時間で血液から血清を採取したい場合には、酵素等からなる血液凝固促進剤が使用されている。この酵素は、ペプチド鎖においてアルギニンと任意のアミノ酸残基との結合や、リジンと任意のアミノ酸残基との結合を加水分解することができるものである。
【0003】
代表的な上記酵素としては、トロンビンが知られており、トロンビンはシリカ等に代表される無機系の血液凝固促進剤よりも高い血液凝固性能を有している。よって、トロンビンを用いれば、血液を急速に凝固させることができ、極めて短時間で血液から血清を得ることができる。
【0004】
しかしながら、トロンビン等の酵素は不安定であり、安定に保存することは難しく、酵素の高い血液凝固性能を長期間にわたり安定して発揮させることは困難であった。
【0005】
酵素の高い血液凝固性能を維持するために、従来よりトロンビン等の酵素は、一般に凍結乾燥して保存されている。しかしながら、トロンビン等の酵素を凍結乾燥して保存した場合であっても、常に適切な包装形態と適切な保存環境を維持する必要があり、高い血液凝固性能を長期間にわたり維持することは困難であった。そこで、トロンビン等の酵素の保存安定性を高めるために種々の試みがなされている。
【0006】
下記の特許文献1には、トロンビン含有水性溶液に、安定化剤として糖及びアミノ酸を含有させたトロンビン水性液状組成物が開示されている。
【0007】
他方、下記の特許文献2には、トロンビン、糖類、塩基性アミノ酸および有機酸塩からなるトロンビン乾燥製剤が開示されている。このトロンビン乾燥製剤では、凍結乾燥時および製剤保存時のトロンビンの安定性に富み、用時の溶解性にも優れているとされている。
【特許文献1】特開昭64−40433号公報
【特許文献2】特開平02−53732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に開示されているトロンビン水性液状組成物及びトロンビン乾燥製剤が低温で保存された場合には、ある程度の安定性を有するものの、常温もしくはそれ以上の過酷な条件で保存される血液検査用容器には適用できるものではなかった。従って、高い血液凝固性能をより一層長期間にわたり維持し得ることが求められていた。さらに、特許文献1、2のトロンビン水性液状組成物及びトロンビン乾燥製剤では、ガンマ線や電子線のような放射線が照射された場合に、トロンビンが失活し、血液凝固性能が低下するという欠点もあった。
【0009】
ところで、血液凝固促進剤として用いられる酵素は、急速に血液を凝固させる性能を有しているが故に、わずかな活性の違いで血液凝固性能が大きく変化する。すなわち、酵素の活性が高すぎると、血液の凝固が速くなって凝固が不均一となり、遠心分離後に、血清中にフィブリンが析出することがある。一方、酵素の活性が低すぎると、血液の凝固が遅くなり所定の時間内に必要な血清が得られないことがある。そこで、製造した直後から使用期限までの期間において、酵素の活性の変動が小さく、十分な保存安定性を有する血液凝固促進剤が強く望まれていた。
【0010】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、放射線が照射されたとしても血液凝固促進剤の血液凝固性能が低下し難く、さらに常温もしくはそれ以上の過酷な条件に長期間保存された場合に血液凝固促進剤に含まれる酵素の活性の変動が小さく、安定性に優れており、血液凝固促進剤の高い血液凝固性能を長期間にわたって安定して発揮し得る血液検査用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る血液検査用容器は、開口を有する合成樹脂製の管状容器内に、ペプチド鎖において、アルギニンと任意のアミノ酸残基との結合及び/又はリジンと任意のアミノ酸残基との結合を加水分解し得る酵素及びβ−アラニンを含む血液凝固促進剤が収容されており、かつ前記管状容器及び前記血液凝固促進剤中に含まれる総水分量が水分を含まない前記管状容器及び前記血液凝固促進剤の総重量に対して、0.05〜0.3重量%とされており、前記管状容器の開口に栓体が気密的に取付けられたことを特徴とする。
【0012】
上記酵素としては、好ましくは、トロンビンが用いられる。上記酵素がトロンビンである場合には、血液を急速に凝固させることができ、極めて短時間で血液から血清を得ることができる。
【0013】
本発明に係る血液検査用容器の他の特定の局面では、シリコーンオイル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレン及びこれらの誘導体からなる群から選択した少なくとも1種の血餅剥離剤が前記管状容器内にさらに収容されており、前記総水分量及び前記総重量が、該血餅剥離剤をも含めて求められた値とされている。この場合には、例えば管状容器の内壁面等に血液が付着するのを防止することができる。
【0014】
本発明に係る血液検査用容器のさらに他の特定の局面では、アミン塩、第4級窒素を有する有機化合物、及び硫酸プロタミンからなる群から選択した少なくとも1種の抗凝固成分中和剤が前記管状容器内にさらに収容されており、前記総水分量及び前記総重量が該抗凝固成分中和剤を含めて求められた値とされている。この場合には、透析患者等のヘパリン添加血液のような抗凝固成分中和剤が添加されている血液からも短時間で血清を得ることができる。
【0015】
本発明に係る血液検査用容器の別の特定の局面では、吸着性無機物が前記管状容器内にさらに収容されており、前記総水分量及び前記総重量が該吸着性無機物質を含めて求められた値とされている。この場合には、血液を効率的に凝固させることができる。
【0016】
本発明に係る血液検査用容器のさらに別の特定の局面では、血液凝固促進剤は管状容器の内壁面に塗布されている。この場合には、血液凝固促進剤と血液とを効率的に接触させることができるので、血液を効率的に凝固させることができる。
【0017】
本発明に係る血液検査用容器のさらに別の特定の局面では、血液凝固促進剤が比重1.08以上の担持体に塗布されている。前記総水分量及び前記総重量が、該担持体を含めて求められた値とされている。この場合には、血液凝固促進剤の安定性をさらに高めることができる。
【0018】
本発明に係る血液検査用容器のさらに別の特定の局面では、血液凝固促進剤が乾燥された状態で、管状容器内に収納されている。
【0019】
本発明に係る血液検査用容器のさらに別の特定の局面では、管状容器内が減圧されている。管状容器内が減圧されている場合には、血液検査用容器を真空採血管として用いることができる。
【0020】
本発明に係る血液検査用容器のさらに別の特定の局面では、管状容器内に窒素及び/又は不活性ガスが充填されている。管状容器内に窒素及び/又は不活性ガスが充填されている場合には、管状容器内に収容された酵素に放射線が照射されても失活し難く、長期間にわたり酵素の保存安定性が高められる。
【0021】
本発明に係る血液検査用容器のさらに他の特定の局面では、栓体が取付けられた管状容器が、ガスバリア性及び/又は水蒸気バリア性を有する材質からなる包装袋内に収容されて、該包装袋が密封されている。この場合には、管状容器内への酸素や水分の侵入を抑制することができる。よって、長期間にわたり酵素の保存安定性が高められる。
【0022】
本発明に係る血液検査用容器のさらに他の特定の局面では、包装袋内に、脱酸素剤がさらに収容されている。この場合には、管状容器内への酸素の侵入をさらに抑制することができ、放射線が照射されるときの酵素の安定性がより一層高められる。
【0023】
本発明に係る血液検査用容器のさらに他の特定の局面では、包装袋内に、窒素及び/又は不活性ガスが充填されている。この場合には、管状容器内への酸素の侵入をさらに抑制することができ、放射線が照射されるときの酵素の安定性や長期間にわたり酵素の保存安定性がさらに一層高められる。特に、管状容器内に窒素及び/又は不活性ガスが充填されている場合には、管状容器内に充填された窒素及び/又は不活性ガスの置換、漏洩を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る血液検査用容器では、開口を有する合成樹脂製の管状容器内に、ペプチド鎖において、アルギニンと任意のアミノ酸残基との結合及び/又はリジンと任意のアミノ酸残基との結合を加水分解し得る酵素及びβ−アラニンを含む血液凝固促進剤が収容されており、かつ前記管状容器及び前記血液凝固促進剤中に含まれる総水分量が水分を含まない前記管状容器及び前記血液凝固促進剤の総重量に対して、0.05〜0.3重量%とされており、前記管状容器の開口に栓体が気密的に取付けられているので、放射線が照射されても血液凝固促進剤の血液凝固性能が低下し難く、さらに常温もしくはそれ以上の過酷な条件に長期間保存された場合に血液凝固促進剤に含まれる酵素の活性の変動が小さく、安定性に優れており、血液凝固促進剤の高い血液凝固性能を長期間にわたって安定して発揮することができる。
【0025】
すなわち、上記管状容器及び血液凝固促進剤は乾燥が不十分でも乾燥し過ぎても、血液凝固促進剤に含まれる酵素の安定性にとって好ましくなく、本発明の血液検査用容器の管状容器及び血液凝固促進剤は、酵素の安定性に優れた乾燥状態とされている。よって、常温もしくはそれ以上の過酷な条件に長期間保存された場合に血液凝固促進剤に含まれる酵素の活性の変動が小さく、安定性に優れており、血液凝固促進剤の高い血液凝固性能を長期間にわたって安定して発揮することができる。さらに、放射線が照射された場合でも、血液凝固促進剤の血液凝固性能が低下し難く、高い血液凝固性能を維持することができる。
【0026】
また、本発明に係る血液検査用容器は、管状容器が合成樹脂からなるため、落下したり衝撃が与えられても破損し難いので、血液検査容器が破損して、使用者等が血液感染するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0028】
本発明の血液検査用容器の特徴は、管状容器内に、ペプチド鎖において、アルギニンと任意のアミノ酸残基との結合及び/又はリジンと任意のアミノ酸残基との結合を加水分解し得る酵素及びβ−アラニンを含む血液凝固促進剤が収容されており、血液凝固促進剤が収容されており、かつ前記管状容器及び前記血液凝固促進剤中に含まれる総水分量が水分を含まない前記管状容器及び前記血液凝固促進剤の総重量に対して、0.05〜0.3重量%とされていることにある。
【0029】
上記血液凝固促進剤は、ペプチド鎖において、アルギニンと任意のアミノ酸残基との結合及び/又はリジンと任意のアミノ酸残基との結合を加水分解し得る酵素と、β−アラニンとを含んでいる。
【0030】
上記酵素としては、例えば、トリプシン、トロンビン、蛇毒トロンビン様酵素などのセリンプロテアーゼ;カテプシンB、フィシンなどのチオールプロテアーゼ;キニナーゼIなどの金属プロテアーゼ等の血液凝固作用を促進させる酵素が挙げられる。中でも、トロンビンなどのセリンプロテアーゼが好ましく用いられ、トロンビンがさらに好ましく用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記トロンビンとしては、特に限定されないが、例えばヒト、ウシ等の動物の血漿から精製して得られたものを用いることができる。
【0032】
血液凝固促進剤に含有される上記酵素が少なすぎると、血液の凝固に時間がかかりすぎ、多すぎると血液の凝固が速くなりすぎ、凝固が不均一になったり、検査値に悪影響を及ぼす可能性がある。よって、上記酵素の使用量としては、活性値として0.1〜100IU(国際単位:以下「単位」と記す)の範囲が好ましい。例えば、上記酵素としてトロンビンを使用する場合、その使用量は血液1mL当たり0.5〜50単位の範囲が好ましく、より好ましくは1〜20単位の範囲である。
【0033】
上記血液凝固促進剤4には、β−アラニンが含まれている。血液凝固促進剤にβ−アラニンを添加することによって、酵素の安定性を飛躍的に高めることができる。β−アラニンの添加量としては、上記酵素1単位あたり0.01〜1000μgの範囲であることが好ましい。
【0034】
上記酵素としてトロンビンが使用される場合、血液凝固促進剤にβ−アラニンを添加することによって、トロンビンの安定性をより一層高めることができる。酵素としてトロンビンが使用される場合、β−アラニンの添加量としては、トロンビン1単位あたり0.01〜1000μgの範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜200μgの範囲、最も好ましくは0.5〜50μgの範囲である。β−アラニンの添加量が多いと血液凝固促進剤中にβ−アラニンが溶解し難くなり、成分が不均一に溶解、分散された血液凝固促進剤となったり、管状容器内に血液凝固促進剤をスプレー塗布する場合に、スプレー塗布できないことがある。
【0035】
上記血液凝固促進剤には、安定化剤としてさらにグリシン、アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、糖、ゼラチンなどが添加されてもよい。
【0036】
上記血液凝固促進剤は、水などの溶媒に溶解、分散された液として、管状容器内に収容されてもよい。中でも、血液凝固促進剤中での酵素の安定性に優れ、取り扱い性にも優れるため、血液凝固促進剤は水溶液とされて、管状容器内に収容されることが好ましい。
【0037】
上記血液凝固促進剤を管状容器内に収容する方法としては、特に限定されないが、例えば、血液凝固促進剤を水溶液として管状容器内に滴下する方法、管状容器の内壁面にスプレーなどにより塗布する方法等が挙げられる。血液を効率的に凝固させることができるため、血液凝固促進剤が管状容器の内壁面に塗布されていることが好ましい。
【0038】
酵素の安定性を高めるために、血液凝固促進剤は乾燥された状態で、管状容器内に収容されていることが好ましい。例えば、収容された血液凝固促進剤溶液もしくは分散液を乾燥してもよく、または、乾燥粉末や乾燥顆粒等のように予め乾燥した状態で血液凝固促進剤が管状容器内に収容されてもよい。この他にも、例えば、不織布、織布、樹脂製やガラス製のシートやビーズ等の担持体に血液凝固促進剤が担持された状態で収容されていてもよい。遠心分離後に担持体が血清中に残存せず血餅中に取り込まれるように、血液凝固促進剤は、比重1.08以上の担持体に塗布されて、管状容器内に収容されていることが好ましい。
【0039】
上記管状容器及び上記血液凝固促進剤中に含まれる総水分量、すなわち含水率は、水分を含まない上記管状容器及び上記血液凝固促進剤の総重量に対して、0.05〜0.3重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.2重量%、さらに好ましくは、0.05〜0.15重量%である。
【0040】
これまでは、上記管状容器に収容された血液凝固促進剤溶液もしくは分散液を乾燥する場合、加熱による酵素の劣化を恐れて風乾したり、強制乾燥させる場合であっても短時間しか乾燥を行わない場合が多かった。この場合には、血液凝固促進剤の乾燥が不十分であり、酵素の保存安定性に問題があった。
【0041】
一方で、乾燥が不十分で水分が残ると酵素の保存安定性を低下させるため、乾燥を十分に行うべきであるとの考え方があった。例えば、乾燥した環境下で長時間放置し、凝固促進剤を完璧に乾燥させる方法などが挙げられる。しかし、このように乾燥を十分に行った場合には、血液凝固促進剤に含まれる水分のみならず、合成樹脂製の管状容器に含まれるほとんど全ての水分も乾燥され、管状容器の含水率は0.05重量%未満となっていた。このように極度に管状容器及び血液凝固促進剤が乾燥された場合には、保存時に水分の再吸収を引き起こしやすく、かえって酵素の安定性が悪くなることがわかった。
【0042】
上記管状容器及び血液凝固促進剤は乾燥が不十分でも乾燥し過ぎても、血液凝固促進剤に含まれる酵素の安定性にとって好ましくなく、本発明の血液検査用容器の管状容器及び血液凝固促進剤は、管状容器及び血液凝固促進剤中に含まれる総水分量が水分を含まない上記管状容器及び上記血液凝固促進剤の総重量に対して、0.05〜0.3重量%となるように乾燥されており、酵素の安定性に極めて優れた乾燥状態とされている。
【0043】
上記管状容器及び血液凝固促進剤を上記の好ましい範囲に乾燥する方法としては、特に限定されないが、例えば、真空乾燥、加熱乾燥、除湿空気や加温空気などによる送風乾燥、シリカゲルなどの乾燥剤による乾燥等の方法が挙げられる。中でも酵素にダメージを与えず短時間で乾燥できる方法として、除湿空気や加温空気による送風乾燥が好適に使用される。除湿空気としては、効率的に乾燥するために大気よりも湿度が低くなければならず、かつ容易に供給可能な湿度の空気であることも必要なため、露点が5℃〜−60℃の範囲のものが好適に使用できる。
【0044】
加温空気としては、温度30℃〜70℃の範囲のものが好適に使用できる。30℃未満では乾燥に時間がかかりすぎるおそれがあり、70℃を超えると酵素にダメージを与えるおそれがある。除湿空気を加温して使用してもよい。
【0045】
本発明のように、上記管状容器及び上記血液凝固促進剤中に含まれる総水分量が水分を含まない上記管状容器及び上記血液凝固促進剤の総重量に対して、0.05〜0.3重量%となるようにするためには、乾燥条件を十分にコントロールする必要がある。例えば、送風乾燥の場合、望む乾燥状態を得るために、空気の温度、露点(湿度)、風量、乾燥時間、送風方法(ノズル形状や送風位置など)をコントロールする必要がある。
【0046】
本発明における総水分量は、露点が−60℃の空気中で48時間乾燥させたときの乾燥前重量及び乾燥後重量を測定し、乾燥前重量から乾燥後重量を引いて求めるものとする。
【0047】
このように、開口を有する合成樹脂製の管状容器内に、ペプチド鎖において、アルギニンと任意のアミノ酸残基との結合及び/又はリジンと任意のアミノ酸残基との結合を加水分解し得る酵素、中でもトロンビン及びβ−アラニンを含む血液凝固促進剤が収容されており、かつ前記管状容器及び前記血液凝固促進剤中に含まれる総水分量が水分を含まない前記管状容器及び前記血液凝固促進剤の総重量に対して、0.05〜0.3重量%とされており、前記管状容器の開口に栓体が気密的に取付けられた血液検査用容器は、放射線が照射されても血液凝固促進剤の血液凝固性能が低下し難く、さらに常温もしくはそれ以上の過酷な条件に長期間保存された場合に血液凝固促進剤に含まれる酵素の活性の変動が小さく、安定性に優れており、血液凝固促進剤の高い血液凝固性能を長期間にわたって安定して発揮することができる。
【0048】
上記管状容器内には、吸着性無機物がさらに収容されていることが好ましい。吸着性無機物としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、カオリン、ベントナイト、珪藻土等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。吸着性無機物は、血液凝固促進剤とは別に管状容器内に収容されていてもよく、血液凝固促進剤に添加されて管状容器内に収容されていてもよい。吸着性無機物の使用量としては、血液1mLあたり0.001〜10mgの範囲が好ましい。より好ましくは0.01〜1mgの範囲である。
【0049】
管状容器の内壁面等に血液が付着するのを防止するために、血餅剥離成分として、シリコーンオイル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレン及びこれらの誘導体からなる群から選択した少なくとも1種が管状容器内にさらに収容されていることが好ましい。
【0050】
上記シリコーンオイルとしては、例えば水溶性タイプの変性シリコーンオイルが挙げられ、好ましく用いられる。上記ポリオキシアルキレン及びその誘導体としては、例えば、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレングリセリルエーテルなどが挙げられ、好ましく用いられる。
【0051】
上記血餅剥離成分は、血液凝固促進剤に添加されて、管状容器内に収容されていてもよい。血餅剥離成分の使用量としては、血液1mLあたり0.1μg〜10mgの範囲が好ましい。より好ましくは1μg〜1mgの範囲である。
【0052】
上記血液凝固促進剤には、抗線溶剤及び/又は抗プラスミン剤がさらに添加されてもよい。抗線溶剤及び抗プラスミン剤としては、例えば、アプロチニン、大豆トリプシンインヒビター、p−アミノメチル安息香酸、アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。抗線溶剤及び抗プラスミン剤の使用量としては、血液1mLあたり0.1μg〜10mgの範囲が好ましい。より好ましくは1μg〜1mgの範囲である。
【0053】
透析患者等のヘパリン添加血液のような、抗凝固成分が添加されている血液でも短時間で血液から血清を得ることができるように、抗凝固成分中和剤が管状容器内に収容されていることが好ましい。例えば、上記血液凝固促進剤の血液凝固促進成分がトロンビンである場合、血液中にヘパリンが存在するとトロンビンの血液凝固性能が阻害されて血液は凝固しない。抗凝固成分中和剤が併用されることで血液中のヘパリンのような抗凝固成分が中和され、トロンビンのような血液凝固成分は本来の血液凝固性能を発揮することができる。抗凝固成分中和剤としては、例えばアミン塩、第4級窒素を有する有機化合物、硫酸プロタミン等が挙げられ、これらは特に、ヘパリンを中和するペパリン中和剤として好適である。従って、上記アミン塩、第4級窒素を有する有機化合物、及び硫酸プロタミンからなる群から選択した少なくとも1種が管状容器内にさらに収容されていることがより好ましい。なお、抗凝固成分中和剤は、血液凝固促進剤に添加されて、管状容器内に収容されていてもよい。
【0054】
上記アミン塩を構成するアミンは第1級、第2級及び第3級のいずれでもよく、アミン塩を構成する酸も無機酸及び有機酸のいずれでもよい。無機酸としては、例えば、塩酸等のハロゲン化水素、硫酸、亜硫酸などが挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸などが挙げられる。アミン塩の有機残基は通常アルキル基であるが、イミノ基やエーテル基等の異種元素を含む炭化水素基であってもよい。アミン塩は分子内塩であってもよい。アミン塩の具体例としては、例えば、ヘキサデシルジメチルアミン塩酸塩やテトラデシルジ(アミノエチル)グリシン等が挙げられる。
【0055】
上記第4級窒素を有する有機化合物としては、例えば、テトラアルキルアンモニウムが挙げられるが、アルキル基のかわにアリール基を有する化合物やイミノ基、エーテル基等の異種元素を含む炭化水素基を有する化合物でもよい。第4級窒素を有する有機化合物の具体例としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。他にも、第4級窒素を有する有機化合物として、第4級窒素を有する有機重合体が好ましく用いられる。
【0056】
上記第4級窒素を有する有機重合体としては、例えば、ポリアミンスルホンのようなポリカチオンが好適に使用される。ヘパリンの不活性化には高分子量のポリカチオンを用いることが効果的であり、高分子量のポリカチオンは、ヘパリンと結合してヘパリンを不溶化し沈殿させる。ポリアミンスルホンとしては、例えば下記の一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体などが挙げられる。
【0057】
【化1】

【0058】
上記ポリアミンスルホンは合成化合物であるため、天然物である硫酸プロタミンと比べて取扱性に優れている。ポリアミンスルホンは精製しやすく、血液凝固促進剤を調製する際に、血液凝固促進剤に容易に配合することができる。さらに、ポリアミンスルホンは、ヘパリンの中和能力にも極めて優れている。
【0059】
上記抗凝固成分中和剤の添加量は、凝固させる血液に含まれる抗凝固成分量により適宜決定される。例えば、一般の透析患者のヘパリン添加血液を凝固させる場合には、ヘパリン中和剤の添加量は、血液1mLあたり0.001〜10mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.005〜1mgの範囲、最も好ましくは0.01〜0.5mgの範囲である。
【0060】
検査用血清を効率的に採取するために、管状容器内に血清分離剤等がさらに収容されていてもよい。血清分離剤としては、例えば、血清と血餅の中間となる比重のチクソトロピー性をもつゲル状物質が好適に用いられる。血清分離剤は、血液が凝固した後に遠心分離を行うことで、比重差を利用して血清と血餅の間に血清分離剤の隔壁を形成し、血清を容易に分離することを可能とする。
【0061】
血液検査用容器の管状容器内には、窒素及び/または不活性ガスが充填されてもよい。すなわち、管状容器内には、窒素または不活性ガスのいずれかが充填されていてもよく、窒素と不活性ガスとが併用されて充填されていてもよい。
【0062】
上記不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどの第18族元素からなるガスが挙げられる。これらの不活性ガスは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記管状容器内に窒素及び/又は不活性ガスを充填する方法は、特に限定されない。例えば、窒素及び/又は不活性ガスを充満させたチャンバー内において管状容器の開口に栓体を取付けて密封する方法、管状容器内に窒素及び/又は不活性ガスを送り込みながら管状容器の開口に栓体を取付けて密封する方法、管状容器の開口に栓体を取付けて密封した後に、容器内の気体を窒素及び/又は不活性ガスで置換する方法などが挙げられる。
【0064】
窒素及び/又は不活性ガスが管状容器内に充填されていることによって、酵素にガンマ線や電子線などの放射線が照射された際に酵素が失活するのを抑制することができ、酵素の保存安定性を高めることができる。特に、酵素としてトロンビンが用いられている場合に、窒素及び/又は不活性ガスが管状容器内に充填されていることによって、放射線が照射された際にトロンビンが失活するのをより一層効果的に抑制することができ、トロンビンの保存安定性をより一層高めることができる。
【0065】
図1(a)、(b)に本発明の一実施形態に係る血液検査用容器を外観斜視図及び正面断面図で示す。
【0066】
図1(a)、(b)に示すように、血液検査用容器1は、管状容器2と栓体3とを備えている。管状容器2は、一端に開口2aを有し、一端とは反対側の他端に丸底2bを有する。栓体3は、大径部3aと、大径部3aよりも径が小さな小径部3bとを有する。管状容器2の開口2aに栓体3の小径部3bが圧入されて、管状容器2の開口2aに栓体3が気密的に取付けられている。
【0067】
上記管状容器としては、開口を有する管状容器であれば特に限定されないが、開口を有し、有底の管状容器が好ましく用いられる。
【0068】
上記管状容器の材質としては、合成樹脂が使用される。合成樹脂からなる管状容器は、落下させた場合や、衝撃が与えられた場合でも破損し難い。よって、血液検査容器が破損して、使用者等が血液感染するのを防止することができる。
【0069】
上記合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等が挙げられる。なかでも、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いられる。
【0070】
上記管状容器は、ガスバリア性及び/又は水蒸気バリア性を有する材質からなることが好ましい。
【0071】
上記栓体としては、管状容器の開口に気密的に取付けることが可能な材質、形状からなるものが用いられる。栓体の材質としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、ゴム、アルミニウムなどの金属箔等が挙げられる。上記ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等が好適に用いられる。栓体は、上述した材質の2つ以上を用いて構成されていてもよい。2つ以上の材質を用いて構成された栓体としては、例えば、ゴムやエラストマーからなる栓体本体を合成樹脂からなるカバーで覆ったオーバーキャップタイプの栓体などが挙げられる。他の例としては、例えば、金属箔のラミネートフィルム等の栓体で容器開口部をシールして密封してもよい。
【0072】
上記栓体は、ガスバリア性及び/又は水蒸気バリア性を有する材質からなることが好ましい。
【0073】
上記血液検査用容器は減圧されていることが好ましい。血液検査用容器内が減圧されていると、血液検査用容器を真空採血管としても用いることができる。血液凝固促進剤等が収容されている管状容器の減圧状態を維持し得るように、管状容器の開口には、気密的に栓体が取付けられている。
【0074】
管状容器内が減圧されている場合には、管状容器として減圧状態を維持し得る材質、形状からなるものが使用される。管状容器内が減圧されている場合には、栓体として、管状容器内の減圧状態を維持でき、かつ採血時に刺通可能な材質、形状からなるものが好ましく使用される。管状容器内の減圧度は、採血したい血液量にあわせて設定される。
【0075】
管状容器内を減圧状態として、管状容器の開口に栓体を取付けて密封する方法については、特に限定されない。例えば、真空チャンバー等の減圧環境下で上記管状容器に上記栓体を嵌合させて密封する方法が挙げられる。また、管状容器に上記栓体を嵌合させて密封する以外にも、例えば、刺通部にゴムを積層した金属箔のラミネートフィルム等の栓体で、容器開口部をシールして密封してもよい。
【0076】
栓体が取付けられた管状容器は、ガスバリア性及び/又は水蒸気バリア性を有する材質からなる包装袋内に収容されて、該包装袋が密封されていることが好ましい。
これにより、酵素の安定性に影響を与える酸素や水分の管状容器内への侵入を抑制することができる。特に、水蒸気バリア性を有する材質からなる包装袋内に収容される場合には、さらに上記管状容器と血液凝固促進剤の好ましい乾燥状態を長期間にわたり維持することができる。
【0077】
よって、管状容器内に収容された酵素に放射線が照射された場合でも失活し難く、長期間にわたり酵素の保存安定性が高められる。例えば、管状容器が透湿性の高い材質からなる場合でも、酵素の保存安定性に優れ、高い血液凝固促進性能を長期間にわたり安定して発揮することができる。
【0078】
放射線が照射されたときの酵素の安定性がより一層高められるため、包装袋内には、脱酸素剤が収容されていることが好ましい。
【0079】
長期間にわたり酵素の保存安定性がさらに一層高められるため、上記包装袋内には、窒素及び/又は不活性ガスが充填されていることが好ましい。包装袋内に脱酸素剤が収容されて、かつ窒素及び/又は不活性ガスが充填されていることがさらに好ましい。
【0080】
窒素及び/又は不活性ガスが充填された管状容器が上記包装袋に収容される場合には、
さらに酵素の安定性に優れる。
【0081】
上記包装袋の形状は、栓体が取付けられた管状容器を収容でき、密封することできる形状であれば特に限定されない。包装袋としては、例えば、3方シール袋や4方シール袋、パウチ袋、ガセット袋などが挙げられる。包装袋内へのガスもしくは水蒸気が透過する量をできるだけ少なくするため、包装袋の内容積は栓体が取付けられた管状容器を収容し得る範囲で必要最低限の大きさとし、包装袋の表面積を小さくすることが好ましい。
【0082】
上記包装袋の材質は、ガスバリア性及び/又は水蒸気バリア性を有するものであれば特に限定されない。包装袋の材質としては、例えば、アルミニウムなどの金属箔や合成樹脂などが挙げられる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セロファン、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。ガスバリア性及び/又は水蒸気バリア性を高めるため、もしくはヒートシール性を持たせるため、これらの2つ以上の材質をラミネート等により積層して構成された包装袋が好ましく用いられる。このような包装袋としては、例えば、アルミニウム箔とポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンとのラミネートフィルム等からなる包装袋が挙げられる。
【0083】
上記材質に、例えば、シリカ、アルミナ、セラミック、アルミニウムなどが蒸着されたものも包装袋として用いることができる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンにシリカ、アルミナ、セラミック、アルミニウムなどが蒸着されたフィルムとポリエチレン、ポリプロピレンなどのヒートシール性を有するフィルムをラミネートした積層フィルムからなる包装袋が挙げられ、好適に用いることができる。シリカ、アルミナ及びセラミックの蒸着フィルムは、ガスバリア性や水蒸気バリア性に優れるとともに透明性にも優れ、包装袋の外から内容物が視覚的に確認できるとともに、焼却廃棄が可能である等の利点を有する。アルミ箔蒸着フィルムでは、透明性は得られないものの、アルミニウム箔のラミネートフィルムに匹敵する程の優れたガスバリア性及び水蒸気バリア性が得られる。
【0084】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
トロンビン(持田製薬製)30万単位およびβ−アラニン2gを100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1gをさらに添加し、血液凝固促進剤の水溶液を得た。
【0086】
このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)製の有底の管状容器(内径15mm×長さ100mm)の内壁面に20μLスプレーし、管状容器にノズルを挿入して60℃の大気200m/Hrで5分間送風乾燥し、上記管状容器及び血液凝固促進剤に含まれる総水分量が水分を含まない上記管状容器及び上記血液凝固促進剤の総重量に対して0.10重量%となるようにした(以下、管状容器及び血液凝固促進剤の総含水率と示す)。
【0087】
総含水率0.1重量%を実現するには、以下の1)〜5)の手順により、処理を行った。1)上記血液凝固促進剤の水溶液を上記のように内壁面に20μLスプレーした管状容器にノズルを挿入して60℃の大気200m/Hrを送風して、1分間乾燥したサンプルから1分毎に10分間乾燥したサンプルまで10種類の送風乾燥サンプルを作製した。
2)10種類の送風乾燥サンプルの重量を測定した。3)この送風乾燥サンプルをさらに20℃の除湿空気(露点−60℃)中で48時間放置して十分に乾燥し、重量を測定し、これを総重量とした。4)上記2)で測定した重量から3)で求めた総重量を引いて送風時間の異なる10種類のサンプルの総水分量を求めた。5)送風時間と総水分量との関係から、総水分量が総重量の0.10重量%となる送風時間、すなわち5分間を求めた。
【0088】
上記のようにして、上記総水分量が、総重量に対して0.10重量%となるように、血液凝固促進剤が収容されている管状容器を真空チャンバーに入れ、採血量が5mLとなるように管状容器内を減圧し、管状容器の開口をブチルゴム製の栓体で密封して、真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0089】
(実施例2)
実施例1において、管状容器にノズルを挿入して60℃の大気200m/Hrで10分間送風乾燥して、管状容器及び血液凝固促進剤の総含水率を0.05重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0090】
(実施例3)
実施例1において、管状容器にノズルを挿入して60℃の大気200m/Hrで3分間送風乾燥して、管状容器及び血液凝固促進剤の総含水率を0.15重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0091】
(実施例4)
実施例1において、管状容器にノズルを挿入して50℃の大気100m/Hrで3分間送風乾燥して、管状容器及び血液凝固促進剤の総含水率を0.30重量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0092】
(実施例5)
トロンビン(持田製薬製)30万単位およびβ−アラニン0.2gを100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1gをさらに添加し、血液凝固促進剤の水溶液を得た。このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0093】
(実施例6)
トロンビン(持田製薬製)30万単位およびβ−アラニン10gを100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1gをさらに添加し、血液凝固促進剤の水溶液を得た。このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0094】
(実施例7)
水溶性シリコーンオイルの代わりにポリビニルピロリドンを用いたこと以外は実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0095】
(実施例8)
水溶性シリコーンオイルの代わりにポリビニルアルコールを用いたこと以外は実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0096】
(実施例9)
水溶性シリコーンオイルの代わりにポリオキシプロピレングリセリルエーテルを用いたこと以外は実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0097】
(実施例10)
トロンビン(持田製薬製)30万単位、β−アラニン2g、および第4級窒素を有する有機化合物として上述した式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミンスルホン0.5gを100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1gをさらに添加して、血液凝固促進剤の水溶液を得た。このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0098】
(実施例11)
トロンビン(持田製薬製)30万単位、β−アラニン2g、およびアミン塩であるヘキサデシルジメチルアミン塩酸塩1gを100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1gをさらに添加して、血液凝固促進剤の水溶液を得た。このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0099】
(実施例12)
トロンビン(持田製薬製)30万単位、β−アラニン2g、および硫酸プロタミン2gを100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1gをさらに添加して、血液凝固促進剤の水溶液を得た。このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0100】
(実施例13)
トロンビン(持田製薬製)30万単位およびβ−アラニン2gを100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1g及び吸着性無機物であるシリカ3gをさらに添加して、血液凝固促進剤の水溶液を得た。このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0101】
(実施例14)
実施例1で得られた血液凝固促進剤の水溶液20mgを、担持体であるポリエチレンテレフタレート製ビーズ(比重1.4)の表面にコーティングした後、乾燥した。この後、血液凝固促進剤が塗布された担持体を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の有底の管状容器(内径15mm×長さ100mm)に収容した後、管状容器を50℃の除湿空気(露点−10℃)を100m/Hrの流量で3分間送風乾燥し、管状容器及び血液凝固促進剤を含む担持体の総含水率が0.10重量%となるようにした。この後、真空チャンバーを用いて、採血量が5mLとなるように管状容器内を減圧し、管状容器の開口をブチルゴム製の栓体で密封して、真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0102】
(実施例15)
実施例1で得られた血液凝固促進剤の水溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)製の有底の管状容器(内径15mm×長さ100mm)の内壁面に20μLスプレーし、管状容器を50℃の除湿空気(露点−10℃)を100m/Hrの流量で3分間送風乾燥し、管状容器及び血液凝固促進剤の総含水率が0.10重量%となるようにした。この後、窒素で置換した真空チャンバー内で管状容器内に窒素を充填して、採血量が5mLとなるように管状容器内を減圧し、管状容器の開口をブチルゴム製の栓体で密封して、真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0103】
(実施例16)
実施例15において、窒素のかわりにヘリウムを使用したこと以外は、実施例15と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0104】
(実施例17)
実施例1で得られた真空採血管100本を、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を有する包装袋であるPET/アルミナ蒸着PET/ポリエチレンのように積層したラミネートフィルムからなるガセット袋(袋底面120×300mm)に収容した。包装袋内の空気を真空吸引してできるだけ空気を取除き、底面より250mmの位置をヒートシールしてガセット袋を密封し、血液検査用容器を得た。
【0105】
(実施例18)
実施例1で得られた真空採血管100本を、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を有する包装袋であるPET/シリカ蒸着PET/ポリエチレンのように積層したラミネートフィルムからなるガセット袋(袋底面120×300mm)に収容した。包装袋内の空気を真空吸引してできるだけ空気を取除き、底面より250mmの位置をヒートシールしてガセット袋を密封し、血液検査用容器を得た。
【0106】
(実施例19)
実施例15で得られた真空採血管100本を、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を有する包装袋であるPET/AL(アルミニウム箔)/ナイロン/ポリプロピレンのように積層したラミネートフィルムからなるガセット袋(袋底面120×300mm)に収容した。包装袋内の空気を真空吸引してできるだけ空気を取除き、底面より250mmの位置をヒートシールしてガセット袋を密封し、血液検査用容器を得た。
【0107】
(実施例20)
実施例15で得られた真空採血管100本と脱酸素剤とを、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を有する包装袋であるPET/アルミナ蒸着PET/ポリエチレンのように積層したラミネートフィルムからなるガセット袋(袋底面120×300mm)に収容した。包装袋内の空気を真空吸引してできるだけ空気を取除き、底面より250mmの位置をヒートシールしてガセット袋を密封し、血液検査用容器を得た。
【0108】
(実施例21)
実施例15で得られた真空採血管100本を、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を有する包装袋であるPET/アルミナ蒸着PET/ポリエチレンのように積層したラミネートフィルムからなるガセット袋(袋底面120×300mm)に収容した。包装袋内の空気を窒素に置換した後、底面より250mmの位置をヒートシールしてガセット袋を密封し、血液検査用容器を得た。
【0109】
(実施例22)
実施例16で得られた真空採血管100本を、ガスバリア性及び水蒸気バリア性を有する包装袋であるPET/アルミニウム蒸着PET/ポリエチレンのように積層したラミネートフィルムからなるガセット袋(袋底面120×300mm)に収容した。包装袋内の空気をヘリウムに置換した後、底面より250mmの位置をヒートシールしてガセット袋を密封し、血液検査用容器を得た。
【0110】
(比較例1)
トロンビン(持田製薬製)30万単位およびβ−アラニン2gを100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1gをさらに添加し、血液凝固促進剤の水溶液を得た。
このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)製の有底の管状容器(内径15mm×長さ100mm)の内壁面に20μLスプレーし、管状容器を25℃の除湿空気(露点−60℃)2m/Hrが送風される乾燥機(内容積500L)内で24時間乾燥し、管状容器及び血液凝固促進剤の総含水率が0.01重量%未満となるまで乾燥した。この後、真空チャンバーを用いて、採血量が5mLとなるように管状容器内を減圧し、管状容器の開口をブチルゴム製の栓体で密封して、真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0111】
(比較例2)
比較例1で得られた血液凝固促進剤の水溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)製の有底の管状容器(内径15mm×長さ100mm)の内壁面に20μLスプレーし、25℃の大気環境下で風乾して、管状容器及び血液凝固促進剤の総含水率を0.5重量%とした。この後、真空チャンバーを用いて、採血量が5mLとなるように管状容器内を減圧し、管状容器の開口をブチルゴム製の栓体で密封して、真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0112】
(比較例3)
比較例1で得られた血液凝固促進剤の水溶液を30℃、90%RHの環境下にて48時間放置しておいたポリエチレンテレフタレート(PET)製の有底の管状容器(内径15mm×長さ100mm)の内壁面に20μLスプレーし、管状容器及び血液凝固促進剤の総含水率を1.0重量%とした。この後、乾燥は行わずに真空チャンバーを用いて、採血量が5mLとなるように管状容器内を減圧し、管状容器の開口をブチルゴム製の栓体で密封して、真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0113】
(比較例4)
トロンビン(持田製薬製)30万単位およびグリシン2gを100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1gをさらに添加し、血液凝固促進剤の水溶液を得た。
【0114】
このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0115】
(比較例5)
トロンビン(持田製薬製)30万単位を100gの精製水に溶解させ、水溶性シリコーンオイル1gをさらに添加し、血液凝固促進剤の水溶液を得た。
【0116】
このようにして得られた血液凝固促進剤の水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0117】
(比較例6)
比較例5で得られた血液凝固促進剤の水溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして真空採血管である血液検査用容器を得た。
【0118】
<評価1>
上記実施例及び比較例で得られた各血液検査用容器に15kGyのガンマ線を照射し、照射前のトロンビン活性に対する照射後のトロンビン活性残存率を測定した。本評価は血液検査用容器を製造した後、すぐに実施した。結果を下記表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
<評価2>
製造した直後の上記実施例及び比較例で得られた各血液検査用容器のトロンビン活性を測定した。さらに、製造した直後の実施例及び比較例で得られた各血液検査用容器を、35℃、75%RHの恒温恒湿槽で2週間及び1ヶ月保存した。製造した直後のトロンビン活性に対する2週間保存した後および1ヶ月保存した後のトロンビン活性残存率を測定し、保存安定性を評価した。
【0121】
また、製造した直後、2週間保存した後及び1ヶ月保存した後の各血液検査用容器について、健常人より血液5mLを真空採血し、速やかにかつ緩やかに5回転倒混和を行い、5分間放置した後、遠心分離を行った。このときの血清中におけるフィブリン発生の有無、血清収率について観察し、下記評価基準で評価した。結果を下記表2に示す。
【0122】
〔フィブリン発生の有無〕
○:発生なし
×:発生あり
〔血清収率〕
○:採血量に対して30%以上
×:採血量に対して30%未満
【0123】
【表2】

【0124】
<評価3>
血液1mLあたりヘパリン1単位を添加したヘパリン添加血液5mLを、製造した直後、上記評価2に記載の条件で2週間保存した後、及び上記評価2に記載の条件で1ヶ月保存した後の実施例10〜12の各血液検査用容器に加え、速やかにかつ緩やかに5回転倒混和を行った。その結果、製造した直後、2週間保存した後、及び1ヶ月保存した後の実施例10〜12の各血液検査用容器のいずれにおいても、5分以内に血液が凝固し、これを遠心分離することでフィブリンの析出がない2mL以上の血清を得ることができた。実施例10〜12以外の実施例及び比較例の各血液検査用容器においては、血液1mLあたりヘパリン1単位を添加したヘパリン添加血液5mLを加え、速やかにかつ緩やかに5回転倒混和を行った後に1時間放置しても、血液が凝固しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る血液検査用容器を示す外観斜視図及び正面断面図。
【符号の説明】
【0126】
1…血液検査用容器
2…管状容器
2a…開口
2b…底部
2c…内壁面
3…栓体
3a…大径部
3b…小径部
4…血液凝固促進剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する合成樹脂製の管状容器内に、ペプチド鎖において、アルギニンと任意のアミノ酸残基との結合及び/又はリジンと任意のアミノ酸残基との結合を加水分解し得る酵素及びβ−アラニンを含む血液凝固促進剤が収容されており、かつ前記管状容器及び前記血液凝固促進剤中に含まれる総水分量が水分を含まない前記管状容器及び前記血液凝固促進剤の総重量に対して、0.05〜0.3重量%とされており、前記管状容器の開口に栓体が気密的に取付けられたことを特徴とする血液検査用容器。
【請求項2】
前記酵素がトロンビンである、請求項1に記載の血液検査用容器。
【請求項3】
シリコーンオイル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレン及びこれらの誘導体からなる群から選択した少なくとも1種の血餅剥離剤が前記管状容器内にさらに収容されており、前記総水分量及び前記総重量が、該血餅剥離剤をも含めて求められた値である、請求項1または請求項2に記載の血液検査用容器。
【請求項4】
アミン塩、第4級窒素を有する有機化合物、及び硫酸プロタミンからなる群から選択した少なくとも1種の抗凝固成分中和剤が前記管状容器内にさらに収容されており、前記総水分量及び前記総重量が該抗凝固成分中和剤を含めて求められた値である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液検査用容器。
【請求項5】
吸着性無機物が前記管状容器内にさらに収容されており、前記総水分量及び前記総重量が該吸着性無機物質を含めて求められた値である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液検査用容器。
【請求項6】
前記血液凝固促進剤が前記管状容器の内壁面に塗布されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の血液検査用容器。
【請求項7】
前記血液凝固促進剤が比重1.08以上の担持体に塗布されて、前記管状容器内に収容されており、前記総水分量及び前記総重量が、該担持体を含めて求められた値である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の血液検査用容器。
【請求項8】
前記血液凝固促進剤が乾燥して収容されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の血液検査用容器。
【請求項9】
前記管状容器内が減圧されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の血液検査用容器。
【請求項10】
前記管状容器内に窒素及び/又は不活性ガスを充填したことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の血液検査用容器。
【請求項11】
前記栓体が取付けられた前記管状容器が、ガスバリア性及び/又は水蒸気バリア性を有する材質からなる包装袋内に収容されて、該包装袋が密封されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の血液検査用容器。
【請求項12】
前記包装袋内に、脱酸素剤がさらに収容されている、請求項11に記載の血液検査用容器。
【請求項13】
前記包装袋内に、窒素及び/又は不活性ガスが充填されている、請求項11または12に記載の血液検査用容器。

【図1】
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【公開番号】特開2007−304004(P2007−304004A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134130(P2006−134130)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000224949)徳山積水工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】